JP2011181438A - 非水電解質二次電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】巻回電極体を備えた非水電解質二次電池において、電解質中の添加剤の反応が促進され、過充電時の安定性が向上した非水電解質二次電池を提供すること。
【解決手段】本発明の非水電解質二次電池10は、巻回電極体14を備えており、非水電解質は、1,3−ジオキサンと、シクロアルキルベンゼン化合物及びベンゼン環に隣接する第四級炭素を有する化合物から選択された少なくとも1種の芳香族化合物とからなる添加剤を含有しており、正極極板11と負極極板12との第一の対向面における単位面積当たりの正極極板に対する負極極板の容量比は1.00以上1.03以下であり、第二の対向面における容量比は1.03を超え1.15以下であることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、過充電時の安全性が高い非水電解質二次電池に関し、特に、シート状の正極及び負極をセパレータを介して巻き回されてなる巻回電極体を備えた非水電解質二次電池において、電解質中の添加剤の反応が促進され、過充電時の安定性が向上した非水電解質二次電池に関する。
今日の携帯電話機、携帯型パーソナルコンピュータ、携帯型音楽プレイヤー等の携帯型電子機器の駆動電源として、更には、ハイブリッド電気自動車(HEV)や電気自動車(EV)用の電源として、高エネルギー密度を有し、高容量であるリチウムイオン二次電池に代表される非水電解質二次電池が広く利用されている。中でも、負極活物質として黒鉛粒子を用いた非水電解質二次電池は、安全性が高く、かつ、高容量であるために広く用いられている。
これらの非水電解質二次電池の正極活物質としては、リチウムイオンを可逆的に吸蔵・放出することが可能なリチウム遷移金属複合酸化物、すなわち、LiCoO、LiNiO、LiNiCo1−x(x=0.01〜0.99)、LiMnO、LiMn、LiCoMnNi(x+y+z=1)又はLiFePOなどが一種単独もしくは複数種を混合して用いられている。
これらの正極活物質のうち、特に各種電池特性が他のものに対して優れていることから、リチウムコバルト複合酸化物や異種金属元素添加リチウムコバルト複合酸化物が多く使用されている。しかしながら、コバルトは高価であると共に資源としての存在量が少ない。そのため、これらのリチウムコバルト複合酸化物や異種金属元素添加リチウムコバルト複合酸化物を非水電解質二次電池の正極活物質として使用し続けるには非水電解質二次電池の更なる高性能化が望まれている。このようなリチウムコバルト複合酸化物や異種金属元素添加リチウムコバルト複合酸化物を正極活物質として用いた非水電解質二次電池においては、電池の高容量化及び安全性の向上が必須の課題である。
このうち安全性の向上という課題を解決するものとして、下記特許文献1には、樹枝状のリチウム金属の析出を抑制するために、長尺の負極極板の負極活物質合剤塗布量を幅方向端部側で多くなるようにして中央部側で少なくなるようにし、長尺状の正極極板の正極活物質合剤塗布量を幅方向端部側で少なくなるようにして中央部側で多くなるようにした非水電解質二次電池の発明が開示されている。
また、下記特許文献2には、巻回電極体の巻芯部及び外周部における充放電時の電解液の流出入量が同様となるようにしてリチウム金属の析出を抑制する目的で、長尺状の正極極板及び負極極板ともに、単位面積当たりの正極活物質合剤塗布量ないし負極活物質合剤塗布量を長手方向に沿って連続的に変化させたものを用いた非水電解質二次電池の発明が開示されている。
特開2001−015146号公報 特開平10 − 64522号公報 特開2008−277086号公報
