JP2011188799A - 変異型還元酵素 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】配列番号1で示されるアミノ酸配列において、56番目のグリシンがシステインに置換されるアミノ酸変異を含む1つ以上のアミノ酸変異を有すること以外には配列番号1で示されるアミノ酸配列と同等なアミノ酸配列を有し、かつ、基質を還元する能力を有することを特徴とする酵素等。
【選択図】なし
Description
還元酵素は、基質を還元する能力を有し、近年、例えば、医農薬の有効成分となる化合物やその中間体、特に光学活性である化合物やその中間体等を製造する為の有機合成反応に利用されている。 そして、例えば、配列番号1で示されるアミノ酸配列を有し、かつ、基質を還元する能力を有する酵素(野生型還元酵素)が知られている(例えば、特許文献1参照)。
このような、光学活性である化合物やその中間体等を製造する為に工業的に利用される還元酵素は、当該酵素による還元反応における反応生成物の光学純度が高いこと、基質の絶対立体配置に対する当該酵素の認識性が高いこと、温度・pH・溶媒・圧力等の各種反応条件に対する安定性が高いこと等の性能を備えていることが望ましい。中でも温度に対する還元酵素の安定性(即ち、熱安定性)が高いと、反応温度を高くすることが可能となり、反応速度を高めるだけでなく、反応中の還元酵素の失活を軽減することができる(例えば、非特許文献1参照)。
即ち、本発明は、
1)配列番号1で示されるアミノ酸配列において、56番目のグリシンがシステインに置換されるアミノ酸変異を含む1つ以上のアミノ酸変異を有すること以外には配列番号1で示されるアミノ酸配列と同等なアミノ酸配列を有し、かつ、基質を還元する能力を有することを特徴とする酵素(以下、本発明酵素と記すこともある。);
2)前記のアミノ酸変異が、115番目のバリンがイソロイシンに置換されるアミノ酸変異を含むことを特徴とする前項1記載の酵素;
3)前記のアミノ酸変異が、27番目のトリプトファンがアルギニンに置換されるアミノ酸変異を含むことを特徴とする前項1又は2記載の酵素;
4)前記のアミノ酸変異が、42番目のヒスチジンがロイシンに置換されるアミノ酸変異を含むことを特徴とする前項1乃至3のいずれかの前項記載の酵素;
5)前記のアミノ酸変異が、25番目のスレオニンがセリンに置換されるアミノ酸変異を含むことを特徴とする前項1乃至4のいずれかの前項記載の酵素;
6)前記のアミノ酸変異が、下記のアミノ酸変異群から選ばれるアミノ酸変異であることを特徴とする前項1記載の酵素;
<アミノ酸変異群>
1.(a)56番目のグリシンがシステインに置換されるアミノ酸変異と(b)115番目のバリンがイソロイシンに置換されるアミノ酸変異との2つのアミノ酸変異
2.(a)56番目のグリシンがシステインに置換されるアミノ酸変異と(b)27番目のトリプトファンがアルギニンに置換されるアミノ酸変異との2つのアミノ酸変異
3.(a)56番目のグリシンがシステインに置換されるアミノ酸変異と(b)42番目のヒスチジンがロイシンに置換されるアミノ酸変異との2つのアミノ酸変異
4.(a)56番目のグリシンがシステインに置換されるアミノ酸変異と(b)25番目のスレオニンがセリンに置換されるアミノ酸変異との2つのアミノ酸変異
5.(a)56番目のグリシンがシステインに置換されるアミノ酸変異と(b)115番目のバリンがイソロイシンに置換されるアミノ酸変異と(c)27番目のトリプトファンがアルギニンに置換されるアミノ酸変異との3つのアミノ酸変異
6.(a)56番目のグリシンがシステインに置換されるアミノ酸変異と(b)115番目のバリンがイソロイシンに置換されるアミノ酸変異と(c)42番目のヒスチジンがロイシンに置換されるアミノ酸変異との3つのアミノ酸変異
7.(a)56番目のグリシンがシステインに置換されるアミノ酸変異と(b)115番目のバリンがイソロイシンに置換されるアミノ酸変異と(c)25番目のスレオニンがセリンに置換されるアミノ酸変異との3つのアミノ酸変異
8.(a)56番目のグリシンがシステインに置換されるアミノ酸変異と(b)27番目のトリプトファンがアルギニンに置換されるアミノ酸変異と(c)42番目のヒスチジンがロイシンに置換されるアミノ酸変異との3つのアミノ酸変異
9.(a)56番目のグリシンがシステインに置換されるアミノ酸変異と(b)27番目のトリプトファンがアルギニンに置換されるアミノ酸変異と(c)25番目のスレオニンがセリンに置換されるアミノ酸変異との3つのアミノ酸変異
10.(a)56番目のグリシンがシステインに置換されるアミノ酸変異と(b)42番目のヒスチジンがロイシンに置換されるアミノ酸変異と(c)25番目のスレオニンがセリンに置換されるアミノ酸変異との3つのアミノ酸変異
11.(a)56番目のグリシンがシステインに置換されるアミノ酸変異と(b)115番目のバリンがイソロイシンに置換されるアミノ酸変異と(c)27番目のトリプトファンがアルギニンに置換されるアミノ酸変異と(d)42番目のヒスチジンがロイシンに置換されるアミノ酸変異との4つのアミノ酸変異
12.(a)56番目のグリシンがシステインに置換されるアミノ酸変異と(b)115番目のバリンがイソロイシンに置換されるアミノ酸変異と(c)27番目のトリプトファンがアルギニンに置換されるアミノ酸変異と(d)25番目のスレオニンがセリンに置換されるアミノ酸変異との4つのアミノ酸変異
13.(a)56番目のグリシンがシステインに置換されるアミノ酸変異と(b)115番目のバリンがイソロイシンに置換されるアミノ酸変異と(c)42番目のヒスチジンがロイシンに置換されるアミノ酸変異と(d)25番目のスレオニンがセリンに置換されるアミノ酸変異との4つのアミノ酸変異
14.(a)56番目のグリシンがシステインに置換されるアミノ酸変異と(b)27番目のトリプトファンがアルギニンに置換されるアミノ酸変異と(c)42番目のヒスチジンがロイシンに置換されるアミノ酸変異と(d)25番目のスレオニンがセリンに置換されるアミノ酸変異との4つのアミノ酸変異
15.(a)56番目のグリシンがシステインに置換されるアミノ酸変異と(b)115番目のバリンがイソロイシンに置換されるアミノ酸変異と(c)27番目のトリプトファンがアルギニンに置換されるアミノ酸変異と(d)42番目のヒスチジンがロイシンに置換されるアミノ酸変異と(e)25番目のスレオニンがセリンに置換されるアミノ酸変異との5つのアミノ酸変異;
7)前項1乃至6のいずれかの前項記載の酵素が有するアミノ酸配列をコ−ドする塩基配列を有することを特徴とするポリヌクレオチド(以下、本発明遺伝子と記すこともある。);
8)前項7記載のポリヌクレオチドを含有することを特徴とするベクタ−(以下、本発明ベクタ−と記すこともある。);
9)酸化型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸又は酸化型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを還元型に変換する能力を有するタンパク質のアミノ酸配列をコ−ドする塩基配列を有するポリヌクレオチドを更に含有することを特徴とする前項8記載のベクタ−;
