JP2011215492A - 表面微細凹凸体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の表面微細凹凸体の製造方法は、加熱収縮性樹脂フィルムの少なくとも片面に樹脂溶液を塗工し、表面が平滑な硬質層を設ける硬質層形成工程と、該硬質層形成工程の後、加熱収縮性樹脂フィルムを加熱収縮させて前記硬質層を折り畳むように変形させる変形工程とを有し、前記樹脂溶液に含まれる樹脂として、ラジカル溶液重合により重合して得た樹脂で、加熱収縮性樹脂フィルムを構成する樹脂よりもガラス転移温度が高いものを用いる。
【選択図】なし
Description
近年、薄型ディスプレイの大画面化あるいは大量生産化が進んでおり、光学素子に使用される表面微細凹凸体についても大面積化、大量生産化が図られてきた。また、光学素子に使用される表面微細凹凸体においては、薄型ディスプレイの画質を向上させるため、表面の凹凸構造の精度を向上させることが求められていた。さらに、凸部のピッチや凸部の高さと幅との比率などを所望の値に容易に調整できるものが求められていた。
これら要求に対し、特許文献1,2では、加熱収縮性樹脂フィルムの少なくとも片面に硬質の樹脂を含む塗工液を塗工して硬質層を形成した後、加熱収縮性樹脂フィルムを加熱収縮させて表面微細凹凸体を製造する方法が提案されている。
そこで、本発明は、凹凸パターンのピッチが小さい表面微細凹凸体を容易に且つ低コストで製造できる表面微細凹凸体の製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明者らは、硬質層を薄くすると、ピッチを小さくできることを見出した。さらに、硬質層を薄くするためには、硬質樹脂を含む塗工液を薄く塗工する必要があり、薄く塗工するためには、塗工液での相分離を抑制する必要があることを見出した。
以上のことから、相分離の原因になる不純物が少なく、且つ、重合分散度が大きく、しかも低価格の硬質樹脂について検討し、以下の表面微細凹凸体の製造方法を発明した。
[1]加熱収縮性樹脂フィルムの少なくとも片面に樹脂溶液を塗工し、表面が平滑な硬質層を設ける硬質層形成工程と、該硬質層形成工程の後、加熱収縮性樹脂フィルムを加熱収縮させて前記硬質層を折り畳むように変形させる変形工程とを有し、
前記樹脂溶液に含まれる樹脂として、ラジカル溶液重合により重合して得た樹脂で、加熱収縮性樹脂フィルムを構成する樹脂よりもガラス転移温度が高いものを用いることを特徴とする表面微細凹凸体の製造方法。
[2]加熱収縮性樹脂フィルムへの樹脂溶液の塗工量を1〜100mg/m2にする[1]に記載の表面微細凹凸体の製造方法。
本発明の表面微細凹凸体の製造方法で得られる表面微細凹凸体の一実施形態について説明する。
図1及び図2に、本実施形態の表面微細凹凸体を示す。本実施形態の表面微細凹凸体10は、基材11と、基材11の片面に設けられた硬質層12とを備え、硬質層12が凹凸パターン12aを有するものである。
また、Tg2が400℃を超えるような樹脂を使用することは経済性の面から必要に乏しく、Tg1が−150℃より低い樹脂は存在しないことから、(Tg2−Tg1)は550℃以下であることが好ましく、200℃以下であることがより好ましい。
表面微細凹凸体10を製造する際の加工温度における基材11と硬質層12とのヤング率の差は、凹凸パターン12aを容易に形成できることから、0.01〜300GPaであることが好ましく、0.1〜10GPaであることがより好ましい。
ここでいう加工温度は、例えば、後述する表面微細凹凸体10の製造方法における熱収縮時の加熱温度のことである。また、ヤング率は、JIS K 7113−1995に準拠して測定した値である。
硬質層12の厚さは均一であることが好ましい。硬質層12の厚さが均一であれば、ピッチの均一性が高くなる。
また、基材11と硬質層12との間には、密着性の向上やより微細な構造を形成することを目的として、プライマー層を形成してもよい。
一方、最頻ピッチAは、凹凸パターン12aを容易に形成できる点から、0.01μm以上であることが好ましい。
