JP2011174899A - 芍薬の品質鑑定方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】生薬芍薬の製造工程管理および製品品質管理のために、簡便な機械化された品質鑑定方法を提供すること。
【解決手段】本発明の生薬芍薬の品質鑑定方法は、芍薬を前処理して分析サンプルを得る工程;該分析サンプルを機器分析に供して分析結果を得る工程;該分析結果を数値データに変換して多変量解析する工程;および得られた解析結果から、品質を鑑定する工程;を含む。好適には、機器分析がUPLC/MSまたはGC/FIDであり、そして多変量解析がOSC−PLS回帰分析である。
【選択図】なし

Description

本発明は、生薬としての芍薬の品質鑑定方法に関する。より詳細には、芍薬に含まれるその代謝物の機器分析データに基づく芍薬の品質鑑定方法に関する。
芍薬は、重要な生薬の1種として多くの漢方処方用薬として用いられ、鎮痛鎮痙薬、婦人薬、冷え症用薬、かぜ薬、皮膚疾患用薬、消炎排膿薬としてみなされる処方およびその他の処方に高頻度で配合されている。例えば、当帰芍薬散、四物湯、桂枝茯苓丸、芍薬甘草湯、十全大補湯など数多くの漢方薬に処方されている。日本薬局方記載の生薬としての芍薬(Paeoniae Radix)は、シャクヤク(Paeonia lactiflora Pallas)の根であり、細根やコルク層を削り取った根を乾燥して調製され、換算した生薬の乾燥物に対してペオニフロリン2%以上含むことが規定されている(非特許文献1)。一方、中国漢方薬では、芍薬を「白芍」と「赤芍」に大別し、それぞれ異なった性味や効能を有する薬物として区別して配合しており、基原植物としてPaeonia lactiflora Pallas以外にP.veitchii Lynch.も用いられている。
実際の日本生薬市場における芍薬の品質および価格は、外観、香りおよび味についての熟練者による官能試験に基づく鑑定結果に依存しており、古くから奈良県下で栽培、育成されてきた大和芍薬は、優良品として高値で取引されている。しかし、官能試験に基づき正確な鑑定を行うには、長い経験年数がかかること、そして五感に頼る鑑定では客観性や再現性に問題を生じる場合もある。従って、五感に頼る鑑定に加えて、客観的な機器分析データによる科学的技法に基づく鑑定の裏づけが可能であれば、鑑定の信頼度はさらに向上し、市場価格の適正化にも寄与すると期待される。さらにシャクヤク根の採集から生薬芍薬までの調製加工が、その生薬芍薬の薬効成分量等の含量や品質に大きく関与してくるとの報告がある(非特許文献2、3)が、科学的技法に基づく鑑定方法は、その調製加工の適正な工程管理や製品の品質管理にも寄与できると期待される。
これまで、生薬の科学的分析データに基づく品質鑑定方法は当帰について開示がある(特許文献1、2)。しかし、芍薬については、中国において栽培・加工された芍薬の超高速液体クロマトグラフィー(UPLC)分析データに基づく化学成分のプロファイリングに関する報告(非特許文献4)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)フィンガープリンティングによるP.lactifloraとP.veitchii間の成分の相違や判別についての報告(非特許文献5)等はあるが、科学的分析データに基づく芍薬の品質鑑定方法については、全く報告がなかった。
特開2009−85834号公報 特開2009−244015号公報
第15改正日本薬局方 3589〜3591頁など 池田憲廣ら、薬学雑誌 116巻、138〜147頁(1996年) 野口衛ら、FFIジャーナル 213巻、727〜736頁(2008年) S−L.Liら、ジャーナル オブ ファーマシュウティカル アンド バイオメディカル アナリシス(J.Pharm.Biomed.Anal.)49巻、253〜266頁(2009年) S.Xuら、ジャーナル オブ クロマトグラフィー A(J.Chromatogr.A)1216巻、2163〜8頁(2009年)
上記のように、生薬芍薬の市場価格は、現在は、主として味、香り、形態を考慮して熟練者によって決定された官能試験に依存している。しかし、官能試験の技能獲得には経験年数がかかること、客観性や再現性の面で問題を生じる場合もある。さらに薬理学的活性成分を指標とした品質は、通常の官能試験と関連付けるものはなかった。このように、これまでは、科学的技法に基づく客観的な品質鑑定方法は存在しなかった。さらに、芍薬の製造工程管理および製品品質管理のためにも、簡便な科学的技法に基づく品質鑑定方法が必要とされている。
