JP2011189871A - 軋み音を低減した自動車内装部品 - Google Patents

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Abstract

【課題】部材が擦れ合うときに発生する軋み音が著しく低減され、かつ高温下に長時間置かれても軋み音低減効果が低下せずに維持され、耐衝撃性および成形外観に優れた自動車内装部品を提供する。
【解決手段】エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体の存在下にビニル系単量体を重合して得られるゴム強化ビニル系樹脂を含有してなる熱可塑性樹脂組成物であって、該エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体の含有量が該熱可塑性樹脂組成物全体を100質量%として5〜30質量%である熱可塑性樹脂組成物の成形品と、下記のY1〜Y4の群から選ばれた熱可塑性樹脂の成形品とからなる。Y1:HDTが85℃以上のポリカーボネート/ゴム強化スチレン系樹脂アロイ、Y2:HDTが85℃以上のスチレン系樹脂(但し、上記Y1を除く)、Y3:HDTが85℃以上のポリオレフィン系樹脂、及びY4:HDTが85℃以上のメタクリル系樹脂。
【選択図】図1

Description

本発明は自動車内装部品に関し、さらに詳しくは、他の部材と接触し、擦れ合うことにより発生する軋み音を大幅に低減させた熱可塑性樹脂組成物製自動車内装部品に関する。
ABS樹脂は、その優れた機械的性質、耐熱性、成形性により自動車内装部品の製造に広範囲に使用されている。
しかし、自動車走行時の振動に伴い、ABS樹脂製自動車内装部品が、該部品同士や該部品とポリ塩化ビニル、クロロプレンゴム、ポリウレタン、天然ゴム、ポリエステルまたはポリエチレン製の内張りシート、フォームなどの他の部材とが接触して擦れ合うような場合において、軋み音(擦れ音)を発生することがある。また、たとえばABS樹脂製のベンチレータには、風量を調整するためにクロロプレンゴム製フォームなどをシール材として使用したバルブシャッターが内部に装着されており、風量調整のためにバルブシャッターを回転させるとシール材とベンチレータのケースとが互いに擦れ合う。このようにABS樹脂製自動車内装部品が他の部材と擦れ合う使用状況下でも軋み音が発生する場合がある。
また、ABS樹脂、ASA樹脂は非晶性樹脂であるため、結晶性樹脂であるポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタールなどの樹脂と比較すると摩擦係数が高く、自動車内のエアコン吹き出し口やカーステレオのボタン等のように、他樹脂からなる部材と嵌合する場合に、摩擦係数が大きいために図1に示されるようなスティックスリップ現象が発生し、異音(軋み音)が発生することもよく知られている。スティックスリップ現象とは、2つの物体が擦れ合う時に発生するもので、図2(a)のモデルで示されるように駆動速度Vで動く駆動台の上にバネでつながれた物体Mが置かれた場合、物体Mは先ず静摩擦力の作用により駆動速度Vで移動する台とともに図2(b)のように右方向に移動する。そしてバネによって元に戻されようとする力が、この静摩擦力と等しくなったとき、物体Mは駆動速度Vと逆の方向に滑り出す。このときに、物体Mは動摩擦力を受けることになるので、バネの力とこの動摩擦力が等しくなった図2(c)の時点で滑りが止まり、すなわち駆動台に付着することになり、再び駆動速度Vと同じ方向に移動することになる(図2(d))。これをスティックスリップ現象といい、図1に示されるように静摩擦係数μsと、ノコギリ波形下端のμlの差のΔμが大きいと、軋み音が発生しやすくなるといわれている。尚、動摩擦係数はμsとμlの中間の値になる。
これらの軋み音は乗車時の快適性、静粛性を損ねる大きな原因となっており、軋み音の低減が強く要求されている。
一方、アモントン・クーロンの法則により求めた摩擦係数の摩擦速度依存性が負の値をとると、スティックスリップ現象が顕著に現れることが知られている(非特許文献1参照)。そこで、上記摩擦係数の摩擦速度依存性をゼロに近づけるか、若しくはゼロ以上の正の値とすることで、スティックスリップ現象の発生を抑制し、軋み音の発生を低減させることが可能である。
そこで、これらの軋み音を防止するため、部材表面にテフロン(登録商標)コーティングを施す方法、テフロン(登録商標)テープを装着する方法、シリコーンオイルを塗布する方法などが行なわれてきたが、装着、塗布といった工程は非常に煩雑で手間がかかるばかりでなく、高温下に長時間置かれた場合は効果が持続しないという問題があった。
また、自動車内装部品に用いられる材料自体を改質する方法として、ABS樹脂にシリコーンオイルを配合する方法、ABS樹脂にエポキシ含有オレフィン共重合体を配合する方法などが提案されている。たとえば、ポリカーボネート樹脂およびABS樹脂かならなる樹脂に有機ケイ素化合物を配合する技術(特許文献1参照)が、またABS樹脂に難燃剤、難燃助剤およびシリコーンオイルを配合する技術(特許文献2参照)が、またABS樹脂、MBS樹脂およびHIPS(ハイインパクトポリスチレン)樹脂にシリコーンオイルを配合する技術(特許文献3参照)が、またABS樹脂にアルカンスルホネート系界面活性剤を配合する技術(特許文献4参照)が、さらにはABS樹脂にエポキシ基、カルボキシル基および酸無水物基から選ばれる少なくとも1種の反応基を含有する変性ポリオルガノシロキサンを配合し、撥水性を高め浴室内やトイレ内の水回り部品に使用する技術(特許文献5参照)が開示されている。
しかしながら、これらの方法による軋み音の低減効果は十分とはいえず、成形直後にはある程度の軋み音防止効果を示しても効果の持続性が乏しく、特に、高温下に長時間置かれた場合にはその効果が大幅に低下するという問題があった。
特公昭63−56267号公報 特許第2798396号公報 特許第2688619号公報 特許第2659467号公報 特開平10−316833号公報
表面科学Vol.24, No.6, PP 328-333, 2003
本発明は、かかる実情に鑑み、部材が擦れ合うときに発生する軋み音の発生が著しく低減され、かつ高温下に長時間置かれた場合においても軋み音低減効果が低下せずに維持され、さらには耐衝撃性および成形外観に優れた熱可塑性樹脂組成物〔X〕の成形品と、特定の熱可塑性樹脂〔Y〕の成形品とが組み付けられてなる自動車内装部品の提供を目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、特定のゴム強化ビニル系樹脂を含有してなる熱可塑性樹脂組成物〔X〕の成形品と、特定の熱可塑性樹脂〔Y〕の成形品とを組み付けてなる自動車内装部品が、軋み音の発生が著しく低減され、かつ高温下に長時間置かれた場合においても軋み音低減効果が低下せずに維持され、さらには耐衝撃性および成形外観に優れていることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明によれば、次の自動車内装部品が提供される。すなわち、
1.エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕の存在下にビニル系単量体〔b1〕を重合して得られるゴム強化ビニル系樹脂〔A〕を含有してなる熱可塑性樹脂組成物〔X〕であって、該エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕の含有量が該熱可塑性樹脂組成物〔X〕全体を100質量%として5〜30質量%である熱可塑性樹脂組成物〔X〕の成形品と、
下記のY1〜Y4の群から選ばれた熱可塑性樹脂〔Y〕の成形品とからなり、
前記熱可塑性樹脂組成物〔X〕の成形品と前記熱可塑性樹脂〔Y〕の成形品とが組み付けられてなることを特徴とする自動車内装部品:
Y1:HDTが85℃以上のポリカーボネート/ゴム強化スチレン系樹脂アロイ、
Y2:HDTが85℃以上のスチレン系樹脂(但し、上記Y1を除く)、
Y3:HDTが85℃以上のポリオレフィン系樹脂、及び
Y4:HDTが85℃以上のメタクリル系樹脂。
2.熱可塑性樹脂組成物〔X〕のHDTが85℃以上である上記1に記載の自動車内装部品。
3.エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕のエチレン:α−オレフィンの質量比が5〜95:95〜5である上記1又は2に記載の自動車内装部品。
4.エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕が、エチレン・プロピレン共重合体である上記1乃至3の何れかに記載の自動車内装部品。
5.ゴム強化ビニル系樹脂〔A〕が、エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕及びジエン系ゴム質重合体〔a2〕を含有してなり、
前記エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕及び前記ジエン系ゴム質重合体〔a2〕の合計量が、熱可塑性樹脂組成物〔X〕全体を100質量%として5〜30質量%であり、
該エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕と該ジエン系ゴム質重合体〔a2〕との質量比〔a1〕:〔a2〕が90〜15:10〜85である上記1乃至4の何れかに記載の自動車内装部品。
6.熱可塑性樹脂組成物〔X〕が、エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕の存在下にビニル系単量体〔b1〕を重合して得られたゴム強化ビニル系樹脂〔A1〕と、ジエン系ゴム質重合体〔a2〕の存在下にビニル系単量体〔b2〕を重合して得られたゴム強化ビニル系樹脂〔A2〕と、ビニル系単量体〔b3〕の(共)重合体〔B〕とからなる混合物を含有してなる上記1乃至5の何れかに記載の自動車内装部品。
7.熱可塑性樹脂組成物〔X〕100質量部に対し、25℃における動粘度が10〜100,000cStであるシリコーンオイル〔C〕0.1〜8質量部を配合してなる上記1乃至6の何れかに記載の自動車内装部品。
8.シリコーンオイル〔C〕が、メチルフェニルシリコーンオイルである上記7に記載の自動車内装用部品。
9.熱可塑性樹脂組成物〔X〕の成形品と熱可塑性樹脂〔Y〕の成形品とが組み付けられてなる自動車内装部品が自動車用ベンチレータである上記1乃至8の何れかに記載の自動車内装部品。
10.熱可塑性樹脂組成物〔X〕の成形品と熱可塑性樹脂〔Y〕の成形品とが組み付けられてなる自動車内装部品が自動車用エアコンである上記1乃至8の何れかに記載の自動車内装部品。
