JP2014167171A - 溶射設備 - Google Patents

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Abstract

【課題】溶射ブース内のクリーン化を図る。
【解決手段】対象物1に溶射粉を溶射する溶射ガン11,71と、対象物1及び溶射ガンが内部に配置される溶射ブースBと、溶射ブース内の気体を吸引する吸引ファン32と、溶射ブース内で開口し溶射ブース内の気体を吸引ファンに導く吸引ダクト31と、を備える。溶射ブースBを形成する壁のうち、対象物が配置される位置を基準にして溶射ガン側の壁11には、溶射ブース内に空気を取り込む吸気孔39が形成され、溶射ブースBを形成する壁のうち、対象物が配置される位置を基準にして溶射ガンと反対側の壁に、吸引ダクト31の開口側の部分が設けられ、開口31aが溶射ガン11,71に向かって開口している。
【選択図】図1

Description

対象物に溶射粉を溶射する溶射設備の再利用方法、この方法を実行する設備、及びコーティング部材の製造方法に関する。
ガスタービンの動翼、静翼、燃焼器等は、高温ガスと直接接触して、過酷な熱サイクル、エロージョン、コロージョン等を受ける。このため、動翼等の部材は、遮熱コーティング(Thermal Barrier Coating : TBC)されていることが多い。このTBC層は、以下の特許文献1に記載されているように、対象母材に、例えば、CoNiCrAlY等の金属溶射粉の溶射で形成されるボンドコート層と、ZrO2系のセラミック溶射粉の溶射で形成されるトップコート層とを有している。
特開2007−270245号公報 ([0044])
動翼等の部材は、その母材自体を形成する材料も高価であるが、この母材にコーティング層を形成する溶射粉も高価であるため、動翼等、溶射粉でコーティングされたコーティング部材の製造コストが極めて嵩んでしまう。
このため、コーティング部材の製造コスト低減が望まれている。また、溶射ブース内のクリーン化も望まれている。
そこで、本発明は、このような要望に応えるべく、コーティング部材の製造コスト低減を図ることができる技術を提供することを目的とする。また、本発明は、溶射ブース内のクリーン化を図ることができる技術を提供することを目的とする。
前記目的を達成するための発明に係る溶射設備は、
対象物に溶射粉を溶射する溶射ガンと、前記対象物及び前記溶射ガンが内部に配置される溶射ブースと、前記溶射ブース内の気体を吸引する吸引ファンと、前記溶射ブース内で開口し、前記溶射ブース内の気体を前記吸引ファンに導く吸引ダクトと、を備え、前記溶射ブースを形成する壁のうち、前記対象物が配置される位置を基準にして前記溶射ガン側の壁には、前記溶射ブース内に空気を取り込む吸気孔が形成され、前記溶射ブースを形成する壁のうち、前記対象物が配置される位置を基準にして前記溶射ガンと反対側の壁に、前記吸引ダクトの前記開口側の部分が設けられ、前記開口が前記溶射ガンに向かって開口している。
ここで、前記溶射設備において、前記吸引ファンにより、前記溶射ブース内の気体と共に吸引された前記溶射粉を含む粉を、前記粉を構成する各粒子の電磁気的性質の相違により、電磁気場内で分離する分離装置を備えてもよい。
前記目的を達成するための発明に係る溶射粉の再利用方法は、
対象物に向かって溶射された、金属溶射粉とセラミックス溶射粉とのうち、少なくとも一方の溶射粉の再利用方法において、
前記対象物に向かって溶射された前記金属溶射粉のうちで該対象物に付かなかった金属溶射粉と、該対象物に向かって溶射された前記セラミックス溶射粉のうちで該対象物に付かなかったセラミックス溶射粉と、を含む粉を回収粉として回収する回収工程と、前記回収粉を構成する各粒子の電磁気的性質の相違により、電磁気場内で、該回収粉を、前記金属溶射粉を含む金属回収粉と、前記セラミックス溶射粉を含むセラミックス回収粉とに分離する分離工程と、前記分離工程で得られた前記金属回収粉と前記セラミックス回収粉とのうち、少なくとも一方の回収粉を溶射粉として、新たな対象物に溶射する溶射粉再利用工程と、を有することを特徴とする。
当該再利用方法では、対象物に向かって溶射された溶射粉のうち、対象物に付かなかった溶射分の少なくとも一部を、新たな対象物に溶射する溶射粉として再利用するので、溶射粉の溶射でコーティング層が形成されたコーティング部材の製造コストを抑えることができる。さらに、当該再利用方法では、金属溶射粉とセラミックス溶射粉とが混じっている状態であっても、分離工程で両溶射粉を分離しているので、再利用可能な純度の高い溶射粉を得ることができる。
ここで、前記溶射粉の再利用方法において、前記回収工程で回収された前記回収粉から、目的の粒径範囲の粉を抽出し、抽出した回収粉を前記分離工程に送る分級工程を有していてもよい。
当該再利用方法では、再利用される溶射粉が目的の粒径範囲内になるため、当該溶射粉で形成したコーティング層に対して、求められる性能を確保することができる。
また、前記溶射粉の再利用方法において、前記分級工程で抽出する前記回収粉の前記目的の粒径範囲は、積算粒度10%粒径が30μm以上であり、前記溶射粉再利用工程では、前記分離工程で得られた前記セラミックス回収粉の少なくとも一部を前記セラミックス溶射粉として、前記新たな対象物に溶射してもよい。
当該再利用方法では、前記セラミックス回収粉の溶射で形成したコーティング層に対して、求められる性能、具体的には、求められる耐熱性能を確保することができる。
また、前記溶射粉の再利用方法において、前記分級工程で抽出する前記回収粉の前記目的の粒径範囲は、積算粒度10%粒径が20μm以上であり、前記溶射粉再利用工程では、前記分離工程で得られた前記金属回収粉の少なくとも一部を前記金属溶射粉として、前記新たな対象物に溶射してもよい。
当該再利用方法では、前記金属回収粉の溶射で形成したコーティング層に対して、求められる性能、具体的には、熱生成酸化物の生成量の抑制を図ることができる。
また、前記溶射粉の再利用方法において、前記分離工程で得られたセラミックス回収粉から、積算粒度10%粒径が30μm以上のセラミックス回収粉を抽出するセラミックス粉分級工程を有し、前記溶射粉再利用工程では、前記セラミックス粉分級工程で抽出された前記セラミックス回収粉の少なくとも一部を前記セラミックス溶射粉として、前記新たな対象物に溶射してもよい。
当該再利用方法では、前記金属回収粉の溶射で形成したコーティング層の、熱生成酸化物の生成量の抑制を図ることができると共に、前記セラミックス回収粉の溶射で形成したコーティング層の耐熱性能を確保することができる。
また、前記溶射粉の溶射粉の再利用方法において、前記分離工程で得られた前記セラミックス回収粉を、金属又は両性水酸化物を溶解する水溶液中に入れて、該セラミックス回収粉中の金属粉又は両性水酸化物粉を溶解し、該水溶液中に残った粒状物を抽出する溶解除去工程を有し、前記溶射粉再利用工程では、前記溶解除去工程で、前記水溶液中から抽出した前記粒状物を前記セラミックス溶射粉として、前記新たな対象物に溶射してもよい。
当該再利用方法では、セラミックス回収粉中のセラミックス溶射粉の純度を高めることができる。
また、前記溶射粉の再利用方法において、前記分離工程では、前記回収工程で回収された前記回収粉を構成する各粒子の電気的性質の相違により、電場内で、前記金属回収粉と前記セラミックス回収粉とに分離してもよい。また、前記分離工程では、前記回収工程で回収された前記回収粉を構成する各粒子の磁気的性質の相違により、磁場内で、前記金属回収粉と前記セラミックス回収粉とに分離してもよい。
