JP2011187893A - 電荷輸送材料、それを用いた薄膜及び有機電子デバイス、並びにパイ電子系化合物 - Google Patents
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Abstract
Description
また、特許文献1には、発光層中に、ドーパントとして、フッ素置換されたテトラセン誘導体を含有する有機EL素子が開示されている。
この様に、従来、フッ素置換されたパイ電子系化合物については、発光特性についての研究報告はあるものの、その電荷輸送能については報告がない。
また、本発明は、電荷輸送材料として有用な新規なパイ電子系化合物を提供することを課題とする。
[1] 下記式(I)及び(II)のいずれかで表されるパイ電子系化合物の少なくとも1種を含有する電荷輸送性材料:
[5] R1が、無置換又は少なくとも1つの電子供与基で置換された、縮合していてもよいアリール基もしくはヘテロアリール基を表し;R2が、少なくとも1つの、フッ素原子又は塩素原子で置換された、縮合していてもよいアリール基もしくはヘテロアリール基を表す[1]〜[4]のいずれかの電荷輸送材料。
[6] R1が、無置換の、縮合していてもよいアリール基もしくはヘテロアリール基を表し;R2が、全ての水素原子がフッ素原子及び/又は塩素原子で置換された、縮合していてもよいアリール基もしくはヘテロアリール基を表す[1]〜[5]のいずれかの電荷輸送材料。
[7] R1及びR2がそれぞれ、無置換のフェニル基、無置換のチエニル基、パーフルオロフェニル基又はパーフルオロチエニル基である[1]〜[6]のいずれかの電荷輸送材料。
[8] R1が無置換のフェニル基又は無置換のチエニル基であり、R2がパーフルオロフェニル基又はパーフルオロチエニル基である[1]〜[7]のいずれかの電荷輸送材料。
[9] R3及びR4の少なくとも1つが、チエニル基であることを特徴とする[1]〜[7]のいずれかの電荷輸送材料。
[10] R3及びR4の少なくとも一つが、式(I)又は(II)で表される化合物の残基を1以上含む置換基である[1]〜[9]のいずれかの電荷輸送材料。
[11] 式(I)及び(II)中の全てのR0が水素原子である[1]〜[10]のいずれかの電荷輸送材料。
[12] L1及びL2の双方が単結合である[1]〜[11]のいずれかの電荷輸送材料。
[13] [1]〜[12]のいずれかの電荷輸送性材料からなる薄膜。
[14] [1]〜[12]のいずれかの電荷輸送性材料を含有する、有機電子デバイス。
[15]電界発光素子、有機電界効果型トランジスタ又は有機太陽電池である[14]の有機電子デバイス。
[19] R11及びR21がそれぞれ、無置換のフェニル基又は無置換のチエニル基であり、R12及びR22がそれぞれ、パーフルオロフェニル基又はパーフルオロチエニル基である[16]又は[17]の化合物。
[20] R3及びR4の少なくとも1つがチエニル基であることを特徴とする[16]〜[19]のいずれかの化合物。
[21] R3及びR4の少なくとも一つが、式(Ib)又は(IIb)で表される化合物の残基を1以上含む置換基である[16]〜[20]のいずれかの化合物。
[22] L1及びL2の双方が単結合である[16]〜[21]のいずれかの化合物。
また、本発明によれば、電荷輸送材料として有用な新規なパイ電子系化合物を提供することができる。
1.電荷輸送材料
本発明は、下記式(I)及び(II)のいずれかで表されるパイ電子系化合物の少なくとも1種を含有する電荷輸送性材料に関する。
その一例としては、R1が、無置換又は少なくとも1つの電子供与基で置換された、縮合していてもよいアリール基もしくはヘテロアリール基を表し;R2が、少なくとも1つのフッ素、又は塩素原子で置換された、縮合していてもよいアリール基もしくはヘテロアリール基を表す、組合せである。電子供与基の例には、炭素原子数1〜6の、アルキル基、アルコキシル基、アルキルスルファニル基、アルキルアミノ基が含まれる。
式中、m1、n1、m2及びn2のいずれもが0である、即ち、無置換であってもよい。
例えば、式(I)の化合物は、ジブロモテトラセンを出発原料として、鈴木カップリング反応を利用して、置換もしくは無置換の、アリール基又はヘテロアリール基を、パラジウム触媒を用いた炭素−水素結合活性化反応により導入することで合成することができる。