まず、表面光学顕微鏡により凹凸パターンの上面を撮影し、測定した凹凸構造の画像をグレースケール画像に変換した後、2次元フーリエ変換を行う。このフーリエ変換像の頻度(ZF)のスムージングを行い、フーリエ変換像の中心部以外で最大頻度を示す位置(XFmax,YFmax)を求める。そして、最頻ピッチA=1/{√(XFmax 2+YFmax 2)}の式から最頻ピッチAを求める。なお、最頻ピッチは、各ピッチの平均値とみてもよい。
配向度については、まず、上記で得たフーリエ変化像を利用し、XF軸上に最大輝度部分が一致するようにθ回転したフーリエ変換像を作成する。次いで、(XFmax,YFmax)を通るYF軸に平行補助線Y’Fを引き、補助線Y’Fを横軸とし、補助線Y’F上の輝度(ZF軸)を縦軸としたY’F−ZF図を作成する。次いで、Y’F−ZF図のY’F軸の値を最頻ピッチの逆数(1/A)で割ったY”F-ZF図を作成し、このY”F-ZF図からピークの半値幅W(頻度が最大値の半分になる高さでのピークの幅)を求める。この半値幅は配向度を表す。配向度が大きい程、蛇行してピッチがばらついていることを表す。
配向度を1.0以下にするためには、表面微細凹凸体10を製造する際に必要な圧縮応力の作用のさせ方を適宜選択すればよい。
また、配向度は、製造上の観点からは、0.05以上であることが好ましい。
また、平均深さBは、凹凸パターン12aを容易に形成できる点から、好ましくは最頻ピッチAを100%とした際の500%以下である。
本発明の表面微細凹凸体の製造方法の一実施形態として、図1,2の表面微細凹凸体を製造する方法について説明する。
本実施形態の表面微細凹凸体の製造方法は、加熱収縮性樹脂フィルムの片面の全部に、表面が平滑な樹脂製の硬質層(以下、表面平滑硬質層という。)を設けて積層シートを形成する硬質層形成工程と、加熱収縮性樹脂フィルムを加熱収縮させて硬質層を折り畳むように変形させる変形工程とを有する方法である。
ここで、表面平滑硬質層とは、JIS B0601に記載の中心線平均粗さ0.1μm以下の層である。
加熱収縮性樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート系シュリンクフィルム、ポリスチレン系シュリンクフィルム、ポリオレフィン系シュリンクフィルム、ポリ塩化ビニル系シュリンクフィルム、ポリ塩化ビニリデン系シュリンクフィルムなどを用いることができる。
本実施形態では、加熱収縮性樹脂フィルムとして、1軸延伸フィルムを用いる。1軸延伸は、縦延伸、横延伸のいずれであってもよい。
また、加熱収縮性樹脂フィルムは、延伸倍率1.1〜15倍で延伸されていることが好ましく、1.3〜10倍で延伸されていることがより好ましい。
加熱収縮性樹脂フィルムの収縮率は20〜90%であることが好ましく、35〜75%であることがより好ましい。ここで、収縮率とは、(収縮率[%])={(収縮前の長さ)−(収縮後の長さ)}/(収縮前の長さ)×100である(ただし、長さは収縮方向の長さ)。収縮率が20%以上であれば、表面微細凹凸体をより容易に製造できる。しかし、収縮率90%以下の加熱収縮性フィルムは作製困難である。
加熱収縮性樹脂フィルムは、表面平滑硬質層を容易に形成できることから、表面が平坦であることが好ましい。ここで、平坦とは、JIS B0601による中心線平均粗さが0.1μm以下のことである。
ここで、ラジカル溶液重合とは、溶媒中、ビニル基を有するビニル系単量体をラジカル重合することである。また、樹脂溶液は、第2の樹脂の溶液である。
さらに、スチレン系単量体としては、例えば、ポリスチレン、α−メチルスチレン等が挙げられる。
アクリル系単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、無水フマル酸等のカルボキシル基含有単量体、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等の水酸基含有単量体などが挙げられる。なお、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートおよびメタクリレートの総称である。
