JP2011195761A - 難燃性ポリオレフィン樹脂組成物 - Google Patents

難燃性ポリオレフィン樹脂組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】ハロゲン含有化合物を使用せずに、かつ少ない無機充填材添加量で高い難燃性・絶縁性を有する難燃性ポリオレフィン樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)ポリオレフィン樹脂と、(B)金属水酸化物又は無機炭酸塩又は層状複水酸化物と、(C)炭素を含み、(C)炭素10重量%をEEAに充填した時の体積固有抵抗値が1×10Ω・cm以上であり、かつ炭素(C)のBET比表面積が、210m/g以上、750m/g以下であることを特徴とする難燃性ポリオレフィン樹脂組成物及びこれを用いた樹脂成形体により、ハロゲン含有化合物を使用せず、且つ少ない無機充填材添加量で高い難燃性・絶縁性を有する材料を提供することができる。
【選択図】なし

Description

本発明は、難燃性ポリオレフィン樹脂組成物と、この難燃性ポリオレフィン樹脂組成物を用いた樹脂成形物に関するものである。
ポリオレフィン樹脂は、一般に耐衝撃性、耐水性、耐薬品性に優れ、かつ熱可塑性であるためにリサイクル性にも優れることから、種々の用途に広く使用されており、特に、化学的、機械的特性に優れるため、自動車部品、建材、包装用資材、家電製品等に幅広く用いられている。
しかし、ポリオレフィン樹脂は一般的に樹脂自体が可燃性であるため、用途によっては使用が制限されることから、種々の難燃化処理が検討されている。
ポリオレフィン樹脂の具体的な難燃化処理の方法としては、例えば、ポリオレフィン樹脂にハロゲン含有化合物を添加する方法がある。この方法では高度な難燃性を付与することが可能であるが、ハロゲン含有化合物は加工成形や燃焼時にハロゲン含有ガスなどの有害ガスを発生するため、環境安全性の観点から使用が規制される方向に進んでいる。
ハロゲン含有化合物を用いずに難燃性を付与する方法としては、燃焼時に腐食性ガスを発生しない水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの水和金属酸化物を用いる方法がある。しかし、上記の水和金属酸化物を用いた場合、燃焼しやすいポリオレフィン樹脂に十分な難燃性を付与するためには、多量の水和金属酸化物を添加する必要がある。そのため樹脂の成形性が悪く、結果として得られる成形品は機械強度が著しく低下するという問題があった。
この水和金属酸化物の必要添加量を低減するために、赤燐、カーボンブラック、金属酸化物等の助剤の併用が報告されている。
例えば、特許文献1には、ポリオレフィン樹脂に対して金属水酸化物や赤燐、カーボンブラックを添加したノンハロゲン難燃樹脂組成物が記載されている。
特許文献2には、ポリオレフィン系合成樹脂に対して水酸化マグネシウムや導電性カーボンブラック等の助剤を添加した難燃性ポリオレフィン樹脂組成物が記載されている。
特許文献3には、エチレン−酢酸ビニル共重合体を含むポリオレフィン系樹脂組成物において、水酸化マグネシウムと赤燐及びカーボンブラックを配合したポリオレフィン系難燃性樹脂組成物が記載されている。
特許文献4には、結晶性ポリオレフィン系樹脂に、層状複水酸化物と炭素微粒子を配合した難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物が記載されている。
しかし、いずれの技術でも、前記の機械的強度や成形性の改良には至っておらず、またその難燃効果もハロゲン系難燃剤を用いたものと比較して劣るものしか得られていない。
また、助剤として用いられるカーボンブラックは、難燃性向上効果が高いものの、大量に配合すると機械物性が著しく低下する傾向があり、逆に少なすぎるとポリマーへの耐候性付与の点で不充分となるものであるにもかかわらず、従来において、難燃助剤としてカーボンブラックを使用するに当たり、カーボン自体の物性を厳密に規定して設計されたポリオレフィン難燃樹脂組成物は提供されていないのが現状である。
また、カーボンブラックは、樹脂中に配合することで樹脂に導電性を付与する機能も併せ持つ。従って、カーボンブラックを樹脂に配合して様々なエレクトロニクス関連品等に用いられる導電性樹脂組成物が提供されているが、このようなカーボンブラックの配合は、絶縁性が要求される電線被覆材等の用途には不向きとなる。
特開2000−021243号公報 特開2006−143896号公報 特開平10−251467号公報 特開2009−235405号公報
本発明は、ハロゲン含有化合物を使用せずに難燃性を付与した難燃性ポリオレフィン樹脂組成物において、より少ない難燃助剤の配合量で高い難燃性を発揮すると共に、絶縁性、耐候性等の物性においても優れた難燃性ポリオレフィン樹脂組成物を提供することを課題とする。
本発明者らは、炭素の物性に着目して鋭意研究を重ねた結果、炭素充填樹脂の体積固有抵抗値と比表面積、更にはDBP吸収量を規定することで、より少ない添加量で高い難燃性や絶縁性、耐候性を有する難燃性ポリオレフィン樹脂組成物を実現することができることを見出し、本発明を完成した。
本発明の第一の要旨は、(A)ポリオレフィン樹脂と、(B)無機水酸化物、無機炭酸塩及び層状複水酸化物から選ばれる1種又は2種以上の無機充填材と、(C)炭素とを含み、以下の方法で測定された(C)炭素充填樹脂の体積固有抵抗値が1×10Ω・cm以上であり、かつ(C)炭素のBET比表面積が、210m/g以上、750m/g以下であることを特徴とする難燃性ポリオレフィン樹脂組成物、に存する。
<体積固有抵抗値測定方法>
