JP2011206271A - 注射針組立体および薬剤注射装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】所定値以上の適正な押圧力で針管を皮膚に穿刺ことができると共に針管の針先を皮膚上層部に確実に位置させることができるようにする。
【解決手段】注射針組立体2は、生体に穿刺可能な針先8を有する針管5と、針管5を保持するハブ6と、安定部13と、押圧力確保部材7と、を備えている。安定部13は、針管5の周囲を覆うように配置されて針管5を生体に穿刺する場合に皮膚と接触する端面13aを有する。そして、押圧力確保部材7は、ハブ6に設けられ、針管5を生体に穿刺する際の生体への押圧力を確保する。
【選択図】図1

Description

本発明は、針先を皮膚の表面より穿刺し、皮膚上層部に薬剤を注入するために用いる注射針組立体および薬剤注射装置に関する。
近年、鳥インフルエンザのヒトへの感染が報告されており、ヒトからヒトへの感染の大流行(パンデミック)による多くの被害が懸念されている。そこで、鳥インフルエンザに有効である可能性が高いプレパンデミックワクチンの備蓄が世界中で行われている。また、プレパンデミックワクチンを多くのヒトに投与するために、ワクチンの製造量を拡大させる検討がなされている。
皮膚は、表皮と、真皮と、皮下組織の3部分から構成される。表皮は、皮膚表面から50〜200μm程度の層であり、真皮は、表皮から続く1.5〜3.5mm程度の層である。インフルエンザワクチンは、一般的に皮下投与もしくは筋肉内投与であるため、皮膚の下層部もしくはそれよりも深部に投与されている。
一方、免疫担当細胞が多く存在する皮膚上層部を標的部位として、インフルエンザワクチンを投与することにより、投与量を少なくしても、皮下投与や筋肉投与と同等の免疫獲得能が得られることが報告されている(非特許文献1)。したがって、プレパンデミックワクチンを皮膚上層部に投与することによって、投与量を減らすことができるので、プレパンデミックワクチンをより多くのヒトに投与できることになる。なお、皮膚上層部とは、皮膚のうちの表皮と真皮を指す。
皮膚上層部への薬剤の投与方法としては、単針、多針、パッチ、ガス等を用いた種々の方法が報告されているが、投与の安定性、信頼性、製造コストを考慮すると、皮膚上層部への投与方法としては、単針を用いた方法が最も適しているとされている。この単針を用いて皮膚上層部にワクチンを投与する方法として、古くからマントー法が知られている。マントー法は、一般的に26〜27Gのサイズで短ベベルの針先を有する針を皮膚に対して10〜15°程度の斜め方向から2〜5mm程度挿入して、100μl程度の薬剤を投与する方法である。
ところが、マントー法による薬剤の投与は、手技が難しいため、その成功率は注射を行う医者の技量に委ねられる。特に小児は投与時に動く可能性があるため、マントー法によってインフルエンザワクチンを投与することは難しい。したがって、簡便に皮膚上層部にワクチンを投与することのできるデバイスの開発が求められている。
特許文献1には、皮膚接触面を有するリミッタを注射器のハブに接続した注射装置が記載されている。この特許文献1に記載された注射装置のリミッタは、針管の周囲を覆う筒状に形成されており、注射針が突出する皮膚接触面を有している。このリミッタは、皮膚接触面から突出する注射針の長さ(突出長)を0.5〜3.0mmに規定し、注射針から注入された薬剤を皮膚内に投与するようにしている。
特開2001−137343号公報
R.T.Kenney et al. New England Journal of Medicine, 351, 2295-2301(2004)
しかしながら、特許文献1に記載された注射装置のように針管の突出する長さが比較的短い注射装置では、注射器を皮膚に対してゆっくり押し付けたり、弱い力で押し付けたりすると、針管の針先が皮膚に穿刺されない、あるいは穿刺され難かった。また、使用者は、どの程度の押圧力で針管が生体を穿刺しているのかを認識することが難しい、という問題があった。その結果、針管の針先が所望の位置まで達せず、薬剤を確実に皮膚上層部に投与することが困難であった。
