装置内に設けられる電源装置として、商用交流電圧を12Vや24Vの直流電圧に変換する直流電源装置が数多く用いられている。
図3は、直流電源装置800の構成例を示す回路図である。
直流電源装置800は、整流回路810と、昇圧型力率改善(以下「昇圧型PFC」と称する。)回路820と、降圧回路840と、により構成される。
商用交流電源801は、0Vを中心に変化する正弦波の商用交流電圧Vacを出力する。
整流回路810は、商用交流電源801を入力電源とし、商用交流電源801から商用交流電圧Vacを受け付け、商用交流電圧Vacを全波整流して、整流電圧V1を出力する。整流電圧V1は、商用交流電圧Vacを0Vで折り返した全波整流波形と呼ばれる波形となる。また、整流電圧V1は、ダイオードブリッジ812によって商用交流電圧Vacの正弦波が全波整流されて生成されるため、商用交流電圧Vacの周波数の2倍に相当する周期で変化する。
また、整流電圧V1のピーク値は、商用交流電圧Vacの実効値の約1.41倍となる。より正確には、整流電圧V1のピーク値は、商用交流電圧Vacの実効値×√2−2×VFとなる。ここで、VF(Voltage Forward)は、ダイオードブリッジ812を構成するダイオードの順方向降下電圧の大きさを示す。
昇圧型PFC(Power Factor Correction)回路820は、商用交流電源801の商用交流電流が、商用交流電圧Vacと同相の正弦波状となるように動作することによって、商用交流電源801の出力電力の力率を100%に近づける。
また、昇圧型PFC回路820は、整流電圧V1を、整流電圧V1のピーク電圧よりも大きな昇圧電圧V2に昇圧する。昇圧電圧V2としては、例えば、商用交流電圧Vacの実効値が100Vの場合は180V程度の電圧が用いられ、商用交流電圧Vacの実効値が240Vの場合は380V程度の電圧が用いられる。
降圧回路840は、昇圧電圧V2を直流電圧V3に変換するDC−DCコンバータである。降圧回路840は、一般的にチョッパ型降圧回路と呼ぶことができる。降圧回路840は、例えば、180Vあるいは380Vの昇圧電圧V2を、24Vの直流電圧V3まで降下させる。また、降圧回路840は、出力する直流電圧V3をフィードバックし、そのフィードバックした電圧に基づいて、直流電圧V3を一定にするように動作する。
次に、昇圧型PFC回路820および降圧回路840の構成について簡単に説明する。
昇圧型PFC回路820は、分圧抵抗821および822と、制御回路823と、主巻き線824と、検出巻き線825と、FET(Field Effect Transistor:電界効果トランジスタ)826と、検出抵抗827と、ダイオード828と、分圧抵抗829および830と、コンデンサ831と、により構成される。
分圧抵抗821および822は、整流電圧V1を分圧して、その分圧された電圧を、制御回路823に供給するための抵抗素子である。
主巻き線824および検出巻き線825は、1対のトランスを構成する。主巻き線824は、トランスの一方の巻き線であり、主巻き線824自身に流れる電流が停止する際に生じる逆起電力によって発生するパルス(以下「フライバックパルス」と称する。)を発生する。検出巻き線825は、トランスの他方の巻き線であり、主巻き線824に流れる電流の電流量を検出するためのコイルである。
FET826は、スイッチ素子である。FET826は、制御回路823からゲート端子に供給される電位に応じて、導通(ON)状態または非導通(OFF)状態となる。FET826は、例えば、ON状態のときに、検出抵抗827に電流を供給する。
検出抵抗827は、FET826のソース端子から供給される電流(以下「ソース電流」と称する。)を電圧信号に変換して、その電圧信号を、制御回路823に供給する役割を果たす。
ダイオード828およびコンデンサ831は、主巻き線824に発生するフライバックパルスを整流する。
分圧抵抗829および830は、昇圧電圧V2を分圧して、その分圧された電圧を、制御回路823にフィードバックするための抵抗素子である。
