JP2011169668A - 構造部材のき裂進展抑制方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】発生したき裂の進展速度をさらに抑制することができる構造部材のき裂進展抑制方法を提供する。
【解決手段】超音波探傷等で発見したき裂5近傍の炉心シュラウド2の内面に、吸収部材12を接触させる。タンク29内のCrめっき液32を、液供給管22を通して吸収部材12に供給する。Crめっき液32がき裂5内にも浸入する。電源20からケーブル15に供給された電流が、対極13から吸収部材12内のCrめっき液32を通して炉心シュラウド2、ケーブル17へと流れる。この結果、き裂5がCrめっき層で封止される。吸収部材12を洗浄した後、タンク34内のNiめっき液37を、液供給管22を通して吸収部材12に供給する。Niめっき液37が炉心シュラウド2の内面に接触し、対極13から炉心シュラウド2に電流が流れているので、き裂5を封止したCrめっき層を覆うようにNiめっき層が形成される。
【選択図】図5

Description

本発明は、構造部材のき裂進展抑制方法に係り、特に、沸騰水型原子炉に適用するのに好適な構造部材のき裂進展抑制方法に関する。
沸騰水型原子炉の定格運転時には、原子炉圧力容器内に設置された炉内機器(例えば、炉心シュラウド)は、常に、高温高圧の冷却水(または蒸気)に曝される。炉内機器の材料としては、一般的に、ステンレス鋼あるいはニッケル基合金が使用される。これら材料で構成されている炉内機器及び原子炉圧力容器に接続された配管等の、原子炉の構成部材は、材料、環境及び応力の3つの要因がある一定の条件を満たす時に、応力腐食割れ(以下、SCCという)または粒界腐食を生じる可能性がある。
構造部材の冷却水と接触する表面に、例えば、SCCに基づいて生成されたき裂が発見された場合に、構造部材に生じているき裂を除去した後、溶接等によってき裂の除去部を補修することが提案されている(特開2001−242280号公報及び特開2000−230996号公報参照)。
しかし、近年、発電用原子力設備規格 維持規格(2004年版)、JSME S NA1−2004、(社)日本機械学会、丸善(2005)において、応力拡大係数及び腐食電位に応じたき裂進展速度を算定して次の運転サイクルにおけるき裂進展量を評価し、この評価果に基づいて、原子炉の運転継続の可否を決定できるという考え方が示された。このため、原子炉の運転継続が可能と評価された場合に限り、構造部材の補修を行わずに、次の運転サイクルで原子炉を運転することが可能となった。このような継続運転を行う場合に、定格運転での、構造部材に生じたき裂の進展速度を低減するために、沸騰水型原子炉に対する種々の環境緩和技術(冷却水の水質改善技術)の適用が検討されている。
環境緩和技術の一つに、水素注入技術がある。これは、原子炉圧力容器内の冷却水(炉水)中の溶存酸素を低減するために、炉水に水素を注入する技術である(特開昭57−3086号公報参照)。水素注入は、(a)炉水の放射線分解を抑制する効果、及び、(b)炉水の放射線分解によって生じた過酸化水素及び酸素の各濃度を、水生成反応により、低減する効果をもたらし、定格運転時に、数百ppbのオーダーで炉水に溶存する酸素及び過酸化水素の濃度を低下させ、カソード電流密度を低減する。これにより、構造部材の腐食電位(ECP)を低下させ、構造部材に生じたき裂の進展を抑制する。
しかしながら、水素注入により炉水中の水素濃度が0.4ppmを超えると、主蒸気系線量率が上昇し、水素濃度が高濃度になると主蒸気系線量率が水素注入を行わない場合の3倍から5倍になることが指摘されている((社)日本原子力学会発行、「原子炉冷却系の水化学」、p169〜170、(1987/5)参照)。