本発明の目的は、上記の問題点を考慮し、適正な押圧力で針管を皮膚に穿刺ことができると共に針管の針先を皮膚上層部に確実に位置させることができる注射針組立体及び薬剤注射装置を提供することにある。
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明の注射針組立体は、生体に穿刺可能な針先を有する針管と、針管を保持するハブと、針管の周囲を覆うように配置されて針管を生体に穿刺する場合に皮膚と接触する端面を有する安定部と、を備えている。そして、ハブに設けられ、針管を生体に穿刺する際の生体への押圧力を確保する押圧力確保部材と、を備えた。
また、本発明の薬剤注射装置は、生体に穿刺可能な針先を有する針管と、針管を保持するハブと、ハブに接続されるシリンジと、針管の周囲を覆うように配置されて針管を生体に穿刺する場合に皮膚と接触する端面を有する安定部と、を備えている。そして、ハブに設けられ、針管を生体に穿刺する際の生体への押圧力を確保する押圧力確保部材と、を備えている。
本発明の注射針組立体及び薬剤注射装置によれば、押圧力確保部材によって針管を生体に穿刺する際の押圧力を確保することができるため、針管の針先を皮膚上層部の所望の位置に穿刺することができる。さらに、針管及び安定部による生体への適正な押圧力を認識することができるため、使用者が不安感を抱かずに使用することができる。
本発明の薬剤注射装置の第1の実施の形態例を示す断面図である。 本発明の薬剤注射装置の第1の実施の形態例における穿刺途中の状態を示す断面図である。 本発明の薬剤注射装置の第1の実施の形態例における穿刺が完結した状態を示す断面図である。 本発明の薬剤注射装置の第2の実施の形態例を示す断面図である。 本発明の薬剤注射装置の第2の実施の形態例における穿刺が完結した状態を示す断面図である。 本発明の薬剤注射装置の第3の実施の形態例を示す断面図である。
以下、本発明の注射針組立体及び薬剤注射装置の実施形態例について、図1〜図6を参照して説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。また、本発明は、以下の形態に限定されるものではない。
なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態例
1−1.注射針組立体及び薬剤注射装置の構成例
1−2.薬剤注射装置の使用方法
2.第2の実施の形態例
3.第3の実施の形態例
<1.第1の実施の形態例>
1−1.注射針組立体及び薬剤注射装置の構成例
まず、図1〜図3を参照して本発明の第1の実施の形態例(以下、「本例」という。)にかかる注射針組立体及び薬剤注射装置について説明する。
図1は本例の薬剤注射装置を示す断面図、図2は本例の薬剤注射装置における穿刺途中の状態を示す断面図である。図3は穿刺が完結した状態を示す断面図である。
図1に示すように、薬剤注射装置1は、注射針組立体2と、この注射針組立体2が着脱可能に接続されるシリンジ3から構成されている。シリンジ3は、薬剤注射装置を使用するときに薬剤を充填させるものでもよく、予め薬剤が充填されたプレフィルドシリンジであってもよい。また、シリンジ3に充填される薬剤としては、ワクチンを挙げることができるが、サイトカインなどの高分子物質を用いたものや、ホルモンであってもよい。
注射針組立体2は、針孔を有する中空の針管5と、針管5を保持するハブ6と、押圧力確保部材7とを備えている。
[針管]
針管5は、ISOの医療用針管の基準(ISO9626:1991/Amd.1:2001(E))で26〜33Gのサイズ(外径0.2〜0.45mm)のものを使用し、好ましくは30〜33Gのものを使用する。針管5の先端部には、針先8を鋭角にするための刃面5aが形成されている。この刃面5aの針管5が延びる方向の長さ(以下、「ベベル長B」という)は、後述する皮膚上層部の最薄の厚さである1.4mm(成人)以下であればよく、また、33Gの針管に短ベベルを形成したときのベベル長である約0.5mm以上であればよい。すなわち、ベベル長Bは、0.5〜1.4mmの範囲に設定されるのが好ましい。