本発明によれば、特定のゴム強化ビニル系樹脂を含有してなる熱可塑性樹脂組成物〔X〕の成形品と、特定の熱可塑性樹脂〔Y〕の成形品とを組み付けることにより、部材が擦れ合うときに発生する軋み音が著しく低減され、かつ高温下に長時間置かれた場合においても軋み音低減効果が低下せず、さらには耐衝撃性および成形外観に優れた自動車内装部品を得ることが可能となる。
図1はスティックスリップ現象の説明図である。 図2(a)、(b)、(c)、(d)はスティックスリップのモデル図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明における自動車内装部品は、エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕の存在下にビニル系単量体〔b1〕を重合して得られるゴム強化ビニル系樹脂〔A〕を含有してなる熱可塑性樹脂組成物〔X〕であって、該エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕の含有量が該熱可塑性樹脂組成物〔X〕全体を100質量%として5〜30質量%である熱可塑性樹脂組成物〔X〕の成形品と、
下記のY1〜Y4の群から選ばれた熱可塑性樹脂〔Y〕の成形品とからなり、
前記熱可塑性樹脂組成物〔X〕の成形品と前記熱可塑性樹脂〔Y〕の成形品とが組み付けられてなることを特徴とする:
Y1:HDTが85℃以上のポリカーボネート/ゴム強化スチレン系樹脂アロイ、
Y2:HDTが85℃以上のスチレン系樹脂(但し、上記Y1を除く)、
Y3:HDTが85℃以上のポリオレフィン系樹脂、及び
Y4:HDTが85℃以上のメタクリル系樹脂。
尚、本明細書において、HDT(熱変形温度)はISO75に準じ、荷重1.80MPaの条件で測定した値(単位は℃)である。
また、「(共)重合」とは、単独重合および共重合を意味し、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及び/又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。
1.ゴム強化ビニル系樹脂〔A〕(以下、「成分〔A〕」ともいう。):
本発明で使用する成分〔A〕は、エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕の存在下にビニル系単量体〔b1〕を重合して得られるゴム強化ビニル系樹脂〔A1〕単独、及び、必要に応じて、ジエン系ゴム質重合体〔a2〕の存在下にビニル系単量体〔b2〕を重合して得られるゴム強化ビニル系樹脂〔A2〕との混合物、及び、更に必要に応じて、ビニル系単量体〔b3〕の(共)重合体〔B〕との混合物からなるゴム強化ビニル系樹脂である。(共)重合体〔B〕は、ゴム質重合体の非存在下にビニル系単量体〔b3〕を重合して得られる。
上記ゴム強化ビニル系樹脂〔A〕に含有されるゴム質重合体は、エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕及び必要に応じて、併用されるジエン系ゴム質重合体〔a2〕である。
1−1.エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕(以下「成分〔a1〕ともいう。):
エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕としては、例えば、エチレン・α−オレフィン共重合体、エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体が挙げられる。該成分〔a1〕を構成するα−オレフィンとしては、例えば、炭素数3〜20のα−オレフィンが挙げられ、具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−ヘキサデセン、1−エイコセンなどが挙げられる。これらのα−オレフィンは、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。α−オレフィンの炭素数は、好ましくは3〜20、より好ましくは3〜12、さらに好ましくは3〜8である。炭素数が20を超えると、共重合性が低下し、成形品の表面外観が十分でなくなる場合がある。エチレン:α−オレフィンの質量比は、通常5〜95:95〜5、好ましくは50〜90:50〜10、より好ましくは60〜88:40〜12である。α−オレフィンの質量比が95を超えると、耐候性が十分でなく、一方、5未満になるとゴム質重合体のゴム弾性が十分でなくなるため、十分な耐衝撃性が発現しない可能性がある。
これらのうち、軋み音低減の観点から、エチレン・α−オレフィン共重合体が好ましく、エチレン・プロピレン共重合体が特に好ましい。
非共役ジエンとしては、アルケニルノルボルネン類、環状ジエン類、脂肪族ジエン類が挙げられ、好ましくは5−エチリデン−2−ノルボルネンおよびジシクロペンタジエンである。これらの非共役ジエンは、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。非共役ジエンの、ゴム質重合体全量に対する割合は、通常0〜30質量%、好ましくは0〜20質量%、より好ましくは0〜10質量%である。非共役ジエンの割合が30質量%を超えると、成形外観および耐候性が十分でなくなる場合がある。尚、成分〔a1〕における不飽和基量は、ヨウ素価に換算して4〜40の範囲が好ましい。ヨウ素価が40を超えると成形品の成形外観及び耐候性が十分でなくなる場合があり、ヨウ素価が4未満になると成形品の耐衝撃性が十分でなくなる場合がある。
また、成分〔a1〕のムーニー粘度(ML1+4 、100℃;JIS K6300に準拠)は、通常5〜80、好ましくは10〜65、より好ましくは15〜45である。ムーニー粘度が80を超えると、得られるゴム強化ビニル系樹脂の流動性が不十分に、ムーニー粘度が5未満になると、得られる成形品の耐衝撃性が不十分となる場合がある。
また、このエチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕には、ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン化合物を用いて得られたブロック(共)重合体を水素添加した重合体(共役ジエン部分の二重結合の水素添加率は耐候性の点から90%以上が好ましい。)も含まれる。上記重合体は、架橋重合体であってよいし、未架橋重合体であってもよい。
1−2.ジエン系ゴム質重合体〔a2〕(以下「成分〔a2〕ともいう。):
ジエン系ゴム質重合体〔a2〕としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン等の単独重合体;スチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、アクリロニトリル・スチレン・ブタジエン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体等のブタジエン系共重合体;スチレン・イソプレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレン共重合体、アクリロニトリル・スチレン・イソプレン共重合体等のイソプレン系共重合体等が挙げられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。該ジエン系ゴム質重合体〔a2〕は、架橋重合体であってよいし、未架橋重合体であってもよい。
1−3.ビニル系単量体〔b1〕〜〔b3〕:
上記ビニル系単量体〔b1〕、〔b2〕及び〔b3〕は、いずれも、不飽和結合を有する重合性化合物であれば、特に限定されない。
上記ビニル系単量体〔b1〕、〔b2〕及び〔b3〕は、通常、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含む。その他、必要に応じて、(メタ)アクリル酸エステル、マレイミド化合物等の、他の共重合可能なビニル系単量体、カルボキシル基、酸無水物基、ヒドロキシル基、アミノ基、アミド基、エポキシ基、オキサゾリン基等の官能基を1種以上有する官能基含有ビニル系単量体を併用してもよい。上記ゴム強化ビニル系樹脂〔A1〕及び〔A2〕の形成に用いるビニル系単量体〔b1〕及び〔b2〕は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
また、(共)重合体〔B〕の形成に用いるビニル系単量体〔b3〕は、上記ビニル系単量体〔b1〕及び/又は〔b2〕と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
上記芳香族ビニル化合物としては、少なくとも1つのビニル結合と、少なくとも1つの芳香族環とを有する化合物であれば、特に限定されることなく用いることができる。その例としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、β−メチルスチレン、エチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、モノブロモスチレン、ジブロモスチレン、フルオロスチレン等が挙げられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのうち、スチレン及びα−メチルスチレンが好ましい。
上記シアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのうち、アクリロニトリルが好ましい。
上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル等のメタクリル酸エステルが挙げられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのうち、メタクリル酸メチルが好ましい。
上記マレイミド化合物としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド等が挙げられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのうち、N−シクロヘキシルマレイミド及びN−フェニルマレイミドが好ましい。
尚、このマレイミド化合物からなる単量体単位を重合体に導入する方法としては、予め、無水マレイン酸を共重合させ、その後、イミド化する方法がある。
上記の官能基含有ビニル系単量体のうち、カルボキシル基を有する不飽和化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸等が挙げられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
酸無水物基を有する不飽和化合物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
