以下に添付図面を参照して、この発明にかかる検査装置、画像形成装置、検査方法および検査プログラムの最良な実施の形態を詳細に説明する。以下に示す実施の形態は、本発明をカラーレーザプリンタに適用した例である。
図1は、本実施の形態にかかるカラーレーザプリンタ1の概略構成を示す構成図である。このカラーレーザプリンタ1は、電子写真によるタンデム方式のものであり、像担持体である4つのドラム状の感光体ドラム2Y(イエロー),2C(シアン),2M(マゼンダ),2K(ブラック)上の静電潜像を現像ユニット3Y,3C,3M,3Kにより現像することにより形成されるトナー画像を、転写ローラ4Y,4C,4M,4Kにより中間媒体としての中間転写ベルト5上に順次転写し、その中間転写ベルト5上の画像を二次転写ローラ6により転写体である記録紙P上に一括転写する間接転写方式を採用したものである。
中間転写ベルト5は、無端状のベルトであって、複数のローラ10〜13によって張架されている。この中間転写ベルト5は、ローラ10〜13のいずれかの軸に連結された転写駆動モータ21(図2参照)により駆動され、図1中の矢印D1方向(副走査方向)に循環移動する。中間転写ベルト5の上部側には、その中間転写ベルト5の移動方向D1に沿って、ブラック、マゼンダ、シアン、イエローの各色用に4個の上述した感光体ドラム2K,2M,2C,2Yがそれぞれ配設されている。また、中間転写ベルト5の移動方向D1において、感光体ドラム2Yのさらに下流側には、中間転写ベルト5に形成された画質調整用のトナーパターンを検出するトナーマークセンサ20が配設されている。
トナーマークセンサ20は、中間転写ベルト5の表面に光を照射してその反射光を検出し、反射光強度に応じた電圧を出力するセンサであり、例えば、中間転写ベルト5からの正反射光を検出する正反射光センサや、拡散光を検出する拡散光センサ、あるいは、正反射光および拡散光の両方を検出可能な反射型フォトセンサなどが用いられる。
感光体ドラム2K,2M,2C,2Yの周囲には、帯電装置7K,7M,7C,7Yと、前述した現像ユニット3K,3M,3C,3Yと、転写ローラ4K,4M,4C,4Yと、ブレードやブラシ等で構成されるクリーニング装置8K,8M,8C,8Yと、除電装置9K,9M,9C,9Yとがそれぞれ配設されている。
一次転写装置4K,4M,4C,4Yは、中間転写ベルト5を挟んで感光体ドラム2K,2M,2C,2Yにそれぞれ対向配置されている。すなわち、中間転写ベルト5は、各一次転写装置4K,4M,4C,4Yと感光体ドラム2K,2M,2C,2Yとの間に挟まれた状態で循環移動するようになっている。
感光体ドラム2K,2M,2C,2Yは、図1中の矢印D2方向に回転駆動され、このとき帯電装置7K,7M,7C,7Yによって感光体ドラム2K,2M,2C,2Yの表面が所定の極性に帯電される。次いで、感光体ドラム2K,2M,2C,2Yの帯電面に、光書き込みユニットである光ビーム走査装置16から画像データに応じたレーザ光が照射されることによって、感光体ドラム2K,2M,2C,2Yに静電潜像が形成される。このようにして形成された静電潜像は、現像ユニット3K,3M,3C,3Yにより各色のトナー像にそれぞれ現像されて可視像化される。
現像された感光体ドラム2K,2M,2C,2Y上のブラック、マゼンダ、シアン、イエローのトナー像は、一次転写装置4K,4M,4C,4Yの作用によって中間転写ベルト5の表面に順次重ね合わされた状態で転写されていき、フルカラーの合成カラー画像が形成される。
なお、感光体ドラム2K,2M,2C,2Yは、感光体ドラム2K,2M,2C,2Y上に残っているトナー像をクリーニング装置8K,8M,8C,8Yによりクリーニングされた後、除電装置9K,9M,9C,9Yにより除電される。
二次転写ローラ6は、中間転写ベルト5を挟んでローラ12に対向配置されている。二次転写ローラ6と中間転写ベルト5との間には、図示しない給紙ユニットから給紙された記録紙Pが所定のタイミングで送り込まれる。二次転写ローラ6と中間転写ベルト5との間に記録紙Pが図1中の矢印D3方向に向けて送り込まれると、中間転写ベルト5に担持されている合成カラー画像が二次転写ローラ6の作用により記録紙Pに一括して転写される。
その後、記録紙P上の合成カラー画像は、定着ローラ14により熱と圧力によって定着され、図示しない排紙トレイ上に排出される。一方、合成カラー画像の転写後の中間転写ベルト5の表面に付着する転写残トナーは、クリーニング装置15によって除去される。
図2は、本実施の形態にかかるカラーレーザプリンタ1の制御系のハードウェア構成を示すブロック図である。この図2に示す制御系は、CPU31、RAM32、ROM33、IO制御部34、転写駆動モータI/F35、ドライバ36、検出IO部37を備えている。
CPU31は、外部装置22から入力される画像データの受信及び制御コマンドの送受信制御をはじめ、カラーレーザプリンタ1の全体の動作を統括的に制御する。また、RAM32は、CPU31が各種の制御プログラムを実行して演算処理を行う際のワークエリアとして用いられ、ROM33は、CPU31が実行する各種の制御プログラムや初期パラメータなどの情報を記憶している。また、IO制御部34は、カラーレーザプリンタ1における各負荷23への入出力を制御する。
CPU31は、RAM32、ROM33、IO制御部34とバスを介して相互に接続され、RAM32をワークエリアとして利用してROM33に格納されている制御プログラムを実行することによって、データのリード/ライト処理及び各負荷23を駆動するモータ、クラッチ、ソレノイド、センサなど各種の動作制御を実行する。
転写駆動モータI/F35は、バスを介してCPU31に接続されており、CPU31からの駆動指令により、ドライバ36に対して駆動パルス信号の駆動周波数を指令する指令信号を出力する。この周波数に応じて転写駆動モータ21が回転駆動され、転写駆動モータ21が回転駆動されることによって、図1に示す中間転写ベルト5が駆動される。
検出IO部37は、バスを介してCPU31に接続されており、CPU31からの制御指令をトナーマークセンサ20に対して出力し、トナーマークセンサ20からの情報(出力電圧)をRAM32に一時的に格納する。
