JP2011208813A - 熱交換器用アルミニウムフィン材 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる基板2と、基板2の上に最表層となるように形成された水溶性樹脂塗膜からなる親水潤滑層3とを備える熱交換器用アルミニウムフィン材1において、親水潤滑層3の膜厚は、塗布量換算で50〜1000mg/m2であって、水溶性樹脂塗膜は、固形分換算で分子量5000〜50000の水溶性ポリエーテルを75〜99.9質量%、熱分解抑制剤を0.1〜25質量%含み、水溶性ポリエーテルは、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコールアルキルエーテル、ポリアルキレングリコールアリールエーテルの1種又は2種以上よりなることを特徴とする。
【選択図】図1
Description
図1に示すように、熱交換器用アルミニウムフィン材(以下、フィン材と称す)1は、基板2と、基板2の上に最表層となるように形成された親水潤滑層3とを備える。ここで、基板2の上とは、基板2の片面または両面(図示せず)を意味する。また、最表層とは、環境に晒される層を意味し、基板2の上に親水潤滑層3以外の他の層を形成する場合には、基板2と親水潤滑層3との間に形成することを意味する(図2〜図4参照)。以下、各構成について説明する。
基板2は、アルミニウムまたはアルミニウム合金よりなる板材であって、熱伝導性および加工性が優れることからJIS H4000規定の1000系のアルミニウム、好ましくは合金番号1200のアルミニウムが使用される。なお、フィン材1においては、強度、熱伝導性および加工性等を考慮して、板厚0.08〜0.3mm程度のものが使用される。
親水潤滑層3は、膜厚が塗布量換算で50〜1000mg/m2であって、水溶性樹脂塗膜からなる。そして、水溶性樹脂塗膜は、分子量5000〜50000の水溶性ポリエーテルと熱分解抑制剤からなる。また、水溶性樹脂塗膜は、固形分換算で水溶性ポリエーテルを75〜99.9質量%、熱分解抑制剤を0.1〜25質量%含む。さらに、水溶性ポリエーテルは、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコールアルキルエーテル、ポリアルキレングリコールアリールエーテルの1種又は2種以上よりなる。こうような親水潤滑層3を備えることによって、親水性および加工性に優れ、かつ、銅管の蟻の巣状腐食の発生、および、ドレンパンのクレージングの発生を抑制できる。なお、親水潤滑層3の形成は、例えば、水溶性樹脂塗料をスプレー、ロールコート等で塗布、焼付けすることによって行われる。
親水潤滑層3の膜厚が塗布量換算で50mg/m2未満であると、親水潤滑層3が薄膜になりすぎて、フィン材1の潤滑性が不足する。その結果、フィン材1の加工の際、すなわち、フィン材1に伝熱管である銅管(図示せず)を組み付けるための貫通孔をドローレス加工等のプレス成形で形成した際に、カラー部に割れ等の成形不良が生じたり、プレス金型内の工具摩耗が生じたりする。すなわち、フィン材1の加工性が劣る。また、膜厚が1000mg/m2を超えると、親水潤滑層3が厚膜になりすぎて、親水潤滑層がプレス金型に粘着しやすくなって成形不良、工具摩耗が生じる。すなわち、フィン材1の加工性が劣る。また、親水潤滑層3を構成する水溶性樹脂の塗布量が増加してコストアップになる。なお、塗布量は蛍光x線、赤外膜厚計、塗膜剥離による重量測定等で測定する。
水溶性ポリエーテルの分子量が5000未満であると、フィン材1の加工性が劣ると共に、水溶性ポリエーテルが熱分解しやすいため、銅管腐食原因物質およびクレージング劣化原因物質が生成し、銅管の蟻の巣腐食の発生、および、ドレンパンにクレージングが発生する。また、分子量が50000を超えると、フィン材1の親水性が劣ると共に、水溶性樹脂塗料の塗装粘度が高くなり、親水潤滑層3の塗装性が劣る。なお、本発明において、分子量は質量平均分子量を意味する。