制御回路823は、整流電圧V1の昇圧とともに力率改善を行うために、整流電圧V1および昇圧電圧V2に基づいて、FET826を、ON状態とOFF状態とに交互に切り換える。
制御回路823は、誤差増幅器を有する。誤差増幅器は、分圧抵抗829および830によって昇圧電圧V2が分圧された電圧と、制御回路823内部で生成される一定の大きさの直流電圧である基準電圧VREF0と、の差分の電圧を増幅する。また、制御回路823は、誤差増幅器にて増幅された電圧と、分圧抵抗821および822によって整流電圧V1が分圧された電圧と、を乗算して、参照電圧VREFを生成する。
また、制御回路823は、FET826をON状態にする。制御回路823が、FET826をON状態にすると、主巻き線824およびFET826に電流が流れ、整流電圧V1と主巻き線824が有するインダクタンスとにより、その電流量は時間と共に増加する。
制御回路823は、FET826のソース電流量、つまり主巻き線824に流れる電流量に応じて検出抵抗827に生じる検出電圧と、参照電圧VREFと、を比較し、検出電圧が参照電圧VREFを超えると、FET826をOFF状態にする。すなわち、制御回路823は、FET826のソース電流の大きさが、参照電圧VREFに相当する電流の大きさまで増加した時点で、FET826をOFF状態にする。このため、FET826のソース電流のピーク値は、参照電圧VREFによって制限される。
制御回路823が、FET826をOFF状態にすると、主巻き線824の両端には、フライバックパルスが発生し、そのフライバックパルスによってダイオード828を通じてコンデンサ831が充電され、コンデンサ831の両端の電圧が上昇する。そして、主巻き線824に流れる電流の大きさは、時間と共に減少する。
制御回路823は、検出巻き線825を用いて、主巻き線824に流れる電流の電流量がゼロであるか否かを検出し、その電流量がゼロになると、FET826を再びON状態にする。
よって、昇圧型PFC回路820では、制御回路823が、参照電圧VREFと検出電圧とに基づいて、FET826をON状態とOFF状態とに交互に切り換えることにより、主巻き線824に三角波電流が流れ、そのピーク値の包絡線は正弦波状となる。そして、ダイオードブリッジ812の出力とGNDとの間を接続する小容量のコンデンサ(図示していない)によって三角波電流が平均化されることにより、商用交流電源801では、商用交流電圧Vacと同相の正弦波電流が流れて、力率がほぼ100%となる。
また、昇圧型PFC回路820では、整流電圧V1が低くなるにつれて、主巻き線824から出力される瞬時電力は小さくなり、整流電圧V1が高くなるにつれて、主巻き線824から出力される瞬時電力は大きくなる。昇圧型PFC回路820では、整流電圧V1が、商用交流電圧Vacの周波数の2倍に相当する周期で変化するため、降圧型PFC回路120の出力電圧である昇圧電圧V2には、商用交流電圧Vacの周波数の2倍に相当する周期で変化するリップル成分が含まれてしまう。
図4は、昇圧電圧V2に含まれるリップル成分の波形を例示する図である。図4には、昇圧電圧V2と、降圧回路840から出力される直流電圧V3と、の波形が示されている。また、横軸を共通の時間軸とし、縦軸を電圧の大きさとしている。
図4に示すように、昇圧電圧V2には、商用交流電圧Vacの周波数の2倍に相当する周期で変化するリップル成分が含まれる。このリップル成分は、コンデンサ831を大きくすることによって軽減されるが、完全には除去されない。
よって、分圧抵抗829および830による分圧電圧には、リップル成分が含まれこととなる。また、分圧抵抗821および822による分圧電圧は、全波整流波形であるため、商用交流電圧Vacの周波数の整数倍の周波数成分である高調波成分を含んでいる。したがって、参照電圧VREFには、分圧抵抗821および822による分圧電圧と、制御回路823の内部の誤差増幅器にて増幅された電圧と、の両者に含まれる周波数成分が互いに乗算されるため、参照電圧VREFに含まれる高調波成分には、全波整流波形である分圧抵抗821および822による分圧電圧と異なる周波数成分が含まれてしまう。
