JP2011222386A - イオン注入方法およびイオン注入装置 - Google Patents

イオン注入方法およびイオン注入装置 Download PDF

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Abstract

【課題】ガラス基板上に照射された複数本のイオンビームによる重ね合わせ領域において、各イオンビームのビーム電流密度分布を効率的に調整する。
【解決手段】このイオン注入方法は、予め決められた順番で、複数本のリボン状イオンビームの各々が所定の電流密度分布となるように調整されるビーム電流密度分布調整工程と、ビーム電流密度分布調整工程の間であって、2本目以降の各イオンビームに対してビーム電流密度分布の調整がなされる前に、先になされたビーム電流密度分布の調整結果を用いて、これからビーム電流密度分布の調整がなされるイオンビームに対する調整目標とされるビーム電流密度分布を修正する目標修正工程と、複数本のリボン状イオンビームの長辺方向と交差する方向にガラス基板を搬送させるガラス基板搬送工程と、を行う。
【選択図】 図1

Description

この発明は、複数のリボン状イオンビームによる照射領域を重ね合わせて、ガラス基板上に所定の注入量分布を形成させるイオン注入方法およびイオン注入装置に関する。
近年、液晶テレビに代表される液晶製品の大型化が著しい。半導体製造工程においては、1つの処理工程でより多くの液晶パネルを処理する為に、ガラス基板の寸法を大きくし、大型のガラス基板から液晶パネルを多面取りしようという試みがなされている。半導体製造装置の一つであるイオン注入装置についても、このような大型のガラス基板への対応が求められている。
このような要望に対応すべく、これまでに特許文献1に記載のイオン注入装置が開発されてきた。
特許文献1には、ガラス基板の寸法よりも小さい2本のイオンビームを用いて、ガラス基板の全面にイオン注入処理を施す技術が開示されている。より具体的には、特許文献1では、一例として、互いに直交する3方向(X、Y、Z方向)を、それぞれイオンビームの短辺方向、イオンビームの長辺方向、イオンビームの進行方向として定義している。そして、ガラス基板へのイオン注入処理が施される処理室内で、2本のイオンビームは、X方向において互いに離間した位置に、Y方向においてガラス基板上での各イオンビームによる照射領域が部分的に重なるように互いの中心位置をずらして、照射されている。このようなイオンビームを横切るように、X方向に沿ってガラス基板を搬送させることで、ガラス基板全面に渡ってのイオン注入処理を実現させている。
特許文献1に記載の技術は、ガラス基板の搬送速度が一定である。そして、ガラス基板の全面に渡って均一な注入量分布を実現するということから、ガラス基板上に照射されるイオンビームの電流密度分布は、特許文献1の図6に示されているように2本のイオンビームが重ね合わせされる領域を含めて、Y方向に沿って、全体が略均一な電流密度分布となるように調整されている。
特開2009−152002号公報(図1、図3、図6、段落0077〜0088)
一般に、イオンビームが重ね合わせされる領域でのビーム電流密度分布の調整は、1本のイオンビームのビーム電流密度分布を調整する場合と比較して、調整対象とされるパラメータの数が多く、複雑である。調整が複雑である場合、調整を闇雲にしていたのであれば、調整が終了するまでにかなりの時間を要してしまうといった問題が起こり得る。また、ビーム電流密度分布の調整に時間がかかってしまうと、イオン注入装置のスループット(処理能力)の低下を招いてしまうといった問題も起こり得る。
しかしながら、特許文献1において、イオンビームが重ね合わせされる領域でのビーム電流密度分布の調整については、ガラス基板上で重ね合わせされるイオンビーム照射領域におけるビーム電流密度分布を他の領域(重ね合わせされない領域)でのビーム電流密度分布とほぼ等しくなるように調整するといった程度の記載しかなされておらず、具体的にどのような調整を行えば効率の良い調整となるのかについては明らかにされていなかった。
そこで本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、イオンビームが重ね合わせされる領域における各イオンビームの電流密度分布を効率的に調整することの出来るイオン注入方法およびイオン注入装置を提供することを目的とする。
すなわち本発明に係るイオン注入方法は、複数本のリボン状イオンビームを処理室内に供給する複数のイオンビーム供給装置と、前記処理室内に配置され、前記複数本のリボン状イオンビームの長辺方向におけるビーム電流密度分布を個別に測定するビームプロファイラーと、前記イオンビーム供給装置毎に個別に設けられ、前記ビームプロファイラーで測定された前記ビーム電流密度分布を調整するためのビーム電流密度分布調整手段と、を備えたイオン注入装置において、前記複数本のリボン状イオンビームに対して、予め決められた順番で、前記プロファイラーによるビーム電流密度分布の測定結果に基づいて、イオンビーム毎に決められた所定の電流密度分布となるように前記ビーム電流密度分布調整手段を調整するビーム電流密度分布調整工程と、前記ビーム電流密度分布調整工程の間であって、かつ、2本目以降のイオンビームに対してビーム電流密度分布の調整がなされる前に、先にビーム電流密度分布の調整がなされたイオンビームにおけるビーム電流密度分布の調整結果を用いて、これからビーム電流密度分布の調整がなされるイオンビームにおいて調整目標とされる前記所定のビーム電流密度分布を修正する目標修正工程と、前記処理室内で、前記複数本のリボン状イオンビームの長辺方向と交差する方向に前記ガラス基板を搬送させるガラス基板搬送工程とを行うことを特徴としている。
また、本発明に係るイオン注入装置は、複数本のリボン状イオンビームを処理室内に供給する複数のイオンビーム供給装置と、前記処理室内に配置され、前記複数本のリボン状イオンビームの長辺方向におけるビーム電流密度分布を個別に測定するビームプロファイラーと、前記イオンビーム供給装置毎に個別に設けられ、前記ビームプロファイラーで測定された前記ビーム電流密度分布を調整するためのビーム電流密度分布調整手段と、を備えたイオン注入装置であって、更に、前記複数本のリボン状イオンビームに対して、予め決められた順番で、前記プロファイラーによるビーム電流密度分布の測定結果に基づいて、イオンビーム毎に決められた所定の電流密度分布となるように前記ビーム電流密度分布調整手段を調整するビーム電流密度分布調整工程と、前記ビーム電流密度分布調整工程の間であって、かつ、2本目以降のイオンビームに対してビーム電流密度分布の調整がなされる前に、先にビーム電流密度分布の調整がなされたイオンビームにおけるビーム電流密度分布の調整結果を用いて、これからビーム電流密度分布の調整がなされるイオンビームにおいて調整目標とされる前記所定のビーム電流密度分布を修正する目標修正工程と、前記処理室内で、前記複数本のリボン状イオンビームの長辺方向と交差する方向に前記ガラス基板を搬送させるガラス基板搬送工程とを行う制御装置を有していることを特徴としている。
このようなイオン注入方法やイオン注入装置であれば、イオンビームが重ね合わせされる領域における各イオンビームの電流密度分布を効率的に調整することが出来る。
さらに、前記ガラス基板搬送工程は、前記ビーム電流密度分布調整工程の終了後に、行われるようにしておいても良い。このようにしておけば、ビーム電流密度分布の調整中にガラス基板が搬送されることがないので、ガラス基板への誤注入を防止させることが出来る。
一方で、 前記複数本のリボン状イオンビームが調整される順番は前記ガラス基板の搬送方向と一致しており、個々のリボン状イオンビームに対するビーム電流密度分布の調整が終了したことを受けて、当該リボン状イオンビームの長辺方向と交差方向に前記ガラス基板の搬送が行われるようにしておいても良い。このようにしておけば、全てのリボン状イオンビームにおけるビーム電流密度分布の調整が終わっていなくても、既に調整済みであるリボン状イオンビームを用いて、予めイオン注入処理を行っておくことが出来るので、その分、イオン注入処理全体に要する時間を短縮させることが出来る。