10)前項7記載のポリヌクレオチド又は前項8若しくは9記載のベクタ−を含有することを特徴とする形質転換体(以下、本発明形質転換体と記すこともある。);
11)2−オキソ−4−フェニル酪酸エステルに、前項10記載の形質転換体又はその処理物を作用させる工程を含むことを特徴とする(R)−2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸エステルの製造方法(以下、本発明製造方法と記すこともある。);
12)配列番号1で示されるアミノ酸配列を有する酵素の改変方法であり、配列番号1で示されるアミノ酸配列において、56番目のグリシンをシステインに置換する工程を含むことを特徴とする方法(以下、本発明酵素改変方法と記すこともある。);
13)配列番号1で示されるアミノ酸配列をコ−ドする塩基配列を有するポリヌクレオチドの改変方法であり、配列番号1で示されるアミノ酸配列をコ−ドする塩基配列において、166番目から168番目までの、グリシンをコ−ドするコドンを、システインをコ−ドするコドンに置換する工程を含むことを特徴とする方法(以下、本発明遺伝子改変方法と記すこともある。);
等を提供するものである。
特に断りの無い限り、本明細書で用いる全ての技術用語、及び、化学用語は、本発明が属する技術分野の熟練者に共通に理解されているものと同じ意味を持つ。本発明を実施又は試験する上で、本明細書に記載されているものと同様又は同等の方法、及び、材料のいずれを用いてもよいが、以下、好ましい方法、装置、及び、材料を記載する。
尚、配列番号1で示されるアミノ酸配列を有し、かつ、基質を還元する能力を有する酵素(野生型還元酵素)は、市販のヤマダジ−マ・ファリノサ(Yamadazyma farinosa)IFO0193株(独立行政法人 製品評価技術基盤機構から購入可能)由来の公知の還元酵素である。
ここで、ヤマダジ−マ・ファリノサ(Yamadazyma farinosa)IFO0193株由来のcDNAライブラリ−を鋳型として、且つ、配列番号3に示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと配列番号4に示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドとをプライマ−として用いてPCRを行えば、配列番号2で示される塩基配列を有するポリヌクレオチドが増幅される。増幅されたポリヌクレオチドを回収することにより、配列番号2で示される塩基配列を有するポリヌクレオチド(野生型遺伝子)を調製することができる。
ここで「部位特異的変異導入法」としては、例えば、 Olfert Landt ら(Gene 96 125−128 1990)、Smithら(Genetic Engineering 3 1 Setlow,J.and Hollaender,A Plenum:New York)、Vlasukら(Experimental Manipulation of Gene Expression,Inouye,M.:Academic Press,New York)、Hos.N.Huntら(Gene 77 51 1989)等の方法や、Mutan−Express Km(宝酒造社製)、TaKaRa La PCR in vitro Mutagenesis Kit(宝酒造社製)、QuickChange II Site−Directed Mutagenesis Kit(STRATAGNEN社製)等の市販キットの利用を挙げることができる。
次いで、得られたベクタ−(DNA)を鋳型にして、例えば、配列番号1で示されるアミノ酸配列における56番目のグリシンがシステインに置換されるアミノ酸配列をコ−ドする塩基配列を含むオリゴヌクレオチド(例えば、配列番号15で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチド)を片側のプライマ−として用い、配列番号3で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドをもう一方の側のプライマ−として用いて、PCR法によるDNA断片の増幅を行う。ここで、PCR反応の条件としては、例えば、94℃にて5分間保温した後、94℃にて1分間、次いで50℃にて2分間、更に75℃にて3分間保温する処理を20サイクル行い、最後に75℃で8分間保温する条件を挙げることができる。このようにして増幅されたDNA断片を精製した後、得られたDNA断片に、配列番号2で示される塩基配列を有するポリヌクレオチド(野生型遺伝子)が組み込まれたベクタ−(DNA)と、配列番号4で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドプライマ−とを加え、PCR法によりDNA断片の増幅を行う。増幅されたDNA断片を、例えば、制限酵素NcoI及びXbaIで消化し、同様の制限酵素消化を行った配列番号2で示される塩基配列を有するポリヌクレオチド(野生型遺伝子)が組み込まれたベクタ−(DNA)とライゲ−ション反応を行うことにより、目的とする本発明遺伝子を得ることができる。
本発明ベクタ−の調製は、本発明遺伝子を、本発明遺伝子が導入される宿主細胞において利用可能なベクタ−例えば、宿主細胞中で複製可能な遺伝情報を含み、自立的に増殖でき、宿主細胞からの単離、精製が可能であり、検出可能なマ−カ−を持つベクタ−(以下、基本ベクタ−と記すこともある。)に通常の遺伝子工学的手法に準じて、組み込むことにより構築すればよい。
ここで「基本ベクタ−」としては、大腸菌を宿主細胞とする場合には、例えば、ベクタ−pUC119(宝酒造社製)、ファ−ジミドpBluescriptII(Stratagene社製)等を挙げることができる。また、出芽酵母を宿主細胞とする場合には、例えば、ベクタ−pGBT9、pGAD424、pACT2(Clontech社製)等を挙げることができる。また、哺乳類動物細胞を宿主細胞とする場合には、例えば、pRc/RSV、pRc/CMV(Invitrogen社製)等のベクタ−、ウシパピロ−マウイルスベクタ−pBPV(アマシャムファルマシアバイオテク社製)、EBウイルスベクタ−pCEP4(Invitrogen社製)等のウイルス由来の自律複製起点を含むベクタ−、ワクシニアウイルス等のウイルス等を挙げることができる。また、昆虫類動物細胞を宿主細胞とする場合には、例えば、バキュロウイルス等の昆虫ウイルスを挙げることができる。
尚、本発明ベクタ−を、自律複製起点を含むベクタ−(具体的には例えば、酵母用ベクタ−pACT2、ウシパピロ−マウイルスベクタ−pBPV、EBウイルスベクタ−pCEP4等)を用いて構築すると、当該ベクタ−は宿主細胞に導入された際にエピソ−ムとして細胞内に保持される。
本発明遺伝子を微生物等の宿主細胞中で発現させることができるベクタ−は、本発明遺伝子の上流に、微生物等の宿主細胞で機能可能なプロモ−タ−を機能可能な形で結合させ、これを上記のような基本ベクタ−に組み込むことにより調製すればよい。
