JP2011206978A - 積層板の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ラテックスを用いて樹脂層を形成する場合であっても、樹脂層に残存する分散剤由来の不純物付着が抑制された樹脂層を形成しうる積層板の製造方法を提供する。
【解決手段】基材と、少なくとも、アニオン系分散剤及びノニオン系分散剤から選択された少なくとも1種の分散剤、樹脂粒子、及び水系分散媒を含むラテックスと、を接触させて樹脂層Aを形成する工程と、前記樹脂層Aを硬化させる工程と、前記硬化させた樹脂層Aに疎水化処理を施す工程と、を有する積層板の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、積層板の製造方法に関する。
ガラス基板や硬質樹脂基板等の各種基材上に、種々の特性を有する樹脂層を設けてなる積層板は、回路基板、表示装置用基板、等の製造において広汎に利用されている。
基材上に樹脂層を積層する際に用いられる樹脂組成物としては、溶剤系の樹脂組成物の他、ラテックス等の水分散系の樹脂組成物を用いることができる。このような樹脂組成物のうち、水分散系の樹脂組成物の使用は、樹脂層の被形成面を構成する他の樹脂層や基材へ希釈液(溶媒)の浸透抑制、環境負荷の軽減等の観点からは、溶剤系の樹脂組成物の使用よりも好適である。
しかし、水分散系の樹脂組成物には一般的に分散剤(乳化剤)が含まれており、形成後の樹脂層においても分散剤が残存してしまう傾向がある。樹脂層における分散剤の残存は、不純物(微塵埃、イオン性物質、等)が樹脂層に付着し易くなる要因ともなる。
水分散系の樹脂組成物を用いて形成された樹脂層において、分散剤の残留を回避する方法としては、例えば、樹脂組成物に含まれる分散剤を透析や限外ろ過して除去する方法や、特許文献1に記載されるような公知の洗浄装置及び洗浄方法用いて、塗布・乾燥後の樹脂層表面を洗浄する方法が考えられる。しかしながら、前者の方法では樹脂組成物の安定性を著しく損ねて生産性を著しく低下させる懸念がある。また、後者の方法では樹脂層から完全に分散剤を除去することが困難である。
一方、特許文献2には、天然ゴムラテックスに親水性ポリマーを添加した後に親水性基封鎖処理を施すことにより、天然ゴムラテックス及び親水性ポリマーが有する親水性基を封鎖して、天然ゴムラテックス製品の非粘着性化を図る技術が開示される。
特開2002−316116公報 国際公開第02/44262A1号パンフレット
本発明は、前記事情に鑑みなされたものであり、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明の目的は、ラテックスを用いて樹脂層を形成する場合であっても、樹脂層に残存する分散剤由来の不純物付着が抑制された樹脂層を形成しうる積層板の製造方法を提供することにある。
本発明者は、前記課題に鑑みて鋭意検討した結果、樹脂層の形成後に疎水化処理を施して、樹脂層中に残存する分散剤を不活性化することで、前記課題を解決しうることを見出し本発明を完成するに至った。
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
<1> 基材と、少なくとも、アニオン系分散剤及びノニオン系分散剤から選択された少なくとも1種の分散剤、樹脂粒子、及び水系分散媒を含むラテックスと、を接触させて樹脂層Aを形成する工程と、前記樹脂層Aを硬化させる工程と、前記硬化させた樹脂層Aに疎水化処理を施す工程と、を有する積層板の製造方法。
<2> 前記疎水化処理が、酸性化合物の付与又は多価金属塩の付与である前記<1>に記載の積層板の製造方法。
<3> 前記多価金属塩が、20℃における水への溶解度が、10g/100mL以上の多価金属塩である前記<2>に記載の積層板の製造方法。
<4> 前記多価金属塩が、アルカリ土類金属、亜鉛、錫、アルミニウム、スカンジウム、ランタン、イッテルビウム、アクチニウム、鉄、チタン、ジルコニウム、及び、タングステンからなる群から選択された金属の水溶性塩である前記<2>又は<3>に記載の積層板の製造方法。
<5> 前記酸性化合物が、無機酸及び有機酸から選択された少なくとも1種の酸性化合物である前記<2>に記載の積層板の製造方法。
<6> 前記酸性化合物が、酸解離定数(pKa)が3以下の酸性化合物である前記<2>又は<5>に記載の積層板の製造方法。
<7> 前記疎水化処理後の樹脂層Aを、洗浄液を用いて洗浄する工程を更に有する前記<1>から<6>のいずれか1項に記載の積層板の製造方法。
<8> 前記疎水化処理後の樹脂層A上に、樹脂層Bを形成する工程を更に有する前記<1>から<7>のいずれか1項に記載の積層板の製造方法。
本発明によれば、ラテックスを用いて樹脂層を形成する場合であっても、樹脂層に残存する分散剤由来の不純物付着が抑制された樹脂層を形成しうる積層板の製造方法を提供することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
[積層板の製造方法]
本発明の積層板の製造方法(以下、適宜「本発明の製造方法」と称する。)は、基材と、少なくとも、アニオン系分散剤及びノニオン系分散剤から選択された少なくとも1種の分散剤、樹脂粒子、及び水系分散媒を含むラテックスと、を接触させて樹脂層Aを形成する工程(以下、適宜「樹脂層A形成工程」と称する。)と、前記樹脂層Aを硬化させる工程(以下、適宜「硬化工程」と称する。)と、前記硬化させた樹脂層Aに疎水化処理を施す工程(以下、適宜「疎水化処理工程」と称する。)と、を有する。