質量分析(MS)と組合わせた液体クロマトグラフィー(LC)およびガスクロマトグラフィー(GC)などの分析技法によって、種々の生薬の広範な代謝物を短時間で包括的に分析できるため、品質評価および鑑定目的に有用な技法である。そこで本発明者らは、超高速液体クロマトグラフィー(UPLC)と質量分析の組合わせ、ならびにガスクロマトグラフィーによる芍薬代謝物のフィンガープリンティングが、短時間内で非常に高精度かつ信頼性のある広範囲の代謝物情報を提供することができることに注目した。得られた情報は、PCA(主成分分析;principal component analysis)、ならびにPLS回帰分析(partial least square projection to latent structure)などの多変量解析、特に、直交シグナル補正(orthogonal signal correction:OSC)と組合わせたPLS回帰分析により、芍薬の官能試験結果と関連付けることが出来ることを見出し、さらに信頼性の高い芍薬の品質鑑定を行うことができることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は以下の発明を包含する。
(1)芍薬の品質鑑定方法であって、芍薬を前処理して分析サンプルを得る工程、該分析サンプルを機器分析に供して分析結果を得る工程、該分析結果を数値データに変換して多変量解析する工程、および得られた解析結果から品質を鑑定する工程を含むことを特徴とする芍薬の品質鑑定方法、
(2)前記多変量解析がPLS回帰分析である(1)記載の品質鑑定方法、
(3)前記PLS回帰分析が直交シグナル補正(OSC)との組合わせである(2)記載の品質鑑定方法、
(4)前記機器分析が超高速液体クロマトグラフィーと質量分析との組合わせである(1)〜(3)のいずれかに記載の品質鑑定方法、
(5)前記機器分析がガスクロマトグラフィーである(1)〜(3)のいずれかに記載の品質鑑定方法、
(6)前記前処理が、前記芍薬から親水性化合物を抽出して抽出物を得る工程を含む(1)〜(5)のいずれかに記載の品質鑑定方法、
(7)前記分析結果の中で、カテキン、アルビフロリン、ガロイルペオニフロリン、ガロイルアルビフロリン、6’−ベンゾイルペオニフロリン、ペンタガロイルグルコース、およびオキシペオニフロリンからなる群より選択される化合物に由来するピークが指標とされる(4)記載の品質鑑定方法、
(8)品質既知の複数の芍薬を前処理して個別の分析サンプルを得る工程、該個別の分析サンプルを機器分析に供して個別の分析結果を得る工程、および該個別の分析結果と該品質との関係を数値データに変換して多変量解析する工程によって得られる芍薬の品質鑑定モデル、
(9)芍薬の品質鑑定方法であって、芍薬を前処理して分析サンプルを得る工程、該分析サンプルを機器分析に供して分析結果を得る工程、該分析結果を数値データに変換して多変量解析する工程、および得られた解析結果を(8)に記載の品質鑑定モデルと照合する工程を含むことを特徴とする芍薬の品質鑑定方法、
などに関するものである。
本発明によれば、従来困難であった芍薬の総合品質を、より精度よくかつ簡便な科学的方法で鑑定することが可能である。したがって、従来の官能試験結果と薬理学的に活性な化合物の含量との関連も含めた総合的な鑑定により、適切な品質および価格の芍薬を提供することができる。
芍薬サンプルの高級品SY−03(1等級;ランク#1)および低級品SY−04(5等級;ランク#5)のUPLC/TOF−MSのトータルイオンクロマトグラフであり、ESIポジティブモードのクロマトグラフをそれぞれ(A)と(B)、ESIネガティブモードのクロマトグラフをそれぞれ(C)と(D)に示す。 1等級(ランク#1)〜6等級(ランク#6)芍薬サンプルのUPLC/TOF−MS分析データに基づくPCA解析結果のスコアプロットを示す図である。(A)はESIポジティブモードのデータの場合を、(B)はESIネガティブモードの場合を示す。 1等級(ランク#1)〜6等級(ランク#6)芍薬サンプルのUPLC/TOF−MS分析データに基づくPCA解析結果のローディングプロットを示す図である。(A)はESIポジティブモードの場合を、(B)はESIネガティブモードの場合を示す。 UPLC/TOF−MS分析データにおけるキャリブレーションセット(△で示す)およびテストセット(▲で示す)の両方の芍薬サンプルについてのOSC−PLSモデルの実測および予測の芍薬の等級(ランキング)間の関係を示す図である。縦軸が官能試験による実測ランキング、横軸が予測ランキングを示し、(A)はESIポジティブモードの場合を、(B)はESIネガティブモードの場合を示す。 芍薬サンプルの高級品SY−03(1等級;ランク#1)のGC/FID(水素炎イオン型検出器)、GC/TOF−MSおよびFast(高速)GC/FIDのクロマトグラフをそれぞれ(a)、(b)及び(c)に示す。 1等級(ランク#1)〜6等級(ランク#6)芍薬サンプルのGC/FID分析データに基づくPCA解析結果のスコアプロットを示す図である。 1等級(ランク#1)〜6等級(ランク#6)芍薬サンプルのFast GC/FID分析データに基づくPLS−DA解析結果を示す図である。 GC/FIDおよびFast GC/FID分析データにおけるキャリブレーションセット(△で示す)およびテストセット(▲で示す)の両方の芍薬サンプルについてのOSC−PLSモデルの実測および予測の芍薬の等級(ランキング)間の関係を示す図である。縦軸が官能試験による実測ランキング、横軸が予測ランキングを示し、(A)がGC/FID分析データによるOSC−PLSモデルを、(B)がFast GC/FID分析データによるOSC−PLSモデルを示す。
