JP2011214085A - ダイヤモンドライクカーボン膜付基材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の製造方法は、RF電源16を用いた平行平板型プラズマCVDによりCH4とH2との混合ガスからDLC膜を形成する工程を包含する。この工程では、上記プラズマCVDを、(a)上記混合ガスのH2ガス分圧をCH4ガス分圧の0.8倍以上とする;(b)上記混合ガスの合計圧力を20Pa〜40Paとする;および(c)RF電源16のパワーを15W〜20W/225πcm2とする;を満たすように行うことにより、(A)膜厚200nmのとき、波長400nmにおける光透過率が70%以上;および、(B)硬度が5GPa以上;を満たすDLC膜を樹脂基材3上に形成する。
【選択図】図1
Description
(a)前記混合ガスにおけるH2ガス分圧(PH2)をCH4ガス分圧(PCH4)の0.8倍以上とする(すなわち、PH2/PCH4≧0.8)。
(b)前記混合ガスの合計圧力(PT)を20Pa以上40Pa以下とする(すなわち、20Pa≦PT≦40Pa)。
(c)前記高周波電源のパワーを225πcm2当たり15W以上20W以下とする。
上記DLC膜形成工程により、以下の特性(A)および(B)を満たすDLC膜を、前記樹脂基材上に形成する。
(A)膜厚200nmのとき、波長400nmにおける光透過率が70%以上である。
(B)硬度が5GPa以上である。
(a)前記混合ガスにおけるH2ガス分圧をCH4ガス分圧の0.8倍以上とする;および、
(d)高周波電極(前記高周波電源に接続された電極)にかかる自己バイアスを−85V〜−115Vとする;
を満たすように行う。このことによって、前記特性(A)および(B)を共に満たすDLC膜を前記樹脂基材上に形成する。かかる製造方法によると、可視光に対して高い光透過性を示し且つ一般的なガラスと同等以上の硬度を有するDLC膜により表面が保護されたDLC膜付基材を、的確に製造することができる。
なお、試料の透過率と膜厚とから計算される吸収係数を用いることにより、膜厚に依存せずに試料の透明度を比較することができる(ランベルト・ベールの法則)。また、このことによって、膜厚が200nmよりも薄いかまたは厚い試料を用いて測定された光透過率の値から、当該試料について、膜厚200nmのときの光透過率を算出する(膜厚200nmの場合における光透過率に換算する)ことができる。
(サンプル1〜8の作製)
図1と同様の概略構成を有する市販の平行平板型プラズマCVD装置(株式会社エヌ工房製、型式「P−CVD−DLC300」)を用いて樹脂基材の表面にDLC膜を形成した。このプラズマCVD装置は、直径30cmの円板形(面積225πcm2)の高周波電極を備える。樹脂基材としては、厚さ500μmのポリカーボネート(PC)フィルムを1.5cm×3.0cmの長方形にカットしたものを使用した。両電極間の距離は6.5cmに設定した。チャンバ内を2×10−5Paまで減圧した後、CH4ガスとH2ガスとを1:1の流量比で供給して、チャンバ内を所定の合計ガス圧(PT)の混合ガス雰囲気(PH2/PCH4=1の分圧比)に調整した。13.56MHzのRF電源から高周波電極に所定のRFパワーを供給してプラズマCVDを行うことにより、PCフィルムの表面に厚さ約200nmのDLC膜を形成した。CVDを行う時間は、目標とする厚みのDLC膜が形成されるように調節した。CH4ガスおよびH2ガスの合計供給レート(合計流量)は100SCCMとした。
図2に示されるように、本実験例の範囲では、合計ガス圧が高くなるにつれて成膜レートは向上する傾向にあった。これは、膜堆積の前駆体であるCH3 +の生成量が圧力上昇に伴って増加するためと考えられる。ただし、合計ガス圧が30Paを超えると成膜レートの向上が鈍化した。これは、平均自由行程の減少によりCH3 +が基材表面に到達し難くなったためと考えられる。また、図3に示されるように、本実験例の範囲では、RFパワーが大きくなるにつれて成膜レートが向上する傾向にあった。これは、原料の供給速度が一定であり、RFパワーが比較的小さいので基板温度が低温に維持されたため、表面反応律速で膜が堆積したためと考えられる。
株式会社島津製作所製の光透過率測定装置、型式「UV−2550」を用いて、DLC膜を有しない樹脂基材(PCフィルム)をリファレンスとするダブルビーム法により、サンプル1〜8の透過率特性を測定した。得られた結果を図4(サンプル1〜5)および図5(サンプル4,6〜8)に示す。また、各サンプルにつき、波長350nmにおける光透過率および波長400nmにおける光透過率を表1に示す。これらの図表に示されるように、DLC膜形成時のガス圧力が高くなるにつれて透過率は向上し、RFパワーが大きくなるにつれて透過率は低下する傾向がみられた。また、いずれのサンプルについても、波長350〜800nmの範囲では波長350nmにおける光透過率が最も低く、波長400〜800nmの範囲では波長400nmにおける光透過率が最も低かった。したがって、波長350nmまたは400nmにおける光透過率を比較することにより、可視光の波長域全体の光透過性を評価することができる。
Hysitron社製の硬度測定装置、「Triboscope」を用いて、サンプル1〜8の硬度をナノインデンテーション法により測定した。得られた結果を図6(サンプル1〜5)、図7(サンプル4,6〜8)および表1に示す。これらの図表に示されるように、本実験例の範囲では、RFパワーが大きくなるにつれて硬度が上昇し、成膜時のガス圧が高くなるにつれて硬度が低下する傾向にあった。
