JP2011169766A - 超音波顕微鏡 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】パルス光を照射するパルス光照射手段5から照射されたパルス光を吸収して熱弾性効果による超音波を発し、当該超音波を試料に送出する超音波送波部4と、超音波送波部4から送出された超音波を収束させつつ試料に放射するレンズ面を備えた音響レンズ2と、を具備する超音波顕微鏡1において、音響レンズ2のレンズ面10を、楕円体の表面の一部で構成する。当該楕円体を、楕円の長軸又は短軸を回転軸として得られる回転体とする。レンズ面10を、当該回転軸が、超音波の音響レンズ内での伝播方向と平行になるように非球面の凹形状に形成する。
【選択図】図5
Description
音響レンズを通して収束した超音波を試料に入射させ、その試料からの反射超音波から試料の微小部分の弾性的性質を検出する装置として超音波顕微鏡が知られている。超音波顕微鏡では、光学顕微鏡や電子顕微鏡では得られない試料内部の情報が得られることから、試料の弾性等の力学的性質の評価だけでなく、内部欠陥の検出等にも多く用いられている。
トランスデューサから放射された超音波は、音響レンズを通して試料の微小部位に入射し、当該微小部位で反射する。その反射した超音波は、再び音響レンズを通じてトランスデューサに到達する。トランスデューサは、試料からの反射超音波である超音波エコーを電気信号に変換して、この電気信号を受信部(受信アンプ)に与える。受信部は、この電気信号を増幅及び検波してビデオ信号に変換し、該ビデオ信号を表示部に出力する。表示部は、受信部からビデオ信号を受信し、試料の内部状態を画像として表示する。
超音波顕微鏡で高い空間分解能を実現するためには、検出波である超音波の周波数を高くする必要がある。ところが、超音波の周波数を高くして高空間分解能を実現しようとすると、低周波数では問題にならなかった音響レンズの収差が問題となる。例えば、周波数帯域が数百MHz程度になれば、せっかく波長を小さくしても音響レンズの収差の影響が無視できなくなるため高分解能の実現が困難になる。
つまり、超音波顕微鏡でサブμmの分解能を実現するためには、超音波の周波数を高くするだけでなく、音響レンズの収差を確実に低減しなければならないのである。
すなわち、本発明に係る超音波顕微鏡は、パルス光を照射するパルス光照射手段から照射されたパルス光を吸収して熱弾性効果による超音波を発し、当該超音波を試料に送出する超音波送波部と、超音波送波部から送出された超音波を収束させつつ試料に放射するレンズ面を備えた音響レンズと、を具備する超音波顕微鏡であって、前記音響レンズのレンズ面は、非球面の凹形状に形成されることを特徴とする。
また、前記楕円体は、楕円の長軸又は短軸を回転軸として得られる回転体であり、前記レンズ面は、当該回転軸が、音響レンズ内での前記超音波の伝播方向と平行になるように非球面の凹形状に形成されてもよい。ここで、楕円体の回転軸は、音響レンズの主軸と一致する。
まず、図1及び図2を参照しながら、本発明の第1実施形態による超音波顕微鏡1について詳しく説明する。図1は、本実施形態による超音波顕微鏡1の構成を示す図である。図2は、本実施形態による超音波顕微鏡1の音響レンズ2の構成を示す図である。
図1に示すように、本実施形態に係る超音波顕微鏡1は、試料が載置されるX−Yステージ3と、X−Yステージ3上の試料にレンズ面10を向けて配置された音響レンズ2を備えている。この音響レンズ2の上部には、照射されたパルス光を吸収して熱弾性効果による超音波を発し、当該超音波を試料に送出する超音波送波部4が形成されており、超音波送波部4にパルス光を照射するパルス光照射手段5も備えられている。
また、超音波顕微鏡1は、超音波受波部6の量子特性の変化を検出する特性変化検出手段7と、検出された量子特性の変化を基に試料内部の情報を得る内部情報取得手段8と、を具備する。
超音波顕微鏡1は、試料が載置されるX−Yステージ3を備えている。このX−Yステージ3は、試料を支持し、音響レンズ2に対する試料の位置を水平方向(超音波の照射方向に対して直交する方向の位置)に変化させて位置決めするためのものであり、直交するボールネジ機構等から構成される。X−Yステージ3は、コンピュータ等で構成されたステージ制御部21により、試料の水平方向位置や送りピッチなどが制御される。
図2を参照して、音響レンズ2について詳細に説明する。図2(a)は、音響レンズ2を側面から見たときの構成を示す図であり、図2(b)は、音響レンズ2の反レンズ面側の構成示す図である。
係る音響レンズ2の反レンズ面側の平面には、試料で反射して音響レンズ2を通って戻った反射超音波を受波するための半導体薄膜(超音波受波部6)が積層されている。
まず、超音波送波部4について説明する。