ここで、「機能可能な形で結合させ(る)」とは、本発明遺伝子が導入される微生物等の宿主細胞において、プロモ−タ−の制御下に本発明遺伝子が発現されるように、当該プロモ−タ−と本発明遺伝子とを結合させることを意味する。宿主細胞で機能可能なプロモ−タ−としては、導入される宿主細胞内でプロモ−タ−活性を示すDNAを挙げることができる。例えば、宿主細胞が大腸菌である場合には、大腸菌のラクト−スオペロンのプロモ−タ−(lacP)、トリプトファンオペロンのプロモ−タ−(trpP)、アルギニンオペロンのプロモ−タ−(argP)、ガラクト−スオペロンのプロモ−タ−(galP)、tacプロモ−タ−、T7プロモ−タ−、T3プロモ−タ−、λファ−ジのプロモ−タ−(λ−pL、λ−pR)等を挙げることができる。また、宿主細胞が動物細胞や分裂酵母である場合には、例えば、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモ−タ−、サイトメガロウイルス(CMV)プロモ−タ−、シミアンウイルス(SV40)の初期又は後期プロモ−タ−、マウス乳頭腫ウイルス(MMTV)プロモ−タ−等を挙げることができる。また、宿主細胞が出芽酵母である場合には、例えば、ADH1プロモ−タ−(尚、ADH1プロモ−タ−は、例えば、ADH1プロモ−タ−及び同タ−ミネ−タ−を保持する酵母発現ベクタ−pAAH5 〔Washington Research Fundation から入手可能、Ammerer ら、Method in Enzymology、101 part(p.192−201)〕から通常の遺伝子工学的方法により調製することができる。)等を挙げることができる。
また、宿主細胞において機能するプロモ−タ−を予め保有する基本ベクタ−を使用する場合には、前記プロモ−タ−と本発明遺伝子とが機能可能な形で結合するように、上記のプロモ−タ−の下流に本発明遺伝子を挿入すればよい。例えば、pRc/RSV、pRc/CMV等である場合には、動物細胞で機能可能なプロモ−タ−の下流にクロ−ニング部位が設けられている。当該クロ−ニング部位に本発明遺伝子を挿入することにより得られるベクタ−を動物細胞へ導入することにより、当該動物細胞において本発明遺伝子を発現させることができる。これらのベクタ−には予めSV40の自律複製起点(ori)が組み込まれているため、oriを欠失したSV40ゲノムで形質転換された培養細胞、例えば、COS細胞等に当該ベクタ−を導入すると、細胞内でベクタ−のコピ−数が非常に増大し、結果として当該ベクタ−に組み込まれた本発明遺伝子を大量発現させることもできる。また上記の酵母用ベクタ−pACT2はADH1プロモ−タ−を有しており、当該ベクタ−又はその誘導体のADH1プロモ−タ−の下流に本発明遺伝子を挿入すれば、本発明遺伝子を、例えば、CG1945(Clontech社製)等の出芽酵母内で大量発現させることが可能なベクタ−が構築できる。
本発明ベクタ−を宿主細胞へ導入する方法は、宿主細胞に応じた通常の導入方法を適用すればよい。大腸菌を宿主細胞とする場合には、例えば、J.Sambrook, E.F.Frisch, T.Maniatis著;「 モレキュラ−・クロ−ニング 第2版(Molecular Cloning 2nd edition)、コ−ルドスプリングハ−バ−ラボラトリ−(Cold Spring Harbor Laboratory発行、1989年)等に記載される塩化カルシウム法、エレクトロポレ−ション法等の通常の方法を挙げることができる。また、哺乳類動物細胞又は昆虫類動物細胞を宿主細胞とする場合には、例えば、リン酸カルシウム法、DEAEデキストラン法、エレクトロポレ−ション法、リポフェクション法等の通常の遺伝子導入法を挙げることができる。また、酵母を宿主細胞とする場合には、例えば、Yeast transformation kit(Clontech社製)等で用いられるリチウム法の通常の方法を挙げることができる。尚、ウイルスをベクタ−として用いる場合には、上記のように一般的な遺伝子導入法によりウイルスのゲノムを宿主細胞に導入できるほか、本発明遺伝子の挿入されたウイルスのゲノムを含有するウイルス粒子を、宿主細胞へ感染させることによっても、当該ウイルスのゲノムを宿主細胞に導入することができる。
本発明形質転換体が微生物である場合には、例えば、当該形質転換体は、一般微生物における通常の培養に使用される炭素源や窒素源、有機ないし無機塩等を適宜含む各種の培地を用いて培養することができる。
培養温度は、当該形質転換体が生育可能な範囲で適宜変更できるが、通常約15℃〜約40℃である。培地のpHは約6〜約8の範囲が好ましい。培養時間は、培養条件によって異なるが通常約1日〜約5日が好ましい。
クロマトグラフィ−に使用する担体としては、例えば、カルボキシメチル(CM)基、ジエチルアミノエチル(DEAE)基、フェニル基若しくはブチル基を導入したセルロ−ス、デキストリン又はアガロ−ス等の不溶性高分子担体が挙げられる。市販の担体充填済カラムを用いることもでき、かかる市販の担体充填済カラムとしては、例えば、Q−Sepharose FF、Phenyl−Sepharose HP(商品名、いずれもアマシャム ファルマシア バイオテク社製)、TSK−gel G3000SW(商品名、東ソ−社製)等が挙げられる。
尚、本発明酵素を含む画分を選抜するには、例えば、本発明における還元酵素活性の存在有無又はその程度に基づき選抜すればよい。勿論、基質となるαケト酸(具体的には例えば、2−オキソ−4−フェニル酪酸エチル)を不斉還元して対応するヒドロキシ酸を優先的に生産する能力を測定することにより選抜してもよい。
2−オキソ−4−フェニル酪酸エステルとしては、下記式(1)で示される化合物が例示される。
(式中、R1は、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル等のC1−C8アルキル基を表す。)
2−オキソ−4−フェニル酪酸エステルとしては、具体的には例えば、2−オキソ−4−フェニル酪酸メチル、2−オキソ−4−フェニル酪酸エチル、2−オキソ−4−フェニル酪酸プロピル、2−オキソ−4−フェニル酪酸オクチル等を挙げることができる。これらのエステルは、例えば、Tetrahedron(1985) 41(2) 467−72に記載される方法又はこれに準じて製造すればよい。
(R)−2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸エステルとしては、例えば、式(1)で示される化合物の2位のオキソ基が、不斉的に水酸基に還元された(R)−2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸のC1−C8アルキルエステル化合物を挙げることができる。
例えば、反応液の有機溶媒抽出操作、濃縮操作等の後処理を、必要によりカラムクロマトグラフィ−、蒸留等を組み合わせて、行うことにより精製する方法を挙げることができる。
NAD+又はNADP+を、NADH又はNADPHに変換する能力を有するタンパク質としては、例えば、グルコ−ス脱水素酵素、ギ酸脱水素酵素、アルコ−ル脱水素酵素、アルデヒド脱水素酵素、アミノ酸脱水素酵素、有機酸脱水素酵素(リンゴ酸脱水素酵素等)等を挙げることができる。
