JP2011192558A - 燃料電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】燃料電池101の多孔質炭素基板202とMEA205との間の空隙層301に発生して充満する二酸化炭素のガス圧が高まると、メタノールが多孔質炭素基板202を通じてMEA205に到達する現象が阻害される。そこで、空隙層301に圧力を所定値以下にする圧力調整弁107を設けた。ガス圧を最適値に設定すると、メタノールクロスオーバーを抑止しつつメタノールの供給を阻害しない状態を維持することができ、安定した高出力を可能にする。更に、直列接続される燃料電池セル102の各々の空隙層301のガス圧を共通化するために、ホース105と結合体106で各空隙層301を接続した。ガス圧を共通化することで、セル毎の出力のばらつきを抑止できる。
【選択図】図1
Description
より詳細には、電気化学反応の進行に伴って発生する出力低下現象を効果的に抑止し、安定した出力を達成できる燃料電池に関する。
発明者は、メタノールクロスオーバーを従来品と比べて約1/10と効果的に抑止し、90%以上の高濃度メタノールが利用できる、多孔質炭素基板を採用した直接メタノール燃料電池を開発した(特許文献2参照)。この特許文献2に記載の技術は直接メタノール燃料電池の発電効率を飛躍的に高めるものであった。ここで、多孔質炭素基板は、高濃度の液体メタノールを直接電解質層に接触させずに、液体メタノールから気化したメタノール分子を緩やかな速度で電解質層に供給する調節弁としての役割を果たしている。本発明者は、特許文献2の発明によってメタノールクロスオーバーを抑止することで、直接メタノール燃料電池のエネルギー密度を、それまでの約20倍に引き上げることに成功した。
本発明の実施形態に係る直接メタノール燃料電池では、多孔質炭素基板と電解質層との間に充満する二酸化炭素を外に逃がすための圧力調節弁を、多孔質炭素基板と燃料電極層との間の空隙部分に設けている。この二酸化炭素は内部圧力が高まる原因となるので、圧力弁を設けてこれを外に逃がすことにより、内部圧力を所定値以下に維持するようにしている。
また、通常、燃料電池はセルを直列接続して使用する。本発明の実施形態に係る直接メタノール燃料電池では、この各セルの空隙部分の内部圧力を均等にするために、パイプで圧力結合を施した。
図1は、本発明の実施形態例である、燃料電池の外観斜視図である。
図1に示す燃料電池101は、直接メタノール燃料電池であり、三つの燃料電池セル102が直列接続されている。
各々の燃料電池セル102には、上面に燃料供給口103と排気口104が設けられており、前面下部に燃料抜き出し口108が設けられている。
各々の排気口104にはホース105の一端が接続されている。ホース105の他端は結合体106に接続されている。更に結合体106には圧力調整弁107が接続されている。
図3は、燃料電池セル102の断面図である。
燃料電池セル102は、燃料タンク201と、多孔質炭素基板202と、ガスケット203と、燃料電極集電板204と、膜/電極接合体(Membrane Electrode Assembly:以下「MEA」と略)205と、空気電極集電板206が順番に積層されて構成される。
燃料タンク201は、液体メタノールを保持するタンクである。燃料タンク201は片面が開放された四角形の皿状に形成されており、多孔質炭素基板202が燃料タンク201の開放面を覆うことで液体メタノールを保持する。
なお、ガスケット203を炭素製やステンレス製などの導電性にすることによって、単セルを積層したスタックは単セルが自動的に直列接続される。
なお、貫通穴の形状を櫛型状にするなどして、電極面に接する貫通穴を一つの連結した空隙にし、さらにそこから外部へのガス排出口を設けることによって集電板にガスケットの機能を兼ね備えることも可能である。
