以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した形態と同様とする。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
(第1実施形態)
本発明の一実施形態である第1実施形態について図1〜図3にしたがって説明する。図1は、本発明の一実施形態である蒸発器1の全体構成を示す外観斜視図である。図2は、蒸発器1の熱交換部であるコア部100の一部を拡大図示した斜視図である。図3は本実施形態の蒸発器1の構成および冷媒流れを説明するための模式図である。
蒸発器1は、車両用空調装置に用いられる冷凍サイクル装置中に配設される部品であり、圧縮機で高温高圧に圧縮された冷媒を、放熱器で放熱冷却し、減圧装置で低温低圧に減圧された後に、蒸発させる熱交換器である。
図1に示すように、蒸発器1は主にコア部100、上部ヘッダタンク3、下部ヘッダタンク4等により構成される。図2に示すように、コア部100は複数のチューブ20と複数のアウタフィン26とを交互に積層し、その積層方向の両最外方端部のアウタフィン26よりもさらに外側にサイドプレート28を配置して構成されている。アウタフィン26は熱交換用フィンである。図1および図2において、X方向は複数のチューブが並ぶ方向(横方向、積層方向)であり、Z方向は空気が流れる方向であり、Y方向はチューブが延びる方向(チューブの長手方向)であり鉛直上方向である。
蒸発器1のコア部100は、上下方向に延びるチューブ20が横方向に複数個並ぶ列を、冷媒と熱交換される外部流体である空気流れの上流側と下流側にそれぞれ一列ずつ配し、空気流れ方向に少なくとも2列に並ぶようにして構成されている。チューブ20は、薄肉のアルミニウム製の帯状板材を折り曲げ加工すること等によって、長手方向(内部流体通路方向)に直交する横断面が扁平状を呈するように形成された管状部材である。チューブ20内にはインナーフィン(図示せず)が接合されている。
コア部100は、上下方向に延びる複数のチューブ20aを横方向に並設し空気流れ下流側に配置して形成された複数の通路からなる単一の風下側流路列群21と、上下方向に延びる複数のチューブ20bを横方向に並設し空気流れ上流側に配置して形成された複数の通路からなる単一の風上側流路列群22と、をそれぞれ所定個数ずつ備えている。複数の風下側流路列群21と複数の風上側流路列群22は、空気流れ方向において前後に重ね合わされ一体になってコア部100を構成している。風下側流路列群21および風上側流路列群22のそれぞれの個数は、コア部における冷媒流れのパターンによって決定されるものである。
各風下側流路列群21を流れる冷媒は流路列群を構成する複数のチューブを同方向に一斉に流れ、複数の風下側流路列群21は風下側ヘッダタンク11の内部を介して連通されている。各風上側流路列群22を流れる冷媒は流路列群を構成する複数のチューブを同一方向に一斉に流れ、複数の風上側流路列群22は風上側ヘッダタンク12の内部を介して連通されている。
アウタフィン26は、薄肉のアルミニウム製帯板材を波状に加工したコルゲートフィンであり、例えば表面に熱交換効率を高めるためのルーバが形成されている。アウタフィン26は、チューブ20の外側面にろう付け接合されている。
サイドプレート28は、コア部100における補強部材であり、アルミニウム製の平板材をプレス加工することにより成形される。サイドプレート28の長手方向端部側は、平板状に形成され、他の大半の部分はチューブ20、アウタフィン26の積層方向の外側に開口するコの字状断面となるように形成されており、アウタフィン26にろう付けされている。
風下側ヘッダタンク11は、複数の風下側流路列群21の上端に接続される風下側上部タンク31および複数の風下側流路列群21の下端に接続される風下側下部タンク41からなり、風下側流路列群21を構成する複数のチューブ内から流入してきた冷媒が収集されるチャンバであり、風下側流路列群21を構成する複数のチューブ内に冷媒を分配するチャンバである。
風下側上部タンク31の横方向の左側端部(X方向の反対側の端部)には、ブロック状のコネクタ5がろう付け接合され、コネクタ5は冷媒をコア部100内に導入するために風下側ヘッダタンク11内部と連通するように設けられる冷媒入口部としての流入口51を備えている。流入口51は図示しないサイド流路を介して風下側下部タンク41内のX方向に対して反対側の端部に連通している。
風上側ヘッダタンク12は、複数の風上側流路列群22の上端に接続される風上側上部タンク32および複数の風上側流路列群22の下端に接続される風上側下部タンク42からなり、風上側流路列群22を構成する複数のチューブ内から流入してきた冷媒が収集されるチャンバであり、風上側流路列群22を構成する複数のチューブ内に冷媒を分配するチャンバである。
風上側上部タンク32の横方向の左側端部(X方向に対して反対側の端部)には、ブロック状のコネクタ5がろう付け接合され、コネクタ5はコア部100内部から冷媒が冷凍サイクル装置の外部部品に流出させるために風上側ヘッダタンク12内部と連通するように設けられる冷媒出口部としての流出口52を備えている。このように流入口51および流出口52は、各ヘッダタンク11,12の横方向の一方側端部の同一の側(本実施形態ではX方向の反対側)に設けられている。
上部ヘッダタンク3は、チューブ20の長手方向(延設方向、内部流体通路方向)に2分割された反チューブ側のタンクヘッダとチューブ側のプレートヘッダとからなり、キャップが設けられ、風下側上部タンク31および風上側上部タンク32を含んでいる。タンクヘッダおよびプレートヘッダは、それぞれ2つの半円形状あるいは2つの半矩形形状が接続される断面形状を有し、アルミニウム製の平板材をプレス加工して成形されている。そして、両ヘッダが互いに嵌合、ろう付けされ、送風される空気の流れ方向に2つの内部空間が並ぶ筒状体を形成している。風下側上部タンク31および風上側上部タンク32それぞれの長手方向端部の開口部には、アルミニウム製の平板材をプレス加工により成形したキャップがろう付け接合され、この開口部を閉塞している。
さらに、上部ヘッダタンク3には2つの内部空間をX方向(横方向)に分割する複数のセパレータ(図3参照)がろう付け接合されている。風上側上部タンク32の内部はセパレータ32a(風上側上部仕切り壁)によって横方向に2つの空間に分けられており、風下側上部タンク31の内部はセパレータ31a(風下側上部仕切り壁)によって横方向に2つの空間に分けられている。
セパレータ31aは、風下側のコア部において冷媒流れが上昇流となる上昇流路列群としての風下側流路列群21a,210と冷媒流れが下降流となる下降流路列群としての風下側流路列群21bとが隣接して形成されるように、風下側上部タンク31内に設けられて、上昇流と下降流を反転させる風下側仕切り壁である。セパレータ32aは、風上側のコア部において冷媒流れが上昇流となる上昇流路列群としての風上側流路列群22a,220と冷媒流れが下降流となる下降流路列群としての風上側流路列群22bとが隣接して形成されるように、風上側上部タンク32内に設けられて、上昇流と下降流を反転させる風上側仕切り壁である。
風下側上部タンク31内部のセパレータ31aよりも右側(X方向)の領域においては、風下側上部タンク31の横方向右側の内部空間と風上側上部タンク32の横方向右側の内部空間とが複数の第1の上部側連通穴300(本実施形態では2個の第1の上部側連通穴300)によって互いに連通している。
第1の上部側連通穴300は、流入口51および流出口52が配置される横方向同一側の端部に対して横方向の他方側に設けられたタンク内部を風下側と風上側とに仕切る壁に形成されており、流入口51から最も遠い部位にある風下側流路列群210(以下、最遠部位の風下側流路列群210とも称する)に接続される風下側上部タンク311の内部と、流出口52から最も遠い部位にある風上側流路列群220(以下、最遠部位の風上側流路列群220とも称する)に接続される風上側上部タンク321の内部とを連絡する連通手段となる。第1の上部側連通穴300は、最遠部の風下側上部タンク311内の冷媒が風上側に移動して風上側上部タンク321内に流れるときに通過する第1の上部側連通路33の一部でもある。