このようなものであれば、イオンビームが重ね合わせされる領域における各イオンビームの電流密度分布を効率的に調整することが出来る。
本発明の第1、第2の実施形態に係るイオン注入装置の様態を示す平面図である。 本発明の第1の実施形態に係る処理室内部をZ方向から見た時の平面図である。 イオンビームの注入量分布と電流密度分布の関係を示す説明図である。 図3に示すイオンビームの注入分布を2つ重ねる合わせた場合に形成される注入量分布についての説明図である。 イオンビームの注入量分布と電流密度分布の関係を示す説明図である。 図5を元に、調整目標とする電流密度分布を修正する手法についての一例を示す説明図である。 イオンビームの注入量分布と電流密度分布の関係を示す説明図である。 図7を元に、調整目標とする電流密度分布を修正する手法についての一例を示す説明図である。 本発明の第2の実施形態に係る処理室内部をZ方向から見た時の平面図である。 本発明の第3、第4の実施形態に係るイオン注入装置の様態を示す平面図である。 本発明の第3の実施形態に係る処理室内部をZ方向から見た時の平面図である。 本発明の第4の実施形態に係る処理室内部をZ方向から見た時の平面図である。
<第一の実施形態>
図1は本発明に係るイオン注入装置1の一実施例を示す平面図であり、図2は図1の処理室内部をZ方向から見た時の平面図である。これらの図面を元に本発明の一実施例に係るイオン注入装置の全体の構成を説明する。
この発明において、X方向を基板の搬送方向、Y方向をイオンビームの長辺方向、Z方向を処理室内でガラス基板に照射されるイオンビームの進行方向としている。また、この発明において、リボン状イオンビームとは、イオンビームの進行方向に直交する平面でイオンビームを切った場合に、その断面が略長方形状であるイオンビームのことを指している。
図1に記載のイオン注入装置1は、主に一点鎖線によって囲まれた第1のイオンビーム供給装置2と第2のイオンビーム供給装置12から構成されている。第1のイオンビーム供給装置2と第2のイオンビーム供給装置12は、それぞれ第1のイオンビーム6と第2のイオンビーム16を処理室11内に供給する為の装置である。
個々のイオンビーム供給装置について説明する。第1のイオンビーム供給装置2は、イオン源3を備えており、このイオン源3より第1のイオンビーム6が引出される。イオン源3より引出された第1のイオンビーム6には、様々なイオンが混在している。この内、所望のイオンのみをガラス基板10上へ照射させる為に、質量分析マグネット4と分析スリット5とを協働させ、所望のイオンとその他のイオンとの分離を行う。この分離は、イオン毎の質量数の違いを利用して、分析スリット5を所望のイオンのみが通過できるように質量分析マグネット4での第1のイオンビーム6の偏向量を調整することで行われる。
第2のイオンビーム供給装置12についても同様に、イオン源13より引出された第2のイオンビーム16を質量分析マグネット14と分析スリット15とを協働させて、所望のイオンのみがガラス基板10に照射されるように構成されている。
第1、第2のイオンビーム供給装置2、12から供給される第1、第2のイオンビーム6、16は、処理室11内に設けられたビームプロファイラー7、17によって、個々のイオンビームの長辺方向(Y方向)におけるビーム電流密度分布が測定される。このビームプロファイラーの例としては、公知のファラデーカップをY方向に沿って複数個配列した多点ファラデーやY方向に沿って移動可能な単一のファラデーカップを用いることが考えられる。
本発明において、イオンビーム供給装置2、12は同一の機能を有してもいいし、異なる機能を有していても構わない。さらに、質量分析マグネットや分析スリットを要しないタイプのイオンビーム供給装置でも良い。本発明では、ガラス基板上での各イオンビーム供給装置から供給されるイオンビームの照射領域が重なっているということが重要であり、その他の構成については、様々な変更が適用される。
第1の真空予備室22の大気側に位置するゲートバルブ20が開けられる。その後、ガラス基板10は大気側に設けられた図示されない搬送ロボットによって第1の真空予備室22内へ搬入される。この際、第1の真空予備室22と処理室11との間に位置するゲートバルブ18は、処理室11側が大気に開放されないように閉められている。
ガラス基板10が第1の真空予備室22内に搬入された後、ゲートバルブ20が閉められて、図示されない真空ポンプにより、第1の真空予備室22内が処理室11と同程度の真空度(圧力)となるまで真空排気される。
第1の真空予備室22内の真空度が処理室11と同程度となった後、ゲートバルブ18が開けられる。そして、ガラス基板10は、処理室11内へ搬入され、矢印Aとして記載される方向に第1のイオンビーム6、第2のイオンビーム16を横切るように処理室内を搬送される。これによってガラス基板10へのイオン注入処理が達成される。
その後、ガラス基板10は、ゲートバルブ19を通過し、第2の真空予備室23内に搬入される。ここで、ゲートバルブ19は、処理室11内でのガラス基板10へのイオン注入処理中、もしくは、イオン注入処理後の適当なタイミングで開放されるものとする。
第2の真空予備室23内へのガラス基板10の搬入が完了した後、ゲートバルブ19が閉められる。この際、第2の真空予備室23の大気側に位置するゲートバルブ21は閉められている。そして、第2の真空予備室23を密閉した上で、室内の雰囲気が大気圧と同程度となるまで、図示されない真空ポンプにより第2の真空予備室23の圧力調整がなされる。
第2の真空予備室23の室内が大気圧となった後、ゲートバルブ21が開けられて、大気側に設けられた図示されない搬送ロボットによって、ガラス基板10の大気側への搬出が行われる。
なお、ガラス基板10の処理室内での搬送方向を矢印Aとして描いたが、これに限定される必要はない。例えば、より多くのイオンをガラス基板10へ注入させる為に、ガラス基板10を処理室11内で何度も往復搬送させるようにしても良い。この場合、ガラス基板10は矢印Aとその反対方向に搬送されることになる。
また、第1、第2の真空予備室22、23をそれぞれ複数に増やしても良い。この場合、ゲートバルブ18と19もそれぞれの真空予備室に対応させる為に複数設けておく。このようにすると、複数の第1の真空予備室内や複数の第2の真空予備室内での圧力調整を別々に行うことが出来るようになる為、一方の真空予備室内の圧力調整している間に、圧力調整済みの別の真空予備室を利用してガラス基板の搬入、搬出を行うことが出来る。このような構成を利用すれば、ガラス基板の処理枚数を増加させることが出来る。
さらに、第1の真空予備室22と第2の真空予備室23とを、基板の搬送方向において対にしておいて、それらをZ方向に沿って複数組設けておく。また、各真空予備室組をガラス基板10が個別に搬送されるように、ガラス基板の搬送機構をZ方向に沿って複数用意しておく。その上で、それぞれの搬送機構を同期させ、Z方向に離間してX方向に沿って搬送される複数のガラス基板が各イオンビームを途切れなく連続的に横切るように搬送させることも考えられる。このようにすると、複数のガラス基板を連続処理出来るようになるので、ガラス基板の処理枚数を更に増加させることが出来る。なお、この場合、ガラス基板10の搬入出を行う真空予備室を、第1の真空予備室22とするか第2の真空予備室23とするかは、真空予備室の組毎に個別に設定すれば良い。
図2は図1の処理室11内部をZ方向から見た時の平面図である。
ガラス基板10の搬送機構の一例としては、図2に示されるようにガラス基板10を保持するホルダー24の下面に車輪を設けておき、この車輪が第1、第2の真空予備室22、23、処理室11内に配置された図示されないレール上を転がることでX方向に沿ってホルダー24を移動させることが可能となる。この場合、モーター等のホルダー24を移動させる為の動力源を、別途、用意しておく。ガラス基板10の往復搬送を考えた場合、動力源がモーターであれば正逆の回転が可能な構成にしておくことが望ましい。
