JP2011190980A - 除湿機 - Google Patents

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Abstract

【課題】被乾燥物の乾燥状態を精度良く検知することによって、被乾燥物をより早く乾燥させることができる除湿機を得ることである。
【解決手段】通過する空気中の水分を除去する除湿手段5と、室内空気Aを吸気し、除湿手段5を通過させて得られた乾燥空気Bを室内に供給する送風ファン2と、室内空気Aの温度を検出する室内温度検出センサ3と、室内空気Aの湿度を検出する室内湿度検出センサ4と、乾燥空気Bの送風方向を変更する風向変更手段1と、被乾燥物を含む所定領域の表面温度を非接触にて検出する赤外線センサ6と、該表面温度と所定の温度閾値との比較と及び該表面温度の時間的変化から乾燥対象範囲204を判断し、風向変更手段1を制御して該乾燥対象範囲204へ乾燥空気Bを送風するよう制御する制御手段7と、を備えることにより、精度良く被乾燥物の乾燥状態を検知することができる。
【選択図】図2

Description

本発明は、室内の湿度を除去するだけでなく、室内に置かれた被乾燥物を乾燥させることを目的とする除湿機に関するものである。
除湿機の本来の機能は「室内の湿度を下げる」ことにあるが、近年では、生活体系の変化に伴い、夜中に洗濯をする家庭が増加し、また雨天時や花粉飛散時期などに室外に洗濯物を干すことができないため、「室内に干した洗濯物を乾かす」という目的で除湿機が使用されることが多くなってきている。しかし従来の除湿機は、一般的に運転時間や室内湿度によって制御されており、室内に置かれた洗濯物を乾燥させるための制御がなされていないため、洗濯物を最適な乾燥状態にすることが出来ないという問題があった。
このような問題に対し、例えば「室内空気の温度を検出するための温度検出手段と、室内空気の湿度を検出するための湿度検出手段と被乾燥物の温度を検出する被乾燥物の温度を検出するための赤外線検出手段を備え、前記温度検出手段と前記湿度検出手段と前記赤外線検出手段の検出結果の判断処理と検出結果に応じた除湿手段と送風手段の出力制御を行うための制御手段を備え」、「赤外線検出手段を用いて、被乾燥物が配置されている空間をスキャンして、前記被乾燥物が配置されている空間の温度分布測定する」除湿機が考案されており、前記除湿機では、被乾燥物の雰囲気温度が室内温度より高い状態が一定期間続けば、被乾燥物が乾燥したと判断している(例えば、特許文献1参照)。
特開2007−240100号公報(0007欄)
上記の特許文献1によれば、被乾燥物の雰囲気温度が室内温度より高い状態が一定期間続けば、被乾燥物が乾燥したと判断しているが、被乾燥物の乾燥速度によって被乾燥物の雰囲気温度が室温温度より高い状態になってから乾燥するまでの時間が異なるため、例えば乾燥速度が早い被乾燥物においては被乾燥物が過乾燥状態になったり、乾燥速度が遅い被乾燥物においては乾燥が不十分のまま除湿機の運転が終了してしまうという課題があった。
そこで、本発明は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、被乾燥物の乾燥を精度良く検知することができる除湿機を得ることにある。
本発明に係る除湿機は、通過する空気中の水分を除去する除湿手段と、室内空気を吸気し、前記除湿手段を通過させて得られた乾燥空気を室内に供給する送風手段と、前記室内空気の温度を検出する室内温度検出手段と、前記室内空気の湿度を検出する室内湿度検出手段と、前記乾燥空気の送風方向を変更する風向変更手段と、被乾燥物を含む所定領域の表面温度を非接触にて検出する表面温度検出手段と、前記表面温度検出手段によって検出された表面温度と所定の温度閾値との比較、及び該表面温度の時間的変化から、前記所定領域内にある乾燥対象範囲を抽出し、該乾燥対象範囲へ前記乾燥空気を送風するよう前記風向変更手段を制御する制御手段と、を備えたものである。
本発明に係る除湿機によれば、被乾燥物の乾燥状態を、表面温度検出手段によって検出される表面温度の値とその表面温度の時間的変化から判断することにより、被乾燥物の乾燥を精度良く検知することのできるものである。
本発明の実施の形態1に係る除湿機の外観斜視図。 本発明の実施の形態1に係る除湿機の内部概略構成図。 本発明の実施の形態1に係る風向変更手段・赤外線センサの概略図。 本発明の実施の形態1に係る赤外線センサによる検出範囲の概念図。 本発明の実施の形態1に係る赤外線センサによるデータサンプリングの概念図。 本発明の実施の形態1に係る除湿機起動時の各種温度過渡特性の実測データ。 一般的な乾燥理論に基づいた周囲空気温湿度一定環境における被乾燥物の乾燥特性曲線図。 本発明の実施の形態1に係る被乾燥物の乾燥特性曲線図。 本発明の実施の形態1に係る除湿機の制御方法のフローチャート図。 本発明の実施の形態1に係る乾燥状態の判断方法概念図。 本発明の実施の形態1に係る上干し想定の被乾燥物設置図の一例。 本発明の実施の形態1に係る被乾燥物上干し想定時の赤外線センサによる検出データ概念図の一例。 本発明の実施の形態1に係る前干し想定の被乾燥物設置図の一例。 本発明の実施の形態1に係る被乾燥物前干し想定時の赤外線センサによる検出データ概念図の一例。 本発明の実施の形態2に係る赤外線センサによる検出データ概念図の一例。 本発明の実施の形態3に係る除湿機の制御方法のフローチャート図。
実施の形態1.