以下において、本発明を詳細に説明する。本発明の品質鑑定方法により鑑定することができる生薬の芍薬(Paeoniae Radix)としては、日本薬局方にて生薬芍薬の基原植物と定められているシャクヤク(Paeonia lactiflora Pallas)の根だけでなく、中国漢方薬おいて、芍薬の基原植物として用いられる近縁植物のPaeonia obovata Maxim.(ベニバナヤマシャクヤク)やPaeonia veitchii Lynch.(センセキシャク)、さらにPaeonia officinalis L.(セイヨウシャクヤク)の根も含めて品質鑑定することができる。
本発明において、芍薬は、以下で述べる機器分析に応じて適切に前処理された後、種々の機器分析に供され得る。
本発明において、機器分析とは、分析機器を用いる分析・測定手段をいい、ガスクロマトグラフィー(GC)、液体クロマトグラフィー(LC)(例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、超高速液体クロマトグラフィー(UPLC))、質量分析(MS)(例えば、飛行時間質量分析(TOF−MS))、赤外分光分析(IR)(例えば、フーリエ変換赤外分光分析(FT−IR))、近赤外分光分析(NIR)(例えば、フーリエ変換近赤外分光分析(FT−NIR))、核磁気共鳴分析(NMR)(例えば、フーリエ変換核磁気共鳴分析(FT−NMR))などが挙げられる。これらの機器分析は組み合わせてもよく、例えば、GC/MS、LC/MS(特に、HPLC/MS、UPLC/MS)などの組み合わせが挙げられる。これらの機器分析に用いられる装置は、特に限定されず、芍薬中に含まれる代謝物を測定することが可能であれば、通常用いられている装置が用いられ得る。また、測定条件は、これらの物質の測定に適切なように当業者によって適宜設定され得る。本発明においては、豊富な構造情報を提示し、分析時間が短縮されることなどの理由にて、UPLC/TOF−MS、GC/FID(水素炎イオン型検出器)、Fast(高速)GC/FIDおよびGC/TOF−MSが好適に採用される。
前処理は、芍薬中の分析対象物質を機器分析に供するに適した形態にするために、上述のように機器分析に応じて行われる。前処理としては、切断、粉砕、乾燥、抽出などの処理が挙げられる。例えば、粉砕は、芍薬のスライスやチップを乾燥後、ブレンダー、ボールミルなどの適切な器具を用いて行われ、芍薬の粉末を得る。また、抽出は、粉末化された芍薬(芍薬末)を水、有機溶媒、またはこれらの溶媒の混合液を用いて行われる。抽出に使用され得る有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、アセトン、クロロホルムなどが挙げられ、さらに抽出効率を上げるためにギ酸等の有機酸を添加してもよい。抽出操作としては、通常は、芍薬末を水および/または有機溶媒に浸漬し、超音波下または/および室温〜加熱下にて抽出操作を行う。加熱温度は、使用される溶媒に応じて適宜決定され、通常は、常圧下で溶媒の沸点付近の温度が選択される。超音波処理時間や加熱時間も適宜設定される。また、これらの単位操作を単独でまたは組合わせて適切な前処理条件を設定することができる。
例えば、機器分析としてUPLCを行う場合、好ましくは、前処理は、芍薬末から水とアルコール類の混合溶媒で抽出し、抽出液を遠心およびろ過して、分析用サンプルを得る工程を含む。UPLCは、微小なカラム粒子に高い線速度の移動相を通過させて、速い分析スピード、高い分離能、および高感度が達成される。UPLCに用いられるカラム粒子は、HPLCに用いるカラム粒子(例えば、5μmまたは3.5μm)よりも小さい直径(例えば、2.0μm以下)を有するカラム粒子であり、アフィニティーカラム、逆相カラム、およびイオン交換カラムが挙げられる。カラムとしては、例えば、ACQUITY UPLC(登録商標)BEH C18(1.7μm、2.1X150mm)などが好ましい。UPLCの条件(例えば、流速、検出器、移動相など)は、試料に応じて適宜選択される。
例えば、機器分析としてGCを行う場合、好ましくは、前処理は、芍薬からの抽出物をシリル化等の誘導体化する工程をさらに含む。シリル化は、当業者が通常用いるGC用のシリル化試薬を用いて行われ得る。あるいは、前処理として、芍薬を、例えば、粉末化後、熱分解処理のみ施したものも、分析対象試料となり得る。この場合、熱分解物を、抽出することなく直接GCに導入することができる。熱分解は、市販の熱分解装置を用いて行うことができる。従来型のGCが、基本的に長さ30m、内径0.25mmのキャピラリーカラムを使用するのに対し、Fast(高速)GCは、基本的に20mまたはそれより短い長さで、内径0.10から0.18mmのキャピラリーカラムを使用し、かつ従来型GCよりも速いキャリアーガス線速度で、急速なオープン昇温をすることにより、より短時間で十分な分離能を達成することができる。
