JP5401656B2 - 粘土熱処理粒状物 - Google Patents
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本発明の他の目的は、水田用の粘土熱処理粒状物からなる土壌改良剤及びその製造方法を提供することにある。
200℃×2時間乾燥物について、スメクタイトの[001]面のX線回折ピークが、2θ=5.0乃至7.5度の領域に実質上存在せず、且つ水中に5時間浸漬後の105℃×2時間乾燥物について、スメクタイトの[001]面のX線回折ピークを2θ=5.0乃至7.5度の領域に有しており、
当該粒状物1gを水100mlに5時間浸漬した後において、元の粒形状が保持され、粒の崩壊が見られないことを特徴とする粘土熱処理粒状物からなる土壌改良剤が提供される。
本発明において用いるスメクタイト系粘土(A)は、モンモリロナイトやバイデライトに代表され、それらはSiO4四面体層−AlO6八面体層−SiO4四面体層の三層からなる層状構造を有し、これらの八面体層のAlの一部がMgやFe(II)に、四面体層のSiの一部がAlにと低原子価の異種金属に同型置換された基本骨格を有し、結晶格子はその置換部分に陰電荷を生じるが、これらの積層層間にはそれにつり合う量のカチオンと水が存在し、電荷的には中和されている。即ち、スメクタイト系粘土はこのような置換金属や層間元素の種類や量に応じたカチオン交換能を示す。したがって、このようなカチオン交換能や吸着能により、作物の生育に有用な元素、例えば窒素(アンモニア)、リン(リン酸)、カリウム、カルシウム、マグネシウム、イオウ(硫酸)などを土壌中から捕捉し、保肥力を維持することができるのである。具体的には、施肥によって土壌に供給されたアンモニア、窒素、カリ、カルシウム、マグネシウム等の肥料成分は、NH4 +、K+、Ca2+、Mg2+等の陽イオンとして層間に取り込まれ、硝酸塩(窒素)、リン酸塩(リン)、硫酸塩(イオウ)などは、NO3 −、PO4 3−、SO4 2−等の陰イオンとして基本三層構造端部のAl原子(或いはMgやFe原子)等に吸着乃至結合する。このようにスメクタイト系粘土に捕捉された肥料成分が、作物に直接吸収・利用されるか、例えば微生物の細胞に吸収・利用されて排出され、さらに作物に吸収・利用されるというように循環利用されるとき、保肥力が発揮されるのである。
本発明において、上述したスメクタイト系粘土と併用する草木質としては、セルロース及びヘミセルロースを主成分としており、さらにリグニンを含有し、ケイ酸分含量が高い(通常、10%以上)イネに由来する籾殻や稲藁が使用される。即ち、これらには、土壌から吸収されたケイ酸分やミネラル分を含んでおり、特にケイ酸分は、元々、作物に吸収され易いものだからである。
本発明においては、前述したスメクタイト系粘土(A)と草木質(B)とを混合し、造粒し、次いで熱処理することにより、粘土熱処理粒状物を製造する。
セルロース、ヘミセルロース:
(C6H10O5)n=(C6・H10O5)n
=(C6・5H2O)n=[脱水]⇒(C)6n
リグニン: (次行の化学組成は岩波・理化学辞典より引用)
C18H24O11〜C40H45O18
=C18・H2・H22O11〜C40・H9・H36O18
=[脱水]⇒(C)18〜40・H2〜9
かくして得られる本発明の粘土熱処理粒状物は、スメクタイト系粘土熱処理成分、草木質の炭化成分及び草木質由来のケイ酸分を含有している。
また、各試験方法は下記の方法に従った。
測定試料の調製:
粒状または粗粒の試料は常法により乳鉢で粉砕して粉末状の測定試料とする。
X線回折装置:
(株)リガク製、MultiFlex
測定条件:
X線=Cu−Kα線、管電圧=40kV、管電流=30mA、
発散スリット=0.15mm、散乱スリット=1°、受光スリット=0.15mm
走査範囲:
回折角(2θ)=3°〜40°
水中浸漬前のX線回折(A):
粒状物試料1gを200℃で2時間乾燥し、上記方法によりX線回折をおこなう。
水中浸漬後のX線回折(B):