以下、本発明の実施の形態1について、図1〜14を用いて説明する。
図1は本発明の実施の形態1に係る除湿機の外観斜視図であり、図2は本発明の実施の形態1に係る除湿機の内部概略構成図であり、図3は本発明の実施の形態1に係る風向変更手段・赤外線センサの概略図である。
図1に示すように、本発明の除湿機は、除湿機筐体100と、除湿機筐体100内に室内空気Aを取り込む吸込口101と、吸込口101から取り込んだ空気から除去した水分を溜める貯水タンク102と、水分を除去された乾燥空気Bを除湿機筐体100から室内へ排出する排気口103で構成されている。排気口103には、乾燥空気Bの風向を調整できる風向変更手段1が備えられており、風向変更手段1は鉛直方向に対して風向変更するための縦方向ルーバー1aと、水平方向に対して風向変更するための横方向ルーバー1bによって構成されている。なお、貯水タンク102は、除湿機筐体100から着脱可能に構成されており、貯水タンク102を取り外して貯水タンク102内に溜められた水を廃棄することが出来る。
次に、除湿機の内部構成について説明する。
図2は除湿機筐体100の内部構造の概略を示すものである。除湿機筐体100には、吸込口101から室内空気Aを吸い込んで排気口103から乾燥空気Bを排出する気流を発生させる送風ファン2及び送風ファン2を回転駆動させる為のファン回転モータ2aが設けられており、吸込口101から吸引された室内空気Aは、室内空気Aの温度を検出する室内空気温度センサ3、室内空気Aの湿度を検出する室内湿度温度センサ4によって温度と湿度を検出された後、除湿手段5によって空気中の水分を除去され、その後、送風ファン2を経由して排気口103から室内へ乾燥空気Bとして排出される。ここで、除湿手段5は、空気中の水分を除去して凝縮させることができれば良いものであり、例えば、最も一般的なものとして、ヒートポンプ回路を形成し蒸発器において空気中の水分を凝縮させる方式や、吸着剤によって除去した空気中の水分を熱交換器において凝縮させるデシカント方式などを用いることができる。
次に、排気口103付近の構造について説明する。
排気口103付近には、図3に示すような乾燥空気Bの風向を調整できる風向変更手段1が備えられており、風向変更手段1は室内の鉛直方向に対して風向変更するための縦方向ルーバー1aと、室内の水平方向に対して風向変更するための横方向ルーバー1b、及び縦方向ルーバー1aを回転駆動するための縦方向回転モータ1cと横方向ルーバー1bを回転駆動するための横方向回転モータ1dによって構成されている。ここで、横方向ルーバー1bは、縦方向ルーバー1aの動きに併せてその鉛直方向の向きが変わるように、縦方向ルーバー1aの一部に設置されている。横方向ルーバー1bの一部には所定領域の表面温度を非接触にて検出することが出来る表面温度検出手段となる赤外線センサ6が一体に設置されており、赤外線センサ6で検出できる所定領域の表面温度は、風向変更手段1によって変更される乾燥空気Bの方向と略同一方向となるように構成されている。したがって、赤外線センサ6は、風向変更手段1が送風可能な範囲内におけるすべての領域の表面温度を検出することができる。
なお、本願では風向変更手段1と表面温度検出手段となる赤外線センサ6を一体に構成しているがこれに限ったものではなく、赤外線センサ6を風向変更手段1とは別に設ける構成にしても良い。
ここで、赤外線センサ6には、動作原理によって色々種類があるが、実施の形態1では熱起電力効果を利用したものを用いている。したがって赤外線センサ6は、所定領域の表面から発せられる熱放射(赤外線)を受ける赤外線吸収膜6aと、赤外線吸収膜6aの温度を検出するサーミスタ6bで構成されており、熱放射を吸収することによって昇温した赤外線吸収膜6aの感熱部分温度(温接点)と、サーミスタ6bによって検出される赤外線吸収膜6a自身の温度(冷接点)との温度差を電圧等の電気信号に変換するものであり、この電気信号の大きさから所定領域の表面温度を検出するものである。
次に、本発明の除湿機の制御手段について図2を用いて説明する。
制御回路7は、この除湿機の制御手段となるものであり、赤外線センサ6、サーミスタ6b、室内空気温度センサ3、室内空気湿度センサ4の検出結果を取り込み、それぞれの検出結果から検出可能なすべての領域に含まれる被乾燥物の乾燥を判定し、その判定結果に基づいて縦方向回転モータ1cと横方向回転モータ1dを制御して乾燥空気Bの送風方向を変更したり、ファン回転モータ2aを制御して送風量を調節したり、除湿手段5を制御して除湿能力を調節したりするものである。
次に、本発明の除湿機における動作の一例を説明する。図4は、赤外線センサ6による検出範囲を概念的に示したものである。
本発明の除湿機は、除湿機筐体100上面に設けられた図示しないスタートボタンを押されると、ファン回転モータ2aを動作させて送風ファン5を回転させる。これにより、室内空気Aは吸込口101から除湿機筐体100内に取り込まれ、室内空気温度センサ3により温度を、室内空気湿度センサ4により湿度を検出された後、除湿手段5に送られる。除湿手段5において、室内空気Aは、前述のヒートポンプ方式やデシカント方式などの除湿方法によって水分を除去されて乾燥空気Bとなり、乾燥空気Bは送風ファン2を経由して排気口103から室内に送風される。このとき、乾燥空気Bは、風向変更手段1によって室内の所望の領域の方向に送風される。なお、除湿手段5によって室内空気Aから除去された水は、凝縮水Cとして貯水タンク102に貯留される。
上記運転中において、赤外線センサ6は、風向変更手段1と一体に設置されているので、乾燥空気Bの送風方向と略同一方向にある所定領域の表面温度を検出することができ、その結果は制御回路7に入力される。加えて、室内空気温度センサ3と室内空気湿度センサ4によって検出される室内温度と室内湿度の検出結果も、制御回路7に入力される。その後、制御回路7では、赤外線センサ6によって得られる所定領域の表面温度と、室内温度と室内湿度から考慮した所定温度とを比較し、所定温度よりも低い表面温度を有する所定領域の範囲や、表面温度が時間的に変化している範囲を未乾燥の被乾燥物が存在する乾燥対象範囲であると判定する。その後、制御回路7は、乾燥対象範囲に乾燥空気Bが送風されるように、風向変更手段1を制御する。また、例えば乾燥対象範囲の乾燥度が特に低い場合は、ファン回転モータ2aの入力を大きくして送風ファン2による送風能力を高め、乾燥対象範囲により多くの乾燥空気Bを送風するように制御を行う。