上記特許文献1及び2に開示されている非水電解質二次電池によれば、過充電時においても正極極板ないし負極極板上で各種添加剤等が均一な反応を起こすようにすることで、リチウム金属の樹枝状析出を抑制することができるため、一応安全性を確保することができる。しかしながら、近年のより高容量化された非水電解質二次電池では、上述特許文献1及び2に開示されている発明を適用しても、過充電状態となった場合の熱暴走の抑制が困難となっている。なお、非水電解質二次電池の熱暴走は、特に充電状態ないし過充電状態の正極活物質からは酸素が脱離し易く、その脱離した活性な酸素が非水電解液等と反応した際の反応熱によって生じるものである。そのため、非水電解質二次電池では特に過充電時の安全性の確保が要求されるようになってきている。
このような過充電時の安全性を確保する方法としては、電池に保護回路を付加する方法が多く採用されている。しかし、保護回路を付加することはコストアップになるので、保護回路の機能を簡略にしたり、保護回路の付加を省略したりするために、電池自体に安全性を確保する仕組みを持たせることが要求される。
一方、本発明者等は、上記特許文献1及び2に開示されている発明の安全性確保原理を見直し、過充電時に局部的に過充電状態となりやすい領域を作製してこの部分で各種添加剤が反応し易くすると、各種添加剤の奏する効果を早めに発揮させることができることを知見している。そして、本発明者等は、正極極板と負極極板の対向面において、単位面積当たりの正極極板に対する負極極板の容量比が他の部分よりも部分的に小さくされた領域を形成することにより、過充電時の安全性確保のための各種添加剤が迅速に反応するようにして、過充電時の安全性を高めた非水電解質二次電池を開発し、既に、特願2009−83540号(以下、「先願」という)として特許出願している。
この先願発明にかかる非水電解質二次電池は、正極極板に対する負極極板の容量比が1を超え、かつ、正極極板と負極極板の対向面において単位面積当たりの正極極板に対する負極極板の容量比が他の部分よりも1%以上部分的に小さくされた領域が、正極極板及び負極極板の対向部分の総面積の5%以上95%以下となるように形成した上で、更に非水電解質に、1,3−ジオキサンと、シクロアルキルベンゼン化合物及びベンゼン環に隣接する第四級炭素を有する化合物から選択された少なくとも1種の芳香族化合物とを含有させたものである。これにより、上記先願発明は、過充電時の安全性に優れると共に、初期容量が大きく、充放電サイクル特性が良好で、更にガスの発生が少ないために電池の厚み変化も小さくできるようになる。
上記先願発明によれば、従来に比べて過充電時の安全性に優れ、初期容量が大きく充放電サイクル特性も良好で、更にガスの発生の少ない非水電解質二次電池が得られる。しかしながら、上記先願発明においても、サイクル特性については悪化してしまう場合があることが判明した。
本発明者等は、上記先願発明の安全性確保原理を更に追究することで、特に正極極板と負極極板をセパレータを介して巻き回してなる巻回電極体を備えた非水電解質二次電池においては、
(1)正極と負極との容量比率が1以上の場合の中でも、特に1.03以下となる対向面において、電池が過充電状態となった際に極板が撓むことにより、正極極板と負極極板との間隔が広がり、過電圧状態となることで添加剤の作動電圧に達するため、過充電時の安定性を高める各種添加剤の反応が促進されること、
(2)更に、正極極板の一方の面と負極極板との対向面(「以下、第一の対向面」という)における単位面積当たりの正極容量に対する負極容量の比率(以下、「第一の対向面における容量比率」という)が、1.00以上かつ1.03以下の場合、正極極板のもう一方の面と負極極板との対向面(「以下、第二の対向面」という)における単位面積当たりの正極容量と負極容量との比率(以下、「第二の対向面における容量比率」という)を、第一の対向面における容量比率よりも高くなるように形成すると、充放電サイクル特性の悪化が防止されること、