粒状物試料1gを水100mLに投入し、水中に5時間浸漬後に固液分離した試料を105℃で2時間乾燥し、同様にX線回折をおこなう。
定層間拡張性:
200℃×2時間乾燥物についてのX線回折(A)において、スメクタイトの[001]面のX線回折ピークが、2θ=5.0乃至7.5度の領域に実質上存在せず、且つ水中に5時間浸漬後の105℃×2時間乾燥物についてのX線回折(B)において、スメクタイトの[001]面のX線回折ピークを2θ=5.0乃至7.5度の領域に有しているとき、再水和による定層間拡張性があると判定し、下記の判定記号で表わす。
○・・・X線回折像が上記要件を満たしており、水中浸漬により粘土成分が再水和
(層間に水を保持)することによって保水性を発現している。
×・・・X線回折像が上記要件を満たしていない。
―・・・水中浸漬により粒が崩壊・泥状化して固液分離困難。
但し、ここで「[001]面のX線回折ピークを2θ=5.0乃至7.5度の領域に有している」とは、該ピークの頂点が目視で1つに明瞭に特定でき、該頂点位置のベースラインからのy軸方向への高さ(強度:CPS)をそれを基準にした該ピークの半値幅(2θ:°)で除した数値が例えば100以上あるような明瞭な山形のピークが認められることであり、逆に該ピークが「実質上存在せず」とは、上記のような明瞭な山形のピークが2θ=5.0乃至7.5度の領域には存在しないことである。又、本発明の定層間拡張性に関する上記要件は2θ=7.5度を越える領域に存在するピークには関係しない。
粒状物試料1gを水100mLに投入し、水中に浸漬したときの崩壊の有無と2時間浸漬後の粒の硬さから、粒子形状の保持性を評価し、次の評価記号で表わす。
○・・・水中に投入して5時間以上浸漬しても元の粒形状を保持し、粒の崩壊が見
られない。
×・・・水中に投入して数秒後から5時間以内に粒が崩壊して泥状化し、元の粒形
状は保たれていない。
新潟県農林水産部発行(H11.3)「土壌及び植物分析法の手引」の「12陽イオン交換容量(CEC)」の方法に準拠
新潟県農林水産部発行(H11.3)「土壌及び植物分析法の手引」の「16有効態けい酸(SiO2)」の方法に準拠
粒状物試料5gを95gの純水に入れて、全体をガラス棒により約10回かき回してから15分間静置したのち、上部液のpHをガラス電極式pHメーターを用いて測定する。
110℃乾燥した試料150gを450gの純水に分散させ、水酸化ナトリウム(NaOH)53.3gを加えて、100℃×5時間加熱攪拌処理する。放冷し、溶解反応液の全重量を測定する。該溶解母液を1日以上静置して固形分を沈降させ、透明な上澄液を採取して、該溶液部分のSiO2濃度を定量する。計算により試料100gから溶出したSiO2量を求め、試料中の可溶性ケイ酸(%)とする。
スメクタイト系粘土(A):
新潟県新発田市産酸性白土の塊状物約350kgを前押出式混練造粒機(エックペレッター,造粒板:6mmΦ)にかけて造粒し、粘土粗粒物(水分:42.0%,pH:5.2)を得た。
草木質(B):
新潟県新発田市産水稲の乾燥籾殻約260kgを衝撃式粉砕機(微粉砕ハンマーミル)にかけて粉砕し、籾殻粉末(水分:5.0%、pH:5.7)を得た。
造粒・乾燥:
スメクタイト系粘土(A)として得られた粘土粗粒物300kgと草木質(B)として得られた籾殻粉末183gを適量の水とともに混合し、前押出式混練造粒機(造粒板:5mmΦ)に2回かけてのち、さらに同造粒機(造粒板:3mmΦ)に1回かけてA‐B混合造粒物(水分37.8%)を得た。次いで棚式乾燥機(110℃)で乾燥し、造粒物約350kgを得た。
熱処理:
得られた造粒物をステンレス鋼製バットに約5cmの厚さに敷き入れ、箱型電気乾燥機に入れて、250℃まで昇温し、該温度で40分間熱処理すると、発煙とともに脱水・炭化反応が進み、真黒な粒状物を得た。
得られた粒状物の試験結果等を表1に示した。
実施例1で得られた乾燥造粒物を回転式乾燥機に連続チャージして熱処理(滞留時間:約30分、出口温度:300〜350℃)すると、発煙とともに脱水・炭化反応が進み、真黒な粒状物を得た。
得られた粒状物の試験結果等を表1に示した。