このように、赤外線センサ6を風向変更手段1の風向変更する部分(縦方向ルーバー1a及び横方向ルーバー1b)に設置し、赤外線センサ6による検出方向と乾燥空気Bの送風方向を常に一致させることにより、乾燥空気Bの影響によって赤外線センサ6が誤検知することを抑制することができる。これにより、被乾燥物の乾燥度を精度良く検知することができるので、被乾燥物が未乾燥の状態で終了することなどを防ぐことができると共に、誤検知による無駄な動作が無いので被乾燥物をより早く乾燥させることが出来る。また、赤外線センサ6を風向変更手段1の風向変更する部分(縦方向ルーバー1a及び横方向ルーバー1b)に設置することにより、赤外線センサ6の検出方向を変更する為の駆動手段を別途設置する必要がなくなり、赤外線センサ6用の駆動手段にかかるコストを抑制することができる。加えて、風向変更手段1の風向変更する部分(縦方向ルーバー1a及び横方向ルーバー1b)は、略鉛直方向と略水平方向の2軸方向に風向変更できるよう構成しているので、より広範囲にわたる領域を乾燥可能にすることができる共に、表面温度を測定可能な領域を広げることができる。また、より細かい風向変更を行うことができるので、乾燥対象範囲を精度良く検知することが出来ると共に、より詳細な乾燥空気Bの吹き分けが可能となるという効果がある。
また、実施の形態1では、風向変更手段1と赤外線センサ6を一体に構成しているので、使用者が風向変更手段1に触れたりすることで、赤外線センサ6が実際に検出している位置と、制御回路7側で想定している検出位置とがずれてしまう場合がある。そこで、例えば所定時間経過するたびに縦方向ルーバー1aおよび横方向ルーバー1bを所定の位置まで回転駆動させ、ルーバーの実際の位置と制御回路7が検知している位置を合わせるように再設定を実施するのが望ましい。これにより、使用者がルーバーに触れたりして実際の位置と制御回路7の検知位置にずれが生じても修正を行うことができるので、これによる誤検知を防止することができる。
次に、所定領域の表面温度の測定方法について、図4及び図5を用いて説明する。図4は本発明の実施の形態1に係る赤外線センサ6による検出範囲の概念図であり、図5は本発明の実施の形態1に係る赤外線センサ6によるデータサンプリングの概念図である。
図4に示したように、赤外線センサ6が検出可能なすべての領域を全走査範囲200とすると、全走査範囲200は、横方向(水平方向)、縦方向(鉛直方向)に広がる面状の範囲となる。ここで、赤外線センサ6は、全走査範囲200を横方向(水平方向)と縦方向(鉛直方向)に対して複数分割された分割エリア201毎に、表面温度を測定するよう制御されている。これにより、広範囲の領域に対して詳細な温度マップを作製することができ、分割エリア201単位でより細かい乾燥空気Bの吹き分けを行うことができる。
次に、各分割エリア201内での動作について説明する。
図5は、各分割エリア201において行うデータサンプリングの概念図である。2002は赤外線センサ6の赤外線吸収膜6aが熱放射をうける領域の範囲(つまりは赤外線発生量の検出が可能な範囲)であるサンプリング範囲、202aはそのサンプリング範囲202のサンプリング中心点であり、各サンプリング範囲202からの赤外線発生量から検出された表面温度をサンプリング中心点202aの表面温度として用いている。ここで、図を見ても明らかなように、一つの分割エリア201内で、複数の表面温度が検出される。このとき、この分割エリア201の表面温度として、複数の表面温度の最低値、あるいは明らかに他の表面温度と異なる値を示すデータを異常データとし、この異常データを除いた最低値とすることにより、一般的に低温である被乾燥物の未乾燥部分が、分割要素201の面積より小さくても乾燥対象範囲を抽出することができ、被乾燥物の乾燥残しを防ぐことができる。なお、上記以外の方法、例えば分割エリア201の表面温度として複数の表面温度の平均値を用いる方法を採用しても良い。
次に、赤外線センサ6のサーミスタ6bを用いた検出手段について、図5を用いて説明する。図6は、本発明の実施の形態1に係る除湿機起動時の各種温度過渡特性の実測データである。
実施の形態1では、乾燥空気Bの温度を測定する乾燥空気温度検出手段として、赤外線センサ6を構成しているサーミスタ6bの検出結果を用いている。サーミスタ6b、赤外線吸収膜6aの温度を測定する為のものであるが、赤外線センサ6は乾燥空気Bが通過する風路内に設置されているので、赤外線吸収膜6aの温度が乾燥空気Bの温度と略同一となるので、サーミスタ6bで乾燥空気Bの温度を検出することが出来る。これにより、別途乾燥空気Bの温度を検出するセンサを設ける必要が無くなる為、コストの上昇を抑制しつつ乾燥空気Bの温度を利用した各種制御が可能となる。
次に、乾燥空気Bの温度を利用した検出手段について説明する。図6の300は室内空気温度センサ3によって測定した室温(室内空気Aの温度は略室温となる為)、301は別途用意した熱電対により測定した被乾燥物の表面温度、302はサーミスタ6bにより測定した乾燥空気Bの温度、303は赤外線センサ6によって検出された被乾燥物の表面温度である。熱電対によって検出された被乾燥物の表面温度301と赤外線センサ6によって検出された被乾燥物の表面温度303は、本来同じ温度になるはずであるが、乾燥空気Bの温度302が上昇するにつれて差が大きくなっていることがわかる。そこで、乾燥空気Bの温度302をサーミスタ6bで検出し、その値を用いて赤外線センサ6によって検出された被乾燥物の表面温度303を補正した結果が、補正表面温度304である。この補正表面温度304は、熱電対によって検出された被乾燥物の表面温度301と、ほぼ同等の値が得られる。このように、赤外線センサ6で検出された所定領域の表面温度の値を、乾燥空気Bの温度を用いて補正することにより精度良く被乾燥物の表面温度を検出することができる。
また、室温300が過渡的に変化する状況も考慮して、室内空気温度センサ3の検出結果も用いて赤外線センサ6で検出された所定領域の表面温度の値を補正することにより、更に精度良く被乾燥物の表面温度を検出することができる。
このように被乾燥物表面温度の検出精度を高めることにより、被乾燥物の乾燥を精度良く検知することが出来る。
次に、一般的な乾燥理論に基づいた、周囲空気温湿度一定環境における被乾燥物の乾燥特性について説明する。図7は、一般的な乾燥理論に基づいた、周囲空気温湿度一定環境における被乾燥物の乾燥特性曲線図である。
図7において、306は周囲空気温湿度一定環境下の被乾燥物の表面温度、307は被乾燥物の周囲空気温度、500は被乾燥物の含水率である。また、501は限界含水率、502は平衡含水率といい、503は予熱期間、504は恒率期間、505は減率期間、506は乾燥終了期間を示している。ここで、被乾燥物の含水率500は、(W−W0)/W0という式から算出される(水分を含んだ被乾燥物の重量をW、被乾燥物の乾量をW0)。
