JP5401656B2 - 粘土熱処理粒状物 - Google Patents

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本発明は、籾殻または稲藁からなる草木質とスメクタイト系粘土とを熱処理して得られる粘土熱処理粒状物からなる土壌改良剤に関するものである。
近来、堆肥等の有機質肥料の代わりに無機質化学肥料が多く使用され、また作物の病虫害防除のための農薬や除草剤などの多用により、水田や畑の作物に有用な土壌微生物が減り、これらの増殖の適正なバランスが崩れてきている。このため、土壌微生物群がつかさどる作物の生育に有用な元素(例えば窒素、リン、カリウム、カルシウム、マグネシウム、イオウなど)の循環が阻害され、一層、無機化学肥料を頻繁に追肥しなければならないという悪循環が生じている。
また、水田では、ケイ酸植物の典型である稲の連作(1〜2期/年)によって、元来、土壌に含まれている非晶質ケイ酸、オパール(たん白石)などの低結晶質ケイ酸、クリストバライト(ケイ石)などの結晶質ケイ酸の一部が、水の存在下でポリケイ酸イオンやケイ酸コロイド粒子のような可給態ケイ酸(別称:有効態ケイ酸)となって作物に吸収され、土壌中から徐々に減少していく。従来は、このようなケイ酸分が吸収されている籾殻や稲藁を発酵させて堆肥として撒いたり、或いは直接散布して土壌に循環させていたが、最近では、このようなケイ酸分の循環を行うことが以前より少なくなり、このため、稲等に吸収されやすいケイ酸分が土壌中から漸減し、作物の生育に影響を与えている。
上記のような観点から、本発明者等は先に、籾殻粉末とスメクタイト系粘土等のアルミノケイ酸塩とを混合して造粒することにより得られる籾殻含有組成物を提案した(特許文献1)。
即ち、上記の籾殻含有組成物は、これを土壌に散布することにより、籾殻中のケイ酸分を土壌中に補給すると同時に、スメクタイト系粘土が有するカチオン交換容量及び保水性によって肥料成分の保持と作物の毛根からの肥料成分の供給を有効に行うことにより、肥料効果を持続させることができるというものである。
特開平8−224488号公報
しかしながら、上記のようなスメクタイト系粘土を含有する籾殻組成物では、水による膨潤を生じ、保水性が大きすぎて、多量施用した場合は土壌の水はけが悪くなってしまい、土壌中に酸素が入らず、このため根腐れや病虫害を引き起こし易いという問題があった。また、このような籾殻組成物は、粒子強度が著しく弱く、吸水によって容易に粒子崩壊してしまうため、比較的少量施用した場合には、降雨や散水(給水)によって洗い流されたり、土中に深く浸透してしまい、前述した肥料の持続効果を十分に発揮できないという問題もあった。
スメクタイト系粘土の粒子強度に耐水性を付与するためには、通常、500℃以上の温度で焼成が行われるが、上記のような籾殻組成物を焼成すると、籾殻成分が灰化してしまい、pHの著しい増大を招くという問題があった。即ち、籾殻成分は脱水により炭化し、さらに大気からの酸素の供給により炭素の酸化を生じ、灰化を生じる。このような灰化によりpHが例えば11程度(5%懸濁液)にまで上昇してしまう。また、例えば200℃以下の比較的低温で熱処理すると乾留に似た状態となり様々な低分子有機酸が生成し、それらが粘土に吸着されて中和されたにしても、逆にpHが例えば5以下にまで低下してしまう。いずれの場合も作物の生育には極めて有害な環境を発現させてしまう。
従って、本発明の目的は、籾殻または稲藁からなる草木質とスメクタイト系粘土との熱処理物からなり、適度な保水性と粒子強度を有している粘土熱処理粒状物からなる土壌改良剤及びその製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、水田用の粘土熱処理粒状物からなる土壌改良剤及びその製造方法を提供することにある。
本発明によれば、スメクタイト系粘土(A)100重量部と、籾殻または稲藁からなる草木質(B)25乃至150重量部とを混合し、該混合物を造粒し、次いで該造粒物を200乃至350℃の温度で熱処理することを特徴とする粘土熱処理粒状物からなる土壌改良剤の製造方法が提供される。
本発明の製造方法においては、前記混合物の造粒を押出成形により行うことが好ましい。
本発明によれば、また、スメクタイト系粘土(A)100重量部と籾殻または稲藁からなる草木質(B)25乃至150重量部とを熱処理して得られた粘土熱処理粒状物からなる土壌改良剤において、
200℃×2時間乾燥物について、スメクタイトの[001]面のX線回折ピークが、2θ=5.0乃至7.5度の領域に実質上存在せず、且つ水中に5時間浸漬後の105℃×2時間乾燥物について、スメクタイトの[001]面のX線回折ピークを2θ=5.0乃至7.5度の領域に有しており、
当該粒状物1gを水100mlに5時間浸漬した後において、元の粒形状が保持され、粒の崩壊が見られないことを特徴とする粘土熱処理粒状物からなる土壌改良剤が提供される。
本発明の粘土熱処理粒状物からなる土壌改良剤においては、カチオン交換容量が30meq/100g以上であることが好適である。