また式(II)の化合物も、9−(ヘテロ)アリール−10−ブロモアントラセンを出発原料として、上記と同様にして、置換(ヘテロ)アリール基を導入することで合成することができる。また、式(II)の化合物は、アントラキノン又はその誘導体を出発原料として合成することもできる。
本発明は、前記式(I)又は(II)で表される1種以上の化合物(多量体も含む)からなる電荷輸送材料からなる薄膜にも関する。本発明の薄膜は、電荷輸送膜又は有機半導体膜として、種々のデバイスに利用することができる。本発明の薄膜の形成方法については特に制限はない。薄膜は、蒸着法を利用して形成することができる。また、有機溶媒に対して溶解性のある化合物については、溶液を調製し、該溶液をキャスティングすることにより、又は該溶液をスピンコーティング、ディップコーティング、ブレードコーティング、ワイヤバーコーティング、スプレーコーティング等のコーティング法で塗布することにより形成することができる。また、インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、凸版印刷等の印刷法を利用することもできる。更に、ラングミュア・ブロジェット法などを利用して形成することもできる。
薄膜の厚みは、用途に応じて決定されるであろう。通常、1nm以上であり、好ましくは30nm以上である。また、一般的には10μm以下、1μm以下が好ましく、さらに200nm以下が好ましい。
本発明は、本発明の電荷輸送材料及びそれからなる薄膜の用途にも関する。本発明の電荷輸送材料及び薄膜は、種々の有機電子デバイスに利用することができる。例えば、有機電界発光素子、有機電界効果型トランジスタ、及び有機太陽電池に利用することができる。また、光検出器、光センサ、論理回路、記憶素子、キャパシタ等に利用することもできる。
また、本発明は、下記式(Ib)及び(IIb)で表されるパイ電子系化合物にも関する。本発明のパイ電子系化合物は、電荷輸送材料として有用であり、本発明の電荷輸送材料からなる薄膜は、高い移動度を示す。中でも、R11及びR21がそれぞれ、無置換の、縮合していてもよいフェニル基もしくはチエニル基を表し;R12及びR22がそれぞれ、少なくとも1つ(特に好ましくは全ての)水素原子がフッ素原子で置換された、縮合していてもよいフェニル基もしくはチエニル基である化合物は、特に高い移動度を示す。
[合成例1:5−ペンタフルオロフェニル−11−フェニルテトラセン(略称:PhF5PhTetra)及び5,11-ジフェニルテトラセン(略称:PhPhTetra)の合成例]
(1)5,11−ジブロモテトラセンの合成
1Lの三口フラスコ中のテトラセン 2.0g(8.8mmol)のクロロホルム懸濁液(450mL)に、N−ブロモスクシンイミド 3.4g(19.3mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド溶液(90mL)を滴下し,窒素気流下で85℃で、4時間撹拌した。室温に戻した後、ロータリーエバポレーターで溶媒を留去し、クロロホルムに溶かして分液漏斗を用いて純水で洗い、水層をクロロホルムで洗った後、合わせた有機層を飽和食塩水、純水で洗い、硫酸マグネシウムで乾燥した。ロータリーエバポレーターで溶媒を留去し、得られた固体をヘキサン:クロロホルム=9:1を展開溶媒としてシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製を行い、溶媒を除去したところ、目的物である5,11−ジブロモテトラセンの赤橙色固体を1.71g(4.42mmol;収率50%)得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3):δ9.25 (s, 2H, ArH), 8.48 (d, J = 9.2 Hz, 2H, ArH), 8.08 (d, J = 8.1 Hz 2H, ArH), 7.58-7.53 (m, 2H, ArH), 7.50-7.46 (m, 2H, ArH).
13C NMR (125 MHz, CDCl3):δ132.65, 130.63, 129.39, 127.84, 127.53, 127.52, 125.92.