溶媒としては、例えば、酢酸エチル、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、アセトン、メチルエチルケトンなどが挙げられる。
ラジカル重合開始剤は、単独で開裂して遊離ラジカルを生成するものである。生成したラジカルはビニル基への付加反応および水素引き抜き反応をすることで重合反応を起こす。ラジカル重合開始剤としては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ジ(t−ブチルパーオキシ)ブタン、n−ブチル4,4−ジ−(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ジ(4,4−ジ−(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキシル)プロパン、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジ(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ヘキシルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2.5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジイソブチリルパーオキサイド、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、ジアウロイルパーオキサイド、ジコハク酸パーオキサイド、ジ−(3−メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、ジ(4−メチルゼンゾイル)パーオキサイド、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネートなどが挙げられる。これらラジカル重合開始剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
第2の樹脂のガラス転移温度と第2の樹脂のガラス転移温度との差は、上述したように、10℃以上であることが好ましく、20℃以上であることがより好ましく、30℃以上であることが特に好ましい。
変形工程では、加熱収縮性樹脂フィルムを熱収縮させることにより変形させて、表面平滑硬質層に波状の凹凸パターン12aを形成させる。
基材11を熱収縮させる際の加熱方法としては、熱風、蒸気または熱水中に通す方法等が挙げられ、中でも、均一に収縮させることができることから、熱水に通す方法が好ましい。
基材を熱収縮させる際の加熱温度は、使用する加熱収縮性樹脂フィルムの種類および目的とする凹凸パターン12aのピッチAならびに凹部12bの深さBに応じて適宜選択することが好ましい。
溶液重合では、ビニル系単量体および重合により生成する樹脂が溶媒中に溶解するため、乳化剤や分散剤を用いる必要がなく、純度の高い樹脂を得ることができる。そのため、塗工液での不純物の相分離を抑制できるため、凝集物が少なく、塗工液を薄く塗工できる。これにより、硬質層を容易に薄くでき、変形工程によって形成される凹凸パターン12aのピッチを容易に小さくできる。
また、ラジカル重合では、得られる樹脂の重合分散度(分子量分布、すなわち、質量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)が大きく、通常、2以上になる。重合分散度の大きい樹脂は加工性に優れるため、変形工程において硬質層を容易に変形させることができる。
しかも、溶液中でビニル系単量体をラジカル重合することは汎用的である。
よって、ラジカル溶液重合により得た樹脂によって硬質層を形成する上記表面微細凹凸体の製造方法では、凹凸パターン12aのピッチが小さい表面微細凹凸体を容易に且つ低コストで製造できる。
上記のようにして得た表面微細凹凸体を原版として用い、表面微細凹凸体のレプリカシートを作製することもできる。レプリカシートの作製方法としては、例えば、下記(a)〜(c)の方法が挙げられる。