第1の上部側連通路33は、流入口51から最も遠い部位にある風下側上部タンク311の内部と、流出口52から最も遠い部位にある風上側上部タンク321の内部とを連絡する上部側連通路である。風下側上部タンク311の内部はセパレータ31aによって横方向に仕切られた2つの空間のうち、流入口51から遠い側にある空間であり、風上側上部タンク321の内部はセパレータ32aによって横方向に仕切られた2つの空間のうち、流出口52から遠い側にある空間である。
下部ヘッダタンク4は、上記の上部ヘッダタンク3に準ずる形態であり、タンクヘッダとプレートヘッダとにより構成された筒状体の長手方向両端部の開口部にキャップが設けられ、風下側下部タンク41および風上側下部タンク42を含んでいる。
さらに、下部ヘッダタンク4には2つの内部空間をX方向(横方向)に分割する複数のセパレータ(図3参照)がろう付け接合されている。風上側下部タンク42の内部はセパレータ42a(風上側下部仕切り壁)によって横方向に2つの空間に分けられており、風下側下部タンク41の内部はセパレータ41a(風下側下部仕切り壁)によって横方向に2つの空間に分けられている。さらに風下側下部タンク41の内部であって、風下側流路列群21bと風下側流路列群210の境界に位置する部位には、中央に貫通孔が形成された絞りプレート41bが設けられている。絞りプレート41bは、風下側下部タンク411内部の流路断面よりも小さい開口面積を有する貫通孔を備えることによって、冷媒の流れに対して流通抵抗を与える流通抵抗部として機能する。
セパレータ41aは、風下側のコア部において冷媒流れが上昇流となる上昇流路列群としての風下側流路列群21a,210と冷媒流れが下降流となる下降流路列群としての風下側流路列群21bとが隣接して形成されるように、風下側下部タンク41内に設けられ、上昇流と下降流を反転させる風下側仕切り壁である。セパレータ42aは、風上側のコア部において冷媒流れが上昇流となる上昇流路列群としての風上側流路列群22a,220と冷媒流れが下降流となる下降流路列群としての風上側流路列群22bとが隣接して形成されるように、風上側下部タンク42内に設けられ、上昇流と下降流を反転させる風上側仕切り壁である。
風下側下部タンク41内部の絞りプレート41bよりも右側(X方向)の領域においては、風下側下部タンク41の横方向右側の内部空間と風上側下部タンク42の横方向右側の内部空間とが複数の第1の下部側連通穴400(本実施形態では2個の第1の下部連通穴400)によって互いに連通している。
第1の下部側連通穴400は、流入口51および流出口52が配置される横方向同一側の端部に対して横方向の他方側に設けられたタンク内部を風上側と風下側とに仕切る壁に形成されており、流入口51から最も遠い部位にある風下側流路列群210に接続される風下側下部タンク411の内部と、流出口52から最も遠い部位にある風上側流路列群220に接続される風上側下部タンク421の内部とを連絡する連通手段となる。第1の下部側連通穴400は、最遠部の風下側下部タンク411内の冷媒が風上側に移動して風上側下部タンク421内に流れるときに通過する第1の下部側連通路43の一部でもある。
第1の下部側連通路43は、流入口51から最も遠い部位にある風下側下部タンク411の内部と、流出口52から最も遠い部位にある風上側下部タンク421の内部とを連絡する第1の連通路である。風下側下部タンク411の内部は、セパレータ41aによって横方向に仕切られた2つの空間のうち、流入口51から遠い側にある空間であり、風上側下部タンク421の内部はセパレータ42aによって横方向に仕切られた2つの空間のうち、流出口52から遠い側にある空間である。
風下側下部タンク41内部のセパレータ41aよりも右側(X方向)であって絞りプレート41bよりも左側(X方向の反対側)の領域においては、風下側下部タンク411内部の風下側流路列群21b下方の内部空間(絞りプレート41bよりも左側の内部空間)と、最遠部位の風上側流路列群220に接続される下方の風上側下部タンク421の内部空間とが複数の第2の下部側連通穴401(本実施形態では2個の第2の下部側連通穴401)によって互いに連通している。
第2の下部側連通穴401は、流入口51および流出口52が配置される横方向同一側の端部に対して横方向の他方側に設けられたタンク内部を風上側と風下側とに仕切る壁に形成されている。第2の下部側連通穴401は、流入口51から最遠部位の風下側流路列群210に隣り合う風下側流路列群21bに接続されている風下側下部タンク411の内部と、流出口52から最も遠い部位にある風上側流路列群220に接続される風上側下部タンク421の内部とを連絡する連通手段となる。
第2の下部側連通穴401は、風下側流路列群21bを下降してきた冷媒の一部が全パス部201(最遠部位で、絞りプレート41bを通過した冷媒の一部が風下側流路列群210を上昇する部分)に流入する前に、風下側から風上側に移動して風上側下部タンク421内に流れるときに通過する第2の下部側連通路44の一部でもある。この第2の下部側連通路44は、流入口51から最も遠い部位にある風下側下部タンク411の風下側流路列群21bに接続される内部空間と、流出口52から最も遠い部位にある風上側下部タンク421の内部空間とを連絡する第2の連通路である。
すなわち、蒸発器1は、風下側の全パス部201と風上側の全パス部200(最遠部位で、第1の下部側連通路43及び第2の下部側連通路44を流れてきた冷媒が風上側流路列群220を上昇する部分)とを接続する第1の下部側連通路43に加え、第2の下部側連通穴401が形成されることにより、風下側流路列群21bと風上側流路列群220とを接続する第2の下部側連通路44を備えている。したがって、蒸発器1は、第2の下部側連通路44を備えるため、全パス部の風上側と全パス部の風下側との間で冷媒を流すだけでなく、全パス部の風上側と他の流路列群の下流側領域(風下側流路列群21bの下流側領域)との間でも冷媒を流すことができる。そして、このような冷媒流れを形成するために、蒸発器1は、最遠部位の風上側流路列群220が最遠部位の風下側流路列群210よりも横方向の幅が大きく形成されているので、全パス部において、風上側のコア部の積層方向Xの幅が風下側のコア部の積層方向Xの幅よりも大きくなっている。
また、上下のヘッダタンク3,4のコア部100寄りの壁面には、チューブ挿入口、サイドプレート用挿入口が長手方向に同一ピッチで設けられており、各チューブ20の長手方向端部側およびサイドプレート28の長手方向端部側がそれぞれ挿入され、ろう付け接合されている。これによってチューブ20は上下のヘッダタンク3,4の内部空間に連通し、また、サイドプレート28の長手方向端部側は上下のヘッダタンク3,4に支持されている。
以上の構成により、風下側流路列群21bを下降した冷媒の一部は、第2の下部側連通路44を通って風上側下部タンク421内に入り、さらに最遠部位の風上側流路列群220を上昇して流れ、風上側上部タンク321に流入することになる。一方、風下側流路列群21bを下降した冷媒の残余は、絞りプレート41bで流通抵抗を受けた後、第1の下部側通路43を通って風上側下部タンク421内に入る流れと、最遠部位の風下側流路列群210を上昇し第1の上部側連通路33を通る流れとに分流する。そして、第1の下部側連通路43から風上側下部タンク421内に入った流れは、風下側流路列群21bから第2の下部側連通路44を通ってきた冷媒と合流し、この合流した冷媒は、最遠部位の風上側流路列群220を上昇して、風上側上部タンク321で、風下側流路列群210から第1の上部側連通路33を通ってきた流れと合流する。
本実施形態で説明した蒸発器1における冷媒流れのパターンは、風下側における流路列群が1個の風下側流路列群21a(冷媒上昇部)、1個の風下側流路列群21b(冷媒下降部)、1個の最遠部位の風下側流路列群210からなる3個の流路列群であり、風上側における流路列群が1個の最遠部位の風上側流路列群220、1個の風上側流路列群22b(冷媒下降部)、1個の風上側流路列群22a(冷媒上昇部)からなる3個の流路列群で構成されるパターンである。
