JP2011173875A - シストセンチュウ孵化促進物質吸着材、これを用いたシストセンチュウ孵化促進物質保持体、及びシストセンチュウ防除方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ゼオライトを含む多孔質焼結体からなり、陽イオン交換容量が20cmol/kg以上であり、且つ水道水に12時間浸漬して崩壊しない耐水性を有することを特徴とするシストセンチュウ孵化促進物質吸着材、その吸着材にシストセンチュウ孵化促進物質を吸着させたシストセンチュウ孵化促進物質保持体、及びその保持体を土壌に施用し、孵化したシストセンチュウの幼虫を餓死させるシストセンチュウの防除方法。
【選択図】なし
Description
(1)前記鉱物粉末が、粘土鉱物を含む。これにより、吸着材用組成物の成形が容易になり、より容易に一定の形状の本発明の吸着材を得ることができる。
(2)前記鉱物粉末が、天然ゼオライトを含む。ゼオライトは天然ゼオライト(天然のゼオライト鉱山から採掘される鉱物をいう)、及び合成ゼオライト(水熱合成法等により合成されたゼオライトをいう)のゼオライト系鉱物由来のものがある。天然ゼオライトは安価であり、本発明に適した陽イオン交換能を有しているので好ましい。
(3)前記天然ゼオライトが粘土鉱物を含む軟質ゼオライト(本発明において、粘土鉱物を含むゼオライト系鉱物をいう)である。天然ゼオライトが粘土鉱物を含むものであれば、別途粘土鉱物を混合する必要がなく、より容易に本発明の吸着材を製造することができる。
(4)前記天然ゼオライトが、北海道上士幌町で産出される軟質ゼオライトである。
(5)前記吸着材用組成物が、乾燥質量あたり90質量%以下の造孔剤を含む。造孔剤は焼結体に細孔を形成する効果を有するもので、焼成時に焼失するような粉末状の有機物や、それ自体が多孔性の火山灰、軽石等の火山砕屑物(及びその風化物)、珪藻土及び珪質頁岩等のものをいう。これにより、多孔質焼結体に更に細孔を増加させ、表面積を増加させることにより、より孵化促進物質を吸着し易い吸着材を製造することができる。多孔質焼結体の陽イオン交換能を考慮すると、造孔剤は70質量%以下が好ましい。
(6)前記造孔剤が、火山砕屑物、火山砕屑物の風化物、珪藻土、及び珪質頁岩からなる群から選択される少なくとも1種を含む。これにより、好ましい細孔径の細孔を有する吸着材を製造することができる。
(7)前記造孔剤が、農産物、農産加工品、又は農産廃棄物を含む。これにより、安価に且つ安全に細孔が増加された吸着材を製造することができる。
(8)前記造孔剤が、小麦ふすま、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉、及び小麦粉からなる群から選択される少なくとも1種を含む。これにより、安価に細孔が形成された吸着材を製造することができる。
本発明のシストセンチュウ孵化促進物質吸着材は、シストセンチュウ孵化促進物質を土壌に施用する際に、孵化促進物質の土壌中の均一な濃度分布を長期間維持させるために見出したものである。孵化促進物質を濃縮液等の状態で直接散布した場合は、天候の影響により、早期に拡散したり、土壌表面にのみに分布したりして、効果が持続しなかったり、部分的だったりするからである。
本発明の孵化促進物質吸着材は、上述のような多孔質焼結体であれば、どのように製造されても良いが、本発明の製造方法は、本発明の孵化促進物質吸着材を製造するのに適した方法である。
本発明のシストセンチュウ孵化促進物質保持体は、上述の本発明の吸着材にシストセンチュウ孵化促進物質を吸着させたものである。本発明の孵化促進物質保持体はどのように製造しても良い。後述する本発明の保持体の製造方法による他、例えば、シストセンチュウ寄主植物を水耕栽培したときの廃液、及びシストセンチュウ寄主植物の根からの滲出液及びこれらの液から得られた孵化促進物質濃縮液等、公知の方法により得た孵化促進物質を含む溶液に吸着材を浸漬したり、その溶液を吸着材に散布したりして製造しても良い。本発明の孵化促進物質保持体は、長期間シストセンチュウ孵化促進物質を保持し、土壌中で孵化促進物質を徐々に放出させることができるので、シストセンチュウ孵化促進物質を土壌中に長期間留まらせ、その効果を持続させることができる。
本発明のシストセンチュウ孵化促進物質保持体は、上述の通り、本発明の吸着材に孵化促進物質が吸着していればどのような方法で製造されても良いが、本発明の製造方法は、本発明の孵化促進物質保持体を製造するのに適した方法である。