本実施の形態にかかるカラーレーザプリンタ1では、CPU31がROM33に格納された画質調整用のプログラムを実行することによって、画質調整処理が実施される。画質調整処理では、まず、中間転写ベルト5が一定速度で駆動され、中間転写ベルト5上に画質調整用のトナーパターンが形成される。次に、トナーマークセンサ20が作動し、トナーパターンが形成された中間転写ベルト5に光を照射するとともに、その反射光を検出し、中間転写ベルト5のトナーパターンが形成されている位置と形成されていない位置との反射率の違いに応じた受光量の変化を電圧変化として出力する。このトナーマークセンサ20からの出力電圧は、RAM32に一時的に格納される。CPU31は、RAM32に保持されている情報を用いてトナーパターンの濃度や位置を割り出す演算を行い、濃度調整や位置調整(色ずれ調整)のための補正パラメータを算出する。この補正パラメータはRAM32に格納され、実際の画像形成動作において利用される。
図3は、中間転写ベルト5上に形成されたトナーパターンとトナーマークセンサ20の出力電圧の波形との関係を示した図である。ここでは、図3(a)に示すように、中間転写ベルト5の移動方向(副走査方向)と直交する方向(主走査方向)における3カ所に色ずれ調整用のトナーパターンY1,K1,C1,M1,Y2,K2,C2,M2が形成され、トナーマークセンサ20の3つの検出部20a,20b,20cによってこれら3カ所のトナーパターンをそれぞれ検出する。図3(b)は、トナーマークセンサ20の検出部20aから出力される出力電圧の波形を示している。
トナーマークセンサ20は、中間転写ベルト5のトナーパターンが形成されていない位置に光を照射しているときに基準電圧Vsgを出力するように、トナーマークセンサ20への供給電流が調整されている(オフセット調整)。中間転写ベルト5の移動に伴ってトナーマークセンサ20からの光の照射位置がトナーパターンY1,K1,C1,M1,Y2,K2,C2,M2にかかると、反射光強度が低下することでトナーマークセンサ20からの出力電圧が低下し、閾値電圧Vthを下回る。CPU31は、このトナーマークセンサ20の出力電圧の波形から、中間転写ベルト5上のトナーパターンY1,K1,C1,M1,Y2,K2,C2,M2の位置を特定し、Y,M,C,K間の色ずれ分を演算して補正パラメータを算出する。
ここで、図3(a)に示すように、中間転写ベルト5上に汚れや傷Bがあると、この汚れや傷Bのある位置で反射光強度が低下するため、図3(b)に示すように、この位置でトナーマークセンサ20の出力電圧が閾値電圧Vthを下回る場合がある。その結果、CPU31はこの位置にトナーパターンが形成されているものと誤認識し、その誤認識した位置に応じて補正パラメータの算出を行ってしまうため、誤った補正を行ってしまって色ずれが却って助長されてしまうことになる。また、図3(a)のような部分的な汚れや傷Bがある場合だけでなく、中間転写ベルト5の表面全体を覆うような広範囲な汚れ(フィルミング)が生じている場合や、トナーマークセンサ20側に汚れが付着している場合などにも、これらの要因により画質調整を適切に行えなくなる懸念がある。
そこで、本実施の形態にかかるカラーレーザプリンタ1においては、電源投入時やジャム処理後の動作復帰時など、予め定めたタイミングで、中間転写ベルト5やトナーマークセンサ20の異常有無を検査する検査処理を実施するようにしている。具体的には、トナーパターンが形成されていない状態の中間転写ベルト5を駆動するとともにトナーマークセンサ20を作動させ、中間ベルト5の表面に光を照射したときのトナーマークセンサ20からの出力電圧をサンプリングして、そのサンプリングデータを判定基準値と比較することにより中間転写ベルト5やトナーマークセンサ20の異常有無を検査する。そして、特に本実施の形態では、この検査処理を実施するときの検査モードとして、後述する通常検査モード、JAM処理後検査モード、ベルト寿命判定付き検査モードの3つの検査モードを設け、これら3つの検査モードのいずれかを検査処理の実施の条件に応じて選択的に設定することで、効率のよい検査処理を実施できるようにしている。
図4は、トナーパターンが形成されていない状態の中間転写ベルト5の表面に光を照射したときのトナーマークセンサ20の出力電圧の波形を示す図であり、図4(a)は正常時の出力電圧波形、図4(b)は中間転写ベルト5に部分的な汚れや傷がある場合の出力電圧波形、図4(c)は中間転写ベルト5にフィルミングが生じた場合の出力電圧波形、図4(d)はトナーマークセンサ20に汚れが付着している場合の出力電圧波形、図4(e)は中間転写ベルト5が寿命の場合の出力電圧波形をそれぞれ示している。
中間転写ベルト5に部分的な汚れや傷、フィルミングなどの異常がなく、トナーマークセンサ20自体にも汚れや異常などがない正常時においては、トナーマークセンサ20の出力電圧の波形は、図4(a)に示すように、基準電圧Vsg付近で平坦に推移する波形となる。
中間転写ベルト5に部分的な汚れや傷がある場合には、トナーマークセンサ20の出力電圧の波形は、図4(b)に示すように、汚れや傷のある位置でトナーパターン検出のための閾値電圧Vthを下回る波形となる。したがって、このような状態の中間転写ベルト5を用いて画質調整処理を実施すると、上述したように、中間転写ベルト5の汚れや傷をトナーパターンと誤認識する虞がある。
また、中間転写ベルト5にフィルミングが発生している場合には、中間転写ベルト5表面の光沢度が失われてしまうため、図4(c)に示すように、トナーマークセンサ20の出力電圧は基準電圧Vsgまで上昇しなくなり、トナーマークセンサ20としての機能を果たせなくなる。
また、トナーマークセンサ20に汚れが付着している場合には、トナーマークセンサ20からの光が拡散し受光量が減少するため、図4(d)に示すように、トナーマークセンサ20の出力電圧は基準電圧Vsgまで上昇しなくなり、トナーマークセンサ20としての機能を果たせなくなる。
また、中間転写ベルト5が寿命の場合、経時劣化によって表面の光沢度にばらつきが生じたり、変形などにより平坦度が損なわれたりするため、トナーマークセンサ20の出力電圧波形は、図4(e)に示すように、基準電圧Vsg付近を中心に上下に大きく変動し、基準電圧Vsgに調整できなくなる。
図5は、本実施の形態にかかるカラーレーザプリンタ1において検査処理を実施するための機能構成を示す機能ブロック図である。本実施の形態にかかるカラーレーザプリンタ1は、検査処理を実施するための機能的な構成要素として、図5に示すように、検査モード設定部101と、センサ制御部102と、オフセット調整部103と、オフセット調整値記憶部104と、判定部105と、判定基準値記憶部106と、検査結果出力部107とを有する。これらの各部は、例えばROM33に格納された検査プログラムをCPU31が実行することによって実現されるものである。