そして、この場合の冷媒パス数は以下のようにカウントする。つまり、冷媒が上方向の同方向に流れる最遠部位の風下側流路列群210および最遠部位の風上側流路列群220におけるそれぞれの冷媒流れを合わせて1パスの冷媒パスとカウントし、これに加え、複数の風下側流路列群21のうち、最遠部位の風下側流路列群210を除く他の風下側流路列群21a,21bの個数(ここでは合計2個)と、複数の風上側流路列群22のうち、最遠部位の風上側流路列群220を除く他の風上側流路列群22a,22bの個数(ここでは合計2個)と、を合わせてカウントする。これにより、本実施形態ではコア部100を流れる冷媒パス数が5パスである。また、蒸発器1における冷媒流れのパターンは、風下側流路列群21、風上側流路列群22、全パス部200(風下側から風上側に分流される冷媒が上昇する部分)のそれぞれのパス数を冷媒の流れる順番に記載すると、2−1−2の冷媒パターンとなる。
次に、上記構成の蒸発器1における冷媒の流れを順に説明する。冷凍サイクル装置の外部構成部品からの冷媒は、下部の流入口51からセパレータ41aよりも横方向左側(X方向の反対側)の空間である風下側下部タンク41の内部に流入した後、風下側流路列群21aを上昇し(第1パス)、さらにセパレータ31aよりも横方向左側(X方向の反対側)の空間である風下側上部タンク31の内部で反転して風下側流路列群21bを下降し(第2パス)、最遠部位の風下側下部タンク411の内部に流入する。
風下側下部タンク411の内部の冷媒は、まず、絞りプレート41bよりも上流側でその一部が分配され、2個の第2の下部側連通穴401を介して風上側に向かって第2の下部側連通路44を流れて風上側に移動し風上側下部タンク421内から最遠部位の風上側流路列群220を上昇して(第3パス、全パス部200)風上側上部タンク321に入る。
一方、風下側下部タンク411内部の残余の冷媒は、絞りプレート41bの貫通孔を通過した後、最遠部位の風下側流路列群210を上昇して(第3パス、全パス部201)、風下側上部タンク311内から第1の上部側連通穴300を介して風上側に向かって第1の上部側連通路33を流れ、風上側上部タンク321内に入る冷媒流れと、絞りプレート41bの貫通孔を通過後、第1の下部側連通穴400を介して風上側に向かって第1の下部側連通路43を流れ、風上側下部タンク421内で第2の下部側連通路44を通ってきた流れと合流する冷媒流れと、に分流される。
次に風上側上部タンク321内で合流した冷媒は、反転して風上側流路列群22bを下降(第4パス)した後、風上側下部タンク42内でさらに反転し、風上側流路列群22aを上昇(第5パス)して風上側上部タンク32内から上部の流出口52を通って外部に流出する。
上記従来の蒸発器においては、風上側の流路列群と風下側の流路列群とがタンク部を介して接続されている全パス部の横方向長さを小さくした場合、冷媒が慣性力によってコア部の端部側に多く流れてもコア幅が短いため、コア部の吹き出し空気を均一な温度分布に近づけるようにできる。しかしながら、全パス部の横方向長さを短くすると、風下側のタンクと風上側のタンク部を連通するための連通穴を形成するための面積が小さいため、連通路の通路断面積が小さくなることになる。このため、蒸発器における冷媒流れの圧力損失が大きくならざるを得ず、蒸発器の冷却性能、効率の低下を招く。
そこで、本実施形態の蒸発器1によれば、上記のような課題を解消するものであり、最遠部位において、横方向長さが長い方の風上側流路列群220に接続される風上側下部タンク421と、横方向長さが短い方の風下側流路列群210よりも冷媒流れ上流側に位置する風下側流路列群21bに接続される風下側下部タンク411とを第2の下部側連通路44でさらに繋げる構成を備えている。このため、最遠部位にある風上側下部タンク421と風下側下部タンク411とが第1の下部側連通路43で連通するだけでなく、第2の下部側連通路44によってさらなる通路断面積の拡大が図れるのである。すなわち、全パス部以外にも風下側と風上側とを繋げる連通路を備えているのである。これにより、冷媒が風下側下部タンク411から風上側下部タンク421へ流れるときの連通路通過時の圧力損失を低減すること、及び全パス部の横方向長さを抑制することの両方の効果を奏するのである。したがって、冷媒流れの圧力損失の低減と、コア部100からの吹き出し空気の温度分布の適正化とを両立する蒸発器1を提供できる。
また、蒸発器1は、第2の下部側連通路44が接続される風下側下部タンク411の内部であって、第2の下部側連通路44に冷媒の一部が分流した後、第1の下部側連通路43に向けて残余の冷媒が流れる部位に、冷媒の通路断面積を絞る絞り部としての絞りプレート41bを備えている。
この構成によれば、当該絞り部を備えることにより、当該絞り部が第1の下部側連通路43側に流れる冷媒の流通抵抗となるため、絞りプレート41bの貫通孔を通って流れる冷媒量が抑制され、冷媒が慣性力の働きによって隣の風下側流路列群21bから離れた部位へ流れ易い傾向を改善することができる。したがって、全パス部の流路列群における横方向についての冷媒流量分布の偏りを是正して、コア部100から吹き出される空気の良好な温度分布の形成を促進することができる。
また、絞りプレート41bは貫通孔が形成された仕切り壁で構成されることにより、適正な大きさの貫通孔を備える仕切り壁をタンク内部に設ければ、所望の流通抵抗を有する絞りを構成することができる。したがって、蒸発器1の構成を複雑にすることなく、良好な温度分布を有する吹き出し空気を形成することができる。
また、流出口52から最も遠い部位にある風上側流路列群220は、流入口51から最も遠い部位にある風下側流路列群210よりも横方向の長さが長い流路列群である。第2の下部側連通路44は、横方向の長さが長い方の最遠部位の風上側流路列群220が接続されている風上側下部タンク421の内部と、横方向の長さが短い方の最遠部位の風下側流路列群210に対して横方向の隣に位置する風下側流路列群21bが接続されている風下側下部タンク411の内部とを連絡している。
この構成によれば、風上側流路列群220に対して風下側流路列群210の横方向長さを短くした全パス部201,200を有する蒸発器1が得られる。これにより、風上側流路列群220における圧力損失を抑制しつつ、風下側流路列群210における吹き出し空気の温度分布の偏りを改善する蒸発器1を提供できる。
また、流入口51および流出口52がコア部100の幅方向において片側に集約されている蒸発器1の場合には、風上側流路列群22の流出口52に近い領域が冷媒過熱領域(スーパーヒート域)となる。そのため、液冷媒の停滞が発生しやすい部位は、流入口51および流出口52から最も遠い部位であり、より冷えた空気と接する最遠部の風下側流路列群となる。本実施形態の蒸発器1においては液冷媒の停滞の発生を改善することができる。
(第2実施形態)
第2実施形態では、第1実施形態で説明した蒸発器1の他の形態を図4にしたがって説明する。図4は第2実施形態に係る蒸発器1Aの構成および冷媒流れを説明するための模式図である。
蒸発器1Aは、図3で示した蒸発器1に対して、第2の下部側連通路44を第2の上部側連通路34に置き換えた流路構成と、流入口51及び流出口52から最遠部位にある風下側流路列群210の横方向長さが風上側より長い構成と、を有する。蒸発器1Aは、これらの構成に関わる要素を除くその他の構成については図3の蒸発器1と同様であり、その作用効果も同様である。
最遠部位にある風下側上部タンク311の内部には、中央に貫通孔が形成された絞りプレート31bが横方向の空間を二つに仕切るように設けられている。絞りプレート31bは、風下側上部タンク311内部の流路断面よりも小さい開口面積を有する貫通孔を備えることによって、冷媒の流れに対して流通抵抗を与える流通抵抗部として機能する。
風下側上部タンク311内部の絞りプレート31bよりも右側(X方向)の領域においては、風下側上部タンク311の横方向右側の内部空間と最遠部にある風上側上部タンク321の内部空間とが複数の第1の上部側連通穴300(本実施形態では2個の第1の上部連通穴300)によって互いに連通している。