本発明のシストセンチュウの防除方法は、まず、本発明のシストセンチュウ孵化促進物質保持体を、シストセンチュウのシストが含まれている土壌に施用する。土壌に施用する方法は、孵化促進物質保持体が土壌中に均一に混合されれば特に限定はない。例えば、ペレット状の孵化促進物質保持体を粉砕して圃場土壌に混合する。粉砕する際の粒度は特に限定はないが、直径1.5mm以下程度の粒状に粉砕して使用するのが好ましい。圃場に対する施用量としては特に限定はないが、10g/m2〜10kg/m2が好ましく、0.5〜2kg/m2が更に好ましい。土壌に施用する方法は、特に限定はないが、粒状肥料を施用する場合等の通常の方法で行うことができる。例えば、ブロードキャスター等を用いて均一に散布後、作土層全体にロータリーですき込むことができる。これにより、本発明の孵化促進物質保持体(粉砕物)が、シストセンチュウ孵化促進物質を土壌中に徐々に放出し、長期間留まらせることができるので、シストセンチュウのシストをその孵化促進物質に長期間曝し、孵化を促進させることができる。ここで、同じ寄主植物のシストセンチュウであれば、レース又はパソタイプを問わず孵化させることができる。
1.シストセンチュウ孵化促進物質吸着材の製造条件の検討
とかちゼオライト粉状品((株)共成レンテム製)に水分10質量%を加水し、ディスクペレッター(英機工業社製)を用いて、直径4mmのペレット状に成形した。得られた成形体を、電気炉を用いて焼成温度400〜900℃で2時間焼成し、実施例1〜3、及び比較例1、2の多孔質焼成体を得た。表1に各多孔質焼成体の陽イオン交換容量(CEC)及び耐水性を示す。CECはショーレンベルガー法を用いて測定した。即ち、各多孔質焼成体をカラムに充填し、1mol/L、pH7の酢酸アンモニウム溶液を浸透させ、粒子間の酢酸アンモニウム溶液を水−エタノール混合液で洗浄除去した後、別の塩溶液(塩化ナトリウム溶液)でアンモニウムイオンを交換抽出し、その量を測定した。また、耐水性の評価は、各多孔質焼成体を水道水に12時間浸漬した後、目視で多孔質焼結体の形状及び浸漬水の変化を観察し、多孔質焼結体の形状が変わらず、浸漬水が濁らないものを○、多孔質焼成体の形状の変化や浸漬水の濁りが生じたものを×とした。
ジャガイモシストセンチュウ孵化促進物質を含んだトマト水耕廃液を用いて、各種多孔質焼結体の孵化促進物質の吸着性と徐放性について試験した。即ち、まず、多孔質焼結体にシストセンチュウ孵化促進物質を吸着させるため、各種多孔質焼結体を前記トマト水耕廃液に1週間浸漬した。多孔質焼結体として、上述の実施例1と同様に製造した焼結体(実施例4)、実施例1において、ゼオライトの代わりにゼオライトと造孔剤として乾燥質量あたり10質量%の小麦ふすまを混合したものを用いた焼結体(実施例5)、上述の比較例2と同様に製造した焼結体(比較例3)、トマトの栽培に良く利用される1000℃焼成珪藻土(比較例4)を用いた。次に、浸漬後の多孔質焼結体を粉砕した後、粉砕物10gを純水100mlに浸漬し、シストセンチュウ孵化促進物質を純水中へ滲出させた。純水は1週間毎に交換し、3回目と5回目の交換後の純水中の孵化促進物質の濃度の指標として、ジャガイモシストセンチュウの孵化率を測定した。孵化率は、ジャガイモシストセンチュウ卵を試験する液4mlに浸漬し、1週間後に孵化せずに残っている卵数と、幼虫数を計数し、次の式によって求めた。
(式)幼虫数÷(卵数と幼虫数の合計)×100
その結果を表2に示す。
ジャガイモシストセンチュウ孵化促進物質を含んだトマト水耕廃液を用いて、多孔質焼結体の細孔径の孵化促進物質の吸着性への影響について試験した。即ち、細孔径を調整するため、多孔質焼結体として、上述の実施例1と同様に製造した焼結体(実施例6)、実施例1において、ゼオライトの代わりに、ゼオライトに造孔剤として乾燥質量あたり50質量%の珪質頁岩((有)稚内グリーンファクトリー社製)を混合したものを用いた焼結体(実施例7)、及びゼオライトに造孔剤として乾燥質量あたり40質量%の鹿沼土((株)鹿沼興産社製)を混合したものを用いた焼結体(実施例8)を使用し、上記2における吸着性の評価と同様に試験し、交換3回目純水のジャガイモシストセンチュウ孵化率(%)を測定した。各種多孔質焼結体の細孔径は自動比表面積・細孔分布測定装置(日本ベル社製:Belsorp miniII)用いて測定した。細孔分布の結果を図1に示し、ジャガイモシストセンチュウ孵化率の結果を表3に示す。