を見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、過充電時に安全性確保のために添加された各種添加剤が迅速に反応するようにして、過充電時の安全性を高めるとともに、充放電サイクル特性の悪化が抑制された非水電解質二次電池を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の非水電解質二次電池は正極極板と負極極板とがセパレータを介して巻き回されてなる巻回電極体と、非水溶媒中に電解質塩を有する非水電解質とを備える非水電解質二次電池において、前記非水電解質は、1,3−ジオキサンと、シクロアルキルベンゼン化合物及びベンゼン環に隣接する第四級炭素を有する化合物から選択された少なくとも1種の芳香族化合物とからなる添加剤を含有しており、前記正極極板と前記負極極板との第一の対向面における、単位面積当たりの前記正極極板に対する前記負極極板の容量比は1.00以上1.03以下であり、前記正極極板と前記負極極板との第二の対向面における、単位面積当たりの前記正極極板に対する前記負極極板の容量比は1.03を超え1.15以下であることを特徴とする。
本発明の非水電解質二次電池によれば、上記の構成を備えることにより、過充電時の安全性に優れた非水電解質二次電池が得られるだけでなく、更に、先願において見られたサイクル特性の低下が防止された非水電解質二次電池が得られるという従来技術からは予測できない優れた効果を奏することができる。
本発明の非水電解質二次電池において、上述のような優れた効果を奏することができる理由は、以下の(1)及び(2)の理由によるものと考えられる。
(1)初期充電時に1,3−ジオキサンが正極側で分解されて正極表面上に安定な保護被膜が形成されるので、それによって、シクロアルキルベンゼン化合物やベンゼン環に隣接する第四級炭素を有する化合物等の添加剤の分解が抑制されるため、過充電状態となった際にこれらの化合物が充分な量で残存していること。
(2)正極極板と負極極板との第一の対向面における容量比率が、第二の対向面における容量比率と異なっていると、電池が過充電状態となった際には、極板の両面に生じる応力が異なるため、極板が撓むことになる。そうすると、この極板が撓んだ部分で正極極板と負極極板との間隔が広がり、過電圧状態となることで添加剤の作動電圧に達するため、過充電時の安定性を高める各種添加剤の反応が促進されて過充電状態の熱暴走を抑制する効果が増大すること。
従って、本発明の非水電解質二次電池では、1,3−ジオキサンの正極保護効果及びシクロアルキルベンゼン化合物やベンゼン環に隣接する第四級炭素を有する芳香族化合物の熱暴走抑制効果が相乗的に奏されるため、より過充電時の安全性が高い非水電解質二次電池が得られるようになる。
なお、正極極板に対する負極極板の容量比は1.00以上であることは必須である。この条件を満たしている限り、過充電状態となってもリチウム金属の析出が抑制されるので、短絡故障が抑制される。また、正極極板と前記負極極板との第一の対向面における容量比率を1.03以下となるようにし、第二の対向面における容量比率を1.03を超えるようにすると、過充電時に極板の両面に加わる応力の差が大きくなるので、より良好に上記効果が奏されるようになる。なお、容量比率が高い方の対向面(第二の対向面)における単位面積当たり正極極板に対する負極極板の容量比は、1.15を超えるとサイクル特性の低下が見られるため、1.15以下が好ましい。
なお、本発明で使用し得るシクロアルキルベンゼン化合物としては、シクロペンチルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、シクロヘプチルベンゼン、メチルシクロヘキシルベンゼン等が挙げられるが、中でも熱暴走抑制効果が高いシクロヘキシルベンゼンを用いることが好ましい。
また、本発明で使用し得るベンゼン環に隣接する第四級炭素を有する化合物としては、tert−アミルベンゼン、tert−ブチルベンゼン、tert−ヘキシルベンゼン等が挙げられるが、中でも熱暴走抑制効果の高いtert−アミルベンゼンを用いることが好ましい。なお、本発明の非水電解質二次電池においては、シクロアルキルベンゼン化合物とベンゼン環に隣接する第四級炭素を有する化合物との間の含有割合は任意である。