本発明においては、スメクタイト系粘土(A)と草木質(B)とが造粒により一体化された状態で低温領域(200〜350℃)の領域で熱処理が行われる。このため、スメクタイト系粘土(A)の保水性を適度に確保しながら粒子強度を著しく増大させることができる。
即ち、上記の方法により得られる粘土熱処理粒状物からなる土壌改良剤(以下、単に「粘土熱処理粒状物」という。)においては、水中に投じても膨潤・崩壊せず、土壌に散布したときに良好な通水性を示す。具体的には、200℃×2時間乾燥物についてのX線回折では、スメクタイトの[001]面のX線回折ピークが、2θ=5.0乃至7.5度の領域に実質上存在せず、スメクタイトの単位層の積層層間に存在する水(層間水)は相当部分脱水されているが、この層間には再び水が入り、再水和(復水)するため、スメクタイトの[001]面のX線回折ピークが2θ=5.0乃至7.5度の領域に発現する。即ち、かかる粘土熱処理粒状物では、スメクタイトの単位層相互の層間距離がさらに広がっての膨潤にまでは至らず、適度な保水性を示すのである。
また、上記方法により得られる粘土熱処理粒状物は、水中に投入した場合にも粒子形状が崩壊せず、長期間に亘って初期の粒子形状を保持している。このため、これを土壌に散布したとき、水により流されたり、或いは土中に深く浸透してしまうなどの不都合を生じない。
また、かかる粘土熱処理粒状物では、草木質(B)の焼成が低温領域でしかもスメクタイト系粘土との一体化により大気から遮断された状態で焼成されているため、草木質(B)が炭化で止まり、燃焼を経ての灰化まで進行しない。従って、灰化によるpHの増大は抑制されており、この粘土熱処理粒状物のpH(5%懸濁液)は、5乃至8程度である。
さらに、本発明の粘土熱処理粒状物は、スメクタイト系粘土によるイオン交換能による保肥力、適度な保水性、通水性を有しているばかりか、粘土と籾殻または稲藁からなる草木質の双方に由来するケイ酸分を含有しているため、作物の生育に有用なケイ酸分の供給能に優れ、また草木質の炭化成分を含有しているため、土壌中の微生物活性化作用を示し、特に水田用の土壌改良剤として極めて有用である。
スメクタイト系粘土(A):
本発明において用いるスメクタイト系粘土(A)は、モンモリロナイトやバイデライトに代表され、それらはSiO四面体層−AlO八面体層−SiO四面体層の三層からなる層状構造を有し、これらの八面体層のAlの一部がMgやFe(II)に、四面体層のSiの一部がAlにと低原子価の異種金属に同型置換された基本骨格を有し、結晶格子はその置換部分に陰電荷を生じるが、これらの積層層間にはそれにつり合う量のカチオンと水が存在し、電荷的には中和されている。即ち、スメクタイト系粘土はこのような置換金属や層間元素の種類や量に応じたカチオン交換能を示す。したがって、このようなカチオン交換能や吸着能により、作物の生育に有用な元素、例えば窒素(アンモニア)、リン(リン酸)、カリウム、カルシウム、マグネシウム、イオウ(硫酸)などを土壌中から捕捉し、保肥力を維持することができるのである。具体的には、施肥によって土壌に供給されたアンモニア、窒素、カリ、カルシウム、マグネシウム等の肥料成分は、NH 、K、Ca2+、Mg2+等の陽イオンとして層間に取り込まれ、硝酸塩(窒素)、リン酸塩(リン)、硫酸塩(イオウ)などは、NO 、PO 3−、SO 2−等の陰イオンとして基本三層構造端部のAl原子(或いはMgやFe原子)等に吸着乃至結合する。このようにスメクタイト系粘土に捕捉された肥料成分が、作物に直接吸収・利用されるか、例えば微生物の細胞に吸収・利用されて排出され、さらに作物に吸収・利用されるというように循環利用されるとき、保肥力が発揮されるのである。
また、上記のような層構造を有するスメクタイト系粘土では、単位層の層間に水が入り、陽イオンや水素イオンを取り囲むようにして層間水と呼ばれる水が存在している。即ち、層間への水の取り込みにより保水性を示し、作物の育成に最も必要な水を確保することができる。
本発明においては、上記のようなスメクタイト系粘土としては、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト等を主要粘土鉱物成分とする酸性白土、フラーズアース、ベントナイト、サブベントナイト等を例示することができ、これらは天然品でも合成品であってもよい。また、上述した特性を保持している限り、活性白土等の酸処理物なども使用することができる。また、天然のスメクタイト系粘土としては、非晶質ケイ酸、オパール(たん白石)などの低結晶質ケイ酸またはクリストバライトなどの結晶質ケイ酸(アルカリ溶解性があることから、以下、これらを可溶性ケイ酸と呼ぶことがある)とともに産出するものが好適である。即ち、ある種の産地で産出するスメクタイト系粘土は、上記のケイ酸分がスメクタイトの微細な結晶と渾然一体となった状態で含有している(通常、10重量%以上、特に40重量%以下)。このような可溶性ケイ酸分は、前述した可給態ケイ酸を水の存在下でわりあい容易に形成し、作物の根の旺盛な吸収力によって容易に吸収される。従って、本発明では、このようなケイ酸分を含むスメクタイト系粘土が好適に使用されるのである。