上記の前処理が施された芍薬サンプルは、任意の機器分析に供され、分析結果が得られる。得られた分析結果は、芍薬サンプルのフィンガープリントであり得る。このフィンガープリントを数値データに変換して多変量解析が行われる。分析により得られる結果(変数)としては、保持時間、波長(または波数)、ならびにシグナル強度(またはイオン強度)、吸光度などのスペクトルデータが挙げられる。さらに、変数としては、官能検査による芍薬サンプルのランキング(等級)も挙げられる。
多変量解析としては、機器分析データの解析に、特にケモメトリクスにおいて通常用いられる解析ツールが採用される。例えば、PCA(主成分分析:principal component analysis)、HCA(階層クラスター分析:hierarchical cluster analysis)、PLS回帰分析(partial least square projection to latent structure)、判別分析(discriminate analysis:DA)などの種々の多変量解析ツールが挙げられる。さらに、PLSを用いて、関連の変量の2群間の関係;例えば、芍薬の代謝物データとその品質との間の関係が確認される。必要に応じて、スペクトルフィルタリング法、例えば、妨害成分を取り除くための直交シグナル補正(orthogonal signal correction:OSC)と組み合わせて多変量解析が行われるのが好ましい。これらの解析ツールは、ソフトウエアとして多数市販されており、任意のものが入手可能である。このような市販のツールは、一般的に、難しい数学・統計学の知識がなくても、多変量解析を行うことができるように操作マニュアルが備えられている。
多変量解析は、得られた全データではなく、品質鑑定に重要な一定の範囲のデータを選択して行ってもよい。例えば、芍薬をH−NMRで分析する場合、δ4.5〜5.1ppm間の水領域を除去したデータについて、あるいはFT−NIRで分析する場合、特定の近赤外波長領域についてPCAやPLSを行ってもよい。
本発明において好適に採用されるPLS回帰分析は、変数(例えば、波数、波長)間に相関を有するスペクトルデータからの検量線作成に有効な手法である。通常、変数間に相関があると、用いる変数の組み合わせによっては回帰精度が著しく低下するが、これを避けるためにPLSでは変数を互いに無相関な変数(潜在変数)に変換し、この潜在変数を用いて回帰を行う。すなわち、PLSとはデータの変数を直交変換し、その新たな変数を用いて(重)回帰分析を行う解析手法である。特に、予測モデルの作成には、PLS回帰について、直行シグナル補正(OSC)フィルタリング方法による予備処理を行うことが好適である。
具体的には、複数の品質(等級)既知の芍薬サンプルから代謝物を抽出してUPLC/MSにより定量解析を行う場合には、得られたUPLC/MSクロマトグラムから保持時間インデックスを独立変数、質量分析シグナル強度を従属変数としてマトリクスデータを作成する。等級既知の複数の芍薬サンプルの等級を説明変数として、既知サンプルをトレーニングセットとしてPLS法により等級予測モデルを作成できる。例えば、品質(等級)未知の芍薬サンプルから同様に機器分析して得られたデータを多変量解析し、その解析結果を予測モデルと比較・照合することによって、どの等級に位置するかがわかるため、品質(等級)を鑑定することができる。
例えば、芍薬から代謝物を抽出してUPLC/TOF−MSで分析した場合、得られる分析結果は、種々の代謝物の保持時間、マススペクトル、イオン強度などがある。この場合、特に、カテキン、アルビフロリン、ガロイルペオニフロリン、ガロイルアルビフロリン、6’−ベンゾイルペオニフロリン、ペンタガロイルグルコース、およびオキシペオニフロリンは、芍薬の品質鑑定(等級分類)に重要な役割を果たす代謝物である。
分析機器として、GC/FIDまたはFast GC/FIDを使用する場合も、UPLC/TOF−MSの場合と同様にして、芍薬の品質等級予測モデルを構築することができる。
また、上記の方法によって得られる予測モデルは、データの蓄積により、精度が上昇し得る。したがって、例えば、芍薬中の代謝物の相対量の傾向がより明確になれば、品質未知の芍薬の分析結果からフィンガープリントを得、このフィンガープリントに基づいて品質鑑定をすることも可能となる。
以下に、本発明を実施例に基づいて説明する。本発明は以下の実施例によってなんら限定されるものではなく、本発明の属する技術分野における通常の変更を加えて実施することが出来ることは言うまでもない。
試薬および標品のうち、ロイシン−エンケファリンはUltra Scientific社から、ならびに没食子酸、ペオニフロリン、アルビフロリン、ペオノールやその他の標品となる試薬は、和光純薬工業株式会社から購入したものを使用した。
実施例1(UPLC/TOF−MS分析用のサンプルの調製および分析)