なお、本発明の非水電解質二次電池においては、非水電解質中にビニレンカーボネート(VC)化合物を含有していてもよい。VC化合物は、従来から有機溶媒の還元分解を抑制するための添加剤として慣用的に使用されているものであり、このVC化合物の添加によって最初の充電による負極へのリチウムの挿入前に負極活物質合剤層上に不動態化層とも称される負極表面被膜(SEI:Solid Electrolyte Interface)が形成され、このSEIがリチウムイオンの周囲の溶媒分子の挿入を阻止するバリアーとして機能するので、負極活物質が有機溶媒と直接反応しないようになる。
本発明で使用し得るビニレンカーボネート化合物としては、VC、メチルビニレンカーボネート、エチルビニレンカーボネート、ジメチルビニレンカーボネート、エチルメチルビニレンカーボネート、ジエチルビニレンカーボネート、プロピルビニレンカーボネート等が挙げられるが、中でもVCは、単位質量当たりの有機溶媒の還元分解抑制効果が大きいため、特に好ましい。
本発明の非水電解質二次電池で使用する正極活物質としては、上述したように、リチウムイオンを可逆的に吸蔵・放出することが可能なリチウム遷移金属複合酸化物、すなわち、LiCoO、LiNiO、LiNiCo1−x(x=0.01〜0.99)、LiMnO、LiMn、LiCoMnNi(x+y+z=1)又はLiFePOなどが一種単独もしくは複数種を混合して用いることができる。更には、リチウムコバルト複合酸化物にジルコニウムやマグネシウム等の異種金属元素を添加したものも使用し得る。
また、本発明の非水電解質二次電池で使用する非水電解質を構成する非水溶媒(有機溶媒)としては、カーボネート類、ラクトン類、エーテル類、エステル類などを使用することができ、これら溶媒の2種類以上を混合して用いることもできる。これらの中では特に環状カーボネートと鎖状カーボネートを混合して用いることが好ましい。
具体例としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、シクロペンタノン、スルホラン、3−メチルスルホラン、2,4−ジメチルスルホラン、3−メチル−1,3−オキサゾリジン−2−オン、ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルプロピルカーボネート、メチルブチルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、エチルブチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、酢酸メチル、酢酸エチル、1,4−ジオキサンなどを挙げることができる。
なお、本発明における非水電解質の溶質としては、非水電解質二次電池において一般に溶質として用いられるリチウム塩を用いることができる。このようなリチウム塩としては、LiPF、LiBF、LiCFSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiN(CFSO)(CSO)、LiC(CFSO、LiC(CSO、LiAsF、LiClO、Li10Cl10、Li12Cl12など及びそれらの混合物が例示される。これらの中でも、LiPF(ヘキサフルオロリン酸リチウム)を用いることが好ましい。前記非水溶媒に対する溶質の溶解量は、0.5〜2.0mol/Lとするのが好ましい。
また、本発明の非水電解質二次電池においては、前記1,3−ジオキサンの含有量が、前記非水電解質全体の質量に対して、0.5〜3%であり、前記シクロアルキルベンゼン化合物及びベンゼン環に隣接する第四級炭素を有する化合物から選択された少なくとも1種の芳香族化合物の含有量が、前記非水電解質全体の質量に対して、0.5〜3%であることであることが好ましい。
1,3−ジオキサン、シクロアルキルベンゼン化合物及びベンゼン環に隣接する第四級炭素を有する化合物から選択された少なくとも1種の芳香族化合物は、これらの添加量が僅かであってもそれなりの効果を奏する。しかしながら、1,3−ジオキサンの添加量の下限値は、非水電解質全体に対して0.5質量%未満であると過充電時の安全性が低下しするので、0.5質量%以上が好ましい。また、1,3−ジオキサンの添加量の上限値は、非水電解質全体に対して4質量%以上であると、初期容量が低下し、充放電サイクル後の放電容量の低下及び電池の厚み変化が大きくなるので、3質量%以下が好ましい。