他の環境緩和技術として貴金属注入が提案されている(特開平4−223299号公報参照)。貴金属注入は、水素注入による水生成反応をより効率的に進行させるために、原子炉停止時にパラジウム、ロジウム及び白金等の白金族貴金属を炉水に注入し、炉水と接触する構造部材の表面に白金族貴金属を付着させるものである。白金族貴金属を構造部材の表面に付着させた後、水素を注入した給水を原子炉圧力容器内に導いて炉水に水素を供給する。構造材料表面に付着した白金族貴金属が、炉水に注入した水素と炉水に溶存している酸素の反応を促進させて溶存酸素を低減することにより、アノード電流密度を増加させて腐食電位(ECP)を低下させ、構造部材に生じているき裂の進展を抑制する方法である。
Cowan et. al., Proc. of Water Chemistry in Nuclear Reactors Systems, 22-26 April 2002, Avignon, France, pp29 (2002)は、白金族貴金属の注入により炉水中の放射能レベルが変化することを報告している。この論文において、その放射能レベルの変化は、電位の著しい低下のために、酸化皮膜が再構築されることに起因するものであると説明されている。
SCCにより構造部材に生じたき裂の補修方法が、特開平8−176881号公報に記載されている。この補修方法では、き裂内にクロムめっき層を形成してき裂を封鎖している。具体的には、原子炉圧力容器内に設置された炉心シュラウドのき裂が生じている箇所の内面に、電解研磨めっき槽を押し当てる。この電解研磨めっき槽内に、電解研磨液及びクロムめっき液を順次供給し、き裂が生じている箇所の表面に対して、電解研磨を行い、その後、クロムめっき層を形成する。このクロムめっき層はき裂内にも形成され、き裂を封鎖する。この結果、構造部材において応力腐食割れの進展が防止される。
特開2001−242280号公報及び特開2000−230996号公報に記載されたそれぞれの補修方法では、構造部材が溶融するまで構造部材を加熱するため、補修後における構造部材の冷却過程で構造部材に引張残留応力が生じ、この引張残留応力が新たにSCCを発生させる一因となる可能性がある。これに対し、特開平8−176881号公報に記載された補修方法は、構造部材に熱を加えないので、特開2001−242280号公報及び特開2000−230996号公報に記載されたそれぞれの補修方法のように、構造部材に引張残留応力が生じる恐れがない。
特開2000−105295号公報は、原子力プラントの配管に対して化学除染を行うことを記載している。この化学除染は、酸化除染液を配管内に供給する酸化除染工程、還元除染液をその配管内に供給する還元除染工程、及び還元除染液に含まれた薬剤の分解工程を含んでいる。
Q. Peng, J. Nucl. Sci. and Technol, 40, 6, p.397 (2003)は、炉水がイオン交換樹脂から溶出した数ppbの硫酸イオンを含んでおり、この硫酸イオンがき裂内に濃縮されることを報告している。
特開2001−242280号公報 特開2000−230996号公報 特開昭57−3086号公報 特開平4−223299号公報 特開平8−176881号公報 特開2000−105295号公報
発電用原子力設備規格 維持規格(2004年版)、JSME S NA1−2004、(社)日本機械学会、丸善(2005) (社)日本原子力学会発行、「原子炉冷却系の水化学」、p169〜170、(1987/5) Cowan et. al., Proc. of Water Chemistry in Nuclear Reactors Systems, 22-26 April 2002, Avignon, France, pp29 (2002) Q. Peng, J. Nucl. Sci. and Technol, 40, 6, p.397 (2003)
発明者らは、特開平8−176881号公報に記載された補修方法で形成されたき裂内のクロムめっき層の効果を検討した。この結果、このクロムめっき層は、酸素を含む炉水と接触したときに、腐食電位が大きいことが分かった。