ヒドロキシル基を有する不飽和化合物としては、ヒドロキシスチレン、3−ヒドロキシ−1−プロペン、4−ヒドロキシ−1−ブテン、シス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、トランス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、3−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロペン、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレイミド等が挙げられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
アミノ基を有する不飽和化合物としては、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、アクリル酸ジメチルアミノメチル、アクリル酸ジエチルアミノメチル、アクリル酸2−ジメチルアミノエチル、メタクリル酸アミノエチル、メタクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノメチル、メタクリル酸ジエチルアミノメチル、メタクリル酸2−ジメチルアミノエチル、メタクリル酸フェニルアミノエチル、p−アミノスチレン、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン、アクリルアミン、メタクリルアミン、N−メチルアクリルアミン等が挙げられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
アミド基を有する不飽和化合物としては、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド等が挙げられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
エポキシ基を有する不飽和化合物としては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
オキサゾリン基を有する不飽和化合物としては、ビニルオキサゾリン等が挙げられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記ビニル系単量体〔b1〕、〔b2〕及び〔b3〕は、目的、用途等に応じてその種類及び使用量が選択されるが、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物の合計量は、ビニル系単量体全量100質量%に対して、通常30〜100質量%、好ましくは50〜100質量%、より好ましくは70〜100質量%である。上記他の共重合可能なビニル系単量体の含有量は、ビニル系単量体全体100質量%に対して通常0〜70質量%、好ましくは0〜50質量%、より好ましくは0〜30質量%である。上記官能基含有ビニル系単量体の含有量は、ビニル系単量体全量100質量%に対して、通常0〜40質量%、好ましくは、0〜30質量%、より好ましくは0〜20質量%である。また、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物の使用比率(芳香族ビニル化合物/シアン化ビニル化合物)は、これらの合計を100質量%とした場合、通常40〜85質量%/15〜60質量%、好ましくは45〜85質量%/15〜55質量%である。
1−4.上記ゴム強化ビニル系樹脂〔A〕の製造方法:
上記ゴム強化ビニル系樹脂〔A〕は、エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕及び必要に応じて、更にジエン系ゴム質重合体〔a2〕を含有する重合体成分であるが、その含有形態は、特に限定されない。
上記ゴム強化ビニル系樹脂〔A〕には、通常、ビニル系単量体の(共)重合体がゴム質重合体にグラフトしているグラフト共重合体と、ゴム質重合体にグラフトしていないビニル系単量体の(共)重合体が含まれる。ただし、このグラフト共重合体に、ビニル系単量体の(共)重合体がグラフトしていない、ゴム質重合体が含まれていてもよい。
また、上記のエチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕及びジエン系ゴム質重合体〔a2〕が使用される場合の含有態様は、以下に例示される。
(1)エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕及びジエン系ゴム質重合体〔a2〕の両方が、グラフト共重合体として含有される場合。
(2)エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕及びジエン系ゴム質重合体〔a2〕のいずれか一方が、グラフト共質重合体として含有される場合。
(3)エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕及びジエン系ゴム質重合体〔a2〕の両方が、未グラフトのゴム質重合体として含有される場合。
これらのうち、(1)が特に好ましい。
上記態様(1)のゴム強化ビニル系樹脂〔A〕としては、以下に例示される。
[i]上記エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕の存在下に、ビニル系単量体〔b1〕を重合して得られたゴム強化ビニル系樹脂〔A1〕、又は、該ゴム強化ビニル系樹脂〔A1〕と、上記ジエン系ゴム質重合体〔a2〕の存在下にビニル系単量体〔b2〕を重合して得られたゴム強化ビニル系樹脂〔A2〕とからなる混合物。
[ii]上記混合物[i]と、ビニル系単量体〔b3〕の(共)重合体(以下、「(共)重合体〔B〕」ともいう。)とからなる混合物。
[iii]上記エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕及び上記ジエン系ゴム質重合体〔a2〕の存在下に、ビニル系単量体〔b1〕又は〔b2〕を重合して得られたゴム強化ビニル系樹脂〔A3〕。
[iv]上記ゴム強化ビニル系樹脂〔A3〕と、上記(共)重合体〔B〕とからなる混合物。
これらのうち、[i]及び[ii]が生産性の点から好ましく、[ii]が特に好ましい。
尚、上記ゴム強化ビニル系樹脂〔A〕としては、上記[i]、[ii]、[iii]及び[iv]の2種以上の組み合わせであってもよい。
次に、上記のゴム強化ビニル系樹脂〔A1〕、〔A2〕及び〔A3〕の製造方法について、説明する。
重合方法としては、乳化重合、溶液重合、懸濁重合、塊状重合等の公知の重合方法が挙げられる。いずれにおいても、ゴム質重合体の存在下に、ビニル系単量体を一括投入して反応させてよいし、分割又は連続添加して反応させてもよい。また、ゴム質重合体は、全量又は一部を、ビニル系単量体との重合の途中で添加して反応させてもよい。
尚、ゴム質重合体の使用量は、ゴム質重合体とビニル系単量体の合計を100質量%とした場合、通常5〜80質量%、好ましくは10〜70質量%である。
上記のゴム強化ビニル系樹脂〔A1〕の製造方法は、溶液重合及び塊状重合が好ましく、更に好ましくは溶液重合であり、ゴム強化ビニル系樹脂〔A2〕の製造方法は、乳化重合、懸濁重合が好ましく、ゴム強化ビニル系樹脂〔A3〕の製造方法は、乳化重合、溶液重合、懸濁重合及び塊状重合が好ましく、これらの方法を組み合わせたものであってもよい。
上記のゴム強化ビニル系樹脂〔A1〕、〔A2〕及び〔A3〕を乳化重合で製造する場合には、通常、重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤、水等が用いられる。尚、上記ゴム質重合体がラテックス状でなく、固形状である場合には、再乳化によりラテックス状として使用することができる。
重合開始剤としては、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物と、含糖ピロリン酸処方、スルホキシレート処方等で代表される還元剤との組み合わせによるレドックス系重合開始剤;過硫酸カリウム等の過硫酸塩;ベンゾイルパーオキサイド(BPO)、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシラウレイト、t−ブチルパーオキシモノカーボネート等の過酸化物;2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)等のアゾ系重合開始剤等が挙げられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。上記重合開始剤の使用量は、上記ビニル系単量体〔b1〕又は〔b2〕の全量に対し、通常、0.05〜5質量%、好ましくは0.1〜1質量%である。
上記重合開始剤は、通常、反応系に一括添加又は連続添加される。
連鎖移動剤としては、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、t−テトラデシルメルカプタン等のメルカプタン類;ターピノーレン類、α−メチルスチレンのダイマー、テトラエチルチウラムスルフィド、アクロレイン、メタクロレイン、アリルアルコール、2−エチルヘキシルチオグリコール等が挙げられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。上記連鎖移動剤の使用量は、上記ビニル系単量体〔b1〕又は〔b2〕の全量に対し、通常、0.05〜2質量%である。
乳化剤としては、アニオン系界面活性剤及びノニオン系界面活性剤が挙げられる。アニオン系界面活性剤としては、高級アルコールの硫酸エステル;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム等の脂肪族スルホン酸塩;ロジン酸塩、リン酸塩等が挙げられる。また、ノニオン系界面活性剤としては、ポリエチレングリコールのアルキルエステル型化合物、アルキルエーテル型化合物等が挙げられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。上記乳化剤の使用量は、上記ビニル系単量体〔b1〕又は〔b2〕の全量に対し、通常、0.3〜5質量%である。
乳化重合は、用いるビニル系単量体〔b1〕又は〔b2〕、重合開始剤等の種類、量に応じ、公知の条件で行うことができる。上記乳化重合により得られたラテックスは、通常、凝固剤により凝固させ、重合体成分を粉末状とし、その後、これを水洗、乾燥することによって精製される。この凝固剤としては、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム等の無機塩;硫酸、塩酸等の無機酸;酢酸、乳酸、クエン酸等の有機酸等が用いられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、要求される性能に応じて、凝固後にアルカリ成分又は酸成分を添加し中和処理した後、洗浄してもよい。