(a)表面微細凹凸体の凹凸パターンが形成された面に、未硬化の活性エネルギー線硬化性樹脂を塗工する工程と、活性エネルギー線を照射して前記硬化性樹脂を硬化させた後、硬化した塗膜を表面微細凹凸体から剥離する工程とを有する方法。ここで、活性エネルギー線とは、通常、紫外線または電子線のことであるが、本発明では、可視光線、X線、イオン線等も含む。
(b)表面微細凹凸体の凹凸パターンが形成された面に、未硬化の液状熱硬化性樹脂を塗工する工程と、加熱して前記液状熱硬化性樹脂を硬化させた後、硬化した塗膜を表面微細凹凸体から剥離する工程とを有する方法。
(c)表面微細凹凸体の凹凸パターンが形成された面に、シート状の熱可塑性樹脂を接触させる工程と、該シート状の熱可塑性樹脂を表面微細凹凸体に押圧しながら加熱して軟化させた後、冷却する工程と、その冷却したシート状の熱可塑性樹脂を表面微細凹凸体から剥離する工程とを有する方法。
2次工程用成形物を用いる具体的な方法としては、下記(d)〜(f)の方法が挙げられる。
(e)表面微細凹凸体の凹凸パターンが形成された面に、めっき層(凹凸パターン転写用材料)を積層する工程と、そのめっき層を表面微細凹凸体から剥離して、金属製の2次工程用成形物を作製する工程と、該2次工程用成形物の凹凸パターンと接していた側の面に、未硬化の液状熱硬化性樹脂を塗工する工程と、加熱により該樹脂を硬化させた後、硬化した塗膜を2次工程用成形物から剥離する工程とを有する方法。
(f)表面微細凹凸体の凹凸パターンが形成された面に、めっき層(凹凸パターン転写用材料)を積層する工程と、そのめっき層を表面微細凹凸体から剥離して、金属製の2次工程用成形物を作製する工程と、該2次工程用成形物の凹凸パターンと接していた側の面に、シート状の熱可塑性樹脂を接触させる工程と、該シート状の熱可塑性樹脂を2次工程用成形物に押圧しながら加熱して軟化させた後、冷却する工程と、その冷却したシート状の熱可塑性樹脂を2次工程用成形物から剥離する工程とを有する方法。
表面微細凹凸体の凹凸パターンが形成された面に、未硬化の活性エネルギー線硬化性樹脂を塗工するコーターとしては、Tダイコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター等が挙げられる。
未硬化の活性エネルギー線硬化性樹脂としては、エポキシアクリレート、エポキシ化油アクリレート、ウレタンアクリレート、不飽和ポリエステル、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ビニル/アクリレート、ポリエン/アクリレート、シリコンアクリレート、ポリブタジエン、ポリスチリルメチルメタクリレート等のプレポリマー、脂肪族アクリレート、脂環式アクリレート、芳香族アクリレート、水酸基含有アクリレート、アリル基含有アクリレート、グリシジル基含有アクリレート、カルボキシ基含有アクリレート、ハロゲン含有アクリレート等のモノマーの中から選ばれる1種類以上の成分を含有するものが挙げられる。未硬化の活性エネルギー線硬化性樹脂は溶媒等で希釈することが好ましい。
また、未硬化の活性エネルギー線硬化性樹脂には、フッ素樹脂、シリコーン樹脂等を添加してもよい。
未硬化の活性エネルギー線硬化性樹脂を紫外線により硬化する場合には、未硬化の活性エネルギー線硬化性樹脂にアセトフェノン類、ベンゾフェノン類等の光重合開始剤を添加することが好ましい。
しかし、これら枚葉のシートを用いる方法において、レプリカシートを大量生産するためには、凹凸パターンを形成する工程を多数回繰り返す必要がある。活性エネルギー線硬化性樹脂と表面微細凹凸体との離型性が低い場合には、多数回繰り返した際に凹凸パターンに目詰まりが生じ、凹凸パターンの転写が不完全になる傾向にある。
これに対し、表面微細凹凸体がウェブ状であるため、大面積で連続的に凹凸パターンを形成させることができるため、表面微細凹凸体の繰り返し使用回数が少なくても、必要な量のレプリカシートを短時間に製造できる。
また、(b)の方法における硬化温度は、表面微細凹凸体のガラス転移温度より低いことが好ましい。硬化温度が表面微細凹凸体のガラス転移温度以上であると、硬化時に表面微細凹凸体の凹凸パターンが変形するおそれがあるからである。
