JP2011195383A - 圧電体およびそれを用いた圧電素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】通常のセラミックスの製造プロセスによって、巨大粒子を得ることのできる圧電体およびそれを用いた圧電素子を提供する。
【解決手段】組成式を(1−α){(K1−xNa1−yLi}NbO+αBa(MNb)Oと表したとき、MがFe、CoおよびMnから選ばれる少なくとも一種であるとともに、0.46≦x≦0.54、0.04≦y≦0.08、0.0075≦α≦0.0125であることを特徴とする圧電体を用いる。
【選択図】図2

Description

本発明は、圧電体に関し、例えば、位置決め、光学装置の光路長制御、流量制御用バルブ、ポンプ、超音波モータ、エンジンの燃料噴射装置、自動車等のブレーキ装置、インクジェットプリンターのインク吐出ヘッド等に使用されるアクチュエータなどに好適に用いられる圧電体および圧電素子に関するものである。
圧電体を利用した製品としては、例えば、フィルタ、位置決め、光学装置の光路長制御、流量制御用バルブ、超音波モータあるいは自動車のブレーキ装置等に使用されるアクチュエータなどがある。
従来、アクチュエータとしては、圧電性の高い、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)系材料やPT(チタン酸鉛)系材料が使用されていた。しかしながら、PZT系材料やPT系材料は、鉛を約60質量%の割合で含有しているため、酸性雨により鉛の溶出が起こり、環境汚染を招く危険性が指摘されている。そこで、鉛を主成分としない圧電材料へ高い期待が寄せられている。
鉛を含有しない圧電体としてはニオブ酸アルカリ系ペロブスカイトが知られている。{Lix(K1−yNay)1−x}(Nb1−z−wTazSbw)O3、ただし、0≦x≦0.2、0≦y≦1、0≦z≦0.4、0≦w≦0.2、x+z+w>0、で表される一般式1molに対して周期律表における2〜15族に属する金属元素、半金属元素、遷移金属元素、貴金属元素、及びアルカリ土類金属元素から選ばれるいずれか一種以上の添加元素を0.0001〜0.15mol含有する多結晶体のセラミックスであって、該多結晶体を構成する各結晶粒の特定の結晶面が配向していることを特徴とする結晶配向セラミックスが提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。この結晶配向セラミックスでは、板状や柱状などの異方形状粒子を配向させて成形した後、焼成することにより結晶が配向させられている。
特開2006−28001号公報
しかしながら、特許文献1に記載の圧電磁器は、変位特性を向上させるため前述のような複雑な作製プロセスを用いなければならず、生産コストが高くなるという問題があった。
また、高い圧電特性を得る方法としては、単結晶を使用することも考えられるが、やはり生産コストが高くなる。これに対して生産コストを下げるようとするSSCG法(Solid State Single Crystal Grain Grow 法)といった小さな単結晶を核として成形体に埋め込み、熱処理することで成形体全体を単結晶化させるプロセスもある。しかし、この場合においても、結晶核となる微小な単結晶が必要であるとともに、作製する圧電体の特性を安定させるために、核となる単結晶に非常に高い組成精度が要求されるなどの問題がある。
本発明は、かかる事情に鑑みて、通常のセラミックスの製造プロセスによって、巨大粒
子を得ることのできる圧電体およびそれを用いた圧電素子を提供することを目的とする。
本発明の圧電体は、組成式を(1−α1){(K1−xNa1−yLi}NbO+α1Ba{(M11/2Nb1/2)Oと表したとき、M1がFe、CoおよびMnから選ばれる少なくとも一種であるとともに、0.46≦x≦0.54、0.04≦y≦0.08、0.0075≦α1≦0.0125であることを特徴とする。
また、本発明の圧電体は、組成式を(1−α2){(K1−xNa1−yLi}NbO+α2Ba{(M21/3Nb2/3)Oと表したとき、M2がNiおよびMnから選ばれる少なくとも一種であるとともに、0.46≦x≦0.54、0.04≦y≦0.08、0.0075≦α2≦0.0125であることを特徴とする。
さらに、本発明の圧電体は、組成式を(1−α3){(K1−xNa1−yLi}NbO+α3BaM3Oと表したとき、M3がMnであるとともに、0.46≦x≦0.54、0.04≦y≦0.08、0.0065≦α3≦0.0080であることを特徴とする。