ところで、上述したスメクタイト系粘土は、上記のような保水性を示すと同時に、過剰な水分の存在下では、スメクタイト系粘土の種類によって程度は異なるが膨潤を生じ、スメクタイト系粘土の基本単位層がばらばらなコロイド状に分散し、流動状態となる。これを放置すると、単位層同士の吸引反発によりカードハウス構造が形成され、高度に増粘するか、あるいはゲル化した状態(固化した状態)となってしまう。土壌に供給したときに、このような状態になると通水性が損なわれてしまうこととなる。
また、スメクタイト系粘土は、粒子強度が低く、特に水中下では容易に粒子崩壊してしまう。このような粒子崩壊を生じると、例えば土壌に散布したときに、容易に水によって流されたり、或いは水とともに土壌中に深く沈降してしまう。
従って、本発明では、スメクタイト系粘土が有するカチオン交換容量に由来する保肥力や保水性を損なわない程度に上記の膨潤・固化性能を低下させ且つ粒子強度を高めるために、後述する熱処理を行うことが必要となるのである。
草木質(B):
本発明において、上述したスメクタイト系粘土と併用する草木質としては、セルロース及びヘミセルロースを主成分としており、さらにリグニンを含有し、ケイ酸分含量が高い(通常、10%以上)イネに由来する籾殻や稲藁が使用される。即ち、これらには、土壌から吸収されたケイ酸分やミネラル分を含んでおり、特にケイ酸分は、元々、作物に吸収され易いものだからである。
ところで、草木質中に含まれるケイ酸分は、セルロースからなる細胞膜で囲われたケイ化細胞の中にあるため、そのままでは、外部に放出されず、例えば土壌に撒いたとしても外部に浸出しない。即ち、後述する熱処理は、前述したスメクタイト系粘土の変性と同時に、このような細胞膜を破壊し、内部のケイ酸分を外部に放出し易くするために行われるものでもある。
(粘土熱処理粒状物の製造)
本発明においては、前述したスメクタイト系粘土(A)と草木質(B)とを混合し、造粒し、次いで熱処理することにより、粘土熱処理粒状物を製造する。
スメクタイト系粘土(A)と草木質(B)とは、スメクタイト系粘土100重量部当り、草木質(B)が25乃至150重量部で混合する必要があり、特に50乃至100重量部となるような量比で使用されることが好適である。草木質の使用量が上記範囲よりも多いと、スメクタイト系粘土に由来する保肥力や保水性が不満足となってしまい、また後述する熱処理により、草木質の灰化を抑制できず、pHの著しい増大を生じることがある。さらに、草木質の使用量が上記範囲よりも少量であると、草木質に由来するケイ酸分の供給能や微生物活性化能が不満足となり、また後述する低温領域での熱処理によるスメクタイトの変性が困難となるおそれがある。
また、スメクタイト系粘土(A)と草木質(B)とを混合するに際しては、予め草木質を微粉砕しておくことが好適である。即ち、籾殻または稲藁からなる草木質は、かなりバルキーであるため、これをそのまま用いたときには、混合及び造粒により、スメクタイト系粘土と一体化することが困難となり、熱処理に際しての草木質の灰化を抑制することや、熱処理によるスメクタイト系粘土の変性が困難となるおそれがある。このような草木質の微粉砕は、例えば微粉砕ハンマーミルなどの衝撃式粉砕機を使用し、16メッシュ通過の粒度のものが全体の70重量%以上となる程度に乾燥状態で行うことが好適である。
スメクタイト系粘土(A)と草木質(B)とを混合した後の造粒は、転動造粒、押出機を用いての押出造粒など、種々の手段で行うことができるが、特に両者を一体化した形で造粒できるという点から、押出造粒が好適であり、取り扱い性、土壌に散布したときの機能性などを考慮すると、短径が1乃至3mm程度で長径が20mm以下の柱状形状とすることが好適である。
このようにして得られた粒状物についての熱処理は、200乃至350℃、好ましくは230乃至300℃、特に240乃至260℃で行う。即ち、かかる温度領域は、乾燥温度領域よりもやや高い程度の領域であり、これにより、適度な保水性や保肥性を維持しつつ、スメクタイト系粘土が有する膨潤・固化性を消失させ、適度な通水性を発現させると同時に、さらには粒子強度の増大を図り、また草木質を炭化させることができる。
一般に、酸性白土やベントナイトなどのスメクタイト系粘土について、その保水性、イオン交換能などの基本的特性を維持させながら膨潤・固化性能を消失させ、また粒子強度を高めるために、熱処理などの手段が従来から行われているが、このような熱処理温度は、通常500℃以上であり、500℃以下、特に400℃よりも低温では、膨潤・固化性の消失や粒子強度の増大を達成することができない。しかるに、本発明では、上記のような低温領域で、このような目的を達成することが可能となるのであり、これは極めて意外なことである。即ち、本発明において、上記のような低温領域での熱処理によって膨潤・固化性能の消失や粒子強度の増大が達成可能となる理由は、明確に解明された訳ではないが、おそらく、草木質がスメクタイト系粘土と一体化された状態で熱処理が行われるため、草木質中の一部の有機成分が、スメクタイト系粘土の基本層間を結合するバインダーとして機能しているからではないかと思われる。