また、NAD+又はNADP+を、NADH又はNADPHに変換する能力を有するタンパク質がグルコ−ス脱水素酵素である場合には、反応系内にグルコ−ス等を共存させることにより当該タンパク質の活性が増強される場合もあり、例えば、反応液にこれらを加えてもよい。
また、当該タンパク質は、酵素そのものであってもよいし、また当該酵素を持つ微生物又は該微生物の処理物の形態で反応系内に共存していてもよい。更にまた、NAD+又はNADP+を、NADH又はNADPHに変換する能力を有するタンパク質のアミノ酸配列をコ−ドする塩基配列を有する遺伝子を含む形質転換体又はその処理物であってもよい。ここで処理物とは、前述にある「形質転換体の処理物」と同等なものを意味する。
この形質転換体において、両者遺伝子を宿主細胞へ導入する方法としては、例えば、単一である、両者遺伝子を含むベクタ−を宿主細胞に導入する方法、複製起源の異なる複数のベクタ−に両者遺伝子を別々に導入した組換ベクタ−により宿主細胞を形質転換する方法等を挙げることができる。更に、一方の遺伝子又は両者遺伝子を宿主細胞の染色体中に導入してもよい。
尚、単一である、両者遺伝子を含むベクタ−を宿主細胞に導入する方法としては、例えば、プロモ−タ−、タ−ミネ−タ−等の発現制御に関わる領域をそれぞれの両者遺伝子に連結して組換ベクタ−を構築したり、ラクト−スオペロンのような複数のシストロンを含むオペロンとして発現させるような組換ベクタ−を構築してもよい。
本発明酵素改変方法に含まれる工程は、前述の説明(例えば、本発明酵素及び本発明遺伝子の調製に関する説明)及び後述の実施例(例えば、本発明遺伝子の作製:部位特異的変異の導入)と同様な方法に準じて行なえばよい。
本発明遺伝子改変方法に含まれる工程は、前述の説明(例えば、本発明酵素及び本発明遺伝子の調製に関する説明)及び後述の実施例(例えば、本発明遺伝子の作製:部位特異的変異の導入)と同様な方法に準じて行なえばよい。
遺伝子のクロ−ニング、プラスミドの構築の方法は「Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2nd edition」(1989), Cold Spring Harbor Laboratory Press, ISBN 0−87969−309−6、「Current Protocols in Molecular Biology」(1987), John Wiley & Sons, Inc. ISBN O−471−50338−X等に記載されている方法を参考として引用できる。以下に、クロ−ニング等の工程の詳細を説明する。
(1−1)染色体DNA(A)の調製
2本の500mlフラスコに培地(水100mlにグルコ−ス2g、ポリペプトン0.5g、酵母エキス0.3g及び麦芽エキス0.3gを溶解し、2NのHClでpHを6に調整したもの)を各々100mlずつ入れ、121℃で15分間滅菌した。ここに同組成の培地中で培養(30℃、48時間、振盪培養)したヤマダジ−マ・ファリノサ(Yamadazyma farinosa)IFO193株の培養液を各々0.3mlずつ加え、30℃で72時間振盪培養した。その後、得られた培養液を遠心分離(8000rpm、10分)し、生じた沈殿を集めた。この沈殿を0.85%食塩水50mlで洗浄・回収することにより、3.64gの湿菌体を得た。
得られた湿菌体から、QIAprep Genomic−tip System (Qiagen社製)を用いて細胞内DNA(以下、染色体DNA(A)と記すこともある。)を得た。
(1)本発明ベクタ−の調製
配列番号3で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドプライマ−と配列番号4で示されるオリゴヌクレオチドプライマ−とをプライマ−に、前記染色体DNA(A)を鋳型にして下記反応液組成、反応条件でPCRを行った。(ロシュ・ダイアグノスティック社製のExpand High Fidelity PLUS PCR Systemを使用)
cDNAライブラリ−原液 1μl
dNTP(各2.5mM−mix) 4μl
センスプライマ−(50pmol/μl) 0.4μl
アンチセンスプライマ−(50pmol/μl) 0.4μl
5xbuffer(with MgCl) 10μl
Expand High Fidelity PLUS Taq polymerase 0.5μl (2.5U)
超純水 33.7μl
上記反応液組成の反応液が入った容器を、PERKIN ELMER−GeneAmp PCR System9700にセットし、94℃(2分間)に加熱した後、94℃(0.25分間)−55℃(0.5分間)−72℃(1.5分間)のサイクルを10回、次いで94℃(0.25分間)−55℃(0.5分間)−72℃(1.0分間+5秒/サイクル)のサイクルを20回行い、更に72℃で7分間保持した。
残りのPCR反応液に2種類の制限酵素(NcoI及びXbaI)を加え、約1000bpのDNA断片を2重消化した後、酵素消化されたDNA断片を精製した。
一方、ベクタ−pTrc99A(Pharmacia製)を2種類の制限酵素(NcoI及びXbaI)により2重消化した後、酵素消化されたDNA断片を精製した。
形質転換処理されたE.coli DH5αを、50μg/mlのアンピシリンを含有するLB寒天培地で培養した。形成されたコロニ−を、50μg/mlのアンピシリンを含有する滅菌LB培地(2ml)に接種し、試験管中で振盪培養した(37℃、17時間)。得られた培養菌体からQIAprep Spin Miniprep Kit (Qiagen社製)を用いてプラスミドを取り出した。取り出されたプラスミドの各々の一部をNcoIとXbaIとの2種類の制限酵素により2重消化した後、酵素消化物を電気泳動に供したところ、取り出されたプラスミドには前記約1000bpのDNA断片が挿入されていることを確認した。(以下、このプラスミドを「ベクタ−pTrcRYF」と記す。)
(2−1)酸化型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸を還元型に変換する能力を有するタンパク質のアミノ酸配列をコ−ドする塩基配列を有するポリヌクレオチドを調製するための準備
Bacillus megaterium IFO12108株を、滅菌したLB培地100ml中で培養することにより、菌体0.4gを得た。得られた菌体からQiagen Genomic Tip (Qiagen社製)を用い、それに付属のマニュアルに記載された方法に従って染色体DNA(以下、染色体DNA(B)と記す。)を精製した。
The Journal of Biological Chemistry Vol.264, No.11, 6381−6385(1989)に記載されたBacillus megaterium IWG3由来のグルコ−ス脱水素酵素のアミノ酸配列をコ−ドする塩基配列を基にして、配列番号6で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドプライマ−と配列番号7で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドプライマ−とを合成した。