被乾燥物を一定の温度、湿度、空気流速に保たれた環境に設置した場合、まず、乾燥が進行する前の状態である予熱期間503に入る。予熱期間503では、被乾燥物の含水率500が低下し始め、被乾燥物の表面温度306が徐々に上昇する。その後、被乾燥物の表面が濡れ面状態を維持しながら乾燥していく恒率期間504に入る。恒率期間504では、被乾燥物の表面温度306が一定のまま被乾燥物の含水率500が直線的に一定の割合で低下する。その後、被乾燥物の表面に乾き面が発生しはじめる減率期間505に入る。減率期間505では、被乾燥物の表面温度306が周囲空気温度307に向かって上昇する。その後、被乾燥物が乾燥した状態である乾燥終了期間506に入る。乾燥終了期間506では、被乾燥物の含水率500、表面温度306共に一定の値となる。ここで、恒率期間504から減率期間505に移行するときの含水率を限界含水率501、乾燥がそれ以上進行しない含水率、つまりは乾燥終了期間506での含水率を平衡含水率502と呼んでいる。
次に、実際に除湿器を用いて被乾燥物を乾燥させたときの被乾燥物の乾燥特性について説明する。図8は、被乾燥物を乾燥させたときの被乾燥物の乾燥特性曲線図である。
図8において、308は被乾燥物の表面温度、309は被乾燥物の裏面温度、ΔTr1、ΔTr2は被乾燥物の表面温度と室温との温度差、ta1、tb1は被乾燥物の表面温度が室温に到達する経過時間、ta2、tb2は被乾燥物の表面が乾燥終了する経過時間、ta3、tb3は被乾燥物の裏面温度が室温に到達する経過時間、ta4、tb4は被乾燥物の裏面が乾燥終了する経過時間である。なお、308a〜309aは乾燥速度の速い被乾燥物、308b〜309bは乾燥速度の遅い被乾燥物に対するものである。ここで、被乾燥物の乾燥速度は、被乾燥物の材料に起因するものだけでなく、除湿器との距離や乾燥空気Bの当たり具合、周囲環境の状況などによって決まるものである。
図7で説明したように、被乾燥物の表面温度306は減率期間505に達すると徐々に上昇し、乾燥終了期間506で周囲空気温度307とほぼ同等となる。しかし、実際の除湿器では、被乾燥物に室温300よりも高い温度の乾燥空気Bを当てて乾燥させているので、被乾燥物への乾燥空気Bの当たり具合や被乾燥物の設置位置などによって被乾燥物の周囲空気温度307が異なり、また被乾燥物の材質などによって乾燥のしやすさが異なるため、図8に示すように、被乾燥物の表面温度308は、乾燥速度の速い被乾燥物の表面温度308aと、乾燥速度の遅い被乾燥物の表面温度308bのように、乾燥過程における温度上昇特性、及び乾燥終了時の到達温度、そして表面温度308が室温300以上となってから乾燥終了期間506に到達するまでの時間が異なることがある。
そこで、本願発明では、検出された表面温度308が室温300以上で、且つ表面温度308の時間的変化が小さいとき、そのエリアは乾燥したと判断し、乾燥対象から除外するように制御されている。このようにすることによって、乾燥終了期間506における到達温度や到達時間が異なる被乾燥物を同時に干すような場合でも、より高精度に被乾燥物の乾燥を検知することができ、それにより被乾燥物を早くそして確実に乾かすことが出来る。
また、実施の形態1では、室温300は、サーミスタ6bによって検出される乾燥空気Bなどによって変動するものであることから、表面温度308の時間的変化を、室内空気温度センサ3により検出された室温300と被乾燥物の表面温度308との温度差ΔTr1、ΔTr2によって検出するようにしている。このようにすることにより、室温300が変動しても、その影響を受けることなく、より高精度に被乾燥物の乾燥を検知することができる。
また、室温300の代わりに乾燥空気Bの温度を用いて表面温度308の時間的変化検出するようにしても、同様に被乾燥物の乾燥を判断することが出来る。
次に、本発明の実施の形態1における除湿機の具体的な制御方法について説明する。図9は、本発明の実施の形態1における除湿機の制御方法を示すフローチャートである。
使用者によって除湿機筐体100上面に設けられた図示しないスタートボタンを押されると除湿機の電源がONになり(ステップS1)、制御回路7からの信号により送風ファン2及び除湿手段5を動作させ除湿運転を開始する(ステップS2)。
次に、室内空気温度センサ3により室内空気温度Tを検出し(ステップS3)、制御回路7は室内空気温度Tを用いて第1の温度閾値Ttrig1を設定する(ステップS4)。次に制御回路7からの信号により風向変更手段1を駆動させ、全走査範囲200へ乾燥空気Bを送風しながら各分割エリア201にある物体の表面温度を赤外線センサ6によって検出する(ステップS5)。次に、ステップS4で設定した第1の温度閾値Ttrig1と、ステップS5で得られた各分割エリア201の表面温度とを比較し、表面温度が第1の温度閾値Ttrig1より低い分割エリア201を、被乾燥物が存在する被乾燥物範囲203として判断し、この被乾燥物範囲203を乾燥対象範囲204として設定する(ステップS6)。ここで、被乾燥物範囲が複数に分かれて検出された場合は、全ての被乾燥物範囲を長方形形状で囲った範囲を被乾燥物範囲203として設定する。このように被乾燥物範囲203を設定することにより、検出できなかった複数の被乾燥物の間にある被乾燥物にも、乾燥空気Bを送風することが出来る。
以上ステップS3乃至6の動作を、被乾燥物の存在する範囲を抽出する被乾燥物範囲検出工程10とする。
なお、被乾燥物範囲検出工程10のステップS5において、例えば風向変更手段1のルーバー回動速度をステップS9における風向変更手段1のルーバー回動速度より速くしたり、全ての分割エリア201を検出せずに1行飛ばしのように間引いて検出したり、全走査範囲200の外周から検出を開始して被乾燥物の4隅の座標を検出したり、等の方法を用いることにより、被乾燥物を乾燥させるまでの時間を短くすることができる。これは、ステップS5は赤外線センサ6が検出する表面温度を用いて室内の中から被乾燥物を抽出するステップであり、室内の壁面や室内におかれた家具等の表面の温度と被乾燥物表面の温度との温度差は、ステップS9における被乾燥物の乾燥部分と未乾燥部分の温度差よりも大きい。したがって、被乾燥物は検出しやすいため、赤外線センサ6による検出回数が減少しても誤検知すること無く被乾燥物を検出することができる。このような制御を行うことにより、広範囲を検出するステップS5にかかる時間を短縮することができるので、結果として被乾燥物を乾燥させるまでの時間を短縮することができる。また、被乾燥物を乾燥させるまでの時間を短縮するということは、被乾燥物を乾燥させるのに係るエネルギーを低減できるということでもある。
