JP2011174161A - 溶射粉末の再生方法及び再生溶射粉末 - Google Patents
溶射粉末の再生方法及び再生溶射粉末 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】溶射後に回収された粉末を、密着性、耐酸化性、耐久性に優れる溶射皮膜を形成できる溶射粉末に再生する方法及び再生溶射粉末を提供する。
【解決手段】溶射後の回収粉末に界面活性剤及び水を添加して攪拌し、前記水中に前記回収粉末を分散させる分散工程と、前記水中に分散された前記回収粉末から小径の粉末を除去して、前記水中の前記回収粉末の積算粒度10%粒径を、溶射前の溶射粉末の積算粒度10%粒径以上とする分離工程と、前記分離工程後に、前記回収粉末を乾燥させる乾燥工程とを備える溶射粉末の再生方法。
【選択図】図1
【解決手段】溶射後の回収粉末に界面活性剤及び水を添加して攪拌し、前記水中に前記回収粉末を分散させる分散工程と、前記水中に分散された前記回収粉末から小径の粉末を除去して、前記水中の前記回収粉末の積算粒度10%粒径を、溶射前の溶射粉末の積算粒度10%粒径以上とする分離工程と、前記分離工程後に、前記回収粉末を乾燥させる乾燥工程とを備える溶射粉末の再生方法。
【選択図】図1
Description
本発明は、ガスタービンなどの高温部材に溶射皮膜を施工した後に回収された粉末を再生させる方法、及び、再生溶射粉末に関する。
現在、産業用ガスタービンにおいて、遮熱コーティング(Thermal Barrier Coating)は、動翼や静翼などのタービン部材の形状や冷却構造を変えずに耐熱合金基材の温度を低減できることから、必須の技術となっている。
一般に、遮熱コーティングは、耐熱合金基材上に、耐酸化性に優れたMCrAlY合金(Mは、Ni、Co、Fe、またはこれらの合金を表す)からなる金属結合層と、主としてセラミックスからなる低熱伝導性のセラミックス層とを順次積層させた2層構造となっている。セラミックス層としては、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、YbSZ(Yb2O3安定化ジルコニア)、DySZ(Dy2O3安定化ジルコニア)、ErSZ(Er2O3安定化ジルコニア)、SmYbZrO7などが適用される。
一般に、上記金属結合層及びセラミックス層は、溶射法によりタービン部材上に形成される。溶射法では、被溶射部材に対して射出される溶射粉末の70〜90%程度が、皮膜を形成せずに集塵機などで回収されている。そのため、回収粉末を溶射に再利用して、溶射粉末を効率的に利用することが望まれている。
特許文献1には、異なる成分が混合されたセラミックス粉末を、磁気特性の違いを利用して分離する方法が開示されている。
溶射後に集塵機で回収された溶射粉末をそのまま溶射粉末に用いると、未使用粉末(新材)を用いて形成された溶射皮膜よりも、密着性、耐酸化性、及び耐久性に劣る皮膜が形成されてしまう。
本発明は、溶射後に回収された粉末を、密着性、耐酸化性、耐久性に優れる溶射皮膜を形成できる溶射粉末に再生する方法及び再生溶射粉末を提供することを目的とする。
本発明は、溶射後に回収された粉末を、密着性、耐酸化性、耐久性に優れる溶射皮膜を形成できる溶射粉末に再生する方法及び再生溶射粉末を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は、溶射後の回収粉末に界面活性剤及び水を添加して攪拌し、前記水中に前記回収粉末を分散させる分散工程と、前記水中に分散された前記回収粉末から小径の粉末を除去して、前記水中の前記回収粉末の積算粒度10%粒径を、溶射前の溶射粉末の積算粒度10%粒径以上とする分離工程と、記分離工程後に、前記回収粉末を乾燥させる乾燥工程とを備える溶射粉末の再生方法を提供する。