上記のゴム強化ビニル系樹脂〔A1〕、〔A2〕及び〔A3〕を溶液重合により製造する場合には、通常、溶媒、重合開始剤、連鎖移動剤等が用いられる。
溶媒としては、公知のラジカル重合で使用される不活性重合溶媒、例えば、エチルベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素;メチルエチルケトン、アセトン等のケトン類;ジクロルメチレン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素;アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等を用いることができる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
重合開始剤としては、ケトンパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、ハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物が挙げられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
連鎖移動剤としては、メルカプタン類、ターピノーレン類、α−メチルスチレンのダイマー等が挙げられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
溶液重合は、用いるビニル系単量体〔b1〕又は〔b2〕、重合開始剤等の種類に応じ、公知の条件で行うことができる。重合温度は、通常80〜140℃の範囲である。尚、溶液重合に際し、重合開始剤を使用せずに製造することもできる。
塊状重合及び懸濁重合による場合も、公知の方法を適用することができる。これらの方法において用いる重合開始剤、連鎖移動剤等は特に制限はないが、溶液重合において例示した化合物と同じものを用いることができる。
1−5.ゴム強化ビニル系樹脂〔A〕の物性:
上記のようにして得られた、ゴム強化ビニル系樹脂〔A1〕、〔A2〕及び〔A3〕のグラフト率は、いずれも、通常10〜150質量%、好ましくは20〜120質量%である。このグラフト率が10質量%未満では、グラフト共重合体とビニル系単量体〔b1〕又は〔b2〕の(共)重合体との界面強度が劣るため、耐衝撃性が十分でない場合がある。一方、150質量%を超えると、ゴム質重合体表面におけるビニル系単量体〔b1〕又は〔b2〕の(共)重合体からなる層が厚くなり、また、ゴム質重合体の内部にグラフトした上記(共)重合体からなる層が発達するため、ゴム弾性が低下し、その結果、耐衝撃性が低下する場合がある。
上記グラフト率は、下記式により求めることができる。
グラフト率(質量%)={(S−T)/T}×100
上記式中、Sはゴム強化ビニル系樹脂1グラムをアセトン(ゴム質重合体がアクリル系ゴムの場合はアセトニトリル)20mlに投入し、25℃の温度条件下で、振とう機により2時間振とうした後、5℃の温度条件下で、遠心分離機(回転数;23,000rpm)で60分間遠心分離し、不溶分と可溶分とを分離して得られる不溶分の質量(g)であり、Tはゴム強化ビニル系樹脂1グラムに含まれるゴム質重合体の質量(g)である。このゴム質重合体の質量は、重合処方及び重合転化率から算出する方法、赤外線吸収スペクトル(IR)により求める方法等により得ることができる。
また、上記ゴム強化ビニル系樹脂〔A1〕、〔A2〕及び〔A3〕のアセトン可溶分の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃で測定)は、いずれも、通常0.1〜1.5dl/g、好ましくは0.2〜1.0dl/gである。極限粘度[η]が上記範囲内にあれば、成形加工性及び耐衝撃性の物性バランスに優れる。
なお、上記極限粘度[η]の測定は下記方法で行った。まず、上記ゴム強化ビニル系樹脂〔A1〕、〔A2〕及び〔A3〕のアセトン可溶分をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度の異なるものを5点作った。ウベローデ粘度管を用い、30℃で各濃度の還元粘度を測定した結果から、極限粘度[η]を求めた。単位は、dl/gである。
上記極限粘度は、製造時に用いる連鎖移動剤の種類及び使用量、重合開始剤の種類及び使用量、重合温度等を適宜選択することにより調整することができる。
上記のように、本発明に係るゴム強化ビニル系樹脂〔A〕は、別々に調製したゴム強化ビニル系樹脂〔A1〕、又は〔A1〕及び〔A2〕の混合物を用いてなるものであってよいし、エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕及びジエン系ゴム質重合体〔a2〕の存在下に、ビニル系単量体〔b1〕を重合して得られたゴム強化ビニル系樹脂〔A3〕を用いてなるものであってもよい。従って、前者のような、複数のゴム強化ビニル系樹脂を用いる場合には、各製造工程で得られた各樹脂の混合物を用いてもよいが、他の方法として、例えば、乳化重合により各樹脂を各々含むラテックスを製造してから、ラテックス同士を混合し、その後、凝固する等により得ることができる。
1−6.(共)重合体〔B〕の製造方法:
また、上記(共)重合体〔B〕は、重合開始剤等の存在下、ビニル系単量体〔b3〕を、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合等の方法で重合することにより、あるいは、重合開始剤を用いない熱重合により、いずれも公知の条件で製造することができる。
1−7.(共)重合体〔B〕の物性:
上記重合体〔B〕の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃で測定)は、通常0.1〜1.5dl/g、好ましくは0.2〜1.0dl/gである。極限粘度[η]が上記範囲内にあれば、成形加工性と耐衝撃性の物性バランスに優れる。
なお、上記極限粘度[η]の測定は下記方法で行った。まず、上記(共)重合体〔B〕をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度の異なるものを5点作った。ウベローデ粘度管を用い、30℃で各濃度の還元粘度を測定した結果から、極限粘度[η]を求めた。単位は、dl/gである。
上記極限粘度は、製造時に用いる連鎖移動剤の種類及び使用量、重合開始剤の種類及び使用量、重合温度等を適宜選択することにより調整することができる。
2.シリコーンオイル〔C〕(以下、「成分〔C〕」ともいう。):
本発明で使用する成分〔C〕としてのシリコーンオイルは、25℃における動粘度の他は特に制限されず、ポリオルガノシロキサン構造を持つものであれば周知のものを用いることができる。シリコーンオイル〔C〕は、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル等の未変性シリコーンオイルであってもよいし、ポリオルガノシロキサン構造中の側鎖の一部及び/又はポリオルガノシロキサン構造の片末端部分、又は、ポリオルガノシロキサン構造の両末端部分に各種有機基が導入された変性シリコーンオイルであってもよい。上記変性シリコーンオイルとしては、アルキル変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、高級アルコキシ変性シリコーンオイル、高級脂肪酸変性シリコーンオイル、メチルスチリル変性シリコーンオイル、メチル塩素化フェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジエンシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、アクリル変性シリコーンオイル、メタクリル変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、フェノール変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル等を使用することができる。
本発明で使用するシリコーンオイル〔C〕が、メチルフェニルシリコーンオイルである場合、軋み音の発生が著しく低減され、かつ高温下に長時間置かれた場合においても軋み音低減効果が低下せずに維持され、さらには耐衝撃性および成形外観に優れた熱可塑性樹脂組成物からなる自動車内装部品が得られる。
また、本発明で使用するシリコーンオイル〔C〕が、アルキル・アラルキル変性シリコーンオイルまたはアミノ変性シリコーンオイルである場合、軋み音の発生が著しく低減され、かつ高温下に長時間置かれた場合においても軋み音低減効果が低下せずに維持され、さらには耐衝撃性および成形外観に優れた熱可塑性樹脂組成物からなる自動車内装部品が得られる。これらのシリコーンオイルは、単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明で用いられるメチルフェニルシリコーンオイルは、ポリシロキサンの側鎖の一部がフェニル基である、非反応性のストレートシリコーンオイルである。
本発明で用いられるアルキル・アラルキル変性シリコーンオイルは、シリコーンオイルの側鎖の一部にアルキル基およびアラルキル基が導入された、非反応性の変成シリコーンオイルである。
本発明に用いられるアミノ変性シリコーンオイルは、ポリシロキサンの側鎖の一部にアミノ基を導入したもので、アミノ変性はモノアミン変性、ジアミン変性のいずれであってもよい。
また、本発明で使用するシリコーンオイル〔C〕の25℃における動粘度は、通常10〜100,000cSt、好ましくは10〜50,000cSt、より好ましくは15〜50,000cSt、特に好ましくは20〜30,000cStである。該シリコーンオイル〔C〕の25℃における動粘度が10cSt未満では、軋み音の低減効果が不十分になる場合があり、一方、動粘度が100,000cStを超えると、ゴム強化ビニル系樹脂〔A〕における該シリコーンオイル〔C〕の分散性が悪くなり、耐衝撃性、軋み音低減効果が十分に発現せず、混練時の押出加工性も不十分となる場合がある。
シリコーンオイルの動粘度の測定は、ASTM D445−46T(JIS 8803でも可)によるウベローデ粘度計により測定した。
3.熱可塑性樹脂組成物〔X〕:
本発明における熱可塑性樹脂組成物〔X〕は、上記成分〔A〕、上記成分〔B〕、及び、所望により上記成分〔C〕を所定の配合比率で混合し、溶融混練することにより得られる。
上記ゴム強化ビニル系樹脂〔A〕100質量部に対する上記シリコーンオイル〔C〕の配合量は、通常0.1〜8質量部、好ましくは0.2〜6質量部、より好ましくは0.5〜5質量部、特に好ましくは2.5〜3.5質量部である。上記成分〔C〕の配合量が0.1質量部未満では、軋み音の低減効果が十分に得られない可能性がある。一方、上記成分〔C〕の配合量が8質量部を超えると、成形品の外観や耐衝撃性が不十分となったり、溶融混連が困難になる可能性がある。