本試験に用いた芍薬サンプルを表1に示す。大和芍薬、大潟芍薬、薬用芍薬は、Paeonia lactifloraの根である。一方、中国漢方薬では、芍薬の基原植物として、Paeonia lactiflora以外の近縁植物のPaeonia veitchii Lynch.などが使用されるため、中国産芍薬の基原植物は、不確かである。これらの芍薬サンプルはいずれも奈良県の生薬ディーラーである福田商店より購入した。また、芍薬の品質(等級)は、外観、芳香、および味に基づく芍薬サンプルの官能品質評価における専門の知見および長い経験を有する福田商店の熟練者によって鑑定および等級ランキングされている。芍薬の品質は、1〜6の等級にランキングされ、最高品質を1等級(ランク#1)とし、最低品質を6等級(ランク#6)と分類した。これらの特徴を表1に示す。
各種乾燥芍薬粉末10mgに、0.1%ギ酸を含む80%メタノール1000μLを加えて、室温で5分間超音波処理して抽出した後、16000×gで5分間遠心分離した。次いで、200μLの上清を、ミリポア0.2μmPTFEフィルターでろ過し、得られたろ液を分析サンプルとした。
得られた分析サンプル3μLをUPLC/TOF−MSに供した。UPLCとしてWaters ACQUITY UPLC(商標)システム(Waters社)、検出としてLCT Premier XE(商標)マススペクトロメトリー(Waters社)を用いた。クロマトグラフィー分離は、2.1×150mm,1.7μmのAcquity UPLC BEH(登録商標)C18カラムを装着し、40℃で操作した。移動相の条件としては、0.3mL/分の流速で、移動相Aとして水(0.1%(v/v)のギ酸を含む)および移動相Bとしてアセトニトリル(0.1%(v/v)のギ酸を含む)を用い、移動相Bを0%(v/v)から56%(v/v)を10分間で直線的にグラジュエント増加させ、100%(v/v)で10.1分間溶出した。MSは、質量範囲m/z100〜1000で、ポジティブモードおよびネガティブモードでエレクトロスプレーイオン化(ESI)ソースを用いた。イオン化パラメータは、キャピラリー電圧:2.0kV、コーン電圧:0.050kV、脱溶媒和ガス流量500L/時間、脱溶媒和温度:300℃、およびソース温度:120℃であった。また、ロイシンーエンケファリン(2ng/μL)をLockSpray(商標)の質量基準として利用した。
各種芍薬サンプルのUPLC/TOF−MS分析結果の例として、高級品SY−03(1等級)および低級品SY−04(5等級)のトータルイオンクロマトグラフを図1に示す。ESIポジティブモードのデータがそれぞれ(A)と(B)、ESIネガティブモードのデータがそれぞれ(C)と(D)である。これら(A)と(B)ならびに(C)と(D)のをそれぞれ比較すると、有意な差異が観測されるが、これらのサンプルのフィンガープリンティングは、同様なパターンを示し、芍薬のメジャー成分は類似していることを示した。しかし、得られたフィンガープリンティングからは、芍薬の品質(等級)ランキングを容易に判別することは出来なかった。
実施例2(芍薬サンプルのUPLC/TOF−MSのデータ解析および芍薬代謝プロファイル)
実施例1で得られたUPLC/TOF−MSによる代謝物フィンガープリティングとして、マススペクトルデータ(m/z値と強度)を含むクロマトグラフ生データ(保持時間)を、MassLynx(商標)ver4.1ソフトウエアパッケージのDataBridge法で、NetCDFファイルに変換した。変換したデータを、生データフィルタリング、ピーク検出、アラインメント、ギャップフィルタリング、および標準化について、データ処理ソフトウエアのMZmineを用いてデータの前処理を行った。
前処理したデータは、おおよそ1800m/zピークからなるが、市販のソフトウエアであるPirouette(登録商標)ver4.0(Infometrix社)を用いて、PCA解析を行った。ESIポジティブモードの場合、総計1838個のX変数を常用対数に変換し、平均化した。主成分1(PC1)および主成分3(PC3)のスコアプロットは、41.17%の変動を説明した(図2(A))。図2(A)より、芍薬の1〜4等級(高等級)と5,6等級(低等級)とは、PC1軸に沿って明確に分離した。しかし、高等級間(1〜4等級間)では区別がつかなかった。ESIネガティブモードの場合も同様の結果が得られた(図2(B))。
次にPCA解析結果をローディングプロットし、高い等級芍薬と低い等級芍薬の分離に大きく寄与している成分をローディングの値よりそれぞれピックアップすることを試みた。ESIポジティブおよびネガティブモードのPACスコアプロットに対応するローディングプロットを、それぞれ図3(A)および(B)に示す。高い等級にランクされた芍薬は、PC1軸について正の領域にグループ化されたので、高等級と低等級の分離に重要な役割をする代謝物はPC1軸について正の領域に見つけることが出来た。幾つかの代謝物は、測定されたm/z比率とKNApSAcKデータベース(http://kanaya.aist−nara.ac.jp/KNApSAcK)、文献値および標準化合物の理論値と対照し、仮に同定した代謝物を表2および3に示す。同定された多くの化合物における質量誤差は5ppm以下であった。しかし、ポジティブイオンモードからの代謝物同定は、イオン化の安定性に欠けるため難しい。一方、ネガティブイオンモードにおける仮同定代謝物を表3に示す。