燃料極触媒層302は、例えば、カーボンペーパーやカーボンクロスなどの多孔質構造からなるシート状炭素多孔体に、白金−ルテニウム(Pt−Ru)触媒、イリジウム−ルテニウム(Ir−Ru)触媒、白金−スズ(Pt−Sn)触媒等を塗布等の方法で付着させて形成する。
高分子電解質膜303は、プロトン伝導性又は水酸化物イオン伝導性を有するイオン交換膜として、例えば、ナフィオン(登録商標)112、同117等を用いたフッ素系イオン交換膜が用いられる。またこの他にも、耐熱性、メタノールクロスオーバーの抑制が良好なものとして、例えば無機化合物をプロトン伝導材料とし、ポリマーを膜材料としたコンポジット(複合)膜も利用可能である。具体的には、無機化合物としてゼオライトを用い、ポリマーとしてスチレン−ブタジエン系ラバーからなる複合膜や、或は炭化水素系グラフト膜を用いる。この他にも、メタノールクロスオーバーの抑制が良好なものとして炭化水素系プロトン導電膜の利用も可能である。
空気極触媒層304は、例えば、カーボンペーパーなどの多孔質構造からなるシート状炭素多孔体に、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)等を塗布等の方法で付着させて形成する。
空気電極集電板206には、通気用としてスリット状の開口部が形成されている。このスリットは隣り合う燃料電池セル102の燃料タンク201との間に隙間を形成し、この隙間から空気(酸素)を取り込み、MEA205の空気極触媒層304に酸素を供給するために設けられている。
図4は燃料電池セル102の模式図である。この図4に示す模式図は、本発明の実施形態の燃料電池101で起こる化学反応及び空隙層301に生じる現象を説明するために、図3の断面図を模式的に書き換えた図である。
図4中、ガスケット203は省略されているが、その代わりにプラスチック等の絶縁体で構成される筐体401が燃料タンク201等を構成すると共に、空隙層301も形成する。
この多孔質炭素基板202においては、1gの試料当たりに測定された総細孔容積(Total cumulative volume)は0.069[cc/g]となっている。
1g辺りの多孔質体に形成されている表面積(Total specific surface area)は7.555 [m2/g]である。
孔の平均半径(Average pore radius)は0.813[μm]である。
空隙率(Total porosity:細孔の容積/炭素板試料の容積)は13.69 [%]である。
真密度(Bulk density:空隙を除いた炭素そのものの密度)は1.974 [g/cm3]である。
空隙を含めた見かけ上の密度(Apparent density)は2.287 [g/cm3]である。
メタノール分子の大きさはおよそ3.5Åなので、メタノールが蒸気の状態ではこの微細な孔を支障なく通過できる。
図6に示される炭素壁601a及び601bは、多孔質炭素基板202の一部分を拡大したものであり、燒結された炭素の壁を示している。この炭素壁601a及び601bにより孔602が構成されている。
炭素壁601a及び601bを隔てて空隙層301の側には、液体メタノール603から蒸発したメタノール分子604と、反応によって生成された二酸化炭素分子605が充満している。
また、炭素壁601a及び601bを隔てた燃料タンク201の側には、液体メタノール603が、孔602との境界に現れる表面張力と二酸化炭素のガス圧で保持されている。そして、この二酸化炭素のガス圧が多孔質炭素基板202のバブルポイント圧以上に達すると、二酸化炭素が液体メタノール603に混入して二酸化炭素気泡606を形成し、燃料供給口103を通じて外気へ放出される。
燃料電池101の反応速度は、燃料電池101に接続される負荷の大小によって変動する。つまり、負荷が重くなり、二酸化炭素が多孔質炭素基板202を通過して燃料タンク201から抜け出る速度よりも、MEA205の燃料電極集電板204側で発生する二酸化炭素の生成速度が大きくなると、二酸化炭素が空隙層301に溜まるようになり、空隙層301のガス圧は上昇する。そして、空隙層301で過度に圧力が上昇した場合、多孔質炭素基板202を通じたメタノール供給が抑制され、出力が低下することが、発明者の実験及び検証にて判明した。