次に、室内空気温度センサ3により室内空気温度Tを再度検出し(ステップS7)、制御回路7は新たに検出された室内空気温度Tを用いて第2の温度閾値Ttrig2を設定する(ステップS8)。次に制御回路7からの制御信号により風向変更手段1を駆動させ、乾燥対象範囲204へ乾燥空気Bを送風しながら各分割エリア201の表面温度を赤外線センサ6によって検出する(ステップS9)。次に、ステップS8で設定した第2の温度閾値Ttrig2と、ステップS9で得られた各分割エリア201の表面温度とを比較し、表面温度が第2の温度閾値Ttrig2より低い分割エリア201と、表面温度と第2の温度閾値Ttrig2との温度差が時間的に変化している分割エリア201とを被乾燥物のなかで未乾燥状態が存在する範囲と判断し、この範囲を乾燥対象範囲204として再設定する(ステップS10)。ここで、乾燥対象範囲が複数に分かれて検出された場合は、全ての乾燥対象範囲を長方形形状で囲った範囲を乾燥対象範囲204として設定する。このように乾燥対象範囲204を設定することにより、検出できなかった複数の乾燥対象範囲の間にある乾燥対象範囲にも、乾燥空気Bを送風することが出来る。
次に、室内空気湿度センサ4によって検出される室内空気湿度Hと予め決められている所定の湿度閾値Htrigとを比較し(ステップS11)、室内空気湿度Hが湿度閾値Htrig以上だった場合は(ステップS11のNo)、運転開始からの経過時間tと第1の更新時間tupd1を比較し(ステップS12)、運転開始からの経過時間tが第1の更新時間tupd1を経過していない場合は(ステップS12のNo)、ステップS7に戻ってそれ以降のステップを再度実施する。
また、運転開始からの経過時間tが第1の更新時間tupd1を経過している場合は(ステップS12のYes)、経過時間tをリセットした後(ステップS13)、ステップS3に戻ってそれ以降のステップを再度実施する。このように、第1の更新時間tupd1経過するごとに被乾燥物範囲検出工程10を実施することにより、例えば使用者が新たに被乾燥物を追加した場合に、その追加された被乾燥物もその存在する範囲を抽出して乾燥させることが出来る。具体的な設定値としては、第1の更新時間tupd1は30乃至60分程度に設定する。
以上ステップS7乃至12の動作を、被乾燥物に乾燥空気Bを送風しながら乾燥対象範囲204を再抽出する工程を順次繰り返し行う乾燥対象範囲送風工程11とする。
一方、ステップS11において、室内空気湿度Hが湿度閾値Htrig以下だった場合は(ステップS11のYes)、被乾燥物が全て乾燥したと判断し、除湿機の全ての運転を停止して電源をOFFにする(ステップS14)。
以上ステップS11からステップS14への工程を、被乾燥物が乾燥したことを判断し、除湿機の運転を終了する乾燥終了判断工程12とする。
上記の様な、乾燥対象範囲送風工程11を有する制御方法を用いることにより、被乾燥物及び被乾燥物の未乾燥の部分に対し集中的に乾燥空気Bを送風することが出来るので、被乾燥物を乾燥させるまでの時間を短縮することができる。したがって、被乾燥物を乾燥させるのに係るエネルギーを低減することが可能となる。
ここで、第1の温度閾値Ttrig1は、室内空気温度センサ3により検出された室内空気温度Tを用いて設定してもよく、サーミスタ6bにより検出された乾燥空気Bの温度Tを用いて設定してもよい。一般的に洗濯あるいは脱水直後の被乾燥物の表面温度は、被乾燥物が水分を含んでいるので洗濯水同等に低温であり、また被乾燥物に乾燥空気Bを送風している時でも、被乾燥物から周囲空気に気化潜熱を奪われるため室内空気温度Tあるいは乾燥空気Bの温度Tより低温となる。したがって、第1の温度閾値Ttrig1をT−αまたはT−βのように設定することにより、第1の温度閾値Ttrig1以下の範囲に被乾燥物が存在すると判定することができる。なおαおよびβは、除湿機の能力や運転負荷に応じて変更する必要があり、また洗濯あるいは脱水直後の水分を多く含んでいると想定される運転開始直後から乾燥速度が一定である恒率期間は、室内空気温度Tを基準としたT−α、乾燥がある程度進んでいると想定される第1の更新時間tupd1経過後は、乾燥空気Bの温度Tを基準としたT−βを第1の温度閾値Ttrig1として用いた方が、赤外線センサ6による検出温度との乖離が小さく、検出精度も向上するので望ましい。
また、第2の温度閾値Ttrig2は、室内空気温度T、乾燥空気Bの温度Tのどちらを基準にする場合も、第1の温度閾値Ttrig1より高く設定する。これは、第1の温度閾値Ttrig1は、室内空気温度Tや乾燥空気Bの温度Tより明らかに低温である被乾燥物(被乾燥物範囲203)を抽出するための閾値であり、第2の温度閾値Ttrig2は、被乾燥物範囲203内における未乾燥の部分(乾燥対象範囲204)を抽出するための閾値であることから、第1の温度閾値Ttrig1より第2の温度閾値Ttrig2を高い温度とすることにより、被乾燥物内にある未乾燥の部分を検出することができ、且つ第2の温度閾値Ttrig2が乾燥空気の温度Tに近いほど精度良く被乾燥物内にある未乾燥の部分を検出することが出来る。
また、ステップS9にて被乾燥物の表面温度の検出および乾燥空気Bの送風を実施する前に、縦方向ルーバー1aおよび横方向ルーバー1bを所定の位置まで回転駆動させ、ルーバーの実際の位置と制御回路7が検知している位置を合わせるような制御を実施するのが望ましい。これにより、使用者がルーバーに触れたりして実際の位置と制御回路7の検知位置にずれが生じても修正を行うことができるので、これによる誤検知を防止することができる。
また、ステップS1において、電源がONされたときに、被乾燥物を乾燥させるための一連の動作が開始されているが、電源とは別に被乾燥物を乾燥させるためのスイッチを設け、ステップS1としてそのスイッチをONすることによって動作を開始してもよい。
またステップS2において、風向変更手段1を駆動させても良い。
次に、ステップS9至乃10において、乾燥対象範囲204を再設定するプロセスについて詳細に説明する。図10は、本発明の実施の形態1における、乾燥状態の判断方法を示す概念図である。
図10の左図は、ステップS9において、乾燥対象範囲204へ乾燥空気Bを送風しながら赤外線センサ6によって検出された、各分割エリア201の表面温度を示したものである。また、図10の右図は、各分割エリア201の表面温度と第2の温度閾値Ttrig2との温度差の時間的変化をデータ処理したデータ処理マップ205を示したものであり、+記号が前回よりも高い温度差が検出されたエリア、−記号が前回よりも低い温度差が検出されたエリア、0記号が前回とほぼ同様の温度差が検出されたエリアを示している。ここで、前回とほぼ同様の温度差とは、例えば温度差の変化量が所定の範囲内に収まったときに付すようにしている(例えば温度差の変化量が±1度以内など)。なお、1段目がステップS9における1回目の測定結果、2段目がステップS9における2回目の測定結果、三段目がステップS9における3回目の測定結果、一番下段がステップS9における4回目の測定結果を示したものである。