ところで、草木質に含まれる有機成分(セルロース、ヘミセルロース、リグニンなど)の分子内脱水による炭化は、以下のように進行すると推察される。
セルロース、ヘミセルロース:
(C10=(C・H10
=(C・5HO)=[脱水]⇒(C)6n
リグニン: (次行の化学組成は岩波・理化学辞典より引用)
182411〜C404518
=C18・H・H2211〜C40・H・H3618
=[脱水]⇒(C)18〜40・H2〜9
本発明では、草木質とスメクタイト系粘土とが一体化された粒状物の形態で且つ低温領域で熱処理が行われるため、大気中で熱処理を行ったときにも、草木質中の有機成分を燃焼させることなく、殆ど分子内脱水により炭化させ、その灰化を抑制し、灰化によるpHの増大を回避することができるという利点がある。即ち、スメクタイト系粘土との一体化により草木質の酸素との接触が抑制され、しかも低温での熱処理であるため、このような利点が達成されるものである。また、かかる温度領域であれば、300℃以下、特に250℃付近の低い温度で、不完全燃焼も伴わずに容易に脱水反応を進めることができ、ダイオキシン類のような有毒物質も全く生成することなく草木質を炭化させることができる。
例えば、熱処理温度が上記範囲よりも高温であるときには、草木質の灰化が進行してしまい、pHの増大を招き、また保水性も低下する傾向がある。さらに、熱処理温度が上記範囲よりも低い場合には、スメクタイト系粘土の膨潤・固化性能を消失させることができず、このため、得られる粘土熱処理粒状物の通性を確保することができず、また草木質の炭化も有効に行われず、草木質の炭化による利点(ケイ酸分の浸出性や土壌微生物の活性化能)などを享受することができない。さらに、スメクタイト系粘土と草木質との一体化をせず、別個に熱処理を行った場合には、例えば上記範囲内での熱処理ではスメクタイト系粘土の膨潤・固化性を消失させることも粒子強度を増大させることもできない。また膨潤・固化性能が消失し且つ粒子強度が増大する程度の高温領域で熱処理されたスメクタイト系粘土と、所謂酸素遮断化での熱処理による草木質の炭化物とを混合し、造粒したものでは、両者の一体化が不十分であり、草木質の炭化物は、水により容易に洗い流されてしまうこととなってしまう。
本発明において、上述した低温領域での熱処理は、熱処理物のイオン交換容量、pH(5%懸濁液)、粒子強度等の特性が後述する範囲となるように行われ、通常、処理量によっても異なるが、20乃至60分程度である。この熱処理時間が必要以上に長いと、草木質の灰化が進行し、pHの増大を招くことがある。
(粘土熱処理粒状物)
かくして得られる本発明の粘土熱処理粒状物は、スメクタイト系粘土熱処理成分、草木質の炭化成分及び草木質由来のケイ酸分を含有している。
また、この粘土熱処理粒状物は、上記のようなスメクタイト系粘土(A)と草木質(B)との一体化粒状物を低温領域で熱処理することにより得られることから、200℃×2時間乾燥物についてのX線分析では、スメクタイトの[001]面のX線回折ピークが、2θ=5.0乃至7.5度の領域に実質上存在せず(図1参照)、且つ水中に5時間浸漬後の105℃×2時間乾燥物についてのX線分析では、スメクタイトの[001]面のX線回折ピークを2θ=5.0乃至7.5度の領域に有している(図2参照)。即ち、この熱処理物は、乾燥状態では、スメクタイト系粘土の基本単位層の積層層間が収縮しているが、水分の存在下では、層間水として水が取り込まれて層間が拡大するが(再水和、或いは復水)、層間がさらに広がっての膨潤にまでは至らないことを意味している。このような定層間拡張性を有するスメクタイト系粘土熱処理成分により、本発明の粘土熱処理粒状物は、適度な保水性を示し、且つ膨潤・固化性能の消失により、良好な通水性を示すのである。
尚、スメクタイト系粘土として、オパールなどのより可溶性のケイ酸を多く含有するものを使用した場合には、図1及び図2に示されているように、このような可溶性ケイ酸の[111]面に由来するX線回折ピークが、2θ=21.5〜22.5度の領域に頂点を有し、且つ半値幅が0.4乃至0.8度の範囲にあるブロードなピークとして発現する。このような可溶性ケイ酸は、水の存在下で、土壌微生物や作物の根からの物理化学的作用あるいは水に溶けているアルカリイオン等の作用により徐々にイオン化乃至コロイド化して、可給態ケイ酸となって溶出していくものと考えられる。このことは、土壌に散布したときに、このような可溶性ケイ酸は、作物に供給されることを意味する。
さらに、本発明の粘土熱処理粒状物は、前述した熱処理によって粒子強度が増大しており、当該粒状物1gを水100mlに5時間浸漬した後においても、元の粒形状が保持され、粒の崩壊が見られず、初期の粒子形状を保持している。即ち、前述した熱処理が行われず、或いは熱処理が不十分であるものは、水中に投下したときに速やかに粒子崩壊してしまい、例えば、土壌に散布したときに、水によって洗い流され或いは水と共に土壌中に深く浸透してしまい、作物の生育に有効に寄与しなくなってしまう。しかるに、本発明では、粒子強度が増大しており、水中に投下しても粒子崩壊を生じないため、土壌に散布したときに、水で洗い流されたり、或いは土中に深く浸透するという不都合を有効に回避することができるのである。