APCI-HRMS (+): calcd. for C18H10Br2 [M+] 383.9149, found 383.9146.
100mLの二口フラスコ中,ジブロモテトラセン 1.7g(4.4mmol)、フェニルボロン酸698mg(5.7mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)73mg(79.5μmol)、ビス(2−ジフェニルホスフィノフェニル)エーテル308.1mg(0.6mmol)、2M炭酸カリウム水溶液18mL(36.0mmol)をトルエン(48mL)/エタノール(6.5mL)混合溶媒中に加え、窒素気流下95℃で4.5時間撹拌した。室温に戻した後、溶液を分液漏斗を用いて純水で洗い、水層をトルエンで洗い、合わせた有機層を飽和食塩水、純水で洗い、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去した後、得られた固体をヘキサン:クロロホルム=9:1を展開溶媒としてシリカゲルオープンカラムクロマトグラフィーにより精製を行い、溶媒を除去したところ、目的物である5−ブロモ−11-フェニルテトラセンの赤橙色固体を958.1mg(2.51mmol;収率57%)得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3):δ9.26 (s, 1H, ArH), 8.46 (d, J = 9.2 Hz, 1H, ArH), 8.30 (s, 1H, ArH), 8.12 (d, J = 8.6 Hz, 1H, ArH), 7.77 (d, J = 8.6 Hz, 1H, ArH), 7.64-7.42 (m, 10H, ArH).
13C NMRを以下に示す。
13C NMR (125 MHz, CDCl3):δ138.67, 137.64, 132.21, 131.49, 131.38, 130.06, 129.84, 129.70, 129.28, 129.02, 128.68, 128.53, 127.80, 127.40, 127.33, 126.74, 126.68, 126.64, 125.80, 125.57, 125.00, 122.45.
(2)の5−ブロモ−11−フェニルテトラセンの合成の副生成物として5,11-ジフェニルテトラセンを307mg(0.80mmol;収率18%)得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3):δ8.36 (s, 2H, ArH), 7.83 (d, J = 8.6 Hz, 2H, ArH), 7.68-7.54 (m, 13H, ArH), 7.32-7.29 (m, 2H, ArH), 7.26-7.23 (m, 1H, ArH).
13C NMR (125 MHz, CDCl3):δ139.13, 136.82, 131.50, 130.98, 129.35, 129.03, 128.96, 128.50, 127.57, 126.58, 125.93, 125.27, 124.68.
シュレンク中、5−ブロモ−11−フェニルテトラセン 382mg(1.0mmol)、酢酸パラジウム(II)44mg(0.2mmol)、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシビフェニル 156mg(0.4mmol)、炭酸カリウム487mg(3.5mmol)をペンタフルオロベンゼンの1M酢酸イソプロピル溶液4.5mL(4.5mmol)に加え、窒素気流下、80℃で43時間撹拌した。室温に戻した後、クロロホルムを溶媒として溶液をシリカゲルを通して濾過し、溶媒をロータリーエバポレーターで留去した.得られた固体をヘキサン:クロロホルム=1:1を展開溶媒としてシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製を行い溶媒を除去したところ、目的物である5−ペンタフルオロフェニル−11−フェニルテトラセンの橙色固体を366mg(0.78mmol;収率78%)得た。
1H NMR (500 MHz, CD2Cl2):δ8.54 (s, 1H, ArH), 8.22 (s, 1H, ArH), 7.92-7.89 (m, 2H, ArH), 7.69-7.62 (m, 4H, ArH), 7.55-7.53 (m, 2H, ArH), 7.50-7.49 (m, 1H ArH), 7.43-7.37 (m, 3H, ArH), 7.32-7.29 (m, 1H, ArH).
13C NMR (125 MHz, CDCl3):δ138.57, 138.01, 131.97, 131.42, 130.7.2, 130.32, 129.73, 129.61, 129.12, 128.89, 128.70, 128.56, 127.83, 127.20, 126.81, 125.66, 125.61, 124.89, 124.36, 123.21.
Anal. Calcd for C30H15F5: C, 76.59; H, 3.21. Found: C, 76.46; H, 3.61.