第1の上部側連通穴300は、下部に流入口51および上部に流出口52が配置される横方向の一方側端部に対して横方向の他方側に設けられたタンク内部を風下側と風上側とに仕切る壁に形成されており、流入口51から最遠部位の風下側流路列群210に接続される風下側上部タンク311の内部と、流出口52から最遠部位の風上側流路列群220に接続される風上側上部タンク321の内部とを連絡する連通手段となる。第1の上部側連通穴300は、最遠部の風下側上部タンク311内の冷媒が風上側に移動して風上側上部タンク321内に流れるときに通過する第1の上部側連通路33の一部でもある。
第1の上部側連通路33は、流入口51から最遠部位の風下側上部タンク311の内部と、流出口52から最遠部位の風上側上部タンク321の内部とを連絡する第1の連通路である。
風下側上部タンク41内部のセパレータ31aよりも右側(X方向)であって絞りプレート31bよりも左側(X方向の反対側)の領域においては、最遠部位の風下側流路列群210に接続される上方の風下側上部タンク311の内部空間と、風上側上部タンク321内部の風上側流路列群22b上方の内部空間(絞りプレート31bよりも左側の内部空間)と、が複数の第2の上部側連通穴301(本実施形態では2個の第2の上部側連通穴301)によって互いに連通している。
第2の上部側連通穴301は、流入口51および流出口52が配置される横方向の一方側の端部に対して横方向の他方側に設けられたタンク内部を風上側と風下側とに仕切る壁に形成されており、流入口51から最も遠い部位にある風下側流路列群210に接続される風下側上部タンク311の内部と、流出口52から最遠部位の風上側流路列群220に隣り合う風上側流路列群22bに接続される風上側上部タンク321の内部とを連絡する連通手段となる。
第2の上部側連通穴301は、風下側の全パス部201Aを構成する風下側流路列群210を上昇してきた冷媒が風上側の全パス部200Aに流入する流れ以外に、全パス部200Aの左側の隣に位置するタンク内に流入する流れに分流するときに風下側から風上側に向けて通過する第2の上部側連通路34の一部でもある。
この第2の上部側連通路34は、流入口51から最遠部位の風下側上部タンク311の内部空間と、流出口52から最遠部位の風上側上部タンク321の風上側流路列群22bに接続される内部空間と、を連絡する第2の連通路である。
すなわち、蒸発器1Aは、風下側の全パス部201A(最遠部位であって、第1の上部側連通路33及び第2の上部側連通路34に分流する冷媒が風上側流路列群210を上昇する部分)と風上側の全パス部200Aとを接続する第1の上部側連通路33に加え、第2の上部側連通穴301が形成されることにより、風上側流路列群22bと風下側流路列群210とを接続する第2の上部側連通路34を備えている。したがって、蒸発器1Aは、第2の上部側連通路34を備えるため、全パス部の風上側と全パス部の風下側との間で冷媒を流すだけでなく、全パス部の風下側と他の流路列群の上流側領域(風上側流路列群22bの上流側領域)との間でも冷媒を流すことができる。そして、このような冷媒流れを形成するために、蒸発器1Aは、最遠部位の風下側流路列群210が最遠部位の風上側流路列群220よりも横方向の幅が大きく形成されているので、全パス部において、風下側のコア部の積層方向Xの幅が風上側のコア部の積層方向Xの幅よりも大きくなっている。
以上の構成により、風下側流路列群210を上昇する冷媒の一部は、第2の上部側連通路34を通って風上側上部タンク321内に入り、さらに隣の風上側流路列群22bを下降して流れる。一方、風下側流路列群210を上昇する冷媒の残余は、絞りプレート31bで流通抵抗の影響を受けて慣性力を減少するため、流量が絞られて第1の上部側通路33を通って風上側上部タンク321内に入る。このように冷媒は一旦、分流して、第2の上部側連通路34を通ってきた流れと第1の上部側通路33を通ってきた流れとが風上側上部タンク321内で合流するのである。言い換えれば、冷媒は、第2の上部側連通路34や絞りプレート31bの働きによって、第2の上部側連通路34へ流れようとする冷媒と第1の上部側連通路33へ流れようとする冷媒とに分流する形態で風下側流路列群210を上昇して流れ、それぞれの分流する冷媒流量が決定されるのである。
そして、この合流した冷媒は、隣の風上側流路列群22bを下降して、風上側下部タンク42でUターンして風下側流路列群22aを上昇し、風上側上部タンク32の一方側部位に入り、流出口52から外部に流出する。蒸発器1Aにおける冷媒流れのパターンは、蒸発器1と同様であり、冷媒パス数が5パスで、2−1−2の冷媒パターンである。
本実施形態の蒸発器1Aによれば、上述する従来の蒸発器が有する課題を解消するものであり、最遠部位において、横方向長さが長い方の風下側流路列群210に接続される風下側上部タンク311と、横方向長さが短い方の風上側流路列群220よりも冷媒流れ下流側に位置する風上側流路列群22bに接続される風上側上部タンク321とを第2の連通路34でさらに繋げる構成を備えている。このため、最遠部位にある風上側上部タンク321と風下側上部タンク311とが第1の上部側連通路33で連通するだけでなく、第2の上部側連通路34によってさらなる通路断面積の拡大が図れるのである。すなわち、全パス部200A以外にも風下側と風上側とを繋げる連通路を備えているのである。これにより、冷媒が風下側上部タンク311から風上側上部タンク321へ流れるときの連通路通過時の圧力損失を低減すること、及び全パス部200Aの横方向長さを抑制することの両方の効果を奏するのである。したがって、冷媒流れの圧力損失の低減と、コア部100からの吹き出し空気の温度分布の適正化とを両立する蒸発器1Aを提供できる。
蒸発器1Aは、第2の上部側連通路34が接続される風下側上部タンク311内部の通路断面積を絞る絞り部としての絞りプレート31bを、横方向において第2の上部側連通路34と第1の上部側連通路33との間に設けている。
この構成によれば、当該絞り部が第1の上部側連通路33側に流れる冷媒の流通抵抗となるため、全パス部201Aの流路列群を流れる横方向についての冷媒流量分布の偏りを是正して、コア部100から吹き出される空気の良好な温度分布の形成を促進することができる。
また、絞りプレート31bは貫通孔が形成された仕切り壁で構成されることにより、適正な大きさの貫通孔を備える仕切り壁をタンク内部に設ければ、所望の流通抵抗を有する絞りを構成することができる。したがって、蒸発器1Aの構成を複雑にすることなく、良好な温度分布を有する吹き出し空気を形成することができる。
また、流入口51から最も遠い部位にある風下側流路列群210(あるいは全パス部201)は、流出口52から最も遠い部位にある風上側流路列群220よりも横方向の長さが長い流路列群である。第2の上部側連通路34は、横方向の長さが長い方の最遠部位の風下側流路列群210が接続されている風下側上部タンク311の内部と、横方向の長さが短い方の最遠部位の風上側流路列群220に対して横方向の隣に位置する風上側流路列群22bが接続されている風上側上部タンク321の内部とを連絡している。
この構成によれば、風下側流路列群210に対して風上側流路列群220の横方向長さを短くした全パス部201A,200Aを有する蒸発器1Aが得られる。これにより、風下側流路列群210における圧力損失を抑制しつつ、風上側流路列群220における吹き出し空気の温度分布の偏りを改善する蒸発器1Aを提供できる。
(第3実施形態)
第3実施形態では、第2実施形態で説明した蒸発器1Aの他の形態(冷媒流れが3パスで冷媒流れパターンが1−1−1の場合)を図5にしたがって説明する。図5は冷媒流れパターンが1−1−1の場合に係る蒸発器1Bの構成および冷媒流れを示した模式図である。
本実施形態の蒸発器1Bは、図4で示した蒸発器1Aに対して、コア部101の構成、冷媒パス数が3パスであること、冷媒流れパターンが1−1−1であること、最遠部位の流路列群における冷媒流れが下降流であること等が異なっている。その他の構成については図4の蒸発器1Aと同様であり、その作用効果も同様である。
本実施形態の蒸発器1Bにおける冷媒流れのパターンは、風下側における流路列群が1個の風下側流路列群21a(冷媒上昇部)、1個の最遠部位の風下側流路列群211(冷媒下降部)からなる2個の流路列群であり、風上側における流路列群が1個の最遠部位の風上側流路列群221(冷媒下降部)、1個の風上側流路列群22a(冷媒上昇部)からなる2個の流路列群で構成されるパターンである。