スメクタイト系粘土(A):
新潟県新発田市産サブベントナイトの塊状物約2kgを前押出式混練造粒機(実験用小型、造粒板:5mmΦ)にかけて造粒し、粘土粗粒物(水分:33.0%,pH:9.0)を得た。
草木質(B):
新潟県岩船郡山林産楢木由来のオガクズを篩(18.5メッシュ:0.85mmΦ)で篩ってオガクズの粉末(水分:22.6%、pH:5.8)を得た。
造粒・乾燥:
スメクタイト系粘土(A)として得られた粘土粗粒物1kgと草木質(B)として得られたオガクズ粉末433gを適量の水とともに混合し、前押出式混練造粒機(実験用小型、造粒板:5mmΦ)に2回かけてのち、さらに同造粒機(造粒板:3mmΦ)に1回かけてA‐B混合造粒物(水分38.5%)を得た。次いで箱型電気乾燥機(110℃)で乾燥し、造粒物約1kgを得た。
熱処理:
得られた造粒物をステンレス鋼製バットに約5cmの厚さに敷き入れ、箱型電気乾燥機に入れて、250℃まで昇温し、該温度で40分間熱処理すると、発煙とともに脱水・炭化反応が進み、真黒な粒状物を得た。
得られた粒状物の試験結果等を表1に示した。
熱処理を温度150℃で行った以外は実施例1と同様の操作で製した。
すなわち、実施例1で得られた混合乾燥造粒物をステンレス鋼製バットに約5cmの厚さに敷き入れ、箱型電気乾燥機に入れて、150℃まで昇温し、該温度で40分間熱処理し、黄土色の粒状物を得た。
得られた粒状物の試験結果等を表1に示した。
実施例3で得られたサブベントナイト由来の粘土粗粒物1kgと籾殻くん炭(市販品、水分:16.6%、pH:11.1)200gを適量の水とともに混合し、前押出式混練造粒機(実験用小型、造粒板:5mmΦ)に2回かけてのち、さらに同造粒機(造粒板:3mmΦ)に1回かけてA‐B混合造粒物(水分38.5%)を得た。次いで箱型電気乾燥機(110℃)で乾燥し、造粒物約1kgを得た。
得られた造粒物をステンレス鋼製バットに約5cmの厚さに敷き入れ、箱型電気乾燥機に入れて、150℃まで昇温し、該温度で40分間熱処理し、暗灰色の粒状物を得た。
得られた粒状物の試験結果等を表1に示した。
通常の水田用土壌が敷き詰められた9個のコンクリートポット(1.6m×1.0m)の土壌上面から約
20cmの層に、試験区として実施例1による粘土熱処理粒状物を、m2当り300g(応用実施例1−1、3ポット)、150g(応用実施例1−2、3ポット)となるように、基肥とともに播種6日前に鋤き込んだ。対照区として基肥だけを同量鋤き込んだもの(応用比較例1−1、3ポット)も用意した。
播種(発芽直後の種籾、品種:コシヒカリ)は、植栽密度:100株/m2の直播方式で平成16年5月10日に行い、追肥は6月20日と7月30日に行った。収穫は播種から135日後の9月22日に行った。尚、8月31日には台風の影響による強風(5〜10m/s)を受け、一部のポットで茎部が湾曲するなびき型倒伏が見られた。
得られた試験結果等を表2に示した。
通常の畑地土壌を篩(8メッシュ、2.4mmΦ)を通して細粒の培土となし、同培土1Lと同容量の実施例1による粘土熱処理物1Lをよく混ぜ合わせて混合培土(応用実施例2−1)となし、その1.5Lをプランター(素焼きの陶製鉢、内容積:2L)に敷き入れた。
比較として、上記粘土熱処理粒状物の代わりに、比較例1による粒状物(籾殻−粘土混合粒状物)、市販の農園芸・人工培土用の土壌改良資材としてパーライト(粒状物、16メッシュ上:約50%)のそれぞれ1Lを、上記の畑地土壌を篩を通して細粒となした培土1Lとよく混ぜ合わせた混合培土(応用比較例2−1、2−2)となし、それぞれ1.5Lを上記同類のプランターに敷き入れた。
