JP2011217616A - 漬物及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】冷凍保管ができる漬物を製造しようとする。
【解決手段】冷凍保管部20において調味液M6と一緒に冷凍保管された冷凍野菜M5Xを解凍する際に、冷凍された調味液M6Xを0〔℃〕以上にならないマイナス温度域で液化させることによって、冷凍野菜M5Yの表面の冷凍された水分に対して当該液化した調味液M6を浸透させることにより、破壊された野菜組織から内部の水分及び内部成分を外部に流出せずに内部に含んでなる完成漬物M6を製造することができる。
【選択図】図1
【解決手段】冷凍保管部20において調味液M6と一緒に冷凍保管された冷凍野菜M5Xを解凍する際に、冷凍された調味液M6Xを0〔℃〕以上にならないマイナス温度域で液化させることによって、冷凍野菜M5Yの表面の冷凍された水分に対して当該液化した調味液M6を浸透させることにより、破壊された野菜組織から内部の水分及び内部成分を外部に流出せずに内部に含んでなる完成漬物M6を製造することができる。
【選択図】図1
Description
本発明は漬物及びその製造方法に関し、特に浅漬けの風味をもつ漬物を製造する場合に適用して好適なものである。
野菜類の各種の漬物は日本人の基本的な食事において、古くから用いられており、通常市販されている漬物の分野では、生の野菜類に食塩及び調味料で味を付けたものを「漬物」と呼び、また低塩で薄味の味付けをしたものを「浅漬けの漬物」と呼んでいる。
この種の漬物の基本的な作り方は、以下順次、(a)生の野菜類を水で洗い、(b)陰干しして野菜類の水分を除去し、(c)適度な塩分を加えながら容器に入れ、(d)重しを野菜類の上に置き、(e)適度な時間をかけて野菜類の水分を除去しながら塩分が野菜類に染み込んでいく段階で漬物になって行く、といった手法を使っている。
ところが、従来、この種の漬物を市販しようとする場合、上記の基本的な作り方では長い賞味期限の漬物が得難いため、できるだけ長い賞味期限を維持しようとして食品添加物に頼ることにより、生の野菜類の味や養分が損われる傾向があったり、健康への心配の問題がある。
食品の長期保存の技術としては、真空調理技術や、加熱解凍技術が提案されている(特許文献1参照)が、これをそのまま、漬物の製造や、保存に適用することはできない。
漬物を短期又は長期に保存するためには、野菜類のもつ香りや味(風味)や、自然な歯ざわりの食感を失なわず、しかも野菜類を引き立てる塩分を含む調味料を調和させながら、身体に害を及ぼさずに、身体に美味しい漬物を維持できることが望ましい。
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、冷凍手法を活用しながら、「浅漬けの漬物」と同様の風味をもった漬物及びその製造方法を提案しようとするものである。
かかる課題を解決するため本発明においては、漬物にすべき対象野菜M1を冷凍保管部20において冷凍保管した後、解凍することにより完成漬物M6を得る漬物製造方法であって、冷凍保管部20において冷凍保管する前に対象野菜M1を前段冷凍部14で予め冷凍し、当該冷凍した冷凍野菜M5を、保管容器収納処理部15において、調味液M6と一緒に保管容器16に入れることにより冷凍保管品16Aを得、冷凍保管品16Aを冷凍保管部20において冷凍保管し、必要に応じて冷凍保管部20から取り出した冷凍保管品16Aを解凍対象品16Bとして解凍部21において解凍する際に、冷凍された調味液M6Xを0〔℃〕以上にならないマイナス温度域で固相状態から液相状態に液化することにより、冷凍野菜M5Xの野菜本体の表面部分にある冷凍した水分に対して当該液化した調味液M6を濃度差に基づく浸透圧によって浸透させ、当該解凍した解凍対象品16Bから完成漬物M6を得るようにする。
本発明によれば、冷凍保管部において調味液と一緒に冷凍保管された冷凍野菜を解凍する際に、冷凍された調味液を0〔℃〕以上にならないマイナス温度域で液化させることによって、冷凍野菜の表面の冷凍された水分に対して当該液化した調味液を浸透させることにより、破壊された野菜組織から内部の水分及び内部成分を外部に流出せずに内部に含んでなる完成漬物を製造することができる。
以下図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
(1)第1の実施の形態