ここで、1回目に記載されている乾燥対象範囲204は、ステップS9より前のステップS6にて検出・設定された乾燥対象範囲204であり、2回目以降に記載されている乾燥対象範囲204は、ステップS10にて検出・設定された乾燥対象範囲204である。また、206はステップS9で検出された表面温度と第2の温度閾値Ttrig2との温度差が室温より低い分割エリアである低温エリアであり、207は表面温度と第2の温度閾値Ttrig2との温度差が室温より高い分割エリアであるが、まだ温度変化が起きている範囲であり、この範囲を準乾燥範囲としている。
まず、1回目のステップS9において、乾燥対象範囲204に対して乾燥空気Bの送風と、赤外線センサ6による被乾燥物の表面温度の検出を行う。このとき、制御回路7では、表面温度と第2の温度閾値Ttrig2との温度差を算出し、直前に検出された温度差と今回検出された温度差を比較し、前回よりも高い温度差が検出されたエリアには+記号、前回よりも低い温度差が検出されたエリアには−記号、前回とほぼ同様の温度差が検出されたエリアには0記号を示す。
ここで、制御回路7では、データ処理マップ205のうち、0記号の値を持ち且つ低温エリア206以外の範囲を乾燥していると判断し、その後のステップS10において乾燥対象範囲204を1回目の右図のように再設定する。なお、乾燥対象範囲204が複数点在する場合は、それらすべてを含むような長方形の範囲を乾燥対象範囲204として設定している。
また、データ処理マップ205のうち、0記号の値を持ち且つ低温エリア206に属するエリアがある。このエリアを低温物体エリア208として設定し、所定回数連続で
低温物体エリア208として設定されたエリアを、乾燥対象とは別の低温物体が存在するエリアとして判断し、乾燥対象範囲204から外すように制御されている。ここで、低温物体とは、例えば窓など室温よりも低温となるような物体のことを示している。なお、実施の形態1では2回連続で低温物体エリア208と検出されたときに、乾燥対象範囲204から外すように制御されている。
2回目のステップS9においても1回目と同様に、再設定された乾燥対象範囲204に対して乾燥空気Bの送風と、赤外線センサ6による被乾燥物の表面温度の検出を行う。このとき、制御回路7では、表面温度と第2の温度閾値Ttrig2との温度差を算出し、直前に検出された温度差と今回検出された温度差を比較し、前回よりも高い温度差が検出されたエリアには+記号、前回よりも低い温度差が検出されたエリアには−記号、前回とほぼ同様の温度差が検出されたエリアには0記号を示す。
ここで、1回目と同様に2回目でも同じエリアが低温物体エリア208として検出されている。したがって、2回目では、データ処理マップ205のうち、0記号の値を持ち且つ低温エリア206以外の範囲と低温物体エリア208を乾燥していると判断し、その後のステップS10において乾燥対象範囲204を2回目の右図のように再設定する。なお、乾燥対象範囲204が複数点在する場合は、それらすべてを含むような長方形の範囲を乾燥対象範囲204として設定している。
3回目のステップS9においても1回目、2回目と同様に、再設定された乾燥対象範囲204に対して乾燥空気Bの送風と、赤外線センサ6による被乾燥物の表面温度の検出を行う。このとき、制御回路7では、表面温度と第2の温度閾値Ttrig2との温度差を算出し、直前に検出された温度差と今回検出された温度差を比較し、前回よりも高い温度差が検出されたエリアには+記号、前回よりも低い温度差が検出されたエリアには−記号、前回とほぼ同様の温度差が検出されたエリアには0記号を示す。
ここで、制御回路7では、データ処理マップ205のうち、0記号の値を持ち且つ低温エリア206以外の範囲を乾燥していると判断し、その後のステップS10において乾燥対象範囲204を3回目の右図のように再設定する。なお、乾燥対象範囲204が複数点在する場合は、それらすべてを含むような長方形の範囲を乾燥対象範囲204として設定している。
4回目のステップS9においても1〜3回目と同様に、再設定された乾燥対象範囲204に対して乾燥空気Bの送風と、赤外線センサ6による被乾燥物の表面温度の検出を行う。このとき、制御回路7では、表面温度と第2の温度閾値Ttrig2との温度差を算出し、直前に検出された温度差と今回検出された温度差を比較し、前回よりも高い温度差が検出されたエリアには+記号、前回よりも低い温度差が検出されたエリアには−記号、前回とほぼ同様の温度差が検出されたエリアには0記号を示す。
ここで、制御回路7では、データ処理マップ205のうち、0記号の値を持ち且つ低温エリア206以外の範囲を乾燥していると判断し、その後のステップS10において乾燥対象範囲204を4回目の右図のように再設定する。なお、乾燥対象範囲204が複数点在する場合は、それらすべてを含むような長方形の範囲を乾燥対象範囲204として設定している。
このように、被乾燥物の表面温度が室温より高く且つ表面温度と第2の温度閾値Ttrig2との温度差の変化が小さい分割エリアを、乾燥したエリアとして判断することにより、確実に被乾燥物の乾燥を検知することが出来る。
なお、実施の形態1では、表面温度と第2の温度閾値Ttrig2との温度差の変化の検証を前回との比較のみで行っているが、例えば表面温度と第2の温度閾値Ttrig2との温度差の変化が所定回数連続である範囲内に収まっていれば乾燥したと判断するようにしても良い。このようにすることにより、被乾燥物が動いてしまったり、被乾燥物の乾燥速度が非常に遅い場合でも、乾燥の判断において誤検知することを防止することが出来る。また、この所定回数は、除湿機の運転開始からそのエリアが第2の温度閾値Ttrig2まで到達するのに要した時間に応じて変更しても良い。つまり、除湿機の運転開始からそのエリアが第2の温度閾値Ttrig2まで到達するのに要した時間が長いほど、そのエリアの乾燥速度は遅いということであり、したがって、乾燥の判断に用いる時間的変化の時間を長くとる(つまりは所定回数の回数を増やす)ことによって、被乾燥物が本当に乾燥する前に乾燥したと判断してしまうことを抑制することが出来る。また、乾燥の判断に用いる時間的変化の時間を長くとる代わりに、時間的変化の幅を狭くしても良い。また、除湿機の運転開始からそのエリアが第2の温度閾値Ttrig2まで到達するのに要した時間の代わりに、全走査範囲200に対する乾燥対象範囲204の面積比によって変更するようにしても良い。この場合は、全走査範囲200に対する乾燥対象範囲204の面積比が大きいほどそのエリアの乾燥速度が遅いということになるので、その場合は、上記と同様に時間的変化の時間を長くとるか時間的変化の幅を狭くすれば良い。