配列番号6で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドプライマ−と配列番号7で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドプライマ−とをプライマ−とし、且つ、前記染色体DNA(B)を鋳型にして、以下の反応液組成、反応条件でPCRを行った。(ロシュ・ダイアグノスティック社製のExpand High Fidelity PCR Systemを使用)
染色体DNA原液 1μl
dNTP(各2.5mM−mix) 0.4μl
プライマ−(20pmol/μl) 各0.75μl
10xbuffer(with MgCl) 5μl
enz.expandHiFi (3.5x103U/ml) 0.375μl
超純水 41.725μl
上記反応液組成の反応液が入った容器を、PERKIN ELMER−GeneAmp PCR System2400にセットし、97℃(2分間)に加熱した後、97℃(0.25分間)−55℃(0.5分間)−72℃(1.5分間)のサイクルを10回、次いで97℃(0.25分間)−55℃(0.5分間)−72℃(2.5分間)のサイクルを20回、更に72℃で7分間保持した。
得られたPCR反応液とInvitrogen社製TOPOTMTA cloningキットVer.Eとを用いて、PCRにより得られた約950bpのDNA断片を、pCR2.1−TOPOベクタ−の既存「PCR Product挿入サイト」にライゲ−ションした後、得られたライゲ−ション液でE.coli DH5αを形質転換した。
形質転換処理されたE.coli DH5αを、X−gal4%水溶液30μl及び0.1M IPTG30μlが塗布された、50μg/mlのアンピシリンを含有するLB寒天培地で培養した。形成されたコロニ−のうち白いコロニ−を1個とり、このコロニ−を50μg/mlのアンピシリンを含有する滅菌LB培地(2ml)に接種し、試験管中で振盪培養した(30℃、24時間)。得られた培養菌体からQIAprep Spin Miniprep Kit (Qiagen社製)を用いてプラスミドを取り出した。取り出されたプラスミドの一部を制限酵素(EcoRI)で消化した後、酵素消化物を電気泳動に供したところ、取り出されたプラスミドには前記約950bpのDNA断片が挿入されていることを確認した。(以下、このプラスミドを「ベクタ−pSDGDH12」と記す。)
形質転換処理されたE.coli DH5αを、50μg/mlのアンピシリンを含有するLB寒天培地で培養した。形成されたコロニ−を、50μg/mlのアンピシリンを含有する滅菌LB培地(2ml)に接種し、試験管中で振盪培養した(37℃、17時間)。得られた培養菌体からQIAprep Spin Miniprep Kit (Qiagen社製)を用いてプラスミドを取り出した。取り出されたプラスミドの各々の一部をBamHIとXbaIとの2種類の制限酵素により2重消化した後、酵素消化物を電気泳動に供したところ、取り出されたプラスミドには前記約950bpのDNA断片が挿入されていることを確認した。以下、このプラスミドを「ベクタ−pTrcSDGDH12」と記す。
(3−1) 部位特異的変異導入操作
配列番号2で示される塩基配列を基にして、25番目のスレオニン、27番目のトリプトファン、42番目のヒスチジン、56番目のグリシン、115番目のバリンを、各々25番目のアミノ酸はセリンに、27番目のアミノ酸はアルギニンに、42番目のアミノ酸はロイシンに、56番目のアミノ酸はシステインに、115番目のアミノ酸はイソロイシンに変換するための変異プライマ−として、配列番号5、9、10、11、12、13、14、15、16、17に示すように、各アミノ酸に対応する各種合成オリゴヌクレオチド(変異プライマ−)を合成した。アミノ酸置換部位と対応する配列番号及び塩基配列を表1に示す。
pTrcRYFベクタ−溶液 1.7μl
dNTP mix(上記Kitに付属) 1μl
センスプライマ−(50μM) 0.4μl
アンチセンスプライマ−(50μM) 0.4μl
10xbuffer(上記Kitに付属) 5μl
PfuUltra (上記Kitに付属) 1μl
超純水 41.5μl
上記反応液組成の反応液が入った容器を、PERKIN ELMER−GeneAmp PCR System2400にセットし、95℃で1分間保温した後、95℃(50秒間)−55℃(1分間)−68℃(5分間)のサイクルを12回行った後、4℃で保存した。
(3−1)で得られた形質転換体の各々からベクタ−を抽出した後、ダイデオキシ法により変異箇所の塩基配列を決定し、設計どおりの変異が導入されていることを確認した。このようにして、変異型ベクタ−(本発明ベクタ−であるG56C)を含有する形質転換体(即ち、本発明形質転換体)及び他の変異型ベクタ−(T25S、W27R、H42L、V115I)を含有する形質転換体を取得した。
(4−1) 2重変異型ベクタ−T25SW27R(参考例)の作製
配列番号18で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと配列番号19で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドとをプライマ−に用いて、前記(1−2)で精製されたベクタ−pTrcRYFを鋳型にして、以下の反応液組成、反応条件でPCRを行った(STRATAGENE社製のQuikChange II Site−Directed Mutagenesis Kitを使用)。得られたPCR反応液をPCR反応液(B)と記す。
鋳型ベクタ−溶液 1.7μl
dNTP mix(上記Kitに付属) 1μl
センスプライマ−(50μM) 0.4μl
アンチセンスプライマ−(50μM) 0.4μl
10xbuffer(上記Kitに付属) 5μl
PfuUltra (上記Kitに付属) 1μl
超純水 41.5μl
上記反応液組成の反応液が入った容器を、PERKIN ELMER−GeneAmp PCR System2400にセットし、95℃で1分間保温した後、95℃(50秒間)−55℃(1分間)−68℃(5分間)のサイクルを12回行った後、4℃で保存した。
(4−1)で得られた形質転換体からベクタ−を抽出した後、ダイデオキシ法により変異箇所の塩基配列を決定し、設計どおりの変異が導入されていることを確認した。このようにして、2重変異型ベクタ−T25SW27R(参考例)を有する形質転換体を取得した。
配列番号12で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと配列番号13で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドとをプライマ−に用いて、前記(3−2)で精製されたベクタ−T25Sを鋳型にして、以下の反応液組成、反応条件でPCRを行った(STRATAGENE社製のQuikChange II Site−Directed Mutagenesis Kitを使用)。得られたPCR反応液をPCR反応液(C)と記す。
鋳型ベクタ−溶液 1.7μl
dNTP mix(上記Kitに付属) 1μl
センスプライマ−(50μM) 0.4μl
アンチセンスプライマ−(50μM) 0.4μl