また、本発明の圧電素子は、前記圧電体が対向面を有し、該対向面に、互いを対向させて配置した一対の電極を備えることを特徴とする。
本発明の圧電体によれば、組成式を(1−α1){(K1−xNa1−yLi}NbO+α1Ba(M11/2Nb1/2)Oと表したとき、M1がFe、CoおよびMnから選ばれる少なくとも一種であるとともに、0.46≦x≦0.54、0.04≦y≦0.08、0.0075≦α1≦0.0125であることにより、通常の焼成プロセスにより1mm以上の粒子径を有する圧電体を得ることができる。
また、本発明の圧電体によれば、組成式を(1−α2){(K1−xNa1−yLi}NbO+α2Ba(M21/3Nb2/3)Oと表したとき、M2がNiおよびMnから選ばれる少なくとも一種であるとともに、0.46≦x≦0.54、0.04≦y≦0.08、0.0075≦α2≦0.0125であることにより、通常の焼成プロセスにより1mm以上の粒子径を有する圧電体を得ることができる。
さらに、本発明の圧電体によれば、組成式を(1−α3){(K1−xNa1−yLi}NbO+α3BaM3Oと表したとき、M3がMnであるとともに、0.46≦x≦0.54、0.04≦y≦0.08、0.0065≦α3≦0.0080であることにより、通常の焼成プロセスにより1mm以上の粒子径を有する圧電体を得ることができる。
また、本発明の圧電素子は、前記圧電体が対向面を有し、該対向面に、互いを対向させて配置した一対の電極を備えることにより、高性能なアクチュエータやセンサが得られる。
(a)は、本発明の圧電素子の実施形態の一例であるアクチュエータの概略縦断面図であり、(b)は、本発明の圧電素子の実施形態の一例である圧力センサ素子の概略斜視図である。 (a)は、試料No.3の圧電体の一表面のX線回折の結果であり、(b)は、同じサンプルを粉砕して粉末にした状態でのX線回折の結果である。
本発明の圧電体は、組成式を(1−α1){(K1−xNa1−yLi}NbO+α1Ba(M11/2Nb1/2)Oと表したとき、M1がFe、CoおよびMnから選ばれる少なくとも一種であるとともに、0.46≦x≦0.54、0.04≦y≦0.08、0.0075≦α1≦0.0125であるか、組成式を(1−α2){(K1−xNa1−yLi}NbO+α2Ba(M21/3Nb2/3)Oと表したとき、M2がNiおよびMnから選ばれる少なくとも一種であるとともに、0.46≦x≦0.54、0.04≦y≦0.08、0.0075≦α2≦0.0125であるか、組成式を(1−α3){(K1−xNa1−yLi}NbO+α3BaM3Oと表したとき、M3がMnであるとともに、0.46≦x≦0.54、0.04≦y≦0.08、0.0065≦α3≦0.0080である。
すなわち、本発明の圧電体は、{(K1−xNa1−yLi}NbO組成の一部をBa(MNb1−a)O組成に置換したものであり、MはFe、Co、NiおよびMnから選ばれる少なくとも一種であり、組成比のaはMの価数により変わる。Mの価数が2+であれば、a=1/3となり、Mの価数が3+であれば、a=1/2となり、Mの価数が4+であれば、a=1となる。
本発明の圧電体は、このような組成であることにより、通常のセラミックスと同様に合成粉末の成形体や圧粉体を熱処理することによって、巨大な結晶粒子の圧電体が得られ、条件によっては単結晶体を得ることもできる。
圧電体の主な成分である{(K1−xNa1−yLi}NbOは、ペロブスカイト構造をもつものである。また、その組成で作製した圧電磁器は、0.46≦x≦0.54、0.04≦y≦0.08の範囲で圧電定数の高くなり、この比率はいわゆるMPB(Morphotoropic Phase Boundary)領域となる比率である。ただし、まだ正方晶が主体の結晶相であり、この系にBa(M、Nb)Oを導入することに結晶相は立方晶に近づいていく。その間の導入量では、混合相の結晶相を示し、MPBを形成している。
また、上述の組成式でyが0.04以上であることにより、圧電磁器の焼結性が高くなり、圧電定数を高くすることができる。yが0.08以下であることにより圧電特性の温度依存性を低くすることができる。さらにyの範囲を0.04≦y≦0.06とすることにより、圧電定数をより高くすることができるのでより好ましい。
この主な成分であるニオブ酸アルカリ系ペロブスカイトに対して、様々な組成を置換・添加する検討をした結果、焼結体の粒子が非常に大きく成長する組成があることを見出した。