溶射において、溶射粉末がプラズマトーチ内でフレームを通過して半溶融状態となり、射出されて耐熱合金基材上に付着して皮膜が形成される。皮膜とならなかった溶射後の粉末には、フレームを通過した際に気化した成分が再凝固して生成する微小な溶射粉末の粉末が含まれる。
回収粉末をそのまま溶射に用いると、多量の微小粉末がフレーム中で気化される。気化成分は溶射粉末表面に付着し、溶射粉末が耐熱合金基材上に堆積される。このとき、気化成分は堆積した溶射粉末表面で凝固し、ヒューム(塊状粒子)が生成する。すなわち、溶射粉末はヒュームを介して互いに結合した状態となる。このため、粉末同士の密着が弱く、剥がれ易い皮膜となり、耐酸化性、耐久性に劣る溶射皮膜となると考えられる。
本発明によれば、容易な工程により、回収粉末に含まれる微小な粉末の大部分を除去し、未溶射の新材と同等以上の積算粒度10%粒径を有する溶射粉末に再生することが可能である。換言すると、回収粉末を新材と同程度の粒度分布を有する溶射粉末に調整することが可能である。この結果、溶射粉末の利用効率が向上し、製品のコスト低減などに繋がる。また、本発明の方法により再生された溶射粉末を用いて溶射を行えば、ヒューム生成が抑制されるために、密着性、耐酸化性及び耐久性に優れる溶射皮膜を形成することができる。
回収粉末をそのまま溶射に用いると、多量の微小粉末がフレーム中で気化される。気化成分は溶射粉末表面に付着し、溶射粉末が耐熱合金基材上に堆積される。このとき、気化成分は堆積した溶射粉末表面で凝固し、ヒューム(塊状粒子)が生成する。すなわち、溶射粉末はヒュームを介して互いに結合した状態となる。このため、粉末同士の密着が弱く、剥がれ易い皮膜となり、耐酸化性、耐久性に劣る溶射皮膜となると考えられる。
本発明によれば、容易な工程により、回収粉末に含まれる微小な粉末の大部分を除去し、未溶射の新材と同等以上の積算粒度10%粒径を有する溶射粉末に再生することが可能である。換言すると、回収粉末を新材と同程度の粒度分布を有する溶射粉末に調整することが可能である。この結果、溶射粉末の利用効率が向上し、製品のコスト低減などに繋がる。また、本発明の方法により再生された溶射粉末を用いて溶射を行えば、ヒューム生成が抑制されるために、密着性、耐酸化性及び耐久性に優れる溶射皮膜を形成することができる。
上記発明において、前記界面活性剤が、分子量500以上50000以下のポリカルボン酸またはその誘導体の共重合体であることが好ましい。
上記の界面活性剤を用いることにより、溶射粉末を水中に均一に分散させることができ、所望の粒度分布を有する再生溶射粉末を得ることができる。
上記の界面活性剤を用いることにより、溶射粉末を水中に均一に分散させることができ、所望の粒度分布を有する再生溶射粉末を得ることができる。
上記発明において、前記回収粉末が合金粉末とされ、前記水に対する前記界面活性剤の割合が、0.07質量%以上3.1質量%以下とされる。
また、上記発明において、前記回収粉末がセラミック粉末とされ、前記水に対する前記界面活性剤の割合が、0.04質量%以上3.8質量%以下とされる。
界面活性剤の添加量を上記範囲とすることにより、再生溶射粉末の積算粒度10%粒径を新材の溶射粉末の積算粒度10%粒径以上に調整することができる。
また、上記発明において、前記回収粉末がセラミック粉末とされ、前記水に対する前記界面活性剤の割合が、0.04質量%以上3.8質量%以下とされる。
界面活性剤の添加量を上記範囲とすることにより、再生溶射粉末の積算粒度10%粒径を新材の溶射粉末の積算粒度10%粒径以上に調整することができる。