図1において、1は全体として漬物製造工程を示し、生の野菜類でなる原料野菜M1を、漬込み洗浄部11に取り込む。
図1において、1は全体として漬物製造工程を示し、生の野菜類でなる原料野菜M1を、漬込み洗浄部11に取り込む。
この場合生の野菜類としては、野沢菜や高菜などの繊維が比較的強くかつ水分率が少ないものや、大根、胡瓜、白菜、人参、きゃべつ、瓜などの水分率が大きいもの(胡瓜の水分率は水分比率で97%以上、大根の場合は95%以上など)がある。
図1の実施の形態の場合、原料野菜M1として水分率が97%以上と特に大きい胡瓜を用いた場合を示す。
漬込み洗浄部11は、生の原料野菜から余分な水分を洗い落すための加工作業をする作業工程部分で、原料野菜M1を固定水(流水ではなく容器などに溜めた水をいう)を溜めた第1、第2及び第3漬込み洗浄槽11A、11B及び11Cを有する。
第1漬込み洗浄槽11Aの固定水の温度は「常温」に選定されており、また第2漬込み洗浄槽11Bの固定水は10〔℃〕に選定されており、さらに第3漬込み洗浄槽11Cの固定水は3〜1〔℃〕に選定されている。
かくして漬込み洗浄部11に取り込まれた原料野菜M1は、順次、第1漬込み洗浄槽11A、第2漬込み洗浄槽11B及び第3漬込み洗浄槽11Cにおいて、「常温」から10〔℃〕を経て、1〜3〔℃〕まで、全体の温度が低下するような処理を受ける。
ところで、漬込み洗浄された野菜類は、内部に保持できる水分量が漬込み水の温度に対応して決っている(温度が低くなれば少なくなる)ので、第1、第2及び第3漬込み洗浄槽11A、11B及び11Cにおいて順次漬込み洗浄される際に、原料野菜M1は、洗浄水の温度が低くなるに従って内部に保持できる水分が少なくなって行くことにより、洗浄水内に余分な水分を放出して行く。
かくして第3漬込み洗浄槽11Cにおける漬込み洗浄が終って、漬込み洗浄部11から漬込み洗浄野菜M2として取り出された野菜は、原料野菜M1から余分な水分が抜けて、その後の冷凍保存処理に適合するように体積内部の部分(これを野菜本体と呼ぶ)が一段と締った体形をもつことになる。
漬込み洗浄部11において漬込み洗浄処理が終わった漬込み洗浄野菜M2は、予冷冷蔵部12に入れられて、0〜3〔℃〕の温度で冷蔵され、これにより漬込み洗浄部11で付着した洗浄水と共に、さらに低くなった温度の分の野菜本体内の余分な水分が除去される。
かくして、予冷冷蔵部12において、入れられた漬込み洗浄野菜M2が冷蔵庫内部温度液とほぼ同じ温度域に達した時点で、野菜の体積内の余分な水分の排除が終って、予冷野菜M3として裁断加工部13に取り出される。
裁断加工部13は、取り出された予冷野菜M3(この実施の形態の場合胡瓜)を用途別に裁断加工して、裁断加工野菜M4として前段冷凍部14において前段冷凍処理される。
この実施の形態の場合、裁断加工野菜M4は、浅漬け胡瓜の漬物として市販されたとき、消費者が食べやすい形状及び大きさ(輪切り形状)に裁断される。
前段冷凍部14は、裁断加工野菜M4を全体として0〔℃〕以下の冷凍温度で冷凍することにより、当該裁断加工野菜M4が本来持っている野菜類の色素、養分などの内部成分及び水分をそのままの状態を維持したまま当該裁断加工野菜M4内に閉じ込める。
この実施の形態の場合、前段冷凍部14における冷凍は、裁断加工された野菜固体が固体別にばらばらな状態(物と物とが付着していない状態、これを一般にIQF凍結と呼ばれている)を行なう。
このようにして前段冷凍部14において冷凍された裁断冷凍野菜M5は、保管容器収納処理部15において、保管容器16内に、調味液保存部17から取り出された調味液M6と一緒に保管容器16内に真空密封される。
この実施の形態の場合、保管容器16は、ナイロン袋が用いられる。
調味液M6は、溶液中に塩分を含むと共に、一緒に封入された裁断冷凍野菜M5に対して味付けをするための糖味、酸味、苦味又は渋みのような味付け素材や、昆布、かつお、香味のような天然素材や、米ぬか、みそ類の加工素材を含む。
この調味液M6の保管容器16への封入作業の際は、冷凍状態にある裁断冷凍野菜M5を溶かさない状態において当該裁断冷凍野菜M5と接触又は付着させる。
保管容器収納処理部15において裁断冷凍野菜M5及び調味液M6を封入した保管容器16は、冷凍保管部20に冷凍保管品16Aとして保管される。
冷凍保管部20は冷凍保管品16Aを−18〔℃〕以下で冷凍しながら、これを長期、中期又は短期保管する。