なお、以下の説明では、硬化工程前後における樹脂層Aを、単に「樹脂層A」と総称する場合がある。
既述のごとく、ラテックスにおいて分散剤は常用される成分であるが、ラテックスを用いて形成された樹脂層中に分散剤が残存すると不純物の付着等の要因をなるため除去されることが望ましい。分散剤の使用に由来する不純物付着要素の1つとしては、分散剤の末端基が吸着性基として働く等して、分散剤自体が不純物に対し吸着性を示すことが考えられる。しかし、ラテックス中において、分散剤は樹脂粒子との間に強い相互作用を形成していることから、樹脂層の形成後に洗浄等により分散剤を完全に除去することは困難である。
これに対して、本発明の製造方法によれば、ラテックスを用いて樹脂層を形成した場合であっても、樹脂層に残存する分散剤に由来する樹脂層への不純物付着が抑制される。
これは、本発明の製造方法に係る疎水化処理により、分散剤の末端基の修飾や分散剤自体の疎水化が生じて、樹脂層中に残存する分散剤が不活性化されたためと考えている。
更に、本発明の製造方法においては、樹脂層の疎水化処理後の樹脂層に対して、濡れ性の高い洗浄液を用いて洗浄処理を行うことが好ましく、これにより更に不純物付着を抑制することができる。
また、本発明の製造方法によれば、ラテックスを用いて基板上に不純物の付着の抑制された樹脂層形成を行うことが可能となることから、環境負荷の観点からも非常に有用である。
以下、本発明の製造方法における各工程について、詳細に説明する。
<樹脂層A形成工程>
樹脂層A形成工程では、基材と、少なくとも、アニオン系分散剤及びノニオン系分散剤から選択された少なくとも1種の分散剤、樹脂粒子、及び水系分散媒を含むラテックスと、を接触させて樹脂層Aを形成する。
樹脂層Aは、硬化工程、疎水化処理工程、任意に実施される洗浄工程などの各工程を経た後、例えば、接着層等として機能する層として構成することができる。
(基材)
本発明に使用される基材は、寸度的に安定なものであることが好ましく、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、ガラス基材、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール、ポリイミド、ポリエーテルイミド、エポキシ樹脂(SiO、SiON、若しくはITOを有していてもよい)、ビスマレインイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、ポリフェニレンオキサイド、液晶ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、シアネート樹脂等、フェノール樹脂、アラミド樹脂、シクロオレフィンポリマー、ポリフェニレンエーテル、ベンゾシクロブテン樹脂、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート)、金属がラミネート若しくは蒸着された紙又はプラスチックフィルム等が含まれる。本発明に使用される基材としては、エポキシ樹脂又はポリイミド樹脂が好ましい。
基材は、一般的には、平板状の基材(各種の基板)が用いられるが、必ずしも平板状の基材に限定されず、円筒形などの任意の形状の基材を用いてもよい。
(ラテックス)
樹脂層A形成工程に用いるラテックスは、少なくとも、アニオン系分散剤及びノニオン系分散剤から選択された少なくとも1種の分散剤、樹脂粒子、及び水系分散媒を含むものである。具体的には、本発明におけるラテックスは、水に不溶な樹脂粒子が水又は水溶性の分散媒中に分散したものであり、アニオン系分散剤又はノニオン系分散剤を含むものである。
ここで、水系分散媒とは、水、又は水に90質量%以下の水混和性の有機溶媒を混合した混合溶媒である。水混和性の有機溶媒としては、例えば、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、グリコール系溶剤、アミン系溶剤、チオール系溶剤、ハロゲン系溶剤などの水溶性可燃性液体が挙げられる。
〜水溶性可燃性液体〜
水系分散媒に用いうる水溶性可燃性液体について説明する。
ケトン系溶剤としては、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、γ−ブチロラクトン、ヒドロキシアセトンなどが挙げられる。
エステル系溶剤としては、酢酸2−(2−エトキシエトキシ)エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、メチルセロソルブアセテート、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、グリコール酸メチル、グリコール酸エチルなどが挙げられる。