表2および3に示す以外に、等級分離への寄与がそれ程大きくない代謝物として、フマル酸(m/z 115.0042 [M−H],RT=1.53min)、ピロガロール(m/z 125.0255 [M−H],RT=3.18min)、没食子酸(m/z 169.0147 [M−H],RT=3.17min)、没食子酸メチル(m/z 183.0318 [M−H],RT=4.84min)、D−グルコン酸(m/z 195.0521 [M−H],RT=1.34min)、(+)−カテキン(m/z 289.0729 [M−H],RT=4.58min)、ペオニフロリン(m/z 479.1578 [M−H],RT=5.52min)、アルビフロリン(m/z 479.1605 [M−H],RT=5.33min)、6’−ベンゾイルペオニフロリン(m/z 583.1840 [M−H],RT=8.45min)、ガロイルペオニフロリンまたはガロイルアルビフロリンまたはそれらの誘導体(m/z 632.1753 [M−H],RT=6.12,6.37,and6.54min)、3’、6’−ジ−ガロイルペオニフロリン(m/z 784.1862 [M−H],RT=6.48min)、ペンタガロイルグルコース(m/z 939.1102 [M−H], RT = 5.85 min)、オキシペオニフロリン(m/z 992.3129 [2M−H],RT=4.39min)などが同定された。
実施例3(OSCフィルタリングおよびPLS回帰による品質予測モデル)
次いで、SIMCA−P ver11(Umetrics社)ソフトウエアを用いてPLS回帰分析により品質予測モデルを作成した。即ち、得られた芍薬サンプルのUPLC/MSクロマトグラムから保持時間インデックスを独立変数、質量分析シグナル強度を従属変数としてマトリックスデータを作成し、官能試験による等級を説明変数として、等級既知サンプルをキャリブレーションセットとしてPLS法により品質予測モデルを作成した。
PLS分析において、芍薬サンプルの質量分析シグナル強度から計算された独立変数Xと官能試験による品質(等級)ランキングを応答変数Yの間の関係を観察した。先ず、OSCフィルタリング法により、XからYのモデリングに関係のないXデータ変動値を除去した。次いで品質予測モデル構築のために、1等級〜6等級の芍薬サンプルを、キャリブレーションセット(予測モデル構築用)サンプルとテストセット(予測モデルの検証用)サンプルの2つに分け、SY−23(1等級)、SY−29(2等級)およびSY−32(5等級)をテストセットとし、それ以外をキャリブレーションセットとした。OSC−PLS回帰分析を行い、キャリブレーションセットを用いた予測モデルをテストセットで検証した。ポジティブイオンモードにおいて得られた芍薬抽出物のUPLCフィンガープリンティングから構築したOSC−PLS予測モデルを図4Aに示す。得られた予測モデルは、相関係数(RY)=0.978、評価の平均2乗誤差(RMSEE)=0.227およびクロスバリデートした相関係数(Q)=0.978を示し高い精度を示した。さらにテストセットをこの予測モデルに適用したところ予測の平均2乗誤差(SMSEP)=0.347を示し、この予測モデルが優れた予測性を有することが判明した。
一方、ネガティブイオンモードのUPLCフィンガープリンティングから構築したOSC−PLS予測モデルを図4Bに示す。このモデルも、良好な回帰適合性および優れた予測性を示し、RY=0.989、RMSEE=0.194、Q=0.987およびRMSEP=0.523であった。
この予測モデル構築において寄与変数は射影における変数重要性(VIP)として説明され得る。大きなVIP値(VIP値が1以上)はモデル構築に大きな影響を及ぼすが、ESIポジティブモードによるモデル構築の場合、(+)−カテキン、アルビフロリン、ガロイルペオニフロリン、ガロイルアルビフロリン、および6’−ベンゾイルペオニフロリンが、モデル構築に大きな影響する代謝物であることが判明した。
一方、ESIネガティブモードによるモデル構築の場合も、同様の化合物、即ち、(+)―カテキン、ガロイルペオニフロリン、ガロイルアルビフロリン、ペンタガロイルグルコース、およびオキシペオニフロリンなどが大きなVIP値を示した。
ESIポジティブまたはネガティブモードにより予測モデル構築に大きな影響を示した代謝物、(+)−カテキン、アルビフロリン、ガロイルペオニフロリン、ガロイルアルビフロリン、6’−ベンゾイルペオニフロリン、ペンタガロイルグルコース、およびオキシペオニフロリンなどは、生理活性が報告されているものである。それ故、これらの化合物の予測モデルに対する寄与は、UPLCフィンガープリンティングから構築されたOSC−PLS予測モデルが芍薬の効能とある程度関係があることを示していると考えられる。
実施例4 (GC分析用サンプルの調製)