エチレン−エチルアクリレート共重合体(以下「EEA」と略記する)樹脂100重量部に(C)炭素を10重量部配合した樹脂組成物を熱プレスしてシート状とし、このシートについて体積固有抵抗値を測定する。
本発明の第二の要旨は、この難燃性ポリオレフィン樹脂組成物を用いた樹脂成形物、に存する。
本発明によれば、(A)ポリオレフィン樹脂に、(B)無機水酸化剤、無機炭酸塩及び層状複水酸化物から選ばれる1種又は2種以上の無機充填材と、(C)炭素充填樹脂の体積固有抵抗値とBET比表面積が規定された炭素とを配合することにより、従来よりも少ない無機充填材添加量で、従って、成形性や機械的物性を損なうことなくより優れた難燃性を有し、しかも絶縁性や耐候性等の物性、更には経済性の面においても十分満足される難燃性ポリオレフィン樹脂組成物が提供される。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はこれらの内容に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
[難燃性ポリオレフィン樹脂組成物]
本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物は、上記の通り、(A)ポリオレフィン樹脂と、(B)無機水酸化物、無機炭酸塩及び層状複水酸化物から選ばれる1種又は2種以上の無機充填材と、特定の(C)炭素とを含むことを特徴とする。
{作用機構}
炭素(カーボン)を含むポリオレフィン樹脂組成物が難燃性を発現するか否かは、炭素の構造によるところが大きい。
一般に、カーボンブラックの構造を決定する物性として重要な項目は、比表面積(一次粒子径)、ストラクチャー、表面性状である。
ここでいうストラクチャーとは、カーボンブラックの一次粒子が房状に連なった独特の二次粒子形状のことであり、ストラクチャーはDBP吸収量によって定義される。DBP吸収量は、カーボンブラックの粒子間の空隙部分にDBP(フタル酸ジブチル)が吸収される量から、粒子間のつながりや凝集による構造の程度を示すものであり、一般にストラクチャーが発達したカーボンブラックのDBP吸収量は大きいことが知られている。
また、このようにストラクチャーが発達したカーボンブラックは、樹脂中に添加することで樹脂に導電性を付与する効果も併せ持つ。これは通常導電性カーボンブラックと呼ばれ、少量添加でも樹脂に導電性を付与できることから、様々なエレクトロニクス関連品等に用いられている。ただし、その反面、絶縁性が要求される電線被覆材等の用途には不向きとなる。
そこで、本発明者らは樹脂中にカーボンを充填した際の体積固有抵抗値(Ω・cm)に着目した。
樹脂充填時の体積固有抵抗値が低いカーボンを使用すると樹脂としての導電性が高くなり、少量添加でも導電性が発現してしまうことから、絶縁性付与にはある程度以上の体積固有抵抗値が不可欠である。
本発明では、特定の樹脂充填時体積固有抵抗値、及びBET比表面積、更にはDBP吸収量が最適な炭素を使用することで、炭素の少量添加で、樹脂としての絶縁性を保ちつつ、高難燃効果を有する難燃性ポリオレフィン樹脂組成物を提供する。
本発明において用いる(C)炭素の炭素充填樹脂の体積固有抵抗値は以下のように定義される。
体積固有抵抗値(Ω・cm)は、材料の導電性の尺度として用いられ、単位体積(1cm×1cm×1cm)当りの値で示される。一般に、炭素粉体自体の抵抗値は種類によらずほぼ同等であるが、炭素充填樹脂の体積固有抵抗値は炭素の種類により異なり、例えば、ケッチェンブラックを樹脂中に充填した場合は、他の炭素充填時と比べて樹脂の体積固有抵抗値は非常に低くなる。
炭素種によって樹脂充填時に導電性に差が生じる理由の一つとして考えられるのは、それぞれの炭素の粒子形状の違いである。
即ち、ケッチェンブラックは、明らかに比表面積やDBP吸収量が他のカーボンブラックよりも大きい。この比表面積の増大は、一次粒子が中空シェル構造であり、粒子表面から内部までの細孔が多量に存在することによる。ケッチェンブラックの多孔度は一般に60%以上であるのに対し、他のカーボンブラックは20%程度である。よって、ケッチェンブラックのDBP吸収量が高いのは、高比表面積に起因する複雑な表面構造を反映しているものと考えられている。このようにストラクチャーの発達したカーボンを用いるほど、少ない配合量でも樹脂内で導電回路を形成し、結果として電気伝導度の上昇が生じることになり、炭素充填樹脂の体積固有抵抗値は低くなる。
炭素が導電性を発現させる要素としては、粒子径が小さい;比表面積が大きい;多孔性である;ストラクチャーが発達している;ストラクチャー同士が結合している;等の項目が挙げられる。ケッチェンブラックは全ての条件を満たしており、その構造故に高電気伝導性を発現すると考えられる。
ケッチェンブラックと、ケッチェンブラック以外の導電性カーボンブラックを用い、それらを含む樹脂の体積固有抵抗値を比較すると、いずれもケッチェンブラックを含む時よりも高い抵抗値を示す。樹脂中への炭素の添加量を少なくしていった場合、ケッチェンブラックほどストラクチャーが発達していない、炭素充填樹脂の体積固有抵抗値が高い炭素を用いると、樹脂内で導電回路が形成されず、その結果、電気伝導度が上昇せず、絶縁用途材料への添加も可能となると考えられる。
そこで、本発明では、樹脂に充填した際の導電性ないし絶縁性を判断する指標として、以下の方法で測定される炭素を10重量%充填したEEA樹脂の熱プレスシートの体積固有抵抗値による比較を行った。この体積抵抗値は、低抵抗(1×10Ω・cm未満)の場合はJIS K7194に準拠し、高抵抗(1×10Ω・cm以上)の場合はJIS K6911に準拠して測定した。
<体積固有抵抗値測定方法>