検査モード設定部101は、通常検査モード、JAM処理後検査モード、ベルト寿命判定付き検査モードの3つの検査モードのうちのいずれかを、検査処理の実施の条件に応じて選択的に設定する。本実施の形態にかかるカラーレーザプリンタ1では、電源投入時およびJAM処理後の動作復帰時に検査処理を実施するようにしており、検査モード設定部101は、電源投入時に前回の電源投入時からの経過時間が所定時間(例えば1ヶ月)以下であれば、検査モードを通常検査モードに設定し、電源投入時に前回の電源投入時からの経過時間が所定時間(例えば1ヶ月)を超えていれば、検査モードをベルト寿命判定付き検査モードに設定する。また、検査モード設定部101は、JAM処理後の動作復帰時には、検査モードをJAM処理後検査モードに設定する。
通常検査モードは、中間転写ベルト5の駆動開始とほぼ同時に、つまり、中間転写ベルト5の駆動開始から所定の待機時間が経過するのを待たずにトナーマークセンサ20を作動させてトナーマークセンサ20の出力電圧を判定部105に入力し、判定部105が、中間転写ベルト5の駆動開始から所定の待機時間が経過する前に後述するサンプリングデータの生成を開始し、他の検査モードよりも緩和された判定基準値を用いて判定を行うモード(第2の検査モード)である。この通常検査モードでは、中間転写ベルト5の動きが安定化する前にトナーマークセンサ20から出力される出力電圧を用いて検査を行うため、詳細を後述するように、判定部105での判定基準値を他の検査モードよりも緩和させ、中間転写ベルト5の振動によるトナーマークセンサ20の出力電圧の異常を汚れとして誤って判定しないようにしている。また、通常検査モードでは、トナーマークセンサ20の出力電圧を基準電圧Vsgに調整(オフセット調整)することを省略し、前回のオフセット調整値を用いてトナーマークセンサ20を作動させるようにしている。
カラーレーザプリンタ1の電源投入時に検査処理を実施する場合、前回の電源投入時からあまり時間が経過していなければ、中間転写ベルト5やトナーマークセンサ20に汚れ付着などの異常が生じている可能性は比較的低いものと考えられる。その一方で、前回の電源投入時からあまり時間が経過していない電源投入時は、検査処理を実施するタイミングとして最も頻繁に起こるため、検査処理に長時間を要すると、検査に伴うファーストプリントの遅れやダウンタイムの発生がユーザに不満感を抱かせる要因となる。したがって、前回の電源投入時からあまり時間が経過していない電源投入時に検査処理を実施する場合は、検査の正確性よりも迅速性が優先されるので、検査モードとして通常検査モードを選択し、検査に伴うファーストプリントの遅れやダウンタイムの発生を減少させるようにしている。
JAM処理後検査モードは、中間転写ベルト5の駆動開始から所定の待機時間が経過した後にトナーマークセンサ20を作動させてトナーマークセンサ20の出力電圧を判定部105に入力し、判定部105が、中間転写ベルト5の駆動開始から所定の待機時間が経過してから後述するサンプリングデータの生成を開始するモード(第1の検査モード)である。このJAM処理後検査モードでは、中間転写ベルト5の動きが安定化した状態でトナーマークセンサ20から出力される出力電圧を用いて検査を行うため、中間転写ベルト5の振動の影響は考慮する必要がなく、判定部105での判定基準値を通常検査モードよりも厳しくして検査の精度を高めている。また、JAM処理後検査モードでは、トナーマークセンサ20のオフセット調整を行った後に、トナーマークセンサ20の出力電圧を判定部105に入力するようにしている。
JAM処理後の動作復帰時は、ユーザがJAM処理中に中間転写ベルト5やトナーマークセンサ20に触れてしまう可能性もあり、前回の電源投入時からあまり時間が経過していない電源投入時に比べると、中間転写ベルト5やトナーマークセンサ20に汚れ付着などの異常が生じている可能性は高いと考えられる。その一方で、JAM処理後の動作復帰時に実施する検査処理に多少の時間がかかったとしても、ユーザにとってはJAM処理の一環と認識されるため、さほど不満感を抱くことがない。したがって、JAM処理後の動作復帰時に検査処理を実施する場合は、検査の迅速性よりも正確性が優先されるので、検査モードとしてJAM処理後検査モードを選択し、正確な検査を実施するようにしている。
ベルト寿命判定付き検査モードは、JAM処理後検査モードと同様に、中間転写ベルト5の駆動開始から所定の待機時間が経過した後にトナーマークセンサ20を作動させてトナーマークセンサ20の出力電圧を判定部105に入力し、判定部105が、中間転写ベルト5の駆動開始から所定の待機時間が経過してから後述するサンプリングデータの生成を開始するモード(第1の検査モード)であるが、判定部105での処理として、中間転写ベルト5の寿命を判定する処理を追加している。また、ベルト寿命判定付き検査モードでは、トナーマークセンサ20のオフセット調整を行った後に、トナーマークセンサ20の出力電圧を判定部105に入力するようにしており、さらに、検査が終了した後、中間転写ベルト5とトナーマークセンサ20の双方に汚れがなく正常な状態であれば、上述した画質調整処理を実施するようにしている。なお、このベルト寿命判定付き検査モードにおいても、JAM処理後検査モードと同様に、中間転写ベルト5の動きが安定化した状態でトナーマークセンサ20から出力される出力電圧を用いて検査を行うため、判定部105での判定基準値を通常検査モードよりも厳しくして検査の精度を高めている。
前回の電源投入時から所定時間(例えば1ヶ月)が経過した後にカラーレーザプリンタ1の電源を投入した場合、電源がオフの状態で放置された時間が長く、また前回検査処理を行ってからの経過時間が長いため、その間に中間転写ベルト5やトナーマークセンサ20に汚れ付着などの異常が生じている可能性は高いと考えられる。その一方で、前回の電源投入時から所定時間(例えば1ヶ月)が経過した後にカラーレーザプリンタ1の電源を投入するという状況は頻繁に起こるものではなく、このような状況で実施する検査処理に多少の時間がかかったとしても、ユーザにさほど不満を抱かせることはないと考えられる。また、このような状況では、経時劣化によって中間転写ベルト5表面の光沢度にばらつきが生じたり、変形などにより平坦度が損なわれたりしている可能性がある。したがって、前回の電源投入時から所定時間が経過した後の電源投入時に検査処理を実施する場合は、検査の迅速性よりも正確性が優先され、また、中間転写ベルト5の経時劣化も確認する必要があるので、検査モードとしてベルト寿命判定付き検査モードを選択し、正確な検査を実施するとともに、中間転写ベルト5の寿命判定も行うようにしている。
検査モード設定部101により設定された検査モードの情報は、センサ制御部102と、オフセット調整部103と、判定部105にそれぞれ通知される。