上述したように、本発明の粘土熱処理粒状物は、スメクタイト系粘土の基本特性を保持した成分を含有しているためカチオン交換容量を有している。このようなカチオン交換能によって、既に述べたように、優れた保肥力を示すのである。このカチオン交換容量は、用いたスメクタイト系粘土の物性や使用量によっても異なるが、通常、30meq/100g以上、特に40乃至70meq/100gの範囲にあるのがよい。
また、草木質中の有機成分の灰化が抑制されているため、灰化によるpHの増大も有効に抑制される。例えば、スメクタイト系粘土の5%懸濁液のpHは、その種類によって異なり、一般に酸性白土で4.5〜8.5、ベントナイトで9.5〜10.5の範囲にある。従って、本発明の粘土熱処理粒状物の5%懸濁液でのpHは、用いるスメクタイト系粘土の種類によっても異なるが、通常、5〜8、特に5.5〜7.5の範囲となる。従って、pHの増大による作物の生育への影響を無視することができる。
本発明の粘土熱処理粒状物においては、草木質の有機成分が炭化していることは既に述べた通りであるが、かかる有機成分の炭化は、元々土壌から吸収された籾殻または稲藁からなる草木質中のケイ酸分(即ち、可給態ケイ酸を形成しやすいケイ酸分)が、細胞膜内から解放され、溶出し易い状態で存在していることを意味する。従って、このようなケイ酸分の含有により、本発明の粘土熱処理粒状物は、ケイ酸分の供給能に優れている。勿論、このようなケイ酸分の供給能は、スメクタイト系粘土として可溶性ケイ酸分を含むものを用いたときには、さらに向上する。
また、本発明の粘土熱処理粒状物は、草木質中の有機成分の炭化成分を含有しているため、微生物活性化能にも優れている。作物と共生する共生微生物や窒素固定菌、硝化菌などの作物の生育に有益な微生物は、一般の微生物との競争に弱いが、上記の炭化成分(即ち炭)は、このような競争に弱い微生物に最適な繁殖の場となる。即ち、炭は、細孔が多く、保水性がよく、空気も多く包蔵している。このために、炭の土壌への散布により、作物の根がよく成長し、有用な微生物(EMとも呼ばれる)も繁殖し易くなる。しかし、炭には有機成分が含まれていないため、これを分解して栄養源とする微生物は繁殖せず、その結果、窒素固定菌や光合成菌が増殖し、併せて作物の根に付く共生微生物(根粒菌や菌根菌)も増えることとなる。従って、炭の散布は、作物に有益な微生物が繁殖し易い土壌を提供することとなる。このような炭(炭化成分)を含む本発明の粘土熱処理粒状物は、微生物活性化能が高く、作物の生育に適した土壌を提供するのに極めて有用となる。
このように、本発明の粘土熱処理粒状物は、カチオン交換容量による保肥力(肥料成分の捕捉による肥料効果の持続性)を有し、適度な保水性を有し、通水性も良好であり、さらにケイ酸分供給能が高く、微生物活性化能にも優れている。従って、水田用、畑作用、園芸用等の土壌改良剤として使用することができ、作物の生育を促進させ、ケイ酸分の補給による病虫害への抵抗力を向上させ、特に稲等のケイ酸植物に対しては、茎部や根部を増強することができる。例えば、後述する応用例1に示されているように、水田用として用いた場合には、稲の茎部や根部の増強に著しい効果があり、倒伏防止の点で極めて有用である。また、応用例2に示されているように、例えばべんり菜のような緑色野菜のプランターまたは畑地栽培に用いた場合には、高保肥力による葉緑素生成量の増大のためか、葉部はより濃緑色となり、収量(可食部の重量)も向上する。
本発明による粘土熱処理粒状物からなる土壌改良剤の効果は、上記2つの応用例に限定されるものではなく、その施用は、葉茎菜・果菜・根菜・花菜に大別される野菜類一般、食用菌類、芋類、豆類、穀類及び果樹類等の食用作物の栽培、花卉類の栽培、植木の植栽などいずれにも有用である。勿論、稲の苗床やキノコの菌床にも施用でき、家庭園芸におけるプランターや鉢に培土と共に施用することもできる。
また、本発明の粘土熱処理粒状物は、保温性も高く、しかも水により洗い流されたり或いは土中に深く浸透することがないため、寒冷地用の田畑の融雪性土壌改良材としても有用である。
発明を次の実施例で説明する。尚、実施例3は、本発明の範囲外の参考例である。
また、各試験方法は下記の方法に従った。
(1)X線回折
測定試料の調製:
粒状または粗粒の試料は常法により乳鉢で粉砕して粉末状の測定試料とする。
X線回折装置:
(株)リガク製、MultiFlex
測定条件:
X線=Cu−Kα線、管電圧=40kV、管電流=30mA、
発散スリット=0.15mm、散乱スリット=1°、受光スリット=0.15mm
走査範囲:
回折角(2θ)=3°〜40°
(2)定層間拡張性の判定
水中浸漬前のX線回折(A):
粒状物試料1gを200℃で2時間乾燥し、上記方法によりX線回折をおこなう。
水中浸漬後のX線回折(B):
粒状物試料1gを水100mLに投入し、水中に5時間浸漬後に固液分離した試料を105℃で2時間乾燥し、同様にX線回折をおこなう。