EEA樹脂100重量部に(C)炭素を10重量部配合した樹脂組成物を熱プレスしてシート状とし、このシートについて体積固有抵抗値を測定する。
この炭素充填樹脂の体積固有抵抗値の測定方法はより具体的には、後述の実施例の項に記載される通りである。
{(A)ポリオレフィン樹脂}
本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物を構成する(A)ポリオレフィン樹脂(以下これを「(A)成分」ということがある。)とは、例えばエチレン、プロピレン等の炭素数3から20のα−オレフィン、炭素数3から20の環状オレフィン(例えばシクロペンテン、メチルシクロペンテン、ジメチルシクロペンテン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキセン、ジメチルシクロヘキセン、ノルボルネン及びその誘導体、エチリデン及びその誘導体など)、ジエン類(ブタジエン、イソプレン、シクロブタジエンなど)、スチレン類(例えばスチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレンなど)、シクロヘキサン類(例えばビニルシクロヘキサン、メチルビニルシクロヘキサンなど)、シクロペンタン類(例えばビニルシクロペンタン、メチルビニルシクロペンタンなど)等の炭素と水素で構成された化合物であって、少なくとも1つ以上の二重結合を有する化合物を単量体とした単独重合体または共重合体である。
単独重合体の例としては、ポリエチレン(低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンなど)、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルブテン、ポリペンテン、ポリメチルペンテン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリスチレン、ポリビニルシクロヘキサン等が挙げられる。
共重合体の例としては、エチレン共重合体、プロピレン共重合体、ブタジエン共重合体、スチレン共重合体等が挙げられる。
エチレン共重合体としては、例えばエチレンとエチレン以外のα−オレフィンとの共重合体(以下、エチレン−α−オレフィン共重合体);エチレン−酢酸ビニル共重合体;エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−ブチルアクリレート共重合体等のエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等を挙げることができる(ここで、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸とメタクリル酸を意味する)。
エチレン−α−オレフィン共重合体に用いられるα−オレフィンとしては、炭素数3から20のα−オレフィンが好ましい。具体的には、プロピレン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−ブテン、1−ペンテン等を挙げることができる。
プロピレン共重合体としては、例えばプロピレンと、プロピレン以外のα−オレフィンとの共重合体を挙げることができる。ここで、α−オレフィンとしては、エチレン、および炭素数4から20のα−オレフィンが好ましく、具体的には、エチレン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−ブテン、1−ペンテン等が挙げられる。
ブタジエン共重合体としては、例えばアクリロニトリル−ブタジエン共重合体が挙げられる。
スチレン共重合体としては、例えばスチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、ABS樹脂(ポリブタジエンまたはスチレンとブタジエンの共重合体にスチレンとアクリロニトリルをグラフト共重合したもの、またはスチレン−アクリロニトリル共重合体にアクリロニトリル−ブタジエン共重合体をブレンドしたもの)、AAS樹脂(アクリルゴムにスチレンとアクリロニトリルをグラフト重合したもの)、MBS樹脂(ポリブタジエンまたはスチレンとブタジエンの共重合体にスチレンとメタクリル酸メチルをグラフト共重合したもの)等が挙げられる。
本発明におけるポリオレフィン樹脂としては、オレフィンの単独重合体、ポリエチレン共重合体、ポリプロピレン共重合体が好ましい。更に好ましくは、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体である。
特に、無機充填材との親和性を上げて分散性を改良する為に極性を有する樹脂が好ましく、更に機械的物性や難燃性向上の観点から、エチレン−酢酸ビニル共重合体やエチレン−エチルアクリレート共重合体を用いることが特に好ましい。
上記エチレン−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含量は、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1.0重量%以上、更に好ましくは1.5重量%以上で、好ましくは50重量%以下、より好ましくは20重量%以下、更に好ましくは15重量%以下である。また、上記エチレン−エチルアクリレート共重合体のエチルアクリレート含量は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは3重量%以上、更に好ましくは5重量%以上で、好ましくは30重量%以下、より好ましくは25重量%以下、更に好ましくは20重量%以下である。