Y方向において、第1、第2のイオンビーム6、16はガラス基板10よりも長い寸法を有している。その為、ガラス基板10が図2に示される矢印Aの方向に、第1の真空予備室22から第2の真空予備室23へ搬送された場合、最初に第1のイオンビーム6によってガラス基板10の全面に渡ってイオンビームの照射がなされる。その後、第2のイオンビーム16によって、ガラス基板10の全面に渡ってイオンビームの照射がなされる。図2の例では、ガラス基板の全面において、各イオンビームによる照射領域が重なっていることになる。なお、第1、第2のイオンビーム6、16のそれぞれを取り囲んでいる破線は、各イオンビーム供給装置から処理室11内へイオンビームを供給する為の供給経路(ビームライン)の外形を表している。
次に、ガラス基板へのイオン注入処理について詳述する。
イオン注入処理において、ガラス基板10上に形成されるイオン注入量の分布とイオンビームの電流密度分布とガラス基板の搬送速度とは、それぞれが密接に関連している。一般的に言えば、イオン注入量(ドーズ量とも言う)は、イオンビームの電流密度(電流量で表すこともある)に比例し、被照射対象物(ここではガラス基板)がイオンビームを横切る際の速度に反比例する。
例えば、ガラス基板10の全面に渡って形成されるイオン注入量の分布を略均一な分布にすることを目標とする。ガラス基板10の搬送速度が一定である場合、搬送方向と直交する方向におけるイオンビームのビーム電流密度分布を略均一にすれば、ガラス基板全面に渡ってのイオン注入量の分布も略均一となる。
より具体的に説明すると、ガラス基板全面に渡ってイオン注入量の分布を略均一にするには、図2でガラス基板10がおおよそイオンビームの短辺方向に沿って一定速度で移動する場合、イオンビームの長辺方向におけるビーム電流密度分布を略均一にしておけば良い。この場合、イオンビームの短辺方向におけるビーム電流密度分布は均一でなくても良い。ガラス基板10の搬送方向と略一致しているイオンビームの短辺方向におけるビーム電流密度分布のむら(不均一性)は、ガラス基板の搬送に伴って、積分されることになる。その為、たとえむらがあったとしても最終的にはある一定量の注入がなされることになるから、イオンビームの短辺方向におけるビーム電流密度の均一性は考慮する必要はない。また、ガラス基板10を搬送させた際に、ガラス基板上に照射されないイオンビームの両端部におけるビーム電流密度分布は、ガラス基板上での注入量分布に無関係である為、どのような分布であっても構わない。
上記のような手法で、ガラス基板へのイオン注入処理が行われているが、イオンビームの照射領域をガラス基板10上に重ね合わせて、イオン注入処理を行う場合には、次に示す事項を考慮しておく必要がある。
図3には第1、第2のイオンビーム6、16によるガラス基板10上でのイオン注入量の分布と電流密度分布の関係が示されている。
説明を簡単にするために、ガラス基板10の搬送速度は一定とし、第1、第2のイオンビーム6、16に対して調整されたビーム電流密度分布の結果が同一であったとする。そして、最終的にはガラス基板10の全体に渡って均一なイオン注入処理を行うことを目標とする。
図3に示すグラフの横軸はガラス基板上での位置を表し、縦軸はイオン注入量あるいはビーム電流密度を示す。横軸の原点0とB点との間の距離は、Y方向におけるガラス基板の寸法に一致している。また、上側のグラフにおいて、一点鎖線はガラス基板10の全体に渡って均一なイオン注入処理を行う為に目標とされる注入量分布を示し、実線はビーム電流密度分布が調整されたイオンビームによる注入量分布を示す。一方、下側のグラフにおいて、一点鎖線は目標とされる電流密度分布(目標分布)を示し、実線は各イオンビームにおいて調整がされたビーム電流密度分布を示している。
各イオンビーム供給装置にて目標となる注入量分布が達成されるようにビーム電流密度分布の調整が行われる。具体的なビーム電流密度分布の調整手法については後述するが、ビーム電流密度分布を調整し、寸分違わずに所望の分布を得るということは、不可能である。その為、通常は予め決められた許容範囲内に入るようにビーム電流密度分布の調整を行っている。例えば、この許容範囲としては、目標分布に対して3〜5%といった程度の範囲である。なお、ここではガラス基板の搬送速度を一定にしている為、調整されたビーム電流密度分布の形状(図3の下側グラフに記載の実線)とビーム電流密度分布が調整されたイオンビームによる注入量分布の形状(図3の上側グラフに記載の実線)とは、非常に似通った形になっている。
図4には最終的なガラス基板上での注入量分布が示されている。図4中の一点鎖線は、2本のイオンビームを足し合わせた場合に目標とされる注入量分布を示し、実線は、ビーム電流密度分布が調整された第1のイオンビーム6と第2のイオンビーム16による注入量分布を合計した注入量分布を示す。第1のイオンビーム6と第2のイオンビーム16の電流密度分布が同一である為、図3に示されるビーム電流密度分布が調整されたイオンビームによる注入量分布をちょうど倍したものになる。
個々のイオンビーム供給装置でのビーム電流密度分布を個別に調整し、それらのイオンビームによる注入量分布を合算すると、最終目標とする注入量分布からかなりのずれが生じる恐れがあり、場合によっては、許容範囲内を大きく超えることになる。
この例では2本のイオンビームに対して調整されたビーム電流密度分布を同一にしている。その為、各イオンビームにおけるビーム電流密度分布(あるいは注入量分布)が目標分布を下回る場所や上回る場所では、最終的には目標分布との差が2倍となる。例えば、ビーム電流密度が最大となるガラス基板上の位置(図3、図4中のM点)において、注入量とその目標分布との差に着目する。個々のイオンビームにおいてこの差がa(図3を参照)であるので、最終的な注入量分布(図4を参照)において、その位置における注入量と目標分布との差は2aとなる。
仮に実際の注入量と目標分布との差が±1.5aまでが許容範囲であるとする。個々のイオンビームに着目するとこの許容範囲内に収まっているので問題はないが、両イオンビームの注入量分布を足し合わせた場合、図4に示すように、ガラス基板上での位置がM点の場所では注入量が許容範囲を超えてしまうことになる。そうなると、もはや所定の注入量分布がガラス基板の全面に注入されているとは言えない。このような調整がなされたイオンビームを用いてガラス基板への注入が実施されると、注入不良を引き起こしてしまう。また、実際の注入がなされないとしても、各イオンビームにおけるビーム電流密度分布のデータから注入量分布を算出し、それらを足し合わせた最終の注入量分布データを用意しておいて、最終の注入量分布データが所定の許容範囲内から逸脱している場合には、最終の注入量分布データと目標分布とのずれ量に基づいて、各イオンビームの電流密度分布を再調整するといった手法が考えられる。但し、このような再調整を伴う手法は非効率的である。
本発明では、上記したような問題点を考慮し、次のようにして各イオンビームにおけるビーム電流密度分布の調整を行っている。
ビーム電流密度分布の調整について、図1と図5〜8を用いて説明する。
各イオンビーム供給装置におけるビーム電流密度分布の調整は、例えば、公知技術として知られているようなマルチフィラメントを有するイオン源を用いて、各フィラメントに流す電流量を増減させることでビーム電流密度分布を調整することを行っても良い。
具体的には、図1に示されるイオンビーム供給装置2、12のイオン源3、13をY方向に沿って複数のフィラメントが配列されたマルチフィラメントタイプのイオン源にしておく。その上で、ビームプロファイラー7、17によるY方向におけるイオンビームの測定領域と、各イオン源に設けられたフィラメントとを対応させておく。ここでの対応とは、例えば、ビームプロファイラーが15個のファラデーカップで構成されているとした場合、ビームプロファイラーをファラデーカップ3個で構成される5つの領域に分けるとともに、各領域に対してフィラメント2本(各イオン源において、フィラメントは全部でY方向に沿って10本あるとする。)を対応させておくといったことを意味する。
