以下、本発明に係るサーマルプリンタを、テープカセットから排出されるテープに対して印刷を行うテープ印刷装置1に具体化した実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
先ず、本実施形態に係るテープ印刷装置1の概略構成について、図1及び図2を参照しつつ説明する。本実施形態に係るテープ印刷装置1は、筐体内部に内蔵されたテープカセット5(図2参照)から排出されるテープに対して、サーマルヘッド41により印刷を行う。
図1に示すように、テープ印刷装置1は、キーボード3と、液晶ディスプレイ4を筐体上面に有している。そして、筐体上面には、収納カバー9が開閉自在に配設されている。当該収納カバー9は、閉じた場合に、筐体内部に形成されたカセット収納部8を覆う。カセット収納部8は、平面視矩形状のテープカセット5を収納する。更に、尚、このキーボード3の下側には、制御基板(図示せず)が配設されている。
カセット収納部8の左側面部には、テープ排出口10が形成されている。印刷されたテープは、テープ排出口10から排出される。又、接続インターフェース(図示せず)が、テープ印刷装置1の右側面部に配設されている。当該接続インターフェースは、外部機器(例えば、パーソナルコンピュータ等)と有線又は無線接続をする際に用いられる。従って、テープ印刷装置1は、外部機器から送信された印刷データを印刷し得る。
キーボード3は、文字入力キー3A、印刷キー3B、カーソルキー3C、電源キー3D、設定キー3E、リターンキー3R等の複数種類の入力キーを備えている。文字入力キー3Aは、文書データからなるテキストを作成する際の文字入力に用いられる。印刷キー3Bは、作成されたテキスト等からなる印刷データの印刷実行を指令する際に用いられる。そして、カーソルキー3Cは、液晶ディスプレイ4上に表示されるカーソルを、上下左右に移動する際に用いられる。又、電源キー3Dは装置本体の電源をON又はOFFする際に用いられる。又、設定キー3Eはテープ印刷装置1の各種設定(印刷密度の設定など)を行う際に用いられる。又、リターンキー3Rは、改行指令や各種処理の実行、選択決定を指令する際に用いられる。
一方、液晶ディスプレイ4は、文字等のキャラクタを複数行に渡って表示する表示装置であり、キーボード3によって作成された印刷データ(図4参照)の内容や、各種設定画面等を表示し得る。
図2に示すように、テープ印刷装置1は、内部のカセット収納部8に対してテープカセット5を装着可能に構成されている。更に、テープ印刷装置1は、筐体内部に、テープ駆動印刷機構16と、テープ切断機構とを有している。従って、テープ印刷装置1は、テープ駆動印刷機構16により、テープカセット5から引き出されたテープに対して、所望の印刷データに基づく印刷を施すことができる。
そして、テープ切断機構は、固定刃17Aと回動刃17Bから構成されるカッター17を有している。従って、テープ印刷装置1は、テープ切断機構のカッター17により、印刷されたテープを切断し得る。上述したように、切断されたテープは、テープ排出口10から排出される。
テープ印刷装置1の内部には、カセット収納部フレーム18が配設されている。図2に示すように、このカセット収納部フレーム18には、テープカセット5が着脱自在に装着される。
テープカセット5は、テープスプール32、リボン供給スプール34、巻取スプール35、基材供給スプール37、接合ローラ39を、その内部に備えており、夫々を回転自在に軸支している。テープスプール32には、表層テープ31が巻回されている。表層テープ31は、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等からなる透明なテープである。そして、リボン供給スプール34には、インクリボン33が巻回されている。インクリボン33には、加熱により溶融或いは昇華するインクが塗布されている。巻取スプール35は、印刷に使用されたインクリボン33を巻き取る。そして、基材供給スプール37には、二重テープ36が巻回されている。二重テープ36は、表層テープ31と同一幅で両面に接着剤層を有する両面接着テープの片面に対して、剥離テープを貼り合わせて構成されている。又、当該二重テープ36は、剥離テープが外側に位置するように、基材供給スプール37に巻回されている。そして、接合ローラ39は、二重テープ36と表層テープ31とを重ねて接合させる際に用いられる。