参照電圧VREFに全波整流の周波数成分とは異なる高調波成分が含まれると、その高調波成分が、商用交流電源801の出力電力の力率の低下や、制御回路823の誤動作を引き起こす原因となる場合がある。このため、昇圧型PFC回路820では、制御回路823の内部の誤差増幅器の応答速度を下げて、リップル成分による高調波成分の影響を軽減している。
図3に戻り、降圧回路840は、FET841と、制御回路842と、ダイオード843と、チョークコイル844と、分圧抵抗845および846と、コンデンサ847と、により構成される。
FET841は、スイッチ素子である。FET841は、制御回路842からゲート端子に供給される電位に応じて、導通(ON)状態または非導通(OFF)状態となる。
ダイオード843は、FET841がOFF状態のときに、チョークコイル844に電流を供給するフライホイールダイオードである。
チョークコイル844およびコンデンサ847は、フィルタ作用によって、昇圧電圧V2を直流に変換する平滑回路である。
分圧抵抗845および846は、直流電圧V3を分圧して、その分圧された電圧を、制御回路842にフィードバックするための抵抗素子である。
制御回路842は、降圧回路840から出力される直流電圧V3に基づいて、FET841のON/OFFを、PWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)制御する。具体的には、制御回路842は、分圧抵抗845および846によって直流電圧V3が分圧された電圧に基づいて、直流電圧V3を一定に維持するようにFET841を制御する。
よって、降圧回路840では、リップル成分を含む昇圧電圧V2が降圧されるとともに、そのリップル成分が除去された直流電圧V3が生成される。このため、図4に示すように、直流電圧V3は、昇圧電圧V2よりも小さい一定の電圧となる。
したがって、直流電源装置800では、昇圧型PFC回路820が、整流電圧V1を昇圧するとともに力率改善を行い、降下回路840が、昇圧電圧V2を降圧して直流電圧V3を出力する。
直流電源装置800のような電源装置として、特許文献1に、商用交流電圧を直流出力電圧に変換する電源回路が記載されている。特許文献1に記載の電源回路は、力率改善回路と、スイッチング電源部と、を含む。
特許文献1に記載の電源回路では、力率改善回路が、商用交流電圧が整流された電圧を用いて、力率改善を行うとともに整流平滑電圧を出力する。そして、スイッチング電源部が、整流平滑電圧を用いて、電源回路の出力電圧である直流出力電圧を生成して出力する。
このスイッチング電源部は、例えば、降圧回路840のようなDC−DCコンバータにより構成される。降圧回路840では、電力効率が一定である場合、電圧変換後の出力電力が大きくなるにつれて、電力損失も大きくなる。
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態における直流電源装置の一構成例を示す回路図である。
直流電源装置100は、商用交流電源1から出力される交流電圧(以下「商用交流電圧Vac」と称する。)を用いて、直流電圧V3を生成する電源装置である。直流電源装置100は、例えば、12Vまたは24Vの直流電圧V3を生成して出力する。
直流電源装置100は、商用交流電源1と、整流回路110と、降圧型力率改善(以下「降圧型PFC」と称する。)回路120と、補助電源回路130と、により構成される。直流電源装置100では、降圧型PFC回路120と補助電源回路130とが互いに直列に接続されている。
商用交流電源1は、商用の交流電源であり、正弦波の商用交流電圧Vacを出力する。商用交流電源1は、商用交流電圧Vacとして、例えば、AC100Vまたは200Vの50/60kHzの電圧を出力する。
整流回路110は、一般的に整流手段と呼ぶことができる。