(1)5-ブロモ-11-チエニルテトラセンの合成
100mLの二口フラスコ中,5,11−ジブロモテトラセン 500mg(1.30mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド溶液 38mLにトリブチル(2−チエニル)すず 591mg(1.58mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0) 45mg(0.04mmol)、ヨウ化銅(I) 7mg(0.04mmol)を加え、80℃で22時間撹拌した。反応溶液にフッ化カリウム水溶液を加え、沈殿を除去し、分液漏斗を用いて水層をトルエンで洗い、合わせた有機層を飽和食塩水、水で洗った。硫酸マグネシウムで乾燥させた後、減圧濃縮した。得られた固体をクロロホルム:ヘキサン=1:9を展開溶媒に用い,シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製後、クロロホルムを移動相としたゲル浸透クロマトグラフィーによりさらに精製し、目的物である5−ブロモ−11−チエニルテトラセンを175mg(045mmol;収率34%)得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3):δ9.32 (s, 1H, ArH), 8.52 (s, 1H, ArH), 8.48 (d, J = 9.2 Hz, 1H, ArH), 8.13 (d, J = 8.6 Hz, 1H, ArH), 7.87-7.82 (m, 2H, ArH), 7.69 (d, J = 5.5 Hz, 1H, ArH), 7.55-7.52 (m, 1H, ArH), 7.49-7.45 (m, 1H, ArH), 7.41-7.37 (m, 4H, ArH).
(1)の副生成物として5,11−ジチエニルテトラセンを57mg(0.15mmol;収率11%)で得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3):δ8.59 (s, 2H, ArH), 7.90-7.85 (m, 4H, ArH), 7.71-7.69 (m, 2H, ArH), 7.40-7.38 (m, 2H, ArH), 7.36-7.34 (m, 4H, ArH), 7.31-7.29 (m, 2H, ArH).
20mLの二口フラスコ中、5−ブロモ−11−チエニルテトラセン 878mg(0.22mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド溶液1mLにテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0) 13mg(0.01mmol)、ヨウ化銅(I) 2mg(0.01mmol)を加え、80℃で50時間撹拌した。室温に戻した後、反応溶液にフッ化カリウム水溶液を加え、沈殿を除去し、分液漏斗を用いて水層をトルエンで洗い、合わせた有機層を飽和食塩水、純水で洗った。硫酸マグネシウムで乾燥させた後、溶媒を除去した。クロロホルムを溶媒としてシリカゲルを通して濾過し、溶媒を減圧留去した後、クロロホルムを移動相としたゲル浸透クロマトグラフィーにより精製し、目的物である5−チエニル−11−トリフルオロチエニルテトラセンを26mg(0.06mmol;収率25%)で得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3):δ8.65 (s, 1H, ArH), 8.58 (s, 1H, ArH), 7.97-7.88 (m, 3H, ArH), 7.84-7.81 (m, 1H, ArH), 7.72-7.69 (m, 1H, ArH), 7.44-7.35 (m, 6H, ArH).
(1)9−ブロモ−10−フェニルアントラセンの合成
30mLの二口フラスコ中、9−フェニルアントラセン 804mg(3.1mmol)を四塩化炭素13mLに溶かし、臭素500mg(3.1mmol)の四塩化炭素溶液(1.7mL)を滴下し、大気下室温、1時間撹拌した。水酸化ナトリウム水溶液で反応を停止させた後、溶液を分液漏斗を用いて純水で洗い、水層をクロロホルムで洗い、合わせた有機層を水酸化ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗った。硫酸マグネシウムで乾燥させた後、溶媒をロータリーエバポレーターで留去し、得られた固体をクロロホルムを展開溶媒としたシリカゲルクロマトグラフィーにより精製を行うことで目的物である9−ブロモ−10−フェニルアントラセンの白色固体を770mg(2.31mmol;収率74%)得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3):δ8.61 (dd, J = 0.9 Hz, 8.9 Hz, 2H, ArH), 7.65 (dd, J = 0.9 Hz, 8.9 Hz, 2H, ArH), 7.61-7.54 (m, 5H, ArH), 7.41-7.36 (m, 4H, ArH).