それぞれ混合培土の入った3つの鉢を110℃に温度設定された乾燥棚に36時間置き、全て乾燥土となしてその重量を算出した。純水を鉢の上から全面に満遍なく注いで給水し、培土が抱水しきれない過剰の水が底の排水孔から流れ出したところで給水を止めて1分間置いてからろ紙で底部外面(排水孔周囲)に付着している水を拭き取って重量を秤り、前に算出の乾燥土の重量との差から鉢全体による抱水量(1次抱水量)を算出した。つぎに、それぞれ抱水している3つの鉢を60℃の乾燥機に入れて24時間置き、渇水下の高温乾燥気候条件を模した処理を行なった後の抱水量(2次抱水量)を同様にして算出した。さらに、市販の液体肥料原液(ハイポネックス、内アンモニア性窒素:2.9%)の250倍希釈液200mLずつを清浄なプラスチック製トレイの上に置いたそれぞれの鉢に上から満遍なく注ぎ、1時間置いてから、純水を鉢の上から全面に満遍なく注いで給水し、培土が抱水しきれない過剰の水が底の排水孔から流れ出したところで給水を止めた。1分間置いてからろ紙で底部外面(排水孔周囲)に付着している水を拭き取って重量を秤り、前と同様に鉢全体による抱水量(3次抱水量)を算出した。また、同時に、トレイに流れ出た水を傾しゃ(デカンテーション)により約2mL採取し、ネスラー試薬を5滴加えて、褐色沈殿の生成の様子からアンモニア性窒素の有無の程度を観察し、混合培土相のアンモニウムイオンに対する吸着・捕捉力の程度を保肥力の一つの指標と考えて下記の評価基準により定性的に表わした。本試験で得られた結果については表3に示した。
○・・・施肥後の給水で流出した水中のアンモニア量は全く無いか極微少量(褐色
沈殿:−〜±)で、混合培土相に殆ど吸着乃至は保持されているとみら
れ、保肥力が高い。
△・・・施肥後の給水で流出した水中のアンモニア量が或程度(褐色沈殿:+〜+
+)あり、混合培土相にも或程度保持されているとみられる。
×・・・施肥後の給水で流出した水中のアンモニア量が液体肥料原液の500倍希
釈液に近い程度(褐色沈殿:+++)あり、混合培土に吸着されたアンモ
ニアはあまり多くなく、保肥力は低い。
上記のように、3種の混合培土1.5Lが充填され、液体肥料の施肥(元肥)と給水がなされた3つの鉢それぞれの中央部に指で窪み(3ヶ所)をつくり、そこへ市販の種子(品種:べんり菜、標準発芽率:85%以上)を1粒ずつ置いて、上から2〜3mmの厚さに土をかけ、ろ紙を置いてその上から散水により給水する。播種後の鉢は屋内に置き、2日後には発芽が見られ、3日後には各鉢の全ての種子(3粒)が発芽し双葉となっていた。各鉢の双葉の3体の大きさに僅かの差があり、最も小さいものを間引きして2体を残した。その後、鉢は屋外に出して露天に曝し、適宜給水した。14日後に、各鉢の2体の生長に僅かに差があるが、僅かに大きい方の1体を残して他の1体は間引きし、その生育データをとった。元肥に用いたものと同じ液体肥料200mLを追肥し、その後は適宜給水だけをして35日後に収穫をして栽培試験を終了した。本実験で得られたべんり菜の生育データ等も合わせて表3に示した。
Claims (6)
- スメクタイト系粘土(A)100重量部と、籾殻または稲藁からなる草木質(B)25乃至150重量部とを混合し、該混合物を造粒し、次いで該造粒物を200乃至350℃の温度で熱処理することを特徴とする粘土熱処理粒状物からなる土壌改良剤の製造方法。
- 前記熱処理を230乃至300℃の温度で行う請求項1に記載の土壌改良剤の製造方法。
- 前記混合物の造粒を押出成形により行う請求項1または2に記載の土壌改良剤の製造方法。
- スメクタイト系粘土(A)100重量部と、籾殻または稲藁からなる草木質(B)25乃至150重量部とを熱処理して得られた粘土熱処理粒状物からなる土壌改良剤において、
200℃×2時間乾燥物について、スメクタイトの[001]面のX線回折ピークが、2θ=5.0乃至7.5度の領域に実質上存在せず、且つ水中に5時間浸漬後の105℃×2時間乾燥物について、スメクタイトの[001]面のX線回折ピークを2θ=5.0乃至7.5度の領域に有しており、
当該粒状物1gを水100mlに5時間浸漬した後において、元の粒形状が保持され、粒の崩壊が見られないことを特徴とする粘土熱処理粒状物からなる土壌改良剤。 - カチオン交換容量が30meq/100g以上である請求項4に記載の土壌改良剤。
- 水田用である請求項5に記載の土壌改良剤。
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