整流回路110は、商用交流電源1を入力電源とし、商用交流電源1から商用交流電圧Vacを受け付け、商用交流電圧Vacを全波整流して生成された電圧を、整流電圧V1として出力する。なお、整流回路110は、図3に示した整流回路810と同様のものである。整流回路110は、フィルタFおよびダイオードブリッジ2を備える。
フィルタFは、商用交流電圧Vacに生じるノイズを除去する。
ダイオードブリッジ2は、フィルタFによってノイズが除去された商用交流電圧Vacを、全波整流する。ダイオードブリッジ2は、4つのダイオードにより構成される。また、ダイオードブリッジ2は、全波整流した整流電圧V1を、降圧型PFC回路120に出力する。整流電圧V1は、ダイオードブリッジ2によって商用交流電圧Vacの正弦波が全波整流されて生成されるため、商用交流電圧Vacの周波数の2倍に相当する周期で変化する。
降圧型PFC回路120は、一般的に力率改善手段と呼ぶことができる。
降圧型PFC回路120は、整流電圧V1を用いて、直流電圧V3よりも小さい降圧電圧(変換電圧)V2を生成するとともに、商用交流電源1の出力電力の力率を改善する。降圧型PFC回路120は、例えば、整流電圧V1を用いて、直流電圧V3よりも小さい直流電圧V3の近傍の降圧電圧V2を生成する。
本実施形態では、降圧型PFC回路120は、商用交流電源1の商用交流電流が、商用交流電圧Vacと同相の正弦波状となるように動作する。すなわち、降圧型PFC回路120は、商用交流電源1における力率を100%に近づけるように制御する。また、降圧型PFC回路120は、整流電圧V1を、整流電圧V1のピーク電圧よりも小さい降圧電圧V2に降圧する。
降圧型PFC回路120は、分圧抵抗3および4と、制御回路5と、1次巻き線6pと、2次巻き線6sと、検出巻き線7と、FET8と、検出抵抗9と、ダイオード10と、分圧抵抗11および12と、コンデンサ13と、により構成される。
分圧抵抗3および4は、整流電圧V1を分圧して、その分圧された電圧を、制御回路5に供給する役割を果たす。
1次巻き線6pおよび2次巻き線6sは、一対のトランスを構成する。1次巻き線6pは、トランスの一方の巻き線であり、2次巻き線6sにフライバックパルスを発生させるためのコイルである。2次巻き線6sは、トランスの他方の巻き線であり、フライバックパルスを発生する。
検出巻き線7は、1次巻き線6pを介して2次巻き線6sに流れる電流の大きさを検出するための巻き線である。検出巻き線7には、1次巻き線6pとの相互誘導作用によって2次巻き線6sに流れる電流の大きさに応じた電流が流れる。
FET8は、スイッチ素子である。本実施形態では、FET8は、nチャンネル型FETにより実現される。FET8は、制御回路5からゲート端子に供給される電位に応じて、導通(ON)状態または非導通(OFF)状態となる。FET8は、例えば、ON状態のときに、検出抵抗9に電流を供給する。
検出抵抗9は、1次巻き線6pに流れる電流の大きさを検出するための抵抗素子である。本実施形態では、検出抵抗9は、FET8のソース端子から供給される電流(以下「ソース電流」と称する。)を電圧信号に変換して、その電圧信号を、制御回路5に供給する役割を果たす。
ダイオード10およびコンデンサ13は、2次巻き線6sに発生するフライバックパルスを整流する役割を果たす。
分圧抵抗11および12は、出力電圧V2を分圧して、その分圧された電圧を、制御回路5にフィードバックするための抵抗素子である。
制御回路5は、整流電圧V1および降圧電圧V2の大きさに基づいて、FET8を、ON状態とOFF状態とに交互に切り換えることにより、整流電圧V1の降圧とともに力率改善を行う。
本実施形態では、制御回路5は、誤差増幅器を有する。誤差増幅器は、分圧抵抗11および12によって降圧電圧V2が分圧された電圧と、制御回路5内部で生成される一定の大きさの直流電圧である基準電圧VREF0と、の差分の電圧を増幅する。また、制御回路5は、誤差増幅器にて増幅された電圧と、分圧抵抗3および4によって整流電圧V1が分圧された電圧と、を乗算して、参照電圧VREFを生成する。