さらに、ベベル長Bは、皮膚上層部の最薄の厚さが0.9mm(小児)以下、すなわち、ベベル長Bが0.5〜0.9mmの範囲であればなおよい。なお、短ベベルとは、注射用針に一般的に用いられる、針の長手方向に対して18〜25°をなす刃面を指す。
針管5の材料としては、例えば、ステンレス鋼を挙げることができるが、これに限定されるものではなく、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金その他の金属を用いることができる。また、針管5は、ストレート針や、少なくとも一部がテーパー構造となっているテーパー針を適用することができる。
[ハブ]
次に、ハブ6について説明する。ハブ6は、略円柱状のハブ本体10と、固定部11と、調整部12と、安定部13を備えている。ハブ本体10の軸方向の一端部には、調整部12及び安定部13が設けられており、他端部には、固定部11が設けられている。このハブ6の材質としては、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン等の合成樹脂(プラスチック)を挙げることができる。
固定部11には、シリンジ3の嵌入部3aが嵌合される筒孔11aが設けられている。この筒孔11aは、シリンジ3の嵌入部3aに対応した大きさに設定されており、調整部12及び安定部13側に至るにつれて連続して径が小さくなっている。なお、この固定部11の内周面に、シリンジ3の嵌入部3aを螺合させるためのねじ溝を設けてもよい。
調整部12は、ハブ本体10の一方の端面10aの中央部に設けられており、ハブ本体10の軸方向に突出する凸部として構成されている。この調整部12の軸心は、ハブ本体10の軸心に一致している。そして、針管5は、調整部12及びハブ本体10を貫通しており、針管5の軸心と調整部12の軸心が一致している。調整部12の端面は、針管5の針先8側が突出する針突出面12aになっている。
針突出面12aは、針管5の軸方向に直交する平面として形成されている。この針突出面12aは、針管5を皮膚上層部に穿刺するときに、皮膚の表面に接触して針管5を穿刺する深さを規定する。つまり、針管5が皮膚上層部に穿刺される深さは、針突出面12aから突出する針管5の長さ(以下、「突出長L」という。)によって決定される。
皮膚上層部の厚みは、皮膚の表面から真皮層までの深さに相当し、概ね、0.5〜3.0mmの範囲内にある。そのため、針管5の突出長Lは、0.5〜3.0mmの範囲に設定することができる。
ところで、ワクチンは、一般的に上腕部に投与されるが、皮膚上層部への投与を考えた場合は皮膚が厚い肩周辺部、特に三角筋部がふさわしいと考えられる。そこで、小児19人と大人31人について、三角筋の皮膚上層部の厚みを測定した。この測定は、超音波測定装置(NP60R−UBM 小動物用高解像度用エコー、ネッパジーン(株))を用いて、超音波反射率の高い皮膚上層部を造影することで行った。なお、測定値が対数正規分布となっていたため、幾何平均によってMEAN±2SDの範囲を求めた。
その結果、小児の三角筋における皮膚上層部の厚みは、0.9〜1.6mmであった。また、成人の三角筋における皮膚上層部の厚みは、遠位部で1.4〜2.6mm、中央部で1.4〜2.5mm、近位部で1.5〜2.5mmであった。以上のことから、三角筋における皮膚上層部の厚みは、小児の場合で0.9mm以上、成人の場合で1.4mm以上であることが確認された。したがって、三角筋の皮膚上層部における注射において、針管5の突出長Lは、0.9〜1.4mmの範囲に設定することが好ましい。
突出長Lをこのように設定することで、針先8の刃面5aを皮膚上層部に確実に位置させることが可能となる。その結果、刃面5aに開口する針孔(薬液排出口)は、刃面5a内のいかなる位置にあっても、皮膚上層部に位置することが可能である。なお、薬液排出口が皮膚上層部に位置しても、針先8が皮膚上層部に深く刺されば、針先8の端部の側面と切開された皮膚との間から薬液が皮下に流れてしまうため、刃面5aが確実に皮膚上層部にあることが重要である。
なお、26Gよりも太い針管では、ベベル長Bを1.0mm以下にすることは難しい。したがって、針管5の突出長Lを好ましい範囲(0.9〜1.4mm)に設定するには、26Gよりも細い針管を使用することが好ましい。