シート状の熱可塑性樹脂を2次工程用成形物に押圧する際の圧力は1〜100MPaであることが好ましい。押圧時の圧力が1MPa以上であれば、凹凸パターンを高い精度で転写させることができ、100MPa以下であれば、過剰な加圧を防ぐことができる。
また、(c)の方法における熱可塑性樹脂の加熱温度は、表面微細凹凸体のガラス転移温度より低いことが好ましい。加熱温度が表面微細凹凸体のガラス転移温度以上であると、加熱時に表面微細凹凸体の凹凸パターンが変形するおそれがあるからである。
加熱後の冷却温度としては、凹凸パターンを高い精度で転写させることができることから、熱可塑性樹脂のガラス転移温度未満であることが好ましい。
(d)〜(f)の方法では、熱による変形が小さい金属製シートを工程シートとして用いるため、表面微細凹凸体用の材料として、活性エネルギー線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のいずれも使用できる。
上記作製方法により得たレプリカシート20(図1参照)は、表面微細凹凸体10の凹凸パターン12aとほぼ同様の凹凸パターンまたはこれを反転させた凹凸パターンを有している。これら凹凸パターンは最頻ピッチAが小さく、反射防止性を発揮するため、そのままの形態で反射防止体として利用できる。
すなわち、レプリカシートの波状の凹凸パターンの部分では、空気の屈折率とレプリカシートの屈折率(基材11の屈折率)の間の中間屈折率を示し、その中間屈折率が連続的に変化する。そのため、光の反射率を特に低くでき、具体的には、反射率をほぼ0%にできる。
画像表示装置に取り付けた場合には、照明の映りこみを防止できるため、画像の視認性が向上する。発光ダイオードの発光部先端に取り付けた場合には、光の取り出し効率が向上する。太陽電池パネルの表面に取り付けた場合には、光の取り込み量が多くなるため、太陽電池の発電効率が向上する。
ワイヤーグリッド偏光板は、上記作製方法により得たレプリカシート20と、レプリカシート20の少なくとも片面に設けられた不連続な金属層とを有する。
不連続な金属層はレプリカシート20の凹凸パターンの凹部または凸部に沿って線状に設けられている。
金属層としては、金属を蒸着して形成した金属蒸着層、ナノ金属粒子を含む塗布液を塗布して形成したナノ金属塗布層が挙げられるが、金属蒸着層が好ましい。金属蒸着層では、形成する際に熱処理工程が不要であるため、熱によるレプリカシート20の損傷を防止できる。
金属蒸着層の表面は、空気の接触により酸化されていても構わない。
物理蒸着方式として、抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着、高周波誘導蒸着、分子線エピタキシー蒸着、イオンプレーティング蒸着、イオンビームデポジション蒸着、スパッタ蒸着等が挙げられる。化学蒸着方式としては、熱CVD、プラズマCVD、光CVD、エピタキシャルCVD、アトミックレイヤーCVD、有機金属気相成長法、触媒化学気相成長法等が挙げられる。これらのうち、汎用的であることから、抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着、スパッタ蒸着が好ましい。
蒸着回数は1回であってもよいし、2回以上であってもよい。
斜方蒸着において、レプリカシート20のX軸方向(長手方向)およびY軸方向(幅方向)に対する法線方向(以下、「H線方向」という。)と蒸発させた金属の移動方向(以下、「J線方向」という。)との角度(斜方蒸着角)は特に制限されないが、より容易に線状の金属蒸着層を設けることができることから、30°以上であることが好ましく、40°以上であることがより好ましく、55°以上であることがさらに好ましく、70°以上であることが特に好ましい。斜方蒸着角の上限値は90°であるが、充分に金属を蒸着させるためには、80°以下であることが好ましい。