アルコール系溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、1−メトキシー2−プロパノール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、3−アセチル−1−プロパノール、2−(アリルオキシ)エタノール、1−ペンタノール、3−メチル−1−ブタノール、n−ヘキサノール、1−ヘプタノール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−アミノエタノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、(±)−2−アミノ−1−プロパノール、3−アミノ−1−プロパノール、2−ジメチルアミノエタノール、2,3−エポキシ−1−プロパノール、エチレングリコール、2−フルオロエタノール、ジアセトンアルコール、2−メチルシクロヘキサノール、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、グリセリン、2,2’,2’’−ニトリロトリエタノール、2−ピリジンメタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール、2−(2−アミノエトキシ)エタノール、2−[2−(ベンジルオキシ)エトキシ]エタノール、2,3−ブタンジオール、2−ブトキシエタノール、2,2’−チオジエタノール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,3−プロパンジオール、ジグリセリン、2,2’−メチルイミノジエタノール、1,2−ペンタンジオールなどが挙げられる。他に、アルコール系溶剤には、3−アミノ−1−プロパノール、メタクリル酸トリフルオロエチル、ペンタデカフルオロオクタノールなどのアルコール誘導体も含まれる。
エーテル系溶剤としては、ビス(2−エトキシエチル)エーテル、ビス[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]エーテル、1、2−ビス(2−メトキシエトキシ)エタン、ビス[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]エーテル、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール、2−[2−(2−クロロエトキシ)エトキシ]エタノール、2−エトキシエタノール、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール、2−イソブトキシエタノール、2− 2−イソブトキシエトキシ)エタノール、2−イソプロポキシエタノール、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エタノール、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロパノール、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、メトキシ酢酸、2−メトキシエタノールなどが挙げられる。
グリコール系溶剤としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールなどが挙げられる。
アミン系溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。
チオール系溶剤としては、メルカプト酢酸、2−メルトカプトエタノールなどが挙げられる。
ハロゲン系溶剤としては、3−ブロモベンジルアルコール、2−クロロエタノール、3−クロロ−1,2−プロパンジオールなどが挙げられる。
上記溶剤以外の水溶性可燃性液体に包含される溶剤としては、乳酸メチル、乳酸エチル、モルホリン、N−エチルモルホリン、ぎ酸、酢酸などが挙げられる。
混合溶媒中に含まれる水溶性可燃性液体は、総含有量が上記範囲であれば、1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
ラテックスが含む樹脂粒子を構成する樹脂としては、特に制限はないが、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、ポリウレア/ウレタン、SBR(スチレン−ブタジエン系)、MBR(MMA/ブタジエン、アクリル/ブタジエン)、NBR(アクリロニトリル/ブタジエン)、NR(天然ゴム)、アクリルゴム、BR(ブタジエンゴム)、CR(クロロプレンゴム)、IR(イソプレンゴム)、VP(SBR/ジビニルピリジン)、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)及びこれらの共重合体などが挙げられる。ラテックスとしては、特に、シアノ基を含む樹脂粒子を含むものが好ましい。
そのようなラテックスとしては、市販品を用いてもよく、具体的には、Nipol 1561(日本ゼオン(株))、Nipol 1562(日本ゼオン(株))、Nipol 1577K(日本ゼオン(株))、Nipol LX110(日本ゼオン(株))、LX 531(日本ゼオン(株))、LX 531B(日本ゼオン(株))、Nipol SX1503A(日本ゼオン(株))、LX 513(日本ゼオン(株))、NK−300(日本エイアンドエル(株))、NK−301(日本エイアンドエル(株))として市販されるものを用いてもよい。これら市販品のラテックスには、後述するようなアニオン系分散剤及び/又はノニオン系分散剤が含まれる。
また、樹脂粒子としては、種類の異なるものが併用されていてもよい。併用できる樹脂粒子としては、例えば、SBRとNR、IRとNR、CRとNR、NBRでニトリル量が異なるもの、SBRでスチレン量が異なるもの、SBRとVP、NBRとMBR、SBRとNBR、SBRとMBR、BRとCR、NBRとVP、CRとVPなどが挙げられる。
ラテックスに含まれるアニオン系分散剤又はノニオン系分散剤について説明する。
〜アニオン系分散剤〜