本発明は、溶射後に回収され、界面活性剤と水とを用いて、積算粒度10%粒径が溶射前の溶射粉末の積算粒度10%粒径以上に調整された再生溶射粉末を提供する。
上記発明において、前記積算粒度10%粒径が20μm以上の合金粉末とされる。
また、上記発明において、前記積算粒度10%粒径が30μm以上のセラミック粉末とされる。
上記発明において、前記積算粒度10%粒径が20μm以上の合金粉末とされる。
また、上記発明において、前記積算粒度10%粒径が30μm以上のセラミック粉末とされる。
本発明の再生溶射粉末は、溶射後の回収粉末中の微小な粉末の大部分が除去されたものとなる。そのため、密着性、耐酸化性、耐久性に優れる溶射皮膜とすることができる。
本発明によれば、回収された溶射粉末中の微小な粉末を除去し、新材と同程度の粒度分布を有する溶射粉末に調整することができる。微小な粉末を除去することにより、密着性、耐酸化性、耐久性に優れる溶射皮膜を形成することが可能な溶射粉末に再生される。本発明を用いれば、溶射粉末の利用効率が高まるため、製品コストを低減させることができる。
以下に、本発明に係る溶射粉末の再生方法の一実施形態を説明する。
タービン動翼などの耐熱合金基材上に金属結合層が形成され、金属結合層上にセラミックス層が形成される。
金属結合層は、MCrAlY合金(Mは、Ni、Co、Fe、またはこれらの合金)やMCrAlY合金にRe,Ruが添加された合金とされる。上記組成の合金粉末が、減圧プラズマ溶射法(LPPS)または高速フレーム溶射法(HVOF)により耐熱合金基材上に溶射されて、金属結合層が形成される。
セラミックス層はYSZ,YbSZ,DySZ,ErSZ,SmYbZrO7などとされる。上記組成のセラミックス粉末が大気圧プラズマ溶射法により金属結合層上に溶射されて、セラミックス層が形成される。
タービン動翼などの耐熱合金基材上に金属結合層が形成され、金属結合層上にセラミックス層が形成される。
金属結合層は、MCrAlY合金(Mは、Ni、Co、Fe、またはこれらの合金)やMCrAlY合金にRe,Ruが添加された合金とされる。上記組成の合金粉末が、減圧プラズマ溶射法(LPPS)または高速フレーム溶射法(HVOF)により耐熱合金基材上に溶射されて、金属結合層が形成される。
セラミックス層はYSZ,YbSZ,DySZ,ErSZ,SmYbZrO7などとされる。上記組成のセラミックス粉末が大気圧プラズマ溶射法により金属結合層上に溶射されて、セラミックス層が形成される。
溶射ガンから射出され金属結合層及びセラミックス層を形成しなかった溶射粉末は、集塵機などで回収される。回収された粉末は、以下の工程により再生される。
(分散工程)
回収された回収粉末は、水及び界面活性剤と混合・攪拌される。これにより、水中に回収粉末が分散されたスラリーとされる。本実施形態で使用される水の純度は特に限定されず、水道水などでも構わない。水と回収粉末との混合比率は、例えば質量比で1:1とされる。
(分散工程)
回収された回収粉末は、水及び界面活性剤と混合・攪拌される。これにより、水中に回収粉末が分散されたスラリーとされる。本実施形態で使用される水の純度は特に限定されず、水道水などでも構わない。水と回収粉末との混合比率は、例えば質量比で1:1とされる。
本実施形態で使用される界面活性剤は、末端にカルボニル基を有するポリカルボン酸またはその誘導体の共重合体であることが好ましい。上記界面活性剤の分子量は、500以上50000以下、好ましくは10000以上20000以下とされる。分子量が500未満の場合は、分散剤としての効果に乏しい。分子量が5000を超える場合は、水への溶解度が低下するとともに、水中での回収粉末の均一性が悪化する。