また、偏光特性がより高くなることから、レプリカシート20のX軸方向と、蒸発させた金属の移動方向をXY平面に投影させて得られる仮想線の方向(以下、「I線方向」という。)との角度が60〜120°であることが好ましく、80〜100°であることがより好ましい。
ロールツーロール式蒸着で、レプリカシート20の搬送方向とレプリカシート20のX軸方向との角度が45°以下の場合には、斜方蒸着したシートを180°水平回転させ、さらに金属を蒸着することが好ましい。斜方蒸着シートを180°回転させてから金属蒸着させれば、凸部の上部に均一に金属を蒸着できる。これにより、均一な偏光面を得ることができるため、偏光特性を均一化できる。
また、金属蒸着層を斜方蒸着により形成し、斜方蒸着角を0〜30°とした場合には、金属蒸着層を容易に形成できることから、1〜30nmとすることがより好ましく、5〜20nmとすることが特に好ましい。斜方蒸着角を30〜90°とした場合には、金属蒸着層を容易に形成できることから、5〜100nmとすることがより好ましく、10〜60nmとすることが特に好ましい。
ナノ金属を含む分散液の塗布方法としては、例えば、エアナイフコーティング、ロールコーティング、ブレードコーティング、メイヤーバーコーティング、グラビアコーティング、スプレーコーティング、キャストコーティング、カーテンコーティング、ダイスロットコーティング、ゲートロールコーティング、サイズプレスコーティング、スピンコーティング、ディップコーティング等が挙げられる。
前記分散液を塗布、乾燥した後には、高い金属光沢を得て光反射性を高くするために、焼成(熱処理)することが好ましい。
上記ワイヤーグリッド偏光子では、金属層の長手方向に垂直に振動する光を透過し、金属層の長手方向に平行に振動する光を反射する。反射された光の振動方向を90°回転させた後に再入射することによって、吸収による損失を受けることなく、強い直線偏光を得ることができる。
このようなワイヤーグリッド偏光子は、公知の各種薄型ディスプレイ(例えば、液晶ディスプレイ(LCD)、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ等)に好ましく用いることができる。
2軸延伸フィルムを用いて得た表面微細凹凸体からもレプリカシートを作製することができる。そのレプリカシートは反射防止体として使用できる。
また、ガラス転移温度は、示差走査熱量測定法(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、DSC6200)により測定した。
ラジカル溶液重合で合成して得たガラス転移温度100℃のアクリル樹脂(藤倉化成社製LH−101、質量平均分子量45000、重合分散度3、重合溶媒トルエン、比重1.19)の溶液に、プロピレングリコールモノメチルエーテルを、アクリル樹脂溶液100質量%に対して3質量%添加して、アクリル樹脂濃度0.4質量%の樹脂溶液を調製した。
次いで、1軸方向(幅方向)に主に加熱収縮する厚さ40μmのポリエチレンテレフタレートシュリンクフィルム(東洋紡績社製SC802)の両面上に、上記樹脂溶液をグラビアコーティング(グラビア番手180)により、乾燥後の塗工厚さが20mg/m2になるよう塗工した。これにより、ポリエチレンテレフタレートシュリンクフィルムの両面に表面平滑層が形成された積層シートを得た。
次いで、上記積層シートを1m角に断裁したものを100℃の乾燥機に1分間入れて加熱収縮させて、ポリエチレンテレフタレートフィルムの両面にアクリル樹脂からなる硬質層が形成された収縮シートを得た。得られた収縮シートは40cm(主収縮方向)×98cm(主収縮方向に直交する方向)の大きさであった。
ラジカル溶液重合で合成して得たガラス転移温度155℃のアクリル樹脂(質量平均分子量65000、重合分散度3、重合溶媒トルエン/酢酸エチル、比重1.19)の溶液に、メチルイソブチルケトンを、アクリル樹脂溶液100質量%に対して3質量%、プロピレングリコールモノメチルエーテルを、アクリル樹脂溶液100質量%に対して3質量%添加して、アクリル樹脂濃度0.2質量%の樹脂溶液を調製した。