センサ制御部102は、トナーマークセンサ20の動作を制御するものであり、特に、検査モード設定部101により設定された検査モードに応じて、トナーマークセンサ20からの出力電圧を判定部105に入力するタイミングを制御する。すなわち、センサ制御部102は、検査モードが通常検査モードに設定された場合は、中間転写ベルト5の駆動開始とほぼ同時にトナーマークセンサ20を作動させて、トナーマークセンサ20の出力電圧を判定部105に入力させる。また、センサ制御部102は、検査モードがJAM処理後検査モードやベルト寿命判定付き検査モードに設定された場合は、中間転写ベルト5の駆動開始から所定の待機時間が経過した後にトナーマークセンサ20を作動させ、オフセット調整部103によるオフセット調整が終了してから、トナーマークセンサ20の出力電圧を判定部105に入力させる。
オフセット調整部103は、検査処理の検査モードがJAM処理後検査モードやベルト寿命判定付き検査モードに設定された場合に、中間転写ベルト5の表面に光を照射したときのトナーマークセンサ20の出力電圧が基準電圧Vsgとなるように、トナーマークセンサ20への供給電流を調整するオフセット調整を実施する。また、オフセット調整部103は、トナーマークセンサ20のオフセット調整を実施するたびに、そのオフセット調整値(供給電流オフセットの値)をオフセット調整値記憶部104に記憶させておく。そして、検査処理の検査モードが通常検査モードに設定された場合には、検査処理の中でオフセット調整は行わず、オフセット調整値記憶部105に記憶されている前回のオフセット調整値を用いて、トナーマークセンサ20への供給電流を調整する。なお、このオフセット調整部103は、上述したように画質調整処理を実施する場合にもオフセット調整を実施する。
判定部105は、トナーマークセンサ20の出力電圧をサンプリングしてサンプリングデータを生成し(サンプリングデータ生成手段)、生成したサンプリングデータを判定基準値記憶部106に記憶されている判定基準値と比較して、中間転写ベルト5やトナーマークセンサ20の汚れ有無を判定する(判定手段)。具体的には、判定部105は、センサ制御部102の制御によってトナーマークセンサ20の出力電圧の入力が開始されてから、中間転写ベルト5が1周する間にトナーマークセンサ20から入力される出力電圧を数百点のサンプリングポイントでサンプリングして、サンプリングデータを生成する。すなわち、判定部105は、検査モードが通常検査モードに設定されている場合は、中間転写ベルト5の駆動開始とほぼ同時にトナーマークセンサ20から入力される出力電圧をベルト1周分サンプリングしてサンプリングデータを生成し、検査モードがJAM処理後検査モードやベルト寿命判定付き検査モードに設定された場合は、中間転写ベルト5の駆動開始から所定の待機時間が経過した後にトナーマークセンサ20から入力される出力電圧をベルト1周分サンプリングしてサンプリングデータを生成する。また、判定部105は、検査モードが通常検査モードに設定されている場合は、前回のオフセット調整値により供給電流が調整されたトナーマークセンサ20の出力電圧からサンプリングデータを生成し、検査モードがJAM処理後検査モードやベルト寿命判定付き検査モードに設定された場合は、オフセット調整部103によりオフセット調整が行われたトナーマークセンサ20の出力電圧からサンプリングデータを生成する。
判定部105は、以上のように生成したサンプリングデータの平均値と最小値とを求め、サンプリングデータの平均値を判定基準値記憶部106に記憶されている第1の判定基準値と比較するとともに、サンプリングデータの最小値を判定基準値記憶部106に記憶されている第2の判定基準値と比較して、中間転写ベルト5やトナーマークセンサ20の汚れ有無を判定する。具体的には、サンプリングデータの平均値が第1の判定基準値の範囲内であり、且つ、サンプリングデータの最小値が第2の判定基準値以上であれば、中間転写ベルト5にもトナーマークセンサ20にも汚れがなく正常状態であると判定する。また、サンプリングデータの平均値が第1の判定基準値の範囲内であり、且つ、サンプリングデータの最小値が第2の判定基準値未満であれば、中間転写ベルト5に部分的な汚れや傷があると判定する。また、サンプリングデータの平均値が第1の判定基準値の範囲を下回っていれば、中間転写ベルト5にフィルミング(広範囲な汚れ)が発生している若しくはトナーマークセンサ20に汚れがあると判定し、サンプリングデータの平均値が第1の判定基準値の範囲を上回っていれば、トナーマークセンサ20(駆動回路も含む)に異常が発生していると判定する。
ここで、第1の判定基準値は、上限値および下限値にて規定される所定の範囲を持つ判定基準値であり、通常検査モード用と、JAM処理後検査モードおよびベルト寿命判定付き検査モード用の2種類が、判定基準値記憶部106に記憶されている。通常検査モード用の第1の判定基準値は、JAM処理後検査モードおよびベルト寿命判定付き検査モード用の第1の判定基準値よりも緩和された判定基準値、つまり、広い範囲を持つ判定基準値となっている。具体的な値を例示すると、例えば、JAM処理後検査モードおよびベルト寿命判定付き検査モード用の第1の判定基準値は、基準電圧Vsg+0.5Vを上限値とし、基準電圧Vsg−0.5Vを下限値とする範囲であるのに対して、通常検査モード用の第1の判定基準値は、基準電圧Vsg+0.5Vを上限値とし、基準電圧Vsg−1.0Vを下限値とする範囲である。
勿論、ここで挙げた数値はあくまで一例であり、種々の条件に応じて最適な値に設定すればよい。また、通常検査モード用の第1の判定基準値と、JAM処理後検査モードおよびベルト寿命判定付き検査モード用の第1の判定基準値との差分は、中間転写ベルト5の駆動開始から上述した待機時間が経過するまでの間の中間転写ベルト5の振動の大きさに応じて定めればよい。これにより、中間転写ベルト5の駆動開始直後に生成されるサンプリングデータにより検査を行う通常検査モードにおいても、中間転写ベルト5の振動によるトナーマークセンサ20の出力電圧の異常を汚れとして誤って判定する不都合を抑制できる。
第2の判定基準値は、サンプリングデータの最小値との比較により中間転写ベルト5に部分的な汚れや傷があるかどうかを判定するための判定基準値であり、例えば、基準電圧Vsg−2.0Vに設定される。勿論、この第2の判定基準値についても、ここで例示する基準電圧Vsg−2.0Vという値に限らず、種々の条件に応じて最適な値に設定すればよい。また、第1の判定基準値と同様に、通常検査モード用とJAM処理後検査モードおよびベルト寿命判定付き検査モード用の2種類の第2の判定基準値を設けるようにしてもよいが、本実施の形態においては、全ての検査モードで共通としている。