本発明の目的は、構造部材に生じたき裂の進展をさらに抑制することができる構造部材のき裂進展抑制方法を提供することにある。
上記した目的を達成する本発明の特徴は、原子炉の運転が停止されている状態で原子炉の構造部材に生じているき裂内に電気めっきによりCr層を形成してCr層によりき裂を封止し、Ni層を、電気めっきにより、き裂を封止したCr層及びCr層とき裂の内面との接触面を覆って構造部材の表面に掛けて形成したことにある。
き裂を封止したCr層及びこのCr層とき裂の内面との接触面を覆って構造部材の表面に掛けて、酸素を含む水に接触したときの腐食電位がCr層よりも低いNi層を形成しているので、構造部材に生じているき裂の進展をさらに抑制することができる。
好ましくは、き裂内へのCr層の形成は、構造部材の、き裂が存在する部分の表面に、第1電極が挿入された吸収部材を接触させ、吸収部材にCrめっき液を供給し、吸収部材に浸透したCrめっき液を介して第1電極と構造部材の間に電流を流すことによって行われ、Cr層の表面へのNi層の形成は、吸収部材を洗浄した後に、構造部材の、き裂が存在する部分の表面に接触した吸収部材にNiめっき液を供給し、吸収部材に浸透したNiめっき液を介して第1電極と構造部材の間に電流を流すことによって行われることが望ましい。
第1電極が挿入されて構造部材に接触させた吸収部材に、Crめっき液及びNiめっき液を順次供給するので、構造部材のき裂が存在する局所的な部分にCr層及びCr層を覆ったNi層を容易に形成することができる。
原子炉の運転が停止されている状態で原子炉の構造部材に生じているき裂内に電気めっきによりNi層を形成してNi層によりき裂を封止し、Ni層を、電気めっきにより、き裂内に形成されたNi層の部分とき裂の内面との接触面を覆って構造部材の表面に掛けて形成することによっても、上記の本発明の目的を達成することができる。
き裂内に形成されたNi層の部分とき裂の内面との接触面を覆って構造部材の表面に掛けて、酸素を含む水に接触したときの腐食電位がCr層よりも低いNi層を形成しているので、構造部材に生じているき裂の進展をさらに抑制することができる。
好ましくは、Ni層の形成が、構造部材の、き裂が存在する部分の表面に、電極が挿入された吸収部材を接触させ、吸収部材にNiめっき液を供給し、吸収部材に浸透したNiめっき液を介して電極と記構造部材の間に電流を流すことによって行われることが望ましい。
電極が挿入されて構造部材に接触させた吸収部材に、Niめっき液を供給するので、構造部材のき裂が存在する局所的な部分にNi層を容易に形成することができる。
本発明によれば、原子炉の構造部材に存在するき裂の進展をさらに抑制することができる。
原子炉の、炉水と接触する構造部材に生じた応力腐食割れによるき裂の進展メカニズムを模式的に示した説明図である。 553Kで8MPaの純水、及び1ppmの硫酸溶液中でのSUS316Lステンレス鋼のアノード分極曲線の測定結果を示す説明図である。 553Kで8MPaの純水中における純Fe、純Cr、純Niのそれぞれのアノード分極曲線の測定結果を、SUS316Lステンレス鋼のアノード分極曲線の測定結果と比較した説明図である。 20ppb、40pp及び100ppbの酸素を含む、553Kで8MPaのそれぞれの純水中での、純Cr及び純Niのそれぞれのカソード分極曲線の測定結果を示した説明図である。 本発明の好適な一実施例である実施例1の構造部材のき裂進展抑制方法に用いられるき裂補修装置の構成図である。 実施例1の構造部材のき裂進展抑制方法が適用される沸騰水型原子炉の縦断面図である。 実施例1の構造部材のき裂進展抑制方法の工程を示すフローチャートである。 実施例1の構造部材のき裂進展抑制方法で補修されたき裂付近の構造部材の断面図である。 本発明の他の実施例である実施例2の構造部材のき裂進展抑制方法に用いられるき裂補修装置の構成図である。 本発明の他の実施例である実施例3の構造部材のき裂進展抑制方法に用いられるき裂補修装置の構成図である。 実施例3の構造部材のき裂進展抑制方法で補修されたき裂付近の構造部材の断面図である。