前記目的を達成するための発明に係るコーティング部材の製造方法は、
前記溶射粉の再利用方法を実行し、前記溶射粉再利用工程において、前記対象物に溶射された溶射粉で、該対象物の表面にコーティング層を形成してコーティング部材を製造する、ことを特徴とする。
当該コーティング部材の製造方法では、対象物に向かって溶射された溶射粉のうち、対象物に付かなかった溶射分の少なくとも一部を、新たな対象物に溶射する溶射粉として再利用するので、溶射粉の溶射でコーティング層が形成されたコーティング部材の製造コストを抑えることができる。
前記目的を達成するための発明に係る溶射設備は、
対象物に金属溶射粉及びセラミックス溶射粉をそれぞれ溶射する溶射設備において、
前記金属溶射粉を前記対象物に溶射する第一溶射ガンを有する第一溶射装置と、前記セラミックス溶射粉を前記対象物に溶射する第二溶射ガンを有する第二溶射装置と、前記対象物に向かって溶射された前記金属溶射粉のうちで該対象物に付かなかった金属溶射粉と、該対象物に向かって溶射された前記セラミックス溶射粉のうちで該対象物に付かなかったセラミックス溶射粉と、を含む粉を回収粉として回収する回収装置と、前記回収粉を構成する各粒子の電磁気的性質の相違により、電磁気場内で、該回収粉を、前記金属溶射粉を含む金属回収粉と、前記セラミックス溶射粉を含むセラミックス回収粉とに分離し、少なくとも一方の回収粉を溶射粉の一部として抽出する分離装置と、を備えていることを特徴とする。
当該溶射設備では、対象物に向かって溶射された溶射粉のうち、対象物に付かなかった溶射分の少なくとも一部を、新たな対象物に溶射する溶射粉として再利用できるので、溶射粉の溶射でコーティング層が形成されたコーティング部材の製造コストを抑えることができる。さらに、当該溶射設備では、金属溶射粉とセラミックス溶射粉とが混じっている状態であっても、両溶射粉を分離できるので、再利用可能な純度の高い溶射粉を得ることができる。
ここで、前記溶射設備において、前記回収装置で回収された前記回収粉から、目的の粒径範囲の粉を抽出し、抽出した回収粉を前記分級装置を備え、前記分離装置は、前記分級装置が抽出した回収粉を分離してもよい。
当該溶射設備では、再利用される溶射粉が目的の粒径範囲内になるため、当該溶射粉で形成したコーティング層に対して、求められる性能を確保することができる。
また、前記溶射設備において、前記分級装置が抽出する前記回収粉の前記目的の粒径範囲は、積算粒度10%粒径が30μm以上であり、前記分離装置は、前記セラミックス回収粉を、前記セラミックス溶射粉の少なくとも一部として抽出してもよい。なお、前記分級装置が抽出する前記回収粉の前記目的の粒径範囲は、の積算粒度10%粒径が40μm以上であることがより好ましい。
当該溶射設備では、前記セラミックス回収粉の溶射で形成したコーティング層に対して、求められる性能、具体的には、求められる耐熱性能を確保することができる。
また、前記溶射設備において、前記分級装置が抽出する前記回収粉の前記目的の粒径範囲は、積算粒度10%粒径が20μm以上であり、前記分離装置は、前記金属回収粉を、前記金属溶射粉の少なくとも一部として抽出してもよい。
当該溶射設備では、前記金属回収粉の溶射で形成したコーティング層に対して、求められる性能、具体的には、熱生成酸化物の生成量の抑制を図ることができる。
また、前記溶射設備において、前記分離装置が得た前記セラミックス回収粉から、積算粒度10%粒径が30μm以上のセラミックス回収粉を、前記セラミックス溶射粉の少なくとも一部として抽出するセラミックス粉分級装置を備えていてもよい。
当該溶射設備では、前記金属回収粉の溶射で形成したコーティング層の、熱生成酸化物の生成量の抑制を図ることができると共に、前記セラミックス回収粉の溶射で形成したコーティング層の耐熱性能を確保することができる。
また、前記溶射設備において、前記第一溶射ガンと前記第二溶射ガンとは、一つの溶射ブース内に設置され、前記回収装置は、開口が前記溶射ブース内に臨んでいる回収ダクトと、該溶射ブース内の粉類を回収ダクト内に吸い込むための吸引ファンと、を有してもよい。また、前記第一溶射ガンが第一溶射ブース内に設置され、前記第二溶射ガンが該第一溶射ブースとは異なる第二溶射ブース内に設置され、前記回収装置は、第一の開口が前記第一溶射ブース内に臨み、第二の開口が前記第二溶射ブース内に臨んでいる回収ダクトと、該第一溶射ブース内の粉類を該第一の開口から該回収ダクト内に吸い込み、且つ該第二溶射ブース内の粉類を該第二の開口から該回収ダクト内に吸い込むための吸引ファンと、を有してもよい。
本発明によれば、対象物に向かって溶射された溶射粉のうち、対象物に付かなかった溶射分の少なくとも一部を、新たな対象物に溶射する溶射粉として再利用できるので、溶射粉の溶射でコーティング層が形成されたコーティング部材の製造コストを抑えることができる。また、本発明によれば、溶射ブース内のクリーン化を図ることができる。
本発明に係る第一実施形態における溶射設備の構成を示す説明図である。 本発明に係る第一実施形態におけるフレーム溶射装置の構成を示す説明図である。 本発明に係る第一実施形態におけるプラズマ溶射装置の構成を示す説明図である。 本発明に係る第一実施形態における分級装置の一例の構成を示す説明図である。 本発明に係る第一実施形態における溶射粉及びコーティング部材の製造手順を示すフローチャートで、同図(A)はYSZ溶射粉の製造手順を示すフローチャートであり、同図(B)はコーティング部材の製造手順を示すフローチャートである。 本発明に係る第一実施形態における溶射粉の再利用の手順を示すフローチャートである。 YSZ溶射分の積算粒度10%における粒度と、YSZ溶射粉のプラズマ溶射で形成したセラミックス層(コーティング層)が、熱サイクル数1000回を超えても破損せずに耐え得る温度差ΔTと、の関係を示すグラフである。 本発明に係る第一実施形態における各種溶射紛の粒径と積算粒度との関係を示すグラフである。 本発明に係る第二実施形態における溶射設備の構成を示す説明図である。 本発明に係る第二実施形態における溶射粉の再利用の手順を示すフローチャートである。 本発明に係る第三実施形態における溶射設備の構成を示す説明図である。 本発明に係る第三実施形態における溶射粉の再利用の手順を示すフローチャートである。 本発明に係る実施形態の溶射設備の変形例の構成を示す説明図である。 本発明に係る実施形態の分離装置の変形例の構成を示す説明図である。 本発明に係る一実施形態におけるコーティング部材の断面図である。
以下、本発明に係る溶射設備の各種実施形態について、図面を用いて説明する。
「コーティング部材の実施形態」
溶射設備の実施形態を説明する前に、当該溶射設備による溶射で製造されるコーティング部材について説明する。
本実施形態のコーティング部材は、図15に示すように、コーティングの対象母材1と、この対象部材の表面に形成されたボンドコート層(コーティング層)2と、ボンドコート層2の表面に形成されたセラミックス層(コーティング層)3と、を有している。このボンドコート層2とセラミックス層3とで、遮熱コーティング(Thermal Barrier Coating : TBC)層4を構成する。
対象部材1は、耐熱合金、例えば、Ni基合金又はCo基合金で形成されている。具体的に、Ni基合金としては、例えば、以下のような成分の合金が用いられる。Ni−16Cr−8.5Co−1.75Mo−2.6 W−1.75Ta−0.9Nb−3.4Ti−3.4Al(質量%)