アニオン系分散剤としては、例えば、牛脂脂肪酸、部分水添牛脂脂肪酸、オレイン酸、パルミチン酸、ドデシル硫酸等の脂肪酸及びそのカリウム塩、ナトリウム塩等の脂肪酸塩;ロジン酸、水添ロジン酸等の樹脂酸及びそのナトリウム塩、カリウム塩等の樹脂酸塩;ドデシルベンゼンスルホン酸等のアルキルベンゼンスルホン酸及びそのナトリウム塩等のアルキルベンゼンスルホン酸塩が挙げられる。これらのアニオン系分散剤の中でも、使いやすさの点からは、オレイン酸やパルミチン酸などの長鎖脂肪酸及びその塩が好ましい。
〜ノニオン系分散剤〜
ノニオン系分散剤としては、例えば、ポリエチレングリコールエステル型、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのブロック共重合体等のプルロニック型等の各分散剤が挙げられ、エチレングリコール型の分散剤が好ましい。
アニオン系分散剤又はノニオン系分散剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、これらの分散剤の併用態様としては、アニオン系分散剤のみを2種以上用いる態様、ノニオン系分散剤のみを2種以上用いる態様、1種又は2種以上のアニオン系分散剤と1種又は2種以上のノニオン系分散剤を用いる態様のいずれであってもよい。併用する際には、アニオン系分散剤としては長鎖脂肪酸及びその塩とノニオン系分散剤としてはエチレングリコール型の分散剤を組み合わせて用いることが特に好ましい。
樹脂層A形成工程における基材とラテックスの接触方法は、特に制限されないが、塗布法、転写法、印刷法などやラテックス液体中に基材を浸漬させる方法などが挙げられる。具体的には、例えば、スピンコート法、スプレー法、ディップ法、ブレードコート法、ロッドコート法、スクイズコート法、リバースロールコート法、トランスファコールコート法、バーコート法、エアーナイフ法、グラビア印刷法などが挙げられる。
基材とラテックスとの接触により形成された樹脂層Aの膜厚は、適宜設定することができるが、0.01μm〜20μmが好ましく、0.06μm〜10μmがより好ましく、1μm〜8μmが最も好ましい。
<硬化工程>
硬化工程は、前記樹脂層A形成工程にて形成された樹脂層Aを造膜させる工程である。樹脂層Aの硬化は、樹脂層Aを、例えば、熱を用いた乾燥方法により行うことができる。
更に、樹脂層A中に硬化剤や架橋剤を加えることで、より硬化を進めたり、重合開始剤を加えて、熱や光により重合を進めてもよい。熱を用いた乾燥方法としては、硬化時間の短縮のためには、100℃以上で行うことが好ましく、樹脂層Aの融点以下の温度で行うことがより好ましい。硬化工程の時間は、2時間以下が好ましく、1時間以下がより好ましく、30分以下が最も好ましい。
<疎水化処理工程>
疎水化処理工程は、前記硬化工程にて硬化させた樹脂層Aに疎水化処理を施す工程である。
疎水化処理とは、被処理面において、疎水化処理後の水に対する接触角が、疎水化処理前の水に対する接触角とを比較して、1°以上大きくなる処理を意味する。
疎水化処理による上記の接触角の差としては、好ましくは10°以上であり、更に好ましくは20°以上であり、最も好ましくは40°以上である。
また、疎水化処理後の樹脂層Aにおける水に対する接触角としては、好ましくは60°以上であり、更に好ましくは70°以上である。
本明細書における接触角は、以下の方法にて測定した値である。
〜接触角の測定方法〜
まず、樹脂層A形成工程、硬化工程、及び疎水化処理工程を実施して、基材上に樹脂層Aを形成する。次いで、表面接触角接触角測定装置(Dataphysics社製「OCA20」)を用いて、樹脂層A上に5μLの蒸留水をシリンジから自動滴下し、基材の断面方向の画像をCCDカメラによってパソコンに取り込む。パソコンに取り込んだ画像を画像解析して、樹脂層A上の水滴の接触角度を数値計算する。
疎水化処理としては、硬化工程後の樹脂層Aに、酸性化合物の付与、又は、多価金属塩の付与により行うことが好ましく、多価金属塩の付与がより好ましい。
酸性化合物又は多価金属塩の付与による疎水化処理は、酸性化合物又は多価金属塩を溶解した処理液を調製し、該処理液を硬化工程後の樹脂層Aに付与することにより行う。
処理液の付与方法としては、基材と樹脂層Aとを接触させる方法であればよく、樹脂層A上に処理液を塗布する方法、樹脂層Aを有する基材を処理液中に浸漬する方法、等が挙げられる。
酸性化合物又は多価金属塩を溶解する溶媒としては、水、樹脂層Aを侵さない有機溶媒等を用いることができる。具体的には、例えば、水溶性可燃性液体などが挙げられる。また、水と水溶性可燃性液体の中から選択された2種類以上とを混ぜて使ってもよい。
疎水化処理に用いる処理液中の酸性化合物又は多価金属塩の濃度としては、処理時間と処理の均一性の観点から0.1質量%以上であることが好ましい。更に、処理液による樹脂層A中への浸透等の影響を考慮すると、該濃度は、0.5質量%〜50質量%がより好ましく、1質量%〜20質量%が最も好ましい。
処理時間としては、コストや基材への影響の観点から、1時間以内が好ましく、1秒〜20分が更に好ましく、5秒〜10分が最も好ましい。
処理温度としては、処理の行い易さの観点から、10℃〜90℃が好ましく、15℃〜40℃が更に好ましい。
〜酸性化合物〜
疎水化処理工程に適用しうる酸性化合物としては、例えば、無機酸及び有機酸が挙げられる。無機酸及び有機酸は、単独で用いてもよいし、混合物として用いてもよい。