これにより、本実施形態ではコア部101を流れる冷媒パス数が3パスである。また、冷媒流れのパターンは、風下側流路列群21、風上側流路列群22、全パス部201(最遠部位の風上側流路列群211であって風下側から風上側に冷媒が分流する部分)及び全パス部200(最遠部位の風上側流路列群221であって風上側に分流しない冷媒が下降する部分)のそれぞれのパス数を冷媒の流れる順番に記載すると、1−1−1のパターンとなる。
風下側下部タンク41の内部はセパレータ41a(風下側下部仕切り壁)によって横方向に2つの空間に分けられており、風上側上部タンク32の内部はセパレータ32a(風上側上部仕切り壁)によって横方向に2つの空間に分けられている。さらに風下側上部タンク31の内部であって、セパレータ41aと横方向に同様の位置には中央に貫通孔が形成された絞りプレート31bが設けられている。絞りプレート31bは、風下側上部タンク311内部の流路断面よりも小さい開口面積を有する貫通孔を備えることによって、冷媒の流れに対して流通抵抗を与える流通抵抗部として機能する。
セパレータ41aは、風下側のコア部において冷媒流れが上昇流となる上昇流路列群としての風下側流路列群21aと冷媒流れが下降流となる下降流路列群としての風下側流路列群211とが隣接して形成されるように、風下側下部タンク41内に設けられ、上昇流と下降流を反転させる風下側仕切り壁である。セパレータ32aは、風上側のコア部において冷媒流れが下降流となる下降流路列群としての風上側流路列群221と冷媒流れが上昇流となる上昇流路列群としての風上側流路列群22aとが隣接して形成されるように、風上側上部タンク32内に設けられ、上昇流と下降流を反転させる風上側仕切り壁である。
風下側上部タンク31内部の絞りプレート31bよりも右側(X方向)の領域においては、風下側上部タンク31の横方向右側の内部空間と風上側上部タンク32の横方向右側の内部空間とが複数の第1の上部側連通穴300(本実施形態では2個の第1の上部連通穴300)によって互いに連通している。
第1の上部側連通穴300は、流入口51および流出口52が配置される横方向同一側の端部に対して横方向の他方側に設けられたタンク内部を風上側と風下側とに仕切る壁に形成されている。第1の上部側連通穴300は、流入口51から最遠部位の風下側流路列群211に接続される風下側上部タンク311の内部と、流出口52から最遠部位の風上側流路列群221に接続される風上側上部タンク321の内部とを連絡する連通手段となる。第1の上部側連通穴300は、最遠部の風下側上部タンク311内の冷媒が風上側に移動して風上側上部タンク321内に流れるときに通過する第1の上部側連通路33の一部でもある。
第1の下部側連通路43は、流入口51から最遠部位の風下側下部タンク411の内部と、流出口52から最遠部位の風上側下部タンク421の内部とを連絡する第1の連通路である。風下側下部タンク411の内部は、セパレータ41aによって横方向に仕切られた2つの空間のうち、流入口51から遠い側にある空間であり、風上側下部タンク421の内部は、コア部101の風上側下部タンク内における横方向全体を占める。
風下側上部タンク31内部の絞りプレート31bよりも左側(X方向の反対側)の領域においては、風下側上部タンク311内部の風下側流路列群21a上方の内部空間(絞りプレート31bよりも左側の内部空間)と、最遠部位の風上側流路列群221に接続される上方の風上側上部タンク321の内部空間とが複数の第2の上部側連通穴301(本実施形態では2個の第2の上部側連通穴301)によって互いに連通している。
第2の上部側連通穴301は、流入口51および流出口52が配置される横方向同一側の端部に対して横方向の他方側に設けられたタンク内部を風上側と風下側とに仕切る壁に形成されている。第2の上部側連通穴301は、流入口51から最遠部位の風下側流路列群211に隣り合う風下側流路列群21aに接続されている風下側上部タンク311の内部と、流出口52から最遠部位の風上側流路列群221に接続される風上側上部タンク321の内部とを連絡する連通手段となる。
第2の上部側連通穴301は、風下側流路列群21aを上昇してきた冷媒の一部が全パス部201に流入する前に、風下側から風上側に移動して風上側上部タンク321内に流れるときに通過する第2の上部側連通路34の一部でもある。この第2の上部側連通路34は、流入口51から最遠部位の風下側上部タンク311の風下側流路列群21aに接続される内部空間と、流出口52から最遠部位の風上側上部タンク321の内部空間とを連絡する第2の連通路である。
すなわち、蒸発器1Bは、風下側の全パス部201と風上側の全パス部200とを接続する第1の上部側連通路33に加え、第2の上部側連通穴301が形成されることにより、風下側流路列群21aと風上側流路列群221とを接続する第2の上部側連通路34を備えている。したがって、蒸発器1Bは、第2の上部側連通路34を備えるため、全パス部の風上側と全パス部の風下側との間で冷媒を流すだけでなく、全パス部の風上側と風下側の他の流路列群の下流側領域(風下側流路列群21aの下流側領域)との間でも冷媒を流すことができる。そして、このような冷媒流れを形成するために、蒸発器1Bは、最遠部位の風上側流路列群221が最遠部位の風下側流路列群211よりも横方向の幅が大きく形成されているので、全パス部において、風上側のコア部の積層方向Xの幅が風下側のコア部の積層方向Xの幅よりも大きくなっている。
以上の構成により、風下側流路列群21aを上昇した冷媒の一部は、第2の上部側連通路34を通って風上側上部タンク321内に入り、さらに最遠部位の風上側流路列群221を下降して流れ、風上側下部タンク421に流入することになる。一方、風下側流路列群21aを上昇した冷媒の残余は、絞りプレート31bで流通抵抗を受けた後、第1の上部側通路33を通って風上側上部タンク321内に入る流れと、最遠部位の風下側流路列群211を下降して第1の下部側連通路43を通る流れとに分流する。そして、第1の上部側連通路33から風上側上部タンク321内に入った流れは、風下側流路列群21aから第2の上部側連通路34を通ってきた冷媒と合流し、この合流した冷媒は、最遠部位の風上側流路列群221を上昇して、風上側下部タンク421で、風下側流路列群211から第1の下部側連通路43を通ってきた流れと合流する。
次に、上記構成の蒸発器1Bにおける冷媒の流れを順に説明する。冷凍サイクル装置の外部構成部品からの冷媒は、下部の流入口51からセパレータ41aよりも左側(X方向の反対側)の空間である風下側下部タンク41の内部に流入した後、風下側流路列群21aを上昇して(第1パス)、風下側上部タンク311の内部に流入する。風下側上部タンク311の内部の冷媒は、まず、絞りプレート31bよりも上流側でその一部が分配され、2個の第2の上部側連通穴301を介して風上側に向かって第2の上部側連通路34を流れて風上側に移動し風上側上部タンク321内から最遠部位の風上側流路列群221を下降して(第2パス、全パス部200)風上側下部タンク421に入る。
一方、風下側上部タンク311内部の残余の冷媒は、絞りプレート31bの貫通孔を通過した後、最遠部位の風下側流路列群211を下降して(第2パス、全パス部201)風下側下部タンク411内から第1の下部側連通穴400を介して風上側に向かって第1の下部側連通路43を流れ、風上側下部タンク421内に入る冷媒流れと、絞りプレート31bの貫通孔を通過後、第1の上部側連通穴300を介して風上側に向かって第1の上部側連通路33を流れ、風上側上部タンク321内から最遠部位の風下側流路列群221を下降して風上側下部タンク421内に入り、第1の下部側連通路43を通ってきた流れと合流する冷媒流れと、に分流される。つまり、第2の上部側連通路34を通る冷媒と第1の上部側連通路33を通る冷媒とは風上側上部タンク321内で合流し、この合流した冷媒は、第1の下部側連通路43を通る冷媒と風上側下部タンク421内で合流するのである。
次に風上側下部タンク421内で合流した冷媒は、反転して風上側流路列群22aを上昇し(第3パス)、セパレータ32aよりも横方向左側(X方向の反対側)の空間である風上側上部タンク32内から上部の流出口52を通って外部に流出する。