上記成分〔A〕中の上記エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕、又は該〔a1〕及び上記ジエン系ゴム質重合体〔a2〕の合計量は、上記ゴム強化ビニル系樹脂〔A〕全体を100質量%として5〜30質量%であり、好ましくは5〜25質量%、より好ましくは8〜20質量%、特に好ましくは10〜18質量%である。この合計量が5質量%未満では耐衝撃性に劣り、一方、30質量%を超えると耐熱性が低下する。
また、上記成分〔A〕中の上記エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕と上記ジエン系ゴム質重合体〔a2〕の質量比〔a1〕:〔a2〕は通常90〜15:10〜85、好ましくは80〜20:20〜80、より好ましくは75〜25:25〜75、特に好ましくは75〜50:25〜50である。各ゴム質重合体の質量比をこの範囲とすることにより、軋み音低減効果、耐衝撃性及び耐熱性が十分となる。
上記の如く成分〔A〕と成分〔B〕、及び必要に応じ、更に成分〔C〕からなる本発明の熱可塑性樹脂組成物は、必要に応じて、充填剤、造核剤、滑剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、老化防止剤、可塑剤、抗菌剤、着色剤等の各種添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲で含有することができる。
さらに、本発明の熱可塑性樹脂組成物〔X〕は、必要に応じて、他の樹脂、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミド等を、本発明の目的を損なわない範囲で含有することができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物〔X〕は、各成分を所定の配合比で、タンブラーミキサーやヘンシェルミキサーなどで混合した後、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール、フィーダールーダー等の混合機を用いて、適当な条件下で溶融混練して製造することができる。好ましい混練機は、二軸押出機である。さらに、それぞれの成分を混練するに際しては、それぞれの成分を一括して混練しても、多段、分割配合して混練してもよい。尚、バンバリーミキサー、ニーダー等で混練した後、押出機によりペレット化することもできる。また、充填材のうち繊維状のものは、混練中での切断を防止するためにサイドフィーダーにより押出機の途中から供給する方が好ましい。溶融混練温度は、通常200〜300℃、好ましくは220〜280℃である。
4.熱可塑性樹脂〔Y〕:
本発明の自動車内装部品は、上記熱可塑性樹脂組成物〔X〕を成形して成形品とされ、後記する他の成形品材料である熱可塑性樹脂〔Y〕の成形品と組み付けられ自動車内装部品とされる。該熱可塑樹脂組成物〔X〕及び熱可塑性樹脂〔Y〕から本発明の自動車内装部品を製造する方法には何等制限はなく、射出成形、射出圧縮成形、ガスアシスト成形、プレス成形、カレンダー成形、Tダイ押出成形、異形押出成形、フィルム成形等公知の方法により製造することができる。
本発明の熱可塑性樹脂〔Y〕は、下記のY1〜Y4の群から選択される。
Y1:HDTが85℃以上のポリカーボネート/ゴム強化スチレン系樹脂アロイ、
Y2:HDTが85℃以上のスチレン系樹脂(但し、上記Y1を除く)、
Y3:HDTが85℃以上のポリオレフィン系樹脂、及び
Y4:HDTが85℃以上のメタクリル系樹脂。
これらは、単独で又は必要に応じ2種以上組み合わせて用いられる。
4−1.HDTが85℃以上のポリカーボネート/ゴム強化スチレン系樹脂アロイ〔Y1〕(以下、「成分〔Y1〕ともいう。):
本発明においてポリカーボネート/ゴム強化スチレン樹脂〔Y1〕は、HDTが85℃以上であれば特に制限はなく、以下に示すポリカーボネート(Y1a)とゴム強化スチレン樹脂(Y1b)を通常10/90〜90/10質量部、好ましくは30/70〜70/30質量部、さらに好ましくは40/60〜60/40質量部の比率で溶融混合させたものである。上記成分[Y1a]の配合量が10質量部未満では、耐熱性が不十分になる可能性があり、一方、上記成分[Y1a]の配合量が90質量部を超えると、成形性、耐衝撃性が不十分になる可能性がある。
上記ポリカーボネート樹脂[Y1a]としては特に限定されず、芳香族ポリカーボネートであっても、脂肪族ポリカーボネートであってもよい。また、芳香族ポリカーボネート及び脂肪族ポリカーボネートを組み合わせて用いてもよい。尚、このポリカーボネート樹脂は、末端が、R−CO−基、R’−O−CO−基(R及びR’は、いずれも有機基を示す。)に変性されたものであってもよい。
本発明においては、芳香族ポリカーボネートが好ましく、ジヒドロキシアリール化合物とホスゲンとの反応によって得られるもの(ホスゲン法)、ジヒドロキシアリール化合物とジフェニルカーボネートとのエステル交換反応によって得られるもの(エステル交換法)等が挙げられる。
ここで、芳香族ポリカーボネートの原料となるジヒドロキシアリール化合物としては、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、「ビスフェノールA」ともいう。)、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホン、ヒドロキノン、レゾルシン等が挙げられる。これらのうち、ビスフェノールAが好ましい。また、これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
代表的な芳香族ポリカーボネートは、ビスフェノールAとホスゲンとの反応によって得られるものである。
芳香族ポリカーボネート及び脂肪族ポリカーボネートは、それぞれ、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記ポリカーボネート樹脂[Y1a]の粘度平均分子量は、好ましくは8,000〜50,000、より好ましくは12,000〜30,000、更に好ましくは15,000〜26,000である。この粘度平均分子量は、公知の方法により測定することができる。上記粘度平均分子量が小さすぎると、成形品の耐衝撃性が劣る傾向にあり、一方、粘度平均分子量が大きすぎると、組成物の成形加工性が劣る傾向にある。尚、上記範囲の間で粘度平均分子量の異なるポリカーボネート樹脂の2種以上を用いることもできる。
また、上記ポリカーボネート樹脂の20℃における比重は、通常、1.18〜1.22g/cm3 である。
上記ゴム強化スチレン系樹脂[Y1b]は、ゴム質重合体の存在下に芳香族ビニル化合物を必須とするビニル系単量体を重合して得られるものであり、例えば後述するスチレン系樹脂[Y2]の中のゴム強化スチレン系樹脂を用いることができる。ゴム強化スチレン系樹脂の中で、ゴム質重合体にポリブタジエンを用いるABS樹脂を用いることが、耐衝撃性の観点から好ましい。
上記ポリカーボネート/ゴム強化スチレン系樹脂[Y1]中のゴム質重合体の含有量は、上記[Y1]成分を100質量%として、通常5〜30質量%、好ましくは5〜25質量%、さらに好ましくは8〜18質量%である。ゴム質重合体の配合量が5質量%未満では、得られる成形品の耐衝撃性が不十分となる可能性があり、一方、ゴム質重合体の配合量が30質量%を超えると、耐熱性が不十分になる可能性がある。
ポリカーボネート[Y1a]とゴム強化スチレン系樹脂[Y1b]の混合順序ならびにその状態には何ら制限はなく、パウダー、ペレットなどの形態による一括同時混合、特定の成分を予備混合した後に残る成分を混合する方法が例示される。これらの溶融混合に際してはバンバリーミキサー、ロール、押出機等を用いることができる。
なお、上記ポリカーボネート/ゴム強化スチレン系樹脂[Y1]は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の熱可塑性樹脂、さらには酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、滑剤、染料、顔料、可塑剤、難燃剤、離型剤、ガラス繊維、金属繊維、炭素繊維、金属フレーク等の公知の添加剤、補強材、充填材等を添加することができる。
4−2.HDTが85℃以上のスチレン系樹脂〔Y2〕(但し、上記〔Y1〕を除く)(以下、「成分〔Y2〕ともいう。):
本発明においてスチレン系樹脂[Y2]は、HDTが85℃以上であれば特に制限はなく、ゴム質重合体(a1’)の存在下、または非存在下に芳香族ビニル化合物、または芳香族ビニル化合物と、例えばシアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及びマレイミド化合物等の単量体から選ばれた少なくとも1種からなるビニル系単量体(a2’)を重合して得られる重合体又は共重合体であり、(a1’)存在下に(a2’)を重合した共重合体(ゴム強化スチレン系樹脂)、(a1’)非存在下に(a2’)を重合した(共)重合体並びにこれらの混合物が本発明の[Y2]成分に含まれる。尚、(a2’)成分中の芳香族ビニル化合物に由来する繰り返し単位の割合は、通常95〜40質量%、好ましくは90〜60質量%である。
ゴム質重合体(a1’)としては、ポリブタジエン、ブタジエン−スチレン共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンブロッ共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、及びこれらのジエン系重合体部分の水素添加物(ジエン部分の水素添加率30%以上のもの)、エチレン−プロピレン−(非共役ジエン)共重合体、エチレン−ブテン−(非共役ジエン)共重合体、ウレタンゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、シリコーンーアクリル系IPNゴム等が挙げられ、これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用いられる。
これらのうち、ポリブタジエン、ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体及び該ブロック共重合体のブタジエン部位の水素添加物(ジエン部分の水素添加率30%以上)、エチレン−プロピレン−(非共役ジエン)共重合体、アクリルゴム及びシリコーンゴムが好ましい。
本発明のスチレン系樹脂[Y2]は、ゴム質重合体を含むゴム強化スチレン系樹脂が、耐衝撃性の点から好ましく、その場合、ゴム質重合体(a1’)量は、通常5〜80質量%、好ましくは5〜50質量%、さらに好ましくは8〜40質量%、特に好ましくは10〜35質量%である。