発明者らは、構造部材に生じたき裂の進展メカニズムを検討した。この検討結果を以下に説明する。
原子炉のステンレス鋼製(またはニッケル基合金製)の構造部材にSCCにより生じたき裂の進展メカニズムを、図1を用いて説明する。原子炉圧力容器内では、炉水の放射線分解により生成された過酸化水素及び酸素が、定常的に炉水中に溶存している。原子炉の構造部材にき裂が存在するとき、構造部材の表面及びき裂の内面に、酸化皮膜が形成される。過酸化水素及び酸素を含んでいる炉水が、構造部材表面の酸化皮膜と接触し、さらに、き裂内に侵入する。炉水に含まれる酸素及び過酸化水素が、き裂の内面またはき裂内の開口部近傍で、(1)式及び(2)式の反応により、水に還元される。(1)式及び(2)式の反応により消費される電子は、構造部材から供給される。
+ 4H + 4e → 2HO ……(1)
+ 2H + 2e → 2HO ……(2)
構造部材の電気的中性を保つために、き裂の先端部において、(3)式に示す対反応が生じる。この反応によって、構造部材に含まれる金属元素がイオン化して炉水に溶出するので、き裂が進展する。Mは構造部材に含まれる金属元素である。この金属元素のイオン化により、電子が放出される。
M → Mn+ + ne ……(3)
(3)式の反応がき裂の先端部で生じる理由は、き裂の先端部では酸化種の供給量が少ないために、構造部材からの金属元素イオンの炉水への溶出を抑制する作用を有する酸化皮膜の生成が少ないこと、並びに、き裂内の炉水中に硫酸等のアニオンが濃縮するためである。
(3)式で示される金属元素イオンの溶出によって生じるアノード電流密度は、酸素及び過酸化水素等の酸化種の還元反応によって生じるカソード電流密度と絶対値が等しくなり、局所的な見かけ上の電流収支が0となる。
金属元素イオンの溶出に引き続いて生じる事象として、以下の事象がある。炉水に溶出した金属元素イオンが、(4)式に示す加水分解することにより、き裂内の炉水中に水素イオンが生成し、き裂内の炉水のpHが低下する。
n+ + mHO → M(OH)n−m + mH ……(4)
生成した水素イオンは、き裂内からき裂外に向かって炉水中を拡散する。
上述した反応の組み合わせにより、き裂内の炉水中では、図1に示すように、正電荷がき裂内からき裂外に向って流れ、き裂内面近傍の構造部材の部分では、電子がき裂先端からき裂の開口に向って流れ、電流が流れる閉回路が形成される。このため、き裂外の炉水中にアニオンが存在した場合、き裂内の炉水の電気的中性を保つために、き裂外に存在する炉水に含まれたアニオンがき裂内の炉水中に向かって移動する。
Q. Peng, J. Nucl. Sci. and Technol, 40, 6, p.397 (2003)は、前述したように、炉水がイオン交換樹脂から溶出した数ppbの硫酸イオンを含んでおり、この炉水中の硫酸イオンがき裂内で濃縮されることを記載している。き裂内での硫酸イオン濃度の増大によって、き裂内の炉水の、金属元素イオンの溶解度が上昇し、(3)式の反応がさらに促進される。その結果、(4)式の反応も増加し、さらに、き裂内の炉水の水質が悪化するという悪循環に陥る。
発明者らは、構造部材のき裂内の炉水に含まれる硫酸イオンの影響を確認する実験を行った。この実験は、553Kで8MPaの純水、及びこの純水に1ppmの硫酸を添加した水溶液にそれぞれステンレス鋼製の試験片を浸漬させ、それぞれのステンレス鋼製試験片のアノード分極曲線を測定した。この測定結果を図2に示す。図2の縦軸の電流密度は、単位面積、単位時間あたりの金属元素イオンの溶出量を表している。この結果から、水溶液中で1ppmの硫酸が濃縮された場合、この水溶液内での(3)式の反応が、純水内でのその反応に比べて最大で10倍にまで増大することが分かった。したがって、金属元素イオンが、硫酸が濃縮されたき裂先端付近の構造部材から溶出しやすいことが確認された。