酸性化合物としては、特に制限ないが、酸性化合物のpKa(酸解離定数)が3以下であることが好ましい。pKaが前記の範囲となる具体的な無機酸としては、HI(pKa=−10)、HBr(pKa=−9)、HCl(pKa=−8)、HF(pKa=3.17)、HNO(pKa=−2)、HPO(pKa=2.12)、HSO(pKa=−3)などが挙げられる。また、pKaが前記の範囲となる具体的な有機酸としては、ギ酸(pKa=3.75)、酢酸(pKa=4.76)、クエン酸(pKa=2.86)、乳酸(pKa=3.86)、ヒドロキシ酢酸(pKa=3.83)などが挙げられる。
上記化合物の詳細なpKaの値としては、「化学便覧 改訂5版」(日本化学会発行 2004年)に記載のものを用いた。
pKaのより好ましい範囲としては、−10以上3以下の範囲であり、最も好ましくは−10以上1以下の範囲である。
また、ノニオン系分散剤としてエチレングリコール型の分散剤を用いる場合には、長鎖アルキル基を有する酸性化合物を酸性化合物として適用することも好ましい。
長鎖アルキル基を有する酸性化合物としては、長鎖アルキル基を有する芳香族炭化水素、アルキルスルホン酸、アルキルリン酸エステルなどが挙げられる。好ましい長鎖アルキル基としては、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、ドデシルフェニル基、オクチルナフチル基、ノニルナフチル基、ドデシルナフチル基が挙げられ、特に好ましくは、オクチル基、ノニル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、オクチルフェニル基、ドデシルフェニル基、オクチルナフチル基である。
〜多価金属塩〜
疎水化処理工程に適用しうる多価金属塩としては、2価以上の金属の水溶性塩であることが好ましく、例えば、アルカリ土類金属、亜鉛、錫、アルミニウム、スカンジウム、ランタン、イッテルビウム、アクチニウム、鉄、チタン、ジルコニウム、及び、タングステンからなる群から選択された金属の多価金属塩が挙げられる。
より具体的には、2価の金属塩としては、金属イオンとして、カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属イオン、亜鉛イオン、錫(II)イオン等を含むものが挙げられる。3価の金属塩としては、金属イオンとして、アルミニウムイオン、スカンジウムイオン、ランタンイオン、イッテルビウムイオン、アクチニウムイオン、鉄(III)イオン等を含むものが挙げられる。4価以上の金属塩としては、金属イオンとして、チタンイオン、ジルコニウムイオン、タングステン(IV)イオン等を含むものが挙げられる。
多価金属塩として具体的には、例えば、塩酸、硝酸、硫酸等から選ばれる酸とカルシウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウム、ジルコニウム、チタニウム等の多価金属との塩などを使用することができる。
これらの多価金属塩の中でも、コスト、環境影響、扱いやすさの観点からは、水溶性の多価金属塩であることが好ましい。水溶性の多価金属塩としては、20℃における水への溶解度が10g/100mL以上のものが好ましく、より好ましくは10g/100mL〜400g/100mLのものであり、最も好ましくは50g/100mL〜400g/100mLのものである。
そのような水溶性の多価金属塩として、具体的には、亜鉛イオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、ジルコニウムイオンを含む金属塩であることが好ましく、例えば、硝酸カルシウム(121.2g/100mL)、硝酸マグネシウム(125g/100mL)、硝酸亜鉛(184.5g/100mL)、硝酸アルミニウム(60g/100mL)、硝酸ジルコニウム、塩化カルシウム(74.5g/100mL)、塩化マグネシウム(54.3g/100mL)、塩化亜鉛六水和物(432g/100mL)、塩化アルミニウム(46.8g/100mL)、硫酸マグネシウム(26.9g/100mL)、硫酸亜鉛(54g/100mL)などが挙げられる。なお、カッコ内は、各多価金属塩の20℃における水への溶解度を示す。
上記の詳細な溶解度の数値としては、「化学大辞典」(共立出版発行 1993年)に記載のものを用いた。
また、表面処理後に置換反応が起き難く、表面処理した金属が外れにくい観点から、第一イオン化エネルギーが大きい金属の金属塩が好ましい。具体的には、亜鉛(906.4kJ/mol)、アルミニウム(577.5kJ/mol)、マグネシウム(737.07kJ/mol)、カルシウム(495.8kJ/mol)、バリウム(502.9kJ/mol)、ジルコニウム(640.1kJ/mol)、タングステン(770kJ/mol)、チタニウム(658.8kJ/mol)等の金属塩が挙げられる。上記の詳細な第一イオン化エネルギーの数値としては、「化学便覧 改訂5版」(日本化学会発行 2004年)に記載のものを用いた。
第一イオン化エネルギーは、480kJ/mol〜2500kJ/molの範囲であることが好ましく、500kJ/mol〜1500kJ/molであることがより好ましく、600kJ/mol〜1000kJ/molの範囲であることが最も好ましい。
<洗浄工程>
本発明の製造方法においては、前記疎水化処理工程により疎水化処理を施した樹脂層Aを洗浄する工程を更に有してもよい。疎水化処理工程後に洗浄工程を更に実施することにより、樹脂層Aにおける不純物付着をより効果的に抑制することができる。
これは、疎水化工程において不活性化された分散剤と樹脂粒子との相互作用が低下したことにより、分散剤が洗浄によって樹脂層からの容易に除去されるためと考えている。