ポリオレフィン樹脂の分子量は、特に限定されるものではないが、成形性と機械物性のバランスの面で、重量平均分子量で、通常2,000以上であり、5,000以上がより好ましく、10,000以上が特に好ましい。また、同様の理由で通常1,000,000以下であり、500,000以下が好ましく、300,000以下がより好ましく、200,000以下が特に好ましい。
上記ポリオレフィン樹脂は、それ自体既知の通常用いられるものであり、市販品を購入することができるし、公知の方法によって製造することもできる。
これらのポリオレフィン樹脂は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
{(B)無機充填材}
本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物を構成する(B)無機充填材(以下「(B)成分」ということがある。)は、無機水酸化物、無機炭酸塩及び層状複水酸化物から選ばれる1種又は2種以上の無機充填材である。
無機水酸化物としては、例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属、周期表第4族、第6族、第12族、第13族元素の水酸化物が挙げられる。
具体的には水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ジルコニウム、水酸化モリブデン、水酸化亜鉛、水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物が挙げられる。
中でも、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ジルコニウム、水酸化亜鉛、水酸化アルミニウムが好ましく、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムがより好ましい。特に好ましいのは水酸化マグネシウムである。
無機炭酸塩としては、例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属、周期表第4族、第12族の元素の炭酸塩が挙げられる。
具体的には、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、塩基性炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸ジルコニウム、塩基性炭酸亜鉛などが挙げられる。
中でも塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、塩基性炭酸カルシウム、炭酸ジルコニウム、塩基性炭酸亜鉛が好ましく、塩基性炭酸マグネシウムがより好ましい。
層状複水酸化物とは、従来公知の層状複水酸化物であって、一般的に以下のような一般式で表され、ブルーサイトに類似した水酸化物の正八面体基本層、および陰イオンと層間水から構成される中間層が交互に積層した構造を有している。
[M2+ 1−x3+ (OH][An− x/n・yHO]
ここでM2+はMg,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Znなどの二価金属イオン、M3+はAl,Cr,Fe,Co,Inなどの三価金属イオンであり、基本骨格である水酸化物の正八面体層は、二価金属イオンの一部を三価金属イオンで置換することで結果として正電荷を持ち、その電荷を補うために層間へ陰イオンを取り込んで電気的中性を保っている。中間層の陰イオンAnはCl,NO ,CO 2−,COOなどのn価の陰イオンであり、種類によっては交換が可能である。層状複水酸化物の中で最も一般的に用いられているのがハイドロタルサイトであり、その構造はMg2+の一部がAl3+で置き換わり、層間にCO 2−を有していることが特徴である。
層状複水酸化物は、合成品、天然品のいずれでも良く、具体的には、例えばハイドロタルサイト、ハイドロカルマイト、パイロオーライト等が挙げられる。層状複水酸化物の中でも、特に好ましくは、ハイドロタルサイトである。
本発明において用いられる(B)無機充填材はそれ自体従来公知のものであって、その形状は特に限定されるものではないが、粒子状や繊維状(針状)のものが挙げられ、好ましくは粒子状のものが用いられる。その粒径は特に限定されるものではないが、より小さい方が(A)ポリオレフィン樹脂中での分散性がより向上するため好ましい。(B)無機充填材の粒径は、例えば、レーザー回折法・散乱式粒度分布測定装置で測定した体積平均粒子径で10μm以下であることが好ましく、より好ましくは5μm以下であり、さらに好ましくは1μm以下である。ただし、この体積平均粒子径は通常10nm以上である。
上記(B)無機充填材は、高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、高級脂肪酸エステルやシランカップリング剤等で表面処理してあるものを用いても良い。
上記の(B)無機充填材は、1種を単独で用いても、2種以上の混合物として用いても良い。
{(C)炭素}
本発明において用いられる(C)炭素(以下「(C)成分」ということがある。)の種類は特に限定されるものではないが、通常、微粒子状の炭素であり、アセチレンブラック、オイルファーネスブラック等のカーボンブラック;カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー等が挙げられる。
これらの炭素微粒子の粒子径は、レーザー回折法による平均粒子径が、通常50μm以下であり、10μm以下であることが好ましく、更に好ましくは5μm以下である。平均粒子径が大きすぎると(A)ポリオレフィン樹脂中での分散が不十分となり、炭素の添加効果が低減することがある。炭素の平均粒子径の下限は特に限定されず、小さければ小さいほど良い。