本実施形態の蒸発器1Bによれば、上記のような従来の蒸発器が有する課題を解消するものであり、最遠部位において、横方向長さが長い方の風上側流路列群221に接続される風上側上部タンク321と、横方向長さが短い方の風下側流路列群211よりも冷媒流れ上流側に位置する風下側流路列群21aに接続される風下側上部タンク311とを第2の上部側連通路34でさらに繋げる構成を備えている。このため、最遠部位にある風上側上部タンク321と風下側上部タンク311とが第1の上部側連通路33で連通するだけでなく、第2の上部側連通路34によってさらなる通路断面積の拡大が図れるのである。すなわち、全パス部以外にも風下側と風上側とを繋げる連通路を備えているのである。これにより、冷媒が風下側上部タンク311から風上側上部タンク321へ流れるときの連通路通過時の圧力損失を低減すること、及び全パス部の横方向長さを抑制することの両方の効果を奏するのである。したがって、冷媒流れの圧力損失の低減と、コア部101からの吹き出し空気の温度分布の適正化とを両立する蒸発器1Bを提供できる。
また、蒸発器1Bは、第2の上部側連通路34が接続される風下側上部タンク311の内部であって、第2の上部側連通路34に冷媒の一部が分流した後、第1の上部側連通路33に向けて残余の冷媒が流れる部位に、冷媒の通路断面積を絞る絞り部としての絞りプレート31bを備えている。
この構成によれば、当該絞り部を備えることにより、当該絞り部が第1の上部側連通路33側に流れる冷媒の流通抵抗となるため、絞りプレート31bの貫通孔を通って流れる冷媒量が抑制され、全パス部200,201において、冷媒が慣性力の働きによって隣の風下側流路列群21aから離れた部位へ流れ易い傾向を改善することができる。したがって、全パス部の流路列群における横方向についての冷媒流量分布の偏りを是正して、コア部101から吹き出される空気の良好な温度分布の形成を促進することができる。
また、絞りプレート31bは貫通孔が形成された仕切り壁で構成されることにより、適正な大きさの貫通孔を備える仕切り壁をタンク内部に設ければ、所望の流通抵抗を有する絞りを構成することができる。したがって、蒸発器1Bの構成を複雑にすることなく、良好な温度分布を有する吹き出し空気を形成することができる。
また、流出口52から最も遠い部位にある風上側流路列群221は、流入口51から最も遠い部位にある風下側流路列群211よりも横方向の長さが長い流路列群である。第2の上部側連通路34は、横方向の長さが長い方の最遠部位の風上側流路列群221が接続されている風上側上部タンク321の内部と、横方向の長さが短い方の最遠部位の風下側流路列群211に対して横方向の隣に位置する風下側流路列群21aが接続されている風下側上部タンク311の内部とを連絡している。
この構成によれば、風上側流路列群221に対して風下側流路列群211の横方向長さを短くした全パス部201,200を有する蒸発器1Bが得られる。これにより、風上側流路列群221における圧力損失を抑制しつつ、風下側流路列群211における吹き出し空気の温度分布の偏りを改善する蒸発器1Bを提供できる。
(第4実施形態)
第4実施形態では、第3実施形態で説明した蒸発器1Bの他の形態を図6にしたがって説明する。図6は第4実施形態に係る蒸発器1Cの構成および冷媒流れを説明するための模式図である。
蒸発器1Cは、図5で示した蒸発器1Bに対して、第2の上部側連通路34を第2の下部側連通路44に置き換えた流路構成と、流入口51及び流出口52から最遠部位にある風下側流路列群211の横方向長さが風上側よりも長い構成と、を有する。蒸発器1Cは、これらの構成に関わる要素を除くその他の構成については図5の蒸発器1Bと同様であり、その作用効果も同様である。
最遠部位にある風下側下部タンク411の内部には、中央に貫通孔が形成された絞りプレート41bが横方向の空間を二つに仕切るように設けられている。絞りプレート41bは、風下側下部タンク411内部の流路断面よりも小さい開口面積を有する貫通孔を備えることによって、冷媒の流れに対して流通抵抗を与える流通抵抗部として機能する。
風下側下部タンク411内部の絞りプレート41bよりも右側(X方向)の領域においては、風下側下部タンク411の横方向右側の内部空間と最遠部にある風上側下部タンク421の内部空間とが複数の第1の下部側連通穴400(本実施形態では2個の第1の下部連通穴400)によって互いに連通している。
第1の下部側連通穴400は、下部に流入口51および上部に流出口52が配置される横方向の一方側端部に対して横方向の他方側に設けられたタンク内部を風下側と風上側とに仕切る壁に形成されており、流入口51から最遠部位の風下側流路列群211に接続される風下側下部タンク411の内部と、流出口52から最遠部位の風上側流路列群221に接続される風上側下部タンク421の内部とを連絡する連通手段となる。第1の下部側連通穴400は、最遠部の風下側下部タンク411内の冷媒が風上側に移動して風上側下部タンク421内に流れるときに通過する第1の下部側連通路43の一部でもある。
第1の下部側連通路43は、流入口51から最遠部位の風下側下部タンク411の内部と、流出口52から最遠部位の風上側下部タンク421の内部とを連絡する第1の連通路である。
風下側下部タンク41内部のセパレータ41aよりも右側(X方向)であって絞りプレート41bよりも左側(X方向の反対側)の領域においては、最遠部位の風下側流路列群211に接続される下方の風下側下部タンク411の内部空間と、風上側流路列群22a下方の風上側下部タンク421の内部空間(絞りプレート41bよりも左側の内部空間)と、が複数の第2の下部側連通穴401(本実施形態では2個の第2の下部側連通穴401)によって互いに連通している。
第2の下部側連通穴401は、流入口51および流出口52が配置される横方向の一方側の端部に対して横方向の他方側に設けられたタンク内部を風上側と風下側とに仕切る壁に形成されており、流入口51から最遠部位の風下側流路列群211に接続される風下側下部タンク411の内部と、流出口52から最遠部位の風上側流路列群221に隣り合う風上側流路列群22aに接続される風上側下部タンク421の内部とを連絡する連通手段となる。
第2の下部側連通穴401は、風下側の全パス部201Aを構成する風下側流路列群211を下降してきた冷媒が風上側の全パス部200Aに流入する流れ以外に、全パス部200Aの左側の隣に位置するタンク内に流入する流れに分流するときに風下側から風上側に向けて通過する第2の下部側連通路44の一部でもある。
この第2の下部側連通路44は、流入口51から最遠部位の風下側下部タンク411の内部空間と、流出口52から最遠部位の風上側下部タンク421の風上側流路列群22aに接続される内部空間と、を連絡する第2の連通路である。
すなわち、蒸発器1Cは、風下側の全パス部201A(最遠部位であって、後で第1の下部側連通路43及び第2の下部側連通路44に分流する冷媒が風上側流路列群211を下降する部分)と風上側の全パス部200Aとを接続する第1の下部側連通路43に加え、第2の下部側連通穴401が形成されることにより、風上側流路列群22aと風下側流路列群211とを接続する第2の下部側連通路44を備えている。したがって、蒸発器1Cは、第2の下部側連通路44を備えるため、全パス部の風上側と全パス部の風下側との間で冷媒を流すだけでなく、全パス部の風下側と他の流路列群の上流側領域(風上側流路列群22aの上流側領域)との間でも冷媒を流すことができる。そして、このような冷媒流れを形成するために、蒸発器1Cは、最遠部位の風下側流路列群211が最遠部位の風上側流路列群221よりも横方向の幅が大きく形成されているので、全パス部において、風下側のコア部の積層方向Xの幅が風上側のコア部の積層方向Xの幅よりも大きくなっている。