図2に示すように、カセット収納部フレーム18には、アーム20が、軸20Aを中心として揺動可能に配設されている。アーム20先端には、プラテンローラ21、搬送ローラ22が回動可能に軸支されている。プラテンローラ21、搬送ローラ22は、何れもゴム等の可撓性部材を表面に有している。
アーム20が最も時計回りに揺動すると、プラテンローラ21は、表層テープ31及びインクリボン33を、後述するサーマルヘッド41に対して圧接する。この時、搬送ローラ22は、表層テープ31及び二重テープ36を、接合ローラ39に対して圧接する。
又、カセット収納部フレーム18には、プレート42が立設されている。プレート42のプラテンローラ21側側面には、サーマルヘッド41が配設されている。図3に示すように、サーマルヘッド41は、表層テープ31及び二重テープ36の幅方向と同方向に、複数(例えば、128個や256個)の発熱素子41Aを1列に列設することで構成される。従って、当該サーマルヘッド41の主走査方向は、表層テープ31等の幅方向と同一である。そして、テープカセット5が所定位置に装着されると、プレート42は、テープカセット5の凹部43に嵌め込まれる。
又、カセット収納部フレーム18には、リボン巻取ローラ46、接合駆動用ローラ47が立設されている(図2参照)。テープカセット5が所定位置に装着されると、リボン巻取ローラ46は、テープカセット5の巻取スプール35内に挿入される。同様に、接合駆動用ローラ47は、テープカセット5の接合ローラ39内に挿入される。
そして、カセット収納部フレーム18には、テープ搬送モータ(図示せず)が配設されている。テープ搬送モータによる駆動力は、カセット収納部フレーム18に沿って配設されたギア列を介して、プラテンローラ21、搬送ローラ22、リボン巻取ローラ46及び接合駆動用ローラ47等に夫々伝達される。従って、テープ搬送モータに対する電力供給により、テープ搬送モータの回転駆動が開始されると、巻取スプール35、接合ローラ39、プラテンローラ21、搬送ローラ22も連動して回転を開始する。これにより、テープカセット5内の表層テープ31、インクリボン33、二重テープ36は、テープスプール32、リボン供給スプール34、基材供給スプール37からそれぞれ巻き解かれ、搬送方向下流方向(テープ排出口10、巻取スプール35方向)へと搬送される。
その後、表層テープ31及びインクリボン33は、互いに重ね合わされてからプラテンローラ21とサーマルヘッド41との間を通過する。従って、当該テープ印刷装置1において、表層テープ31、インクリボン33は、プラテンローラ21とサーマルヘッド41とによって挟まれた状態で搬送される。この時、サーマルヘッド41に配列された多数の発熱素子41Aは、制御部60(図5参照)によって、印刷データ(図4参照)及び後述する通電制御処理プログラム(図6)、奇数ライン通電処理プログラム(図7)に基づいて選択的かつ間欠的に通電される。
ここで、印刷データ50は、上述したように、キーボード3に対する操作、或いは、接続インターフェースを介した外部機器から入力される。図4に示すように、当該印刷データ50は、各発熱素子41Aに対応するドットの集合により構成され、複数の印刷ラインデータ55により構成される。各印刷ラインデータ55は、サーマルヘッド41に列設された発熱素子41Aの数と同数のドットにより構成され、一の印刷周期Tにおける各発熱素子41Aの通電・非通電を規定している。そして、印刷データ50は、副走査方向(即ち、テープの搬送方向)に所定の順番で並んだ複数の印刷ラインデータ55を有している。即ち、当該テープ印刷装置1は、各印刷ラインデータ55を所定の順序に従って、印刷周期T単位で処理することにより、テープに対して印刷データ50に基づく印刷を行う。尚、本実施形態においては、印刷データ50における印刷順が奇数番目に当たる印刷ラインデータ55を奇数ラインデータといい、偶数番目に当たる印刷ラインデータ55を偶数ラインデータという。
そして、各発熱素子41Aは、通電により発熱し、インクリボン33に塗布されているインクを溶融或いは昇華させる。従って、インクリボン33のインクは、表層テープ31にドット単位で転写される。この結果、表層テープ31には、印刷データに基づくユーザ所望のドット画像が鏡像で形成される。