定層間拡張性:
200℃×2時間乾燥物についてのX線回折(A)において、スメクタイトの[001]面のX線回折ピークが、2θ=5.0乃至7.5度の領域に実質上存在せず、且つ水中に5時間浸漬後の105℃×2時間乾燥物についてのX線回折(B)において、スメクタイトの[001]面のX線回折ピークを2θ=5.0乃至7.5度の領域に有しているとき、再水和による定層間拡張性があると判定し、下記の判定記号で表わす。
○・・・X線回折像が上記要件を満たしており、水中浸漬により粘土成分が再水和
(層間に水を保持)することによって保水性を発現している。
×・・・X線回折像が上記要件を満たしていない。
―・・・水中浸漬により粒が崩壊・泥状化して固液分離困難。
但し、ここで「[001]面のX線回折ピークを2θ=5.0乃至7.5度の領域に有している」とは、該ピークの頂点が目視で1つに明瞭に特定でき、該頂点位置のベースラインからのy軸方向への高さ(強度:CPS)をそれを基準にした該ピークの半値幅(2θ:°)で除した数値が例えば100以上あるような明瞭な山形のピークが認められることであり、逆に該ピークが「実質上存在せず」とは、上記のような明瞭な山形のピークが2θ=5.0乃至7.5度の領域には存在しないことである。又、本発明の定層間拡張性に関する上記要件は2θ=7.5度を越える領域に存在するピークには関係しない。
(3)粒子形状保持性の判定
粒状物試料1gを水100mLに投入し、水中に浸漬したときの崩壊の有無と2時間浸漬後の粒の硬さから、粒子形状の保持性を評価し、次の評価記号で表わす。
○・・・水中に投入して5時間以上浸漬しても元の粒形状を保持し、粒の崩壊が見
られない。
×・・・水中に投入して数秒後から5時間以内に粒が崩壊して泥状化し、元の粒形
状は保たれていない。
(4)カチオン交換容量(=陽イオン交換容量、CEC:meq/100g)
新潟県農林水産部発行(H11.3)「土壌及び植物分析法の手引」の「12陽イオン交換容量(CEC)」の方法に準拠
(5)可給態ケイ酸(=有効態ケイ酸、mg/100g)
新潟県農林水産部発行(H11.3)「土壌及び植物分析法の手引」の「16有効態けい酸(SiO)」の方法に準拠
(6)pH
粒状物試料5gを95gの純水に入れて、全体をガラス棒により約10回かき回してから15分間静置したのち、上部液のpHをガラス電極式pHメーターを用いて測定する。
(7)可溶性ケイ酸(%)
110℃乾燥した試料150gを450gの純水に分散させ、水酸化ナトリウム(NaOH)53.3gを加えて、100℃×5時間加熱攪拌処理する。放冷し、溶解反応液の全重量を測定する。該溶解母液を1日以上静置して固形分を沈降させ、透明な上澄液を採取して、該溶液部分のSiO濃度を定量する。計算により試料100gから溶出したSiO量を求め、試料中の可溶性ケイ酸(%)とする。
実施例1
スメクタイト系粘土(A):
新潟県新発田市産酸性白土の塊状物約350kgを前押出式混練造粒機(エックペレッター,造粒板:6mmΦ)にかけて造粒し、粘土粗粒物(水分:42.0%,pH:5.2)を得た。
草木質(B):
新潟県新発田市産水稲の乾燥籾殻約260kgを衝撃式粉砕機(微粉砕ハンマーミル)にかけて粉砕し、籾殻粉末(水分:5.0%、pH:5.7)を得た。
造粒・乾燥:
スメクタイト系粘土(A)として得られた粘土粗粒物300kgと草木質(B)として得られた籾殻粉末183gを適量の水とともに混合し、前押出式混練造粒機(造粒板:5mmΦ)に2回かけてのち、さらに同造粒機(造粒板:3mmΦ)に1回かけてA‐B混合造粒物(水分37.8%)を得た。次いで棚式乾燥機(110℃)で乾燥し、造粒物約350kgを得た。
熱処理:
得られた造粒物をステンレス鋼製バットに約5cmの厚さに敷き入れ、箱型電気乾燥機に入れて、250℃まで昇温し、該温度で40分間熱処理すると、発煙とともに脱水・炭化反応が進み、真黒な粒状物を得た。
得られた粒状物の試験結果等を表1に示した。
実施例2
実施例1で得られた乾燥造粒物を回転式乾燥機に連続チャージして熱処理(滞留時間:約30分、出口温度:300〜350℃)すると、発煙とともに脱水・炭化反応が進み、真黒な粒状物を得た。
得られた粒状物の試験結果等を表1に示した。
これより、実施例1及び実施例2の粘土熱処理粒状物は、定層間拡張性があることより適度な保水性を有し、水中に浸漬しても粒子形状を保持していることより通水性が高く、カチオン交換容量が大きいことより保肥力も高く、可給態ケイ酸も多く含みpHも適性範囲にある優れた土壌改良剤であることがわかる。
実施例3
スメクタイト系粘土(A):
新潟県新発田市産サブベントナイトの塊状物約2kgを前押出式混練造粒機(実験用小型、造粒板:5mmΦ)にかけて造粒し、粘土粗粒物(水分:33.0%,pH:9.0)を得た。
草木質(B):
新潟県岩船郡山林産楢木由来のオガクズを篩(18.5メッシュ:0.85mmΦ)で篩ってオガクズの粉末(水分:22.6%、pH:5.8)を得た。
造粒・乾燥:
スメクタイト系粘土(A)として得られた粘土粗粒物1kgと草木質(B)として得られたオガクズ粉末433gを適量の水とともに混合し、前押出式混練造粒機(実験用小型、造粒板:5mmΦ)に2回かけてのち、さらに同造粒機(造粒板:3mmΦ)に1回かけてA‐B混合造粒物(水分38.5%)を得た。次いで箱型電気乾燥機(110℃)で乾燥し、造粒物約1kgを得た。
熱処理:
得られた造粒物をステンレス鋼製バットに約5cmの厚さに敷き入れ、箱型電気乾燥機に入れて、250℃まで昇温し、該温度で40分間熱処理すると、発煙とともに脱水・炭化反応が進み、真黒な粒状物を得た。
得られた粒状物の試験結果等を表1に示した。
これより、実施例3の粘土熱処理粒状物は、定層間拡張性があることより適度な保水性を有し、水中に浸漬しても粒子形状を保持していることより通水性が高く、カチオン交換容量が大きいことより保肥力も高く、優れた土壌改良剤であることがわかる。
比較例1
熱処理を温度150℃で行った以外は実施例1と同様の操作で製した。
すなわち、実施例1で得られた混合乾燥造粒物をステンレス鋼製バットに約5cmの厚さに敷き入れ、箱型電気乾燥機に入れて、150℃まで昇温し、該温度で40分間熱処理し、黄土色の粒状物を得た。
得られた粒状物の試験結果等を表1に示した。
これより、比較例1の粒状物は、水中で崩壊・膨潤して泥状化することより過度な保水性を有するため施用により土壌の通水性(水はけ)と通気性を不良にし、pHも作物土壌の適性範囲より低く土壌改良剤には適さない。
比較例2
実施例3で得られたサブベントナイト由来の粘土粗粒物1kgと籾殻くん炭(市販品、水分:16.6%、pH:11.1)200gを適量の水とともに混合し、前押出式混練造粒機(実験用小型、造粒板:5mmΦ)に2回かけてのち、さらに同造粒機(造粒板:3mmΦ)に1回かけてA‐B混合造粒物(水分38.5%)を得た。次いで箱型電気乾燥機(110℃)で乾燥し、造粒物約1kgを得た。
得られた造粒物をステンレス鋼製バットに約5cmの厚さに敷き入れ、箱型電気乾燥機に入れて、150℃まで昇温し、該温度で40分間熱処理し、暗灰色の粒状物を得た。
得られた粒状物の試験結果等を表1に示した。
これより、比較例2の粒状物は、水中で崩壊・膨潤して泥状化することより過度な保水性を有するため施用により土壌の通水性(水はけ)と通気性を不良にし、pHも作物土壌の適性範囲より高く土壌改良剤には適さない。
Figure 0005401656
次に本発明による粘土熱処理粒状物を稲と緑色野菜の栽培土壌に施用した応用例について記す。
応用例1(稲の直播栽培)
通常の水田用土壌が敷き詰められた9個のコンクリートポット(1.6m×1.0m)の土壌上面から約
20cmの層に、試験区として実施例1による粘土熱処理粒状物を、m当り300g(応用実施例1−1、3ポット)、150g(応用実施例1−2、3ポット)となるように、基肥とともに播種6日前に鋤き込んだ。対照区として基肥だけを同量鋤き込んだもの(応用比較例1−1、3ポット)も用意した。
播種(発芽直後の種籾、品種:コシヒカリ)は、植栽密度:100株/mの直播方式で平成16年5月10日に行い、追肥は6月20日と7月30日に行った。収穫は播種から135日後の9月22日に行った。尚、8月31日には台風の影響による強風(5〜10m/s)を受け、一部のポットで茎部が湾曲するなびき型倒伏が見られた。
得られた試験結果等を表2に示した。
表2の結果から分かるように、本発明の粘土熱処理粒状物を鋤き込んだポットでの稲の直播栽培では、茎部でのケイ酸含有率がやや大きく、倒伏防止効果も高いと評価(押し倒し抵抗値は強風による一部倒伏前の8月30日に測定、倒伏率は9月4日に判定)された。登熟中の稲の倒伏度合いがより少なかったことと土壌の保肥力の向上により、アンモニア性窒素等の各種肥料成分も適宜補給され、葉緑素の体内合成とそれによる光合成が盛んに行なわれた為か、収量に関する各種指標も高くなった。また、土壌の保水力の向上の為か、精米中の水分含有率も高く心白米の発生も少なかった。さらに、精米中のタンパク質含有率も低く、米の食味改善効果があるものと評価された。
Figure 0005401656
応用例2(べんり菜のプランター栽培)
通常の畑地土壌を篩(8メッシュ、2.4mmΦ)を通して細粒の培土となし、同培土1Lと同容量の実施例1による粘土熱処理物1Lをよく混ぜ合わせて混合培土(応用実施例2−1)となし、その1.5Lをプランター(素焼きの陶製鉢、内容積:2L)に敷き入れた。
比較として、上記粘土熱処理粒状物の代わりに、比較例1による粒状物(籾殻−粘土混合粒状物)、市販の農園芸・人工培土用の土壌改良資材としてパーライト(粒状物、16メッシュ上:約50%)のそれぞれ1Lを、上記の畑地土壌を篩を通して細粒となした培土1Lとよく混ぜ合わせた混合培土(応用比較例2−1、2−2)となし、それぞれ1.5Lを上記同類のプランターに敷き入れた。
<保水性と保肥性に関する試験>