回収粉末が合金粉末の場合、水に対する上記界面活性剤の添加量は、0.07質量%から3.1質量%の範囲内とされる。
回収粉末がセラミック粉末の場合、水に対する上記界面活性剤の添加量は、0.04質量%から3.8質量%の範囲内とされる。
回収粉末がセラミック粉末の場合、水に対する上記界面活性剤の添加量は、0.04質量%から3.8質量%の範囲内とされる。
(分離工程)
回収粉末が分散されたスラリーから、粒径の小さい粉末が分離・除去される。小径の粉末は、溶射においてフレームを通過する際に気化し、再凝固した粉末を含むと考えられる。具体的には、MCrAlY合金の場合は粒径20μm程度より小さい粉末、セラミック粉末の場合は粒径30μm程度より小さい粉末である。
分離方法としては、粉末の沈降速度の差を利用する方法と、液体サイクロンを用いる方法などが挙げられる。
回収粉末が分散されたスラリーから、粒径の小さい粉末が分離・除去される。小径の粉末は、溶射においてフレームを通過する際に気化し、再凝固した粉末を含むと考えられる。具体的には、MCrAlY合金の場合は粒径20μm程度より小さい粉末、セラミック粉末の場合は粒径30μm程度より小さい粉末である。
分離方法としては、粉末の沈降速度の差を利用する方法と、液体サイクロンを用いる方法などが挙げられる。
粒子の流体中での沈降速度は、式(1)で表されるように、粒子径が大きくなるほど速くなる。
v = D2(ρp−ρf)g/(18η) ・・・(1)
ここで、
v:粒子の沈降速度
D:粒子径
ρp:粒子の密度
ρf:流体の密度
g:重力加速度
η:流体の粘度
攪拌後のスラリーを所定時間静置させた後、上澄み液が除去される。こうすることで、小径の粉末が除去される。静置時間は、分離すべき小径粉末の大きさ、溶剤の密度などを考慮して、適宜決定される。スラリーの攪拌から上澄み液の除去までの工程は、複数回繰り返しても良い。これにより、小径粉末の除去率を増大させることができる。
v = D2(ρp−ρf)g/(18η) ・・・(1)
ここで、
v:粒子の沈降速度
D:粒子径
ρp:粒子の密度
ρf:流体の密度
g:重力加速度
η:流体の粘度
攪拌後のスラリーを所定時間静置させた後、上澄み液が除去される。こうすることで、小径の粉末が除去される。静置時間は、分離すべき小径粉末の大きさ、溶剤の密度などを考慮して、適宜決定される。スラリーの攪拌から上澄み液の除去までの工程は、複数回繰り返しても良い。これにより、小径粉末の除去率を増大させることができる。
液体サイクロンは、先細のテーパー部を有する円筒を有する。円筒の上部から円周方向に、攪拌後のスラリーが圧入されると、遠心力により大径の粉末は円筒の周壁部に向かい、小径粉末は中心に向かう。大径の粉末は、周壁部においてテーパー部に沿って発生している下降流により円筒底部に搬送され、円筒から排出される。一方、小径の粉末は、中心部に発生している上昇流により円筒上部に搬送され、円筒上部から排出される。
液体サイクロンを用いた分離では、液体の供給圧力、流入量などのより、所望の粒径を有する粉末を選別可能である。
液体サイクロンを用いた分離では、液体の供給圧力、流入量などのより、所望の粒径を有する粉末を選別可能である。
(乾燥工程)
分離工程後のスラリーが乾燥され、再生溶射粉末が得られる。再生溶射粉末が凝集している場合は、解砕機等を用いて解砕される。乾燥後の再生溶射粉末は、ふるい(例えば150μmメッシュ)により分級され、異物が除去されても良い。
分離工程後のスラリーが乾燥され、再生溶射粉末が得られる。再生溶射粉末が凝集している場合は、解砕機等を用いて解砕される。乾燥後の再生溶射粉末は、ふるい(例えば150μmメッシュ)により分級され、異物が除去されても良い。