サーマルヘッド41を通過すると、インクリボン33は、リボン巻取ローラ46によって巻き取られる。一方、表層テープ31は、二重テープ36と重ねられ、搬送ローラ22と接合ローラ39との間を通過する。この時、表層テープ31と二重テープ36は、搬送ローラ22、接合ローラ39により圧接され、積層テープ38となる。ここで、当該積層テープ38は、ドット印刷済みの表層テープ31の印刷面側が二重テープ36と強固に重ね合わされて構成される。従って、ユーザは、表層テープ31の印刷面の裏面側(即ち、積層テープ38の表面側)から印刷画像の正像を視認し得る。
その後、積層テープ38は、搬送ローラ22から搬送方向下流に搬送され、カッター17を含むテープ切断機構に到達する。テープ切断機構は、カッター17と、切断用モータ72(図5参照)により構成されている。ここで、カッター17は、固定刃17Aに対して回動刃17Bを回動させることで切断対象物を剪断する鋏形式のカッターである。そして、回動刃17Bは、切断用モータ72によって支点を中心に往復揺動可能に配設されている。従って、切断用モータ72の駆動により、積層テープ38は、固定刃17A、回動刃17Bに剪断される。
切断された積層テープ38は、テープ排出口10を介して、テープ印刷装置1外部へ排出される。当該積層テープ38は、二重テープ36の剥離紙を剥がし、接着剤層を露出させれば、任意の場所に貼り付けることが可能な粘着ラベルとして使用可能である。
次に、テープ印刷装置1の制御構成について図5を参照しつつ詳細に説明する。上述したように、テープ印刷装置1内には、制御基板(図示せず)が配設されており、当該制御基板上には、制御部60、ヘッド駆動回路68、切断用モータ駆動回路69、搬送モータ駆動回路70が配設されている。
制御部60は、CPU61と、CG−ROM62と、EEPROM63と、ROM64と、RAM66とにより構成される。又、当該制御部60は、タイマ67、ヘッド駆動回路68、切断用モータ駆動回路69、搬送モータ駆動回路70と接続されている。更に、制御部60は、液晶ディスプレイ4、カセットセンサ7、サーミスタ73、キーボード3、接続インターフェース71と接続されている。
CPU61は、テープ印刷装置1における各種制御の中枢を担う中央演算処理装置である。従って、このCPU61は、キーボード3等からの入力信号や後述する通電制御処理プログラム等の各種制御プログラムに基づいて、各周辺装置を制御する。
CG−ROM62は、キャラクタージェネレータ用メモリであり、印刷される文字や記号の画像データをコードデータと対応させてドットパターンで記憶している。又、EEPROM63は、記憶内容の書込・消去ができる不揮発性メモリであり、当該テープ印刷装置1におけるユーザ設定等を示すデータを格納している。
そして、ROM64は、テープ印刷装置1における各種制御プログラムやデータを格納している。従って、後述する通電制御処理プログラム及び奇数ライン通電処理プログラムは、当該ROM64に格納されている。又、RAM66は、CPU61での演算結果等を一時的に格納する記憶装置である。RAM66には、キーボード3の入力により生成された印刷データや、外部機器78から接続インターフェース71を介して取り込まれた印刷データも格納される。タイマ67は、テープ印刷装置1の制御を実行する際に所定期間の経過を計時する計時装置である。サーミスタ73は、サーマルヘッド41の温度を検出する為のセンサであり、サーマルヘッド41に取り付けられている。
ヘッド駆動回路68は、CPU61からの制御信号、後述する通電制御処理プログラム等に基づいて、サーマルヘッド41に駆動信号を出力し、サーマルヘッド41の駆動態様を制御する。そして、ヘッド駆動回路68は、発熱素子毎に対応付けられたストローブ番号に関連付けられた信号(ストローブ信号(STB信号))に基づき、各発熱素子41Aの通電の有無を制御することで、サーマルヘッド41全体の発熱態様を制御する。
そして、切断用モータ駆動回路69は、CPU61からの制御信号に基づいて切断用モータ72に駆動信号を出力し、切断用モータ72の駆動制御を行う。又、搬送モータ駆動回路70は、CPU61からの制御信号に基づいてテープ搬送モータ2に駆動信号を出力し、テープ搬送モータ2の駆動制御を行う。
続いて、本実施形態に係る通電制御処理プログラムについて、図6等を参照しつつ詳細に説明する。当該通電制御処理プログラムは、印刷データ50を印刷する際にCPU61により実行され、各発熱素子41Aに対する通電制御を行うためのプログラムである。