表1に示した各種乾燥芍薬粉末30mgを、Retschボールミル(20Hz、1分間)で再度粉砕し、得られた粉末に、メタノール、水およびクロロホルムの混液(2.5:1:1、v/v/v)を1mL加え、さらに内部標準のリビトール水溶液(0.6mg/mL)60μLを加え、5分間振盪した。次いで4℃にて14000×gで3分間遠心分離した後、上清(900μL)に水400μLを加え、再び遠心分離し、親水性代謝物を含む極性層を分取した。この極性層400μLを減圧濃縮後、凍結乾燥した。得られた粉末に、塩酸メトキシアミン(Sigma−Aldrich社)のピリジン溶液(20mg/mL)80μLを添加し30℃で90分間反応し、ついでN−メチル−N−(トリメチルシリル)トリフルオロアセタミド(MSTFA)(GL Science社)80μLを添加し37℃、30分間反応することにより、抽出物を誘導体化したGC/FID、GC/TOF−MSおよびFast GC/FID分析用サンプルを調製した。
実施例5 (GC/TOF−MS,GC/FID,Fast GC/FID分析)
本実施例のGC/TOF−MS装置は、Pegasusu III TOF質量分析器(LEGO)およびAgilent 7683オートサンプラー/オートインジェクターを備え、カラムとして、CP−SIL 8 CB Low Bleed/MSフューズドシリカキャピラリーカラム(30m×0.25mm id×0.25μm膜厚;Varian Inc.)を装填したAgilent 6890Nガスクロマトグラフィー(Agilent Technologies)を用いた。注入温度は230℃、キャリヤーガス(ヘリウム)の線速度は37〜42cm/秒の条件下で、実施例4で得られた誘導体化された分析用サンプル1μLを、スプリットモードでGC/TOF−MSに注入した(スプリット率:1:25、v/v)。カラム温度は、2分間80℃に保ち、次いで15℃/分で320℃まで上昇させ、同温度で10分間保った。トランスファーラインおよびイオンソース温度は、それぞれ250℃および200℃にて、85〜600m/zの質量範囲に渡って記録した。
本実施例のGC/FID装置は、カラムとして、GC/TOF−MSと同じものをもちいて、AOC−20sオートサンプラーとAOC−20iオートインジェクターを備えたGC−2010ガスクロマトグラフ(島津製作所)を用いた。注入温度およびFID温度は、それぞれ230℃および320℃で、キャリヤーガス(ヘリウム)の線速度は、45cm/秒で、実施例4で得られた誘導体化された分析用サンプル1μLを、スプリットモードでGC/FIDに注入した(スプリット率:1:25、v/v)。カラム温度は、2分間80℃に保ち、次いで15℃/分で320℃まで上昇させ、同温度で27分間保った。
Fast GC/FID分析は、上記GC−2010ガスクロマトグラフを用い、カラムとして、Rtx−5(10m×0.18mm id×0.20μm膜厚)(Restek社製)を装填し、キャリヤーガス(ヘリウム)の線速度は80cm/秒で、実施例4で得られた誘導体化された分析用サンプル1μLを、スプリットモードでGC/FIDに注入した(スプリット率:1:100、v/v)。カラム温度は100℃に保ち、次いで25℃/分で320℃まで上昇させ、同温度で5分間保った。
各種芍薬サンプルの上記GC分析結果の例として、高級品SY−03(1等級)抽出物のクロマトグラフを図5に示す。GC/FID、GC/TOF−MSおよびFast GC/FIDのクロマトグラフが、それぞれ(a)、(b)および(c)である。(a)および(b)の各ピークの同定は、GC/TOF−MSデータに基づき決定した。各ピーク番号の化合物は、以下の通りであった。1 アラニン、2 ノルバリン、3 バリン、4 安息香酸、5 リン酸、6 プロリン、7 グリシン、8 コハク酸、9 グリセリン酸、10 セリン、11 リンゴ酸、12 アスパラギン酸、13 ピログルタミン酸、14 GABA、15 トレオン酸、16 オルニチン、17 グルタミン酸、18 アスパラギン、19 グルタミン、20 クエン酸、21 キナ酸、22と23 フルクトース、24 ガラクトース、25と27 グルコース、26 3−メチルサリチル酸、28 グルシトールまたはマンニトール、29 没食子酸、30 myo−イノシトール、31 スクロース。
実施例6 (芍薬サンプルのGC/FIDおよびFast GC/FIDのデータ解析および芍薬代謝プロファイル)
実施例5で得られたGC/FIDおよびFast GC/FID分析から得られたクロマトグラフ生データを、GCSolution ver2.0(島津製作所)ソフトウエアパッケージを用いて、それぞれNetCDFファイルに変換した。変換したデータを、標準化およびベースライン補正などのためにPiroTrans ver1.34(GL Sciences社)を用いた。また保持時間変数は、LineUp(登録商標)ver2.0ソフトウエア(Infomertrix社)を用いてターゲットクロマトグラムに調整した。得られたデータは、70個のオブザベーションと2878個のX変数(保持時間におけるピーク強度比)の2次元データマトリックスであった。
上記のGC/FID分析結果の前処理したデータは、Pirouette(登録商標)ver4.0(Infometrix社)を用いて、PCA解析を行った。PCA解析において、変数を常用対数に変換し、平均化した。その結果、主成分1(PC1)および主成分2(PC2)のスコアプロットは、奈良県産芍薬が近接したグループ化されることを示した(図6)。