以上に述べたき裂進展メカニズムによれば、き裂内が隙間構造になっていることに起因して硫酸イオンが濃縮され、これによってき裂がさらに進展するという結果が得られた。このため、き裂を封止してき裂内で硫酸イオンがき裂内で濃縮しない構造の採用が、き裂進展の抑制に貢献する。
特開平8−176881号公報に記載されたき裂補修方法によりき裂内をクロムめっきで封止することは、き裂進展を抑制する上で、有力な構成である。発明者らは、き裂をクロムで封止した構造の効果を確認するための実験を行った。
発明者らは、553K、8MPaの純水に、ステンレス鋼の主要構成元素である純粋なFe、純粋なCr、純粋なNi及びステンレス鋼を別々に浸漬させ、それぞれの金属に対するアノード分極曲線を測定した。さらに、酸素を添加したその純水に、Cr及びNiを浸漬させ、Cr及びNiのそれぞれのカソード分極曲線を測定した。カソード分極曲線の測定は、20ppb、40ppb及び100ppbであるそれぞれの純水を用いて行った。
アノード分極曲線の測定結果を図3に示す。−0.1Vvs.SHE以下の低電位側では、Crでの電流密度が最も低くなり、金属元素イオンの溶出を抑制する効果がCrで最も大きくなった(Niよりも大)。一方、+0.15Vvs.SHE以上の高電位側では、Crでの電流密度が最も高くなり、Crが犠牲電極として作用することが分かった。したがって、特開平8−176881号公報のように、き裂内のアノード反応サイトにCrをめっきしてき裂を封止することによって、き裂の進展を抑制することができる。
カソード分極曲線の測定結果を図4に示す。Cr及びNiに接触する純水の溶存酸素の濃度が低いほど、Cr及びNiのそれぞれの電位が低下した。CrとNiでは、純水の溶存酸素の濃度を同じにした場合には、CrよりもNiの電位が小さくなった。すなわち、Niは、Crよりも、酸化種の還元反応速度が小さくなる特性を有すること分かった。この実験結果に基づいて、発明者らは、き裂開口部近傍のカソード反応サイトにNiをめっきすることによって、構造部材に生じたき裂の進展速度を低減できることを見出した。
き裂開口部近傍のカソード反応サイトへのNiのめっきは、Crによるき裂封止の効果に加えて以下の効果を得ることができる。き裂の封止部表面(き裂を封止したCr層の表面)をNiで覆うことによって腐食電位をさらに低減することができるので、構造部材からの金属元素イオンの溶出を抑制することができ、さらに、構造部材と接触する炉水に含まれた酸化種の還元反応速度を低下させることができる。この結果、構造部材に生じたき裂の進展速度を、より長期に亘って抑制することができる。
き裂をCrではなくNiで封止し、き裂開口部近傍のカソード反応サイトにNiをめっきした場合でも、Crでき裂を封止した場合よりも、構造部材の腐食電位を低減させることができる。
以上の検討結果を反映した、本発明の実施例を以下に説明する。
本発明の好適な一実施例である実施例1の構造部材のき裂進展抑制方法を、図5、図6及び図7を用いて説明する。本実施例は、沸騰水型原子炉の構造部材に対して適用される。
まず、沸騰水型原子炉の概略構造を、図6を用いて説明する。沸騰水型原子炉は、原子炉圧力容器1を有し、原子炉圧力容器1内に炉心シュラウド2を設置する。炉心シュラウド2は、複数の燃料集合体(図示せず)を装荷した炉心(図示せず)を取り囲んでいる。沸騰水型原子炉の運転中では、原子炉圧力容器1は、蓋(図示せず)が取り付けられて密封されている。
沸騰水型原子炉の1つの運転サイクルでの運転が終了したとき、沸騰水型原子炉が停止される。沸騰水型原子炉が停止されている状態で、炉心に装荷されている一部の燃料集合体の交換、及び定期検査が実施される。このため、原子炉圧力容器1の蓋が取り外され、原子炉圧力容器1の上端が開放される。原子炉圧力容器1の真上に形成された原子炉ウェル4内にも冷却水が充填される。