先ず、S1においては、CPU61は、印刷ラインデータ処理を実行する。当該印刷ラインデータ処理(S1)では、CPU61は、印刷データ50(図4参照)の先読みを行い、加熱条件に適合するドットを確認して、各印刷ラインデータ55を作成する。そして、CPU61は、最初の印刷ラインデータ55をサーマルヘッド41にデータ転送する。その後、CPU61は、S2に処理を移行する。
S2では、CPU61は、現在の印刷周期Tにおける加熱開始時期であるか否かを判断する。加熱開始時期である場合(S2:YES)、CPU61は、S3に処理を移行する。一方、加熱開始時期でない場合(S2:NO)、CPU61は、加熱開始時期となるまで処理を待機する。
S3に移行すると、CPU61は、現在の印刷対象が奇数ラインデータであるか否かを判断する。現在の印刷対象が奇数ラインデータである場合(S3:YES)、CPU61は、S11に処理を移行する。一方、現在の印刷対象が偶数ラインデータである場合(S3:NO)、CPU61は、S4に処理を移行する。
ここで、本実施形態に係るテープ印刷装置1は、現在の印刷対象が奇数ラインデータであるか、偶数ラインデータであるかに応じて、印刷周期Tの構成を変更する。以下、この点について、図8を参照しつつ説明する。図8は、縦軸にSTB信号の電圧レベルをとり、横軸に時間軸をとったグラフである。図8に示すように、印刷周期Tは、加熱期間Hと、非加熱期間Cにより構成される。加熱期間Hは、発熱素子41Aに対する通電により、当該発熱素子41Aが加熱される期間である。非加熱期間Cは、発熱素子41Aへの通電態様を非通電とすることで、当該発熱素子41Aを放熱させる期間である。
又、加熱期間Hは、継続通電期間Ecと、チョッピング通電期間Eiにより構成される。継続通電期間Ecは、発熱素子41Aに対する通電を継続的に行うことにより、当該発熱素子41Aを加熱する期間である。そして、チョッピング通電期間Eiは、当該発熱素子41Aに対する通電・非通電を所定の時間間隔で切り替え、発熱素子41Aに対する通電を断続的に行うことで、当該発熱素子41Aを加熱する期間である。尚、本実施形態に係る加熱期間Hは、継続通電期間Ecの後に、チョッピング通電期間Eiとなるように構成される。
現在の印刷対象が奇数ラインデータである場合、印刷周期Tは、当該印刷周期Tの始期寄りに加熱期間Hを有し、当該加熱期間Hの経過後に非加熱期間Cを有する構成で設定される(図8(A)、(C)参照)。一方、現在の印刷対象が偶数ラインデータである場合、印刷周期Tは、当該印刷周期Tの始期寄りに非加熱期間Cを有し、当該非加熱期間Cの経過後に加熱期間Hを有する構成で設定される(図8(B)参照)。
再び、図6を参照しつつ、通電制御処理プログラムについて説明する。S4に移行すると、CPU61は、遅延発熱タイミングとなったか否かを判断する。遅延発熱タイミングとなっている場合(S4:YES)、CPU61は、S5に処理を移行する。一方、未だ遅延発熱タイミングとなっていない場合(S4:NO)、CPU61は、遅延発熱タイミングとなるまで処理を待機する。ここで、当該S4は、現在の印刷対象が偶数ラインデータである場合に移行する。従って、遅延発熱タイミングは、非加熱期間Cの終期及び加熱期間Hの始期を示す。即ち、印刷対象が偶数ラインデータである場合、CPU61は、遅延発熱タイミングとなるまで処理を待機することにより、非加熱期間Cの経過を待機する。
S5に移行すると、CPU61は、印刷対象である偶数ラインデータにおける加熱条件に適合するドットの配置に基づいて、対応する発熱素子41Aに対する継続的な通電(即ち、継続通電期間Ec)を開始する。その後、CPU61は、S6に処理を移行する。
S6では、CPU61は、継続通電期間Ecが終了したか否かを判断する。具体的には、CPU61は、S5における継続通電期間Ecの開始から所定期間経過したか否かを判断する。継続通電期間Ecを終了している場合(S6:YES)、CPU61は、S7に処理を移行する。一方、継続通電期間Ecを終了していない場合(S6:NO)、CPU61は、S8に処理を移行する。
S7においては、CPU61は、継続通電期間Ecの経過に伴い、チョッピング通電(即ち、チョッピング通電期間Ei)を開始する。具体的には、CPU61は、印刷対象である偶数ラインデータにおける加熱条件に適合するドットの配置に基づいて、対応する発熱素子41Aに対する通電・非通電を所定の時間間隔で切り替え、発熱素子41Aに対する断続的な通電を行う。その後、CPU61は、S9に処理を移行する。