このような状態で、ビームプロファイラーによってビーム電流密度分布を計測した結果、目標分布を下回る測定領域があれば、その領域に対応するフィラメントに流す電流量を増加させて、ビーム電流密度を濃くするように操作し、反対に目標分布を上回る測定領域があれば、その領域に対応するフィラメントに流す電流量を減少させて、ビーム電流密度を薄くするといった操作を行う。このような操作によって、ビーム電流密度分布が目標分布の許容範囲内に入るように調整が行われる。なお、電流量の増減は1回の調整毎に所定量刻みで行うようにしておき、ビーム電流密度分布の調整とビームプロファイラーでの測定とを交互に繰り返して行い、最終的に目標分布にビーム電流密度分布を近づけるように調整しても良い。さらに、1回の調整毎に増減される電流量の刻み量は、調整中のビーム電流密度分布と目標分布との差が大きい場合には、刻み量を大きくし、調整中のビーム電流密度分布と目標分布との差が小さい場合には、刻み量を小さくするといった具合に、複数段に分けて刻み量を設けておいても良い。
なお、ビーム電流密度分布の調整として、マルチフィラメントを用いた手法について述べたが、これと異なる手法を用いても良い。
具体的には、マルチフィラメントタイプのイオン源の代わりに、イオンビームを供給する為の供給経路(ビームライン)に、Y方向に沿って異なる電位分布や磁場分布を形成させる電界レンズや磁界レンズを配置しておく。この場合、イオン源は1本のフィラメントを有する構成となる。
電界レンズについてはイオンビームをその短辺方向から挟むようにして一組の電極を設けておき、それがY方向に沿って複数組あるような構成のものが考えられる。そして、ビームプロファイラーでのビーム電流密度分布の測定結果に応じて、各組へ印加する電圧を異ならせ、電極組間に電位差を発生させる。そうすると、Y方向に配置された各電極組間を通過するイオンビームは電極組間の電位差に応じてY方向に沿って局所的に移動させられるようになるので、Y方向におけるイオンビームの電流密度分布を所定の目標分布に近づけるように調整することが出来る。
また、磁界レンズはイオンビームをその短辺方向から挟むようにして一組の磁極を設けておき、それがY方向に沿って複数組あるような構成のものが考えられる。そして、各磁極組に対して巻回されたコイルに流す電流量およびその向きは、磁極組毎に独立して調整可能にしておく。その上で、ビームプロファイラーでの測定結果に応じて、各磁極組に巻回されたコイルに流す電流を独立に調整する。そうすると、各磁極組を構成する一組の磁極の間を通過するイオンビームは各磁極組で発生される磁界の大きさおよび向きに応じて、Y方向に沿って局所的に移動させられるようになるので、Y方向におけるイオンビームのビーム電流密度分布を所定の目標分布に近づけように調整することが出来る。
なお、上記した電界レンズ、磁界レンズを用いた場合、ビームプロファイラーでの測定結果に応じて、局所的に電界、磁界を調整することになるが、考え方としてはマルチフィラメントタイプのイオン源を用いた電流密度分布の調整手法として説明したものと同じように考えることが出来る。つまり、ビームプロファイラーの所定領域(ビームプロファイラーとして複数のファラデーカップを用いる場合には、ファラデーカップの数で所定領域を特定しても良い)と、所定数の電極組もしくは磁極組とを対応させておけば良い。
再び図1を元に説明する。2つのイオンビーム供給装置のうち、まず第1のイオンビーム供給装置2によって発生される第1のイオンビーム6のビーム電流密度分布を調整する。その後、第2のイオンビーム供給装置12によって発生される第2のイオンビーム16のビーム電流密度分布を調整する。この順番は、あくまで一例であって、いずれのイオンビームから調整されるのかは、後述する制御装置でのデータ処理の手順との関係で、予め決められている。
イオン注入装置1にユーザーインターフェース26を介して、装置のオペレーターがイオン注入条件の設定を行う。この際、設定されたイオン注入条件は制御装置25へ送信される。注入条件としては、イオンビームのエネルギー、注入量分布、基板へのイオンビームの注入角度、基板の搬送速度といった様々な条件の設定がなされるが、本発明では注入量分布と基板の搬送速度に着目している。
制御装置25では、ガラス基板10の搬送速度と基板への注入量分布から、各イオンビーム供給装置にてガラス基板10に対してどのような注入量分布を実現させるのかについての決定がなされる。例えば、ガラス基板10の全面に渡って均一なイオン注入処理がなされるとともに、ガラス基板の搬送速度が一定であるとする。この際、イオンビーム供給装置の台数が2台であれば、全体の注入量を各装置で半分ずつに分けて分担させるといった具合に、各イオンビーム供給装置による注入量分布を決定しても良い。また、各イオンビーム供給装置の性能に違いがある場合には、性能差に応じて各装置での分担比率を変更させるといったようにしても良い。
さらに、制御装置25は、各イオンビーム供給装置からのイオンビームによって実現される注入量分布と各イオンビームを横切る際のガラス基板の搬送速度から、各イオンビームの長辺方向における電流密度分布を算出する。そして、算出された電流密度分布を各イオンビームの電流密度分布を調整する際の目標分布として、後述する制御装置8、9に送信する。
制御装置25から制御装置8へ第1のイオンビーム供給装置2に対するビーム電流密度分布の目標分布のデータが送信される(S1)。制御装置8は第1のイオンビーム供給装置2のビーム電流密度分布の調整を行う装置であって、制御装置25より送信された目標とされる電流密度分布のデータが蓄積される。
イオン源3の立ち上げは、ビーム電流密度分布の調整前に予めなされているものとする。その際、イオン源のフィラメントに流す電流は、予め適当な値に設定されている。例えば、イオン源がマルチフィラメントタイプのイオン源であれば、各フィラメントに流す電流を同一にしておく。この立ち上げに係る制御は、例えば制御装置8によってビーム電流密度分布の調整前に行われるようにしておいても良い。イオン源3から引出された第1のイオンビーム6は処理室11内に配置されたビームプロファイラー7でそのビーム電流密度分布が測定される。その後、ビーム電流密度分布の測定結果は、制御装置8に送信される(S2)。
制御装置25から目標分布のデータを受け取った後、制御装置8は目標とするビーム電流密度分布に合わせるべく、イオン源3に設けられた各フィラメント(ここでは、イオン源3をマルチフィラメントタイプのイオン源としている)に流れる電流量を増減させる(S3)。最終的に、目標分布の許容範囲内にビーム電流密度分布が入るまで、S2とS3の処理が繰り返し行われる。
なお、目標分布の許容範囲内にビーム電流密度分布が入ったかどうかの判断は、制御装置8により行われる。許容範囲に関するデータは予め制御装置8の中に蓄積させておいてもいいし、制御装置25より目標分布のデータを受け取る際に一緒に受信されるようにしておいても良い。さらに、許容範囲に関するデータは、ユーザーインターフェース26でオペレーターによって設定され、それが制御装置25を介して制御装置8に送信されるような仕組みにしておいても良い。この許容範囲に関するデータの取り扱いについては、後述する制御装置9においても同様とする。
調整中のビーム電流密度分布が目標分布の許容範囲内に入ったことが制御装置8で確認された後、制御装置8はその時のビーム電流密度分布のデータをビーム電流密度分布の調整結果のデータとして制御装置25へ送信する(S4)。
その後、制御装置25は、第1のイオンビーム供給装置2での電流密度分布の調整結果データを用いて、第2のイオンビーム供給装置12でのビーム電流密度分布の調整に関して制御装置9に本来送信する予定であった目標とされる電流密度分布のデータについての修正を行う。この修正に係る工程を本発明では、目標修正工程と呼んでいる。