かくして冷凍保管品16Aとして保管容器16内に封入された裁断冷凍野菜M5は、調味液M6が接触又は付着された状態で冷凍されることにより、裁断冷凍野菜M5の品質については変化を受けずに、そのままの冷凍状態を保持したまま、冷凍保管部20において冷凍保管される。
冷凍保管部20に冷凍保管されている冷凍保管品16Aは、必要に応じてユーザによって冷凍保管部20から取り出されて解凍部21において解凍対象品16Bとして解凍される。
この実施の形態の場合、解凍部21は、解凍対象品16Bを常温で、徐々に自然解凍し、解凍し終わった裁断冷凍野菜を保管容器16から取り出すことにより完成漬物M6を得る。
解凍部21は、解凍対象品16Bを解凍するときに、保管容器収納処理部15において保管容器16内に封入された裁断冷凍野菜M5と、これに接触又は付着させた調味液M6とが、冷凍状態から解凍する際に、先ず解凍された調味液M6が裁断冷凍野菜M5に浸透して行くことにより、冷凍野菜M5内の水分を外部に放出させない状態を維持しながら解凍された調味液M6を浸透させることによって完成漬物M6を得るような、次に述べる解凍調理を行う。
(2)解凍調理工程
冷凍保管部20において保管容器16内に冷凍保管された冷凍保管品16Aの状態は、図2(A)に示すように、保管容器16内に封入されている冷凍野菜部M5Xに対して冷凍状態にある冷凍調味液部M6Xが接触又は付着された状態にある。
冷凍保管部20において保管容器16内に冷凍保管された冷凍保管品16Aの状態は、図2(A)に示すように、保管容器16内に封入されている冷凍野菜部M5Xに対して冷凍状態にある冷凍調味液部M6Xが接触又は付着された状態にある。
この冷凍状態では、冷凍野菜部5Xの野菜は、胡瓜のように水分が97%以上にもなる場合は、常温時の体積の約1.1倍(水道水の冷凍膨張率とほぼ同じ程度)近くまで膨張している。
このような大きい膨張率で水分が膨張した場合、胡瓜や大根なども一様に、柔らかい野菜組織は膨張圧力に耐えることができずに組織の破壊を起こしている。
因に、冷凍時の組織の破壊(この実施の形態の場合、前段冷凍部14における冷凍作業時に生ずる)は破損率総量の30〔%〕程度であるのに対して、解凍時の破壊(この実施の形態の場合解凍部21における解凍作業時に生ずる)は破損率総量の70〔%〕であると考えられている。
しかしながら解凍時に組織の破壊が生じたとき、野菜類の体積内の本体部に含まれている食感や食味を呈する成分は冷凍された野菜組織の中に閉じ込められていて、破壊された組織の部分から外部に放出されることなく内部に保存されている。
このような冷凍野菜部M5Xの状態に対して、冷凍調味液部M6Xも冷凍状態にあるから、内部に調味成分を保持した状態で冷凍野菜部M5Xに接触又は付着した状態を維持している。
このような状態の冷凍保管品16Aが、解凍対象品16Bとして解凍部21に取り出されることにより解凍が始まると、図2(B)に示すように、解凍対象品16Bの温度が冷凍温度(−18〔℃〕以下)から0〔℃〕以上にはならない温度帯の温度(これをマイナス温度域又は−0〔℃〕の温度域と呼ぶ)にまで上昇すると、水より高い濃度の塩分を含む解凍調味液部M6Yが冷凍野菜部M5Yより早く固相状態から液相状態に溶けて液化する。
このとき冷凍野菜部M5Yの内部の本体部にある水分は冷凍野菜部M5Yの温度が−0〔℃〕以下の温度域にあるので、冷凍状態を継続している。
液化状態になった解凍調味液部M6Yは高い濃度をもっていることにより、冷凍野菜部M5Yに対して濃度差に基づく浸透圧が生ずるので、冷凍状態の野菜組織に浸透して行こうとするが、野菜組織は−0〔℃〕以下で冷凍状態にあるので当該液化した調味液は野菜組織に直接浸透することはできない。
かくして図2(B)の解凍調味液部M6Yが液化状態になった−0〔℃〕の温度域の状態においては、野菜本体部全体において調味液の影響を一度に受けることはないが、野菜本体部の表面にある冷凍状態の野菜の水分に対して、液化した調味液が作用して、当該表面にある冷凍した水分の内部に、液化した濃度が高い調味液が、浸透して溶け込むような作用を起す。
このとき、当該表面にある冷凍状態の水分は、調味液の浸透に基因して部分的に濃度が高くなることにより、解凍温度が低くなって−0〔℃〕の温度域で解凍し始める。
かくして、野菜本体部の表面の水分が解凍して調味液の浸透に基づいて濃度が高くなると、その内側にある水分(冷凍状態にある)に対して浸透するように作用する状態になり、表面において生じた解凍作用が当該内側の水分についても起る。