S8では、CPU61は、次ラインデータ転送処理を実行する。当該次ラインデータ転送処理(S8)では、CPU61は、次に印刷対象となる印刷ラインデータ55をサーマルヘッド41へ転送する。具体的には、CPU61は、次に印刷対象となる奇数ラインデータに基づくパルスデータを、サーマルヘッド41に転送する。その後、CPU61は、S6に処理を戻す。尚、図6においては、継続通電期間Ecを経過するまでS8に移行するように構成されているが、当該継続通電期間Ecで最初に移行した場合のみ、CPU61は、S8における上記処理を行えばよく、その後に移行した場合は、何等の処理を行うことなくS6に処理を戻す。
S9に移行すると、CPU61は、チョッピング通電期間Eiが終了したか否かを判断する。具体的には、CPU61は、S7におけるチョッピング通電期間Eiの開始から所定期間経過したか否かを判断する。チョッピング通電期間Eiを終了している場合(S9:YES)、CPU61は、S10に処理を移行する。一方、チョッピング通電期間Eiを終了していない場合(S9:NO)、CPU61は、チョッピング通電期間Eiを終了するまで、処理を待機する。
S10においては、CPU61は、チョッピング通電期間Eiの終了に伴い、加熱期間Hを終了する。その後、CPU61は、S12に処理を移行する。この加熱期間Hの終了により、偶数ラインデータに係る印刷周期Tは終了する。即ち、図8(B)に示すように、偶数ラインデータに係る印刷周期Tは、非加熱期間C、継続通電期間Ec、チョッピング通電期間Eiの順の構成となる。
上述したように、印刷対象が奇数ラインデータである場合(S3:YES)、CPU61は、奇数ライン通電処理(S11)に処理を移行する。当該奇数ライン通電処理(S11)では、CPU61は、奇数ラインデータを対象として印刷周期Tの設定及び通電制御(即ち、加熱期間Hに係る発熱素子41Aへの通電)を行う。奇数ライン通電処理(S11)の詳細については、後に詳細に説明する。奇数ライン通電処理(S11)を終了すると、CPU61は、S12に処理を移行する。
S12に移行すると、CPU61は、印刷データ50に基づく印刷を完了したか否かを判断する。印刷データ50に基づく印刷を完了している場合(S12:YES)、CPU61は、通電制御処理プログラムを終了する。一方、未だ印刷対象となっていない印刷ラインデータ55が存在する場合(S12:NO)、CPU61は、S13に処理を移行する。
S13においては、CPU61は、印刷対象が奇数ラインデータであるか否かを判断する。印刷対象が奇数ラインデータである場合(S13:YES)、CPU61は、S14に処理を移行する。一方、印刷対象が偶数ラインデータである場合(S13:NO)、CPU61は、S2に処理を戻し、次の印刷ラインデータ55(即ち、奇数ラインデータ)の印刷処理を行う。
S14では、CPU61は、その他の処理を実行する。この時、CPU61は、印刷対象である奇数ラインデータに係る印刷周期Tにおける非加熱期間Cを設ける。その後、CPU61は、S2に処理を戻す。従って、奇数ラインデータに係る印刷周期Tにおいては、非加熱期間Cは、当該印刷周期Tの終期寄りに位置する(図8(A)、(C)参照)。
次に、本実施形態に係る奇数ライン通電処理プログラムについて、図7等を参照しつつ詳細に説明する。上述したように、奇数ライン通電処理プログラムは、奇数ライン通電処理(S11)において、CPU61により実行され、奇数ラインデータを対象とする印刷周期Tの設定及び通電制御(即ち、加熱期間Hに係る発熱素子41Aへの通電)に用いられる。
S21では、CPU61は、第1補正タイマの計時を開始する。図8(C)に示すように、第1補正期間Lは、奇数ラインデータに係る印刷周期Tにおいて、継続通電期間Ecの前に設定される期間であり、当該第1補正期間Lでは、発熱素子41Aへの通電は行われない。従って、当該第1補正期間Lは、非加熱期間Cとして機能する。第1補正タイマの計時を開始すると、CPU61は、S22に処理を移行する。
S22においては、CPU61は、印刷対象である奇数ラインデータに係る印刷周期Tにおける継続通電期間Ecを終了しているか否かを判断する。継続通電期間Ecを終了している場合(S22:YES)、CPU61は、S25に処理を移行する。一方、未だ継続通電期間Ecを終了していない場合(S22:NO)、CPU61は、S23に処理を移行する。