また、シクロアルキルベンゼン化合物及びベンゼン環に隣接する第四級炭素を有する化合物から選択された少なくとも1種の芳香族化合物の添加量の下限値は、非水電解質全体に対して0.5質量%未満では過充電時の安全性が低下するので0.5質量%以上が好ましい。また、シクロアルキルベンゼン化合物及びベンゼン環に隣接する第四級炭素を有する化合物から選択された少なくとも1種の芳香族化合物の添加量の上限値は、非水電解質全体に対して4質量%以上であると、初期容量が低下し、充放電サイクル後の放電容量の低下及び電池の厚み変化が大きくなるので、3質量%以下が好ましい。
また、本発明の非水電解質二次電池においては、前記シクロアルキルベンゼン化合物はシクロヘキシルベンゼンであり、前記ベンゼン環に隣接する第四級炭素を有する化合物はtert−アミルベンゼンであることが好ましい。
シクロヘキシルベンゼン及びtert−アミルベンゼン共に熱暴走抑制効果が良好な化合物であるので、これらの芳香族化合物の少なくとも1種を用いれば上記効果が顕著に現れる非水電解質二次電池が得られる。
各実施例及び比較例で使用した角形非水電解質二次電池を縦方向に切断して示す斜視図である。
以下、本発明を実施するための形態を実施例及び比較例を用いて詳細に説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための非水電解質二次電池を例示するものであって、本発明をこの実施例に特定することを意図するものではなく、本発明は特許請求の範囲に示した技術思想を逸脱することなく種々の変更を行ったものにも均しく適用し得るものである。
[正極極板の作製]
各実施例及び比較例に共通する正極極板は次のようにして作製した。正極活物質としての異種元素添加コバルト酸リチウムは、出発原料としてリチウム源には炭酸リチウム(LiCO)を用い、コバルト源には、炭酸コバルト合成時に異種元素としてジルコニウム(Zr)及びマグネシウム(Mg)をコバルトに対してそれぞれ0.15mol%及び0.5mol%共沈させた後、その熱分解反応によって得られたZr、Mg添加四酸化三コバルト(Co)を用い、これらを所定量秤量して混合した後、空気雰囲気下において850℃で24時間焼成し、Zr、Mg添加コバルト酸リチウムを得た。
以上のようにして得られた正極活物質が94質量%、導電剤としての炭素粉末が3質量%、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン粉末が3質量%となるよう混合した後、N−メチル−ピロリドン(NMP)溶液中に分散させて正極活物質スラリーを調製した。次に、この正極活物質スラリーを厚さ15μmのアルミニウム製集電体の両面にドクターブレード法により均一に塗布し、次いで、乾燥機内に通してスラリー調製時に必要であったNMPを除去することで正極集電体の両面に正極活物質層を形成した。その後ロールプレス機を用いて厚みが125μmとなるように圧延して各実施例及び比較例で用いる正極極板を作製した。
[負極極板の作製]
実施例及び比較例の負極極板は次のようにして作製した。負極活物質としての黒鉛粉末が95質量%、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)が3質量%、結着剤としてのスチレンブタジエンゴム(SBR)が2質量%となるように混合して、これを水に分散させて負極活物質スラリーを調製した。次にこの負極活物質スラリーを厚さ8μmの銅製の集電体の両面にドクターブレード法により均一に塗布した。その際の負極活物質スラリーの塗布量は、充電容量比(負極充電容量/正極充電容量)が所定の値(表1及び表2参照)となるように塗布を行った。次いで、乾燥機内に通してスラリー調製時に必要であった水分を除去することで負極集電体の両面に負極活物質層を形成した。その後、ロールプレス機を用いて厚みが125μmとなるように圧延して負極極板を作製した。
[巻回電極体の作製]