また、判定部105は、検査モードがベルト寿命判定付き検査モードに設定されている場合には、サンプリングデータの標準偏差を算出し、サンプリングデータの標準偏差を判定基準値記憶部107に記憶されている第3の判定基準値と比較して、中間転写ベルト5の寿命の判定を行う。経時劣化によって中間転写ベルト5表面の光沢度にばらつきが生じたり、変形などにより平坦度が損なわれたりしている場合、サンプリングデータは基準電圧Vsg付近で安定せず、ばらつきが大きなデータとなる。そこで、判定部105は、サンプリングデータの標準偏差を第3の判定基準値と比較し、サンプリングデータの標準偏差が第3の判定基準値を超えていれば、中間転写ベルト5の寿命と判定する。
また、判定部105は、検査モードがJAM処理後検査モードまたはベルト寿命判定付き検査モードに設定されている場合は、上述したサンプリングデータを用いた判定のほか、オフセット調整部103によるオフセット調整が正常に終了したかどうかの情報を利用した判定も行う。
オフセット調整部103によるオフセット調整は、上述したように、トナーマークセンサ20の出力電圧が基準電圧Vsgとなるようにトナーマークセンサ20への供給電流を調整する処理であるが、トナーマークセンサ20に汚れが付着していたり、中間転写ベルト5にフィルミングが発生していたりすると、トナーマークセンサ20への供給電流を上限値まで増加させても出力電圧が基準電圧Vsgまで上昇せず、オフセット調整を正常に終了できない場合がある。この場合、オフセット調整部103は、オフセット上限エラーによりオフセット調整を正常に終了できないことを判定部105に通知する。また、トナーマークセンサ20(駆動回路も含む)に異常が発生していると、トナーマークセンサ20の出力電圧が基準電圧Vsgを超えた値で固定されてしまい、トナーマークセンサ20への供給電流を低下させても出力電圧が低下せず、オフセット調整を正常に終了できない場合がある。この場合、オフセット調整部103は、オフセット下限エラーによりオフセット調整を正常に終了できないことを判定部105に通知する。
判定部105は、オフセット調整部103からオフセット上限エラーによりオフセット調整を正常に終了できなかった旨の通知があると、トナーマークセンサ20に汚れが付着している、若しくは中間転写ベルト5にフィルミングが発生していると判定する。また、判定部105は、オフセット調整部103からオフセット下限エラーによりオフセット調整を正常に終了できなかった旨の通知があると、トナーマークセンサ20(駆動回路も含む)に異常が発生していると判定する。
検査結果出力部107は、判定部105による判定の結果を検査結果として出力するものである。具体的には、検査結果出力部107は、例えば、判定部105による判定の結果をカラーレーザプリンタ1のオペレーションパネルなどの表示装置に表示させて、検査結果をユーザに報知する。また、カラーレーザプリンタ1にスピーカが設けられている場合には、判定部105による判定の結果をスピーカから音声出力させることで検査結果をユーザに報知するようにしてもよい。また、判定部105による判定の結果を電気通信回線を経由してメンテナンスサービス事業者に通知し、ユーザへの報知と合わせてメンテナンスサービス事業者に対しても検査結果を報知するようにしてもよい。
以下、図6〜図9のフローチャートを参照しながら、本実施の形態にかかるカラーレーザプリンタ1において特徴的な検査処理の具体例について説明する。なお、図6は、検査モード設定部101による処理手順を示したフローチャートであり、図7は、検査モード設定部101により通常検査モードが設定された場合の一連の検査処理の手順を示したフローチャートであり、図8は、検査モード設定部101によりJAM処理後検査モードが設定された場合の一連の検査処理の手順を示したフローチャートであり、図9は、検査モード設定部101によりベルト寿命判定付き検査モードが設定された場合の一連の検査処理の手順を示したフローチャートである。
まず、図6を参照して、検査モード設定の手順について説明する。この図6のフローチャートは、本実施の形態にかかるカラーレーザプリンタ1の立ち上げ時に開始される。カラーレーザプリンタ1の立ち上げを検知すると、検査モード設定部101は、まず、カラーレーザプリンタ1の立ち上げが電源ONによる起動かどうかを判定する(ステップS101)。このステップS101での判定は、例えば、電源ON時に電源ON信号が検査モード設定部101に入力されるようにしておくことで実施可能である。
カラーレーザプリンタ1の立ち上げが電源ONによる起動である場合(ステップS101:YES)、検査モード設定部101は、次に、前回の電源ONから所定時間(例えば1ヶ月)が経過しているか否かを判定する(ステップS102)。このステップS102での判定は、例えば、電源ONからの経過時間をカウントするタイマを設けてそのタイマのカウント値から判定する、または、前回の電源ON時の時間情報を記憶しておくとともに今回の電源ON時の時間情報を取得し、これら時間情報の差分から判定するといった方法で実施可能である。
ここで、前回の電源ONから所定時間が経過していない場合(ステップS102:NO)は、検査モード設定部101は、検査モードを通常検査モードに設定する(ステップS104)。一方、前回の電源ONから所定時間が経過している場合(ステップS102:YES)には、検査モード設定部101は、検査モードをベルト寿命判定付き検査モードに設定する(ステップS105)。
また、カラーレーザプリンタ1の立ち上げが電源ONによる起動ではない場合(ステップS101:NO)には、検査モード設定部101は、JAM処理後の動作復帰による立ち上げかどうかを判定する(ステップS103)。このステップS103での判定は、例えば、カラーレーザプリンタ1のカバーの開閉を検知するカバーセンサの信号が検査モード設定部101に入力されるようにしておくことで実施可能である。
ここで、カラーレーザプリンタ1の立ち上げがJAM処理後の動作復帰による立ち上げである場合(ステップS103:YES)、検査モード設定部101は、検査モードをJAM処理後検査モードに設定する(ステップS106)。一方、カラーレーザプリンタ1の立ち上げがJAM処理後の動作復帰による立ち上げではない場合(ステップS103:NO)には、検査モード設定部101は、検査モードの設定は行わず処理を終了する。この場合には、検査処理は行われないことになる。
次に、図7を参照して、検査モードが通常検査モードに設定された場合の一連の検査処理の手順について説明する。検査モードが通常検査モードに設定された場合は、まず、オフセット調整部103が、オフセット調整値記憶部104に記憶されている前回のオフセット調整値を用いてトナーマークセンサ20への供給電流を調整する(ステップS201)。