10xbuffer(上記Kitに付属) 5μl
PfuUltra (上記Kitに付属) 1μl
超純水 41.5μl
上記反応液組成の反応液が入った容器を、PERKIN ELMER−GeneAmp PCR System2400にセットし、95℃で1分間保温した後、95℃(50秒間)−55℃(1分間)−68℃(5分間)のサイクルを12回行った後、4℃で保存した。
(4−3)で得られた形質転換体からベクタ−を抽出した後、ダイデオキシ法により変異箇所の塩基配列を決定し、設計どおりの変異が導入されていることを確認した。このようにして、2重変異型ベクタ−T25SH42L(参考例)を有する形質転換体を取得した。
鋳型ベクタ−とプライマ−との組合せを表2に示した。前記(4−3)及び(4−4)と同様な方法で、各々の2重変異型ベクタ−(本発明ベクタ−であるT25SG56C、W27RG56C、H42LG56C、G56CV115I)を有する形質転換体(即ち、本発明形質転換体)を各々取得した。
(5−1) 部位特異的変異導入操作
配列番号12で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと配列番号13で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドとをプライマ−に用いて、前記(4−2)で精製されたベクタ−T25SW27Rを鋳型にして、以下の反応液組成、反応条件でPCRを行った(STRATAGENE社製のQuikChange II Site−Directed Mutagenesis Kitを使用)。得られたPCR反応液をPCR反応液(D)と記す。
鋳型ベクタ−溶液 1.7μl
dNTP mix(上記Kitに付属) 1μl
センスプライマ−(50μM) 0.4μl
アンチセンスプライマ−(50μM) 0.4μl
10xbuffer(上記Kitに付属) 5μl
PfuUltra (上記Kitに付属) 1μl
超純水 41.5μl
上記反応液組成の反応液が入った容器を、PERKIN ELMER−GeneAmp PCR System2400にセットし、95℃で1分間保温した後、95℃(50秒間)−55℃(1分間)−68℃(5分間)のサイクルを12回行った後、4℃で保存した。
(5−1)で得られた形質転換体からベクタ−を抽出した後、ダイデオキシ法により変異箇所の塩基配列を決定し、設計どおりの変異が導入されていることを確認した。このようにして、3重変異型ベクタ−T25SW27RH42L(参考例)を有する形質転換体を取得した。
鋳型ベクタ−とプライマ−との組合せを表3に示した。前記(5−1)及び(5−2)と同様な方法で、各々の3重変異型ベクタ−(本発明ベクタ−であるT25SW27RG56C、T25SH42LG56C、T25SG56CV115I、W27RH42LG56C、W27RG56CV115I、H42LG56CV115I)を有する形質転換体(即ち、本発明形質転換体)を各々取得した。
(6−1) 部位特異的変異導入操作
配列番号14で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと配列番号15で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドとをプライマ−に用いて、前記(5−2)で精製されたベクタ−T25SW27RH42Lを鋳型にして、以下の反応液組成、反応条件でPCRを行った(STRATAGENE社製のQuikChange II Site−Directed Mutagenesis Kitを使用)。得られたPCR反応液をPCR反応液(E)と記す。
鋳型ベクタ−溶液 1.7μl
dNTP mix(上記Kitに付属) 1μl
センスプライマ−(50μM) 0.4μl
アンチセンスプライマ−(50μM) 0.4μl
10xbuffer(上記Kitに付属) 5μl
PfuUltra (上記Kitに付属) 1μl
超純水 41.5μl
上記反応液組成の反応液が入った容器を、PERKIN ELMER−GeneAmp PCR System2400にセットし、95℃で1分間保温した後、95℃(50秒間)−55℃(1分間)−68℃(5分間)のサイクルを12回行った後、4℃で保存した。
(6−1)で得られた形質転換体からベクタ−を抽出した後、ダイデオキシ法により変異箇所の塩基配列を決定し、設計どおりの変異が導入されていることを確認した。このようにして、4重変異型ベクタ−(本発明ベクタ−であるT25SW27RH42LG56C)を有する形質転換体(即ち、本発明形質転換体)を取得した(表4参照)。
鋳型ベクタ−とプライマ−との組合せを表4に示した。前記(6−1)及び(6−2)と同様な方法で、各々の4重変異型ベクタ−(本発明ベクタ−であるT25SW27RG56CV115I、T25SH42LG56CV115I、W27RH42LG56CV115I)を有する形質転換体(即ち、本発明形質転換体)を各々取得した(表4参照)。
(7−1) 部位特異的変異導入操作
配列番号16で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと配列番号17で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドとをプライマ−に用いて、前記(6−2)で精製されたベクタ−T25SW27RH42LG56Cを鋳型にして、以下の反応液組成、反応条件でPCRを行った(STRATAGENE社製のQuikChange II Site−Directed Mutagenesis Kitを使用)。得られたPCR反応液をPCR反応液(F)と記す。
dNTP mix(上記Kitに付属) 1μl
センスプライマ−(50μM) 0.4μl
アンチセンスプライマ−(50μM) 0.4μl
10xbuffer(上記Kitに付属) 5μl
PfuUltra (上記Kitに付属) 1μl
超純水 41.5μl
上記反応液組成の反応液が入った容器を、PERKIN ELMER−GeneAmp PCR System2400にセットし、95℃で1分間保温した後、95℃(50秒間)−55℃(1分間)−68℃(5分間)のサイクルを12回行った後、4℃で保存した。
(7−1)で得られた形質転換体からベクタ−を抽出した後、ダイデオキシ法により変異箇所の塩基配列を決定し、設計どおりの変異が導入されていることを確認した。このようにして、5重変異型ベクタ−(本発明ベクタ−であるT25SW27RH42LG56CV115I)を有する形質転換体(即ち、本発明形質転換体)を取得した。
配列番号3で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチド(NcoI含む)と配列番号20で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチド(BamHI含む)とをプライマ−に用いて、前記(6−3)で精製された変異型遺伝子を含むベクタ−T25SW27RG56CV115Iを鋳型にして、以下の反応液組成、反応条件でPCRを行った。(ロシュ・ダイアグノスティック社製のExpand High Fidelity PCR Systemを使用)