図5〜6には、この修正についての一例が示されている。この例でも、説明を簡単にする為に、ガラス基板の搬送速度は一定とし、各イオンビーム供給装置において目標とする注入量の分布を同じにしている。そして、最終的にガラス基板上に形成される注入量の分布は、各イオンビーム供給装置における注入量分布を足し合わせたものとし、ガラス基板全面に渡って、均一な注入量分布を達成することを目標としている。
図5には第1のイオンビーム供給装置2から供給された第1のイオンビーム6による注入量分布とそのビーム電流密度分布が示されている。図の横軸、縦軸、実線、一点鎖線の意味するところは、先に説明した図3と同じである為、説明を省略する。
図6には第2のイオンビーム供給装置12から供給される第2のイオンビーム16によって実現されるべき注入量分布とそのビーム電流密度分布に関する目標分布が示されている。図6の上下のグラフに記載の一点鎖線は、それぞれ、制御装置25によって当初に設定された第2のイオンビーム16に対する注入量分布とビーム電流密度分布の目標を示している。そして、二点鎖線は、それぞれ、第1のイオンビーム6に対するビーム電流密度分布の調整が行われた後、これを考慮して修正された第2のイオンビーム16に対する注入量分布とビーム電流密度分布の目標を示している。
第2のイオンビーム供給装置12でのビーム電流密度分布の調整を行う際、第1のイオンビーム供給装置2でのビーム電流密度分布の調整結果を考慮せずに、始めに制御装置25にて第2のイオンビーム供給装置12の目標として決定されたビーム電流密度分布に基づいて調整を行った場合、先の図4に示したように、最終的に目標とする注入量分布から大きくずれてしまう可能性が高い。その為、図6に一点鎖線で示される当初の目標分布を二点鎖線で示される新たな目標分布に修正する。
二点鎖線で示される注入量分布は、図5に示される第1のイオンビーム6による注入量分布(実線)を、第1のイオンビーム6の注入量分布の目標分布(一点鎖線)に関して、反転させた分布となる。反転させる理由は次の通りである。
最終的なガラス基板上での注入量分布は、第1のイオンビーム6と第2のイオンビーム16による注入量分布を足し合わせたものとなる。その為、ビーム電流密度分布の調整がなされた第1のイオンビーム6による注入量分布が第1のイオンビーム6で目標とされる注入量分布を上回る場所に関しては、上回った分の注入量だけ第2のイオンビーム16による注入量を減らしておく。反対に、ビーム電流密度分布の調整がなされた第1のイオンビーム6による注入量分布が第1のイオンビーム6で目標とされる注入量分布を下回った場所に関しては、下回った分の注入量だけ第2のイオンビーム16による注入量を増やしておく。このようにすることで、第1のイオンビーム6による注入量分布と第2のイオンビーム16による注入量分布とが互い打ち消し合うことになり、最終的なガラス基板上での注入量分布を当初予定していたものに近い分布にすることが可能となる。
図6で注入量分布を反転させた後、この反転させた注入量分布を元にして、それを達成する為のビーム電流密度分布を算出する。算出されたビーム電流密度分布を当初の目標分布と置き変えることで目標分布を修正し、修正された目標分布に近づくように第2のイオンビーム16のビーム電流密度分布の調整がなされる。
なお、第1のイオンビームによる注入量分布を反転させることによって新たな目標分布を作り出すことについて述べたが、必ずしも完全に反転させる必要はない。例えば、最終的に注入量分布が許容範囲を満たすのであれば、完全に反転させなくても、その許容範囲を満たすような程度で、反転させておけば良い。
さらに、目標分布の修正については図7、図8に示される手法を用いても良い。
図7は図5同様に第1のイオンビーム供給装置2から供給された第1のイオンビーム6の注入量分布とビーム電流密度分布が示されている。図5との違いは、図7には調整されたビーム電流密度分布の平均値(図7の下側グラフの破線)と、ビーム電流密度分布が調整されたイオンビームによる注入量分布の平均値(図7の上側グラフの破線)とが、記載されている点である。ここで言う、平均値とは、Y方向において、ガラス基板上に照射されるイオンビームによる注入量分布を平均化させた値やガラス基板上に照射されるイオンビームのビーム電流密度分布を平均化させた値のことを指す。
この例では、これらの平均値を用いて目標分布を修正する。まず始めに図7に示されるビーム電流密度分布の目標分布(図7の下側グラフの一点鎖線)に近づけるように、第1のイオンビーム6の電流密度分布の調整がなされる。調整結果は、図7の下側のグラフに実線で示されている。そして、この電流密度分布の調整結果に基づき、注入量分布のデータが算出される。この算出されたデータが図7の上側のグラフに実線で示されるものとなる。
この時、注入量分布の平均値に着目すると、注入量分布の目標分布(図7の上側グラフの一点鎖線)に比べてαだけ高い値になっていることがわかる。ここでは、第2のイオンビーム16による注入量分布の目標分布を、第1のイオンビーム6による注入量分布の平均値が目標分布を上回った分だけ、下げてやるといった操作を行う。
詳述すると、図8に示されるように、第2のイオンビーム16での注入量分布の目標分布を本来の目標分布よりもα分だけ下がった値にし、その注入量分布を実現する為のビーム電流密度分布を算出する。そして、算出されたビーム電流密度分布を第2のイオンビーム16の電流密度分布の調整時の目標分布として用いる。このようにして、目標分布を修正しても良い。なお、図8において、図6と同じく、注入量分布およびビーム電流密度分布の当初の目標は一点鎖線で描かれており、修正後の注入量分布およびビーム密度分布の目標は二点鎖線で描かれている。
なお、ガラス基板10の搬送速度が一定である場合には、第1のイオンビーム6で調整されたビーム電流密度分布とその目標分布との差がβであったので、これと同じ分だけ第2のイオンビーム16に対するビーム電流密度分布の目標分布は下がることになる。その為、このような場合には、注入量分布のデータを用いて、ビーム電流密度分布の目標分布を算出するといった工程を省略し、第1のイオンビーム6のビーム電流密度分布の平均値と目標分布との差を算出し、この差に応じて、第2のイオンビーム16のビーム電流密度分布の目標分布を決定するようにすれば、目標分布の修正工程を手早く行うことが出来る。
先の図5、6の例では、ガラス基板上の全点に対して注入量分布の誤差を補正するように目標分布の修正を行っている。その為、図7、8の例と比較して、より正確に最終の注入量分布を目標とする注入量分布に近づかせることが出来る。一方、後で説明した図7、8の例では、目標分布の修正に平均値を用いている為、目標分布の修正が簡単に行える。さらに、修正された目標分布は複雑な形状とならないことから、ビーム電流密度分布の調整を簡単に済ませることが出来る。
制御装置25は、このようにして目標分布を修正して、修正後の目標分布を制御装置9に送信する(S5)。制御装置9はイオンビーム供給装置12のビーム電流密度分布の調整を行う装置であって、制御装置25より送信された電流密度分布の目標分布とその許容範囲に関するデータが蓄積されている。
イオン源13の立ち上げは、イオン源3と同様にして行われる。その際、イオン源13についての制御は、制御装置9によってビーム電流密度分布の調整前に行われるようにしておいても良い。
イオン源13から供給されたイオンビーム16は処理室11内に配置されたビームプロファイラー17でそのビーム電流密度分布が測定される。そして、ビーム電流密度分布の測定結果は、制御装置9に送信される(S6)。
制御装置25からの修正された目標分布のデータを受け取った後、制御装置9は目標とするビーム電流密度分布に合わせるべく、イオン源13に設けられた各フィラメント(ここでは、イオン源13をマルチフィラメントタイプのイオン源としている)に流れる電流量を増減させる(S7)。最終的に、目標分布の許容範囲内にビーム電流密度分布が入るまで、S6とS7の処理が繰り返し行われる。なお、目標分布の許容範囲内にビーム電流密度分布が入ったかどうかの判断は、制御装置9により行われる。