(C)炭素はそれ自体既知の通常用いられるものであり、市販品を購入しても、公知の方法で製造することもでき、粉末、或いはマスターバッチでも良い。
本発明で用いる(C)炭素の体積固有抵抗値は、炭素充填樹脂として測定した値が、通常1×10Ω・cm以上で、好ましくは1×10Ω・cm以上である。炭素充填樹脂の体積固有抵抗値が前記下限未満では、充分な絶縁性が得られず、本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物の絶縁用途への使用は困難となる。炭素充填樹脂の体積固有抵抗値の上限は特に定めないが、通常1×1018Ω・cm以下である。
(C)炭素のBET比表面積(窒素吸着比表面積)は、JIS K6217に準拠して定義される。
BET比表面積はカーボンの1次粒子径の指標値であり、このBET比表面積が大きいほど1次粒子径が小さいものとなる。
本発明で用いる(C)炭素のBET比表面積は通常210m/g以上、好ましくは220m/g以上で、通常750m/g以下、好ましくは600m/g以下である。炭素のBET比表面積が上記上限より大きいと、樹脂組成物の流動性が悪くなり、上記下限未満では期待される物性が発現しない。
(C)炭素のDBP吸収量は、炭素100gに吸収されるフタル酸ジブチル(DBP)量(ml)として表され、JIS K6217に準拠した値である。
本発明で用いる(C)炭素のDBP吸収量は、好ましくは150ml/100g以上、より好ましくは160ml/100g以上で、好ましくは350ml/100g以下、より好ましくは300ml/100g以下である。炭素のDBP吸収量が上記上限より多いと、樹脂組成物の流動性が悪くなり、上記下限未満では期待される物性が発現しない。
{(D)その他の無機充填材}
本発明において必要に応じて用いられる(B)無機充填材以外の(D)無機充填材(以下「(D)成分」ということがある。)としては、リン又は無機リン化合物、ホウ酸塩、シリカ、金属酸化物、アルミナ、クレイ、酸化亜鉛、ゼオライト、ガラス繊維等が例として挙げられ、特にリン又は無機リン化合物やホウ酸塩が好ましい。また、これらの充填材は、予め乾燥等の前処理を施した後に用いても良い。
ホウ酸塩としては、例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属、周期表第4族、第12族、第13族の元素およびアンモニウムのホウ酸塩が挙げられる。
具体的には、ホウ酸リチウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸セシウムなどのアルカリ金属塩、ホウ酸マグネシウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸バリウムなどのアルカリ土類金属塩、ホウ酸ジルコニウム、ホウ酸亜鉛、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸アンモニウムなどが挙げられる。
中でも、アルカリ金属ホウ酸塩とアルカリ土類金属ホウ酸塩が好ましく、アルカリ金属ホウ酸塩がより好ましく、アルカリ金属ホウ酸塩の中ではナトリウムホウ酸塩およびカリウムホウ酸塩がより好ましく、ナトリウムホウ酸塩が最も好ましい。
また、アルカリ土類金属ホウ酸塩の中ではマグネシウムホウ酸塩およびカルシウムホウ酸塩がより好ましく、マグネシウムホウ酸塩がより好ましい。
ホウ酸ナトリウムとしては、具体的には、四ホウ酸ナトリウム水和物(Na・nHO)、八ホウ酸ナトリウム水和物(Na13・nHO)、過ホウ酸ソーダ(NaBO・nHO)などが挙げられ、四ホウ酸ナトリウム水和物がより好ましい。
ホウ酸カリウム水和物としては、四ホウ酸カリウム水和物(K・nHO)などが挙げられる。
ホウ酸塩水和物の水和数nは好ましくは0.6以上であり、より好ましくは0.7以上であり、更に好ましくは0.8以上であり、特に好ましくは0.9以上であり、最も好ましくは1.0以上である。また好ましくは4.0以下であり、より好ましくは3.5以下であり、更に好ましくは3.0以下であり、特に好ましくは2.5以下であり、最も好ましくは2.0以下である。ホウ酸塩水和物の水和数nが0.6〜4.0であると優れた難燃性を得ることができる。
従って、ホウ酸塩水和物の水和数が上記範囲を外れる場合には、水和物の調整のための処理を行うことが好ましく、例えば、水和数の多いホウ酸塩水和物については加熱乾燥を行って水和数を小さくする方法が挙げられる。
本発明において用いられる(D)その他の無機充填材の形状は特に限定されるものではないが、好ましくは粒子状のものが用いられる。その粒径は特に限定されるものではないが、より小さい方が(A)ポリオレフィン樹脂中での分散性がより向上するため好ましい。例えば、(C)その他の無機充填材の粒径は、レーザー回折法・散乱式粒度分布測定装置で測定した体積平均粒子径で10μm以下であることが好ましく、より好ましくは5μm以下であり、さらに好ましくは1μm以下である。ただし、この体積平均粒子径は通常10nm以上である。
上記(D)その他の無機充填材は、1種を単独で用いても、2種以上の混合物として用いても良い。
{その他の成分}
本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物には、本発明の目的を阻害しない範囲で、上記(A)〜(D)成分以外に、必要に応じ、フェノール系、アミン系、硫黄系などの酸化防止剤、安定剤、相溶化剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、架橋開始剤、滑剤、軟化剤、充填剤、着色剤などの各種添加剤の1種もしくは2種以上が適当量含有されていても良い。