鋳型ベクタ−液 1μl
dNTP−mix(上記Kitに付属) 1μl
センスプライマ−(50μM) 0.4μl
アンチセンスプライマ−(50μM) 0.4μl
5xbuffer(上記Kitに付属) 10μl
enz.expandHiFi(上記Kitに付属) 0.5μl
超純水 36.7μl
上記反応液組成の反応液が入った容器を、PERKIN ELMER−GeneAmp PCR System2400にセットし、94℃(2分間)に加熱した後、94℃(10秒間)−55℃(0.5分間)−72℃(1分間)のサイクルを25回した後、72℃で7分間保持した。
形質転換処理されたE.coli DH5αを、50μg/mlのアンピシリンを含有するLB寒天培地で培養した。形成されたコロニ−を、50μg/mlのアンピシリンを含有する滅菌LB培地(2ml)に接種し、試験管中で振盪培養した(37℃、24時間)。得られた培養菌体の各々からQIAprep Spin Miniprep Kit (Qiagen社製)を用いてプラスミドを取り出した。取り出されたプラスミドの各々の一部をNcoIとBamHIとの2種類の制限酵素により2重消化した後、酵素消化物を電気泳動に供したところ、取り出されたプラスミドには前記約1000bpのDNA断片が挿入されていることを確認した。以下、このベクタ−を「ベクタ−pTrcT25SW27RG56CV115I/G」(本発明)と記す。
鋳型ベクタ−を各々、T25SH42LG56CV115I、W27RH42LG56CV115I、T25SW27RH42LG56CV115Iとし、前記(8−1)と同様な方法で、各々の変異型ベクタ−(本発明ベクタ−であるpTrcT25SH42LG56CV115I/G、pTrcW27RH42LG56CV115I/G、pTrcT25SW27RH42LG56CV115I/G)を有する形質転換体(即ち、本発明形質転換体)を取得した。
実施例3〜7で得られた16種類の本発明形質転換体を、0.1mMのIPTG及び50μg/mlのアンピシリンを含有する滅菌LB培地(2ml)に接種し、これを37℃で24時間振盪培養した。培養後、得られた培養液を遠心分離(8000×g、5分)することにより、沈殿として湿菌体を回収した。回収された湿菌体に1mlの0.5Mリン酸緩衝液(pH7.0)を加えた後、得られた混合物に含まれる菌体をガラスビ−ズを用いて破砕した。得られた破砕液を遠心分離(12000×g、10分)することにより、上清液を粗酵素液として得た。
得られた粗酵素液の還元酵素活性が略同じになるように、粗酵素液を0.5Mリン酸緩衝液(pH7.0)で希釈した後、50℃及び55℃で1時間保温した後、残存する還元酵素活性を測定した。測定された還元酵素活性の値を、4℃で保存された本発明酵素の還元酵素活性の値(対照)を100%とした相対値(還元酵素活性の残存率)を算出した。
尚、還元酵素活性の測定方法は、以下のとおりであった。基質として2−オキソ−4−フェニル酪酸エチルを用いた。具体的には、2.7mMの2−オキソ−4−フェニル酪酸エチル液を150μl、希釈した粗酵素液を10μl、0.5mMのNADPH液を40μl、を混合した。得られた混合物を30℃で保温した後、得られた反応液中で消費されたNADPH量を、当該反応液の340nmにおける吸光度を指標に定量することにより測定した。還元酵素活性は1分間に1μmolのNADPHを酸化させる酵素量を1ユニットとした。その結果を表5に示す。
実施例8で得られたベクタ−pTrcT25SW27RG56CV115I/Gを含むE.coli HB101形質転換体を、0.1mMのIPTG及び50μg/mlのアンピシリンを含有する滅菌LB培地(100ml)に接種し、これを37℃で24時間振盪培養した。培養後、得られた培養液を遠心分離(8000×g、10分)することにより、沈殿として湿菌体を回収した。回収された湿菌体約0.9gを得た。
2−オキソ−4−フェニル酪酸エチルを3.0g、前記湿菌体を0.9g、NADP+を3.0mg、グルコ−スを4.5g、100mMリン酸緩衝液(pH7.0)を30ml及び酢酸ブチルを6.0g、を混合して得られた混合物を、30℃で9時間攪拌した。尚、攪拌中は前記混合物のpHが7.0となるように2M炭酸ナトリウム水溶液を徐々に前記混合物に加えた。次いで、前記混合物に酢酸エチルを50ml添加した後、これを遠心分離することにより、有機層を得た。この有機層を、硫酸マグネシウムにて脱水した後、酢酸ブチル及び酢酸エチルを留去することにより、2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸エチルを2.5g得た。得られた2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸エチルの光学純度を測定したところ(R)体が99 %e.e.であった。
カラム:DB−1(0.53mm×30m、1.5μm)(J&W Scientific社製)
カラム温度:50℃(0分)→4℃/分→170℃(0分)→30℃/分→290℃(4分)
キャリア−ガス:ヘリウム(カラム流量:10ml/分)
検出器:FID
カラム:Chirasil−Dex−CB(0.32mm×25m、0.25μm)(アステック社製)
カラム温度:100℃(0分)→2℃/分→180℃(0分)
キャリア−ガス:ヘリウム(圧力55Kpa)
検出器:FID
スプリット比:1/50
尚、生成物の絶対立体配置は(R)−2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸エチルの標品と比較することにより決定した。
[配列表フリ−テキスト]
配列番号:4に記載される塩基配列は、野生型遺伝子を増幅するためのPCR用プライマ−
配列番号:5に記載される塩基配列は、変異型遺伝子を増幅するためのPCR用プライマ−
配列番号:6に記載される塩基配列は、補酵素再生酵素の遺伝子を増幅するためのPCR用プライマ−
配列番号:7に記載される塩基配列は、補酵素再生酵素の遺伝子を増幅するためのPCR用プライマ−
配列番号:9に記載される塩基配列は、変異型遺伝子を増幅するためのPCR用プライマ−
配列番号:10に記載される塩基配列は、変異型遺伝子を増幅するためのPCR用プライマ−
配列番号:11に記載される塩基配列は、変異型遺伝子を増幅するためのPCR用プライマ−
配列番号:12に記載される塩基配列は、変異型遺伝子を増幅するためのPCR用プライマ−
配列番号:13に記載される塩基配列は、変異型遺伝子を増幅するためのPCR用プライマ−
配列番号:14に記載される塩基配列は、変異型遺伝子を増幅するためのPCR用プライマ−
配列番号:15に記載される塩基配列は、変異型遺伝子を増幅するためのPCR用プライマ−
配列番号:16に記載される塩基配列は、変異型遺伝子を増幅するためのPCR用プライマ−
配列番号:17に記載される塩基配列は、変異型遺伝子を増幅するためのPCR用プライマ−
配列番号:18に記載される塩基配列は、変異型遺伝子を増幅するためのPCR用プライマ−
配列番号:19に記載される塩基配列は、変異型遺伝子を増幅するためのPCR用プライマ−