調整中のビーム電流密度分布が目標分布の許容範囲内に入ったことが制御装置9で判断された後、制御装置9はその旨を制御装置25へ送信する(S8)。この際、制御装置9から制御装置25へ送信される信号は、第2のイオンビーム16の調整済みのビーム電流密度分布のデータであって良い。一方、これとは別に、イオンビームに対してビーム電流密度分布の調整工程が全て終了したことを制御装置25に理解させるような特別な信号を用いても良い。
ビーム電流密度分布の調整工程が全て終了したことを受けて、制御装置25はガラス基板10の搬送を行う。具体的には、ガラス基板10を支持するホルダー24を駆動させる為に、その動力源となるモーターを回転させ、ガラス基板10の搬送を実施する。
一方で、X方向において、第1のイオンビーム6と第2のイオンビーム16との間隔が、ガラス基板10の寸法よりも広い場合、第1のイオンビーム6のビーム電流密度分布の調整終了後(図1中のS4で示される処理の後)、ガラス基板10を第1のイオンビーム6の長辺方向と交差する方向に搬送させても良い。この時、第2のイオンビーム16のビーム電流密度分布が調整中であれば、第1のイオンビーム6と第2のイオンビーム16との間で、ガラス基板10の搬送を一旦停止させ、ガラス基板10を待機させておく。そして、第2のイオンビーム16のビーム電流密度分布の調整終了後(図1中のS8で示される処理の後)、再び、ガラス基板10の搬送を開始させて、第2のイオンビーム16を横断させる。このようなにして、ビーム電流密度分布の調整工程の間に、ガラス基板10の搬送を制御装置25で実施出来るようにしておいても良い。なお、ここで言う、イオンビームの長辺方向と交差する方向とは、イオンビームの長辺方向と直交する方向だけでなく、イオンビームの長辺方向と略直交する方向も含めた意味で用いられている。これは略直交する方向であっても、ガラス基板上に、所定分布の許容範囲内でのイオン注入処理が実現出来るからである。
このような構成を用いると、全てのリボン状イオンビームにおけるビーム電流密度分布の調整が終わっていなくても、既に調整済みであるリボン状イオンビームを用いて、予めイオン注入処理を行っておくことが出来るので、その分、イオン注入処理全体に要する時間を短縮させることが出来る。
各制御装置間でのデータ送信、ユーザーインターフェースと制御装置とのデータ送信は、有線の電気通信回線を用いても良いし、無線通信で行うようにしても良い。
また、制御装置8、9、25は、単一の制御装置であっても構わない。単一の制御装置にすると、制御装置間での配線の引き回しが不要となる。
なお、第1の実施形態では、図1を元に説明したS1〜S8までの一連の処理をビーム電流密度分布調整工程と呼び、当該工程の間に制御装置25にて実施される目標分布の修正を目標修正工程と呼んでいる。
<第2の実施形態>
図9には、本発明のイオン注入装置に係る第2の実施形態における処理室内部の様子が示されている。図9のイオン注入装置に関するZX平面での様子は、図1と同じである。第1の実施形態との違いは、第1のイオンビーム6と第2のイオンビーム16のY方向における寸法が異なって点である。このことは、本実施形態を示す図9と第1の実施形態を示す図2とを比較すれば理解することが出来る。そして、このイオンビームの寸法の違いによって、ビーム電流密度分布の調整工程および目標修正工程が少し異なってくる。ただし、その他の点は、第1の実施形態と同じである為、ここでは第1の実施形態との違いを中心に説明する。
図9の場合、第1のイオンビーム6と第2のイオンビーム16によるガラス基板上での照射領域は、一部の領域でのみ重なっている。より詳細にガラス基板上での照射領域を見ると、第1のイオンビーム6のみが照射される領域(R1)と、第1のイオンビーム6と第2のイオンビーム16の両方が重ね合わせされる領域(R2)と、第2のイオンビーム16のみが照射される領域(R3)の3つの領域に分けることが出来る。これらの領域は、イオンビームの長辺方向であるY方向に沿って、ガラス基板10上にそれぞれR1〜R3の寸法をもって形成されている。
ここで各領域におけるビーム電流密度分布の調整手法について、図1を元に以下に説明する。図1を元に説明する理由は、第2の実施形態は第1の実施形態と制御装置等の構成が同じである為である。
ユーザーインターフェース26に入力されたイオン注入条件に応じて、制御装置25が各イオンビーム供給装置2、12から供給されるイオンビームのビーム電流密度分布の目標分布を決定する。ここで、各イオンビームに対してのビーム電流密度分布の目標分布については、ガラス基板上の領域によって異なっている。
例えば、ガラス基板10の全面に渡って均一なイオン注入処理を行う場合を考える。個々のイオンビームにおいて、R1とR3の領域におけるイオンビームの電流密度分布の目標分布は同じになるが、R2の領域における電流密度分布の目標分布は、R1とR3よりも小さくなる。これは、R2の目標値をR1やR3と同じにしていたのでは、個々のイオンビームを重ね合わせた時にR2の領域における注入量が他の領域に比べて大きくなってしまうからである。この点は、従来技術として挙げた特許文献1にも記載されている。
その為、制御装置25から制御装置8へ送信される第1のイオンビーム6についてのビーム電流密度分布の目標分布は領域R1とR2とで異なる分布になっている(S1)。
そして、制御装置25で決定されたビーム電流密度分布の目標分布に近づくように、第1のイオンビーム6の電流密度分布の調整がなさる(S2、S3)。
ビーム電流密度分布の調整が終了すると、その結果は制御装置8から制御装置25に送信される。ここで送信される調整結果は、R1とR2の2つの領域でのビーム電流密度分布の調整結果データでも良いが、R2の領域のみのデータであっても構わない。これは、R1の領域における調整結果データを用いて、第2のイオンビーム16のビーム電流密度分布の目標分布の修正を行わないからである。換言すれば、重ね合わせ領域に位置するビーム電流密度分布の調整データのみが、次のイオンビームに対する目標修正に用いられる。このような事情から、送信するデータ量を制限することが可能である。送信データ量を制限すると、データ伝送に係る時間が省略でき、その分だけデータ処理に係る時間を短縮することが可能となる。
次に、制御装置25によって第2のイオンビーム16のR2の領域に関するビーム電流密度分布の目標分布を修正する。修正されたR2の領域に関するビーム電流密度分布の目標分布と、予め用意されていたR3の領域に関するビーム電流密度分布の目標分布を制御装置9に送信する(S5)。ここで予め用意されていたR3の領域に関するビーム電流密度分布の目標分布とは、ユーザーインターフェース26からのイオン注入条件に応じて、制御装置25によって決定された目標分布である。
制御装置25からの目標分布のデータを元に、制御装置9によって第2のイオンビーム16に対するビーム電流密度分布の調整がなされる。調整終了後、制御装置9から制御装置25へビーム電流密度分布の調整工程が終了したことを示す信号が送信される(S6〜S8)。
そして、制御装置25は、制御装置9からのビーム電流密度分布の調整終了合図を受け、ガラス基板10の搬送を開始する。なお、この第2の実施形態でも第1の実施形態で述べたように、各イオンビームでのビーム電流密度分布の調整終了を受けて、ガラス基板10を搬送させるようにし、イオン注入処理全体に要する時間を短縮させるような構成としても良い。
第2の実施形態では、図1を元に説明したS1〜S8までの一連の処理をビーム電流密度分布調整工程と呼び、当該工程の間に制御装置25にて実施される目標分布の修正を目標修正工程と呼んでいる。
<第3の実施形態>
図10には、本発明のイオン注入装置に係る第3の実施形態が示されている。この実施形態においても、第2の実施形態と同様に、第1の実施形態との違いについて説明し、第1の実施形態と同一の構成についてはその説明を省略する。
第1の実施形態のイオン注入装置は2台のイオンビーム供給装置を備えていたが、この第3の実施形態のイオン注入装置は4台のイオンビーム供給装置を備えている。この例ではイオンビーム供給装置の台数が増えた点が、第1の実施形態と異なる。
具体的には、図1のイオン注入装置1の構成に加えて、図10に示される第3のイオンビーム供給装置32と第4のイオンビーム供給装置42とが追加されている。