本発明のスチレン系樹脂[Y2]で使用されるビニル系単量体(a2’)は、上記ゴム強化ビニル系樹脂[A]及び上記(共)重合体[B]の製造で用いたビニル系単量体(b1)〜(b3)と同じものを用いることができる。
上記ビニル系単量体(a2’)の好ましい組み合わせとしては、スチレン/アクリロニトリル、α−メチルスチレン/アクリロニトリル、スチレン/メタクリル酸メチル、スチレン/メタクリル酸メチル/アクリロニトリル、スチレン/フェニルマレイミド、スチレン/無水マレイン酸、スチレン/アクリロニトリル/2−ヒドロキシエチルメタクリレート、スチレン/アクリロニトリル/メタクリル酸、スチレン/アクリロニトリル/グリシジルメタクリレートであり、スチレンとアクリロニトリルを必須成分とする場合の好ましい使用割合は、スチレン由来の繰り返し単位/アクリロニトリル由来の繰り返し単位の割合で60〜90/10〜40質量%の範囲である。
本発明のスチレン系樹脂[Y2]は、公知の重合法である乳化重合、塊状重合、溶液重合、懸濁重合及びこれらを組み合わせた重合法で重合することができる。
ゴム強化されていないスチレン系樹脂の具体例としては、ポリスチレン、AS樹脂、MS樹脂、MAS樹脂などがあげられる。これらの重量平均分子量は、通常20,000以上、好ましくは30,000以上、より好ましくは50,000以上であり、また通常1,000,000以下、好ましくは500,000以下、より好ましくは300,000以下である。
またゴム強化されているスチレン系樹脂の具体例としては、HIPS樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、MBS樹脂、ASA樹脂などがあげられる。
尚、本発明におけるスチレン系樹脂[Y2]としては、ゴム強化されていないスチレン系樹脂単独、または、ゴム強化されているスチレン系樹脂単独でなっていてもよく、またはこれらの混合物であってもよい。
本発明のスチレン系樹脂[Y2]がゴム強化スチレン系樹脂を含有する場合、樹脂中に分散するゴム質重合体の平均粒子径は、50〜3000nmの範囲にあることが耐衝撃性及び成形品表面外観から好ましく、更に好ましくは100〜2000nm、特に好ましくは150〜800nmである。
ゴム質重合体の存在下にビニル系単量体を共重合して得られるゴム強化スチレン系樹脂のグラフト率は、好ましくは20〜200質量%、更に好ましくは30〜150質量%、特に好ましくは40〜120質量%である。
上記グラフト率は、下記式により求めることができる。
グラフト率(質量%)={(S−T)/T}×100
上記式中、Sはゴム強化スチレン系樹脂1グラムをアセトン(ゴム質重合体がアクリル系ゴムの場合はアセトニトリル)20mlに投入し、25℃の温度条件下で、振とう機により2時間振とうした後、5℃の温度条件下で、遠心分離機(回転数;23,000rpm)で60分間遠心分離し、不溶分と可溶分とを分離して得られる不溶分の質量(g)であり、Tはゴム強化スチレン系樹脂1グラムに含まれるゴム質重合体の質量(g)である。このゴム質重合体の質量は、重合処方及び重合転化率から算出する方法、赤外線吸収スペクトル(IR)により求める方法等により得ることができる。
また、上記スチレン系樹脂[Y2]のアセトン可溶分の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃で測定)は、いずれも、通常0.1〜1.5dl/g、好ましくは0.2〜1.0dl/gである。極限粘度[η]が上記範囲内にあれば、成形加工性及び耐衝撃性の物性バランスに優れる。
なお、上記極限粘度[η]の測定は下記方法で行った。まず、上記スチレン系樹脂[Y2]のアセトン可溶分をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度の異なるものを5点作った。ウベローデ粘度管を用い、30℃で各濃度の還元粘度を測定した結果から、極限粘度[η]を求めた。単位は、dl/gである。
上記極限粘度は、製造時に用いる連鎖移動剤の種類及び使用量、重合開始剤の種類及び使用量、重合温度等を適宜選択することにより調整することができる。
なお、上記スチレン系樹脂[Y2]は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の熱可塑性樹脂、さらには酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、滑剤、染料、顔料、可塑剤、難燃剤、離型剤、ガラス繊維、金属繊維、炭素繊維、金属フレーク等の公知の添加剤、補強材、充填材等を添加することができる。
4−3.HDTが85℃以上のポリオレフィン樹脂〔Y3〕(以下、「成分〔Y3〕ともいう。):
本発明においてポリオレフィン樹脂〔Y3〕は、HDTが85℃以上であれば特に制限はなく、代表的には、エチレン及び炭素数3〜10のα−オレフィンからなる群より選ばれた少なくとも1種のオレフィン類を構成単量体単位として含有する重合体である。このオレフィン系樹脂としては、X線回折により室温で結晶化度を示すものが好ましく、より好ましくは結晶化度が20%以上であり、融点が40℃以上であることが好ましい。また、このオレフィン系樹脂は、常温下での使用に対する十分な強度と、例えば射出成形等に対する十分な成形性をもつことが好ましい。
上記成分〔Y3〕の構成単量体単位であるオレフィン類の例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ヘキセン等があり、好ましくは、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテンである。また他に、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、1,9−デカジエン等の非共役ジエン等を他の単量体成分として使用することができる。
また、上記成分〔Y3〕としては、アイオノマー、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、環状オレフィン共重合体、塩素化ポリエチレン、臭素化ポリエチレン等を用いることもできる。
本発明で用いられる上記成分〔Y3〕は、単独重合体または共重合体であってよく、該共重合体は、ランダム共重合体またはブロック共重合体のいずれであってもよいが、これらのうちプロピレン単独重合体が特に好ましい。
例えば、上記成分〔Y3〕としてのポリプロピレン系樹脂は、230℃、2.16kgの条件で測定したメルトフローレート(MFR)が、0.01〜500g/10分であることが好ましく、より好ましくは0.05〜100g/10分である。
なお、上記ポリオレフィン系樹脂〔Y3〕は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の熱可塑性樹脂、さらには酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、滑剤、染料、顔料、可塑剤、難燃剤、離型剤、ガラス繊維、金属繊維、炭素繊維、金属フレーク等の公知の添加剤、補強材、充填材等を添加することができる。
本発明で用いられるポリオレフィン系樹脂〔Y3〕は、必要に応じて無機フィラーを配合することができる。無機フィラーを配合することにより、ポリオレフィン樹脂の硬度および剛性が増し、軋み音低減効果が向上することがある。本発明で用いられる無機フィラーとしては、例えば、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、シリカ、チタニア等の無機化合物粉末、金属、セラミック、ガラスビーズ、ガラス繊維等の繊維状充填材などが挙げられる。
上記繊維状充填剤としては、例えばガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維等の有機繊維、セラミック系ウィスカー等の無機繊維、金属繊維等が挙げられる。本発明では、高温における硬度および剛性向上の観点から、ガラス繊維を用いることが好ましい。
ガラス繊維に用いられるガラスの組成は、珪酸塩ガラス、ほう酸珪酸ガラス、燐酸塩ガラス等が挙げられる。またガラスの種類としては、Eガラス、Cガラス、Aガラス、Sガラス、Mガラス、ARガラス、Lガラス等が挙げられるが、Eガラス、Cガラスが好ましい。本発明に用いられるガラス繊維には、適当なサイジング剤を用いても構わない。サイジング剤としては、表面処理剤、フィルム形成剤、潤滑剤、界面活性剤、帯電防止剤等が挙げられる。表面処理剤としては、アミン系、シラン系、エポキシ系等のカップリング剤が挙げられる。本発明に用いられるガラス繊維は、ロービングを用いた長繊維タイプでもよく、チョップドストランドであってもよい。
ガラス繊維のポリオレフィン樹脂との混合前の平均長さは、1〜10mmが好ましく、2〜6mmがより好ましく、また平均径は5〜100μmが好ましく、8〜20μmが特に好ましい。
さらに、ポリオレフィン樹脂を成形した成形品中に分散しているガラス繊維の残存平均繊維長は、150〜1000μmが好ましく、200〜800μmがより好ましく、250〜700μmがさらに好ましい。残存平均繊維長が上記範囲にあると、高温下での硬度および剛性の観点から、より好ましい。
上記残存平均繊維長は、成形品の一部を切り出して測定される。具体的には、切り出した成形品を800℃に加熱して樹脂成分を分解した後、残ったガラス繊維の繊維長を画像分析により測定する。
ポリオレフィン樹脂100質量部に対する無機フィラーの配合量は、通常1〜50質量部、好ましくは5〜45質量部である。
〔Y4〕:HDTが85℃以上のメタクリル樹脂(以下、「成分〔Y4〕ともいう。):
本発明においてメタクリル系樹脂[Y4]は、HDTが85℃以上であれば特に制限はない。上記メタクリル樹脂は、炭素数1〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルを主原料とする樹脂であり、例えば、上記メタクリル樹脂中のメタクリル酸アルキルエステルから誘導される化合物単位の含有量が、通常50〜100質量%、好ましくは60〜100質量%、さらに好ましくは70〜100%質量、特に好ましくは80〜100質量%の樹脂である。
上記メタクリル系樹脂[Y4]は、例えば、炭素数1〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルの単独重合体、又は該メタクリル酸アルキルエステルと他の単量体との共重合体であってよい。炭素数1〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等があげられ、これらは単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。上記メタクリル酸アルキルエステルとしては、メタクリル酸メチルを用いることが好ましい。