また、実施の形態1では、2回連続で低温物体エリア208と検出されたときに、乾燥対象範囲204から外すように設定されているが、この回数はこれに限ったものではなく、より多い回数に設定する方がよい。なぜなら、室内の湿度が高かったり、被乾燥物が非常に水分を含んだ状態であったり、被乾燥物の乾燥速度が非常に遅かったりすると、初期段階では乾燥対象となるエリアであっても室温より低温で、且つ表面温度と第2の温度閾値Ttrig2との温度差の変化が小さい場合があり、これらを低温物体エリア208と誤検知しないために判定に要する回数は多い方が良い。例えば、乾燥したと判断する際に要する所定回数より、低温物体エリア208と判断する際に要する所定回数の方が多くなるよう設定することにより、乾燥対象範囲204を再設定する際の誤検知を抑制することが出来る。
また、実施の形態1では、乾燥対象範囲204の再設定を毎回行っているが、通常の衣類の乾燥速度はそれほど早くないことから、例えばこの乾燥対象範囲204の再設定を、所定時間経過毎に実施するようにしても良い。このようにすることにより、定期的に表面温度と第2の温度閾値Ttrig2との温度差が測れるようになるので、乾燥対象範囲204の大きさに関係なく、定量的に表面温度と第2の温度閾値Ttrig2との温度差の時間的変化を測定することが出来る。また、乾燥対象範囲204の再設定に用いられる被乾燥物の表面温度や室温は、その所定時間の間に測定された結果の平均値を用いるようにしても良い。このようにすることにより、突発的な誤検知要因(例えば、被乾燥物が揺動したり、除湿機付近を通過する人を検知してしまった場合など)が起きても、その影響を小さくすることが出来る。
ここで、除湿機によって洗濯物を乾燥させる場合、洗濯物の干し方には様々なパターンがあり、洗濯物を鴨居やカーテンレール等の高所から吊るして除湿機の送風を下から当てる「上干し」と、洗濯物を床置きの物干しに吊るして除湿機の送風を前から当てる「前干し」に大別される。以下、この2種類の干し方パターンと赤外線センサ6の検出範囲の関係について説明する。
図11は「上干し」を想定した被乾燥物の設置図、図12は「上干し」想定時の赤外線センサ6による検出データの概念図、図13は「前干し」を想定した被乾燥物の設置図、図14は「前干し」想定時の赤外線センサ6による検出データの概念図である。
図11、13において、400が被乾燥物であり、図12、14において、203a〜dは、被乾燥物範囲203の、横ルーバー方向および縦ルーバー方向に対する、最小および最大座標(原点を除湿機正面左下と仮定)を示している。具体的には、横ルーバー方向最小座標203a、横ルーバー方向最大座標203b、縦ルーバー方向最小座標203c、横ルーバー方向最大座標203dとしている。
「上干し」の場合、図11に示すように、除湿機筐体100から見た被乾燥物400は、縦ルーバー方向に対しては広く分布するが前方には存在せず、横ルーバー方向に対しては被乾燥物400の幅の分だけであるため狭く分布することが多い。したがって、被乾燥物範囲203は、図12に示すように上方に細長く固まった分布となると想定される。よって、被乾燥物範囲203の面積は、全走査範囲200の1/3程度であり、縦ルーバー方向に対しては最小座標203cが比較的大きな値となり、横ルーバー方向に対しては最小座標203aと最大座標203bの差が小さくなると想定される。
一方、「前干し」の場合、図13に示すように、除湿機筐体100から見た被乾燥物400は、縦ルーバー方向に対しては前方にのみ存在し、横ルーバー方向に対してはほぼ最大幅程度まで広く分布することが多い。したがって、被乾燥物範囲203は、図14に示すように下方に幅広く固まった分布となると想定される。よって、被乾燥物範囲203の面積は、全走査範囲200の1/2程度であり、縦ルーバー方向に対しては最大座標203dが比較的小さな値となり、横ルーバー方向に対しては最小座標203aと最大座標203bの差がほぼ最大限まで大きくなると想定される。
したがって、上記の様な、被乾燥物範囲検出工程10、乾燥対象範囲送風工程11、乾燥終了検出工程12を有する制御方法を用いることにより、前記制御方法を用いない場合と比べ、被乾燥物を乾燥するのに要する時間及びエネルギーを「上干し」の場合は1/3程度、「前干し」の場合は1/2程度にすることが出来ると想定される。
また図9で説明したように、被乾燥物範囲検出工程10は除湿機が起動された時以外に、第1の更新時間tupd1が経過するごとに繰り返し実施されるので、運転中に被乾燥物400が追加された場合や、「上干し」から「前干し」に干し換えされた場合、また除湿機筐体100が移動された場合などについても、確実に被乾燥物を検出することが出来る。
また、被乾燥物範囲203は、図11や図13に示されるように、被乾燥物が複数あっても全ての被乾燥物を含む長方形形状として設定しているので、例えば干し方にムラがあり被乾燥物400が分散している場合や、靴下等の小さい被乾燥物400を検出できなかった場合についても、被乾燥物400の検出漏れを回避することができる。
実施の形態2.
本発明の実施の形態2に係る除湿機は、除湿機の構成については上記の実施の形態1と同じであり、除湿機の制御方法におけるステップS10での乾燥対象範囲204の設定方法が実施の形態1と相違する。以下、相違点を中心に説明する。また、実施の形態1と同じ部分にはこれと同じ符号を付して、一部の説明を省略する。
図15は、本発明の実施の形態2における、赤外線センサ6による検出データの概念図である。
実施の形態2において、209a、209b、209cはそれぞれステップS10において、赤外線センサ6によって検出された表面温度が第2の温度閾値Ttrig2より低く且つ表面温度と第2の温度閾値Ttrig2との温度差の変化が小さい分割エリア201であり、これを乾燥対象中心範囲として設定している。また、204a、204b、204cはそれぞれ対応する乾燥対象中心範囲209a〜cの外周にある分割エリア201を1個分拡大した範囲であり、これを乾燥対象範囲として設定している。そして、各乾燥対象範囲204a〜cを長方形形状に囲んだ範囲を乾燥対象範囲204として設定している。
このように、被乾燥物の乾燥が終了していないエリアを乾燥対象中心範囲209とし、その乾燥対象中心範囲209の外周にあるそれぞれの分割エリア201を1個分拡大した範囲を乾燥対象範囲204として設定することにより、例えば乾燥空気Bの送風によって被乾燥物が揺動して、乾燥対象から外れることを防ぐことができる。また、未乾燥状態である乾燥対象中心範囲209の周りにも乾燥空気Bがあたるので、時間経過によって乾燥対象中心範囲209の水分が周りに拡散して乾燥対象範囲204が拡大することを抑制することができ、これにより被乾燥物を乾燥するのにかかる時間を短縮することが出来る。
実施の形態3.