ボンドコート層2は、セラミックス層3の熱膨張量と対象母材1の熱膨張量との差を緩和する等のために設けられている。このボンドコート層2は、高温での耐食性及び耐酸化性に優れたMCrAlY合金(Mは、Ni、Co及びFeの群から選ばれる一種又は二種の元素)で形成されている。具体的には、ボンドコート層2は、例えば、CoNiCrAlY合金で形成され、その成分は以下の通りである。Co−32Ni−21Cr−8Al−0.5Y(質量%) このボンドコート層2は、MCrAlY合金粉を、対象母材1に、例えば、高速フレーム(HVOF:High Velocity Oxygen Fuel)溶射することで形成される。
このボンドコート層2の厚さは、10μm〜500μmである。
セラミックス層3は、対象母材1に対する遮熱及び熱衝撃の緩和等のために設けられている。このため、熱伝導率が低く、輻射率の高い安定化したジルコニア等で形成されている。具体的には、質量比がYb:ZrO=8:92のイットリア安定化ジルコニア(YSZ)で形成されている。このセラミックス層3は、YSZ粉を、ボンドコート層2が形成された対象母材1に、大気圧プラズマ溶射(APS:Atmospheric Plasma Spraying)することで形成される。このセラミックス層3の厚さは、0.1mm〜1mmである。
「溶射設備の第一実施形態」
次に、本発明に係る溶射設備の第一実施形態について、図1〜図8を用いて説明する。
本実施形態の溶射設備は、図1に示すように、対象母材1にMCrAlY溶射粉を高速フレーム溶射する高速フレーム溶射装置70と、対象母材1にYSZ溶射粉を大気圧プラズマ溶射するプラズマ溶射装置10と、対象母材1に付かなかった各溶射粉を回収する回収装置30と、回収装置30で回収された紛等を分級する分級装置40と、この分級装置40で分級された粒径30μm以上で150μm未満の粉等からセラミックス紛、つまりYSZ紛を主として抽出する分離装置50と、分離装置50で抽出された粉から金属粉等を溶解除去するための溶解容器61と、を備えている。
高速フレーム溶射装置70は、図2に示すように、フレーム溶射ガン71と、フレーム溶射ガン71に燃料を供給する燃料供給装置81と、フレーム溶射ガン71に酸素を供給する酸素供給装置82と、溶射ガンに溶射粉を供給する粉体供給装置83と、燃料を点火するための電力を溶射ガン11に供給する電源装置84と、フレーム溶射ガン71に冷却水を供給する冷却水供給装置85と、これらの各装置81〜85を制御する制御装置86と、を備えている。
フレーム溶射ガン71は、内部に火炎(フレーム)Fが形成されるノズル72と、ノズル72の基部側のチャンバ72b内にスパークを形成する点火プラグ73と、ノズル72を囲むガンハウジング77と、を有している。ノズル72のチャンバ72bには、燃料受入口74及び酸素受入口75が形成されている。ノズル72のチャンバ72bとノズル72の噴射口72aとの間には、溶射粉受入口76が形成されている。また、ガンハウジング77には、このガンハウジング77の内側とノズル72の外側との間の冷却空間に、冷却水供給装置85からの冷却水を流入させる冷却水入口78と、冷却空間内の冷却水が排水される冷却水出口79と、が形成されている。
ノズル72のチャンバ72b内には、燃料供給装置81からの燃料と酸素供給装置82からの酸素とが噴射される。また、このチャンバ72内では、電源装置84からの電力を受けて点火プラグ73が点火し、スパークが形成される。この結果、このノズル72内に火炎(フレーム)Fが形成される。また、ノズル72内には、粉体供給装置83からの溶射粉が供給される。この溶射粉は、火炎Fと共に、ノズル72の噴射口72aから噴射され、対象母材1に溶射される。
プラズマ溶射装置10は、図3に示すように、プラズマ溶射ガン11と、プラズマ溶射ガン11に作動ガスを供給する作動ガス供給装置21と、溶射ガン11に粉体を供給する粉体供給装置22と、作動ガスをプラズマ化するための電力を溶射ガン11に供給する電源装置23と、溶射ガン11に冷却水を供給する冷却水供給装置24と、これらの各装置21〜24を制御する制御装置25と、を備えている。
プラズマ溶射ガン11は、内部にプラズマが形成されるノズル12と、ノズル12内に設けられているタングステン電極15と、ノズル12を囲むガンハウジング16と、を有している。タングステン電極15は、ノズル12内であって、その基部側に固定されている。ノズル12には、その基部側に作動ガス受入口13が形成され、その噴射口12a側に粉体受入口14が形成されている。また、ガンハウジング16には、このガンハウジング16の内側とノズル12の外側との間の冷却空間に、冷却水供給装置24からの冷却水を流入させる冷却水入口17と、冷却空間内の冷却水が排水される冷却水出口18と、が形成されている。
プラズマ溶射ガン11のノズル12内には、作動ガス供給装置21からのAr等の作動ガスが供給される。また、電源装置23の駆動により、タングステン電極15は負極性電極になり、ノズル12の噴射口12a近傍は正極性電極になり、タングステン電極15からノズル噴射口12a近傍に向かって電子が飛び出す。この結果、作動ガスはイオン化し、プラズマとなる。このプラズマの中に、粉体供給装置22からの溶射粉が供給される。
この溶射粉は、プラズマ加熱されて、対象母材1に溶射される。
再び、図1に従って説明する。高速フレーム溶射装置70のフレーム溶射ガン71及びプラズマ溶射装置10のプラズマ溶射ガン11は、いずれも、溶射ブースB内に配置されている。この溶射ブースB内には、溶射ガン71,11のほかに、対象母材1が置かれる回転テーブル89,29も配置されている。この溶射ブースBを形成する壁のうち、回転テーブル89,29を基準にして、溶射ガン71,11側の壁には、このブース内に気体を取り入れるための吸気孔39が形成されている。なお、ここでは、各溶射ガン11,71毎に回転テーブル29,89を設けているが、一つ回転テーブルのみを設け、この一つの回転テーブルをフレーム溶射及びプラズマ溶射時に利用するようにしてもよい。
回収装置30は、溶射ガン71,11から噴射された溶射紛を回収するための回収ダクト31と、気体と共に溶射紛を含む粉等を回収ダクト31内に吸引する吸引ファン32とを有している。回収ダクト31の開口31aは、溶射ブースBを形成する壁のうち、回転テーブル89,29を基準にして、溶射ガン71,11と反対側の壁に設けられ、溶射ガン71,11に向かって大きく開口している。この回収ダクト31の端部に吸引ファン32が設けられている。なお、ここでは、回収装置30を回収ダクト31及び吸引ファン32で構成しているが、さらに、この回収装置30にサイクロン等の集塵装置を追加してもよい。
分級装置40は、図1に示すように、吸引ファン32の排気口に接続されている。分級装置40は、回収装置30が溶射ブースBから回収した回収粉を、粒径が30μm未満の回収粉と、粒径が30μm以上で150μm未満の回収粉と、150μm以上の回収粉とに分けて、粒径が30μm以上で150μm未満の回収粉を抽出する。より正確には、積算粒度10%粒径が30μm以上で150μm未満の回収粉を抽出する。
分級装置40の種類としては、遠心分級装置、重力分級装置、篩分け装置等があるが、回収粉を前述したような三つの粒径範囲に分けることができれば、これらの装置のうち、いずれの種類の装置を用いてもよいし、また、いずれか2種類の装置を組み合わせてもよい。
本実施形態では、図4に示す強制渦型遠心分級装置45を用いて回収粉を分級する。この強制渦型遠心分級装置45は、分級筒46と、この分級筒46内で回転する分級ロータ47とを有している。この強制渦型遠心分級装置45は、回収粉を二つの粒径範囲にしか分けることができないため、二台の強制渦型遠心分級装置45を直列的に接続するか、又は、同図に示すように、一台の強制渦型遠心分級装置45の粗粒排出口46aの下流に、篩分け装置41を設けるとよい。