ジャガイモシストセンチュウ孵化促進物質を含んだトマト水耕廃液を用いて、多孔質焼結体製造時の造孔剤配合量の孵化促進物質の吸着性への影響について試験した。即ち、多孔質焼結体として、上述の実施例1と同様に製造した焼結体(実施例9)及び実施例1において、ゼオライトの代わりにゼオライトに造孔剤として乾燥質量あたり50質量%及び70質量%の珪質頁岩((有)稚内グリーンファクトリー社製)を混合したものを用いた焼結体(実施例10及び11)を使用し、上記2における吸着性の評価と同様に試験し、交換3回目純水のジャガイモシストセンチュウ孵化率(%)を測定した。その結果を表4に示す。
各種多孔質焼結体をワグネルポット(1/2000a)に充填し、トマト品種レッドオーレ(カネコ種苗社製)を約6ヶ月栽培し、ジャガイモシストセンチュウ孵化促進物質を吸着させ、ジャガイモシストセンチュウ孵化促進物質保持体を製造した。多孔質焼結体として、上述の実施例1において、ゼオライトの代わりにゼオライトと造孔剤として乾燥質量あたり50質量%の火山灰を混合したものを用いた焼結体(実施例12)、実施例2と同様に製造した焼結体(実施例13)、実施例3と同様に製造した焼結体(実施例14)、比較例2と同様に製造した焼結体(比較例5)、上述の1000℃焼成珪藻土(比較例6)、ゼオライトと同様に物質の吸着能があるとされる牛骨ペレット (比較例7)を用いた。牛骨ペレットとは牛骨粉を直径3mmのペレット状に成形し、700℃で焼成して得られるものである。次に、得られた各孵化促進物質保持体を粉砕し、粉砕物10gとジャガイモシストセンチュウのシスト含有土壌100gを混和した。そして、各孵化促進物質保持体混和土壌の32日後のシストセンチュウの孵化幼虫の数量を測定し、各孵化促進物質保持体の効果を評価した。孵化幼虫の数量は、土壌からベルマン法(漏斗の出口を閉じて水を入れ、各土壌をろ紙に包んだものを72時間浸漬し、這い出た幼虫を漏斗底に集める方法)により幼虫を分離し、計測した。その結果を表5に示す。
上述の実施例1と同様な多孔質焼結体をワグネルポット(1/2000a)に充填し、トマト品種レッドオーレ(カネコ種苗社製)を約6ヶ月栽培し、ジャガイモシストセンチュウ孵化促進物質を吸着させ、ジャガイモシストセンチュウ孵化促進物質保持体を製造した(実施例15、16)。また、上記トマト栽培に用いた後の多孔質焼結体に、更にトマト水耕栽培廃液をその多孔質焼結体あたり20質量%添加して乾燥させた、ジャガイモシストセンチュウ孵化促進物質保持体も製造した(実施例17、18)。
上述の実施例15、16と同様のジャガイモシストセンチュウ孵化促進物質保持体(実施例19、20)と、上記トマト栽培に用いた後の多孔質焼結体に、更にトマト水耕栽培廃液をその多孔質焼結体あたり20質量%添加して乾燥させた、ジャガイモシストセンチュウ孵化促進物質保持体(実施例21、22)を製造した。
(1)シストセンチュウ孵化促進物質保持体の製造
実施例1と同様に製造したシストセンチュウ孵化促進物質吸着材を栽培用培地基材としてコンテナB−32((株)サンコー製)に充填し、トマト品種レッドオーレ(カネコ種苗社製)を6ヶ月間栽培し、吸着材にジャガイモシストセンチュウ孵化促進物質を吸着させた。栽培後の吸着材をロールクラッシャ(マキノ社製)にて粉砕し、振動ふるい(晃栄産業社製)にて篩い分けし、直径1.5mm以下の粉砕物をジャガイモシストセンチュウ孵化促進物質保持体として得た。
(2)ジャガイモシストセンチュウ孵化促進物質保持体によるジャガイモシストセンチュウの孵化促進効果の評価
上記方法で得られたジャガイモシストセンチュウ孵化促進物質保持体を圃場に1m2あたり0.5、1.0、2.0kg(実施例23〜25)になるように人力で均一に散布し、小型ロータリー(TMA300(クボタ社製)で作土層全層に混和した。次に15日経過後、各試験区間の土壌をサンプリングし、ベルマン法により孵化したシストセンチュウの幼虫を分離し、土壌20gあたりの孵化幼虫数を計測した。その結果を表8に示す。