また、制御回路5は、FET8をON状態にする。制御回路5が、FET8をON状態にすると、1次巻き線6pおよびFET8に電流が流れ、整流電圧V1と1次巻き線6pが有するインダクタンスとによって、その電流量は時間と共に増加する。
制御回路5は、FET8のソース電流量、つまり1次巻き線6pに流れる電流量に応じて検出抵抗9に生じる検出電圧と、参照電圧VREFと、を比較し、その検出電圧が参照電圧VREFを超えると、FET8をOFF状態にする。すなわち、制御回路5は、FET8のソース電流の大きさが、参照電圧VREFに相当する電流の大きさまで増加した時点で、FET8をOFF状態にする。このため、FET8のソース電流のピーク値は、参照電圧VREFによって制限される。
制御回路5が、FET8をOFF状態にすると、2次巻き線6sにはフライバックパルスが発生し、そのフライバックパルスによって、ダイオード10を通じてコンデンサ13が充電され、コンデンサ13の両端の電圧が上昇する。そして、2次巻き線6sに流れる電流の大きさは、時間と共に減少する。
制御回路5は、検出巻き線7を用いて、2次巻き線6sに流れる電流量がゼロになったか否かを検出し、その電流量がゼロになると、FET8を再びON状態にする。
よって、降圧型PFC回路120では、制御回路5が、参照電圧VREFと検出電圧とに基づいて、FET8をON状態とOFF状態とに交互に切り換えることにより、1次および2次巻き線6pおよび6sには、三角波電流が流れ、そのピーク値の包絡線が整流電圧V1と同様の全波整流波形となる。そして、ダイオードブリッジ2の出力とGNDとの間を接続する小容量のコンデンサ(図示していない)によって三角波電流が平均化されることにより、商用交流電源1では、商用交流電圧Vacと同相の正弦波電流が流れて、力率がほぼ100%となる。
また、降圧型PFC回路120では、整流電圧V1が低くなるにつれて、2次巻き線6sから出力される瞬時電力は小さくなり、整流電圧V1が高くなるにつれて、2次巻き線6sから出力される瞬時電力は大きくなる。降圧型PFC回路120では、整流電圧V1が、商用交流電圧Vacの周波数の2倍に相当する周期で変化するため、降圧型PFC回路120の出力電圧である降圧電圧V2には、商用交流電圧Vacの周波数の2倍に相当する周期で変化するリップル成分が含まれる。
なお、このリップル成分は、コンデンサ13を大きくすることによって軽減されるが、完全には除去されない。また、コンデンサ13の大型化は、直流電源装置100の大型化や製造コストの増加を招いてしまう。また、降圧型PFC回路120では、図3に示した昇圧型PFC回路820と同様に、参照電圧VREFに全波整流の周波数成分とは異なる高調波成分が含まれため、制御回路5の内部の誤差増幅器の応答速度を下げて、リップル成分に起因する高調波成分の影響を軽減している。
補助電源回路130は、一般的に補助電源手段と呼ぶことができる。
補助電源回路130は、降圧電圧V2を用いて動作するDC−DCコンバータである。補助電源回路130は、降圧電圧V2を用いて、直流電圧V3よりも小さい補助電圧V4を生成し、降圧電圧V2に補助電圧V4を加算した直流電圧V3を生成する。
また、補助電源回路130は、直流電圧V3が一定となるように、直流電圧V3に基づいて、補助電圧V4を調整する。よって、補助電源回路130は、フィードバックされる直流電圧V3が大きくなると、補助電圧V4を小さくし、フィードバックされる直流電圧V3が小さくなると、補助電圧V4を大きくする。
補助電源回路130は、制御回路21と、FET22と、1次巻き線23pと、2次巻き線23sと、ダイオード24と、コンデンサ25と、分圧抵抗26および27と、により構成される。
補助電源回路130では、1次巻き線23pの一端に、降圧型PFC回路120の出力端と、2次巻き線23sの一端と、コンデンサ25の一端と、が接続されている。1次巻き線23pの他端には、FET22のドレイン端子が接続されている。FET22は、そのゲート端子が制御回路21に接続され、ソース端子が接地されている。