分離装置50は、図1に示すように、電気的性質の異なる物質を擦り合わせることで、一方の物質から他方の物質へ電荷を移動させて、各物質を帯電させる摩擦帯電装置51と、帯電した物質の極性に応じて物質を選別する静電選別装置52と、を備えている。摩擦帯電装置51は、分級装置40から送られてくる粉等を受ける帯電シュートを有している。粉等は、この帯電シュートを通過する過程で、その電気的性質に応じて、正極性又は負極性に帯電する。静電選別装置52は、正極性に帯電した物質を引き寄せる負極板54と、負極性に帯電した物質を引き寄せる正極板53と、各極性に帯電した物質を受け取る回収容器55と、を有している。回収容器55には、容器内を正極板側部55a、中間部55b,負電極板側部55cの三つに分けるための仕切り56が設けられている。
ここで、本実施形態で用いられるYSZ溶射粉の製造方法について、図5(A)に示すフローチャートに従って説明する。
まず、YSZの生成材料であるZrO粉とYb粉とを準備する。そして、ZrO粉、Yb紛、水、分散剤等をボールミルに入れて、これらを混合し、スラリー化する(S1)。
次に、ステップ1で生成したスラリーをスプレードライヤー内に投入して、これを造粒する(S2)。
そして、造粒されたZrOとYbの混合物に対して熱処理を施す(S3)。この熱処理方法としては、以下の三つの方法がある。
第一の方法は、造粒された混合物を電気炉内に入れて、1500〜1600℃程度まで加熱し、この混合物を焼結する方法である。第二の方法は、アーク放電を利用して、造粒された混合物を、2400℃程度まで加熱し、この混合物を溶融する方法である。この方法では、溶融した混合物が固化した後、この混合物を粉砕・分級する。第三の方法は、プラズマで加熱する方法である。プラズマ加熱を実行する具体的な方法としては、例えば、前述のプラズマ溶射装置を用いて、このプラズマ溶射装置が形成したプラズマ中に、造粒された混合物を入れる方法がある。
この熱処理(S3)により、混合物中のZrOの多くは、単斜晶から正方晶に相変化し、さらに、この正方晶に相変化したZr酸化物にYbが固溶して、安定した正方晶のZr酸化物の粉、すなわち、YSZ溶射粉になる。
なお、ここでは、Zr酸化物の結晶構造を安定化させものとして、Yb粉末を用いているが、Yb粉末の替わりに、Mg、Ca、Y、La、Sm、Nd、Gd、Dy、Er、Ybのうちのいずれか一の元素の酸化物粉末を用いてもよい。また、溶射粉の主成分であるZr酸化物の替わりに、Ce酸化物を用いてもよい。この場合、Ce酸化物の結晶構造を安定化させるものとして、La、Nd、Gdのうちの一の元素の酸化物粉末を用いてもよい。
次に、図5(B)に示すフローチャートに従って、図13を用いて説明した遮熱コーティング部材の製造手順について説明する。
まず、対象母材を目的の形状に形成する(S11)。この対象部材は、前述したように、Ni合金又はCo合金で形成されている。
次に、ボンドコート層2(図13)の下地処理として、対象母材1の表面に対してブラスト処理を行う(S12)。このブラスト処理では、ブラスト装置にアルミナ(水酸化アルミニウム)粒を投入し、高エアー圧で、このアルミナ粒を対象母材表面に噴射する。この結果、対象母材の表面には、多数のアルミナ粒が高速で衝突し、この表面が粗化する。
次に、以上で説明した溶射設備の高速フレーム溶射装置70を用いて、ブラスト処理が施された対象母材1の表面に、MCrAlY溶射粉を高速フレーム溶射し、対象母材1の表面にボンドコート層2(図13)を形成する(S13)。なお、このボンドコート層2には、必要に応じて、このボンドコート層の耐酸化性を向上させるために、アルミニウム、又はアルミニウム及びシリコンを拡散浸透させてもよい。
そして、以上で説明した溶射設備のプラズマ溶射装置10を用いて、ボンドコート層2(図13)が形成された対象母材1の方面に、YSZ溶射粉をプラズマ溶射し、ボンドコート層2の上にセラミックス層3を形成する(S14)。
以上で、対象母材1の表面に、ボンドコート層2及びセラミックス層3を有するTBC層4(図13)が形成された遮熱コーティング部材が完成する。
本実施形態では、プラズマ溶射(S14)の際に使用され、対象母材に付かなかったYSZ溶射粉の再生処理(S20)を実行する。そこで、このYSZ溶射粉の再生処理(S20)について、図6に示すフローチャートに従って説明する。
プラズマ溶射(S14)の際、回収装置30の吸引ファン32は駆動している。このため、プラズマ溶射ガン11から噴射されたYSZ溶射紛のうち、対象母材1に付かなかったYSZ溶射粉は、回収ダクト31内に吸い込まれて回収される(S21)。この際、溶射ブースB内に浮遊していた各種粉類も回収ダクト31内に吸い込まれる。この各種粉類には、ブラスト処理の際(S12)に用いたアルミナ粒、ボンドコート層の形成の際(S13)に用いたMCrAlY溶射粉、溶射ブースB内の浮遊ゴミ等が含まれている。なお、プラズマ溶射(S14)の際にのみ、この回収処理(S21)を実行してもよいが、高速フレーム溶射(S13)の際にも実行してもよい。さらに、溶接ブースB内の環境をクリーンにするために、溶射ブースBを何からの処理で使用している間中、この回収処理(S21)を実行してもよい。
回収ダクト31内に吸い込まれた粉類、つまり回収粉は、分級装置40で、粒径が30μm未満の回収粉と、粒径が30μm以上で150μm未満の回収粉と、150μm以上の回収粉とに分けられて、粒径が30μm以上で150μm未満の回収粉が抽出される(S22)。より正確には、積算粒度10%粒径が30μm以上で150μm未満の回収粉が抽出される。一方、粒径が30μm未満の回収粉、及び150μm以上の回収粉は、廃棄される。粒径が30μm未満の回収粉は、YSZ溶射紛等を含んでいるが、粒径が小さくTBC層を形成するための溶射紛として適さないため、廃棄される。また、粒径が150μm以上の回収粉は、YSZ溶射紛等が少なく、逆に、砂粒等のごみ類が多いため、廃棄される。
分級装置40で抽出された回収粉は、分離装置50で、回収粉に含まれている各物質の電気的性質の違いにより、分離される(S23)。具体的には、分離装置50の摩擦帯電装置51により、分離装置50に送られてきた回収粉のうち、セラミックであるYSZ溶射紛は負極性に帯電し、金属であるMCrAlY溶射粉は正極性に帯電する。このため、負極性に帯電したYSZ溶射粉は、静電選別装置52の正極板53側に引き寄せられ、主として回収容器55内の正極板側部55aに落ちる。また、正極性に帯電したMCrAlY溶射粉は負極板54側に引き寄せられて、主として回収容器55内の負極板側部55cに落ちる。回収容器55の中間部55bには、負極性に帯電したYSZ溶射粉及び正極性に帯電したMCrAlY溶射粉が落ちる。
回収容器55の負極板側部55cに回収された回収粉、つまり、MCrAlY溶射粉を主とする回収粉は廃棄されるか、ボンドコート層形成のための溶射粉として再利用される。なお、ここでは、YSZ溶射粉に対して、相対的に僅かのMCrAlY溶射粉しか回収できない場合を想定している関係で、負極板側部55cに回収された回収粉を廃棄する。
また、回収容器55の中間部55bに回収された回収粉は、分離装置50の摩擦帯電装置51内に再度投入されて、この回収粉に含まれている各物質の電気的性質の違いにより、再分離される。また、回収容器55の正極板側部55aに回収された回収粉、つまり、YSZ溶射粉を主とする回収粉は、回収容器55から取り出されて、溶解除去処理が施される(S24)。