音響レンズ2の反レンズ面には、AlN(窒化アルミニウム)からなる緩衝層11が設けられ、この緩衝層11上にGaAs膜が積層される。このGaAs膜の上に、金属膜であるMo(モリブデン)が積層されている。この金属膜(Mo)は、超音波送波部4としての機能を果たすものである。
次に、超音波受波部6について説明する。
一方、図1に示すように、音響レンズ2の上方の両側部には、特性変化検出手段7が設けられている。この特性変化検出手段7は、測定光として例えばHe−Neレーザを発する測定光レーザ光源15と、測定光を反射して超音波受波部6に対して斜め方向から入射させるミラー16と、超音波受波部6で反射した反射測定光を、後述する高速光検出器18に向かって反射させるミラー17と、ミラー17からの反射測定光を検出する高速光検出器18と、高速光検出器18が検出した反射測定光の強度信号の時系列変化を検出する高速オシロスコープ19とを備えている。
図1の紙面に向かって音響レンズ2の左上方には、測定光レーザ光源15が配備されている。この測定光レーザ光源15は、上記した超音波受波部6のGaAs膜のバンドギャップに対応する波長又は該波長よりも短い波長を含むHe−Neレーザ光を、測定光として出力するものである。
図1の紙面に向かって音響レンズ2の右上方には、高速光検出器18が配備されている。この高速光検出器18は、超音波受波部6で反射した反射測定光を検出するものであり、検出した反射測定光を光電変換して、当該反射測定光の強度信号を生成し、後述する高速オシロスコープ19に出力するものである。
例えば、高速オシロスコープ19は、熱パルス光が出力されたことを示すパルス光出力開始信号をパルス光照射部12から取得し、当該パルス光出力開始信号を取得した時点から順に、反射測定光の強度信号の強度のピークE1、E2、E3、・・・(エコー)が検出された時点までの時間を検出し、その時間の情報を計算機20に出力する。ここで、最も早く検出されたピークE1は、音響レンズ2とカップリング媒体9との界面からの反射エコーを示し、ピークE2は、試料表面からの反射エコーを示し、以降に続くピークは試料内部からの反射エコーを示している。
内部情報取得手段8である計算機20は、高速オシロスコープ19から得られるピークE1、E2、・・・の検出時間の情報から、2番目のピークE2の発生時間と3番目以降の前記ピークE3、E4・・・発生時間との時間差を算出し、試料内での超音波の伝播速度から、試料内部に存在する欠陥等の深さや、音速等を算出する。このとき、加熱パルス光を複数回繰り返し照射することで試料内の同一測定点の測定を繰り返し、同期加算平均化処理を行うことで測定精度(S/N比)を向上させる。
測定光レーザ光源15が測定光を照射すると共に、パルス光照射手段5のパルス光照射部12が加熱パルス光を発すると、加熱パルス光を受けた超音波送波部4が超音波を発生する。発生した超音波は、超音波受波部6、及び緩衝層11を経て音響レンズ2内をレンズ面10に向けて伝播する。音響レンズ2を伝播した超音波は、レンズ面10で集束され、試料表面及び内部に入射する。試料表面及び内部で反射した超音波は、入射とは反対の経路を経てレンズ面10に戻り、音響レンズ2内を超音波受波部6に向けて伝播する。音響レンズ2内を伝播した超音波は、緩衝層11を経て超音波受波部6に到達する。
よって、超音波受波部6で反射した反射測定光は、吸収された光の分だけ強度が低下して、高速光検出器18に入射する。その後、高速オシロスコープ19が、当該反射測定光の強度信号の時系列変化を検出し、計算機20が上述のように試料内部に存在する欠陥等の深さや、音速等を算出する。
以上のような動作を経て、試料内部における3次元方向の状態の分布を観測することができる。
次に、本発明の特徴的な構成である音響レンズ2のレンズ面の形状について、図3及び図4に示す概念図を参照して説明する。
図3は、球面形状のレンズ面を有する音響レンズ2の断面(超音波の伝播方向に平行な断面)、及び音響レンズ2により焦点に収束される超音波の音線追跡を示す概念図である。
上述のような、超音波顕微鏡1において、例えば、周波数が500MHz以上の超音波を用いる場合、図3に示すように音響レンズ2のレンズ面が球面に形成されていると、レンズ面の中心軸から離れた位置を伝播する超音波ほど、音響レンズ2に近い位置で焦点を結ぶので、超音波は1点に収束されず、収束位置にずれが生じる。このずれを、球面収差(単に収差ということもある)というが、この球面収差量が超音波の波長よりも大きくなることがある。球面収差量が、超音波の波長よりも大きくなると、超音波顕微鏡1の空間分解能は低下する。
図5は、楕円体形状のレンズ面を有する音響レンズ2の断面(超音波の伝播方向に平行な断面)、及び音響レンズ2の焦点を示す図である。