シュレンク中、9−ブロモ−10−フェニルアントラセン 103mg(0.3mmol)、酢酸パラジウム(II)14mg(1.1mmol)をペンタフルオロベンゼンの2.2M酢酸イソプロピル溶液1.4mL(3.1mmol)に加え、窒素気流下80℃で、46時間撹拌した。室温に戻した後、溶液を純水で洗い、水層を酢酸エチルで洗い、合わせた有機層を飽和食塩水、純水で洗い、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去した後、得られた固体をクロロホルム:ヘキサン=1:10を展開溶媒としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製を行い、溶媒を除去したところ、目的物である9−ペンタフルオロフェニル−10−フェニルアントラセンの白色固体100.6mg(0.24mmol;収率77%)得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3):δ7.74 (d, J = 8.9 Hz, 2H, ArH), 7.64-7.55 (m, 5H, ArH), 7.50-7.45 (m, 4H, ArH), 7.40-7.37 (m, 2H, ArH).
(1)2,6−ジブロモ−9−ペンタフルオロフェニル−10−フェニルアントラセン−9,10−ジオールの合成
100mLの二口フラスコ中、2,6−ジブロモアントラキノン 800mg(2.2mmol)のTHF懸濁液(35mL)にペンタフルオロマグネシウムブロミドのジエチルエーテル溶液7.0mL(0.5M、3.5mmol)を加え室温で20時間撹拌した。その後、フェニルマグネシウムブロミドのTHF溶液5.6mL(1.35M,7.4mmol)を加え、7時間撹拌した。塩化アンモニウム水溶液で反応を停止させた後、ジエチルエーテルで希釈した反応溶液を分液漏斗を用いて純水で洗い、水層をジエチルエーテルで洗い、合わせた有機層を飽和食塩水、純水で洗った。硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒をロータリーエバポレーターで除去した後、得られた固体をクロロホルムを展開溶媒としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて精製し、目的物である2,6−ジブロモ−9−ペンタフルオロフェニル−10−フェニルアントラセン−9,10−ジオールの白色固体を595mg(0.97mmol;収率44%)得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3):δ7.65 (d, J = 2.0 Hz, 1H, ArH), 7.45-7.41 (m, 5H, ArH), 7.40-7.38 (m, 3H, ArH), 7.30-7.29 (m, 2H, ArH), 3.10 (s, 1H, OH), 2.79 (s, 1H, OH).
50mLの二口フラスコ中、2,6−ジブロモ−9−ペンタフルオロフェニル−10−フェニルアントラセン−9,10−ジオール 506mg(0.83mmol)のジエチルエーテル溶液(10mL)に濃度57%のヨウ化水素水溶液17mLを加え、室温で30分間撹拌した。二亜硫酸ナトリウム水溶液で反応を停止させた後、溶液を純水で洗い、水層をジエチルエーテルで洗い、合わせた有機層を飽和食塩水および水で洗った。硫酸マグネシウムで乾燥させた後、溶媒をロータリーエバポレーターで除去した後、得られた固体をクロロホルムを展開溶媒としてシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィーを用いて精製し、目的物である2,6−ジブロモ−9−ペンタフルオロフェニル−10−フェニルアントラセンの白色固体を454mg(0.79mmol;収率95%)得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3):δ7.87 (s, 1H, ArH), 7.66-7.58 (m, 5H, ArH), 7.53-7.51 (m, 1H, ArH), 7.45-7.40 (m, 4H, ArH).
10mLの二口フラスコ中、2,6−ジブロモ−9−ペンタフルオロフェニル−10−フェニルアントラセン 116mg(0.20mmol)のジメチルホルムアミド溶液(1mL)にトリブチル(2−チエニル)すず 170mg(0.46mmol)とビストリフェニルホスフィンパラジウム(II)ジクロリド 4mg(6μmol)を加え、130℃で30分間撹拌した。反応溶液をトルエンで希釈し、純水で洗い、水層をトルエンで洗い、合わせた有機層を飽和食塩水、純水で洗った。硫酸マグネシウムで乾燥させた後、溶媒を除去し得られた固体をクロロホルムを展開溶媒としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて精製し、目的物である2,6−ジチエニル−9−ペンタフルオロフェニル−10−フェニルアントラセンを101mg(収率86%)得た。
1H NMR (500 MHz, CD2Cl2):δ7.91 (s, 1H, ArH), 7.77-7.75 (m, 2H, ArH), 7.71-7.63 (m, 5H, ArH), 7.78-7.53 (m, 3H, ArH), 7.39-7.39 (m, 1H, ArH), 7.35-7.34 (m, 1H, ArH), 7.31-7.29 (m, 2H, ArH), 7.12-7.10 (m, 1H, ArH), 7.07-7.05 (m, 1H, ArH).