以上の構成により、風下側流路列群211を下降する冷媒の一部は、第2の下部側連通路44を通って風上側下部タンク421内に入り、さらに隣の風上側流路列群22aを上昇する。一方、風下側流路列群211を下降する冷媒の残余は、絞りプレート41bで流通抵抗の影響を受けて慣性力を減少するため、流量が絞られて第1の下部側通路43を通って風上側下部タンク421内に入る。このように冷媒は、一旦、風下側下部タンク411で分流して、第2の下部側連通路44を通ってきた流れと第1の下部側通路43を通ってきた流れとが風上側下部タンク421内で合流するのである。言い換えれば、冷媒は、第2の下部側連通路44や絞りプレート41bの働きによって、第2の下部側連通路44へ流れようとする冷媒と第1の下部側連通路34へ流れようとする冷媒とに分流する形態で風下側流路列群211を下降して流れ、それぞれの分流する冷媒流量が決定されるのである。
そして、この合流した冷媒は、隣の風上側流路列群22aを上昇し、風上側上部タンク32の一方側部位に入り、流出口52から外部に流出する。蒸発器1Cにおける冷媒流れのパターンは、蒸発器1Bと同様であり、冷媒パス数が3パスで、1−1−1の冷媒パターンである。
本実施形態の蒸発器1Cによれば、上述する従来の蒸発器が有する課題を解消するものであり、最遠部位において、横方向長さが長い方の風下側流路列群211に接続される風下側下部タンク411と、横方向長さが短い方の風上側流路列群221よりも冷媒流れ下流側に位置する風上側流路列群22aに接続される風上側下部タンク421とを第2の下部側連通路44でさらに繋げる構成を備えている。このため、最遠部位にある風上側下部タンク421と風下側下部タンク411とが第1の下部側連通路43で連通するだけでなく、第2の下部側連通路44によってさらなる通路断面積の拡大が図れるのである。すなわち、全パス部200A以外にも風下側と風上側とを繋げる連通路を備えているのである。これにより、冷媒が風下側下部タンク411から風上側下部タンク421へ流れるときの連通路通過時の圧力損失を低減すること、及び全パス部200Aの横方向長さを抑制することの両方の効果を奏するのである。したがって、冷媒流れの圧力損失の低減と、コア部101からの吹き出し空気の温度分布の適正化とを両立する蒸発器1Cを提供できる。
蒸発器1Cは、第2の下部側連通路44が接続される風下側下部タンク411内部において通路断面積を絞る絞り部としての絞りプレート41bを、横方向において第2の下部側連通路44と第1の下部側連通路43との間に設けている。
この構成によれば、当該絞り部が第1の下部側連通路43側に流れる冷媒の流通抵抗となるため、全パス部201Aの流路列群を流れる横方向についての冷媒流量分布の偏りを是正して、コア部101から吹き出される空気の良好な温度分布の形成を促進することができる。
また、絞りプレート41bは貫通孔が形成された仕切り壁で構成されることにより、適正な大きさの貫通孔を備える仕切り壁をタンク内部に設ければ、所望の流通抵抗を有する絞りを構成することができる。したがって、蒸発器1Cの構成を複雑にすることなく、良好な温度分布を有する吹き出し空気を形成することができる。
また、流入口51から最も遠い部位にある風下側流路列群211(あるいは全パス部201A)は、流出口52から最も遠い部位にある風上側流路列群221よりも横方向の長さが長い流路列群である。第2の下部側連通路44は、横方向の長さが長い方の最遠部位の風下側流路列群211が接続されている風下側下部タンク411の内部と、横方向の長さが短い方の最遠部位の風上側流路列群221に対して横方向の隣に位置する風上側流路列群22aが接続されている風上側下部タンク421の内部とを連絡している。
この構成によれば、風下側流路列群211に対して風上側流路列群221の横方向長さを短くした全パス部201A,200Aを有する蒸発器1Cが得られる。これにより、風下側流路列群211における圧力損失を抑制しつつ、風上側流路列群221における吹き出し空気の温度分布の偏りを改善する蒸発器1Cを提供できる。
(第5実施形態)
第5実施形態では、第3実施形態で説明した蒸発器1Bの他の形態(冷媒流れが4パスで冷媒流れパターンが2−1−1の場合)を図7にしたがって説明する。図7は冷媒流れパターンが2−1−1の場合に係る蒸発器1Dの構成および冷媒流れを示した模式図である。
本実施形態の蒸発器1Dは、図5で示した蒸発器1Bに対して、冷媒パス数が4パスであることおよび冷媒流れパターンが2−1−1であることが異なる。その他の構成については図5の蒸発器1Bと同様であり、その作用効果も同様である。
本実施形態の蒸発器1Dにおける冷媒流れのパターンは、風下側における流路列群が1個の風下側流路列群21b(冷媒下降部)、1個の風下側流路列群21a(冷媒上昇部)、1個の最遠部位の風下側流路列群211(冷媒下降部)からなる3個の流路列群であり、風上側における流路列群が1個の最遠部位の風上側流路列群221(冷媒下降部)、1個の風上側流路列群22a(冷媒上昇部)からなる2個の流路列群で構成されるパターンである。これにより、本実施形態ではコア部102を流れる冷媒パス数が4パスである。また、冷媒流れのパターンは、風下側流路列群21b,21a、風上側流路列群22a、全パス部201,200のそれぞれのパス数を冷媒の流れる順番に記載すると、2−1−1のパターンとなる。
次に、上記構成の蒸発器1Dにおける冷媒の流れを順に説明する。冷凍サイクル装置の外部構成部品からの冷媒は、上部の流入口51からセパレータ31aよりも横方向左側(X方向の反対側)の空間である風下側上部タンク31の内部に流入した後、風下側流路列群21bを下降し(第1パス)、さらにセパレータ41aよりも横方向左側(X方向の反対側)の空間である風下側下部タンク41の内部で反転して風下側流路列群21aを上昇し(第2パス)、セパレータ31aよりも横方向右側(X方向)の空間である風下側上部タンク311の内部に流入する。
風下側上部タンク311の内部の冷媒は、まず、絞りプレート31bよりも上流側でその一部が分配され、2個の第2の上部側連通穴301を介して風上側に向かって第2の上部側連通路34を流れて風上側に移動し風上側上部タンク321内から最遠部位の風上側流路列群221を下降して(第3パス、全パス部200)風上側下部タンク421に入る。
一方、風下側上部タンク311内部の残余の冷媒は、絞りプレート31bの貫通孔を通過した後、最遠部位の風下側流路列群211を下降して(第3パス、全パス部201)風下側下部タンク411内から第1の下部側連通穴400を介して風上側に向かって第1の下部側連通路43を流れ、風上側下部タンク421内に入る冷媒流れと、絞りプレート31bの貫通孔を通過後、第1の上部側連通穴300を介して風上側に向かって第1の上部側連通路33を流れ、風上側上部タンク321内から最遠部位の風下側流路列群221を下降して風上側下部タンク421内に入り、第1の下部側連通路43を通ってきた流れと合流する冷媒流れと、に分流される。つまり、第2の上部側連通路34を通る冷媒と第1の上部側連通路33を通る冷媒とは風上側上部タンク321内で合流し、この合流した冷媒は、第1の下部側連通路43を通る冷媒と、風上側下部タンク421内で合流するのである。
次に、風上側下部タンク421内で合流した冷媒は、反転して風上側流路列群22aを上昇し(第4パス)、セパレータ32aよりも横方向左側(X方向の反対側)の空間である風上側上部タンク32内から上部の流出口52を通って外部に流出する。
(第6実施形態)
第6実施形態では、第4実施形態で説明した蒸発器1Cの他の形態(冷媒流れが4パスで冷媒流れパターンが2−1−1の場合)を図8にしたがって説明する。図8は冷媒流れパターンが2−1−1の場合に係る蒸発器1Eの構成および冷媒流れを示した模式図である。
本実施形態の蒸発器1Eは、図6で示した蒸発器1Cに対して、冷媒パス数が4パスであることおよび冷媒流れパターンが2−1−1であることが異なる。その他の構成については図6の蒸発器1Cと同様であり、その作用効果も同様である。
本実施形態の蒸発器1Eにおける冷媒流れのパターンは、風下側における流路列群が1個の風下側流路列群21b(冷媒下降部)、1個の風下側流路列群21a(冷媒上昇部)、1個の最遠部位の風下側流路列群211(冷媒下降部)からなる3個の流路列群であり、風上側における流路列群が1個の最遠部位の風上側流路列群221(冷媒下降部)、1個の風上側流路列群22a(冷媒上昇部)からなる2個の流路列群で構成されるパターンである。これにより、本実施形態ではコア部102を流れる冷媒パス数が4パスである。また、冷媒流れのパターンは、風下側流路列群21b,21a、風上側流路列群22a、全パス部201A,200Aのそれぞれのパス数を冷媒の流れる順番に記載すると、2−1−1のパターンとなる。