1軸方向(長手方向)に主に加熱収縮する厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートシュリンクフィルム(東洋紡績社製SC807)の片面上に、上記樹脂溶液をグラビアコーティング(グラビア番手180)により、乾燥後の塗工厚さが10mg/m2になるよう塗工した。これにより、ポリエチレンテレフタレートシュリンクフィルムの片面に表面平滑層が形成された積層シートを得た。
次いで、上記積層シートを1m角に断裁したものを150℃の乾燥機に1分間入れて加熱収縮させて、ポリエチレンテレフタレートフィルムの両面にアクリル樹脂からなる硬質層が形成された収縮シートを得た。得られた収縮シートは40cm(主収縮方向)×98cm(主収縮方向に直交する方向)の大きさであった。
ラジカル溶液重合で合成して得たガラス転移温度155℃のアクリル樹脂(質量平均分子量65000、重合分散度3、重合溶媒トルエン/酢酸ブチル、比重1.19)の溶液に、メチルイソブチルケトンを、アクリル樹脂溶液100質量%に対して3質量%、プロピレングリコールモノメチルエーテルを、アクリル樹脂溶液100質量%に対して3質量%添加して、アクリル樹脂濃度0.2質量%の樹脂溶液を調製した。
次いで、1軸方向(長手方向)に主に加熱収縮する厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートシュリンクフィルム(東洋紡績社製SC807)の片面上に、上記樹脂溶液をグラビアコーティング(グラビア番手180)により、乾燥後の塗工厚さが20mg/m2になるよう塗工した。これにより、ポリエチレンテレフタレートシュリンクフィルムの片面に表面平滑層が形成された積層シートを得た。
次いで、上記積層シートを1m角に断裁したものを150℃の乾燥機に1分間入れて加熱収縮させて、ポリエチレンテレフタレートフィルムの両面にアクリル樹脂からなる硬質層が形成された収縮シートを得た。得られた収縮シートは40cm(主収縮方向)×98cm(主収縮方向に直交する方向)の大きさであった。
ラジカル溶液重合で合成して得たガラス転移温度100℃のアクリル樹脂(藤倉化成社製LH−101、質量平均分子量45000、重合分散度3、重合溶媒トルエン、比重1.19)の溶液に、プロピレングリコールモノメチルエーテルを、アクリル樹脂溶液100質量%に対して3質量%添加して、アクリル樹脂濃度1.0質量%の樹脂溶液を調製した。
次いで、1軸方向(幅方向)に主に加熱収縮する厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートシュリンクフィルム(三菱樹脂社製ヒシペットLX−61S)の両面上に、上記樹脂溶液をグラビアコーティング(グラビア番手180)により、乾燥後の塗工厚さが90mg/m2になるよう塗工した。これにより、ポリエチレンテレフタレートシュリンクフィルムの両面に表面平滑層が形成された積層シートを得た。
次いで、上記積層シートを1m角に断裁したものを100℃の乾燥機に1分間入れて加熱収縮させて、ポリエチレンテレフタレートフィルムの両面にアクリル樹脂からなる硬質層が形成された収縮シートを得た。得られた収縮シートは45cm(主収縮方向)×94cm(主収縮方向に直交する方向)の大きさであった。
ラジカル懸濁重合で合成して得たガラス転移温度100℃のアクリル樹脂(藤倉化成社製AcrbaseMH−101−10、質量平均分子量560000、重合分散度3、比重1.19)の懸濁分散液に、プロピレングリコールモノメチルエーテルを、アクリル樹脂懸濁分散液100質量%に対して3質量%添加して、アクリル樹脂濃度0.4質量%の熱可塑性樹脂分散液を得た。
1軸方向(幅方向)に主に加熱収縮する厚さ40μmのポリエチレンテレフタレートシュリンクフィルム(東洋紡績社製SC802)の両面上に、上記熱可塑性樹脂分散液を、グラビアコーティング(グラビア番手180)により、乾燥後の塗工厚さが20mg/m2になるよう塗工した。これにより、ポリエチレンテレフタレートシュリンクフィルムの両面に表面平滑層が形成された積層シートを得た。ただし、表面に白濁ムラのある塗工面となり、均一に塗工できていなかった。