{配合割合}
本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物における各成分の含有割合は、本発明の効果を奏する範囲内の含有割合であれば特に制限はないが、例えば、次の通りである。
本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物中の(B)無機充填材の含有量は、(A)ポリオレフィン樹脂100重量部に対して、通常10重量部以上、好ましくは15重量部以上で、通常150重量部以下、好ましくは100重量部以下、より好ましくは70重量部以下、さらに好ましくは50重量部以下である。(B)無機充填材の含有量が前記下限未満の場合、ポリオレフィン樹脂組成物の難燃性が不十分となる場合があり、上記上限超過では得られる難燃性ポリオレフィン樹脂組成物から成形された各種製品の機械強度が低下する場合がある。
本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物中の(C)炭素の含有量は、(A)ポリオレフィン樹脂100重量部に対して、通常2重量部以上、好ましくは3重量部以上、一方、通常20重量部以下、好ましくは10重量部以下である。(C)炭素の含有量が、少なすぎると燃焼が継続してしまい難燃性を発現することができず、逆に多すぎるとポリオレフィン樹脂組成物の物性や成形性などが低下する問題が生じる場合がある。
必要に応じて用いられる(D)その他の無機充填材は、これを(B)無機充填材及び(C)炭素と併用することにより、酸素遮断膜の物理的強度の向上や、燃焼時のドリップ抑制などの形状保護効果の向上などといった相乗効果が得られるが、過度に多いと、難燃性ポリオレフィン樹脂組成物の物性や成形性が低下するため、本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物において、(B)無機充填材と(C)炭素と必要に応じて用いられる(D)無機充填材との合計の含有量が、(A)ポリオレフィン樹脂100重量部に対して160重量部以下となるようにすることが好ましい。
なお、(D)その他の無機充填材を用いた場合、本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物中の(B)無機充填材と(D)その他の無機充填材の量比は特に限定されるものではない。
また、本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物が、酸化防止剤、安定剤、相溶化剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、架橋開始剤、滑剤、軟化剤、充填剤、着色剤などの各種添加剤を含む場合、その含有量は通常のポリオレフィン樹脂組成物の配合量程度とされるが、添加剤量の総和は前述の(B)成分、(C)成分及び必要に応じて用いられる(D)成分との総和として、(A)ポリオレフィン樹脂100重量部に対して通常250重量部以下、好ましくは100重量部以下、より好ましくは90重量部以下、更に好ましくは85重量部以下、最も好ましくは83重量部以下である。
[難燃性ポリオレフィン樹脂組成物の製造方法]
本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物の製造方法は特に限定されるものではないが、(A)ポリオレフィン樹脂に対し、(B)無機充填材及び(C)炭素と必要に応じて用いられる(D)その他の無機充填材を混練して製造することが好ましい。
混練する順序は特に限定されるものではなく、(A)ポリオレフィン樹脂に対して(B)無機充填材を先に混練しても良く、逆に(C)炭素を先に混練しても良く、(B)無機充填材と(C)炭素を同時に混練しても良い。また何れの構成成分も一括して混練しても良く、分割して混練しても良い。
本発明において必要に応じて添加される前述の(D)その他の無機充填材やその他成分(各種添加剤など)は、本発明の目的を阻害しない範囲であれば、混練工程の何れの段階で混練しても良く、(B)無機充填材及び/又は(C)炭素と同時に混練しても良い。
これらの(B)無機充填材および(C)炭素、並びに必要に応じて添加される(D)その他の無機充填材やその他の成分は、予め混合してから(A)ポリオレフィン樹脂に混練しても良い。
特に、(C)炭素に関しては、(A)ポリオレフィン樹脂とのマスターバッチとして配合しても良く、マスターバッチを用いることにより、粒径の細かい(C)炭素をより均一に樹脂組成物中に分散混合することができ、好ましい。
本発明において、難燃性ポリオレフィン樹脂組成物の各構成材料を加熱混合及び/又は溶融混練する方法は、本発明の効果を奏するポリオレフィン難燃性樹脂組成物が調製可能な条件であれば特に制限はなく、それ自体既知の何れの方法でも行うことができる。
例えば、難燃性ポリオレフィン樹脂組成物を加熱して溶融させた状態で各構成材料を添加して混練する方法が挙げられ、この場合、必要であれば各構成材料を予め加熱してから添加しても良い。
混練に用いる混練装置は、本発明の目的を達成できるものであれば特に制限されるものではなく、単軸押出機、2軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなどの汎用の混練装置を用いることができる。
[樹脂成形物]