上記メタクリル酸アルキルエステルと共重合可能な単量体としては、アクリル酸アルキルエステル類;スチレン及びo−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、p−t−ブチルスチレンのようなアルキル置換スチレン、及びα−メチルスチレン,α−メチル−p−メチルスチレンのようなα−アルキル置換スチレン等の芳香族ビニル化合物類;アクリロニトリル、メタクリルニトリル等のシアン化ビニル類;N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド類;無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸無水物類;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等の不飽和酸類が挙げられる。これらのメタクリル酸アルキルエステルと共重合可能な単量体は、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、これらメタクリル酸メチルと共重合可能な単量体の中でも、特にアクリル酸アルキルエステル類は耐熱分解性に優れる点で好ましく、またアクリル酸アルキルエステル類を共重合させて得られるメタクリル系樹脂は、成形加工時の流動性が高い点で好ましい。メタクリル酸メチルにアクリル酸アルキルエステル類を共重合させる場合のアクリル酸アルキルエステル類の使用量は、耐熱分解性の観点から0.1重量%以上であることが好ましく、耐熱性の観点から15重量%以下であることが好ましい。この場合のアクリル酸アルキルエステル類の使用量は、0.2重量%以上14重量%以下であることがさらに好ましく、1重量%以上12重量%以下であることがとりわけ好ましい。このアクリル酸アルキルエステル類の中でも、特にアクリル酸メチル及びアクリル酸エチルは、少量のみメタクリル酸メチルと共重合させた場合であっても改良効果が著しく、最も好ましい。上記メタクリル酸メチルと共重合可能な単量体は、単独であるいは2種以上組み合わせて使用することもできる。
上記メタクリル系樹脂の重量平均分子量は通常30,000〜300,000、好ましくは50,000〜200,000である。重量平均分子量は成形品の強度の観点から30,000以上が望ましく、成形加工性、流動性の観点から300,000以下が望ましい。また、本発明においてはアイソタクチックポリメタクリル酸エステルとシンジオタクチックポリメタクリル酸エステルを同時に用いることもできる。
なお、上記メタクリル系樹脂[Y4]は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の熱可塑性樹脂、さらには酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、滑剤、染料、顔料、可塑剤、難燃剤、離型剤、ガラス繊維、金属繊維、炭素繊維、金属フレーク等の公知の添加剤、補強材、充填材等を添加することができる。
本発明に係る、上記熱可塑性樹脂組成物〔X〕の成形品と上記熱可塑性樹脂〔Y〕の成形品とを組み付けてなる自動車内装部品は、互いに接触し、擦れ合うことにより発生する軋み音を大幅に低減させることが可能である。このような自動車内装部品としては、ドアトリム、ドアライニング、ピラーガーニッシュ、コンソール、ドアポケット、ベンチレータ、ダクト、エアコン、メーターバイザー、インパネアッパーガーニッシュ、インパネロアガーニッシュ、A/T インジケーター、オンオフスイッチ類(スライド部、スライドプレート)、グリルフロントデフロスター、グリルサイドデフロスター、リッドクラスター、カバーインストロアー、マスク類(マスクスイッチ、マスクラジオなど)、グローブボックス、ポケット類(ポケットデッキ、ポケットカードなど)、カップホルダー、スイッチボックス、ステアリングホイールホーンパッド等を挙げることができる。その中でも、自動車用ベンチレータとして好適に用いることができ、自動車用ベンチレータ及び自動車用エアコンの板状羽根、バルブシャッター等として特に好適に用いることができる。この様に他の部材との嵌合部を有する部品に好適である。
以下、実施例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に何等制約されるものではない。尚、実施例中、部および%は特に断らない限り質量基準である。
(1)評価方法:
下記の実施例及び比較例における、各種評価項目の測定方法を以下に示す。
(1−1)軋み音評価I(摩擦係数の摩擦速度依存性):
日精樹脂工業株式会社製の電動射出成形機「エルジェクト NEX30」(型式名)を用い、成形温度240℃、金型温度50℃、射出速度30mm/sの条件で、表1に記載の熱可塑性樹脂組成物〔X〕及び熱可塑性樹脂〔Y〕からなる、内径20mm、外径24.8mm、高さ15mmの円筒型の試験片を射出成形し、その後、該試験片を80℃のギアオーブンに400時間放置した。次に、株式会社オリエンテック製の摩耗摩擦試験器「EFM−III −EN」(商品名)を用い、回転側に接触相手として表1に記載の熱可塑性樹脂〔Y〕からなる試験片をセットし、固定側に表1に記載の熱可塑性樹脂組成物〔X〕からなる試験片をセットし、荷重3kg、回転速度(摩擦速度)50、100mm/s、150mm/sの条件で摩擦強度を測定し、摩擦速度に対する摩擦係数の傾きを求めた。
(1−2)軋み音評価II(実用評価):
株式会社日本製鋼所製の射出成形機「J−100E」(型式名)を用い、表1に記載の熱可塑性樹脂組成物〔X〕からなる、ISOダンベル試験片を射出成形し、その後、試験片を80℃のギアオーブンに400時間放置した。次に、上記表1に記載の熱可塑性樹脂組成物〔X〕からなるISOダンベル試験片5枚と、熱可塑性樹脂〔Y〕からなり、同様に80℃のギアオーブンに400時間放置したISOダンベル試験片5枚を交互に重ね合わせ、この両端を手でひねって軋み音の発生の状況を評価した。評価は5回行い、下記評価基準に基づき判定を行った。
軋み音低減効果の評価:
○:5回の評価全てにおいて、軋み音の発生は僅かであった。
△:5回の評価において、軋み音の発生が顕著な場合が含まれていた。
×:5回の評価全てにおいて、軋み音の発生が顕著であった。
(1−3)成形外観評価
日精樹脂工業株式会社製の電動射出成形機「エルジェクト NEX30」(型式名)を用い、表1に記載の熱可塑性樹脂組成物〔X〕からなる、直径80mm、厚さ2mmの円盤型の試験片を各5枚射出成形した。試験片は円盤中心に、φ1mm×1mmのゲートを備え、成形温度は240℃、金型温度は50℃、射出速度は30mm/sであった。得られた各5枚の試験片を観察し、下記評価基準に基づき判定を行った。
○:5枚の試験片全てにおいて、ジェッティングの発生はなかった。
△:5枚の試験片において、ジェッティングの発生したものがあったが、その大きさは10mm以下であった。
×:5枚の試験片において、ジェッティングが発生し、その大きさは10mm超過であった。
(1−3)落錘衝撃強度:
日精樹脂工業株式会社製の電動射出成形機「エルジェクト NEX30」(型式名)を用い、表1に記載の熱可塑性樹脂組成物〔X〕からなる、80mm×55mm×2.4mmの平板型の試験片を射出成形した。試験片は、55mmの一方の辺の中央に4mm×1mmのサイドゲートを備え、成形時の樹脂温度は240℃、金型温度は50℃、射出速度は30mm/sであった。次に、株式会社島津製作所の島津ハイドロショット・高速パンクチャー衝撃試験機「HITS−P10」(型式名)を用い、以下に示す条件で上記試験片を打ち抜いて破壊エネルギー(J)を測定した。
測定温度 : 23℃
打ち抜き速度 : 6.7mm/s
打ち抜き試験用ジグのストライカ先端 : φ12.7mm
試験片受け台のダイス径 : 43mm
(2−1)成分〔A〕
A1−1:AES−1
リボン型攪拌機翼、助剤連続添加装置、温度計などを装備した容積20リットルのステンレス製オートクレーブに、エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕として、エチレン・プロピレン共重合体(エチレン/プロピレン=78/22(%)、ムーニー粘度(ML1+4 ,100℃)20)22部、スチレン55部、アクリロニトリル23部、t−ドデシルメルカプタン0.5部、トルエン110部を仕込み、内温を75℃に昇温して、オートクレーブ内容物を1時間攪拌して均一溶液とした。その後、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート0.45部を添加し、内温を更に昇温して、100℃に達した後は、この温度を保持しながら、攪拌回転数100rpmとして重合反応を行った。重合反応開始後4時間目から、内温を120℃に昇温し、この温度を保持しながら更に2時間反応を行って重合反応を終了した。その後、内温を100℃まで冷却し、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)−プロピオネート0.2部を添加した後、反応混合物をオートクレーブより抜き出し、水蒸気蒸留により未反応物と溶媒を留去し、さらに40mmφベント付き押出機(シリンダー温度220℃、真空度760mmHg)を用いて揮発分を実質的に脱気させ、ペレット化した。得られたエチレン・α−オレフィン系ゴム強化ビニル系樹脂のグラフト率は70%、アセトン可溶分の極限粘度[η]は0.47dl/gであった。
A2−1:ABS−1
攪拌機付き重合器に、水280部およびジエン系ゴム質重合体〔a2〕として、重量平均粒子径0.26μm、ゲル分率90%のポリブタジエンラテックス60部(固形分換算)、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.3部、硫酸第一鉄0.0025部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.01部を仕込み、脱酸素後、窒素気流中で撹拌しながら60℃に加熱した後、アクリロニトリル10部、スチレン30部、t−ドデシルメルカプタン0.2部、クメンハイドロパーオキサイド0.3部からなる単量体混合物を60℃で5時間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、重合温度を65℃にし、1時間撹拌続けた後、重合を終了させ、グラフト共重合体のラテックスを得た。重合転化率は98%であった。その後、得られたラテックスに、2,2′−メチレン−ビス(4−エチレン−6−t−ブチルフェノール)0.2部を添加し、塩化カルシウムを添加して凝固し、洗浄、濾過および乾燥工程を経てパウダー状の樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物のグラフト率は40%、アセトン可溶分の極限粘度[η]は0.38dl/gであった。