針突出面12aは、周縁から針管5の周面までの距離Sが1.4mm以下となるように形成し、好ましくは0.3〜1.4mmの範囲で形成する。この針突出面12aの周縁から針管5の周面までの距離Sは、皮膚上層部へ薬剤を投与することで形成される水疱に圧力が加わることを考慮して設定している。つまり、針突出面12aは、皮膚上層部に形成される水疱よりも十分に小さく、水疱の形成を妨げない大きさに設定している。その結果、針突出面12aが針管5の周囲の皮膚を押圧して、投与された薬剤が漏れるということを防止することができる。
次に、安定部13について説明する。
安定部13は、ハブ本体10の端面10aに設けられている。この安定部13は、端面10aの周縁部に連続する筒状に形成されている。この安定部13の筒孔には、針管5及び調整部12が配置されている。つまり、安定部13は、針管5が貫通する調整部12の周囲を覆う筒状に形成されている。そして、安定部13の端面13aは、調整部12の針突出面12aと略同一平面上に位置している。
また、針管5の針先8を生体に穿刺すると、針突出面12aが皮膚の表面に接触すると共に安定部13の端面13aに接触する。このとき、安定部13の端面13aが皮膚に接触することで薬剤注射装置1が安定し、針管5を皮膚に対して略垂直な姿勢に保つことができる。
なお、安定部13の端面13aは、針突出面12aと同一平面上に位置させたり、また、針突出面12aよりも針管5の針先8側に位置させたりしても、針管5を皮膚に対して略垂直な姿勢に保つことができる。なお、安定部13を皮膚に押し付けた際の皮膚の盛り上がりを考慮すると、安定部13の端面13aと針突出面12aにおける軸方向の距離は、1.3mm以下に設定することが好ましい。
また、安定部13の内径dは、皮膚に形成される水疱の直径と同等であるか、それよりも大きい値に設定されている。具体的には、安定部13の内壁面から針突出面12aの周縁までの距離Tが4mm〜15mmの範囲となるように設定されている。これにより、安定部13の内壁面から水疱に圧力が印加されことによって水疱形成が阻害されることを防止することができる。
安定部13の内壁面から調整部12の外周面までの最短距離Tは、4mm以上であれば、特に上限はない。しかしながら、距離Tを大きくすると、安定部13の外径が大きくなるため、小児のように細い腕に針管5を穿刺する場合に、安定部13の端面13a全体を皮膚に接触させることが難しくなる。そのため、距離Tは、小児の腕の細さを考慮して15mmを最大と規定することが好ましい。
また、針突出面12aの周縁から針管5の周面までの距離Sが0.3mm以上であれば、調整部12が皮膚に進入することはない。したがって、安定部13の内壁面から針突出面12aの周縁までの距離T(4mm以上)及び針突出面12aの直径(約0.3mm)を考慮すると、安定部13の内径dは9mm以上に設定することができる。
なお、安定部13の形状は、円筒状に限定されるものではなく、例えば、中心に筒孔を有する四角柱や六角柱等の角筒状に形成してもよい。
更に、この安定部13には、押圧目安部であるガイド部19が設けられている。ガイド部19は、安定部13の外周面の周方向に沿って連続して設けられており、安定部13の半径外方向に突出するリング状のフランジとして形成されている。このガイド部19は、皮膚と接触する接触面19aを有している。接触面19aは、安定部13の端面13aと略平行をなす平面である。
ガイド部19の接触面19aが皮膚に接触するまで押圧力確保部材7の指当て部15を介して安定部13を押し付けることにより、安定部13及び針管5が皮膚を押圧する力を常に所定値以上に確保することができる。これにより、針管5の針突出面12aから突出している部分(突出長Lに相当)が確実に皮膚内に穿刺される。
そして、ガイド部19の接触面19aから安定部13の端面13aまでの距離は、安定部13及び針管5が適正な押圧力で押し付けられ、皮膚を穿刺することができるようにその長さが設定されている(図3参照)。以下、この長さを「ガイド部高さy」という。