本発明の樹脂成形物は、上述の本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物を成形してなるものであり、その成形方法には特に制限はなく、パイプ押出やフィルム押出、シート押出、電線被覆、繊維、ネット、トランスキャストモールディングなどの押出成形、カレンダー成形、射出成形、プレス成形、押出ブローや射出ブロー、射出・押出ブロー、シートブロー、コールドパリソン法などのブロー成形などが挙げられる。
本発明の樹脂成形物は、極めて良好な難燃性を示す上に、絶縁性、耐候性にも優れるために様々な用途に好適である。
その用途としては例えば、電線の被覆、自動車用部材、電子機器・家電製品、包装材・容器、建材、機械部品、日用品、農業資材などが挙げられる。
電線の被覆としては、例えば絶縁電線、電子機器配線用電線、自動車用電線、機器用電線、電源コード、屋外配電用絶縁電線、電力用ケーブル、制御用ケーブル、通信用ケーブル、計装用ケーブル、信号用ケーブル、移動用ケーブル、および船用ケーブルなどの各種電線やケーブル、家庭配線、自動車用ワイヤーハーネス等の被覆材としての利用が期待できる。
自動車用部材として、例えばインストルメントパネル、バンパー、燃料タンク、タイヤ、ワイパーブレード、タイヤチェーン、ランプ(ハウジング、レンズ、カバー)、外板などの部材としての利用が期待できる。
電子機器・家電製品としては、例えばハウジング、基板、シャーシーやパネルなどの構造部品、歯車やプーリーなどの機構部品などとしての利用が期待できる。
包装材・容器としては、例えばコンテナ、クレート、大型容器などとしての利用が期待できる。
建材としては、例えばテント、人工芝、壁紙、カーテン、カーテンレール、防音・断熱材などとしての利用が期待できる。
機械部品としては、例えば歯車、車輪、軸受けなどとしての利用が期待できる。
日用品としては、例えば収納家具や棚、テーブル、椅子などの家具類、バケツやスコップ、チェア、踏み台などの雑貨品、まな板やトレー、容器類などの台所用品、洗面器や椅子、スリッパなどの浴室用品、鞄、靴などが挙げられる。
次に、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例によって制限されるものではない。
以下の実施例及び比較例において用いた材料の詳細は次の通りである。
[(A)ポリオレフィン樹脂]
(A−1)エチレン−エチルアクリレート共重合体:日本ポリエチレン株式会社製「レクスパールEEA A1150」(エチルアクリレート含量:15重量%、メルトフローレート:0.8g/10分)(以下「EEA」と略記する。)
[(B)無機充填材]
(B−1)ハイドロタルサイト:協和化学株式会社製「DHT−4A」(体積平均粒子径:0.4μm)
(B−2)水酸化マグネシウム:協和化学株式会社製「キスマ5」(体積平均粒子径:0.86μm)
(B−3)塩基性炭酸マグネシウム:ナカライテスク社製「塩基性炭酸マグネシウム」
[(C)炭素]
(C−1)ケッチェンブラック:ケッチェン・ブラック・インターナショナル株式会社製「ケッチェンブラックEC−600JD」(体積平均粒子径:34nm、BET比表面積:1400m/g、DBP吸収量=495ml/100g)
(C−2)ケッチェンブラック:ケッチェン・ブラック・インターナショナル株式会社製「ケッチェンブラックEC−300J」(体積平均粒子径:40nm、BET比表面積:800m/g、DBP吸収量=366ml/100g)
(C−3)カーボンブラック:三菱化学株式会社製「三菱カーボンブラック#3230B」(体積平均粒子径:23nm、BET比表面積:200m/g、DBP吸収量=143ml/100g)
(C−4)カーボンブラック:キャボット社製「Vulcan10H」(BET比表面積:121〜150m/g、DBP吸収量=127ml/100g)
(C−5)カーボンブラック:キャボット社製「VulcanXC72R」(体積平均粒子径:30nm、BET比表面積:252m/g、DBP吸収量=200ml/100g)
(C−6)カーボンブラック:キャボット社製「Vulcan9A−32」(体積平均粒子径:19nm、BET比表面積:140m/g、DBP吸収量=114ml/100g)
(C−7)グラファイト:和光純薬社製「グラファイト」(体積平均粒子径:300nm、BET比表面積:7.7m/g、DBP吸収量=37ml/100g)
(C−8)アセチレンブラック:電気化学工業社製「デンカブラックFX−35」(体積平均粒子径:23nm、BET比表面積:133m/g、DBP吸収量=220ml/100g)
[(D)その他の無機充填材]
(D−1)赤燐:燐化学工業株式会社製「ノーバレッド120UF」(赤燐をフェノール樹脂5.2重量%で被覆し、EEAで希釈したもの。赤燐含量:14.8重量%、体積平均粒子径:10μm)
(D−2)ホウ砂脱水物:和光純薬工業社製四ホウ酸ナトリウム十水和物を120℃で1時間、更に180℃で4時間乾燥し、四ホウ酸ナトリウム1.7水和物としたものをボールミルにて粉砕したもの。
[炭素充填樹脂の体積固有抵抗値の測定]
上記(C)成分のうち、(C−1)ケッチェンブラックEC−600JDと(C−5)カーボンブラックVulcanXC72Rについて、以下の方法で炭素充填樹脂の体積固有抵抗値の測定を行った。
表1に示す割合で炭素を充填したEEAを、東洋精機製ラボプラストミルを用いて130℃、100回転で4分間混練し、各々樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を熱プレスにより、80mm×50mm×2mmのシート状に成形した。このシートについて体積固有抵抗値を測定した。体積固有抵抗値の測定には、低抵抗(1×10Ω・cm未満)の場合は測定器ロレスタEP(三菱化学(株)製)を用い、高抵抗(1×10Ω・cm以上)の場合はハイレスタUP(三菱化学(株)製)を用いた。