所望の特性を満たすDLC膜が形成される条件を、平行平板型プラズマCVD装置の自己バイアスの観点から検討した。まず、サンプル1〜8の作製時と同様にチャンバ内をPCH4:PH2=1:1のガス組成に調整し、合計ガス圧10Pa,20Pa,30Pa,40Pa,50Paの5水準にて、それぞれ225πcm2当たりのRFパワーが5〜50Wの範囲について、直流電圧計を用いて自己バイアスを測定した。得られた結果を図8に示す。RFパワーが大きくなるにつれて自己バイアスは大きくなる。また、合計ガス圧が小さくなるにつれて、自己バイアスは大きくなる傾向にある。これは、プラズマ化により生じたイオンの平均自由行程が増加するためと考えられる。
サンプル1〜8と同様のプラズマCVD条件により、ただし樹脂基材の代わりに2cm×2cmのサイズのシリコンウエハを用いて、該シリコンウエハ(基材)上に厚み200nmのDLC膜を作製した。それらのDLC膜付基材(サンプル1〜8に対応づけて、それぞれサンプル1B〜8Bという。)につき、RHESCA社製のスクラッチ試験機、型式「Model CSR−2000」を用いて、基材に対するDLC膜の付着力を評価した。すなわち、23℃、50%RHの測定環境下において、上記試験機の連続荷重モードにて円錐型のダイヤモンド製圧子(先端の曲率半径 10μm)をサンプル表面に接触させ、54.12mN/mmのレートで荷重を増加させつつ25μm/秒の速度で一方向に擦過するスクラッチ試験を行った。そのスクラッチ痕(圧痕)を光学顕微鏡により観察し、DLC膜が最初に剥離した位置に対応する荷重(Critical load)により付着力を評価した。得られた結果を、図10(サンプル1B〜5B)および図11(サンプル4B,6B〜8B)に示す。サンプル8Bを除き、いずれも250mNを超える付着力を示すことが確認された。
大気雰囲気中において、厚さ500μmのPCフィルム(樹脂基材)の表面に真空紫外光を照射した。これによりPCフィルムの表面を親水化(例えば、水酸基を導入)して、SAMモノマーが表面化学吸着されやすいように調製した。次いで、上記親水化処理が施されたPCフィルムを1.5cm×3.0cmの長方形にカットし、SAM形成材料としてのγ−アミノプロピルトリエトキシシラン(H2NCH2CH2CH2Si(OCH3)3)とともに熱CVD装置のチャンバ内にセットした。そのチャンバ内を150℃に2時間加熱することにより、γ−アミノプロピルトリエトキシシランに由来するSAMを表面に有するPCフィルムを得た。このPCフィルムのSAM形成面上に、サンプル3と同じプラズマCVD条件により、厚さ200nmのDLC膜を形成した。このようにして、PCフィルム上にSAMを介してDLC膜が形成されたDLC膜付基材(サンプル3C)を作製した。このサンプル3Cは、サンプル3と略同等の透明性を有していた。
12:高周波電極
14:接地電極
16:高周波(RF)電源
18:マッチングボックス
2:真空チャンバ
22:ガス排出口
24:ガス導入口
3:樹脂基材
Claims (7)
- 樹脂基材上に可視光透過性のダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜を有するDLC膜付基材を製造する方法であって、
高周波電源を用いた平行平板型プラズマCVDにより、CH4とH2との混合ガスからDLC膜を形成する工程を包含し、
そのDLC膜形成工程では、前記プラズマCVDを、以下の条件:
(a)前記混合ガスにおけるH2ガス分圧をCH4ガス分圧の0.8倍以上とする;
(b)前記混合ガスの合計圧力を20Pa以上40Pa以下とする;および、
(c)前記高周波電源のパワーを225πcm2当たり15W以上20W以下とする;
を満たすように行うことにより、以下の特性:
(A)膜厚200nmのとき、波長400nmにおける光透過率が70%以上である;および、
(B)硬度が5GPa以上である;
を満たすDLC膜を前記樹脂基材上に形成する、DLC膜付基材製造方法。 - 前記混合ガスの合計圧力を30Pa以上40Pa以下とする、請求項1に記載の方法。
- 前記DLC膜形成工程に先立って、前記樹脂基材の表面に自己組織化単分子膜を形成する工程をさらに包含する、請求項1または2に記載の方法。
- 前記自己組織化単分子膜は、前記DLC膜を構成する炭素原子との間にN−C結合を形成可能な末端基を有する膜形成材料を用いて形成される、請求項3に記載の方法。
- 前記条件(b)および(c)に代えて、以下の条件:
(d)高周波電極にかかる自己バイアスを−85V〜−115Vとする;
を満たすように前記プラズマCVDを行う、請求項1から4のいずれか一項に記載のDLC膜付基材製造方法。 - 波長400nmにおける光透過率が70%以上であり且つ硬度が5GPa以上であるDLC膜が、自己組織化単分子膜を介して樹脂基材上に設けられていることを特徴とする、DLC膜付基材。
- 以下の特性:
(A)膜厚200nmのとき、波長400nmにおける光透過率が70%以上である;および、
(B)硬度が5GPa以上である;
を満たすDLC膜を製造する方法であって、
高周波電源を用いた平行平板型プラズマCVDによりCH4とH2との混合ガスからDLC膜を形成する工程を包含し、
ここで、前記プラズマCVDを、以下の条件:
(a)前記混合ガスにおけるH2ガス分圧をCH4ガス分圧の0.8倍以上とする;
(b)前記混合ガスの合計圧力を20Pa以上40Pa以下とする;および、
(c)前記高周波電源のパワーを225πcm2当たり15W以上20W以下とする;
を満たすように行う、DLC膜製造方法。
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