このようにして、本来−0〔℃〕の温度域では解凍しない野菜本体内の冷凍状態にある水分は、−0〔℃〕の温度域で液化した調味料の塩分によって外側から内側に向ってその状態が次第に変わることで、−0〔℃〕の温度域で液化して行く。
この結果、解凍部21に取り出された解凍対象部16Bにおいては、野菜体積内の濃度調整が表面から進行され、当該濃度調整作用が野菜の内部に進行して行くような現象が起きる図2(B)の−0〔℃〕の温度域において、野菜内部の水分は通常の水の解凍点(0〔℃〕)ではなく、液化した調味液の塩分と交わることで、野菜内部の水分が表面から徐々に塩水化することによりマイナス温度域(すなわち−0〔℃〕の温度域)の温度で、冷凍野菜部M5Yの解凍が順次起こる。
かくして解凍対象品16Bは、解凍が終了して常温に戻ったとき、図2(C)に示すように、液化した調味料の浸透を受けながら解凍した完成漬物M6が、浸透し切れずに残った残量調味液M6Zと共に保管容器16内に入った状態になり、これにより当該解凍調理工程を終了する。
このような解凍調理工程では、野菜体積内の本体部において、冷凍により1.1倍に膨張した内部の水分が液化することにより1.0倍に戻ると共に、これと同時に解凍調味液部M6Yが当該水分の冷凍及び解凍時に破壊された野菜組織に浸透して行くことにより、冷凍野菜部を外側から締めるような条件を引き起すと考えられ、その結果完成漬物M6の味と食感(歯ざわり)は、生の野菜である原料野菜M1と同様に再現されると考えられる。
以上の解凍調理工程によれば、冷凍保管部20に冷凍保管されていた冷凍保管品16Aが解凍対象品16Bとして解凍部21において解凍されたとき、解凍野菜部の本体に解凍調味液を浸透させるような調理を一挙になし得るような解凍調理処理が実現される。
(3)漬物製造手順
以上の構成において、完成漬物は、図3に示す漬物製造手順RT1に従って製造される。
以上の構成において、完成漬物は、図3に示す漬物製造手順RT1に従って製造される。
漬物製造手順RT1に入ると、まずステップSP1において、原料野菜M1を漬込み洗浄部11において漬込み洗浄する。
この漬込み洗浄によって、原料野菜M1は、常温から、10〔℃〕、3〜1〔℃〕の順に温度が低下する固定水で順次漬込み洗浄されることにより、原料野菜M1内の余分な水分を固定水内に放出するような処理を受ける。
漬込み洗浄部11における漬込み洗浄が終了すると、ステップSP2に移って、漬込み洗浄野菜M2を予冷冷蔵庫12において0〜3〔℃〕で予冷することにより、漬込み洗浄野菜M2から余分な水分や漬込み洗浄水を除去する。
続いて漬込み製造作業はステップSP3に移って、予冷野菜M3を裁断加工部13において用途別に裁断加工した後、ステップSP4において当該裁断加工野菜M4を前段冷凍部14において冷凍する。
このステップSP4における冷凍は、裁断加工野菜M4内部の水分及び成分を全体として冷凍することにより外部に放出させないような処理をするもので、冷凍時野菜内部に大量に含まれている水分(胡瓜の場合水分比率は97%以上)が凍ることにより体積比が1.1倍になるため野菜組織の破壊が生ずるが、当該内部の水分及びその成分は冷凍により外部に失われない状態に冷凍される。
漬物製造作業はステップSP5に移って、当該裁断冷凍野菜M5は保管容器収納処理部15においてナイロン袋でなる保管容器16内に入れられると共に、その冷凍状態を溶かさないように調味液M6が入れられた後真空密封されることにより、当該保管容器内に保管される。
その後漬物製造作業はステップSP6に移って真空密封された保管容器16を冷凍保管品16Aとして冷凍保管部20に冷凍保管される。
このとき冷凍保管部20は冷凍保管品16Aを−18〔℃〕以下で長期又は短期に冷凍保管する。
このとき冷凍保管品16Aの保管容器16内に密封されている冷凍野菜部M5X(図2(A))は前段冷凍部14においてすでに冷凍された状態のまま冷凍保管されるのに対して、保管容器収納処理部15においてこれに接触又は付着させるようにして真空密封された冷凍調味液部M6Xは冷凍野菜部M5Yに接触又は付着した状態で冷凍される。
冷凍保管部20に冷凍保管されている冷凍保管品は、ユーザが必要に応じて冷凍保管部20から解凍部21に解凍対象品16Bとして取り出してステップSP7において常温で解凍する。
このとき解凍対象品15Bは、冷凍調味液部M6X(図2(A))が水より高い濃度の塩分を含むことにより−0〔℃〕の温度域が解凍温度になることにより、図2(B)に示すように、冷凍状態にある冷凍野菜部5MYの周囲において先に液相に溶けた状態になる。