次いで、上記積層シートを1m角に断裁したものを100℃の乾燥機に1分間入れて加熱収縮させて、ポリエチレンテレフタレートフィルムの両面にアクリル樹脂からなる硬質層が形成された収縮シートを得た。得られた収縮シートは40cm(主収縮方向)×98cm(主収縮方向に直交する方向)の大きさであった。
実施例1〜4および比較例1の硬質層の露出面を原子間力顕微鏡(日本ビーコ社製ナノスコープIII)により観察した。その結果、実施例1〜4については、硬質層の露出面の全部に微細凹凸構造が形成されていた。比較例1については、硬質層の露出面の一部に微細凹凸構造が形成されていた。
凹凸パターンの最頻ピッチAおよび配向度を、以下のようにして求めた。
すなわち、測定した凹凸構造の画像をグレースケール画像に変換した後、2次元フーリエ変換を行った。このフーリエ変換像の頻度(ZF)のスムージングを行い、フーリエ変換像の中心部以外で最大頻度を示す位置(XFmax,YFmax)を求めた。そして、最頻ピッチA=1/{√(XFmax 2+YFmax 2)}の式から最頻ピッチAを求めた。
また、上記のフーリエ変換画像を用いて配向度を求めた。すなわち、まず、上記のフーリエ変換画像を用い、XF軸上に最大輝度部分が一致するようにθ回転したフーリエ変換像を作成した。次いで、(XFmax、YFmax)を通るYF軸に平行補助線Y’Fを引き、補助線Y’Fを横軸とし、補助線Y’F上の輝度(ZF軸)を縦軸としたY’F−ZF図を作成した。次いで、Y’F−ZF図のY’F軸の値を最頻ピッチの逆数(1/A)で割ったY”F−ZF図を作成し、このY”F−ZF図からピークの半値幅W(頻度が最大値の半分になる高さでのピークの幅)を求めた。この半値幅は配向度を表す。
また、原子間力顕微鏡測定より得られた断面画像により、10箇所の凹部の底までの深さを測定し、その測定結果から平均深さを求めた。
最頻ピッチ、配向度および平均深さを表1に示す。
実施例1〜3の収縮シートについて、光学素子としての性能を評価するために、日本分光社製の分光光度計(V−7200)を用いて、波長550nmの可視光に対する光反射率および光透過率を測定した。
なお、比較例1の収縮シートについては、原子間力顕微鏡により測定したところ表面微細凹凸構造が一部形成されておらず、また白濁していた。このようなことから、光学素子として使用できないことは明らかであったため、評価を行わなかった。
実施例1,2,3の収縮シートを用いてワイヤーグリッド偏光子を以下のように作製した。
得られた収縮シートの片側の硬質層にアルミニウムを、抵抗加熱蒸着装置(アルバック社製EX−400)を用いて、厚さ30nmで蒸着させた。その際、斜方蒸着角60°、I線方向とX軸方向との角度90°で斜方蒸着させた。これにより、略X軸方向に配向する凸部の斜面の上部にアルミニウム蒸着層を形成して、細線状のアルミニウム蒸着層が平行に配列したワイヤーグリッド偏光子を得た。
得られたワイヤーグリッド偏光子の偏光特性をKOBRA(王子計測機器社製)により測定した。測定結果を表1に示す。
硬質層を構成する熱可塑性樹脂としてラジカル懸濁重合により得たものを用いた比較例1の収縮シートは、最頻ピッチが大きかった。また、白濁していたため、反射防止体およびワイヤーグリッド偏光子として使用することができなかった。
11 基材
12 硬質層
12a 凹凸パターン
12b 凹部
12c 凸部
20 レプリカシート
Claims (2)
- 加熱収縮性樹脂フィルムの少なくとも片面に樹脂溶液を塗工し、表面が平滑な硬質層を設ける硬質層形成工程と、該硬質層形成工程の後、加熱収縮性樹脂フィルムを加熱収縮させて前記硬質層を折り畳むように変形させる変形工程とを有し、
前記樹脂溶液に含まれる樹脂として、ラジカル溶液重合により重合して得た樹脂で、加熱収縮性樹脂フィルムを構成する樹脂よりもガラス転移温度が高いものを用いることを特徴とする表面微細凹凸体の製造方法。 - 加熱収縮性樹脂フィルムへの樹脂溶液の塗工量を1〜100mg/m2にする請求項1に記載の表面微細凹凸体の製造方法。
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