次に、センサ制御部102が、中間転写ベルト5の駆動開始とほぼ同時にトナーマークセンサ20を作動させ、トナーマークセンサ20の出力電圧を判定部105に入力させる(ステップS202)。
次に、判定部105が、中間転写ベルト5の1周の間にトナーマークセンサ20から入力される出力電圧を数百点のサンプリングポイントでサンプリングして、サンプリングデータを生成する(ステップS203)。そして、判定部105は、まず、サンプリングデータの平均値が基準電圧Vsg+0.5V〜基準電圧Vsg−1.0Vの範囲内か否か、つまり、サンプリングデータの平均値が通常検査モード用の第1の判定基準値の範囲内か否かを判定する(ステップS204)。
ここで、サンプリングデータの平均値が基準電圧Vsg+0.5V〜基準電圧Vsg−1.0Vの範囲内である場合(ステップS204:YES)、判定部105は、次に、サンプリングデータの最小値が基準電圧Vsg−2.0V未満か否か、つまり、サンプリングデータの最小値が第2の判定基準値未満か否かを判定する(ステップS205)。そして、サンプリングデータの最小値が基準電圧Vsg−2.0V未満ではない場合(ステップS205:NO)には、判定部105は、中間転写ベルト5にもトナーマークセンサ20にも汚れがなく正常状態であると判定する(ステップS207)。一方、サンプリングデータの最小値が基準電圧Vsg−2.0V未満である場合(ステップS205:YES)には、判定部105は、中間転写ベルト5に部分的な汚れや傷があると判定する(ステップS208)。
また、サンプリングデータの平均値が基準電圧Vsg+0.5V〜基準電圧Vsg−1.0Vの範囲内にない場合(ステップS204:NO)には、判定部105は、次に、サンプリングデータの平均値が基準電圧Vsg+0.5Vを上回っているかどうか、つまり、サンプリングデータの平均値が通常検査モード用の第1の判定基準値の上限値を超えているのかを判定する(ステップS206)。そして、サンプリングデータの平均値が基準電圧Vsg+0.5Vを上回っている場合(ステップS206:YES)には、判定部105は、トナーマークセンサ20(駆動回路も含む)に異常が発生していると判定する(ステップS209)。一方、サンプリングデータの平均値が基準電圧Vsg+0.5Vを上回っていない、つまり、サンプリングデータの平均値が通常検査モード用の第1の判定基準値の下限値を下回っている場合(ステップS206:NO)には、判定部105は、トナーマークセンサ20に汚れが付着している、若しくは中間転写ベルト5にフィルミングが発生していると判定する(ステップS210)。
その後、センサ制御部102が、トナーマークセンサ20の作動を停止させ(ステップS211)、通常検査モードによる検査処理が終了する。
通常検査モードによる検査処理では、以上のように、中間転写ベルト5の駆動開始とほぼ同時にトナーマークセンサ20が作動して検査が開始され、また、トナーマークセンサ20のオフセット調整が行われないので、検査に要する時間が大幅に短縮されることになる。したがって、前回の電源投入時からあまり時間が経過していない電源投入時に、通常検査モードによる検査処理を実施することによって、検査に伴うファーストプリントの遅れやダウンタイムの発生を大幅に減少させることができる。また、中間転写ベルト5の駆動開始とほぼ同時にトナーマークセンサ20を作動して検査を開始することで、中間転写ベルト5の振動の影響が懸念されるが、通常検査モードの場合は他の検査モードよりも緩和された判定基準値を用いて汚れ判定を行うようにしているので、中間転写ベルト5の振動の影響で誤った判定をしてしまう不都合を抑制することができ、ある程度の検査精度を確保することができる。
次に、図8を参照して、検査モードがJAM処理後検査モードに設定された場合の一連の検査処理の手順について説明する。検査モードがJAM処理後検査モードに設定された場合は、まず、中間転写ベルト5の駆動が開始された後(ステップS301)、オフセット調整部103が、トナーマークセンサ20のオフセット調整を行う(ステップS302)。
次に、判定部105が、オフセット調整部103によるトナーマークセンサ20のオフセット調整が正常に終了したか否かを判定する(ステップS303)。そして、オフセット調整部103によるトナーマークセンサ20のオフセット調整が正常に終了していれば(ステップS303:YES)、次に、センサ制御部102が、中間転写ベルト5の駆動開始から所定の待機時間が経過したか否かを判定し(ステップS304)、中間転写ベルト5の駆動開始から所定の待機時間が経過した段階で(ステップS304:YES)、トナーマークセンサ20を作動させて、トナーマークセンサ20の出力電圧を判定部105に入力させる(ステップS305)。
次に、判定部105が、中間転写ベルト5の1周の間にトナーマークセンサ20から入力される出力電圧を数百点のサンプリングポイントでサンプリングして、サンプリングデータを生成する(ステップS306)。そして、判定部105は、まず、サンプリングデータの平均値が基準電圧Vsg+0.5V〜基準電圧Vsg−0.5Vの範囲内か否か、つまり、サンプリングデータの平均値がJAM処理後検査モード用の第1の判定基準値の範囲内か否かを判定する(ステップS307)。
ここで、サンプリングデータの平均値が基準電圧Vsg+0.5V〜基準電圧Vsg−0.5Vの範囲内である場合(ステップS307:YES)、判定部105は、次に、サンプリングデータの最小値が基準電圧Vsg−2.0V未満か否か、つまり、サンプリングデータの最小値が第2の判定基準値未満か否かを判定する(ステップS308)。そして、サンプリングデータの最小値が基準電圧Vsg−2.0V未満ではない場合(ステップS308:NO)には、判定部105は、中間転写ベルト5にもトナーマークセンサ20にも汚れがなく正常状態であると判定する(ステップS311)。一方、サンプリングデータの最小値が基準電圧Vsg−2.0V未満である場合(ステップS308:YES)には、判定部105は、中間転写ベルト5に部分的な汚れや傷があると判定する(ステップS312)。