上記のようにして作製された正極極板と負極極板とを、ポリエチレン製の微多孔膜からなるセパレータを介して巻回して巻回電極体を作製し、この巻回電極体を押し潰すことにより、各実施例及び比較例で使用する偏平状の巻回電極体をそれぞれ作製した。
[非水電解液の調製]
EC、MEC及びDECを体積比30:60:10の割合(1気圧、25℃)で混合した非水溶媒に、電解質塩としてのLiPFを1mol/Lとなるように溶解させ、VCを2質量%添加した後、1,3−ジオキサン(DOX)、シクロヘキシルベンゼン(CHB)、tert−アミルベンゼン(TAB)を、それぞれ所定量添加することで、各実施例及び比較例で使用する非水電解液をそれぞれ調製した。
[電池の作製]
アルミニウム製の外装缶に、上記偏平状の巻回電極体を挿入した後、外装缶の開口部を封口板で封口し、次いで封口板に設けられた注液口より上記非水電解質を注液した後、注液口を封止することで、図1に示した構成の高さ50mm、幅34mm、厚さ5.3mmの角形非水電解質二次電池を作製した。なお、得られたそれぞれの非水電解質二次電池の定格容量は1050mAhである。
なお、図1に示した角形の非水電解質二次電池10の具体的な構成は以下のとおりである。この非水電解質二次電池10は、正極極板11と負極極板12とがセパレータ13を介して巻回された偏平状の巻回電極体14を、角形の電池外装缶15の内部に収容し、封口板16によって電池外装缶15を密閉したものである。巻回電極体14は、正極極板11が最外周に位置して露出するように巻回されており、露出した最外周の正極極板11は、正極端子を兼ねる電池外装缶15の内面に直接接触し、電気的に接続されている。また、負極極板12は、封口板16の中央に形成され、絶縁体17を介して取り付けられた負極端子18に対して集電体19を介して電気的に接続されている。
そして、電池外装缶15は、正極極板11と電気的に接続されているので、負極極板12と電池外装缶15との短絡を防止するために、巻回電極体14の上端と封口板16との間に絶縁スペーサ20を挿入することにより、負極極板12と電池外装缶15とを電気的に絶縁状態にしている。この角形の非水電解質二次電池は、巻回電極体14を電池外装缶15内に挿入した後、封口板16を電池外装缶15の開口部にレーザ溶接し、その後電解液注液孔21から非水電解液を注液して、この電解液注液孔21を密閉することにより作製される。
[過充電時安全性試験]
以上のようにして作製した各非水電解質二次電池の内、実施例1〜7及び比較例1〜4に係る電池について、過充電時における安定性を評価するため、過充電時安全性試験を下記条件で行った。
すなわち、所定充電電流値として、0.6It=630mA(過充電試験1)、0.8It=840mA(過充電試験2)、1.0It=1050mA(過充電試験3)を用いた。そして、各過充電試験において、電池電圧が12.0Vとなるまでそれぞれの充電電流値で定電流充電することにより過充電状態とした。この過充電時に、発煙及び液漏れの少なくとも一方が生じたものを×、発煙及び液漏れが生じなかったものを○と評価した。この結果を表1に纏めて示した。
Figure 2011181438
[初期容量の測定]
実施例1、6〜10及び比較例1、2、5〜9に係る電池について、25℃の恒温槽中で、1It=1050mAの定電流で電池電圧が4.2Vに達するまで充電し、更に電池電圧が4.2Vに達した後は4.2Vの定電圧で電流値が(1/50)It=21mAになるまで充電した。その後、1It=1050mAの定電流で電池電圧が2.75Vになるまで放電した。これを1サイクル目の充放電とし、このときの放電容量を初期容量として測定した。その結果を、比較例1に係る電池の初期容量を100とした時の相対値として求め、表2に纏めて示した。
[充放電サイクル試験]
次に、初期容量を測定した各電池について、上記の充放電サイクルを繰り返し、500サイクル目の放電容量を測定した。その結果を、比較例1に係る電池の500サイクル目の放電容量を100とした時の相対値として求め、表2に纏めて示した。
[厚み変化率]