以上の構成により、風下側流路列群211を下降する冷媒の一部は、第2の下部側連通路44を通って風上側下部タンク421内に入り、さらに隣の風上側流路列群22aを上昇する。一方、風下側流路列群211を下降する冷媒の残余は、絞りプレート41bで流通抵抗の影響を受けて慣性力を減少するため、流量が絞られて第1の下部側通路43を通って風上側下部タンク421内に入る。このように冷媒は、一旦、風下側下部タンク411で分流し、第2の下部側連通路44を通ってきた流れと第1の下部側通路43を通ってきた流れとが風上側下部タンク421内で合流するのである。言い換えれば、冷媒は、第2の下部側連通路44や絞りプレート41bの働きによって、第2の下部側連通路44へ流れようとする冷媒と第1の下部側連通路34へ流れようとする冷媒とに分流する形態で風下側流路列群211を下降して流れ、それぞれの分流する冷媒流量が決定されるのである。そして、風上側下部タンク421内で合流した冷媒は、隣の風上側流路列群22aを上昇し、風上側上部タンク32の一方側部位に入り、流出口52から外部に流出する。
(第7実施形態)
第7実施形態では、第1実施形態で説明した蒸発器1の他の形態(冷媒流れが6パスで冷媒流れパターンが3−1−2の場合)を図9にしたがって説明する。図9は冷媒流れパターンが3−1−2の場合に係る蒸発器1Fの構成および冷媒流れを示した模式図である。
本実施形態の蒸発器1Fは、図3で示した蒸発器1に対して、冷媒パス数が6パスであることおよび冷媒流れパターンが3−1−2であることが異なる。その他の構成については図3の蒸発器1と同様であり、その作用効果も同様である。
本実施形態の蒸発器1Fにおける冷媒流れのパターンは、風下側における流路列群が2個の風下側流路列群21b(冷媒下降部)、1個の風下側流路列群21a(冷媒上昇部)、1個の最遠部位の風下側流路列群210(冷媒上昇部)からなる4個の流路列群であり、風上側における流路列群が1個の最遠部位の風上側流路列群220(冷媒上昇部)、1個の風上側流路列群22b(冷媒下降部)、1個の風上側流路列群22a(冷媒上昇部)からなる3個の流路列群で構成されるパターンである。
これにより、本実施形態ではコア部103を流れる冷媒パス数が6パスである。また、冷媒流れのパターンは、風下側流路列群21、風上側流路列群22、全パス部200,201のそれぞれのパス数を冷媒の流れる順番に記載すると、3−1−2のパターンとなる。
以上の構成により、最遠部位の風下側流路列群210の隣に位置する風下側流路列群21bを下降した冷媒の一部は、第2の下部側連通路44を通って風上側下部タンク421内に入り、さらに最遠部位の風上側流路列群220を上昇して流れ、風上側上部タンク321に流入することになる。一方、風下側流路列群21bを下降した冷媒の残余は、絞りプレート41bで流通抵抗を受けた後、第1の下部側通路43を通って風上側下部タンク421内に入る流れと、最遠部位の風下側流路列群210を上昇して第1の上部側連通路33を通る流れとに分流する。そして、第1の下部側連通路43から風上側下部タンク421内に入った流れは、風下側流路列群21bから第2の下部側連通路44を通ってきた冷媒と合流し、この合流した冷媒は、最遠部位の風上側流路列群220を上昇して、風上側上部タンク321で、風下側流路列群210から第1の上部側連通路33を通ってきた流れと合流する。
(第8実施形態)
第8実施形態では、第2実施形態で説明した蒸発器1Aの他の形態(冷媒流れが6パスで冷媒流れパターンが3−1−2の場合)を図10にしたがって説明する。図10は冷媒流れパターンが3−1−2の場合に係る蒸発器1Gの構成および冷媒流れを示した模式図である。
本実施形態の蒸発器1Gは、図4で示した蒸発器1Aに対して、冷媒パス数が6パスであることおよび冷媒流れパターンが3−1−2であることが異なる。その他の構成については図4の蒸発器1Aと同様であり、その作用効果も同様である。
本実施形態の蒸発器1Gにおける冷媒流れのパターンは、風下側における流路列群が2個の風下側流路列群21b(冷媒下降部)、1個の風下側流路列群21a(冷媒上昇部)、1個の最遠部位の風下側流路列群210(冷媒上昇部)からなる4個の流路列群であり、風上側における流路列群が1個の最遠部位の風上側流路列群220(冷媒上昇部)、1個の風上側流路列群22b(冷媒下降部)、1個の風上側流路列群22a(冷媒上昇部)からなる3個の流路列群で構成されるパターンである。
これにより、本実施形態ではコア部103を流れる冷媒パス数が6パスである。また、冷媒流れのパターンは、風下側流路列群21、風上側流路列群22、全パス部200,201のそれぞれのパス数を冷媒の流れる順番に記載すると、3−1−2のパターンとなる。
以上の構成により、最遠部位の風下側流路列群210を上昇する冷媒の一部は、第2の上部側連通路34を通って風上側上部タンク321内に入り、さらに隣の風上側流路列群22bを下降して流れる。一方、風下側流路列群210を上昇する冷媒の残余は、絞りプレート31bで流通抵抗の影響を受けて慣性力を減少するため、流量が絞られ第1の上部側通路33を通って風上側上部タンク321内に入る。このように冷媒は一旦、分流して、第2の上部側連通路34を通ってきた流れと第1の上部側通路33を通ってきた流れとが風上側上部タンク321内で合流するのである。言い換えれば、冷媒は、第2の上部側連通路34や絞りプレート31bの働きによって、第2の上部側連通路34へ流れようとする冷媒と第1の上部側連通路33へ流れようとする冷媒とに分流する形態で風下側流路列群210を上昇して流れ、それぞれの分流する冷媒流量が決定されるのである。
そして、この合流した冷媒は、隣の風上側流路列群22bを下降して、風上側下部タンク42でUターンして風下側流路列群22aを上昇し、風上側上部タンク32の一方側部位に入り、流出口52から外部に流出する。
(他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
上記実施形態では、タンク内に絞りプレートを備えた蒸発器を説明しているが、絞りプレートは本発明の必須の構成部品ではない。
また、上記実施形態では、コア部を構成し、空気流れ方向(Z方向)に並んでいる流路列群が2列の流路列群である形態を説明しているが、これに限定されるものではなく、流路列群は3列以上で構成してもよい。
また、上記実施形態におけるコア部は、チューブ間にアウタフィンを設けないコア部や、チューブ間にチューブを形成する部材から切り起こした突起部等を備えるコア部であってもよい。これらのように、コア部が、チューブ間にフィンを備えないフィンレスタイプであったり、コア部が、隣り合うチューブ間において片側のチューブのみに接合したフィンを備えるタイプであったりする場合には、コア部の外表面で凝縮した凝縮水の排水性能が極めて良好であるため、コア部の正確な温度検出が容易であり、良好な応答性が得られ、有用である。
また、上記実施形態では、冷媒にR134aを採用していたが、冷媒はこれに限定されるものではなく、二酸化炭素冷媒、R152冷媒等の他の冷媒を採用した場合であっても同様な効果は得られるが、R134a冷媒を用いた場合に効果が特に顕著である。
また、上記実施形態では、蒸発器を車両用空調装置の冷凍サイクルに用いた例の説明をしたが、本発明は、車両用空調装置以外の冷凍サイクルに用いられる熱交換器であっても適用することができることはいうまでもない。
また、上記実施形態では、風上側ヘッダタンクおよび風下側ヘッダタンクはそれぞれのヘッダタンクに接続される複数のチューブ内の冷媒をタンク内部で分配および収集するように説明しているが、チューブ内の冷媒が分配および収集される部位はこれに限定されるものではない。例えば、冷媒が分配または収集される部位が完全にタンク内部ではなくタンク内部よりも上流側で収集されたり、タンク内部よりも下流側で分配されたりする構成であってもよい。
また、空気の流れ方向において風上側流路列群22の厚さ寸法を風下側流路列群21の厚さ寸法よりも大きくしてもよい。これにより、より乾き度が大きくなる風下側の流路の断面積が大きくなるので、熱交換器全体としての冷媒の圧力損失を低減することができる。