配列番号:20に記載される塩基配列は、変異型遺伝子を増幅するためのPCR用プライマ−
Claims (13)
- 配列番号1で示されるアミノ酸配列において、56番目のグリシンがシステインに置換されるアミノ酸変異を含む1つ以上のアミノ酸変異を有すること以外には配列番号1で示されるアミノ酸配列と同等なアミノ酸配列を有し、かつ、基質を還元する能力を有することを特徴とする酵素。
- 前記のアミノ酸変異が、115番目のバリンがイソロイシンに置換されるアミノ酸変異を含むことを特徴とする請求項1記載の酵素。
- 前記のアミノ酸変異が、27番目のトリプトファンがアルギニンに置換されるアミノ酸変異を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の酵素。
- 前記のアミノ酸変異が、42番目のヒスチジンがロイシンに置換されるアミノ酸変異を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかの請求項記載の酵素。
- 前記のアミノ酸変異が、25番目のスレオニンがセリンに置換されるアミノ酸変異を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかの請求項記載の酵素。
- 前記のアミノ酸変異が、下記のアミノ酸変異群から選ばれるアミノ酸変異であることを特徴とする請求項1記載の酵素。
<アミノ酸変異群>
1.(a)56番目のグリシンがシステインに置換されるアミノ酸変異と(b)115番目のバリンがイソロイシンに置換されるアミノ酸変異との2つのアミノ酸変異
2.(a)56番目のグリシンがシステインに置換されるアミノ酸変異と(b)27番目のトリプトファンがアルギニンに置換されるアミノ酸変異との2つのアミノ酸変異
3.(a)56番目のグリシンがシステインに置換されるアミノ酸変異と(b)42番目のヒスチジンがロイシンに置換されるアミノ酸変異との2つのアミノ酸変異
4.(a)56番目のグリシンがシステインに置換されるアミノ酸変異と(b)25番目のスレオニンがセリンに置換されるアミノ酸変異との2つのアミノ酸変異
5.(a)56番目のグリシンがシステインに置換されるアミノ酸変異と(b)115番目のバリンがイソロイシンに置換されるアミノ酸変異と(c)27番目のトリプトファンがアルギニンに置換されるアミノ酸変異との3つのアミノ酸変異
6.(a)56番目のグリシンがシステインに置換されるアミノ酸変異と(b)115番目のバリンがイソロイシンに置換されるアミノ酸変異と(c)42番目のヒスチジンがロイシンに置換されるアミノ酸変異との3つのアミノ酸変異
7.(a)56番目のグリシンがシステインに置換されるアミノ酸変異と(b)115番目のバリンがイソロイシンに置換されるアミノ酸変異と(c)25番目のスレオニンがセリンに置換されるアミノ酸変異との3つのアミノ酸変異
8.(a)56番目のグリシンがシステインに置換されるアミノ酸変異と(b)27番目のトリプトファンがアルギニンに置換されるアミノ酸変異と(c)42番目のヒスチジンがロイシンに置換されるアミノ酸変異との3つのアミノ酸変異
9.(a)56番目のグリシンがシステインに置換されるアミノ酸変異と(b)27番目のトリプトファンがアルギニンに置換されるアミノ酸変異と(c)25番目のスレオニンがセリンに置換されるアミノ酸変異との3つのアミノ酸変異
10.(a)56番目のグリシンがシステインに置換されるアミノ酸変異と(b)42番目のヒスチジンがロイシンに置換されるアミノ酸変異と(c)25番目のスレオニンがセリンに置換されるアミノ酸変異との3つのアミノ酸変異
11.(a)56番目のグリシンがシステインに置換されるアミノ酸変異と(b)115番目のバリンがイソロイシンに置換されるアミノ酸変異と(c)27番目のトリプトファンがアルギニンに置換されるアミノ酸変異と(d)42番目のヒスチジンがロイシンに置換されるアミノ酸変異との4つのアミノ酸変異
12.(a)56番目のグリシンがシステインに置換されるアミノ酸変異と(b)115番目のバリンがイソロイシンに置換されるアミノ酸変異と(c)27番目のトリプトファンがアルギニンに置換されるアミノ酸変異と(d)25番目のスレオニンがセリンに置換されるアミノ酸変異との4つのアミノ酸変異
13.(a)56番目のグリシンがシステインに置換されるアミノ酸変異と(b)115番目のバリンがイソロイシンに置換されるアミノ酸変異と(c)42番目のヒスチジンがロイシンに置換されるアミノ酸変異と(d)25番目のスレオニンがセリンに置換されるアミノ酸変異との4つのアミノ酸変異
14.(a)56番目のグリシンがシステインに置換されるアミノ酸変異と(b)27番目のトリプトファンがアルギニンに置換されるアミノ酸変異と(c)42番目のヒスチジンがロイシンに置換されるアミノ酸変異と(d)25番目のスレオニンがセリンに置換されるアミノ酸変異との4つのアミノ酸変異
15.(a)56番目のグリシンがシステインに置換されるアミノ酸変異と(b)115番目のバリンがイソロイシンに置換されるアミノ酸変異と(c)27番目のトリプトファンがアルギニンに置換されるアミノ酸変異と(d)42番目のヒスチジンがロイシンに置換されるアミノ酸変異と(e)25番目のスレオニンがセリンに置換されるアミノ酸変異との5つのアミノ酸変異 - 請求項1乃至6のいずれかの請求項記載の酵素が有するアミノ酸配列をコードする塩基配列を有することを特徴とするポリヌクレオチド。
- 請求項7記載のポリヌクレオチドを含有することを特徴とするベクター。
- 酸化型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸又は酸化型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを還元型に変換する能力を有するタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するポリヌクレオチドを更に含有することを特徴とする請求項8記載のベクター。
- 請求項7記載のポリヌクレオチド又は請求項8若しくは9記載のベクターを含有することを特徴とする形質転換体。
- 2−オキソ−4−フェニル酪酸エステルに、請求項10記載の形質転換体又はその処理物を作用させる工程を含むことを特徴とする(R)−2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸エステルの製造方法。
- 配列番号1で示されるアミノ酸配列を有する酵素の改変方法であり、配列番号1で示されるアミノ酸配列において、56番目のグリシンをシステインに置換する工程を含むことを特徴とする方法。
- 配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するポリヌクレオチドの改変方法であり、配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列において、166番目から168番目までの、グリシンをコードするコドンを、システインをコードするコドンに置換する工程を含むことを特徴とする方法。
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