通常、セラミックスでは結晶粒子が物質拡散により粒成長し焼結している。結晶粒子の径は、通常の圧電セラミックスで10μm以下である。また、焼成温度をより高くしたり、焼成時に液相となる成分を多量に添加するなどで粒成長をある程度促進させることはできるが、それでも数十μmのオーダーであり、1mmを超える巨大な粒子に粒成長させることは難しかった。また、特許文献1に記載されているように、たとえ粒子径を数十μmオーダーへ粒成長させることができても粒子間に大きな10〜20μmの以上の空孔が形成され、緻密体を作製することができなかった。これに対して、本発明の圧電体では、吸水率0.1%以下の緻密体が作成でき、上述のような大きな空孔も見られない。
ニオブ酸アルカリ系ペロブスカイトの粒子成長には、主成分のアルカリ金属元素、特に焼成時のLiの挙動が大きく影響している。このことは、ニオブ酸アルカリ系ペロブスカ
イト中のLi量を増加させることにより粒成長を促進させることからも分かる。しかし、Liの比率を増やすだけでは、粒子径はせいぜい数十μm程度であり、緻密質の焼結体も得られなかった。
しかし、ニオブ酸アルカリ系ペロブスカイトにBa(M、Nb)O(MはFe、Co、Ni、Mnから選ばれる少なくとも一種)で表せる複合ペロブスカイトを添加することで平均粒子径が1mmを超える巨大粒子成長を発生させることができる。このような効果を得られる理由は以下のように考えられる。まず、焼成において、上述の組成で作製した合成粉末中に含まれるアルカリ金属元素のLiが低温で液相を生成するが、その際にFe、Ni、Co、Mnといった元素が存在するため、より低温で液相が生成される。この液相が成形体中で局所的に発生し、その中で結晶核が形成される。また、この組成では物質拡散が非常に早く、形成された結晶核を元にして結晶粒子が急激に成長する。その際、成長を始めた粒子の外周部にLiや遷移元素の液相成分が偏在し、粒子外周部の液相を介して周囲の小粒子を取り込み巨大粒子が形成されると考えられる。また、巨大粒子周辺部の液相部で小粒子を取り込み、非常に急激な粒子成長を起こすため一気に巨大な粒子が生成されるため粒子間に空隙が発生しないと考えられる。このような粒子は1mm以上の大きさになり、直径10mm程度の圧電体であれば、単一の粒子、すなわち単結晶体も得られる。
このような単結晶体を用いれば、結晶軸がランダムな多数の結晶の集合体であるセラミックスの場合と異なり、結晶軸を適切な方向に合わせて使用することができるので、圧電定数が高い状態で使用できる。後述の実施例の試料No.3の圧電体では、圧電特性(Smax/Emax、ただし、Emaxは試料に印加した最大電界値、SmaxはEmaxを印加した際の歪量)を、レーザー変位計を用いて測定した結果は、(001)cubic方向では310pm/Vであり、(110)cubic方向では90pm/Vであり、(111)cubic方向では75pm/Vであり、この圧電体を単結晶体で使用すれば、310pm/Vの高い圧電特性を利用することができる。これに対して、セラミックスの場合、材料そのものの圧電特性は同程度であっても、実際に使用する状態での圧電特性は、これらの値が混合され、平均化した値になるため、単結晶体よりも低くなってしまう。また、本発明の圧電体では、実際に使用する状態での圧電特性を高くするために、結晶軸が配向したセラミックスを作製しようとして、特許文献1に示されているような、特殊な製造プロセスを行なう必要もない。
上述の組成で、α1およびα2が0.0075以上、0.0125以下であるか、あるいは、α3が0.0065以上、0.0080以下であることにより、上述の液相生成による粒子成長の機構が適切に起こり、1mm以上の巨大な粒子が生成される。0.0050以下、あるいは0.0150以上の量では、結晶粒子は10μm程度、あるいはそれ以下の粒径となる。
圧電特性(Smax/Emax)はCo添加系より、Ni添加系が高い。また、Fe添加系に対して、Co、Mn、Ni添加系は粒子径がより大きくできる。
また、後述の実施例においては、複数の価数を取りえる元素(遷移元素)の価数が単一の値となるような組成比の圧電体を評価しているが、異なる価数の元素が混在するような組成比のペスブスカイト組成を添加しても同様の粒子成長させる可能性はある。つまり、Feの平均価数が非整数の2.5+となるようにBaFe2/5Nb3/5を添加したり、CoやMnで同様の添加をすることで粒子成長させる可能性はある。