追加として設けられた第3、第4のイオンビーム供給装置32、42の構成は、第1の実施形態で説明した第1のイオンビーム供給装置2の構成と同じである為、説明は省略する。また、図11には、図10のイオン注入装置31の処理室11内部をZ方向から見た時の様子が示されている。
第1の実施形態と比較して、イオンビーム供給装置の台数が増加したことに伴って、ビーム電流密度分布の調整工程および目標修正工程が異なっている。この点について以下に説明する。
第1のイオンビーム6、第2のイオンビーム16に対するビーム電流密度分布の調整については、第1の実施形態と同じである。なお、第2のイオンビーム16のビーム電流密度分布の調整が終了した後、制御装置9から制御装置25に対しては、第1の実施形態で述べたような全てのイオンビビームに対するビーム電流密度分布の調整が終了したことを示す信号の送信はなされない。これは、第3の実施形態において、ビーム電流密度分布の調整が行われるイオンビームの本数が4本であるからである。その為、ここでは第2のイオンビーム16に対するビーム電流密度分布の調整が終了した後、その時のビーム電流密度分布の調整結果のデータが、制御装置9から制御装置25へ送信される。
第3のイオンビーム36に対するビーム電流密度分布の調整については、第2のイオンビーム16に対してなされたビーム電流密度分布の調整と同じである。念の為、これについて説明しておく。
制御装置25で第2のイオンビーム16に対するビーム電流密度分布の調整結果データを受信し、第3のイオンビーム36に対するビーム電流密度分布の目標分布が修正される。その後、修正された目標分布が制御装置38へ送信される(S9)。
制御装置38は、修正された目標分布に応じて、第3のイオンビーム36のビーム電流密度分布が目標分布に近づくように、ビームプロファイラー37で第3のイオンビーム36のビーム電流密度分布をモニターしながら、イオン源33(この場合、イオン源33はマルチフィラメントタイプとする。)に備えられた複数のフィラメントに流す電流量を独立に増減させる(S10、S11)。
第3のイオンビームに対するビーム電流密度分布の調整が終了すると、その時のビーム電流密度分布の調整データが制御装置38から制御装置25に送信される(S12)。
制御装置25は、制御装置38からの調整結果データを受信し、第4のイオンビーム46に対するビーム電流密度分布の目標分布を修正する。
その後、修正された目標分布は制御装置25から制御装置39に送信される(S13)。そして、制御装置39はその修正データを元に第4のイオンビーム46に対するビーム電流密度分布の調整を行い、調整が終了した段階で、制御装置39から制御装置25に全てのイオンビームに対するビーム電流密度の調整が終了したことを示す信号を送信される(S14〜S16)。
その後、制御装置25はガラス基板10の搬送を開始させる。
なお、この第3の実施形態でも第1の実施形態で述べたように、各イオンビームでのビーム電流密度分布の調整終了を受けて、ガラス基板10を搬送させるようにし、イオン注入処理全体に要する時間を短縮させるような構成としても良い。
具体的には、X方向において、各イオンビームの間隔が、ガラス基板10の寸法よりも広い場合、第1のイオンビーム6のビーム電流密度分布の調整終了後(図10中のS4で示される処理の後)、ガラス基板10を第1のイオンビーム6の長辺方向と交差する方向に搬送させても良い。この時、第2のイオンビーム16のビーム電流密度分布が調整中であれば、第1のイオンビーム6と第2のイオンビーム16との間で、ガラス基板10の搬送を一旦停止させ、ガラス基板10を待機させておく。そして、第2のイオンビーム16のビーム電流密度分布の調整終了後(図10中のS8で示される処理の後)、再び、ガラス基板10の搬送を開始させて、第2のイオンビーム16を横断させる。その後、同様にして、第3のイオンビーム36と第4のイオンビーム46を横断するようにガラス基板10の搬送が行われる。このようなガラス基板10の搬送を制御装置25で実施出来るようにしておいても良い。
このような構成を用いると、全てのリボン状イオンビームにおけるビーム電流密度分布の調整が終わっていなくても、既に調整済みであるリボン状イオンビームを用いて、予めイオン注入処理を行っておくことが出来るので、その分、イオン注入処理全体に要する時間を短縮させることが出来る。
第3の実施形態として述べたように、第1の実施形態におけるイオンビーム供給装置の台数が増えた場合であっても問題なく、本発明が適用できることが理解される。なお、第3の実施形態では、図10を元に説明したS1〜S16の一連の処理をビーム電流密度分布調整工程と呼び、当該工程の間に制御装置25にて実施される目標分布の修正を目標修正工程と呼んでいる。
<第4の実施形態>
図12に第4の実施形態に係るイオン注入装置の処理室内部の様子が示されている。イオンビーム供給装置の台数を除いて、この実施形態は第2の実施形態と同一である。なお、第4の実施形態において、ZX平面でのイオン注入装置の構成は、図10に示されるものと同一である。
この実施形態では、イオンビーム供給装置の台数が増加したことで、第2の実施形態と比較して、ガラス基板上での重なり領域を構成するイオンビームの本数が異なる。
図12を元に説明すると、R1の領域においては第1のイオンビーム6の一部と第3のイオンビーム36の一部とが重ね合わされる。そして、R2の領域においては第1のイオンビーム6の一部と第2のイオンビーム16の一部と第3のイオンビーム36の一部と第4のイオンビーム46の一部がそれぞれ重ね合わされる。最後に、R3の領域において第2のイオンビームの一部と第4のイオンビーム46の一部とが重ね合わされる。
これに対して図9に示された第2の実施形態では、R1とR3の領域についてはイオンビームの重ね合わせがなされていなかった。このような違いから、ビーム電流密度分布の調整手法が異なるので、その点を説明する。なお、ガラス基板上でのイオンビームの照射領域R1〜R3は、図9で説明したのと同様に、イオンビームの長辺方向であるY方向に沿って、ガラス基板10上にそれぞれR1〜R3の寸法をもって形成されている。
制御装置等の構成は、図10に記載のイオン注入装置31のものと変わりはないので、これを元に説明する。ユーザーインターフェース26に入力されたイオン注入条件に応じて、制御装置25は
第1のイオンビーム6に対するビーム電流密度分布の調整目標となるデータを送信する(S1)。この際、R1の領域とR2の領域に対応するビーム電流密度分布の目標値(分布)のデータは異なっている。この理由は、実施形態2の部分で述べているので、ここでは詳しい説明は省略する。
その後、ビーム電流密度分布の目標分布に近づけくように、制御装置8によって第1のイオンビーム6に対するビーム電流密度分布の調整がなされる(S2、S3)。調整終了後は、調整結果が制御装置8より制御装置25に送信される(S4)。ここで制御装置25に送信される調整結果は、R1の領域とR2の領域に対応する電流密度分布の調整結果である。第2の実施形態では、R2の領域のみに対応する調整結果を送信しても良いことにしていたが、第4の実施形態では、それだけでは不十分である。第4の実施形態ではR1の領域でもイオンビームの重ね合わせがなされる為、R1とR2の両方に対応した電流密度分布の調整結果が送信されなければならない。
次に、第2のイオンビームについての電流密度分布の調整がなされる。第1のイオンビーム6のビーム電流密度分布の調整結果を受けて、制御装置25で第2のイオンビームについての電流密度分布の目標分布の修正を行う。ただし、ここで修正が行われるのは、R2の領域に対応するビーム電流密度分布のみである。
R3の領域に対応するビーム電流密度分布の目標分布は、ユーザーインターフェース26からのイオン注入条件の入力を受けて、制御装置25によって当初に決定された目標分布からの修正はなされない。これは、第1のイオンビーム6のビーム電流密度分布の調整において、R3の領域に対応するビーム電流密度分布の調整がなされていないからである。別の言い方をすると、R3の領域は先にビーム電流密度分布の調整がなされた第1のイオンビームと重ならないから為である。