20mLの二口フラスコ中、2,6−チエニル−9−ペンタフルオロフェニル−10−フェニルアントラセン 20mg(0.03mmol)のクロロホルム溶液3mLに塩化鉄(III) 25mg(0.15mmol)のクロロホルム懸濁液3mLを滴下し、室温で1時間撹拌した。反応溶液をメタノールに注ぎ、得られた沈殿を濾別した後、クロロホルムに溶かし、アンモニア水及びエチレンジアミン四酢酸水溶液で洗った。有機層を濃縮した後メタノールで再沈殿を行い,目的物であるポリ−(2,6−チエニル−9−ペンタフルオロフェニル10−フェニルアントラセン)の橙色固体を13mg(収率65%)得た。
シュレンク中、2,6−ジブロモ−9−ペンタフルオロフェニル−10−フェニルアントラセン 289mg(0.50mmol)、2,5−ビス(トリメチルスタニル)チオフェン 206mg(0.50mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0) 25mg(21.6μmol)を凍結脱気したトルエン(17mL)とジメチルホルムアミド(6mL)に溶かし、120℃で66時間撹拌した。室温に戻した後、溶液をメタノールに拡散させ沈殿を濾別し、クロロホルムに溶かしてセライトを通して濾過した。溶液を濃縮しヘキサンで再沈させ、目的物であるポリ−(2−チエニル−9−ペンタフルオロフェニル−10−フェニルアントラセン)を221mg(収率88%)得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3):δ7.93-7.90 (br, 41H), 7.77 (br, 65H), 7.69 (br, 242H), 7.55 (br, 131H), 7.34-7.28 (br, 63H), 7.18-7.16 (br, 30H), 3.21-3.19 (br, 18H).
5−ペンタフルオロフェニル−11−フェニルテトラセン(略称:PhF5PhTetra)の単結晶X線結晶構造解析を行った。パッキング構造のORTEP図(50% probability for thermal ellipsoids)を、図1に示す。図1(a)はfront viewであり、図1(b)はside viewである。
図1(a)及び(b)から、PhF5PhTetraの単結晶は、電荷輸送性ユニットであるテトラセン骨格に導入したフェニル基とペンタフルオロフェニル基の静電的相互作用により分子のパッキング構造が制御され、テトラセンユニットがパイパイスタックする構造になっていることが理解できる。この解析から、高い電荷移動度が期待される。
微結晶PhF5PhTetraと微結晶ルブレンの波長355nmにおける時間分解マイクロ波伝導度を測定した。結果を図2(a)に示す。また、測定結果から、PhF5PhTetraとルブレンの波長355nmにおける最大光伝導度を算出し、図2(b)に示した。図2(a)及び(b)に示す結果から、本発明に係る式(I)の化合物は、ルブレンと同程度の光電導度を示すことが理解できる。
図3に模式図として示した有機薄膜電解効果型トランジスタを作製し、性能を評価した。図3に示すトランジスタは、ボトムゲート・トップコンタクトの構成である。基板としては、OTS処理された、又は未処理のSiO2基板を用いた。該基板上に、5−ペンタフルオロフェニル−11−フェニルテトラセン(略称:PhF5PhTetra)又は5,11-ジフェニルテトラセン(略称:PhPhTetra)をそれぞれ、蒸着速度0.5Å/sで室温で蒸着して、薄膜をそれぞれ形成した。それぞれのサンプルについて、トランジスタ特性を測定した。なお、測定は、不活性雰囲気下(酸素濃度0.1ppm未満)で行った。結果を図4のグラフ及び下記表にまとめた。なお、図4は、PhF5PhTetraの結果を示すグラフである。