なお、針管5及び安定部13の適正な押圧力は、例えば、0.5〜20Nである。その結果、使用者に対して針管5及び安定部13による皮膚への押圧力をガイド部19で案内することができると共に針管5の針先8及び刃面5aを皮膚上層部に確実に位置させることができ、使用者に安心感を与えることができるという効果が得られる。
具体的には、安定部13の内径dは、11〜14mmの範囲に設定されるのが好ましく、ガイド部高さyは、ガイド部19の突出端面から安定部13の外周面までの長さx(以下、ガイド部長さx)と呼ぶ。)に基づいて、適宜設定される。例えば、安定部13の内径dが12mmの場合、ガイド部高さyは、例えば、ガイド部長さxが3mmのとき、2.3〜6.6mmの範囲に設定されている。
次に、押圧力確保部材7について説明する。押圧力確保部材7は、指当て部15と、変形部17とから構成されている。指当て部15は、ハブ6のハブ本体10に摺動可能に支持されている。この指当て部15は、略円板状に形成されている。そして、指当て部15の略中心には、ハブ6の固定部11が貫通する貫通孔15aが設けられている。
針管5を生体に穿刺する前の状態では、指当て部15は、ハブ本体10における固定部11側である第1の位置に配置されている。そして、図2に示すように、指当て部15を押圧して、ハブ本体10の軸方向に沿って摺動させると、図3に示すように、指当て部15は、ハブ本体10における調整部12及び安定部13側である第2の位置まで移動する。
また、安定部13と指当て部15との間には、変形部17が介装されている。変形部17は、第1の弾性部17aと、第2の弾性部17bと、第1の弾性部17aと第2の弾性部17bを接続する接続部17cとを有している。第1の弾性部17aは、円筒状に形成されており、軸方向の一端側の端面が指当て部15の周縁部に固定されている。そして、この第1の弾性部17aの直径は、指当て部15の直径と略等しくなるように設定されている。また、第1の弾性部17aの軸方向の他端側には、接続部17cが連続して設けられている。
第2の弾性部17bは、第1の弾性部17aよりも大きい直径を有する円筒状に形成されている。また、第2の弾性部17bの直径は、安定部13の直径と略等しくなるように設定されている。そして、第2の弾性部17bの軸方向の一端側には、接続部17cが連続して設けられており、他端側の端面は、安定部13に固定されている。
接続部17cは、第1の弾性部17aから第2の弾性部17bに至るにつれて連続的に径が大きくなっている。この接続部17cは、指当て部が第1の位置に配置されているときは、第1の弾性部17a及び第2の弾性部17bに対して傾斜して接続されている。図2に示すように、指当て部15を押圧すると、第2の弾性部17b及び接続部17cは、弾性変形して半径方向外側に伸びる。このとき、接続部17cは、一時的に略水平になる。そして、図3に示すように、指当て部15に一定以上の押圧力が加えられると、接続部17cは、図1に示す状態とは逆方向に折れ曲がる。なお、変形部17は、この折れ曲がった状態(図3参照)でも元の状態(図1参照)に戻ろうとする抵抗力が働いており、変形を維持するために、一定以上の押圧力を保持する必要がある。押圧をやめると、変形部17は、初期の状態に戻る。
この変形部17の材質としては、例えば、シリコーンゴムやウレタンゴム等のエラストマーを適用することができる。
なお、安定部13の形状は、円筒形に限定されるものではなく、例えば、中心に筒孔を有する四角柱や六角柱等の角筒状に形成してもよい。
1−2.薬剤注射装置の使用方法
次に、本例の薬剤注射装置1の使用方法について、図1〜図3を参照して説明する。
まず、安定部13の端面13aを皮膚に対向させる。これにより、針管5の針先8が、穿刺する皮膚に対向される。次に、注射針組立体2を皮膚に対してほぼ垂直に移動させ、針管5を皮膚に穿刺すると共に安定部13の端面13aを皮膚に押し付ける。
ここで、調整部4の針突出面4bと安定部13の端面13aは、同一平面上に位置している。これにより、調整部4の針突出面4bが皮膚に接触して皮膚を平らに変形させることができ、針管5を突出長Lだけ皮膚に穿刺することができる。