また、サンプリングデータの平均値が基準電圧Vsg+0.5V〜基準電圧Vsg−0.5Vの範囲内にない場合(ステップS307:NO)には、判定部105は、次に、サンプリングデータの平均値が基準電圧Vsg+0.5Vを上回っているかどうか、つまり、サンプリングデータの平均値がJAM処理後検査モード用の第1の判定基準値の上限値を超えているのかを判定する(ステップS309)。そして、サンプリングデータの平均値が基準電圧Vsg+0.5Vを上回っている場合(ステップS309:YES)には、判定部105は、トナーマークセンサ20(駆動回路も含む)に異常が発生していると判定する(ステップS313)。一方、サンプリングデータの平均値が基準電圧Vsg+0.5Vを上回っていない、つまり、サンプリングデータの平均値がJAM処理後検査モード用の第1の判定基準値の下限値を下回っている場合(ステップS309:NO)には、判定部105は、トナーマークセンサ20に汚れが付着している、若しくは中間転写ベルト5にフィルミングが発生していると判定する(ステップS314)。
また、オフセット調整部103によるトナーマークセンサ20のオフセット調整が正常に終了していない場合(ステップS303:NO)には、判定部105は、次に、オフセット調整が正常に終了しない要因がオフセット上限エラーによるものか否かを判定する(ステップS310)。そして、オフセット上限エラーによりオフセット調整が正常に終了していない場合(ステップS310:YES)には、判定部105は、トナーマークセンサ20(駆動回路も含む)に異常が発生していると判定する(ステップS315)。一方、オフセット調整が正常に終了しない要因がオフセット上限エラーではない、つまり、オフセット下限エラーによりオフセット調整が正常に終了していない場合(ステップS310:NO)には、判定部105は、トナーマークセンサ20に汚れが付着している、若しくは中間転写ベルト5にフィルミングが発生していると判定する(ステップS316)。
その後、センサ制御部102が、トナーマークセンサ20の作動を停止させ(ステップS317)、JAM処理後検査モードによる検査処理が終了する。
JAM処理後検査モードによる検査処理では、以上のように、中間転写ベルト5の駆動を開始させてから所定の待機時間が経過した後にトナーマークセンサ20が作動して検査が開始され、また、トナーマークセンサ20のオフセット調整が行われるので、検査を高精度に実施することができる。
次に、図9を参照して、検査モードがベルト寿命判定付き検査モードに設定された場合の一連の検査処理の手順について説明する。検査モードがベルト寿命判定付き検査モードに設定された場合は、まず、中間転写ベルト5の駆動が開始された後(ステップS401)、オフセット調整部103が、トナーマークセンサ20のオフセット調整を行う(ステップS402)。
次に、判定部105が、オフセット調整部103によるトナーマークセンサ20のオフセット調整が正常に終了したか否かを判定する(ステップS403)。そして、オフセット調整部103によるトナーマークセンサ20のオフセット調整が正常に終了していれば(ステップS403:YES)、次に、センサ制御部102が、中間転写ベルト5の駆動開始から所定の待機時間が経過したか否かを判定し(ステップS404)、中間転写ベルト5の駆動開始から所定の待機時間が経過した段階で(ステップS404:YES)、トナーマークセンサ20を作動させて、トナーマークセンサ20の出力電圧を判定部105に入力させる(ステップS405)。
次に、判定部105が、中間転写ベルト5の1周の間にトナーマークセンサ20から入力される出力電圧を数百点のサンプリングポイントでサンプリングして、サンプリングデータを生成する(ステップS406)。そして、判定部105は、まず、サンプリングデータの標準偏差を算出し(ステップS407)、算出した標準偏差の値が所定値(第3の判定基準値)を超えているか否かを判定する(ステップS408)。
ここで、サンプリングデータの標準偏差の値が所定値(第3の判定基準値)以下であれば(ステップS408:NO)、判定部105は、次に、サンプリングデータの平均値が基準電圧Vsg+0.5V〜基準電圧Vsg−0.5Vの範囲内か否か、つまり、サンプリングデータの平均値がベルト寿命判定付き検査モード用の第1の判定基準値の範囲内か否かを判定する(ステップS409)。
ここで、サンプリングデータの平均値が基準電圧Vsg+0.5V〜基準電圧Vsg−0.5Vの範囲内である場合(ステップS409:YES)、判定部105は、次に、サンプリングデータの最小値が基準電圧Vsg−2.0V未満か否か、つまり、サンプリングデータの最小値が第2の判定基準値未満か否かを判定する(ステップS410)。そして、サンプリングデータの最小値が基準電圧Vsg−2.0V未満ではない場合(ステップS410:NO)には、判定部105は、中間転写ベルト5にもトナーマークセンサ20にも汚れがなく正常状態であると判定し(ステップS413)、検査処理に続けて画質調整処理を実施する(ステップS420)。一方、サンプリングデータの最小値が基準電圧Vsg−2.0V未満である場合(ステップS410:YES)には、判定部105は、中間転写ベルト5に部分的な汚れや傷があると判定する(ステップS414)。
また、サンプリングデータの平均値が基準電圧Vsg+0.5V〜基準電圧Vsg−0.5Vの範囲内にない場合(ステップS409:NO)には、判定部105は、次に、サンプリングデータの平均値が基準電圧Vsg+0.5Vを上回っているかどうか、つまり、サンプリングデータの平均値がベルト寿命判定付き検査モード用の第1の判定基準値の上限値を超えているのかを判定する(ステップS411)。そして、サンプリングデータの平均値が基準電圧Vsg+0.5Vを上回っている場合(ステップS411:YES)には、判定部105は、トナーマークセンサ20(駆動回路も含む)に異常が発生していると判定する(ステップS415)。一方、サンプリングデータの平均値が基準電圧Vsg+0.5Vを上回っていない、つまり、サンプリングデータの平均値がベルト寿命判定付き検査モード用の第1の判定基準値の下限値を下回っている場合(ステップS411:NO)には、判定部105は、トナーマークセンサ20に汚れが付着している、若しくは中間転写ベルト5にフィルミングが発生していると判定する(ステップS416)。
また、サンプリングデータの標準偏差の値が所定値(第3の判定基準値)を超えている場合(ステップS408:YES)には、判定部105は、中間転写ベルト5の寿命と判定する(ステップS417)。
また、オフセット調整部103によるトナーマークセンサ20のオフセット調整が正常に終了していない場合(ステップS403:NO)には、判定部105は、次に、オフセット調整が正常に終了しない要因がオフセット上限エラーによるものか否かを判定する(ステップS412)。そして、オフセット上限エラーによりオフセット調整が正常に終了していない場合(ステップS412:YES)には、判定部105は、トナーマークセンサ20(駆動回路も含む)に異常が発生していると判定する(ステップS418)。一方、オフセット調整が正常に終了しない要因がオフセット上限エラーではない、つまり、オフセット下限エラーによりオフセット調整が正常に終了していない場合(ステップS412:NO)には、判定部105は、トナーマークセンサ20に汚れが付着している、若しくは中間転写ベルト5にフィルミングが発生していると判定する(ステップS419)。