また、2次巻き線23sの他端には、ダイオード24のアノード端子が接続されている。コンデンサ25の他端には、ダイオード24のカソード端子と、分圧抵抗26の一端と、補助電源回路130の出力端子と、が接続されている。分圧抵抗26の他端には、分圧抵抗27の一端と、制御回路21と、が接続されている。さらに、制御回路21には、電源線と、接地線とが接続されている。分圧抵抗27の他端は接地されている。
FET22は、スイッチ素子である。本実施形態では、FET22は、nチャンネル型FETにより実現される。FET22は、制御回路21からゲート端子に供給される電位に応じて、導通(ON)状態または非導通(OFF)状態となる。
1次巻き線23pおよび2次巻き線23sは、一対のトランスを構成する。1次巻き線23pは、トランスの一方の巻き線であり、2次巻き線23sにフライバックパルスを発生させるためのコイルである。2次巻き線23sは、トランスの他方の巻き線であり、フライバックパルスを発生する。
ダイオード24およびコンデンサ25は、2次巻き線23sに発生するフライバックパルスを整流することにより、補助電圧V4を生成する。
分圧抵抗26および27は、直流電圧V3を分圧して、その分圧された電圧を、制御回路21にフィードバックするための抵抗素子である。
制御回路21は、直流電圧V3に基づいて、FET22のON/OFFをPWM制御することによって、直流電圧V3を一定に維持する。本実施形態では、制御回路21は、分圧抵抗26および27による分圧電圧に基づいて、FET22をON状態とOFF状態とに交互に切り換えることにより、降圧電圧V2に含まれるリップル成分を打ち消すように補助電圧V4を変化させる。
よって、直流電源装置100では、補助電源回路130により生成される補助電圧V4と、降圧型PFC回路120の出力電圧V2と、が直列に接続されているため、直流電圧V3=降圧電圧V2+補助電圧V4となる。
図2は、降圧型PFC回路120から出力される降圧電圧V2と、補助電源回路130により生成される補助電圧V4と、直流電源装置100から出力される直流電圧V3との波形を例示する図である。
図2に示すように、補助電源回路130が補助電圧V4を変化させることにより、直流電圧V3が一定に維持される。
本実施形態によれば、降圧型PFC回路120が、整流電圧V1を用いて、直流電圧V3よりも小さい変換電圧V2を生成するとともに、商用交流電源1の出力電力の力率を改善する。さらに、補助電源回路130が、降圧電圧V2を用いて、直流電圧V3よりも小さい補助電圧V4を生成し、降圧電圧V2に補助電圧V3を加算した直流電圧V3を生成する。
よって、補助電源回路130では、直流電源装置100の出力電圧V3のうち一部の補助電圧V4のみが、降圧電圧V2に基づいて生成されるため、補助電源回路130での電圧変換による出力電力は、直流電源装置100の全出力電力に対してV4/V3の割合となる。これに対し、図3に示した降圧回路840では、降圧回路840での電圧変換による出力電力が、直流電源装置800の全出力電力となるため、電圧変換後の出力電力は、直流電源装置800の全出力電力に対して100%となる。
このため、補助電源回路130では、降圧回路840に比べて、直流電源装置100の全出力電力が一定である場合、直流電源装置100の全出力電力に対する電圧変換後の出力電力の割合が小さくなるため、電圧変換に伴う電力損失が小さくなる。したがって、直流電源装置100の電力効率は、直流電源装置800に比べて改善される。
言い換えると、補助電源回路130では、直流電圧V3のうち一部の補助電圧V4のみが生成されるため、直流電圧V3のうち降圧電圧V2の生成に伴う電力損失は生じない。このため、補助電源回路130では、直流電圧V3の全電圧を生成する降圧回路840に比べて、電力損失が低減され、直流電源装置100の電力効率は、直流電源装置800に比べて改善されることになる。
ここで、直流電源装置100の電力効率と、図3に示した直流電源装置800の電力効率と、の比較を行う。