このとき液相に溶けた状態になった調味液は−0〔℃〕以下の温度領域であっても野菜本体が表面に保有する水分に浸透してこれと溶け合うようになっていく。
このとき野菜本体部の表面の冷凍状態にある水分は、溶け込んだ調味液の塩分濃度の影響を受けて−0〔℃〕以下の温度域で解凍し始める。
このように野菜本体の表面の水分が解凍すると、その塩分濃度が内側の水分より高くなるので、当該内側の冷凍状態にある水分に対して浸透圧が作用することにより、当該内側の水分に浸透して行く。
このようにして解凍対象品16Bの冷凍野菜部M5Yの水分は、−0〔℃〕の温度液内であるにも関わらず液化した解凍調味液部M6Yの塩分濃度に基づく浸透圧によって表面の水分から内側の水分に向かって徐々に解凍して行く。
このとき野菜本体部内の水分は外側からの浸透圧の影響を受けて内部の水分を外部に放出せずに徐々に解凍して行き、このことは野菜本体の体積を引き締めていくような現象が生じたことを意味し、この結果解凍後の野菜本体に対する味と食感(歯ざわり)が原料野菜と同様に維持されることになる。
かくして解凍部21において解凍対象品16Bの解凍が終了すると、図2(C)に示すように、調味液を内部に浸透した完成漬物M6の周りに浸透しきれずに残った残量調味液M6Zが存在するような状態になり、ステップSP8において当該漬物製造手順RT1を終了する。
以上の構成によれば、浅漬けの風味をもつ漬物を製造するにつき、冷凍保管手法を用いる際に、冷凍時及び解凍時に野菜の水分に基づいて生ずる野菜組織の破壊が生じても、当該野菜本体内の水分を、一度に外部に、放出させないように調味液を浸透させることにより、野菜部本体が本来もっている風味や滋養成分を失うことなく、しかも浅漬けの味と食感(歯ざわり)をもった漬物を容易に実現できる。
(4)比較例
(4−1)第1の比較例
冷凍状態の野菜類を、完全解凍後に調味料を加えるテストを行ったところ、解凍時に野菜類がもつ水分に高濃度の調味料が浸透して行くため、当該野菜類内部の水分が野菜類の外部に一度に流出し、これにより、野菜類が本来もっている味や食感が失われた。
(4−1)第1の比較例
冷凍状態の野菜類を、完全解凍後に調味料を加えるテストを行ったところ、解凍時に野菜類がもつ水分に高濃度の調味料が浸透して行くため、当該野菜類内部の水分が野菜類の外部に一度に流出し、これにより、野菜類が本来もっている味や食感が失われた。
(4−2)第2の比較例
通常市販の漬物と同等の漬物を冷凍状態にしたテストとして、調味液を漬物と同封したまま冷凍した後常温の自然解凍を行って試食をしたところ、解凍状態では野菜類の色素や養分が漬物と同封した調味液に流出して味及び食感を失った。
通常市販の漬物と同等の漬物を冷凍状態にしたテストとして、調味液を漬物と同封したまま冷凍した後常温の自然解凍を行って試食をしたところ、解凍状態では野菜類の色素や養分が漬物と同封した調味液に流出して味及び食感を失った。
この場合の原料野菜類の損傷は極端に大きい状態であった。
このような結果から、第2の比較例は、第1の比較例と同様に漬物としての食味食感をもつ状態ではないと判断される。
(4−3)第3の比較例
次の3つの製品A、B及びCについて以下に述べる試験を行った。
次の3つの製品A、B及びCについて以下に述べる試験を行った。
A:第1の実施の形態による漬物加工方法で製造した冷凍保管品。
B:通常市販商品の加工品として、低塩の調味料で薄味の味付けをした加工品の冷凍加工品。
C:上記Bの加工品から調味料を抜き取って冷凍した冷凍加工品。
B:通常市販商品の加工品として、低塩の調味料で薄味の味付けをした加工品の冷凍加工品。
C:上記Bの加工品から調味料を抜き取って冷凍した冷凍加工品。
(4−3−1)食味及び食感の官能評価
5名の評価人によって見た目、食感(歯ざわり)、食味及び香りを評価したところ、図4の官能評価が得られた。
5名の評価人によって見た目、食感(歯ざわり)、食味及び香りを評価したところ、図4の官能評価が得られた。
(4−3−2)目視評価
第1の実施の形態製品Aは、図5(A)に示す「解凍直後の状態」から、図6(A)に示す「30分経過後の状態」までの間において、色素の変化は特には生じなかった。
第1の実施の形態製品Aは、図5(A)に示す「解凍直後の状態」から、図6(A)に示す「30分経過後の状態」までの間において、色素の変化は特には生じなかった。