原子炉圧力容器1内で炉心の上方に設置された気水分離器及び蒸気乾燥器が取り外されて原子炉圧力容器1の外部に取り出され、原子炉ウェル4内を上方に向かって搬出される。その後、炉心内に装荷されている一部の燃料集合体が、運転床3上を移動する燃料交換機(図示せず)を用いて燃焼度ゼロの新しい燃料集合体と交換される。
本実施例の構造部材のき裂進展抑制方法は、図5に示すき裂補修装置10を用いて行われる。き裂補修装置10の構成を説明する。き裂補修装置10は、ハウジング11、給電装置及びめっき液供給装置21を備えている。ハウジング11の一面が開放され、吸収部材(例えば、海綿、布、フェルト等)12がハウジング11内に配置される。吸収部材12がハウジング11によって支持される。対極(第1電極)13及び参照電極(第2電極)14が、ハウジング11に取り付けられてハウジング11内の吸収部材12内に挿入されている。対極13及び参照電極14は互いに接触していない。対極13は、白金、グラファイトカーボン、及びグラッシーカーボン(登録商標:東海カーボン株式会社)のいずれかで作られている。参照電極としては、種々のものが市販されており、本実施例では、飽和KCl型Ag/AgCl参照電極を用いる。
給電装置は、内部に導電線を有するケーブル15,17、電位差計18及び電流計19を有する。ケーブル15が、対極13に接続され、さらに、電流計19を介して電源20に接続される。ケーブル17が、電源20に接続され、沸騰水型原子炉の構造部材である炉心シュラウド2に接続される。参照電極14に接続される配線16が電位差計18に接続される。電位差計18はケーブル17にも接続される。
めっき液供給装置21は、液供給管(例えば、可撓性のホース)22、洗浄水供給装置23、Crめっき液供給装置28、Niめっき液供給装置33、活性化液供給装置38及び液戻り管(例えば、可撓性のホース)51を有する。液供給管22がハウジング11に接続される。洗浄水供給装置23、Crめっき液供給装置28、Niめっき液供給装置33及び活性化液供給装置38も、液供給管22に接続される。ポンプ52が設けられた液戻り管51が、ハウジング11に接続される。開閉弁53がポンプ52の上流で液戻り管51に設けられる。定量ポンプを液供給管22に設けてもよい。
洗浄水供給装置23は、タンク24及び注入管25を有する。弁26を設けた注入管25がタンク24と液供給管22を接続する。洗浄水(例えば、純水)27がタンク24内に貯えられている。Crめっき液供給装置28は、タンク29及び注入管30を有する。弁31を設けた注入管30がタンク29と液供給管22を接続する。Crめっき液32がタンク29内に貯えられている。Niめっき液供給装置33は、タンク34及び注入管35を有する。弁36を設けた注入管35がタンク34と液供給管22を接続する。Niめっき液37がタンク34内に貯えられている。活性化液供給装置38は、タンク39及び注入管40を有する。弁41を設けた注入管40がタンク39と液供給管22を接続する。活性化液42がタンク39内に貯えられている。
本実施例の構造部材のき裂進展抑制方法を、沸騰水型原子炉の構造部材である炉心シュラウド2に適用した例を基に説明する。このき裂進展方法では、図7に示すステップS1〜S7の各工程が実行される。本実施例の構造部材のき裂進展抑制方法が実施されるとき、洗浄水供給装置27、Crめっき液供給装置28、Niめっき液供給装置33及び活性化液供給装置38が、原子炉建屋(図示せず)内の運転床3(図5及び図6参照)上に設置される。