水溶性ポリエーテルが、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコールアルキルエーテル、ポリアルキレングリコールアリールエーテルの1種又は2種以上よりなることによって、フィン材1(親水潤滑層3)の親水性および加工性が優れる。
固形分換算で、水溶性ポリエーテル:75質量%未満、または、熱分解抑制剤:25質量%超えると、水溶性ポリエーテルの熱分解を抑制することはできるが、親水潤滑層3の親水性が劣る。水溶性ポリエーテル:99.9質量%超え、または、熱分解抑制剤が0.1質量%未満であると、水溶性ポリエーテルの熱分解が発生しやすいため、銅管腐食原因物質およびクレージング劣化原因物質が生成し、銅管の蟻の巣腐食の発生、および、ドレンパンにクレージングが発生する。
図2〜図4に示すように、フィン材1は、基板2と親水潤滑層3との間に、下地処理層4、耐食層5および親水層6の少なくとも1層をさらに備える。なお、図3および図4に示すように、下地処理層4または耐食層5、および、親水層6を備える場合には、下地処理層4または耐食層5を基板2側に、親水層6を親水潤滑層3側に形成することが好ましい。フィン材1がこのような層構成であることによって、親水性および耐食性がさらに向上する。ここで、耐食性とは、前記した銅管の蟻の巣状腐食を含む一般的な腐食を抑制することを意味する。
下地処理層4は、耐食性を奏する層であって、無機酸化物または有機−無機複合化合物よりなる。無機酸化物としては、主成分としてクロム(Cr)またはジルコニウム(Zr)を含むものが好ましく、例えば、リン酸クロメート処理、リン酸ジルコニウム処理、クロム酸クロメート処理を行うことにより形成されたものである。しかし、本発明においては、耐食性を奏する層であれば、これに限定されず、例えば、リン酸亜鉛処理、リン酸チタン酸処理を行うことによっても下地処理層4を形成することができる。また、有機−無機複合化合物としては、塗布型クロメート処理または塗布型ジルコニウム処理を行なうことにより形成されたもので、アクリル−ジルコニウム複合体等が挙げられる。
耐食層5は、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂およびポリアクリル酸系樹脂のうちの少なくとも1種よりなる疎水性樹脂からなる。このような耐食層5の形成により、酸性雰囲気などにおける苛酷な多湿環境においても、親水潤滑層3等の他層を浸透してきた凝縮水が基板2と接触するのを抑制できる。それにより、基板2の腐食(酸化)が抑制され、フィン材1に耐食性が付与される。なお、耐食層5の形成は、例えば、疎水性樹脂の水系溶液をスプレー、ロールコート等で塗布、焼付けすることによって行われる。
親水層6は、フィン材1の親水性をさらに向上させるための層であって、親水性樹脂よりなる。また、親水性樹脂は、カルボキシル基、水酸基、スルホン酸基、アミド結合およびそれらの塩のうち少なくとも1種を有するものであることが好ましい。ここで、カルボキシル基を有するものとしてはポリアクリル酸、水酸基を有するものとしてはポリビニルアルコールやカルボキシメチルセルロース、アミド結合を有するものとしてポリアクリルアミド、スルホン酸基を有するものとしてスルホエチルアクリレートとアクリル酸の共重合体等が好ましい。なお、親水層6の形成は、例えば、親水性樹脂の水系溶液をスプレー、ロールコート等で塗布、焼付けすることによって行われる。
アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる基板2の上に、水溶性ポリエーテルと熱分解抑制剤からなる水溶性樹脂塗料を塗布した後、焼付けを行い、親水潤滑層3を形成する。塗布方法は、スプレー、バーコータ、ロールコータ等の従来公知の塗布方法で行い、塗布量は、50〜1000mg/m2とする。焼付け温度(基板2の到達温度)は、塗布する水溶性樹脂塗料によって、適宜設定するが、一般的に100〜200℃の範囲で行う。