これに加えて、胡瓜の表面積が、図6(A)の「30分経過後の状態」の方が図5(A)の「解凍直後の状態」と比較して広くなった印象がある。
これに対して、製品Bの場合は、図5(B)に示す「解凍直後の状態」と比較して図6(B)に示す「30分経過後の状態」までの間に、色の透明感が出てきて水っぽい感じになった。
同様にして、製品Cの場合も、図5(C)の「解凍直後の状態」と比較して、図6(C)に示す「30分経過後の状態」の方が透明感が出てきた。
この目視評価の結果、第1の実施の形態の製品Aは製品B及び製品Cの比較例と比較して、製品の劣化がない目視評価が得られた。
図5及び図6については、参考図1及び2のカラー写真を参照されたい。
(4−3−3)重量変化
製品A、製品B及び製品Cについて、「6切れ20g」の漬物の解凍時歩留まり計測値を、液切り1分後の計測で求めて比較したところ、図7に示すように、第1の実施の形態の製品Aは解凍前と比較して「2g」増加した。
製品A、製品B及び製品Cについて、「6切れ20g」の漬物の解凍時歩留まり計測値を、液切り1分後の計測で求めて比較したところ、図7に示すように、第1の実施の形態の製品Aは解凍前と比較して「2g」増加した。
このことは、第1の実施の形態の製品Aは、解凍時に調味液を吸い込んだ現象が生じたことを表している。
これに対して、製品Bでは解凍前において「20g」であったものが解凍後において変化がなかった。
さらに製品Cについては、解凍前「20g」のものが「17g」に減少しており、このことは解凍時の離水度が高く、製品の品質の変化が激しいことを表した。
(4−3−4)ドリップ量の実証及び加重変化度の検証
「6切れ20g」の製品A、B及びCについて、解凍後1分間の間ステンレス製ざるによって液分を切った後、計量し、その後「6切れ」分の胡瓜スライスを重ねてそれぞれガラス容器に入れ、その上に「15g」の分銅を置いて冷蔵庫内温度5〔℃〕で48時間の放置テストを行った。
「6切れ20g」の製品A、B及びCについて、解凍後1分間の間ステンレス製ざるによって液分を切った後、計量し、その後「6切れ」分の胡瓜スライスを重ねてそれぞれガラス容器に入れ、その上に「15g」の分銅を置いて冷蔵庫内温度5〔℃〕で48時間の放置テストを行った。
冷蔵庫内温度5〔℃〕で48時間放置した後の第1の実施の形態の製品Aの状態は、図8の「A」に示すように、形のくずれがなく非常によい形状状態を維持している。
これに対して製品B及び製品Cは図9の「B」及び「C」に示すように、変形が激しく、漬物であるとは言いにくい状態に変形した。
図9の「B」及び「C」に示すように、製品B及びCの胡瓜スライスは、共に肉厚が薄く、かつ横に伸びているのに対して、第1の実施の形態の製品Aは、図9の「A」に示すように、スライス時の漬物の形状と変わらない形状を維持している。
重量変化については、図9に示すように、製品Aは解凍前「20g」が「20.5g」に増えており、このことは解凍時に調味液を吸い込んでいるが、加重が加えられたことにより形の変化はあまりない状態でドリップを吐き出したものと考えられる。
これに対して製品Bは、解凍前「20g」から「18.5g」に変化し、このことは解凍時に加重が加えられたことにより、形状が薄くなるような変化をした際に、多量のドリップを吐き出したことを意味する。
さらに製品Cは、解凍前「20g」から「14.0g」に変化し、このことは加重がかけられたことにより形状を大きく変形すると共に、大量なドリップを吐き出したことを意味している。
図8及び図9の実験により第1の実施の形態に係るA製品は、加重がかけられても形状の変化が小さくかつ重量も減少しない漬物が得られたことを意味し、このことは味覚や歯ざわりがよい漬物が実現できたことを表している。
48時間放置後のドリップの状態は、図10に示すように、第1の実施の形態の製品Aは、量が少なくかつ透明度が高く、このことは解凍時の漬物本体の品質が安定していることを意味する。
これに対して、製品Bは量が多く、かつ濁りがあり、また製品Cはさらにドリップ量が多く、かつ特に濁りが強い。
このことは、製品B及びCは48時間放置による品質の変化が激しいことを意味している。
図8及び図10については、参考図3及び4のカラー写真を参照されたい。
(4−3−5)変形度
図11、図12及び図13は、第1の実施の形態の製品A、他の製品B及び製品Cの変形度の試験結果を示すもので、横長状に切りとり成型した漬物の一端を、先端が水平方向に延長するように片持ち支持して48時間放置したところ、製品Aは先端の垂れ下りが小さいことにより横方向に強い強度を示した(図11)のに対して、製品B及び製品Cは先端が下方に大きく垂れ下がった(図12及び図13)。