本発明の実施の形態3に係る除湿機は、除湿機の構成については上記の実施の形態1及び実施の形態2と同じであり、除湿機の制御方法におけるステップS11以降の制御方法が実施の形態1と相違する。以下、相違点を中心に説明する。また、実施の形態1及び実施の形態2と同じ部分にはこれと同じ符号を付して、一部の説明を省略する。
図16は、本発明の実施の形態3における除湿機の制御方法を示すフローチャートである。図16のステップS1乃至14は実施の形態1と同様であるため、説明を割愛する。
ステップS11にて室内空気湿度Hが湿度閾値Htrig以下と判定された後(ステップS11のYes)、被乾燥物の中に乾燥対象範囲204が存在するか判断し(ステップS15)、被乾燥物の中に乾燥対象範囲204が存在しない場合は(ステップS15のNo)、被乾燥物の乾燥がほぼ終了していると判断し運転継続時間tcに第1の運転継続時間tc1を設定し(ステップS16)、乾燥対象範囲204が存在すると判断された場合は(ステップS15のYes)、被乾燥物に未乾燥な部分があると判断し運転継続時間tcに第1の運転継続時間tc1よりも長い第2の運転継続時間tc2を設定する(ステップS17)。その後、風向変更手段1を駆動させ最後に設定された乾燥対象範囲204へ乾燥空気Bを送風する(ステップS18)。ステップS18の運転は、運転継続時間tcが経過するまで実施し(ステップ19)、運転継続時間tcが経過した後は、除湿機の全ての運転を停止して電源をOFFにする(ステップS14)。
以上ステップS11乃至S14の動作を、被乾燥物が乾燥したことを判断し、除湿機の運転を終了する乾燥終了判断工程12とする。
このように、室内空気湿度Hと湿度閾値Htrigの比較により被乾燥物の乾燥を判断する場合は、乾燥対象範囲送風工程11において最後に検出された乾燥対象範囲204に運転継続時間tcが経過するまで乾燥空気Bを送風するようにすると良い。これにより、被乾燥物が未乾燥の状態で除湿機の運転が停止することを、防止することが出来る。また、乾燥対象範囲204の有無によって運転継続時間tcの長さを調節することにより、被乾燥物の過乾燥を抑制しつつ、被乾燥物を乾燥させることが出来る。ここで、第2の運転継続時間tc2については、少なくとも運転開始からステップS11の室内空気湿度Hによる判定までに要した時間と同等もしくは少し長くなるように設定するのが望ましい。これにより、被乾燥物の過乾燥を引き起こすことなく、仮に乾燥対象範囲204の誤検知が発生した場合でも、従来の制御方法と同等の運転時間で停止し、無駄な運転を回避することができる。
また、運転継続時間tcの長さは、ステップS8で検出される室内空気温度TやステップS11で検出される室内空気湿度Hの過渡特性を反映して、例えば室内空気温度Tが高温の場合は短めに、室内空気湿度Hが急激に低下していた場合には長めに設定するのが望ましい。
また、乾燥対象範囲204が存在すると判断された場合は(ステップS15のYes)、第2の運転継続時間tc2が経過するまで繰り返し実施しているが、この期間に乾燥対象範囲204が無くなった場合には、運転継続時間tcを第2の運転継続時間tc2よりも短い時間に再設定するよう制御されている。この、再設定される時間は、第1の運転継続時間tc1と同等、もしくは乾燥対象範囲204が無くなるまでに要した時間を考慮して第1の運転継続時間tc1よりも短く設定される。これにより、被乾燥物を過乾燥することなく、乾燥させることが出来る。
また、ステップS18において、最後に検出された乾燥対象範囲204へ乾燥空気Bを送風しているが、例えば乾燥対象範囲204でなく被乾燥物が存在すると想定される被乾燥物範囲203へ乾燥空気Bを送風するようにしても良い。これにより、被乾燥物全体に乾燥空気Bを送風するので、被乾燥物の乾燥仕上がり状態を均一にすることができる。
また、実施の形態1〜3では、すべて室内空気湿度Hと湿度閾値Htrigを比較した結果から乾燥状態判断工程12に移行するように制御されているが、例えば乾燥対象範囲204が存在しなくなった時点で乾燥状態判断工程12に移行するように制御しても良い。または、室内空気湿度Hが湿度閾値Htrig以下になるという条件、乾燥対象範囲204が存在しなくなるという条件の、どちらかの条件を満たしたときに、乾燥状態判断工程12に移行するように制御しても良い。
1 風向変更手段、1a 縦方向ルーバー、1b 横方向ルーバー、1c 縦方向回転モータ、1d 横方向回転モータ、2 送風ファン、2a ファン回転モータ、3 室内空気温度センサ、4 室内湿度温度センサ、5 除湿手段、6 赤外線センサ、6a 赤外線吸収膜、6b サーミスタ、7 制御回路、10 被乾燥物範囲検出工程、11 乾燥対象範囲送風工程、12 乾燥状態判断工程、
100 除湿機筐体、101 吸込口、102 貯水タンク、103 排気口、
200 全走査範囲、201 分割エリア、202 サンプリング範囲、202a サンプリング中心点、203 被乾燥物範囲、203a 横ルーバー方向最小座標、203b 横ルーバー方向最大座標、203c 縦ルーバー方向最小座標、203d 横ルーバー方向最大座標、204 乾燥対象範囲、
205 データ処理マップ、206 低温エリア、207 準乾燥範囲、208 低温物体エリア、209 乾燥対象中心範囲、
300 室温、301 熱電対により測定した被乾燥物の表面温度、302 乾燥空気の温度、303 赤外線センサによって検出された被乾燥物の表面温度、304 補正表面温度、305a 温水洗濯・脱水後の被乾燥物(熱容量大)の表面温度、305b 温水洗濯・脱水後の被乾燥物(熱容量小)の表面温度、306 周囲空気温湿度一定環境下の被乾燥物の表面温度、307 被乾燥物の周囲空気温度、308a 被乾燥物(乾燥速度速い)の表面温度、308b 被乾燥物(乾燥速度遅い)の表面温度、309a 被乾燥物(乾燥速度速い)の裏面温度、309b 被乾燥物(乾燥速度遅い)の裏面温度、
400 被乾燥物、
500 被乾燥物の含水率、501 限界含水率、502 平衡含水率、503 予熱期間、504 恒率期間、505 減率期間、506 乾燥終了期間、
A 室内空気、B 乾燥空気、C 凝縮水

Claims (8)

  1. 通過する空気中の水分を除去する除湿手段と、
    室内空気を吸気し、前記除湿手段を通過させて得られた乾燥空気を室内に供給する送風手段と、
    前記室内空気の温度を検出する室内温度検出手段と、
    前記室内空気の湿度を検出する室内湿度検出手段と、
    前記乾燥空気の送風方向を変更する風向変更手段と、
    被乾燥物を含む所定領域の表面温度を非接触にて検出する表面温度検出手段と、
    前記表面温度検出手段によって検出された表面温度と所定の温度閾値との比較、及び該表面温度の時間的変化から、前記所定領域内にある乾燥対象範囲を抽出し、該乾燥対象範囲へ前記乾燥空気を送風するよう前記風向変更手段を制御する制御手段と、
    を備えたことを特徴とする除湿機。
  2. 前記制御手段は、前記風向変更手段によって送風可能な領域を複数のエリアに分け、それぞれのエリア毎に前記表面温度検出手段によって表面温度を検出し、該表面温度の値が前記所定の温度閾値より高く且つ前記表面温度の時間的変化が小さいエリアを、前記乾燥対象範囲から除外することを特徴とする請求項1に記載の除湿機。
  3. 前記制御手段は、前記表面温度の値が前記所定の温度閾値より低くても、所定時間のあいだ該表面温度の時間的変化が小さいエリアを、前記乾燥対象範囲から除外することを特徴とする請求項1もしくは請求項2に記載の除湿機。
  4. 前記表面温度の時間的変化として、前記表面温度検出手段により検出される表面温度と前記所定の温度閾値との温度差の時間的変化を用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の除湿機。
  5. 前記時間的変化は、所定回数の検出結果から算出することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の除湿機。
  6. 前記所定回数は、除湿機の運転開始から前記所定の温度閾値に到達するまでの時間に応じて設定されることを特徴とする請求項5に記載の除湿機。
  7. 前記所定回数は、前記風向変更手段によって前記乾燥空気を送風可能な範囲と前記乾燥対象範囲との面積比率に応じて設定されることを特徴とする請求項5もしくは請求項6に記載の除湿機。
  8. 前記制御手段は、所定時間毎に前記乾燥対象範囲を再設定することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の除湿機。
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