その後、センサ制御部102が、トナーマークセンサ20の作動を停止させ(ステップS421)、ベルト寿命判定付き検査モードによる検査処理が終了する。
ベルト寿命判定付き検査モードによる検査処理では、以上のように、中間転写ベルト5の駆動を開始させてから所定の待機時間が経過した後にトナーマークセンサ20が作動して検査が開始され、また、トナーマークセンサ20のオフセット調整が行われるので、JAM処理後検査モードと同様に、検査を高精度に実施することができる。また、検査と同時に中間転写ベルト5の寿命の判定も行われるので、中間転写ベルト5が経時劣化している場合に交換等をユーザに促すことができる。さらに、中間転写ベルト5やトナーマークセンサ20に異常がない場合は画質調整処理を続けて行うようにしているので、すでにオフセット調整が完了したトナーマークセンサ20を用いて画像調整処理を行うことができ、画像調整処理を効率よく実施することができる。
以上、具体的な例を挙げながら詳細に説明したように、本実施の形態にかかるカラーレーザプリンタ1は、検査処理の検査モードとして、検査を短時間で行うことができる通常検査モードと、高精度な検査を行うことができるJAM処理後検査モードと、高精度な検査と併せて中間転写ベルト5の寿命判定も行うことができるベルト寿命判定付き検査モードとを有し、前回の電源投入時からあまり時間が経過していない電源投入時には通常検査モードによる検査処理を実施し、JAM処理後の動作復帰時にはJAM処理後検査モードによる検査処理を実施し、前回の電源投入時から所定時間(例えば1ヶ月)以上経過した電源投入時にはベルト寿命判定付き検査モードによる検査処理を実施するようにしている。このように、本実施の形態にかかるカラーレーザプリンタ1によれば、検査処理の実施の条件に応じて、異常が生じている可能性が高いJAM処理後の動作復帰時や前回の電源投入時から所定時間(例えば1ヶ月)以上経過した電源投入時に検査を実施する場合は、JAM処理後検査モードやベルト寿命判定付き検査モード(第1の検査モード)での高精度な検査を実施し、異常が生じている可能性が低い前回の電源投入時からあまり時間が経過していない電源投入時に検査を実施する場合は通常検査モード(第2の検査モード)での検査を実施するようにしているので、検査に伴うファーストプリントの遅れやダウンタイムの発生を低減できる。
また、通常検査モードでは、中間転写ベルト5の駆動開始とほぼ同時にトナーマークセンサ20を作動させてサンプリングデータの生成を開始させることで、検査に要する時間を短縮させるようにしているため、中間転写ベルト5の振動による影響が懸念されるが、通常検査モードの場合は他の検査モードよりも緩和された判定基準値を用いて異常有無の判定を行うようにしているので、中間転写ベルト5の振動の影響で誤った判定をしてしまう不都合を抑制することができる。通常検査モードは、異常が生じている可能性が低い状況で検査を実施する際に選択されるモードであり、異常が生じている可能性の高い状況ではJAM処理後検査モードやベルト寿命判定付き検査モードでの検査が行われるため、通常検査モードでの検査時に重大な異常が検知されることは稀になる。そのため、通常検査モードで検査を行う際に異常有無の判定に用いる判定基準値を緩和させても重大な異常を逃すことがない。つまり、通常検査モードの場合は、他の検査モードの場合と比較して緩和された判定基準値を用いて異常有無の判定を行ってもよいことになる。
また、本実施の形態にかかるカラーレーザプリンタ1によれば、判定部105が、サンプリングデータの平均値を第1の判定基準値と比較するとともに、サンプリングデータの最小値を第2の判定基準値と比較して、中間転写ベルト5やトナーマークセンサ20の異常有無を判定するようにしているので、どのような種類の異常が発生しているかについても判定することができ、きめ細かな検査を実施することができる。
なお、本実施の形態にかかるカラーレーザプリンタ1における検査処理は、上述したように、カラーレーザプリンタ1が備えるCPU31により検査プログラムが実行されることによって実現される。CPU31により実行される検査プログラムは、例えば、カラーレーザプリンタ1が備えるROM33等に予め組み込まれて提供される。また、CPU31により実行される検査プログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD−R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。さらに、CPU31により実行される検査プログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また、CPU31により実行される検査プログラムを、インターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成してもよい。
CPU31により実行される検査プログラムは、上述した各部(検査モード設定部101、センサ制御部102、オフセット調整部103、オフセット調整値記憶部104、判定部105、判定基準値記憶部106、検査結果出力部107)を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPU(プロセッサ)31が例えばROM33から検査プログラムを読み出して実行することにより上記各部が主記憶装置(RAM32)上にロードされ、検査モード設定部101、センサ制御部102、オフセット調整部103、オフセット調整値記憶部104、判定部105、判定基準値記憶部106、検査結果出力部107が主記憶装置上に生成されるようになっている。
なお、本発明は、上述した実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。例えば、上述した実施の形態は、本発明を間接転写方式のカラーレーザプリンタ1に適用した例であるが、本発明は、間接転写方式のカラーレーザプリンタ1に限らず、循環移動するベルトとそのベルトの表面に光を照射して反射光を検出する光学式センサとを有する様々なタイプの画像形成装置に適用することができる。また、画像形成装置以外であっても、循環移動するベルトとそのベルトの表面に光を照射して反射光を検出する光学式センサとを有する機器であり、ベルトや光学式センサの検査が必要となる機器であれば、本発明を有効に適用することができる。