上述の8(1)と同様に製造したジャガイモシストセンチュウ孵化促進物質保持体を圃場に1m2あたり0.5、1.0、2.0kg(実施例26〜28)になるように人力で均一に散布し、小型ロータリー(TMA300(クボタ社製)で作土層全層に混和した。散布時と散布3ヶ月後に各試験区の土壌をサンプリングし、シストセンチュウの卵密度を測定した。卵密度は、サンプリングした土壌を水に分散させ、水面に浮いたシストを回収して計測することで測定した。3回の反復試験を行い、保持体散布前と3ヶ月後の卵密度の変化率の平均値を評価した。その結果を表9に示す。
実施例1と同様に製造したシストセンチュウ孵化促進物質吸着材を栽培用培地基材としてコンテナB−32((株)サンコー製)に充填し、ナス品種(千両二号)を約6ヶ月間栽培し、吸着材にジャガイモシストセンチュウ孵化促進物質を吸着させた。栽培後の吸着材を乳鉢により粉砕後、篩い分けし、直径1.5mm以下の粉砕物をナス由来ジャガイモシストセンチュウ孵化促進物質保持体として得た。
実施例1と同様に製造したシストセンチュウ孵化促進物質吸着材を栽培用培地基材としてコンテナB−32((株)サンコー製)に充填し、ダイズ品種(サヤコマチ)を約6ヶ月間栽培し、吸着材にダイズシストセンチュウ孵化促進物質を吸着させた。栽培後の吸着材を乳鉢により粉砕後、篩い分けし、直径1.5mm以下の粉砕物をダイズシストセンチュウ孵化促進物質保持体として得た。
なお、本発明は上記の実施の形態及び実施例の構成に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々変形が可能である。
Claims (15)
- ゼオライトを含む多孔質焼結体からなり、陽イオン交換容量が20cmol/kg以上であり、且つ水道水に12時間浸漬して崩壊しない耐水性を有することを特徴とするシストセンチュウ孵化促進物質吸着材。
- 前記陽イオン交換容量が30〜120cmol/kgである請求項1に記載のシストセンチュウ孵化促進物質吸着材。
- 請求項1及び2に記載のシストセンチュウ孵化促進物質吸着材を製造する方法であって、
ゼオライトを含有する鉱物粉末を乾燥質量あたり10質量%以上含む吸着材用組成物を成形し、成形体を得る工程、及び
前記成形体を600〜800℃で焼成し、多孔質焼結体を得る工程、
を含むことを特徴とする製造方法。 - 前記鉱物粉末が、粘土鉱物を含む請求項3に記載の製造方法。
- 前記鉱物粉末が、天然ゼオライトを含む請求項3又は4に記載の製造方法。
- 前記吸着材用組成物が、乾燥質量あたり90質量%以下の造孔剤を含む請求項3〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記造孔剤が、火山砕屑物、火山砕屑物の風化物、珪藻土、及び珪質頁岩からなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項6に記載の製造方法。
- 前記造孔剤が、農産物、農産加工品、又は農産廃棄物を含む請求項6又は7に記載の製造方法。
- 前記造孔剤が、小麦ふすま、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉、及び小麦粉からなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項6〜8のいずれか1項に記載の製造方法。
- 請求項1又は2に記載のシストセンチュウ孵化促進物質吸着材に、シストセンチュウ孵化促進物質を吸着させたシストセンチュウ孵化促進物質保持体。
- 請求項1又は2に記載のシストセンチュウ孵化促進物質吸着材を栽培用培地基材として、シストセンチュウ寄主植物を栽培することにより、当該寄主植物のシストセンチュウ孵化促進物質を前記吸着材に吸着させることを特徴とするシストセンチュウ孵化促進物質保持体の製造方法。
- 前記シストセンチュウ寄主植物が、ナス科植物又はマメ科植物である請求項11に記載の製造方法。
- 前記シストセンチュウ寄主植物が、トマトである請求項11又は12に記載の製造方法。
- 請求項11〜13のいずれか1項に記載の製造方法により製造されたことを特徴とするシストセンチュウ孵化促進物質保持体。
- 請求項10又は14に記載のシストセンチュウ孵化促進物質保持体を、シストセンチュウのシストが含まれている土壌に施用し、その後所定の期間、当該シストセンチュウの寄主植物が存在しない状態を維持し、孵化したシストセンチュウの幼虫を餓死させるシストセンチュウの防除方法。
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