A1−2:AES−2
リボン型攪拌機翼、助剤連続添加装置、温度計などを装備した容積20リットルのステンレス製オートクレーブに、エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕としてエチレン・プロピレン・ジシクロペンタジエン共重合体(エチレン/プロピレン/ジシクロペンタジエン=63/32/5(%)、ムーニー粘度(ML1+4 ,100℃)33)30部、スチレン45部、アクリロニトリル25部、t−ドデシルメルカプタン0.5部、トルエン140部を仕込み、内温を75℃に昇温して、オートクレーブ内容物を1時間攪拌して均一溶液とした。その後、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート0.45部を添加し、内温を更に昇温して、100℃に達した後は、この温度を保持しながら、攪拌回転数100rpmとして重合反応を行った。重合反応開始後4時間目から、内温を120℃に昇温し、この温度を保持しながら更に2時間反応を行って重合反応を終了した。その後、内温を100℃まで冷却し、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)−プロピオネート0.2部を添加した後、反応混合物をオートクレーブより抜き出し、水蒸気蒸留により未反応物と溶媒とを留去し、さらに40mmφベント付き押出機(シリンダー温度220℃、真空度760mmHg)を用いて揮発分を実質的に脱気させ、ペレット化した。得られたエチレン・α−オレフィン系ゴム強化ビニル系樹脂のグラフト率は60%、アセトン可溶分の極限粘度[η]は0.45dl/gであった。
B−1:AS−1
撹拌機付き重合容器に、水250部およびパルミチン酸ナトリウム1.0部を投入し、脱酸素後、窒素気流中で撹拌しながら70℃まで加熱した。さらにナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.4部、硫酸第一鉄0.0025部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.01部を仕込み後、α−メチルスチレン70部、アクリロニトリル25部、スチレン5部、t−ドデシルメルカプタン0.5部、クメンハイドロパーオキサイド0.2部からなる単量体混合物を、重合温度70℃で連続的に7時間かけて滴下した。滴下終了後、重合温度を75℃にし、1時間撹拌を続けて重合を終了させ、共重合体のラテックスを得た。重合転化率は99%であった。その後、得られたラテックスを塩化カルシウムを添加して凝固し、洗浄、濾過および乾燥工程を経てパウダー状の共重合体を得た。得られた共重合体のアセトン可溶分の極限粘度[η]は0.40dl/gであった。
(2−2)成分〔C〕(シリコーンオイル):
C−1:メチルフェニルシリコーンオイル;KF54(商品名:信越シリコーン株式会社製)、25℃の動粘度は400cStであった。
C−2:アミノ変性シリコーンオイル;TSF4700(商品名:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン製)、25℃の動粘度は50cStであった。
C−3:アルキル・アラルキル変性シリコーンオイル;XF42−334(商品名:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン製)、25℃の動粘度は1300cStであった。
(2−3)添加剤:
D−1:エチレン・ビスステアリン酸アマイド;カオーワックス EB−P(商品名:花王株式会社製)
D−2:1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ハイドロキシベンジル)−s−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン;アデカスタブ AO−20(商品名:株式会社ADEKA製)
D−3:ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリストールジホスファイト;アデカスタブ PEP−24G(商品名:株式会社ADEKA製)
(2−4)熱可塑性樹脂〔Y〕
Y1:テクノポリマー(株)PC/ABS CK43 (HDT 95℃)
Y2:テクノポリマー(株)耐熱ABS E7301 (HDT95℃)
Y3:プライムポリマー プライムポリプロ(短繊維GFPP) V-7000 (HDT 150℃)
Y4:三菱レイヨン(株)PMMA アクリペットVH001 (HDT100℃)
Y5:テクノポリマー(株)ABS170 (HDT 76℃)
実施例1〜13及び比較例1〜5
表1に記載の配合割合で、上記成分〔A〕〜〔D〕をヘンシェルミキサーにより混合した後、二軸押出機(日本製鋼所製、TEX44、バレル設定温度250℃)で混練し、熱可塑性樹脂組成物〔X〕をペレット化した。得られたペレットで評価用の各試験片を成形した。尚、熱可塑性樹脂組成物〔X〕のHDTは、実施例1〜8及び13の組成物は93℃、実施例9〜12の組成物は90℃、比較例1〜5の組成物は91℃であった。
一方、同様にして熱可塑性樹脂〔Y〕をペレット化し、得られたペレットで評価用の各試験片を成形した。そして得られた試験片を用いて、前記の方法で評価した。以上の評価結果を表1に示した。
Figure 2011189871
表1から明らかように、実施例1〜13に代表される本発明の熱可塑性樹脂組成物〔X〕の成形品と熱可塑性樹脂〔Y1〕〜〔Y4〕の成形品とを組み付けられてなる嵌合品は、本発明の目的とする軋み音が低減され、更に、耐衝撃性および成形外観をバランス良く備えた成形品を提供することができる。
これに対し、比較例1〜4は、エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕を重合して得られるゴム強化ビニル系樹脂〔A1〕を用いなかった例であり、軋み音評価に劣る。比較例5は、熱可塑性樹脂〔Y〕として本発明の〔Y1〕〜〔Y4〕以外の樹脂〔Y5〕を用いた例であり、〔Y5〕の試験片がギアオーブン放置中(80℃、400時間)に変形したため、摩擦強度の測定が不安定となり、軋み音評価を行うことができなかった。
本発明の熱可塑性樹脂組成物〔X〕の成形品と熱可塑性樹脂〔Y〕の成形品とからなる自動車内装部品は、部材が擦れ合うときに発生する軋み音が著しく低減され、かつ高温下に長時間置かれた場合においても軋み音低減効果が低下せずに維持され、さらには耐衝撃性および成形外観に優れた熱可塑性樹脂組成物からなる自動車内装部品を提供することができ、自動車用ベンチレータ、自動車用エアコン等に好適に使用することができ、特に、嵌合部を有する部品に好適に使用することができる。
M 物体
V 駆動速度
μs 静摩擦係数
μl ノコギリ波形下端
Δμ μs−μl

Claims (10)

  1. エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕の存在下にビニル系単量体〔b1〕を重合して得られるゴム強化ビニル系樹脂〔A〕を含有してなる熱可塑性樹脂組成物〔X〕であって、該エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕の含有量が該熱可塑性樹脂組成物〔X〕全体を100質量%として5〜30質量%である熱可塑性樹脂組成物〔X〕の成形品と、
    下記のY1〜Y4の群から選ばれた熱可塑性樹脂〔Y〕の成形品とからなり、
    前記熱可塑性樹脂組成物〔X〕の成形品と前記熱可塑性樹脂〔Y〕の成形品とが組み付けられてなることを特徴とする自動車内装部品:
    Y1:HDTが85℃以上のポリカーボネート/ゴム強化スチレン系樹脂アロイ、
    Y2:HDTが85℃以上のスチレン系樹脂(但し、上記Y1を除く)、
    Y3:HDTが85℃以上のポリオレフィン系樹脂、及び
    Y4:HDTが85℃以上のメタクリル系樹脂。
  2. 熱可塑性樹脂組成物〔X〕のHDTが85℃以上であることを特徴とする請求項1記載の自動車内装部品。
  3. エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕のエチレン:α−オレフィンの質量比が5〜95:95〜5である請求項1又は2記載の自動車内装部品。
  4. エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕が、エチレン・プロピレン共重合体である請求項1乃至3の何れか1項に記載の自動車内装部品。
  5. ゴム強化ビニル系樹脂〔A〕が、エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕及びジエン系ゴム質重合体〔a2〕を含有してなり、
    前記エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕及び前記ジエン系ゴム質重合体〔a2〕の合計量が、熱可塑性樹脂組成物〔X〕全体を100質量%として5〜30質量%であり、
    該エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕と該ジエン系ゴム質重合体〔a2〕との質量比〔a1〕:〔a2〕が90〜15:10〜85である請求項1乃至4の何れか1項に記載の自動車内装部品。
  6. 熱可塑性樹脂組成物〔X〕が、エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕の存在下にビニル系単量体〔b1〕を重合して得られたゴム強化ビニル系樹脂〔A1〕と、ジエン系ゴム質重合体〔a2〕の存在下にビニル系単量体〔b2〕を重合して得られたゴム強化ビニル系樹脂〔A2〕と、ビニル系単量体〔b3〕の(共)重合体〔B〕とからなる混合物を含有してなる請求項1乃至5の何れか1項に記載の自動車内装部品。
  7. 熱可塑性樹脂組成物〔X〕100質量部に対し、25℃における動粘度が10〜100,000cStであるシリコーンオイル〔C〕0.1〜8質量部を配合してなる請求項1乃至6の何れか1項に記載の自動車内装部品。
  8. シリコーンオイル〔C〕が、メチルフェニルシリコーンオイルである請求項7記載の自動車内装用部品。
  9. 熱可塑性樹脂組成物〔X〕の成形品と熱可塑性樹脂〔Y〕の成形品とが組み付けられてなる自動車内装部品が自動車用ベンチレータである請求項1乃至8の何れか1項に記載の自動車内装部品。
  10. 熱可塑性樹脂組成物〔X〕の成形品と熱可塑性樹脂〔Y〕の成形品とが組み付けられてなる自動車内装部品が自動車用エアコンである請求項1乃至8の何れか1項に記載の自動車内装部品。
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