洗浄工程は、疎水化処理を施した樹脂層Aに洗浄液を付与することにより行う。
洗浄液の付与方法としては、樹脂層A上に洗浄液を塗布する方法、樹脂層Aを有する基材を洗浄液中に浸漬する方法、等が挙げられる。
洗浄工程に用いる洗浄液としては、分散剤を溶解させうるものであれば特に制限されない。そのような洗浄液として具体的には、例えば、水溶性可燃性液体などが挙げられる。特に、メタノール、エタノール、IPAなどが好ましい。安全性の点から、それらの液と水などを混ぜて、使用してもよい。
洗浄方法としては、浸漬洗浄、シャワー洗浄、かけ洗い、超音波洗浄などが挙げられる。除去効率の点からは、超音波洗浄やシャワー洗浄など物理的な力も加わる方法が好ましく、コスト面からは浸漬洗浄などの洗浄のための装置を必要としない方法が好ましい。
洗浄時間は、コストや樹脂層Aへのダメージなどの点から、1時間以内が好ましく、1秒〜20分が更に好ましく、1分〜10分が最も好ましい。
<樹脂層B形成工程>
本発明の製造方法においては、前記疎水化処理工程後の樹脂層A上に、樹脂層Aとは異なる構成を有する樹脂層Bを形成する工程を更に有してもよい。
樹脂層Bは、基材上において、その全面に設けられていてもよいし、また、パターン状など所望の像様に設けられてもよい。
この場合において、樹脂層Aは、基材と樹脂層Bとの接着層として機能させることができる。
樹脂層Bとしては、例えば、i)加熱、露光等のエネルギーを全面又はパターン状に付与して形成された樹脂層、ii)導電性粒子を含む導電層として構成される樹脂層、iii)光学異方性層として構成される樹脂層などが挙げられる。
以下、樹脂層Bを、上記i)〜iii)の樹脂層として構成する例を説明するが、本発明の製造方法において樹脂層A上に形成しうる樹脂層Bは、当然のことながら、これらの例に限定されるものではない。
樹脂層Bとして、加熱、露光等のエネルギーを全面又はパターン状に付与することにより樹脂層Bを形成するには、例えば、特開2009−7662公報に記載されるような被めっき層として適用しうる樹脂層の形成方法を適用することができる。
具体的な形成例としては、本発明の製造方法により形成された樹脂層A上に、特開2009−7662公報に記載されるような被めっき層形成用組成物を塗布・乾燥した後に、全面露光又はパターン露光を行なって樹脂層Bを形成する例が挙げられる。
得られた樹脂層Bに対して、無電解めっき等のめっき処理を行うことで、金属膜又は金属パターンを形成することができる。金属膜又は金属パターンを形成した樹脂層Bを有する積層板は、例えば、配線基板用途に用いることができる。
樹脂層Bが無電解めっき等のめっき処理により金属膜又は金属パターンを形成した樹脂層である場合、その下層となる樹脂層Aにおける不純物の付着が抑制されるメリットとして、めっき浴中への不純物の混入が抑えられることが挙げられる。
一般的に、めっき浴は長期間に亘って繰り返し使用することが多く、不純物の混入は形成されるめっき膜の性能バラつきや性能劣化、めっき浴自体の寿命の短縮等に影響する可能性が高い。本発明の製造方法の適用は、特に、樹脂層Bがパターン状に形成されて、樹脂層Aとめっき浴との接触面積が広がる際により有効となる。
樹脂層Bとして、導電性粒子を含む導電層である樹脂層Bを形成するには、例えば、特開2007−281054号公報に記載される導電性粒子を含む導電層の形成方法を適用することができる。
具体的な形成例としては、本発明の製造方法により形成された樹脂層A上に、特開2007−281054号公報に記載されるような導電性粒子と熱硬化性の絶縁性樹脂を含む導電性ペーストを付与し、該導電性ペーストを熱硬化させることにより、導電層である樹脂層Bを形成する例が挙げられる。導電性ペーストの付与方法としては、例えば、インクジェット法等の方法を用いればよい。
上記のごとく形成した導電層を樹脂層Bとして有する積層板は、例えば、電子部品用回路基板用途に用いることができる。
樹脂層Bが導電層である樹脂層である場合、その下層となる樹脂層Aにおける不純物の付着が抑制されるメリットとして、導電層を構成するパターン間に存在する樹脂層Aに、導電性に影響する不純物が付着することにより、導電性に影響を与える懸念を減らすことが挙げられる。
樹脂層Bとして光学異方性層を形成するには、例えば、特開2009−69793号公報に記載される光学異方性層の形成方法を適用することができる。
具体的な形成例としては、本発明の製造方法により形成された樹脂層A上に、特開2009−69793号公報に記載される液晶性化合物を含有する組成物からなる塗布液を塗布・乾燥した後に、加熱又は露光により硬化させて、光学異方性層である樹脂層Bを形成する例が挙げられる。
上記のごとく形成した光学異方性層を樹脂層Bとして有する積層板は、例えば、液晶表示装置用基板用途に用いることができる。
樹脂層Bが光学異方性層である場合、その下層となる樹脂層Aにおける不純物の付着が抑制されるメリットとして、不純物の存在が光学異方性に影響する可能性を減らすが挙げられる。
また、各種態様の樹脂層Bに共通するメリットとしては、不純物の付着により、樹脂層Aと樹脂層Bとの間の接着が阻害され、局所的に接着が弱い点が生じる可能性を減らすことが挙げられる。このような効果は、疎水化処理後に洗浄工程まで行った際に特に顕著に現れる。
以下、実施例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」及び「部」は質量基準である。
[実施例1]