上述の分離工程により、スラリー中に含まれる回収粉末は、積算粒度10%粒径が溶射前の溶射粉末の10%粒径以上となるように調整される。一般に用いられる新材の溶射粉末の積算粒度10%粒径は、合金粉末の場合20μm、セラミック粉末の場合30μmである。従って、再生溶射粉末の積算粒度10%粒径は、合金粉末で20μm以上、セラミック粉末で30μm以上に調整される。
CoNiCrAlY粉末(Ni:32質量%、Cr:21質量%、Al:8質量%、Y:0.5質量%、Co:残部)を低圧プラズマ溶射法により、チャンバ圧力:5.5×103〜6.5×103Pa、溶射距離:270〜280mm、Arガス流量:40〜50l/min、H2ガス流量:8〜10l/min、電流:670〜700Aの条件により溶射し、皮膜にならなかったCoNiCrAlY粉末を集塵機で回収した。
セラミック粉末(8wt%Y2O3−ZrO2)を大気圧プラズマ溶射により、溶射距離:150mm、粉末供給量:60g/min、Arガス流量:35l/min、H2ガス量:7.4l/min、電流:600Aの条件により溶射し、皮膜にならなかったセラミック粉末を集塵機で回収した。
回収されたCoNiCrAlY粉末及びセラミック粉末を容器(50Lポット)に各10kg入れ、水10kg、界面活性剤(花王(株)社製、ポイズ520)、玉石(20mmYSZボール)4kgを添加した。界面活性剤の添加量は、表1に示すように、0質量%〜20質量%の間で変化させた。
添加後、60rpm、24時間の条件で混合し、スラリーを作製した。
添加後、60rpm、24時間の条件で混合し、スラリーを作製した。
攪拌後、1分静置させた後、上澄み液を除去した。
上澄み液除去後、120℃、24時間の条件でスラリーを乾燥した。乾燥後、固化粉を解砕した。解砕した再生溶射粉末をふるい(150μmメッシュ)を用いて分級するとともに、異物を除去した。
上澄み液除去後、120℃、24時間の条件でスラリーを乾燥した。乾燥後、固化粉を解砕した。解砕した再生溶射粉末をふるい(150μmメッシュ)を用いて分級するとともに、異物を除去した。
得られた再生溶射粉末の粒度分布を、レーザ散乱回折式粒度分布測定装置(シーラス社製)を用いて測定した。各再生溶射粉末、新材(未使用の溶射粉末)、及び回収粉末の積算粒度10%粒径を、表1示す。図1に、界面活性剤添加量と各再生溶射粉末の積算粒度10%粒径との関係を表すグラフを示す。
CoNiCrAlY粉末の場合、図1において積算粒度10%粒径20μmとグラフとの交点となる界面活性剤添加量は、0.07質量%及び3.1質量%である。すなわち、界面活性剤の添加量が0.07質量%以上3.1質量%以下のときに、再生CoNiCrAlY粉末の積算粒度10%粒径が、新材の積算粒度10%粒径(20μm)以上となる。
セラミック粉末の場合、図1において積算粒度10%粒径30μmとグラフとの交点となる界面活性剤添加量は、0.04質量%及び3.8質量%である。すなわち、界面活性剤の添加量が0.04質量%以上3.8質量%以下のときに、再生セラミック粉末の積算粒度10%粒径が、新材の積算粒度10%粒径(30μm)以上となる。
セラミック粉末の場合、図1において積算粒度10%粒径30μmとグラフとの交点となる界面活性剤添加量は、0.04質量%及び3.8質量%である。すなわち、界面活性剤の添加量が0.04質量%以上3.8質量%以下のときに、再生セラミック粉末の積算粒度10%粒径が、新材の積算粒度10%粒径(30μm)以上となる。
図2は、CoNiCrAlY粉末新材のSEM写真である。図3は、溶射後に回収されたCoNiCrAlY粉末のSEM写真である。図4は、図3の回収粉末に上述の工程を施して得た再生溶射粉末(試料6)のSEM写真である。