ここで、本実施形態の分離装置50による静電分離効果の具体例について説明する。以下の表1に示すように、回収処理(S21)で得られた回収粉のサンプル1,2中のMCrAlYの含有率が、それぞれ、5.34(wt%)、1.86(wt%)であった場合、分級・分離処理(S22,S23)で抽出された回収粉のサンプル1,2中のMCrAlYの含有率は、0.06(wt%)、0.05(wt%)になる。すなわち、本実施形態では、分離装置50の回収容器55の正極板側部55aに回収された回収粉、つまり、YSZ溶射粉を主とする回収粉は、MCrAlYの含有率が1(wt%)未満になる。
Figure 2014167171
溶解除去処理(S24)では、回収容器55の正極板側部55aに回収された回収粉中に金属粉(例えば、MCrAlY溶射粉)が多い場合には、1〜12規定の塩酸、硝酸、王水等の酸性水溶液が入っている溶解容器61内に、回収容器55の正極板側部55aに回収された回収粉を入れて、水溶液を加熱し、この回収粉中の金属粉を溶解させる。例えば、回収粉中に0.5(wt%)前後のMCrAlY溶射粉が含まれている場合、この回収粉に対して、王水中で加熱処理を施すと、この王水から未溶解の回収粉を抽出すると、この回収粉中のMCrAlY溶射粉の量は、0.02(wt%)になる。
また、回収容器55の正極板側部55aに回収された回収粉中に、両性水酸化物粉、例えば、水酸化アルミニウム(アルミナ)粉が多い場合には、1〜12規定の水酸化ナトリウム水溶液が入っている溶解容器61内に、回収容器55の正極板側部55aに回収された回収粉を入れて、水溶液を加熱し、この回収粉中の両性水酸化物粉を溶解させる。例えば、回収粉中に0.08〜0.05(wt%)前後のアルミナ粉が含まれている場合、この回収粉に対して、水酸化ナトリウム水溶液中で加熱処理を施すと、この水溶液から未溶解の回収粉を抽出すると、この回収粉中のアルミナ粉の量は、0.01(wt%)になる。
さらに、回収容器55の正極板側部55aに回収された回収粉中に、金属粉も、両性水酸化物粉も比較的多い場合には、前述したような酸性水溶液中での加熱処理、及び水酸化ナトリウム水溶液中での加熱処理を行って、この回収粉中の金属粉及び両性水酸化物粉を溶解させる。
水溶液により、不要粒子を溶解させると、溶解容器61から水溶液と微粒子固体とを分離して、微粒子固体を水洗等してから乾燥させて、乾燥粉とする。
この溶解除去処理(S24)で得られた乾燥粉は、粒径が30μm以上で150μm未満であり、しかも、高純度のYSZ粉である。以上で、溶射粉の再生処理(S20)が終了する。
本実施形態では、このYSZ粉をYSZ再生溶射粉として、溶射装置の粉体供給装置22に投入し、YSZ溶射粉の投入量が少ない場合には、図5(A)に示すステップ1〜3の処理で製造されたバージン溶射粉を追加する。そして、このプラズマ溶射装置10の粉体供給装置22からYSZ溶射粉をプラズマ溶射ガン11に供給して、このYSZ溶射粉を対象母材1にプラズマ溶射する。すなわち、YSZ再生溶射粉をプラズマ溶射のために再利用する(S25、S14(図5(B))。
以上、本実施形態では、未使用の溶射粉(以下、バージン溶射粉とする)を溶射に使用した後、これを回収して、再生溶射粉として再生させているので、溶射に使用するバージン溶射粉の量を少なくすることができ、結果として、溶射粉が溶射されて、表面に遮熱コーティング(TBC)層が形成された遮熱コーティング部材の製造コストを低減することができる。
また、本実施形態では、YSZ再生溶射粉でセラミックス層を形成するので、以下の理由a,bにより、このセラミックス層の剥離可能性を低減させることができる。
(1)剥離可能性の低減理由a
YSZバージン溶射粉を製造する過程では、図5(A)を用いて前述したように、ZrOとYbの混合物に対して熱処理を施し(S3)、混合物中のZrOの多くを単斜晶から正方晶に相変化させ、さらに、この正方晶に相変化したZr酸化物にYbを固溶させて、安定した正方晶のZr酸化物の粉、すなわち、YSZ溶射粉を製造している。
しかしながら、熱処理(S3)において、混合物を電気炉で加熱する場合やアーク放電で加熱する場合には、混合物の温度があまり高くならないため、加熱時間を長くしても、混合物中のZrOの全てが単斜晶から正方晶に相変化せず、単斜晶のものが残ってしまう。具体的には、加熱条件によって、多少異なるが、以上のような加熱では、混合物中のZrOのうち、90〜95%が正方晶になるが、残りは単斜晶のまま存在する。さらに、混合物の温度があまり高くならないため、Ybの固溶量もあまり多くなく、正方晶になったZr酸化物も十分に安定化しない。
また、熱処理(S3)において、混合物をプラズマ加熱する場合、混合物の温度が極めて高温(例えば、1万℃程度)になるものの、瞬間的な加熱であるため、前述の場合と同様、混合物中のZrOの全てが単斜晶から正方晶に相変化せず、しかも、正方晶になったZr酸化物も十分に安定化しない。
これに対して、YSZ再生溶射粉は、YSZバージン溶射粉の製造過程で施された熱処理(S3:第一熱処理)後に、プラズマ溶射による熱処理(S14:第二熱処理)が施されるため、混合物中のZrOで、第一熱処理で正方晶にならなかったもの、つまり、単斜晶のものを正方晶に相変位にさせると共に、Ybの固溶量を多くすることができる。具体的に、条件によって多少異なるが、この第二熱処理(S14)により、混合物中のZrOの99%以上が正方晶になる。
以上のように、YSZ再生溶射粉は、YSZバージン溶射粉よりも、多くのZrOが正方晶になっており、しかも、Ybの固溶量が多いため、正方晶になったZr酸化物をより安定化させることができる。このため、YSZ再生溶射粉で形成したセラミックス層の剥離可能性を低減させることができる。
(2)剥離可能性の低減理由b
YSZ溶射粉の粒径と、このYSZ溶射粉で形成されたセラミックス層の熱サイクル耐久性とには、所定の関係がある。
ここで、溶射粉の粒径と熱サイクル耐久性との関係について、図7を用いて説明する。
なお、同図において、横軸は、YSZ溶射粉の積算粒度10%の粒径(d10)を示し、縦軸は、YSZ溶射粉のプラズマ溶射で形成したセラミックス層が、熱サイクル数1000回を超えても破損せずに耐え得る温度差ΔTを示している。この温度差ΔTは、セラミックス層の最高表面温度と最高界面温度との差である。この温度差ΔTは、セラミックス層の熱サイクル耐久性を示す指標であり、このΔTが大きいほど、熱サイクル耐久性が高いと判断される。
この図7に示すデータは、以下で説明する熱サイクル耐久性試験で得たデータである。
この熱サイクル耐久性試験では、試験片として、厚さ5(mm)の耐熱合金であるNi基合金(商標名:IN−738LC)に、低圧プラズマ溶射法にて膜厚100(μm)の金属ボンドコート層(Ni:32質量%、Cr:21質量%、Al:8質量%、Y:0.5質量%、Co:残部)を形成したものを用いた。この試験片に対するYSZ溶射粉の溶射には、スルザーメテコ社製溶射ガン11(F4ガン)を使用した。この溶射における溶射条件は、溶射電流:600(A)、溶射距離:150(mm)、溶射粉供給量:60(g/min)、作動ガス(Ar/H)供給量:35/7.4(l/min)である。YSZ溶射粉の溶射により、試験片上に形成したセラミックス膜の厚さは、0.5(mm)である。