ガラスエポキシ樹脂基板(住友ベークライト製、FR−4材)上に、ラテックスを、スピンコート法により塗布し、120℃で30分乾燥して、NBR層(樹脂層A)が形成された基板Aを得た。
樹脂層Aの形成に用いたラテックスとしては、アクリロニトリル、ブタジエンを、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸、パルミチン酸、及びポリオキシエチレンラウリルエーテルを用いて水中に分散させたまま重合し、作製したアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(NBR)ラテックスを用いた。
NBR層(樹脂層A)の乾燥後の膜厚は4μmであった。
次いで、基板Aを、10質量%HSO(pKa=−3)水溶液に10分浸漬させて、疎水化処理を行った。
以上のようにして、実施例1の積層板を得た。
[実施例2]
実施例1において、疎水化処理に用いた10質量%HSO水溶液を、10質量%Zn(NO・6HO(水への溶解度:118g/100mL(20℃))水溶液に変更して疎水化処理を行った以外は、実施例1と同様にして、実施例2の積層板を得た。
[実施例3]
実施例1において、疎水化処理を10質量%HSO水溶液から10質量%Zn(NO・6HO水溶液に処理液を変更して行った後、疎水化処理後の基板Aをメタノールに3分浸漬させて洗浄した以外は、実施例1と同様にして、実施例3の積層板を得た。
[実施例4]
実施例1において、疎水化処理に用いた10質量%HSO水溶液を、10質量%塩酸(pKa=−8)水溶液に変更して疎水化処理を行った以外は、実施例1と同様にして、実施例4の積層板を得た。
[実施例5]
実施例1において、疎水化処理に用いた10質量%HSO水溶液を、10質量%クエン酸(pKa=2.87)水溶液に変更して疎水化処理を行った以外は、実施例1と同様にして、実施例5の積層板を得た。
[実施例6]
実施例1において、疎水化処理に用いた10質量%HSO水溶液を、10質量%硫酸亜鉛(水への溶解度:54g/100mL(20℃))水溶液に変更して疎水化処理を行った以外は、実施例1と同様にして、実施例6の積層板を得た。
[実施例7]
実施例1において、疎水化処理に用いた10質量%HSO水溶液を、10質量%Al(SO・16HO(水への溶解度:87g/100mL(20℃))水溶液に変更して疎水化処理を行った以外は、実施例1と同様にして、実施例7の積層板を得た。
[実施例8]
実施例2において用いたラテックスをNBRラテックス(商品名:Nipol LX1561、日本ゼオン(株)製)に変更した以外は、実施例2と同様にして、実施例8の積層板を得た。
[実施例9]
実施例2において用いたラテックスをNBRラテックス(商品名:NK−301、日本エイアンドエル(株)製)に変更した以外は、実施例2と同様にして、実施例9の積層板を得た。
[実施例10]
実施例2において用いたラテックスをスチレン−ブタジエン共重合体(SBR)ラテックス(商品名:Nipol LX110、日本ゼオン(株)製)に変更した以外は、実施例2と同様にして、実施例10の積層板を得た
[比較例1]
実施例1において得られた基板Aを、比較例1の積層板とした。
[比較例2]
実施例1において、基板Aに疎水化処理は施さず、メタノールに3分浸漬させて洗浄した以外は、実施例1と同様にして、比較例2の積層板を得た。
[比較例3]
実施例1において、疎水化処理に用いた10質量%HSO水溶液を、10質量%ほう酸(pKa=9.24)水溶液に変更して疎水化処理を行った以外は、実施例1と同様にして、比較例3の積層板を得た。
<接触角(水)の測定>
実施例1〜3、比較例1〜2にて得られた積層板について、樹脂層A表面の水に対する接触角を、前記の測定方法により測定した。
結果を表1に示す。
Figure 2011206978
表1に示されるように、本発明の製造方法に係る疎水化処理を施した実施例の積層板は、樹脂層A表面の接触角が大きく、充分に疎水化されていることが分る。
<不純物付着試験>
実施例1〜10、比較例1〜3にて得られた積層板を用いて不純物付着試験を行い評価した。評価方法は以下の通りである。
−評価方法−
得られた各積層板を、色素溶液(0.1質量%メチレンブルー水溶液)中に、1分間浸漬させた。浸漬後の各積層板に付着した色素付着量を以下のように評価することで、不純物の付着量の評価とした。
色素付着量は、色素溶液により染色された樹脂層Aをアセトンに溶かし、得られた溶液について分光光度計を用いて吸光スペクトルを測定し、評価した(665nm波長)。
不純物付着試験結果は、比較例1の積層板から得られた溶液の吸光度を10とし、9以上を×、9未満〜4.5以上を△、4.5未満〜1以上を○、1未満を◎とした。
結果を表2に示す。
Figure 2011206978
表2に示されるように、疎水化処理が施された実施例の各積層体は、いずれも樹脂層A表面における接触角(水)が大きく、比較例の積層体との対比において、不純物付着が著しく抑制されていることが分る。また、実施例3の結果に示されるように、疎水化処理後に洗浄処理を行うことで、不純物付着の抑制効果がさらに向上することが分る。
[実施例11]
実施例3で得られた積層板のNBR層(樹脂層A)上に、下記により合成したポリマーA:10.5質量部、アセトニトリル:79質量部、炭酸ジメチル:10.5質量部を混合攪拌して得られた塗布液Aを、スピンコート法(条件:膜厚1μm)にて塗布し、80℃で5分乾燥して塗布層を形成した。その後、該塗布層に対して、UV露光機(波長:254nm、三永電機製作所社製、型番:UVF−502S、ランプ:UXM−501MD)を用い、100mJ〜8000mJの露光エネルギーでラインアンドスペース100μmを介してパターン露光を行った。露光後、1%重曹水に浸漬させて現像を行い、NBR層上にポリマーAを含むパターン状の樹脂層を有する実施例11の積層板を得た。