下地処理層4の形成は、リン酸クロメート処理、リン酸ジルコニウム処理等の化成処理液を基板2にスプレー等により塗布することで行われる。また、下地処理層4を形成する前に、基板2の表面にアルカリ水溶液をスプレー等して、基板2の表面を予め脱脂することが好ましい。脱脂により基板2と下地処理層4との密着性が向上する。そして、耐食層5、親水層6の形成は、前記した親水潤滑層3と同様に、耐食層5は疎水性樹脂塗料、親水層6は親水性樹脂塗料をスプレー、バーコータ、ロールコータ等で塗布した後、焼付けすることで行われる。
JIS H4000に規定する合金番号1200のアルミニウムよりなる板厚0.1mmの基板に、表1に示す水溶性樹脂塗料を塗布、焼付けして親水潤滑層を形成し試料(フィン材)1〜26とした。
親水性評価は、試料にプレス油塗油し、160℃で10分加熱脱脂後の純水滴下時の接触角をゴニオメータにて測定することにより評価した。測定された接触角が20°以下である場合(表において「○」)を合格とし、接触角が20°を超える場合(表において「×」)を不合格とした。
加工性評価は、実機フィンプレスにて、ドローレス加工を実施した際のカラー成形性およびプレス金型内の工具磨耗状況を目視評価した。成形後のカラーに大きな割れ等がなく、著しい工具磨耗もなく良好である場合(表において「○」)を合格とし、大きなカラー割れおよび著しい工具磨耗が認められた場合(表において「×」)を不合格とした。
熱分解抑制性評価は、160℃で10分加熱した際の親水潤滑層(皮膜)の重量変化率で評価した。具体的には、溶出皮膜量総量に対する重量減少量を測定し、重量減少率とした。重量減少率が、25%未満(表において「○」)の場合を合格とし、25%以上の場合(表において「×」)を不合格とした。
耐クレージング性評価は、試料(表面処理面の総面積2.5m2)を160℃で10分加熱した後、イオン交換水(100ml)で抽出し、ポリスチレン製のドレンパンに抽出液を入れ、50℃で72h放置後のドレンパンの割れ有無を確認した。割れがない場合(表において「○」)を合格とし、割れがある場合(表において「×」)を不合格とした。
耐蟻の巣状腐食性評価は、まず、各試料をプレス加工、銅管挿入、拡管し、熱交換器を作製した。この熱交換器より切り出したサンプルを用い、容積1Lの容器に1%のギ酸水溶液100mlと共に入れ、密閉し、恒温槽に入れた。50℃で12時間、25℃で12時間保持するサイクルを繰り返し、60日後に銅管を切り出し、蟻の巣状腐食発生の有無を調査した。蟻の巣状腐食の発生がない場合(表において「○」)を合格とし、蟻の巣状腐食の発生がある場合(表において「×」)を不合格とした。
2 基板
3 親水潤滑層
4 下地処理層
5 耐食層
6 親水層
Claims (2)
- アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる基板と、前記基板の上に最表層となるように形成された水溶性樹脂塗膜からなる親水潤滑層とを備える熱交換器用アルミニウムフィン材において、
前記親水潤滑層の膜厚は、塗布量換算で50〜1000mg/m2であって、
前記水溶性樹脂塗膜は、固形分換算で分子量5000〜50000の水溶性ポリエーテルを75〜99.9質量%、熱分解抑制剤を0.1〜25質量%含み、
前記水溶性ポリエーテルは、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコールアルキルエーテル、ポリアルキレングリコールアリールエーテルの1種又は2種以上よりなることを特徴とする熱交換器用アルミニウムフィン材。 - 前記熱分解抑制剤は、イオウ系、フェノール系、カルバジド化合物の1種以上からなることを特徴とする請求項1に記載の熱交換器用アルミニウムフィン材。
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