更に、上記充放電サイクル試験の前後における電池厚みを測定して、以下の計算式に基づいて、厚み変化率(%)として求め、結果を表2に纏めて示した。
厚み変化率(%)=
(500サイクル後の電池厚み/充放電試験前の電池厚み)×100
Figure 2011181438
以下において、表1及び2に示した結果を検討するが、以降、正極極板と負極極板の2つの対向面の内、巻回電極体とした際に負極極板が外側、正極極板が内側となる対向面を「第一の対向面」、正極極板が外側、負極極板が内側となる対向面を「第二の対向面」という。
また、表1及び2においては、負極集電体の二つの面にそれぞれ形成された負極活物質層について、比較例1を除いて活物質塗布量を異ならせることで、第一の対向面と第二の対向面とで、単位面積当たりの正極の充電容量に対する負極の充電容量の比率(以下、「容量比率」という)が異なるようにしたものである。
すなわち、容量比率について、比較例1では第一の対向面と第二の対向面とで同等であり、実施例1、2、4〜7及び比較例2においては、第一の対向面よりも第二の対向面の方が大きく、実施例3及び比較例3、4においては、第一の対向面の方が第二の対向面よりも大きくしたものとなっている(以下、容量比率が低い方の対向面を「低容量比率部」、高い方の対向面を「高容量比率部」という)。
なお、容量比率については、正極極板と負極極板の対向面を長手方向に5等分にしたそれぞれの中央付近において求め、巻回電極体とする際の巻き終わり側から「1」、「2」・・・とし、巻き始め側を「5」と採番した。
まず、比較例1の電池の測定結果から、DOX及びCHBが電解液に添加されていても、容量比率について、第一の対向面と第二の対向面との間に差がない場合は、過充電試験1は良好でも、大きい充電電流で行われる過充電試験2及び3の結果が悪いことが分かる。それに対し、実施例1の電池では、過充電試験1〜3のいずれにおいても良好な結果が得られていることから、容量比率について第一の対向面よりも第二の対向面の方を高くすることで、過充電時の安定性が向上することが分かる。
また、実施例3の電池においても、実施例1の電池と同様に、過充電試験1〜3のいずれにおいても良好な結果が得られていることから、容量比率については、第一の対向面の方を第二の対向面よりも高くしても良く、従って、低容量比率部とするのは第一の対向面と第二の対向面のどちらであっても良いことが分かる。
また、比較例1〜3の電池において、過充電試験3の結果が悪いことから、非水電解液にはDOXと、CHB及びTABの少なくとも一種との同時添加が必要であることが分かる。
そして、実施例2の電池の結果より、添加剤としてのDOXの添加量は少なくとも0.5質量%(非水電解液全体に対して、以下同じ。)以上あれば良く、実施例3〜5の結果より、添加剤としてのCHBないしTABの添加量は少なくとも0.5質量%以上あれば良く、更に、CHBに替えてTABを同量添加しても同等の効果が得られることが分かる。
また、DOXが3質量%添加された実施例8の電池においては初期容量及び充放電試験が良好であるのに対し、DOXが4質量%添加された比較例5の電池では、初期容量が低下すると共に、充放電500サイクル後での放電容量の低下と厚み変化率の上昇が見られ、充放電サイクル特性が悪化している。そのため、DOXの添加量は非水電解液全体に対して3質量%以下とすることが好ましいことが分かる。
また、CHBないしTABが3質量%添加された実施例9ないし実施例10の電池においては初期容量及び充放電試験が良好であるのに対し、CHBが4質量%添加された比較例6の電池では、充放電500サイクル後での放電容量の低下と厚み変化率の上昇が見られ、充放電サイクル特性が悪化している。そのため、CHBないしTABの添加量は非水電解液全体に対して3質量%以下とすることが好ましいことが分かる。
また、実施例2〜5の電池に対して、比較例4の電池では過充電試験3の結果が悪いことから低容量比率部の容量比率については1.03以下が好ましいことが分かる。更に、実施例6の電池においては、過充電試験1〜3、初期容量及び充放電サイクル特性いずれも良好な結果が得られているのに対し、比較例8の電池では充放電500サイクル後での放電容量の低下と厚み変化率の上昇が見られ、充放電サイクル特性が悪化している。そのため、低容量比率部の容量比率については1.00以上が必要であることが分かる。