本発明の圧電体は、粉砕時のZrOボールからZr等が混入する場合もあるが、微量であれば特性上問題ない。本発明の圧電体は、組成式(1−α){(K1−xNa
−yLi}NbO+αBa(MNb1−a)Oの組成が99質量%以上を占め、それ以外の組成は1%質量未満、より好ましくは0.5%質量未満である。
本発明の組成を有する圧電体は、例えば、原料として、NaCO、KCO、LiCO、Nb、BaCO、Fe、Co、NiO、MnOからなる各種酸化物あるいは塩を用いることができる。原料はこれに限定されず、焼成により酸化物を生成する炭酸塩、硝酸塩等の金属塩を用いても良い。
これらの原料を{(K1−xNa1−yLi}NbO組成の一部をBa(MNb1−a)Oと表したとき、0.42≦x≦0.58、0.03≦y≦0.08であるとともに、MがFe、Co、NiおよびMnから選ばれる少なくとも一種であり、Mの価数が2+であれば、a=1/3で、0.0075≦α≦0.0125とし、Mの価数が3+であれば、a=1/2で、0.0075≦α≦0.0125とし、Mの価数が4+であれば、a=1で、0.0065≦α≦0.0080とする組成となるように秤量し、混
合後の平均粒度分布(D50)が0.3〜1μmの範囲になるように粉砕する。この混合物を850〜1000℃で仮焼し、仮焼後の平均粒度分布(D50)が0.3〜1μmの範囲になるように粉砕し、再度所定の有機バインダを加え湿式混合し造粒する。
このようにして得られた粉体を、公知のプレス成形等により所定形状に成形し、大気中等の酸化性雰囲気において1000〜1200℃の温度範囲で2〜5時間焼成し、本発明の組成を有する圧電体が得られる。焼成は、通常のセラミックスの製造に使用されるバッチ式の焼成炉を使用することができる。焼成温度のピークの精度は±1℃程度であれば十分であり、組成によっては±2〜3℃程度でもかまわない。
図1(a)に、本発明の圧電素子の実施形態の一例であるアクチュエータの概略縦断面図を示す。このアクチュエータは、上述の組成の圧電磁器からなる2つの圧電基体1が積層されている。各圧電基体1の一方の主面に電極2が形成され、他方の主面には電極3が形成されている。アクチュエータ内で電極2、3は積層方向に交互に形成されている。分極は各圧電基体1の主面に垂直に電極3から電極2の方向に施してある。
このようなアクチュエータは、上述のように作製した単結晶体の圧電体の結晶配向を調べて、その方向に合わせて単結晶体を切断し、分極を施して圧電基体1を作製し、電極2、3と接着して積層することにより作製できる。このようなアクチュエータは、電極2と電極3との間に電圧を加えることにより圧電基体1がd33方向に変位する、すなわち、厚みが増える方向に変形し、アクチュエータとして働く。
図1(b)に、本発明の圧電素子の実施形態の一例である圧力センサ素子の概略斜視図を示す。この圧力センサは、上述の組成の圧電磁器からなる圧電基体11の対向する一対の主面に、それぞれに電極12、13を形成され、互いに対向させた一対の電極12、13を備えている。また、分極は主面と垂直な方向に施してある。このような圧力センサでは、主面間に加わる圧力により、各主面に電荷が生じるため、この電荷を測定することにより、主面間に加わっている圧力を測定することができる。
出発原料として純度99.9%のNaCO粉末、KCO粉末、LiCO粉末、Nb粉末、BaCO粉末、Fe粉末、Co粉末、NiO粉末およびMnO粉末を準備した。これらの粉末を、(1−α1){(K1−xNa1−yLi}NbO+α1Ba(M11/2Nb1/2)O、(1−α2){(K1−xNa1−yLi}NbO+α2Ba(M21/3Nb2/3)O、あるいは(1−α3){(K1−xNa1−yLi}NbO+α3BaM3O、モル比
による組成式(Na1−a1−bLiNbO+x{(Na0.5Bi0.5)BiNb}と表したとき、x、y、M1、M2、M3、α1、α2、α3が表1〜3に示す量になるように秤量混合した。
秤量した原料粉末を、純度99.9%のZrOボール、イオン交換水と共に500mlポリポットに投入し、16時間回転ミルで混合した。
混合後のスラリーを大気中で乾燥し、#40メッシュを通し、その後、大気中で950℃、3時間保持して仮焼し、この合成粉末を純度99.9%のZrOボールとイオン交換水と共に500mlポリポットに投入し、20時間粉砕して粉末を得た。