次に、使用者は、押圧力確保部材7の指当て部15を押圧して、指当て部15をハブ本体10の軸方向に沿って摺動させる。すると、図2に示すように、押圧力確保部材7を構成する変形部17の第2の弾性部17b及び接続部17cが弾性変形する。
具体的には、指当て部15に入力された押圧力は、第1の弾性部17aを介して接続部17c及び第2の弾性部17bに伝達される。ここで、接続部17cは、第1の弾性部17a及び第2の弾性部17bの軸方向に対して傾斜して、第1の弾性部17a及び第2の弾性部17bに接続されている。そのため、接続部17cに入力された押圧力は、第2の弾性部17bの軸方向に沿った縦方向の力と、その縦方向と直交する横方向の力に分けられる。そして、この横方向の力によって、第2の弾性部17bにおける接続部17cと接続する端部側は、その径が押し広げられるようにして弾性変形する。
このとき、この変形部17が変形する際に生じる抗力が指当て部15を介して使用者に伝わる。この使用者に伝達される抗力は、使用者が指当て部15を押圧する際の抵抗力となる。
そして、図2に示すように、使用者が指当て部15介して伝達される抵抗力よりも強い押圧力で指当て部15を押圧すると、接続部17cが第1の弾性部17aに対して略垂直に折れ曲がり、その主面が指当て部15と平行となる。よって、第1の弾性部17aから接続部17cに入力される力のうち、横方向に向かう力が減少する。そして、図3に示すように、接続部17cが初期状態から逆方向に折れ曲がる。
そのため、接続部17cによって第2の弾性部17bに加わる力が軽減され、抵抗力が極めて小さくなる。その結果、使用者が指当て部15を押圧する際の抵抗力が小さくなるため、指当て部15を介してハブ6に大きな押圧力が入力され、針管5を生体に穿刺するための押圧力を一時的に上げることができる。
ここで、押圧力確保部材7によって針管5を生体に穿刺する際に確保される押圧力は、例えば3〜20Nに設定されている。また、変形部17が変形した状態(図3参照)から元の状態(図1参照)に戻ろうとする抵抗力は、穿刺の際に確保される押圧力より小さくなっている。
なお、接続部17cが逆方向に折れ曲がり、指当て部15が第1の位置から第2の位置に移動する際に、クリック感が発生するため、使用者は、針管5を生体に穿刺するための押圧力が確保されたことを確認することができる。このように、押圧力確保部材7によって針管5を生体に穿刺する際の押圧力を一時的に高めて、穿刺する際に必要な押圧力を確保することができる。その結果、針先8が皮膚を切り裂きやすくなり、使用者は、容易に、且つ確実に針管5の針先8を皮膚上層部まで穿刺することが可能である。
更に、調整部12の針突出面12aが皮膚に接触して皮膚を平らに変形させることができ、針管5を突出長Lだけ皮膚に穿刺することができる。
次に、ガイド部19の接触面19aが皮膚に接触するまで指当て部15を押圧して、安定部13を皮膚に押し付ける。ここで、ガイド部高さyは、針管5及び安定部13が適正な押圧力で皮膚に穿刺することができるようにその長さが設定されている。そのため、押圧力確保部材7の指当て部15を介してハブ6によって皮膚を押圧する力が所定の値になる。
更に、押圧力確保部材7によって、針管5の針先8を生体に穿刺する際の押圧力が確保されている。これらにより、使用者に対してハブ6の押圧力を案内することができると共に適正な押圧力でハブ6を皮膚に押し付けることができ、針管5の針先8及び刃面5aを確実に皮膚上層部内に位置させ、さらに、薬剤を安定して投与することができる。
このように、押圧力確保部材7によるクリック感と、ガイド部19がハブ6の押圧力を案内する目印となることで、針管5を生体に穿刺する際に必要な押圧力を使用者に知らせることができる。これにより、使用者に対して安心感を与えることが可能である。
また、安定部13が皮膚と当接することで、針管5を安定させて、針管5を皮膚に対して真っ直ぐに穿刺することができる。よって、針管5に生じるブレを防止することができ、薬剤の安定した投与を行うことができる。