S23に移行すると、CPU61は、第1補正タイマの値に基づいて、第1補正期間Lを終了したか否かを判断する。第1補正期間Lを終了している場合(S23:YES)、CPU61は、S24に処理を移行する。一方、第1補正期間Lを終了していない場合(S23:NO)、CPU61は、第1補正期間Lを終了するまで処理を待機する。
S24では、CPU61は、継続通電処理を実行する。継続通電処理(S24)では、CPU61は、印刷対象である奇数ラインデータにおける加熱条件に適合するドットの配置に基づいて、対応する発熱素子41Aに対する継続的な通電(即ち、継続通電期間Ec)を開始する。その後、CPU61は、S22に処理を戻す。
尚、印刷データ50の印刷に際し、最初の印刷ラインデータ55(即ち、第1番目に当たる奇数ラインデータ)においては、CPU61は、第1補正期間Lの判断基準時を「0」として、S23の判断を行う。これにより、当該奇数ラインデータに係る印刷周期Tでは、印刷周期Tの始期と同期して継続通電期間Ecを開始することができ、図8(A)と同様の構成とし得る。
S25においては、CPU61は、継続通電期間Ecの終了に伴って、チョッピング通電(即ち、チョッピング通電期間Ei)を開始する。具体的には、CPU61は、印刷対象である奇数ラインデータにおける加熱条件に適合するドットの配置に基づいて、対応する発熱素子41Aに対する通電・非通電を所定の時間間隔で切り替え、発熱素子41Aに対する断続的な通電を行う。その後、CPU61は、S26に処理を移行する。
S26に移行すると、CPU61は、第2補正タイマの計時を開始する。図8(C)に示すように、第2補正期間Fは、奇数ラインデータに係る印刷周期Tにおいて、チョッピング通電期間Eiの後に設定される期間であり、当該第2補正期間Fでは、発熱素子41Aへの通電は行われない。従って、当該第2補正期間Fは、非加熱期間Cとして機能する。第2補正タイマの計時を開始すると、CPU61は、S27に処理を移行する。
S27では、CPU61は、印刷対象である奇数ラインデータに係る印刷周期Tにおけるチョッピング通電期間Eiを終了しているか否かを判断する。具体的には、CPU61は、後述するS29の処理が行われたか否かに基づいて、当該判断を行う。チョッピング通電期間Eiを終了している場合(S27:YES)、CPU61は、S30に処理を移行する。一方、未だチョッピング通電期間Eiを終了していない場合(S27:NO)、CPU61は、S28に処理を移行する。
S28においては、CPU61は、第2補正タイマの値に基づいて、第2補正期間Fの始期となったか否かを判断する。第2補正期間Fの始期となっている場合(S28:YES)、CPU61は、S29に処理を移行する。一方、第2補正期間Fの始期となっていない場合(S28:NO)、CPU61は、S27に処理を戻し、第2補正期間Fの始期となるまで、チョッピング通電を継続する。
尚、印刷データ50の印刷に際し、最初の印刷ラインデータ55(即ち、第1番目に当たる奇数ラインデータ)においては、CPU61は、第2補正期間Fの判断基準時を「所定値(例えば、図8(A)における加熱期間Hの終期と同時期を示す値)」として、S28の判断を行う。これにより、当該奇数ラインデータに係る印刷周期Tを、図8(A)と同様の構成とし得る。
S29に移行すると、CPU61は、チョッピング通電終了処理を実行する。当該チョッピング通電終了処理(S29)では、CPU61は、第2補正期間Fに始期となったことに伴い、チョッピング通電期間Eiを終了する。この時、CPU61は、チョッピング通電期間Eiを終了した旨のフラグをセットする。従って、上述したS27では、CPU61は、当該フラグの有無に基づいて、チョッピング通電期間Eiを終了したか否かを判断する。
S30では、CPU61は、チョッピング通電期間Eiの終了に伴って、加熱期間Hを終了する。その後、CPU61は、S31に処理を移行する。この加熱期間Hの終了により、奇数ラインデータに係る印刷周期Tにおいて、非加熱期間Cを除いた全ての期間は終了する。尚、奇数ラインデータに係る印刷周期Tにおいて、非加熱期間Cは、上述したS14及びS2により実現される。これにより、図8(C)に示すように、奇数ラインデータに係る印刷周期Tは、第1補正期間Lに基づく非加熱期間C、継続通電期間Ec及びチョッピング通電期間Eiからなる加熱期間H、第2補正期間Fを含む非加熱期間Cの順という構成となる。この点、第1番目に当たる奇数ラインデータに係る印刷周期Tは、継続通電期間Ec及びチョッピング通電期間Eiからなる加熱期間H、非加熱期間Cの順という構成となる(図8(A)参照)。