同様にして得られた70個のオブザベーションと3400個のX変数の2次元データマトリックスであるFast GC/FID分析結果の前処理したデータは、SIMCA−P+ver12(Umetrics社)ソフトウエアを用いて、PLS−DA解析を行った。PLS−DAのスコアプロットは、高等級(1、2、3等級;ランク#1、2、3)サンプルと低等級(4、5、6等級;ランク#1、2、3)サンプルとが、十分に分離することを示した(図7)。並び替え検定を100回実施し、このモデルは過剰なあてはめがないことが判明した。
実施例7 (OSCフィルタリングおよびPLS回帰による品質予測モデル)
実施例6で得られたGC/FIDおよびFast GC/FID分析結果の前処理したデータより、SIMCA−P+ver12(Umetrics社)ソフトウエアを用いてPLS回帰分析により品質予測モデルを作成した。即ち、実施例3と同様に、得られた芍薬サンプルのGC/FIDおよびFast GC/FIDクロマトグラムからそれぞれの保持時間インデックスを独立変数、それぞれのシグナル強度を従属変数としてマトリックスデータを作成し、官能検査による等級を説明変数として、等級既知サンプルをキャリブレーションセットとしてPLS法により品質予測モデルを作成した。
PLS分析において、芍薬サンプルのシグナル強度から計算された独立変数Xと官能検査による品質(等級)ランキングを応答変数Yの間の関係を観察した。先ず、OSCフィルタリング法により、XからYのモデリングに関係のないXデータ変動値を除去した。次いで品質予測モデル構築のために、1等級〜6等級の芍薬サンプルを、キャリブレーションセットサンプルとテストセットサンプルの2つに分け、SY−23(1等級)、SY−29(2等級)およびSY−32(5等級)をテストセットとし、それ以外をキャリブレーションセットとした。OSC−PLS回帰分析を行い、キャリブレーションセットを用いた予測モデルをテストセットで検証した。GC/FIDフィンガープリンティングから構築したOSC−PLS予測モデルを図8Aに示す。得られた予測モデルは、RY=0.968、RMSEE=0.334、Q=0.945およびSMSEP=0.416を示し、この予測モデルが優れた予測性を有することが判明した。
一方、Fast GC/FIDフィンガープリンティングから構築したOSC−PLS予測モデルを図8Bに示す。得られた予測モデルは、RY=0.961、RMSEE=0.370、Q=0.952およびSMSEP=0.191を示し、この予測モデルが優れた予測性を有することが判明した。
以上のように、質量分析を搭載した分析機器と比較して、より安価なGC/FID分析データを用いても精度の高い品質予測モデルを構築できた。
本発明によれば、従来困難であった生薬の芍薬の総合品質を、より精度よくかつ簡便な方法で鑑定することが可能である。したがって、従来の官能試験結果と薬理学的に活性な化合物の含量との関連も含めた総合的な鑑定により、適切な品質および価格の芍薬を提供することができる。

Claims (9)

  1. 芍薬の品質鑑定方法であって、芍薬を前処理して分析サンプルを得る工程、該分析サンプルを機器分析に供して分析結果を得る工程、該分析結果を数値データに変換して多変量解析する工程、および得られた解析結果から品質を鑑定する工程を含むことを特徴とする芍薬の品質鑑定方法。
  2. 前記多変量解析がPLS回帰分析である請求項1記載の品質鑑定方法。
  3. 前記PLS回帰分析が直交シグナル補正(OSC)との組合わせである請求項2記載の品質鑑定方法。
  4. 前記機器分析が超高速液体クロマトグラフィーと質量分析との組合わせである請求項1〜3のいずれか1項記載の品質鑑定方法。
  5. 前記機器分析がガスクロマトグラフィーである請求項1〜3のいずれか1項記載の品質鑑定方法。
  6. 前記前処理が、前記芍薬から親水性化合物を抽出して抽出物を得る工程を含む請求項1〜5のいずれか1項記載の品質鑑定方法。
  7. 前記分析結果の中で、カテキン、アルビフロリン、ガロイルペオニフロリン、ガロイルアルビフロリン、6’−ベンゾイルペオニフロリン、ペンタガロイルグルコース、およびオキシペオニフロリンからなる群より選択される化合物に由来するピークが指標とされる請求項4記載の品質鑑定方法。
  8. 品質既知の複数の芍薬を前処理して個別の分析サンプルを得る工程、該個別の分析サンプルを機器分析に供して個別の分析結果を得る工程、および該個別の分析結果と該品質との関係を数値データに変換して多変量解析する工程によって得られる芍薬の品質鑑定モデル。
  9. 芍薬の品質鑑定方法であって、芍薬を前処理して分析サンプルを得る工程、該分析サンプルを機器分析に供して分析結果を得る工程、該分析結果を数値データに変換して多変量解析する工程、および得られた解析結果を、請求項8記載の品質鑑定モデルと照合する工程を含むことを特徴とする芍薬の品質鑑定方法。
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