更に、例えば0.5mm程度のごく短い突出長の針では、針先8を皮膚に当接させても皮膚に刺さらない場合がある。しかし、安定部13が皮膚に押し付けられて垂直方向に皮膚が押し下げられると、安定部13の内側の皮膚が引っ張られて皮膚に張力が加わった状態となる。そのため、針管5の針先8に対して皮膚が逃げ難くなるので、安定部13は、皮膚に針先8がより刺さり易くなるという効果も有している。また、押圧力確保部材7によって、一時的に穿刺する押圧力を高めることで、確実に針管5の針先8を皮膚に穿刺することが可能である。
更に、突出長Lが0.5〜3.0mmの範囲に設定されているため、針管5の針先8及び刃面5aは、確実に皮膚上層部内に位置する。その後、ハブ6に接続されたシリンジ3により皮膚上層部内に薬剤を注入する。
注射針組立体2の調整部12は、針管5の周囲に密着して固定されており、針管5の調整部12を貫通する部分と調整部12との間には間隙が生じないようになっている。そのため、調整部12の針突出面12aを皮膚に当接させると、針管5の周囲の皮膚を平らに変形させることができる。その結果、針管5を突出長Lだけ皮膚に穿刺させることができ、針管5の針先8を皮膚上層部内に確実に位置させることができる。
また、調整部12の針突出面12aの外径と安定部13の内径dを適正な大きさに設定したため、注入した薬剤が体外へ漏れないようにすることができ、薬剤を皮膚上層部内に確実に投与することができる。
また、押圧力確保部材7は、穿刺が完結した状態でも元の状態に戻ろうとする抵抗力があるので、それを使用者に感覚的に伝えることができ、戻ることを阻止しようと押圧力を加え続けることを使用者に強いることができる。それにより、薬剤投与の間に押圧力を緩めることによる、針の抜けや薬液の漏れを防ぐことができる。更に、薬剤投与中も押圧力が一定以上に保持できていることを使用者に知らせることができるので、安心感を与えることができる。
<2.第2の実施の形態例>
次に、図4及び図5を参照して本発明の薬剤注射装置の第2の実施の形態例について説明する。
図4及び図5は、第2の実施の形態にかかる薬剤注射装置を示す断面図である。
この第2の実施の形態例にかかる薬剤注射装置21が第1の実施の形態例に係る薬剤注射装置1と異なるところは、変形部の構成である。そのため、ここでは、変形部について説明し、薬剤注射装置1と共通する部分には同一の符号を付して重複した説明を省略する。
図4に示すように、変形部27は、所定の押圧力までは弾性変形し、所定の押圧力以上の力で折れ曲がる複数の板ばねからなり、該複数の板ばねは円周上に等間隔に並んでいる。この変形部27には、屈曲点27aを有している。変形部57が折れ曲がる押圧力は、例えば3〜20Nの範囲に設定されている。そして、図5に示すように、所定の押圧力以上の力が入力されると、屈曲点27aで折れ曲がる。このように、折れ曲がることで、指当て部15を介して使用者に与える抵抗力が急激に減少する。
その他の構成は、上述した第1の実施の形態例にかかる薬剤注射装置1と同様であるため、それらの説明は省略する。このような構成を有する薬剤注射装置21によっても、上述した第1の実施の形態例にかかる薬剤注射装置1と同様の作用及び効果を得ることができる。
なお、変形部27は、所定の押圧力以上の力によって屈曲点27aが弾性から塑性へと変化する、いわゆる降伏するような材料であってもよい。
<3.第3の実施の形態例>
次に、図6を参照して本発明の薬剤注射装置の第3の実施の形態例について説明する。
図6は、第3の実施の形態にかかる薬剤注射装置を示す断面図である。
この第3の実施の形態例にかかる薬剤注射装置31が第1の実施の形態例に係る薬剤注射装置1と異なるところは、変形部の構成である。そのため、ここでは、変形部について説明し、薬剤注射装置1と共通する部分には同一の符号を付して重複した説明を省略する。
図6に示すように、変形部37は、円筒状に形成された合成ゴム等からなるエラストマーである。この変形部37は、指当て部15を介して入力される押圧力が、所定の力以下の場合、弾性変形し、軸方向に沿って縮む、あるいは軸方向と直交する横方向に微小に撓む。このとき、この変形部37が弾性変形する際に生じる抗力が指当て部15を介して使用者に伝達され、この抗力が抵抗力となる。
また、変形部37は、所定の力以上の力が入力されると、半径外方向に大きく折れ曲がる。その結果、指当て部15を介して使用者に伝達される抵抗力が急激に減少する。