S31においては、CPU61は、次ラインデータ転送処理を実行する。当該次ラインデータ転送処理(S31)では、CPU61は、次に印刷対象となる印刷ラインデータ55(即ち、偶数ラインデータ)に基づくパルスデータを、サーマルヘッド41へ転送する。その後、CPU61は、奇数ライン通電処理プログラムを終了し、通電制御処理プログラム(図6参照)のS12に処理を移行する。
次に、上述した通電制御処理プログラム及び奇数ライン通電処理プログラムに基づく印刷周期Tと、サーマルヘッド41の温度の関係性について、図9を参照しつつ説明する。尚、図9に示す例は、印刷データ50に基づく印刷開始から第1番目から第3番目に当たる印刷ラインデータ55に係る印刷周期Tを示す。そして、図9上図は、縦軸にSTB信号の電圧レベルをとり、横軸に時間軸をとったグラフであり、図9下図は、縦軸に発熱素子41Aの温度をとり、横軸に図9上図と同一の時間軸をとったグラフである。
先ず、第1番目に当たる奇数ラインデータに係る印刷周期T(図9左側)においては、CPU61は、当該印刷周期Tの開始と同時期に継続通電期間Ecを開始し、継続通電期間Ecの終了に伴い、チョッピング通電期間Eiを開始する。そして、チョッピング通電期間Eiの終了に伴い、加熱期間Hを終了すると、CPU61は、非加熱期間Cを開始する。従って、この場合における当該印刷周期Tの構成は、図8(A)と同様の構成であり、継続通電期間Ec、チョッピング通電期間Ei、非加熱期間Cの順に構成される。そして、加熱期間H(継続通電期間Ec、チョッピング通電期間Ei)においては、発熱素子41Aへの通電によりサーマルヘッド41の温度は上昇する。そして、非加熱期間Cになると、発熱素子41Aへの通電が停止されるので、サーマルヘッド41の温度は徐々に低下する。
続く、第2番目に当たる偶数ラインデータの印刷周期T(図9中央)では、CPU61は、発熱素子41Aに対する通電を行うことなく、遅延発熱タイミングとなるまで処理を待機する。従って、当該偶数ラインデータの印刷周期Tにおいては、当該印刷周期Tの始期と同時に、非加熱期間Cが設けられる。即ち、第1番目の印刷周期Tに係る非加熱期間Cと、第2番目の印刷周期Tに係る非加熱期間Cが連続することとなるので、第1番目の非加熱期間Cにより放熱されたサーマルヘッド41の温度は、第2番目の非加熱期間Cによる放熱によって、更に低下する。即ち、当該テープ印刷装置1は、非加熱期間Cを長期間確保し得るので、サーマルヘッド41の温度を十分に低下させることができ、サーマルヘッド41の蓄熱による印刷品質の低下を防止し得る。その後、CPU61は、第2番目の印刷周期Tにおける継続通電期間Ec、チョッピング通電期間Eiの順で、発熱素子41Aに対する通電を行う。
その後、第3番目に当たる奇数ラインデータの印刷周期T(図9右側)においては、CPU61は、第1補正期間Lを経過した後、継続通電期間Ecによる通電を行う。第1補正期間Lでは、発熱素子41Aに対する通電が行われることはなく、当該第1補正期間Lは、非加熱期間Cとして機能する。従って、第2番目の印刷周期Tにおける加熱期間Hにより加熱されたサーマルヘッド41の温度を低下させることができる。そして、第1補正期間Lを設けることで、第3番目における継続通電期間Ecは、第1番目、第2番目における継続通電期間Ecよりも短期間となる。当該継続通電期間Ecを終了すると、CPU61は、チョッピング通電期間Eiによる通電を行う。当該印刷周期Tにおいて、チョッピング通電期間Eiは、第2補正期間Fの始期と同時期に打ち切られる。従って、第3番目の印刷周期Tにおけるチョッピング通電期間Eiは、第1番目、第2番目におけるチョッピング通電期間Eiよりも短期間となる。そして、チョッピング通電期間Eiを終了すると、CPU61は、第2補正期間F、非加熱期間Cにより、第3番目の印刷周期Tにおける加熱期間H(即ち、継続通電期間Ec、チョッピング通電期間Ei)で加熱されたサーマルヘッド41を放熱させる。従って、当該テープ印刷装置1は、非加熱期間Cを長期間確保し得るので、サーマルヘッド41の温度を十分に低下させることができ、サーマルヘッド41の蓄熱による印刷品質の低下を防止し得る。