発明者が実験で厚さ0.5mm、空隙率15%の多孔質炭素基板202を燃料電池セル102に用い、100%メタノールで発電実験を行ったときの、空隙層301に設定したガス圧と平均出力の結果を表1に示す。
25kPa以上の比較的高い圧力においては、生成ガスの多くが多孔質炭素基板202を通して燃料タンク201に抜けることになるため、メタノールの供給が過度に抑えられる。この結果、25kPaでは平均出力が0.70W程度となり、20kPa〜10kPaに比較して10%以上も低い値になっている。
また、排気口104を設け、そこから排出するガスの圧力を20〜10kPaに設定することで、出力低下を抑え、平均出力値を高く維持することができた。一方、ガス圧が5kPaと低い場合、メタノールの透過速度に対する抑制が効かなくなり、却ってメタノールクロスオーバーが大きくなり出力が低下した。
以上の実験結果より、圧力調整弁107を設けて適切な圧力を維持させることが、燃料電池101の出力の安定化に極めて高い寄与を示すことが実証できた。
ホース105と結合体106で各燃料電池セル102の空隙層301を結合し、ガス圧を共通化させると、このようなセル毎の出力のばらつきを抑止できる。
図7は、別の実施形態の燃料電池101のブロック図である。
燃料電池101の排気口104には、ガス圧を電気信号に変換する圧力計701と、電気信号で制御可能な制御弁702が設けられている。また、燃料電池101の正極と図示しない負荷との間には、電流検出のためのシャント抵抗R703が接続されており、シャント抵抗R703の両端の電圧はバッファアンプ704を通じてA/D変換器705に入力される。A/D変換器705には圧力計701の出力信号も入力される。
A/D変換器705でデータに変換された電流とガス圧は、マイコンよりなる演算部706に入力される。演算部706は、現在の負荷に応じた最適なガス圧を演算し、現在のガス圧から目的のガス圧に収束させるための制御データを算出する。この制御データはD/A変換器707によってアナログ電圧に変換され、制御弁702を制御する。
更に、直列接続される燃料電池セル102の各々の空隙層301のガス圧を共通化するために、ホース105と結合体106で各空隙層301を接続した。ガス圧を共通化することで、セル毎の出力のばらつきを抑止できる。
Claims (2)
- 燃料タンクと、
前記燃料タンクの開口部を覆う多孔質炭素基板と、
前記多孔質炭素基板に近接して配置される燃料電極集電板と、
前記燃料電極集電板に接触して配置される膜/電極接合体と、
前記膜/電極接合体に接触して配置される空気電極集電板と、
前記多孔質炭素基板及び前記燃料電極集電板との間に形成される空隙層に蓄積される二酸化炭素を放出する排気口と、
前記排気口に接続されて前記空隙層のガス圧を所定の圧力以下に調整する圧力調整弁と
を具備する燃料電池。 - 燃料タンクと、前記燃料タンクの開口部を覆う多孔質炭素基板と、前記多孔質炭素基板に近接して配置される燃料電極集電板と、前記燃料電極集電板に接触して配置される膜/電極接合体と、前記膜/電極接合体に接触して配置される空気電極集電板と、前記多孔質炭素基板及び前記燃料電極集電板との間に形成される空隙層に蓄積される二酸化炭素を放出する第一排気口とを具備する第一燃料電池セルと、
前記第一燃料電池セルと等しい構造で前記第一排気口に対応する第二排気口を具備する第二燃料電池セルと、
前記第一燃料電池セルの前記第一排気口と、前記第二燃料電池セルの前記第二排気口とを結合する結合体と、
前記結合体に接続されて前記第一燃料電池セルの前記空隙層及び前記第二燃料電池セルの前記空隙層のガス圧を所定の圧力以下に調整する圧力調整弁と
を具備する燃料電池。
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