その他の構成は、上述した第1の実施の形態例にかかる薬剤注射装置1と同様であるため、それらの説明は省略する。このような構成を有する薬剤注射装置31によっても、上述した第1の実施の形態例にかかる薬剤注射装置1と同様の作用及び効果を得ることができる。
なお、本発明は上述しかつ図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。上述した実施の形態例では、押圧目安部をフランジ状に形成した例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば安定部の外周面を略垂直に切り欠いて段部を設けることで押圧目安部を形成してもよい。
また、押圧力確保部材の指当て部が第2の位置から第1の位置に戻ることを規制するために、ハブ及び指当て部に指当て部を第2の位置で固定する係止部を設けてもよい。
更に、上述した実施の形態例では、変形部として、エラストマーや板ばねを用いた例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、変形部としてコイルばねや皿ばねを適用し、これらを指当て部と安定部との間に介在させてもよい。
1,21,31…薬剤注射装置、 2…注射針組立体、 3…シリンジ、 3a…嵌入部、 5…針管、 5a…刃面、 6…ハブ、 7…押圧力確保部材、 8…針先、 10,33…ハブ本体、 11…固定部、 12…調整部、 12a…針突出面、 13,35…安定部、 13a…端面、 15…指当て部、 17,27,37…変形部、 17a…第1の弾性部、 17b…第2の弾性部、 17c…接続部、 19…ガイド部(押圧目安部)、 19a…接触面、 27a…屈曲点、 B…ベベル長、 L…突出長、 S…針突出面の周縁から針管の周面までの距離、 T…安定部の内壁面から調整部の外周面までの距離、 x…ガイド部長さ、 y…ガイド部高さ、 d…内径

Claims (7)

  1. 生体に穿刺可能な針先を有する針管と、
    前記針管を保持するハブと、
    前記針管の周囲を覆うように配置されて前記針管を生体に穿刺する場合に皮膚と接触する端面を有する安定部と、
    前記ハブに設けられ、前記針管を生体に穿刺する際の生体への押圧力を確保する押圧力確保部材と、
    を備えたことを特徴とする注射針組立体。
  2. 前記押圧力確保部材は、
    前記ハブの周囲に設けられ、前記ハブの長手方向に沿って摺動可能な指当て部と、
    前記指当て部と前記安定部との間に介在される変形部と、からなる
    ことを特徴とする請求項1に記載の注射針組立体。
  3. 前記変形部は、前記押圧力以上の力が前記指当て部に入力されると屈曲変形し、その抵抗力を減ずると共に、前記屈曲変形した状態を維持するために前記押圧力より小さな一定の力を要する部材からなる
    ことを特徴とする請求項2に記載の注射針組立体。
  4. 前記変形部は、エラストマー又はばねである
    ことを特徴とする請求項2又は3に記載の注射針組立体。
  5. 前記針管の周囲には、前記針管の針先が突出する針突出面を有する調整部が設けられている
    ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の注射針組立体。
  6. 前記安定部の外周面に設けられ、該外周面と略垂直になるように形成された段差面を有する押圧目安部を備えた
    ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の注射針組立体。
  7. 生体に穿刺可能な針先を有する針管と、
    前記針管を保持するハブと、
    前記ハブに接続されるシリンジと、
    前記針管の周囲を覆うように配置されて前記針管を生体に穿刺する場合に皮膚と接触する端面を有する安定部と、
    前記ハブに設けられ、前記針管を生体に穿刺する際の生体への押圧力を確保する押圧力確保部材と、
    を備えたことを特徴とする薬剤注射装置。
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