まず、施工対象物に対して、き裂の有無を確認する(ステップS1)。施工対象物が炉心シュラウド2であるので、例えば、超音波探傷装置(または渦電流探傷装置)を用いて炉心シュラウド2に対する超音波探傷を実施する。この超音波探傷は、例えば、原子炉ウェル4を跨いで運転床上を走行する燃料交換機に乗った作業員がトングを用いて超音波探傷装置を炉心シュラウド2の内面に押し当てながら行われる。マニピュレータを用いて超音波探傷装置を炉心シュラウド2の内面に押し当ててもよい。炉心シュラウド2の内面、特に、溶接部の内面に沿って超音波探傷装置を走査し、超音波の反射波を処理することによって炉心シュラウド2にき裂が存在するか否かを確認する。超音波探傷により炉心シュラウド2にき裂が存在しないことが確認された場合には、炉心シュラウド2への補修が行われない。その超音波探傷によって、炉心シュラウド2の内面にき裂5(図5参照)が発見されたとする。併せて、炉心シュラウド2の内面でのき裂5の位置も把握される。ステップS1の判定は、「き裂有り」となる。「き裂有り」の場合には、ステップS2〜S7の作業が行われる。
上記の超音波探傷及びステップ2以降のき裂の補修を行うときには、炉心内の全ての燃料集合体は、炉心から取り出されて燃料貯蔵プール(図示せず)内に移送されている。燃焼度ゼロの新燃料集合体の炉心内への装荷は、本実施例の構造部材のき裂進展抑制方法による炉心シュラウド2のき裂の補修が終了した後になる。
「き裂有り」の場合には、まず、き裂補修の前処理として、構造部材表面の酸化皮膜を除去する(ステップS2)。構造部材の表面には、原子炉の運転中に、図1に示すように酸化皮膜が形成される。この酸化皮膜の除去は化学除染によって行われる。化学除染を行うために、原子炉ウェル4内の冷却水が排水され、冷却水の液面が、上部が開放された原子炉圧力容器2の上端部まで低下される。原子炉圧力容器2内に化学除染液が供給され、原子炉圧力容器2の内面及び原子炉圧力容器2内に設置された炉心シュラウド2等の炉内機器の表面に対して、化学除染が実施される。この化学除染では、特開2000−105295号公報に記載されたように、酸化除染液(例えば、過マンガン酸カリウム水溶液)を用いた酸化除染、及び還元除染液(例えば、シュウ酸及びヒドラジンを含む水溶液)を用いた還元除染が行われる。その化学除染は、後述のめっき処理時における電気伝導性の向上、及びめっき処理後の耐久性向上のために、めっき膜の構造部材への密着性の向上を図るための処理である。
き裂補修装置10のように、ハウジングをき裂5近傍の炉心シュラウド2の内面に押付け、このハウジング内に化学除染液を供給して、き裂5近傍の炉心シュラウド2の内面に対して化学除染を行ってもよい。この場合には、例えば、特開2000−105295号公報の図1に示されたに記載されたとき化学除染装置が用いられる。この化学除染装置の循環ライン(可撓性の高圧ホース)の両端が、炉心シュラウド2の内面に押し付けられるハウジングに接続される。
化学除染が終了した後、化学除染液を含む炉水が原子炉圧力容器2から排出され、原子炉圧力容器2内には炉水が存在しなくなる。
構造部材表面に対して表面活性化処理を実施する(ステップS2)。この表面活性化処理は、構造部材の、き裂5の近傍の表面に存在する不働態皮膜を除去する処理である。不働態皮膜の除去も、めっき処理時における電気伝導性の向上を図るためである。表面活性化処理を実施するために、き裂補修装置10のハウジング11を構造部材の、き裂5の近傍の表面まで移送する必要がある。
ハウジング11の移送作業について説明する。燃料交換機上に乗った作業員が、ハウジング11に取り付けられたトングを持って、超音波探傷により発見したき裂が存在する炉心シュラウド2の内面の位置まで、ハウジング11を移送する。ハウジング11内の吸収部材12が該当するき裂に向き合ったとき、作業員がトングによりハウジング11を炉心シュラウド2の内面に押し付ける。これにより、吸収部材12がき裂を覆って炉心シュラウド2の内面に接触する。ハウジング11が、直接、構造部材の表面に接触して構造部材(例えば、炉心シュラウド2)の表面に傷を付けないように、ハウジング11の構造部材に対向する部分にも、緩衝材として吸収部材12が設けてもよい。