また、図6に示すように、レンズ面10が呈する楕円体形状は、楕円の短軸を回転軸として得られる楕円体を、長軸を含んで短軸に垂直な平面で2等分して得られる一方を、当該回転軸(楕円の短軸)が、音響レンズ2内での超音波の伝播方向と平行になるように配置した形状としてもよい。すなわち、楕円の短軸が、音響レンズ2の主軸となる。
図5に示すように、レンズ面10の中心軸Xからlだけ離れた位置を進む波がレンズ面10に接する点を点P(p,q)とすると、q=lであるため、pは、(数1)に示す楕円の関係式から、(数2)に示す式のようになる。
したがって、波が屈折して中心軸Xと交わる点Fまでの距離CFは、
一方、中心軸Xからlだけ離れた位置を進む波が準線MNを出発し、点Fへ到達する時間を計算する。媒質1(音響レンズ2)中を伝播する距離は、点Cから点Dまでの距離をdとすると、
また、媒質2中を伝播する距離PFは、
また、楕円体の2つの焦点をF、F’とすると、楕円体の性質より
ここで、離心率は、「楕円上のある点から焦点までの距離」と「準線までの距離」との比で定義されるので、この離心率eを式で表すと、
ここで、点Dを出発した波が、楕円上の任意の点Aを通って楕円の焦点Fを通ると考えると、任意の点Aを通った波が、常に点Fに到達するときの到達時間Tは、
一方、楕円の離心率eは、
本実施形態では、媒質1がSi単結晶であり、媒質2が水であるので、各媒質中の音速を、Si単結晶では8436.1m/s、水では1500m/sとして、それら音速の比から、離心率eは、およそ0.1778となる。この離心率e0.1778が、理想的な離心率eiであり、これを基にして、長軸短軸比a/bは、
このように理想的な離心率eiを有する音響レンズ2におけるレンズ焦点距離について、図7に示す。
しかし、本実施形態の超音波顕微鏡1が用いる超音波の周波数が500MHzの場合には、必ずしも、理想的な離心率eiが実現されていなくともよい。周波数が500MHzの超音波の波長は、約3μmであるため、球面収差量が3μmより少なければ、本実施形態の超音波顕微鏡1に用いることができるからである。
図8は、軸aが57μm、軸bが50μmであって、図5に示すように長軸aをレンズの中心軸Xとしたときの、焦点距離と焦点Fへの到達時間とを示す図である。図8(a)は、中心軸Xからの距離lと、その距離lに対応する焦点距離との関係を示している。図8(b)は、中心軸Xからの距離lと、その距離lに対応する焦点Fへの到達時間との関係を示している。
なお、超音波の周波数が高くなるほど当該超音波の波長は短くなる。また、レンズ面10中心軸Xから離れた位置を伝播する波ほど大きな球面収差を生じる。よって、高周波数になるほど有効開口径を小さくする必要がある。
例えば、音響レンズ2をSi単結晶を用いて構成したが、超音波をできるだけ減衰させずに伝播する材料であればよいので、Siに限らず、例えば、サファイアの単結晶や、単結晶体でなくとも、石英ガラス等の各種ガラスやサファイヤなどの硬質材料を用いてもよい。また、音響レンズ2の形状を円柱状であるとしたが、角柱形状でも角錐台形状でもよい。
2 音響レンズ
3 X−Yステージ
4 超音波送波部
5 パルス光照射手段
6 超音波受波部
7 特性変化検出手段
8 内部情報取得手段
9 音響結合材
10 レンズ面
11 緩衝層
12 パルス光照射部
X 中心軸
Claims (5)
- パルス光を照射するパルス光照射手段から照射されたパルス光を吸収して熱弾性効果による超音波を発し、当該超音波を試料に送出する超音波送波部と、超音波送波部から送出された超音波を収束させつつ試料に放射するレンズ面を備えた音響レンズと、を具備する超音波顕微鏡であって、
前記音響レンズのレンズ面は、非球面の凹形状に形成されることを特徴とする超音波顕微鏡。 - 前記音響レンズのレンズ面は、楕円体の表面の一部で構成されることを特徴とする請求項1に記載の超音波顕微鏡。
- 前記楕円体は、楕円の長軸又は短軸を回転軸として得られる回転体であり、
前記レンズ面は、当該回転軸が、音響レンズ内での前記超音波の伝播方向と平行になるように非球面の凹形状に形成されることを特徴とする請求項2に記載の超音波顕微鏡。 - 前記超音波の周波数が、500MHz以上であり、
前記レンズ面における有効開口径は、前記楕円の長軸及び短軸の2軸の内、音響レンズ内での前記超音波の伝播方向と平行な前記回転軸を中心として、該中心からの半径がレンズ面の開口面に平行な前記軸の軸長の60%以内の範囲にあり、
前記楕円の離心率が、理想的な軸比となる離心率の2.5倍以下(0は除く)の値であることを特徴とする請求項3に記載の超音波顕微鏡。 - 前記音響レンズを単結晶シリコンから構成すると共に音響結合材を水とした際に、前記レンズ面の離心率を、0.45以下として設定していることを特徴とする請求項4に記載の超音波顕微鏡。
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