図11、図12及び図13は、第1の実施の形態の製品A、他の製品B及び製品Cの変形度の試験結果を示すもので、横長状に切りとり成型した漬物の一端を、先端が水平方向に延長するように片持ち支持して48時間放置したところ、製品Aは先端の垂れ下りが小さいことにより横方向に強い強度を示した(図11)のに対して、製品B及び製品Cは先端が下方に大きく垂れ下がった(図12及び図13)。
このことは、製品Aの硬度の劣化が小さいのに対して、製品B及びCの硬度の劣化は大きく、かくして第1の実施の形態の製品Aが良い歯ざわり感を維持していることを表している。
図11、図12及び図13については、参考図5、6及び7のカラー写真を参照されたい。
(4−3−6) 以上の実験結果から、製品B及び製品Cは漬物としての価値感が非常に低く、当該漬物を冷凍保管することは困難であると判断できる。
これに対して、第1の実施の形態の製品Aは、冷凍による品質の変化が小さく、しかも食感及び歯ざわりが良好であることから、短期、中期又は長期の冷凍保管に適性を持っていると判断できる。
(5)他の実施の形態
(5−1) 上述の実施の形態においては原料野菜として胡瓜を用いた場合について述べたが、本発明はこれに限らず、胡瓜と同様に水分率が大きい、大根、白菜、人参、きゃべつ、瓜などの野菜類は勿論のこと、水分率が小さい、野沢菜や高菜などの野菜類を用いても、上述の場合と同様の作用効果を得ることができる。
(5−1) 上述の実施の形態においては原料野菜として胡瓜を用いた場合について述べたが、本発明はこれに限らず、胡瓜と同様に水分率が大きい、大根、白菜、人参、きゃべつ、瓜などの野菜類は勿論のこと、水分率が小さい、野沢菜や高菜などの野菜類を用いても、上述の場合と同様の作用効果を得ることができる。
(5−2) 上述の実施の形態においては、胡瓜1種類を漬物加工する場合について述べたが、加工すべき生の原料野菜としては1種類に限らず、複数種類を同時に混ぜ合わせるようにしてもよい。
(5−3) 上述の実施の形態においては、保管容器16として真空パックをするナイロン袋を用いた場合について述べたが、保管容器の形態としてはこれに限らず、例えば箱型やチューブ型などの種々の形態のものを用いてもよく、要は前段冷凍した冷凍野菜に対して調味液を接触又は付着させた状態で封入して冷凍保管品16Aとして冷凍できるような態様のものであればよい。
(5−4) 上述の実施の形態においては、保管容器16に封入する冷凍野菜として、予め用途に応じて裁断したものを入れるようにしたが、本発明はこれに限らず裁断をせずに保管容器に封入するようにしても上述の場合と同様の作用効果を得ることができる。
(5−5) 上述の実施の形態においては、製造処理工程をすべて手作業で行うようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、一部又は全部を例えばロボットなどの機械作業によって行うようにしてもよい。
(5−6) 上述の実施の形態においては、解凍部21は冷凍保管部20から取り出した冷凍保管品16Aを解凍対象16Bとして室温によって自然解凍させるようにしたが、本発明はこれに限らず、流水による解凍をするなど、要は図2について上述したように、解凍時に、−0〔℃〕の温度域で、液化した解凍調味液部M6Yが冷凍野菜部M5Yの冷凍した水分を表面から内側に塩水化して行くように解凍して行く、ようにすれば良い。
本発明は、pH調整剤、日持向上剤などの食品添加物を使用することなく、短期又は長期保管ができる漬物を製造することができるので、野菜類を「もったいなく」消費ロスしたり、野菜類のもつ養分、味、香りを失わせたりすることがない漬物を、例えば福祉関連施設などの、丁寧で細かい作業による物作りをする作業者に一部又は全工程を分担させることにより、地域産業育成の可能性や世の中の活性化に利用することができる。
1……漬物製造工程、11……漬込み洗浄部、11A、11B、11C……第1、第2、第3漬込み洗浄槽、12……予冷冷蔵部、13……裁断加工部、14……前段冷凍部、15……保管容器収納処理部、16……保管容器、16A……冷凍保管品、16B……解凍対象品、17……調味液保存部、20……冷凍保管部、21……解凍部。
Claims (8)