図3では、新材では確認されない微小な粉末(図中A)が多数観察された他、異物(図中B)が観察された。図4では、これらの微小な粉末や異物が除去され、新材と同等の大きさを有する粉末が存在していることが分かる。
図3では、新材では確認されない微小な粉末(図中A)が多数観察された他、異物(図中B)が観察された。図4では、これらの微小な粉末や異物が除去され、新材と同等の大きさを有する粉末が存在していることが分かる。
図5は、溶射後に回収されたYSZ粉末のSEM写真である。図6は、攪拌したスラリーを静置し、上澄み液除去後のスラリーを乾燥させる方法で、回収YSZ粉末から再生された溶射粉末のSEM写真である。なお、図5及び図6は、試料6から採取したものである。
図5では、粒径20〜30μm程度の粉末の表面に、数μmの微小な粉末が多数付着している。一方、図6では、微小粉末の付着量が大幅に低減されている。
図5では、粒径20〜30μm程度の粉末の表面に、数μmの微小な粉末が多数付着している。一方、図6では、微小粉末の付着量が大幅に低減されている。
(実施例1)
試験片として、厚さ5mmの耐熱合金基材(商標名:IN−738LC)上に、表1における試料4のCoNiCrAlY粉末を低圧プラズマ溶射法にて溶射し、膜厚0.1mmの金属結合層を形成した。金属結合層上に、表1における試料4のセラミック粉末を大気圧プラズマ溶射法にて溶射し、膜厚0.5mmのセラミックス層を形成した。
(比較例1)
実施例1と同じ耐熱合金基材上に、表1の新材CoNiCrAlY粉末を低圧プラズマ法にて溶射し、0.1mmの金属結合層を形成した。金属結合層上に、表1の新材セラミック粉末を大気圧プラズマ溶射法にて溶射し、膜厚0.5mmのセラミックス層を形成した。
(比較例2)
実施例1と同じ耐熱合金基材上に、表1の回収CoNiCrAlY粉末を低圧プラズマ法にて溶射し、0.1mmの金属結合層を形成した。金属結合層上に、表1の回収セラミック粉末を大気圧プラズマ溶射法にて溶射し、膜厚0.5mmのセラミックス層を形成した。
上記実施例及び比較例における金属結合層及びセラミックス層の溶射条件は、表1を取得したときの条件と同じとした。
試験片として、厚さ5mmの耐熱合金基材(商標名:IN−738LC)上に、表1における試料4のCoNiCrAlY粉末を低圧プラズマ溶射法にて溶射し、膜厚0.1mmの金属結合層を形成した。金属結合層上に、表1における試料4のセラミック粉末を大気圧プラズマ溶射法にて溶射し、膜厚0.5mmのセラミックス層を形成した。
(比較例1)
実施例1と同じ耐熱合金基材上に、表1の新材CoNiCrAlY粉末を低圧プラズマ法にて溶射し、0.1mmの金属結合層を形成した。金属結合層上に、表1の新材セラミック粉末を大気圧プラズマ溶射法にて溶射し、膜厚0.5mmのセラミックス層を形成した。
(比較例2)
実施例1と同じ耐熱合金基材上に、表1の回収CoNiCrAlY粉末を低圧プラズマ法にて溶射し、0.1mmの金属結合層を形成した。金属結合層上に、表1の回収セラミック粉末を大気圧プラズマ溶射法にて溶射し、膜厚0.5mmのセラミックス層を形成した。
上記実施例及び比較例における金属結合層及びセラミックス層の溶射条件は、表1を取得したときの条件と同じとした。
特許第4031631号公報に記載のレーザ熱サイクル試験を適用し、加熱時間3分、冷却時間3分、最高界面温度を900℃にて、種々の最高表面加熱温度を設定して、各試験片のセラミックス層剥離までの熱サイクル数を計測した。各試験片について、熱サイクル数1000回を超えても破壊されずに耐え得ることができる、最高表面加熱温度と最高界面温度との差(熱サイクル耐久性試験でセラミックス層内に付与される温度差)ΔTを取得した。