それぞれ混合培土の入った3つの鉢を110℃に温度設定された乾燥棚に36時間置き、全て乾燥土となしてその重量を算出した。純水を鉢の上から全面に満遍なく注いで給水し、培土が抱水しきれない過剰の水が底の排水孔から流れ出したところで給水を止めて1分間置いてからろ紙で底部外面(排水孔周囲)に付着している水を拭き取って重量を秤り、前に算出の乾燥土の重量との差から鉢全体による抱水量(1次抱水量)を算出した。つぎに、それぞれ抱水している3つの鉢を60℃の乾燥機に入れて24時間置き、渇水下の高温乾燥気候条件を模した処理を行なった後の抱水量(2次抱水量)を同様にして算出した。さらに、市販の液体肥料原液(ハイポネックス、内アンモニア性窒素:2.9%)の250倍希釈液200mLずつを清浄なプラスチック製トレイの上に置いたそれぞれの鉢に上から満遍なく注ぎ、1時間置いてから、純水を鉢の上から全面に満遍なく注いで給水し、培土が抱水しきれない過剰の水が底の排水孔から流れ出したところで給水を止めた。1分間置いてからろ紙で底部外面(排水孔周囲)に付着している水を拭き取って重量を秤り、前と同様に鉢全体による抱水量(3次抱水量)を算出した。また、同時に、トレイに流れ出た水を傾しゃ(デカンテーション)により約2mL採取し、ネスラー試薬を5滴加えて、褐色沈殿の生成の様子からアンモニア性窒素の有無の程度を観察し、混合培土相のアンモニウムイオンに対する吸着・捕捉力の程度を保肥力の一つの指標と考えて下記の評価基準により定性的に表わした。本試験で得られた結果については表3に示した。
○・・・施肥後の給水で流出した水中のアンモニア量は全く無いか極微少量(褐色
沈殿:−〜±)で、混合培土相に殆ど吸着乃至は保持されているとみら
れ、保肥力が高い。
△・・・施肥後の給水で流出した水中のアンモニア量が或程度(褐色沈殿:+〜+
+)あり、混合培土相にも或程度保持されているとみられる。
×・・・施肥後の給水で流出した水中のアンモニア量が液体肥料原液の500倍希
釈液に近い程度(褐色沈殿:+++)あり、混合培土に吸着されたアンモ
ニアはあまり多くなく、保肥力は低い。
<栽培実験>
上記のように、3種の混合培土1.5Lが充填され、液体肥料の施肥(元肥)と給水がなされた3つの鉢それぞれの中央部に指で窪み(3ヶ所)をつくり、そこへ市販の種子(品種:べんり菜、標準発芽率:85%以上)を1粒ずつ置いて、上から2〜3mmの厚さに土をかけ、ろ紙を置いてその上から散水により給水する。播種後の鉢は屋内に置き、2日後には発芽が見られ、3日後には各鉢の全ての種子(3粒)が発芽し双葉となっていた。各鉢の双葉の3体の大きさに僅かの差があり、最も小さいものを間引きして2体を残した。その後、鉢は屋外に出して露天に曝し、適宜給水した。14日後に、各鉢の2体の生長に僅かに差があるが、僅かに大きい方の1体を残して他の1体は間引きし、その生育データをとった。元肥に用いたものと同じ液体肥料200mLを追肥し、その後は適宜給水だけをして35日後に収穫をして栽培試験を終了した。本実験で得られたべんり菜の生育データ等も合わせて表3に示した。
表3の結果から分かるように、本発明の粘土熱処理粒状物を配合した混合培土では、pHも適性範囲にあり、保水性も適度であり、根張り状態もよかった。保肥力も充分にあるため、アンモニア性窒素等の肥料成分も適宜補給されて葉緑素の体内合成とそれによる光合成が盛んに行なわれた為か、べんり菜の個体の大きさ(収量)等に関する各種の指標も高かった。葉の色も濃緑色で商品価値も高く、「おひたし」にしたときの食味も味が濃く良好であった。
Figure 0005401656
実施例1で製造された本発明の粘土熱処理粒状物の200℃×2時間乾燥物についてのX線回折像を示す。 実施例1で製造された本発明の粘土熱処理粒状物の水中投入5時間浸漬後の105℃×2時間乾燥物についてのX線回折像を示す。

Claims (6)

  1. スメクタイト系粘土(A)100重量部と、籾殻または稲藁からなる草木質(B)25乃至150重量部とを混合し、該混合物を造粒し、次いで該造粒物を200乃至350℃の温度で熱処理することを特徴とする粘土熱処理粒状物からなる土壌改良剤の製造方法。
  2. 前記熱処理を230乃至300℃の温度で行う請求項1に記載の土壌改良剤の製造方法。
  3. 前記混合物の造粒を押出成形により行う請求項1または2に記載の土壌改良剤の製造方法。
  4. スメクタイト系粘土(A)100重量部と、籾殻または稲藁からなる草木質(B)25乃至150重量部とを熱処理して得られた粘土熱処理粒状物からなる土壌改良剤において、
    200℃×2時間乾燥物について、スメクタイトの[001]面のX線回折ピークが、2θ=5.0乃至7.5度の領域に実質上存在せず、且つ水中に5時間浸漬後の105℃×2時間乾燥物について、スメクタイトの[001]面のX線回折ピークを2θ=5.0乃至7.5度の領域に有しており、
    当該粒状物1gを水100mlに5時間浸漬した後において、元の粒形状が保持され、粒の崩壊が見られないことを特徴とする粘土熱処理粒状物からなる土壌改良剤。
  5. カチオン交換容量が30meq/100g以上である請求項4に記載の土壌改良剤。
  6. 水田用である請求項5に記載の土壌改良剤。
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