結果を表1に示す。
Figure 2011195761
表1より、(C−1)ケッチェンブラックEC−600JDと(C−5)カーボンブラックVulcanXC72Rとでは、(C−5)カーボンブラックVulcanXC72Rの方が炭素充填樹脂の体積固有抵抗値が格段に大きく、樹脂の絶縁性確保の面で有利であることが分かる。これらの(C−1)ケッチェンブラックEC−600JD及び(C−5)カーボンブラックVulcanXC72Rは、いずれも、後掲の難燃性試験結果において、少量配合で高い難燃性付与効果を示すものであるが、絶縁性の面で、(C−5)カーボンブラックVulcanXC72Rの方が遥かに優れていることが分かる。
なお、上記体積固有抵抗値の測定は、EEA100重量部に対して、(C)成分を11重量部又は5.3重量部配合して行っているが、これらの結果から、EEA100重量部に(C−5)カーボンブラックVulcanXC72Rを10重量部配合した場合でも、体積固有抵抗値は1×1013Ω・cm以上となることが分かる。
[実施例1〜4、比較例1〜7]
表2に記載の構成材料を、東洋精機製ラボプラストミルを用いて、130℃、100回転で4分間混練し、各樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を熱プレスにより80mm×10mm×4mmの短冊状に成形した。得られた成形物について、以下の難燃性の試験を行った。
結果を表2に示す。
[難燃性試験]
UL−94に規定される20mm垂直燃焼試験の条件に準拠して実施した。
具体的には試験片を垂直に立て、その下端部にブタンガスのトーチで10秒間接炎することにより実施した。この際、炎は黄色チップのない青色炎とし、高さが2cmになるように調節した。炎を離してから自消(試験片が燃え尽きる前に消火)もしくは試験片が燃え尽きて燃焼が終了するまでの時間を燃焼継続時間とした。
着火を同サンプルで3回行い、共に炎を離してから10秒以内に自消したものは○、自消しなかったものは×とした。
Figure 2011195761
表2より次のことが分かる。
実施例1〜4においては、炭素充填樹脂の体積固有抵抗値、BET比表面積、DBP吸収量が最適範囲の炭素を用いることによって、少ない炭素添加量で高い難燃性を有する樹脂組成物が得られている。この樹脂組成物が、十分な絶縁性を有することは、表1の結果より明らかである。
それに対し、比較例1〜5は、実施例1〜3と同配合であるにもかかわらず充分な難燃性が得られていないことが分かる。これは、炭素のBET比表面積やDBP吸収量が小さく、少ない添加量では難燃性の発現能力が低いためであると考えられる。
また、比較例6〜7は充分な難燃性は得られるものの、表1の結果から明らかなように、ケッチェンブラックを使用しているために導電性が発現してしまい、絶縁用途に使用できない可能性がある。
即ち、表1の結果から、カーボンブラックVulcanXC72Rを用いた実施例1〜4は、樹脂の絶縁性が保たれているのに対し、ケッチェンブラックEC−600JD,EC−300Jを用いた比較例6、7は抵抗値が低く、導電性が発現していることが分かる。
以上の結果から、絶縁性を保ちつつ高い難燃性付与効果を有する炭素はカーボンブラックVulcanXC72Rであり、本発明で規定される物性範囲を有する炭素を用いることで比較例におけるよりも優れた難燃性や絶縁性を示す結果が得られることが分かる。
本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物は、ハロゲン含有化合物を用いることなく、成形性や機械的強度を損なうことのない少ない無機充填材配合量で極めて良好な難燃性を示すものであり、また、絶縁性にも優れるものであるので、様々な用途に好適である。

Claims (5)

  1. (A)ポリオレフィン樹脂と、(B)無機水酸化物、無機炭酸塩及び層状複水酸化物から選ばれる1種又は2種以上の無機充填材と、(C)炭素とを含み、以下の方法で測定された(C)炭素充填樹脂の体積固有抵抗値が1×10Ω・cm以上であり、かつ(C)炭素のBET比表面積が、210m/g以上、750m/g以下であることを特徴とする難燃性ポリオレフィン樹脂組成物。
    <体積固有抵抗値測定方法>
    エチレン−エチルアクリレート共重合体(以下「EEA」と略記する)樹脂100重量部に(C)炭素を10重量部配合した樹脂組成物を熱プレスしてシート状とし、このシートについて体積固有抵抗値を測定する。
  2. 前記(C)炭素のDBP吸収量が、150ml/100g以上、350ml/100g以下である請求項1に記載の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物。
  3. 更に(B)無機充填材以外の(D)その他の無機充填材を1種類以上含む請求項1又は2に記載の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物。
  4. (A)ポリオレフィン樹脂100重量部に対して、(C)炭素を2重量部以上、20重量部以下含み、(C)炭素と無機充填材とを合計で160重量部以下含むことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物。
  5. 請求項1ないし4のいずれか1項に記載の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物を用いた樹脂成形物。
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