この粉末に適量の有機バインダを添加して造粒し、金型プレスで150MPaの圧力で成形し、大気中において、表1〜3に記載の温度でのキープ時間を3時間とし、その前後の昇温温度・降温速度を300℃/時間とするプロファイルで本焼成し、直径10mm、厚み3mmの円柱状の圧電体を得た。
粒子径は、圧電体を目視あるいは実体顕微鏡で観察し、試料のエッジなどの一部を除いて全体が1つの粒子となっていた場合は、試料の直径以上の粒子が生成されたものとして、10mm以上と評価した。それ以外の場合は、断面を鏡面研磨加工して、その後、塩酸と硝酸との混合酸溶液でエッティング処理を行なった後、走査型電子顕微鏡の観察で粒子径を測定した。
Figure 2011195383
Figure 2011195383
Figure 2011195383
圧電特性は、試料に印加した最大電界値Emaxと、Emaxを印加した際の歪量Smaxで評価した。試料No.3の圧電体ではSmax/Emax=310pm/V、試料No.29の圧電体ではSmax/Emax=330pm/Vであった。圧電特性は、{(K1−xNa1−yLi}NbO組成のxの値はx=0.50の試料No.3の圧電定数が最も高く、x=0.50から外れるにしたがって、圧電定数は小さくなっていった。これは、ニオブ酸アルカリ系ペロブスカイト単体の組成の場合と同様に、この組成領域でMPBとなっていることによる。また、0.046≦x≦0.054の範囲では、粒子の生成状態に差はなかった。
yについてもy=0.05の試料No.3の圧電定数が最も高く、y=0.05から外れるにしたがって、圧電定数は小さくなっていった。これは、ニオブ酸アルカリ系ペロブスカイト単体の組成の場合と同様であり、この組成領域でMPBとなっていることによる。
したがって、圧電体として有用であるのは、{(K1−xNa1−yLi}NbO単体の場合と同様の0.46≦x≦0.54、0.04≦y≦0.08の範囲である。表1〜表3から明らかなように、Mとして、Co、Fe、NiおよびMnを用いて、Ba(MNb1−a)Oを加えた試料は、MがFe、CoおよびMnのいずれかでa=
1/2の場合、および、MがNiおよびMnのいずれかでa=1/3の場合は0.0075≦α≦0.0125の範囲で粒子径が1mm以上の圧電体が得られた。MがMnでa=1の場合は0.0065≦α≦0.0080の範囲で粒子径が1mm以上の圧電体が得られた。また、y≧0.04の範囲で、粒子は3mm以上になった。
次に試料No.3の圧電体について、得られた巨大粒子の状態を調べた。巨大粒子の断面を鏡面研磨し、エッティング処理した後、走査型電子顕微鏡で観察を行なっても、粒界部は観察されず、巨大粒子は単一の粒子であることが確認できた。
さらに、巨大粒子の表面の一面をX線回折で評価すると図2(a)に示す(210)cubic面のみの回折パターンが観察された。同じサンプルを、メノウ乳鉢で粉砕し、粉末の状態にしてからX線回折で評価すると、図2(b)に示す、ペロブスカイト単相の各面間隔の回折ピークが観察された。以上の結果より、巨大粒子は単結晶であると判断できる。
また、実施例で作製した試料を、蛍光X線分析装置で組成分析した。その結果、各試料の磁器の組成は、調合した原料組成と同じであった。
1、11・・・圧電基体(圧電磁器)
2、3、12、13・・・電極
P・・・分極方向

Claims (4)

  1. 組成式を(1−α1){(K1−xNa1−yLi}NbO+α1Ba(M11/2Nb1/2)Oと表したとき、M1がFe、CoおよびMnから選ばれる少なくとも一種であるとともに、0.46≦x≦0.54、0.04≦y≦0.08、0.0075≦α1≦0.0125であることを特徴とする圧電体。
  2. 組成式を(1−α2){(K1−xNa1−yLi}NbO+α2Ba(M21/3Nb2/3)Oと表したとき、M2がNiおよびMnから選ばれる少なくとも一種であるとともに、0.46≦x≦0.54、0.04≦y≦0.08、0.0075≦α2≦0.0125であることを特徴とする圧電体。
  3. 組成式を(1−α3){(K1−xNa1−yLi}NbO+α3BaM3Oと表したとき、M3がMnであるとともに、0.46≦x≦0.54、0.04≦y≦0.08、0.065≦α3≦0.0080であることを特徴とする圧電体。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の圧電体が対向面を有し、該対向面に、互いを対向させて配置した一対の電極を備えることを特徴とする圧電素子。
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