各セラミックス層の熱伝導率を、JIS R 1611で規定されるレーザフラッシュ法により測定した。
各試験片を電気炉に入れ、950℃、1000時間の条件で大気中にて加熱した。加熱後の試験片の断面をSEM観察した。実施例及び比較例の各試験片のSEM写真から、金属結合層とセラミックス層との界面に生成した熱生成酸化物の厚さを測定した。
各セラミックス層の熱伝導率を、JIS R 1611で規定されるレーザフラッシュ法により測定した。
各試験片を電気炉に入れ、950℃、1000時間の条件で大気中にて加熱した。加熱後の試験片の断面をSEM観察した。実施例及び比較例の各試験片のSEM写真から、金属結合層とセラミックス層との界面に生成した熱生成酸化物の厚さを測定した。
表2に、実施例及び比較例の熱サイクル耐久性(温度差ΔT)、実施例1を基準とした時の熱伝導率、及び熱生成酸化物の厚さを示す。
実施例1(再生溶射粉末)のセラミックス層は、比較例1(新材)のセラミックス層と同等の熱伝導率を示し、比較例1よりも熱サイクル耐久性に優れていた。一方、比較例2(回収粉末)のセラミックス層は、比較例1よりも熱伝導率及び熱サイクル耐久性が劣っていた。
また、実施例1の金属結合層は、比較例1よりも熱生成酸化物が薄く耐酸化性に優れていた。一方、回収粉末から作製された比較例2の金属結合層は、比較例1よりも耐酸化性が大幅に低下していた。
以上の結果から、本発明の方法により溶射粉末を再生することにより、新材と同等以上の性能を有する溶射皮膜を形成できることが示された。
また、実施例1の金属結合層は、比較例1よりも熱生成酸化物が薄く耐酸化性に優れていた。一方、回収粉末から作製された比較例2の金属結合層は、比較例1よりも耐酸化性が大幅に低下していた。
以上の結果から、本発明の方法により溶射粉末を再生することにより、新材と同等以上の性能を有する溶射皮膜を形成できることが示された。
Claims (7)
- 溶射後の回収粉末に界面活性剤及び水を添加して攪拌し、前記水中に前記回収粉末を分散させる分散工程と、
前記水中に分散された前記回収粉末から小径の粉末を除去して、前記水中の前記回収粉末の積算粒度10%粒径を、溶射前の溶射粉末の積算粒度10%粒径以上とする分離工程と、
前記分離工程後に、前記回収粉末を乾燥させる乾燥工程とを備える溶射粉末の再生方法。 - 前記界面活性剤が、分子量500以上50000以下のポリカルボン酸またはその誘導体の共重合体である請求項1に記載の溶射粉末の再生方法。
- 前記回収粉末が合金粉末とされ、前記水に対する前記界面活性剤の割合が、0.07質量%以上3.1質量%以下とされる請求項1または請求項2に記載の溶射粉末の再生方法。
- 前記回収粉末がセラミック粉末とされ、前記水に対する前記界面活性剤の割合が、0.04質量%以上3.8質量%以下とされる請求項1または請求項2に記載の溶射粉末の再生方法。
- 溶射後に回収され、
界面活性剤と水とを用いて、積算粒度10%粒径が溶射前の溶射粉末の積算粒度10%粒径以上に調整された再生溶射粉末。 - 前記積算粒度10%粒径が20μm以上の合金粉末とされる請求項5に記載の再生溶射粉末。
- 前記積算粒度10%粒径が30μm以上のセラミック粉末とされる請求項5に記載の再生溶射粉末。
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JP2012017486A (ja) * | 2010-07-06 | 2012-01-26 | Mitsubishi Heavy Ind Ltd | 溶射粉の再利用方法、この方法を実行する設備、及びコーティング部材の製造方法 |
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