−ポリマーAの合成−
1000mlの三口フラスコに、N,N−ジメチルアセトアミド35gを入れ、窒素気流下、75℃まで加熱した。そこへ、2−ヒドロキシエチルアクリレート(市販品、東京化成製)6.60g、2−シアノエチルアクリレート28.4g、V−601(和光純薬製)0.65gのN,N−ジメチルアセトアミド35g溶液を、2.5時間かけて滴下した。滴下終了後、80℃まで加熱し、更に3時間撹拌した。その後、室温まで、反応溶液を冷却した。
上記の反応溶液に、ジターシャリーブチルハイドロキノン0.29g、ジブチルチンジラウレート0.29g、カレンズAOI(昭和電工(株)製)18.56g、N,N−ジメチルアセトアミド19gを加え、55℃、4時間反応を行った。その後、反応液にメタノールを3.6g加え、更に1.5時間反応を行った。反応終了後、酢酸エチル:ヘキサン=1:1で再沈を行い、固形物を取り出し、ポリマーA(重量平均分子量1.5万)を32g得た。
[実施例12]
実施例11において用いた実施例3の積層板を、実施例1の積層板に変更した以外は、実施例11と同様にして、実施例12の積層板を得た。
[実施例13]
実施例11において用いた実施例3の積層板を、実施例2の積層板に変更した以外は、実施例11と同様にして、実施例13の積層板を得た。
[比較例4]
実施例11において用いた実施例3の積層板を、比較例1の積層板に変更した以外は、実施例11と同様にして、比較例4の積層板を得た。
<評価2:密着性評価>
実施例11〜13及び比較例4で得られた積層板における基板とその上層として設けた各樹脂層との密着性を評価すべく、以下の評価方法により評価した。
−評価方法−
実施例11〜13及び比較例4において、塗布液Aを塗布、乾燥して得られた塗布層の形成面に対し、実施例11と同じ露光機を用い、100mJ〜8000mJの露光エネルギーで、フォトマスクを介さず全面露光を行い、NBR層上にポリマーAを含む樹脂層を有する積層板を得た。
露光後の各積層板を試料として用い、JIS−K5600に準拠してクロスカット試験を行った。結果を表3に示す。
密着性は、各実施例及び比較例毎に試料を20個づつ作製して、それぞれの試料についてクロスカット試験を行い、20個の試料中、100マス中に1マスも剥離が無かった試料の数により評価した。評価基準は以下の通りである。
〜評価基準〜
◎:20個の試料の総てが100マス中1マスも剥離が無かった。
○:100マス中1マスも剥離の無かった試料が15〜19個であった。
△:100マス中1マスも剥離の無かった試料が5〜14個であった。
×:100マス中1マスも剥離の無かった試料が0〜4個であった。
Figure 2011206978
表3に示されるように、NBR層(樹脂層A)を接着層として設けた積層体は、NBR層における不純物付着が抑制されたものほど、基板とその上層として設けた各樹脂層との密着性に優れたものであることが分かる。これは、NBR層において不純物が付着した部分の密着性が悪くなることにより、その上層として設けた樹脂層の剥離が生じているため思われる。
実施例11〜13により得られた積層板は、更にめっき処理等を施して金属パターンを形成することにより、金属パターン材料として構成することができる。
従って、実施例11〜13により得られた積層板のごとく、基板とその上層として設けた各樹脂層との密着性に優れた積層板は、基板との密着性に優れた金属配線を有する配線基板の製造に適用できることが分かる。

Claims (8)

  1. 基材と、少なくとも、アニオン系分散剤及びノニオン系分散剤から選択された少なくとも1種の分散剤、樹脂粒子、及び水系分散媒を含むラテックスと、を接触させて樹脂層Aを形成する工程と、前記樹脂層Aを硬化させる工程と、前記硬化させた樹脂層Aに疎水化処理を施す工程と、を有する積層板の製造方法。
  2. 前記疎水化処理が、酸性化合物の付与又は多価金属塩の付与である請求項1に記載の積層板の製造方法。
  3. 前記多価金属塩が、20℃における水への溶解度が、10g/100mL以上の多価金属塩である請求項2に記載の積層板の製造方法。
  4. 前記多価金属塩が、アルカリ土類金属、亜鉛、錫、アルミニウム、スカンジウム、ランタン、イッテルビウム、アクチニウム、鉄、チタン、ジルコニウム、及び、タングステンからなる群から選択された金属の水溶性塩である請求項2又は請求項3に記載の積層板の製造方法。
  5. 前記酸性化合物が、無機酸及び有機酸から選択された少なくとも1種の酸性化合物である請求項2に記載の積層板の製造方法。
  6. 前記酸性化合物が、酸解離定数(pKa)が3以下の酸性化合物である請求項2又は請求項5に記載の積層板の製造方法。
  7. 前記疎水化処理後の樹脂層Aを、洗浄液を用いて洗浄する工程を更に有する請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の積層板の製造方法。
  8. 前記疎水化処理後の樹脂層A上に、樹脂層Bを形成する工程を更に有する請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の積層板の製造方法。
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