尚、第4番目の偶数ラインデータの印刷周期Tの構成は、上述した第2番目に係る印刷周期Tの構成と同様である。即ち、第3番目の印刷周期Tにおける第2補正期間F及び非加熱期間Cに続いて、第4番目の印刷周期Tにおける非加熱期間Cとなる。従って、より長期間の非加熱期間Cを確保することができるため、当該テープ印刷装置1は、より十分に、サーマルヘッド41の温度を低下させることができ、サーマルヘッド41の蓄熱による印刷品質の低下を防止し得る。
以上、説明したように、本実施形態に係るテープ印刷装置1は、印刷周期T毎に、印刷データ50を構成する印刷ラインデータ55単位で、サーマルヘッド41に列設された発熱素子41Aに対して通電制御を行うことにより、印刷データ50に基づく印刷を行う。印刷周期Tは、加熱期間Hと、非加熱期間Cにより構成される。
そして、当該テープ印刷装置1は、印刷データ50における印刷順に基づく奇数ラインデータ、偶数ラインデータの別に基づいて、印刷周期Tの構成を交互に変更する。奇数ラインデータに係る印刷周期Tにおいては、加熱期間H(継続通電期間Ec、チョッピング通電期間Ei)を印刷周期Tの始期寄りに設け、当該加熱期間Hの経過後に非加熱期間Cを設ける。一方、偶数ラインデータに係る印刷周期Tにおいては、非加熱期間Cを当該印刷周期Tの始期寄りに設け、当該非加熱期間Cの経過後に、加熱期間Hを設ける。従って、奇数ラインデータに係る印刷周期Tと、当該奇数ラインデータに続く偶数ラインデータに係る印刷周期Tの間で、非加熱期間Cが連続する(図9参照)。この結果、当該テープ印刷装置1は、より長期間の非加熱期間Cを確保することができ、サーマルヘッド41に蓄熱した熱を十分に放熱することができ、印刷結果の尾引き等の発生を防止することができる。又、高速印刷を行う場合であっても、当該構成が変わることはないので、当該テープ印刷装置1は、特別な部品(例えば、耐電圧の高い部品等)を用いることなく、高速印刷に対応し得る。
又、当該テープ印刷装置1は、偶数ラインデータの後に印刷対象となる奇数ラインデータの印刷周期Tにおいて、継続通電期間Ecの前に第1補正期間Lを設けることで、当該印刷周期Tにおける継続通電期間Ecを短期化すると共に、当該印刷周期Tにおける非加熱期間Cを長期化し得る。従って、当該テープ印刷装置1は、サーマルヘッド41に蓄熱した熱を十分に放熱することができ、印刷結果の尾引き等の発生を防止することができる。又、当該テープ印刷装置1は、特別な部品(例えば、耐電圧の高い部品等)を用いることなく、高速印刷に対応し得る。更に、当該テープ印刷装置1は、偶数ラインデータにおける熱を有効に活用することで、その直後の奇数ラインデータにおける加熱期間Hを短くした場合でも良好な印刷を行い得る。
更に、当該テープ印刷装置1は、偶数ラインデータの後に印刷対象となる奇数ラインデータの印刷周期Tにおいて、チョッピング通電期間Eiの後に第2補正期間Fを設けることで、当該印刷周期Tにおけるチョッピング通電期間Eiを短期化すると共に、当該印刷周期Tにおける非加熱期間Cを長期化し得る。従って、当該テープ印刷装置1は、サーマルヘッド41に蓄熱した熱を十分に放熱することができ、印刷結果の尾引き等の発生を防止することができる。又、当該テープ印刷装置1は、特別な部品(例えば、耐電圧の高い部品等)を用いることなく、高速印刷に対応し得る。更に、当該テープ印刷装置1は、偶数ラインデータにおける熱を有効に活用することで、その直後の奇数ラインデータにおける加熱期間Hを短くした場合でも良好な印刷を行い得る。
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。例えば、本実施形態においては、偶数ラインデータの後に印刷対象となる奇数ラインデータに係る印刷周期Tに対して、第1補正期間L及び第2補正期間Fを設けることで、継続通電期間Ecとチョッピング通電期間Eiの両者を短期化していたが、この態様に限定されるものではない。即ち、継続通電期間Ecのみを短期化する構成であっても良いし、チョッピング通電期間Eiのみを短期化する構成であっても良い。
又、本実施形態においては、本発明に係るサーマルプリンタを、テープ印刷装置1に適用した例をもって説明したが、本発明は、テープ印刷装置に限定されるものではない。複数の発熱素子41Aが列設配置されたサーマルヘッド41を用い、各発熱素子41Aを選択的に通電することで印刷を行うものであれば、種々の装置に適用し得る。