直流電源装置100の電力効率ηの導出について以下に説明する。まず、直流電源装置100の出力電力をPo、降圧型PFC回路120の出力電力および入力電力をP2およびP1、補助電源回路130の出力電力および入力電力をP4およびP4’、降圧型PFC回路120の電力効率をη1、補助電源回路130の電力効率をη2とする。
降圧型PFC回路120の出力電力P2は、次式により表現される。
P2=P1×η1 ・・・式1
P2=P4’+(Po−P4) ・・・式2
また、補助電源回路130の出力電力P4は、次式により表現される。
P4=P4’×η2 より P4’=P4/η2 ・・・式3
P4=Po×(V4/V3) ・・・式4
式3および式4を式2に代入すると、P2は、次式により表現される。
P2=P4/η2+(Po−P4)
=Po×(V4/V3)/η2+(Po−Po×(V4/V3))
=Po((V4/V3)/η2+(1−V4/V3)) ・・・式5
さらに、式5に式1を代入すると、P2は、次式により表現される。
P1×η1=Po((V4/V3)/η2+(1−V4/V3)) ・・・式6
式6を展開すると、直流電源装置100全体の電力効率ηは、次式により表現される。
η=Po/P1=η1/((V4/V3)/η2+((1−V4/V3))
例えば、η1=η2=90%、V4/V3=0.25と仮定すると、直流電源装置100全体の効率η=87.6%となる。
次に、直流電源装置800電力効率η4の導出について説明する。まず、直流電源装置800の出力電力をpo、昇圧型PFC回路820の入力電力をp1、降圧回路840の入力電力および出力電力をp2およびp3、昇圧型PFC回路820の電力効率をη5、降圧回路840の電力効率をη6とする。
降圧回路840の入力電力p2は、次式により表現される。
p2=p1×η5
また、降圧回路840の出力電力p3は、次式により表現される。
p3=p2×η6
降圧回路840の出力電力p3が、直流電源装置800の出力電力poとなるため、p3=poとなり、直流電源装置800の電力効率η4は、次式により表現される。
η=po/p1=η5×η6
直流電源装置100の電力効率ηの算出のときと同様に、η5=η6=90%と仮定すると、直流電源装置800全体の電力効率η4は、80%程度となる。
このため、直流電源装置100は、直流電源装置800に比べて、直流電源装置100の電力効率を改善することができる。
また、本実施形態では、降圧型PFC回路120が、直流電圧V3よりも小さい降圧電圧V2を出力する。このため、図3に示した直流電源装置800に比べて、直流電源装置100内における配線の絶縁距離を小さくし、また、耐圧性の低い部品を設けることによって部品の形状を小さくすることができる。よって、直流電源装置100を小型化することができる。
また、本実施形態では、補助電源回路130が、直流電圧V3が一定に維持されるように、直流電圧V3の大きさに基づいて補助電圧V4を調整する。このため、直流電源装置100は、電力効率を改善しつつ、降圧電圧V2に含まれるリップル成分が抑制された直流電圧V3を出力することができる。また、直流電源装置100は、電力効率を改善しつつ、直流電源装置100に接続される負荷の大きさが変化する場合には、降圧電圧V2に含まれるリップル成分を抑制するとともに、負荷の変化によって生じる直流電圧V3の変動も抑制することができる。
また、本実施形態では、降圧型PFC回路120が、直流電圧V3近傍の変換電圧V2を生成する。この場合、補助電源回路130では、補助電力V4を小さくすることができるため、補助電源回路130での電力損失を小さくすることができる。このため、直流電源装置100の電力効率をより改善することができる。
また、本実施形態では、降圧型PFC回路120および補助電源回路130の構成例について説明したが、これに限定されるものではない。降圧型のPFC回路であり、その出力が直列に接続することが可能な補助電源回路であれば、電源装置の電力効率を改善することができる。
以上説明した実施形態において、図示した構成は単なる一例であって、本発明はその構成に限定されるものではない。