この熱サイクル耐久性試験では、特許第4031631号公報に記載のレーザ熱サイクル試験法を採用し、セラミックス層に対する加熱時間を3分、冷却時間を3分、最高界面温度を900℃とし、種々の最高表面温度を設定して、セラミックス層が試験片から剥離するまでの熱サイクル数を計測し、ΔTを求めた。なお、溶射粉の粒度分布は、レーザ散乱回折式粒度分布測定装置(シーラス社製)で測定した。
図7に示すように、YSZ溶射粉の積算粒度10%粒径が30μmになると、熱サイクル耐久性の指標であるΔTが急激に上昇し始め、その値は約600℃になる。そして、積算粒度10%粒径が40μmになると、ΔTが約800℃になり、以降、積算粒度10%粒径が40μmより大きくなってもあまり変化しなくなる。
すなわち、熱サイクル耐久性の面から、YSZ溶射粉の積算粒度10%粒径は、30μm以上が好ましく、40μm以上がより好ましい。
ところで、本実施形態において、図8に示すように、バージン溶射粉(図中、破線で示す)は、積算粒度10%粒径が22〜24μm以上である。このバージン溶射粉をプラズマ溶射して回収すると、回収した溶射粉(図中、一点鎖線で示す)は、積算粒度10%粒径が20〜22μm以上になり、粒径が小さくなる。本実施形態では、回収後に分級することで、積算粒度10%粒径が30μm以上で150μm未満の再生溶射粉(図中、実線で示す)を得ている。すなわち、本実施形態では、バージン溶射粉より、平均粒径の大きな再生溶射粉を得ている。
以上のように、YSZ再生溶射粉は、YSZバージン溶射粉よりも、平均粒径が大きく、積算粒度10%粒径が30μm以上で150μm未満であるため、このYSZ再生溶射粉で形成されたセラミックス層は、YSZバージン溶射粉で形成されたセラミックス層よりも、熱サイクル耐久性が高くなる。なお、本実施形態において、YSZ再生溶射粉の積算粒度10%粒径を150μm未満にしているのは、回収装置30で回収された回収粉中、150μm以上の回収粉には、ゴミ類が多く溶射粉が相対的に少ないこと、さらに、150μm以上の溶射粉では成膜効率が悪化するからである。
以上、本実施形態では、YSZ再生溶射粉でセラミックス層を形成することで、以上で説明した理由a,bの相互作用により、このセラミックス層の剥離可能性を低減させることができる。
具体的に、以下の表2に示すように、プラズマ加熱により熱処理(S3)したバージン溶射粉(サンプル3)では、熱伝導率の相対値が1で、熱サイクル耐久性の指標である温度差ΔTが500℃であった。また、電気ヒータ加熱又はアーク放電加熱により熱処理(S3)したバージン溶射粉(サンプル4)では、熱伝導率の相対値が1.2で、熱サイクル耐久性の指標である温度差ΔTが500℃であった。なお、熱伝導率の相対値は、サンプル3の熱伝導率を基準(1)にした熱伝導率比である。この熱伝導率は、低い程、遮熱性がよいことになり、遮熱セラミックス層の形成には好ましい。
一方、プラズマ加熱により熱処理(S3)したバージン溶射粉をプラズマ溶射した後、これ回収して、これに分級・分離処理(S22,S23)した再生溶射粉(サンプル5)では、熱伝導率の相対値が1で、熱サイクル耐久性の指標である温度差ΔTが540℃であった。また、電気ヒータ加熱又はアーク放電加熱により熱処理(S3)したバージン溶射粉をプラズマ溶射した後、これ回収して、これに分級・分離処理(S22,S23)した再生溶射粉(サンプル6)では、熱伝導率の相対値が1.2で、熱サイクル耐久性の指標である温度差ΔTが640℃であった。
Figure 2014167171
すなわち、再生溶射粉は、バージン溶射粉に対して、熱伝導率を上昇させることなく、熱サイクル耐久性を1.067〜1.082(1.08=540/500、1.067=640/600)倍にすることができる。
「溶射設備の第二実施形態」
次に、本発明に係る溶射設備の第二実施形態について、図9及び図10を用いて説明する。
本実施形態の溶射設備は、図9に示すように、第一実施形態の溶射設備と同様、高速フレーム溶射装置70、プラズマ溶射装置10、回収装置30、分級装置40a、分離装置50を備えている。すなわち、本実施形態の溶射設備は、第一実施形態における溶解容器61(図1)を備えていないことを除いて、第一実施形態の溶射設備と基本的に同じである。
本実施形態は、回収工程で、MCrAlY溶射粉に対して、相対的に僅かのYSZ溶射粉しか回収できない場合、言い換えると、YSZ溶射粉に対して、相対的に非常に多いMCrAlY溶射粉を回収できる場合の実施形態である。このため、本実施形態では、第一実施形態と異なり、MCrAlY溶射粉を再利用する。すなわち、本実施形態では、高速フレーム溶射(S13(図5(B))の際に使用され、対象母材1に付かなかったMCrAlY溶射粉の再生処理を実行する。そこで、以下では、図10に示すフローチャートに従って、MCrAlY溶射粉の再生処理(S20a)について説明する。
高速フレーム溶射(S13)の際、回収装置30の吸引ファン32は駆動している。このため、フレーム溶射ガン71から噴射されたMCrAlY溶射粉のうち、対象母材1に付かなかったMCrAlY溶射粉は、回収ダクト31内に吸い込まれて回収される(S21a)。この際、溶射ブースB内に浮遊していた各種粉類も回収ダクト31内に吸い込まれる。この各種粉類には、ブラスト処理の際(S12)に用いたアルミナ粒、セラミックス層の形成の際(S14)に用いたYSZ溶射粉、溶射ブースB内の浮遊ゴミ等が含まれている。なお、フレーム溶射(S13)の際にのみ、この回収処理(S21a)を実行してもよいが、プラズマ溶射(S14)の際にも実行してもよい。さらに、溶接ブースB内の環境をクリーンにするために、溶射ブースBを何からの処理で使用している間中、この回収処理(S21a)を実行してもよい。
回収ダクト31内に吸い込まれた粉類、つまり回収粉は、分級装置40aで、粒径が20μm未満の回収粉と、粒径が20μm以上で150μm未満の回収粉と、150μm以上の回収粉とに分けられて、粒径が20μm以上で150μm未満の回収粉が抽出される(S22a)。より正確には、積算粒度10%粒径が20μm以上で150μm未満の回収粉が抽出される。一方、粒径が20μm未満の回収粉、及び粒径が150μm以上の回収粉は、廃棄される。粒径が20μm未満の回収粉は、MCrAlY溶射粉等を含んでいるが、粒径が小さくTBC層を形成するための溶射紛として適さないため、廃棄される。
また、粒径が150μm以上の回収粉は、MCrAlY溶射粉等が少なく、逆に、砂粒等のごみ類が多いため、廃棄される。
分級装置40aで抽出された回収粉は、第一実施形態と同様、分離装置50で、回収粉に含まれている各物質の電気的性質の違いにより、分離される(S23a)。すなわち、分離装置50に送られてきた回収粉のうち、セラミックであるYSZ溶射紛を主とする回収粉は、主として回収容器55内の正極板側部55aに落ちる。また、金属であるMCrAlY溶射粉を主とする回収粉は、主として回収容器55内の負極板側部55cに落ちる。また、回収容器55の中間部55bには、YSZ溶射粉及びMCrAlY溶射粉が落ちる。
回収容器55の正極板側部55aに回収された回収粉、つまり、YSZ溶射粉を主とする回収粉は廃棄される。これは、本実施形態では、前述したように、MCrAlY溶射粉に対して、相対的に僅かのYSZ溶射粉しか回収できないからである。また、回収容器55の中間部55bに回収された回収粉は、分離装置50の摩擦帯電装置51内に再度投入されて、この回収粉に含まれている各物質の電気的性質の違いにより、再分離される。また、回収容器55の負極板側部55cに回収された回収粉、つまり、MCrAlY溶射粉を主とする回収粉は、回収容器55から取り出されて、MCrAlY再生溶射粉として再利用される(S25a)。