また、実施例7の電池においては、過充電試験1〜3、初期容量及び充放電サイクル特性いずれも良好な結果が得られているのに対し、比較例9の電池では充放電500サイクル後での放電容量の低下と厚み変化率の上昇が見られ、充放電サイクル特性が悪化している。そのため、高容量比率部の容量比率については1.15以下が好ましいことが分かる。また、比較例7の電池においては、充放電500サイクル後での放電容量の低下と厚み変化率の上昇が見られ、充放電サイクル特性が悪化している。そのため、高容量比率部の容量比率は1.03を超えていることが好ましいことが分かる。
なお、上記実施形態においては、第一の対向面と第二の対向面との容量比率が異なるようにするために、正極極板へ塗布する正極活物質塗布量は両面とも同等とし、負極極板への負極活物質塗布量を一方の面ともう一方の面とで変えることで実施しているが、負極極板への負極活物質塗布量を両面で同等となるようにし、正極極板への正極活物質塗布量を一方の面ともう一方の面とで変えることでも、また、正極極板と負極極板双方の活物質塗布量を、それぞれの塗布面によって変えることでも、上記実施例と同様に第一の対向面と第二の対向面との容量比率を制御することが可能であり、当然同様の効果が得られるものと考えられる。
以上述べたように、非水電解液にDOXが添加され、更に、CHBないしTABが添加された非水電解質二次電池において、第一の対向面と第二の対向面との容量比率が異なるようにすることで、過充電時の安定性が向上し、更に、低容量比率部側の容量比率を1.00以上1.03以下とし、高容量比率部側の容量比率を1.03を超えて1.15以下とすることで、充放電特性の悪化をも防がれた非水電解質二次電池が得られることがわかる。
なお、上記各実施例及び比較例では偏平状巻回電極体を用いた角形非水電解液二次電池の例を示したが、本発明は、巻回電極体を備えていれば巻回電極体の形状に依存するものではない。そのため、本発明は、巻回電極体を用いた円筒形ないし楕円筒形の非水電解液二次電池に対しても適用可能である。
10…非水電解質二次電池 11…正極極板 12…負極極板 13…セパレータ 14…偏平状の巻回電極体 15…角形の電池外装缶 16…封口板 17…絶縁体 18…負極端子 19…集電体 20…絶縁スペーサ 21…電解液注液孔

Claims (3)

  1. 正極極板と負極極板とがセパレータを介して巻き回されてなる巻回電極体と、非水溶媒中に電解質塩を有する非水電解質とを備える非水電解質二次電池において、
    前記非水電解質は、1,3−ジオキサンと、シクロアルキルベンゼン化合物及びベンゼン環に隣接する第四級炭素を有する化合物から選択された少なくとも1種の芳香族化合物とからなる添加剤を含有しており、
    前記正極極板と前記負極極板との第一の対向面における単位面積当たりの前記正極極板に対する前記負極極板の容量比は1.00以上1.03以下であり、
    前記正極極板と前記負極極板との第二の対向面における単位面積当たりの前記正極極板に対する前記負極極板の容量比は1.03を超え1.15以下であることを特徴とする非水電解質二次電池。
  2. 前記1,3ジオキサンの含有量は、前記非水電解質全体の質量に対して、0.5〜3%であり、前記シクロアルキルベンゼン化合物及びベンゼン環に隣接する第四級炭素を有する化合物から選択された少なくとも1種の芳香族化合物の含有量は、前記非水電解質全体の質量に対して、0.5〜3%であることを特徴とする請求項1に記載の非水電解質二次電池。
  3. 前記シクロアルキルベンゼン化合物はシクロヘキシルベンゼンであり、前記ベンゼン環に隣接する第四級炭素を有する化合物はtert−アミルベンゼンであることを特徴とする請求項1又は2に記載の非水電解質二次電池。
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