図5に模式図として示した有機薄膜太陽電池を作製し、性能を評価した。ITO電極上に、PEDOT:PSSからなる正孔注入層、MoO3からなる陽極バッファ層(10 nm)、PhF5PhTetraからなるp層(30nm)、C60からなるn層(30nm)、NBphenからなる緩衝層(7nm)、及びAl電極をこの順で積層して、有機薄膜太陽電池のサンプルを作製した。なお、焼成処理はITO/PEDOT:PSS/MoO3/PhF5PhTetra/C60(電極蒸着前)まで作製した素子で行った。性能結果を図6のグラフ及び下記表に示す。
Claims (22)
- 下記式(I)及び(II)のいずれかで表されるパイ電子系化合物の少なくとも1種を含有する電荷輸送性材料:
- R1及びR2がそれぞれ、置換又は無置換の、縮合していてもよいフェニル基もしくはチエニル基である請求項1〜3のいずれか1項に記載の電荷輸送材料。
- R1が、無置換又は少なくとも1つの電子供与基で置換された、縮合していてもよいアリール基もしくはヘテロアリール基を表し;R2が、少なくとも1つの、フッ素原子又は塩素原子で置換された、縮合していてもよいアリール基もしくはヘテロアリール基を表す請求項1〜4のいずれか1項に記載の電荷輸送材料。
- R1が、無置換の、縮合していてもよいアリール基もしくはヘテロアリール基を表し;R2が、全ての水素原子がフッ素原子及び/又は塩素原子で置換された、縮合していてもよいアリール基もしくはヘテロアリール基を表す請求項1〜5のいずれか1項に記載の電荷輸送材料。
- R1及びR2がそれぞれ、無置換のフェニル基、無置換のチエニル基、パーフルオロフェニル基又はパーフルオロチエニル基である請求項1〜6のいずれか1項に記載の電荷輸送材料。
- R1が無置換のフェニル基又は無置換のチエニル基であり、R2がパーフルオロフェニル基又はパーフルオロチエニル基である請求項1〜7のいずれか1項に記載の電荷輸送材料。
- R3及びR4の少なくとも1つが、チエニル基であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の電荷輸送材料。
- R3及びR4の少なくとも一つが、式(I)又は(II)で表される化合物の残基を1以上含む置換基である請求項1〜9のいずれか1項に記載の電荷輸送材料。
- 式(I)及び(II)中の全てのR0が水素原子である請求項1〜10のいずれか1項に記載の電荷輸送材料。
- L1及びL2の双方が単結合である請求項1〜11のいずれか1項に記載の電荷輸送材料。
- 請求項1〜12のいずれか1項に記載の電荷輸送性材料からなる薄膜。
- 請求項1〜12のいずれか1項に記載の電荷輸送性材料を含有する有機電子デバイス。
- 有機電界発光素子、有機電界効果型トランジスタ又は有機太陽電池である請求項14に記載の有機電子デバイス。
- 下記式(IIb)で表されるパイ電子系化合物:
- R11及びR21がそれぞれ、無置換の、縮合していてもよいフェニル基もしくはチエニル基を表し;R12及びR22がそれぞれ、全ての水素原子がフッ素原子及び/又は塩素原子で置換された、縮合していてもよいフェニル基もしくはチエニル基を表す請求項16又は17に記載の化合物。
- R11及びR21がそれぞれ、無置換のフェニル基又は無置換のチエニル基であり、R12及びR22がそれぞれ、パーフルオロフェニル基又はパーフルオロチエニル基である請求項16又は17に記載の化合物。
- R3及びR4の少なくとも1つがチエニル基であることを特徴とする請求項16〜19のいずれか1項に記載の化合物。
- R3及びR4の少なくとも一つが、式(Ib)又は(IIb)で表される化合物の残基を1以上含む置換基である請求項16〜20のいずれか1項に記載の化合物。
- L1及びL2の双方が単結合である請求項16〜21のいずれか1項に記載の化合物。
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