すなわち、本実施形態では、分離処理(S23a)の完了で、MCrAlY溶射粉の再生処理(S20a)が終了する。
ここで、本実施形態の分離装置50による静電分離効果の具体例について説明する。以下の表3に示すように、回収処理(S21a)で得られた回収粉のサンプル7中のYSZの含有率が、7.52(wt%)であった場合、分級・分離処理(S22a,S23a)で抽出された回収粉のサンプル7中のYSZの含有率は、0.08(wt%)になる。すなわち、本実施形態では、分離装置50の回収容器55の負極板側部55cに回収された回収粉、つまり、MCrAlY溶射粉を主とする回収粉は、YSZの含有率が1(wt%)未満になる。
Figure 2014167171
MCrAlY溶射粉の再利用(S25a)では、MCrAlY溶射粉の再生処理(S20a)で得られたMCrAlY再生溶射粉を、フレーム溶射装置70の粉体供給装置83に投入し、MCrAlY溶射粉の投入量が少ない場合には、MCrAlYバージン溶射粉を追加する。そして、このフレーム溶射装置70の粉体供給装置83からMCrAlY溶射粉をフレーム溶射ガン71に供給して、このMCrAlY溶射粉を対象母材1に溶射する。すなわち、MCrAlY再生溶射粉をフレーム溶射のために再利用する。
以上、本実施形態では、MCrAlYバージン溶射粉を溶射に使用した後、これを回収して、再生溶射粉として再生させているので、溶射に使用するバージン溶射粉の量を少なくすることができ、結果として、溶射粉が溶射されて、表面に遮熱コーティング(TBC)層が形成された遮熱コーティング部材の製造コストを低減することができる。
また、本実施形態では、MCrAlY再生溶射粉でボンドコート層を形成するものの、MCrAlYバージン溶射粉でボンドコート層を形成した場合と比べて、ボンドコート層の性能劣化を抑えることができる。
具体的に、以下の表4に示すように、バージン溶射粉(サンプル8)で形成したボンドコート層に対して、300時間に渡って1000℃を維持した場合、このボンドコート層の表面に生成された酸化物(熱生成酸化物、TGO:Thermally Grown Oxide)の厚さは、5μmであった。また、バージン溶射粉をフレーム溶射した後、これを回収(S21a)して得られた溶射粉(サンプル9)で形成したボンドコート層に対して、前述と同様、300時間に渡って1000℃を維持した場合、このボンドコート層の表面に生成されたTGOの厚さは、12μmであった。なお、GTOがボンドコート層の表面に生成されると、セラミックス層に剥離方向の内部応力が作用する。このため、このGTOの厚さは薄いことが好ましい。
一方、バージン溶射粉をフレーム溶射した後、これを回収して(S21a)、分級・分離処理(S22a,S23a)した再生溶射粉(サンプル10)で形成したボンドコート層に対して、前述と同様、300時間に渡って1000℃を維持した場合、このボンドコート層の表面に生成されたTGOの厚さは、サンプル8と同様、5μmであった。
Figure 2014167171
すなわち、バージン溶射粉をフレーム溶射した後、分級処理(S22a)で、回収粉から粒径が20μm以上で150μm未満の回収粉を抽出し、この回収粉に対して分離処理(S23a)を施して得たMCrAlY再生溶射粉(サンプル10)は、TGOの厚さがバージン溶射粉(サンプル8)と同じで、ボンドコート層は性能劣化しない。
このように、MCrAlY再生溶射粉の積算粒度10%粒径が20μm以上であれば、ボンドコート層の性能劣化を抑えることができるので、本実施形態では、分級処理(S22a)で、回収粉から粒径が20μm以上の回収粉を抽出している。さらに、本実施形態では、成膜効率を考慮して、積算粒度10%粒径が150μm未満の回収粉を抽出している。
TGOの厚さは、MCrAlY溶射粉を構成する各粒子に付着している酸素元素の量と密接な関係がある。粒子は、粒径が小さくなるほど、単位体積量当たりの表面積が大きくなるため、溶射粉を構成する金属粒子は、粒径が小さくなるほど、単位体積量当たりの付着酸素元素量が多くなる。よって、MCrAlY溶射粉は、これを構成する粒子の径が大きい場合よりも、径が小さい場合の方が、TGOの厚さは厚くなる。
なお、MCrAlY再生溶射粉の積算粒度10%粒径が20μmよりも大きければ、例えば、30μmであれば、TGOの厚さがバージン溶射粉を用いる場合よりも薄くなるので、分級処理(S22a)では、回収粉から粒径が30μm以上の回収粉を抽出するようにしてもよい。
「溶射設備の第三実施形態」
次に、本発明に係る溶射設備の第三実施形態について、図11及び図12を用いて説明する。
本実施形態の溶射設備は、図11に示すように、第一実施形態の溶射設備と同様、高速フレーム溶射装置70、プラズマ溶射装置10、回収装置30、分級装置40a、分離装置50、溶解容器61を備えている。さらに、本実施形態の溶射設備は、分離装置50の回収容器55の正極板側部55aに回収された回収粉を吸引する吸引ファン65と、この吸引ファン65で吸引された分級装置66と、を備えている。
本実施形態は、回収工程で、YSZ溶射粉及びMCrAlY溶射粉のそれぞれを、回収に値するだけ回収できる場合の実施形態である。このため、本実施形態では、YSZ溶射粉及びMCrAlY溶射粉を再利用する。そこで、以下では、図12に示すフローチャートに従って、YSZ溶射粉及びMCrAlY溶射粉の再生処理(S20b)について説明する。
高速フレーム溶射(S13)及びプラズマ溶射(S14)の際、回収装置30の吸引ファン32は駆動している。このため、フレーム溶射ガン71から噴射されたMCrAlY溶射粉のうち、対象母材1に付かなかったMCrAlY溶射粉、さらに、プラズマ溶射ガン11から噴射されたYSZ溶射粉のうち、対象母材1に付かなかったYSZ溶射粉は、回収ダクト31内に吸い込まれて回収される(S21b)。この際、溶射ブースB内に浮遊していた各種粉類も回収ダクト31内に吸い込まれる。この各種粉類には、ブラスト処理の際(S12)に用いたアルミナ粒、溶射ブースB内の浮遊ゴミ等が含まれている。なお、フレーム溶射(S13)及びプラズマ溶射(S14)の際にのみ、この回収処理(S21b)を実行してもよいが、溶接ブースB内の環境を常時クリーンにするために、溶射ブースBを何からの処理で使用している間中、この回収処理(S21b)を実行してもよい。
回収ダクト31内に吸い込まれた粉類、つまり回収粉は、分級装置40aで、粒径が20μm未満の回収粉と、粒径が20μm以上で150μm未満の回収粉と、150μm以上の回収粉とに分けられて、粒径が20μm以上で150μm未満の回収粉が抽出される(S22b)。より正確には、積算粒度10%粒径が20μm以上で150μm未満の回収粉が抽出される。一方、粒径が20μm未満の回収粉、及び150μm以上の回収粉は、廃棄される。粒径が20μm未満の回収粉は、MCrAlY溶射粉やYSZ溶射粉を含んでいるが、粒径が小さいことから、TBC層を形成するための溶射紛として適さないため、廃棄される。また、粒径が150μm以上の回収粉は、MCrAlY溶射粉及びYSZ溶射粉が少なく、逆に、砂粒等のごみ類が多いため、廃棄される。
分級装置40aで抽出された回収粉は、以上の各第実施形態と同様、分離装置50で、回収粉に含まれている各物質の電気的性質の違いにより、分離される(S23b)。すなわち、分離装置50に送られてきた回収粉のうち、セラミックであるYSZ溶射紛を主とする回収粉は、主として回収容器55内の正極板側部55aに落ちる。また、金属であるMCrAlY溶射粉を主とする回収粉は、主として回収容器55内の負極板側部55cに落ちる。また、回収容器55の中間部55bには、YSZ溶射粉及びMCrAlY溶射粉が落ちる。