- 漬物にすべき対象野菜を冷凍保管部において冷凍保管した後、解凍することにより完成漬物を得る漬物製造方法であって、
上記冷凍保管部において冷凍保管する前に上記対象野菜を前段冷凍部で予め冷凍し、
当該冷凍した冷凍野菜を、保管容器収納処理部において、調味液と一緒に保管容器に入れることにより冷凍保管品を得、
上記冷凍保管品を上記冷凍保管部において冷凍保管し、
必要に応じて上記冷凍保管部から取り出した上記冷凍保管品を解凍対象品として解凍部において解凍する際に、
上記冷凍された調味液を、0〔℃〕以上にならないマイナス温度域で固相状態から液相状態に液化することにより、上記冷凍野菜の野菜本体の表面部分にある冷凍した水分に対して当該液化した上記調味液を濃度差に基づく浸透圧によって浸透させ、
当該解凍した上記解凍対象品から完成漬物を得る
ことを特徴とする漬物製造方法。 - 上記調味液は塩分を含み、上記冷凍保管部において上記冷凍保管品が冷凍保管されたとき、上記冷凍野菜に接触又は付着した状態で冷凍される
ことを特徴とする請求項1に記載の漬物製造方法。 - 上記0〔℃〕にならないマイナス温度域において、上記野菜本体の表面部分にある水分に上記液化した調味液が当該表面部分にある水分の塩分濃度を高めることにより、当該表面部分の内側にある冷凍した水分に対して濃度差に基づく浸透圧によって浸透する
ことを特徴とする請求項2に記載の漬物製造方法。 - 上記0〔℃〕にならないマイナス温度域において、上記液化した調味液が上記表面部分にある冷凍した水分から内部にある冷凍した水分に対して順次浸透圧に基づき浸透して行くことにより、上記野菜本体において冷凍した上記水分の解凍時に、破壊された野菜組織から外部に放出される可能性がある内部の水分の放出を抑制してなる解凍対象品を得る
ことを特徴とする請求項2に記載の漬物製造方法。 - 上記破壊された野菜組織から外部に放出される可能性がある上記内部の水分の放出を抑制してなる上記解凍対象品を上記解凍部において解凍することにより、内部に上記対象野菜が本来もっている内部成分を含む上記完成漬物を得る
ことを特徴とする請求項3に記載の漬物製造方法。 - 上記前段冷凍部で冷凍する前に、生の野菜類でなる原料野菜を常温以下の温度で漬込み洗浄することによって上記原料野菜の内部の余分な水分を外部に放出させた後、上記対象野菜として上記前段冷凍部で冷凍する
ことを特徴とする請求項1に記載の漬物製造方法。 - 漬物にすべき対象野菜を冷凍保管部において冷凍保管された後、解凍されることにより得られる漬物であって、
上記冷凍保管部において冷凍保管する前に上記対象野菜を前段処理部で予め冷凍された後、調味液と一緒に保管容器に入れられて冷凍保管品として上記冷凍保管部において冷凍保管され、当該冷凍保管部から取り出された上記冷凍保管品が解凍対象品として解凍部において解凍される際に、冷凍された上記調味液が0〔℃〕にならないマイナス温度域において解凍されて上記対象野菜の冷凍された水分に浸透することにより、内部に上記対象野菜が本来もっている内部成分と、上記調味液の調味成分とを内部に含んでなる
ことを特徴とする漬物。 - 漬物にすべき対象野菜を冷凍保管部において冷凍して保管される冷凍保管品であって、
上記冷凍保管部において冷凍して保管する前に上記対象野菜を前段処理部で予め冷凍された後、調味液と一緒に保管容器に入れられて上記冷凍保管品として上記冷凍保管部において冷凍保管され、上記冷凍保管品は、上記冷凍保管部から取り出されて解凍対象品として解凍部において解凍される際に、冷凍された上記調味液が0〔℃〕にならないマイナス温度域において解凍されて上記対象野菜の冷凍された水分に浸透することにより、内部に上記対象野菜が本来もっている内部成分と、上記調味液の調味成分とを内部に含んでなる完成漬物となる
ことを特徴とする冷凍保管品。
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JP2018078808A (ja) * | 2016-11-14 | 2018-05-24 | 株式会社サンティージャパン | 梅干しの製造方法 |
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2010
- 2010-04-05 JP JP2010086875A patent/JP2011217616A/ja active Pending
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