一部が修正された第2イオンビームに対するビーム電流密度分布の目標分布を元に、第2のイオンビーム16のビーム電流密度分布の調整が行われ、調整終了後、調整結果のデータが制御装置9から制御装置25に送信される(S5〜S8)。
制御装置25は第3のイオンビーム36に対するビーム電流密度分布の目標分布の修正を行う。第3のイオンビーム36のR2の領域に対するビーム電流密度分布の目標分布に対しては、ビーム電流密度分布が調整された第2のイオンビーム16のR2に対応する調整結果を使用する。そして、第3のイオンビーム36のR1の領域に対するビーム電流密度分布の目標分布に対しては、ビーム電流密度分布が調整された第1のイオンビーム6のR1に対応する調整結果を使用する。
このようにして修正されたビーム電流密度分布の目標分布を用いて、第3のイオンビーム36の電流密度分布の調整を行い、調整終了後には、制御装置38から制御装置25へ調整結果を送信する(S9〜S12)。
その後、第3のイオンビーム36に対するビーム電流密度分布の調整と同じようにして、第4のイオンビーム46についてのビーム電流密度分布の調整を行う(S13〜S15)。そして、全てのイオンビームに対するビーム電流密度分布の調整が終了したことを制御装置25に知らせる(S16)。
その後、制御装置25はガラス基板10の搬送を開始させる。なお、この第4の実施形態でも第3の実施形態で述べたように、各イオンビームでのビーム電流密度分布の調整終了を受けて、ガラス基板10を搬送させるようにし、イオン注入処理全体に要する時間を短縮させるような構成としても良い。
第4の実施形態として述べたように、第2の実施形態におけるイオンビーム供給装置の台数が増えた場合であっても問題なく、本発明が適用できることが理解される。なお、第4の実施形態では、図10を元に説明したS1〜S16の一連の処理をビーム電流密度分布調整工程と呼び、当該工程の間に制御装置25にて実施される目標分布の修正を目標修正工程と呼んでいる。
<その他の変形例>
第2、第3の実施形態については第1の実施形態に対する相違点を、第4の実施形態については第2実施形態に対する相違点を中心に説明してきたが、大元である第1の実施形態と共通する構成に関しては、第1の実施形態で説明した様々な変形例が適用できることは言うまでもない。
本発明の第1〜4の実施形態では、ガラス基板の全面に渡って均一なイオン注入量分布を実現する例について述べてきたが、例えば公知技術である特開2005−235682号公報の図9に記載のごとく、ガラス基板の搬送方向に沿って注入量の分布を異ならせておいても良い。そのような注入量分布であったとしても、イオンビームの重ね合わせによって所定の注入量分布を実現する場合には、本発明が適用できることは言うまでもない。
また、本発明の第1〜4の実施形態では、処理室11を1つの部屋としているが、これをイオンビーム供給装置毎に、別々の部屋として設けても良い。その場合、各処理室間に基板を待機させる為の処理室を設けておいても良い。さらには、各処理室間や処理室と待機室間にゲートバルブを設けておき、各部屋の雰囲気を独立して調整可能にしておいても良い。
その上、本発明の第1〜4の実施形態では、ガラス基板の搬送速度を一定として説明してきたが、この搬送速度は可変にしても良い。例えば、イオンビーム毎にガラス基板の搬送速度を変更しても良いし、イオンビームをガラス基板が横断中にその搬送速度を特定の関数に従って可変にしても良い。
また、公知の技術として知られているようにマルチフィラメントに流す電流を調整したり、電界レンズに電極に印加する電圧を調整したり、磁界レンズのコイルに流す電流を調整したりして、イオンビームの長辺方向におけるビーム電流密度分布が、任意の不均一な分布となるように調整されていても構わない。イオンビームのガラス基板上での照射領域を重ね合わせて、ガラス基板上に所定の注入量分布を実現させる際のビーム電流密度分布の調整に係る本発明の要旨を逸脱しない範囲において、ガラス基板の搬送速度や電流密度分布がどのようなものであっても良いのはもちろんである。そして、前述した以外に、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良および変更を行っても良いのはもちろんである。
1.イオン注入装置
2.第1のイオンビーム供給装置
6.第1のイオンビーム
8.制御装置
9.制御装置
10.ガラス基板
12.第2のイオンビーム供給装置
16.第2のイオンビーム
25.制御装置

Claims (4)

  1. 複数本のリボン状イオンビームを処理室内に供給する複数のイオンビーム供給装置と、
    前記処理室内に配置され、前記複数本のリボン状イオンビームの長辺方向におけるビーム電流密度分布を個別に測定するビームプロファイラーと、
    前記イオンビーム供給装置毎に個別に設けられ、前記ビームプロファイラーで測定された前記ビーム電流密度分布を調整するためのビーム電流密度分布調整手段と、を備えたイオン注入装置において、
    前記複数本のリボン状イオンビームに対して、予め決められた順番で、前記プロファイラーによるビーム電流密度分布の測定結果に基づいて、イオンビーム毎に決められた所定の電流密度分布となるように前記ビーム電流密度分布調整手段を調整するビーム電流密度分布調整工程と、
    前記ビーム電流密度分布調整工程の間であって、かつ、2本目以降のイオンビームに対してビーム電流密度分布の調整がなされる前に、先にビーム電流密度分布の調整がなされたイオンビームにおけるビーム電流密度分布の調整結果を用いて、これからビーム電流密度分布の調整がなされるイオンビームにおいて調整目標とされる前記所定のビーム電流密度分布を修正する目標修正工程と、
    前記処理室内で、前記複数本のリボン状イオンビームの長辺方向と交差する方向に前記ガラス基板を搬送させるガラス基板搬送工程とを行うことを特徴とするイオン注入方法。
  2. 前記ガラス基板搬送工程は、前記ビーム電流密度分布調整工程の終了後に、行われることを特徴とする請求項1に記載のイオン注入方法。
  3. 前記複数本のリボン状イオンビームが調整される順番は前記ガラス基板の搬送方向と一致しており、個々のリボン状イオンビームに対するビーム電流密度分布の調整が終了したことを受けて、当該リボン状イオンビームの長辺方向と交差方向に前記ガラス基板の搬送が行われることを特徴とする請求項1に記載のイオン注入方法。
  4. 複数本のリボン状イオンビームを処理室内に供給する複数のイオンビーム供給装置と、
    前記処理室内に配置され、前記複数本のリボン状イオンビームの長辺方向におけるビーム電流密度分布を個別に測定するビームプロファイラーと、
    前記イオンビーム供給装置毎に個別に設けられ、前記ビームプロファイラーで測定された前記ビーム電流密度分布を調整するためのビーム電流密度分布調整手段と、を備えたイオン注入装置であって、
    更に、前記複数本のリボン状イオンビームに対して、予め決められた順番で、前記プロファイラーによるビーム電流密度分布の測定結果に基づいて、イオンビーム毎に決められた所定の電流密度分布となるように前記ビーム電流密度分布調整手段を調整するビーム電流密度分布調整工程と、
    前記ビーム電流密度分布調整工程の間であって、かつ、2本目以降のイオンビームに対してビーム電流密度分布の調整がなされる前に、先にビーム電流密度分布の調整がなされたイオンビームにおけるビーム電流密度分布の調整結果を用いて、これからビーム電流密度分布の調整がなされるイオンビームにおいて調整目標とされる前記所定のビーム電流密度分布を修正する目標修正工程と、
    前記処理室内で、前記複数本のリボン状イオンビームの長辺方向と交差する方向に前記ガラス基板を搬送させるガラス基板搬送工程とを行う制御装置を有していることを特徴とするイオン注入装置。
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