回収容器55の負極板側部55cに回収された回収粉、つまり、MCrAlY溶射粉を主とする回収粉は、第二実施形態と同様、回収容器55から取り出されて、MCrAlY再生溶射粉として再利用される(S25c)。また、回収容器55の中間部55bに回収された回収粉は、分離装置50の摩擦帯電装置51内に再度投入されて、この回収粉に含まれている各物質の電気的性質の違いにより、再分離される。
また、回収容器55の正極板側部55aに回収された回収粉、つまり、YSZ溶射粉を主とする回収粉は、吸引ファン65により、回収容器55の正極板側部55aから吸引されて、分級装置66に送られる。そして、この分級装置66により、粒径が30μm未満の回収粉と、粒径が30μm以上の回収粉とに分けられて、粒径が30μm以上の回収粉が抽出される(S22c)。なお、この分級装置66に送られる回収粉は、前段階で、既に粒径が150μm未満のものに分級されているため、この分級装置66により抽出される回収粉は、粒径が30μm以上で150μm未満の回収粉になる。
分級装置66で分級処理が施された、YSZ溶射粉を主とする回収粉には、第一実施形態と同様、溶解除去処理が施された後(S24b)、YSZ再生溶射粉として再利用される(S25b)。
以上、ステップ21b〜ステップ24bの処理で、YSZ溶射粉の再生処理が終了し、ステップ21b,22b,23bの処理で、MCrAlY溶射粉の再生処理が終了する。
以上、本実施形態では、バージンMCrAlY溶射粉及びバージンYSZ溶射粉のそれぞれを溶射に使用した後、これらを回収して、それぞれ再生溶射粉として再生させているので、溶射に使用するバージンMCrAlY溶射粉及びバージンYSZ溶射粉の量を少なくすることができる。このため、本実施形態によれば、第一実施形態、第二実施形態よりも、遮熱コーティング部材の製造コストを低減することができる。
なお、本実施形態では、積算粒度10%粒径が20μm以上で150μm未満のMCrAlY再生溶射粉と、積算粒度10%粒径が30μm以上で150μm未満のYSZ再生溶射粉と、を得るために、二つの分級装置40,66を設けているが、積算粒度10%粒径が30μm以上で150μm未満のMCrAlY再生溶射粉及びYSZ再生溶射粉を得ようとする場合には、後段の分級装置66、及びこの分級装置66に回収粉を導く吸引ファン65は不要である。
「溶射設備の変形例」
まず、図13を用いて、溶射設備の第一変形例について説明する。
以上の各実施形態の溶射設備は、いずれも、一つの溶射ブースB内で、フレーム溶射及びプラズマ溶射を行うものである。これに対して、本変形例の溶射設備は、フレーム溶射専用の溶射ブースB1、プラズマ溶射専用の溶射ブースB2が設けられている。
本変形例の回収ダクト30bは、その開口31c,31dが、フレーム溶射専用の溶射ブースB1、プラズマ溶射専用の溶射ブースB2のそれぞれに設けられ、その後、一つのダクトとして統合されている。本変形例では、この一つのダクトに統合された部分に、吸引ファン32が設けられている。この吸引ファン32以降の設備は、以上の各実施形態と同じである。なお、図13に示す溶射設備は、吸引ファン32以降の設備が第三実施形態の溶射設備と同じである。
以上、本変形例のように、各溶射種毎に溶射ブースが設けられている場合でも、各溶射ブースで用いられる溶射粉を再生することができる。
次に、溶射設備の第二変形例について説明する。
以上の各実施形態の溶射設備は、いずれも、分離装置に静電分離装置50を用いたが、この替わりに、磁石で磁性体を選択的に分離する磁気分離装置を用いてもよい。この磁気分離装置では、回収ダクト内に吸い込まれた回収粉から、金属であるMCrAlY溶射粉等が磁石に吸着する。分離装置として磁気分離装置を用いる場合には、図14に示すように、高勾配磁気分離装置50aを用いることが好ましい。この高勾配磁気分離装置50aは、例えば、超伝導磁石等の強力な電磁石51aによって形成される磁場内に、透磁性材で形成された筒52aを配置し、この筒52a内に強磁性ステンレスのウール材53aを置いて、ウールとウールの周辺の間に大きな磁気勾配を形成し、フール材53aを磁気フィルタとして機能させて、磁性体を吸着分離する装置である。
この高勾配磁気分離装置50aでは、金属であるMCrAlY溶射粉等が磁気フィルタとしてのウール材53aが吸着し、セラミックスであるYSZ溶射粉はウール材53aを通過する。そこで、吸引ファン40を駆動させて、溶射粉を回収している最中では、制御装置54aで、電磁石51aを磁化させ、磁気フィルタとしてのウール材53aに金属であるMCrAlY溶射粉等を吸着させて、ウール材53aに吸着しないYSZ溶射粉を筒52aから排出する。また、吸引ファン40が停止し、溶射粉が高勾配磁気分離装置50aに供給されなくなると、制御装置54aで、電磁石51aを消磁させ、ウール材53aに吸着していたMCrAlY溶射粉等をウール材53aから離脱させ、このMCrAlY溶射粉を筒52aから排出する。
このように、この高勾配磁気分離装置50aでは、MCrAlY溶射粉とYSZ溶射粉とを異なるタイミングで、同一の筒52aから排出する。そこで、これらの溶射粉の排出先を変えるために、筒52aの先には、切替え弁58を設けることが好ましい。
ここで、本変形例の高勾配磁気分離装置50aの磁気分離効果の具体例について説明する。以下の表5に示すように、回収処理(S21)で得られた回収粉のサンプル11,12中のMCrAlYの含有率が、それぞれ、5.34(wt%)、1.86(wt%)であった場合、分級処理、さらに磁気分離処理で抽出された回収粉のサンプル11,12中のMCrAlYの含有率は、0.09(wt%)、0.06(wt%)になる。すなわち、本変形例では、YSZ溶射粉を主とする回収粉は、MCrAlYの含有率が1(wt%)未満になる。
Figure 2014167171
1:対象母材(対象物)、2:ボンドコート層、3:セラミックス層、4:TBC層、10:プラズマ溶射装置、11:プラズマ溶射ガン(又は単に溶射ガン)、22:紛体供給装置、23:電源装置、30:回収装置、31:回収ダクト、32:吸引ファン、40,40a:分級装置、50,50a:分離装置、61:溶解容器、70:フレーム溶射装置、71:フレーム溶射ガン(又は単に溶射ガン)、83:粉体供給装置、84:電源装置

Claims (2)

  1. 対象物に溶射粉を溶射する溶射ガンと、
    前記対象物及び前記溶射ガンが内部に配置される溶射ブースと、
    前記溶射ブース内の気体を吸引する吸引ファンと、
    前記溶射ブース内で開口し、前記溶射ブース内の気体を前記吸引ファンに導く吸引ダクトと、
    を備え、
    前記溶射ブースを形成する壁のうち、前記対象物が配置される位置を基準にして前記溶射ガン側の壁には、前記溶射ブース内に空気を取り込む吸気孔が形成され、
    前記溶射ブースを形成する壁のうち、前記対象物が配置される位置を基準にして前記溶射ガンと反対側の壁に、前記吸引ダクトの前記開口側の部分が設けられ、前記開口が前記溶射ガンに向かって開口している、
    溶射設備。
  2. 請求項1に記載の溶射設備において、
    前記吸引ファンにより、前記溶射ブース内の気体と共に吸引された前記溶射粉を含む粉を、前記粉を構成する各粒子の電磁気的性質の相違により、電磁気場内で分離する分離装置を備える、
    溶射設備。
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