構造部材である炉心シュラウド2の、き裂5近傍の表面に対する表面活性化処理を行うために、活性化液供給装置38のタンク39内に貯えられている、所定濃度に調整された活性化液42が利用される。この活性化液42として、10%の硫酸が用いられる。弁41を開くことによって、タンク39内の活性化液(10%の硫酸)42が、注入管40を通して液供給管22内に供給され、液供給管22によってハウジング11内に導かれる。この活性化液42は、吸収部材12内に浸透し、炉心シュラウド2の、き裂5近傍の表面に接触する。吸収部材12内に浸透した活性化液42の作用により、炉心シュラウド2の表面に存在する不働態皮膜が除去される。吸収部材12が活性化液42で常に浸されるように、タンク39からハウジング11内に活性化液42が供給される。活性化液42の供給時には開閉弁53が閉じておりポンプ52も停止している。活性化液42がき裂5内にも浸入するので、き裂5の内面に存在する不働態皮膜も除去される。ステンレス鋼製の炉心シュラウド2の表面には不働態皮膜が形成されている。この不働態皮膜は、ステップS3の表面活性化処理により除去される。不働態皮膜が除去されて炉心シュラウド2の、き裂5近傍の内面に対する表面活性化処理が終了したとき、弁41が閉じられ、ハウジング11への活性化液42の供給が停止される。
構造部材表面の洗浄を行う(ステップS4)。表面活性化処理が終了して弁41が閉じられた後、弁26及び開閉弁53が開けられる。タンク24内の洗浄水27が、注入管25を通して液供給管22内に供給され、液供給管22によってハウジング11内に導かれる。洗浄水27が、吸収部材12、炉心シュラウド2の内面及びき裂5内を洗浄する。この結果、吸収部材12内に存在する活性化液42、炉心シュラウド2の内面に付着した活性化液42及びき裂5内に存在する活性化液42が除去される。吸収部材12等を洗浄して活性化液42を含む洗浄水は、ポンプ52が駆動されているので、ハウジング11内から液戻り管51内に排出され、回収タンク(図示せず)に回収される。ポンプ52は、開閉弁53が開いたときに起動される。吸収部材12等の洗浄が終了した後、弁26が閉じられてポンプ52が停止され、開閉弁53も閉じられる。
洗浄終了後、構造部材の表面及びき裂内を乾燥させる(ステップS5)。トングによりハウジング11を移動して吸収部材12を炉心シュラウド2の内面から離し、そのまま、所定時間の間、放置する。この放置により、き裂5内及び炉心シュラウド2の表面が乾燥される。以上により、き裂補修の前処理の工程が終了する。
めっき処理を実施する(ステップS6)。き裂5内、及び炉心シュラウド2の、き裂近傍の内面に対するめっき処理が、以下のように、行われる。
めっき処理において、最初に、Crめっきが行われる。ハウジング11が炉心シュラウド2の内面に向って再び押し付けられ、吸収部材12が炉心シュラウド2の内面に接触する。吸収部材12が炉心シュラウド2の内面に接触しているとき、吸収部材12内に挿入されている対極13及び参照電極14のそれぞれの先端が炉心シュラウド2の内面に接触していない。この状態で、弁31を開いて、タンク29内に貯えられてCrが所定濃度に調整されたCrめっき液32を、注入管25を通して液供給管22内に供給し、液供給管22によってハウジング11内に導く。Crめっき液32は、吸収部材12に浸透し、やがて、炉心シュラウド2の、き裂5近傍の内面に接触する。Crめっき液32はき裂5内にも浸入する。Crめっき液32が吸収部材12内に満たされた状態で、開閉器(図示せず)を閉じて電源20からケーブル15,17に電流を供給する。Crめっき液32が導電性を有するので、電源20、ケーブル15、対極13、吸収部材12内のCrめっき液32、炉内シュラウド2及びケーブル17及び電源20による電気回路が形成される。この電気回路に電流が流れる。
電位差計18は、参照電極14と炉心シュラウド2の間の電位差(電圧)を計測する。参照電極14と炉心シュラウド2の間に所定の電圧が印加されるように、オペレータが、電位差計18の計測値に基づいて電源20を調節する。電流計19が、吸収部材12内に存在するCrめっき液32を通して対極13と炉心シュラウド2の間に流れる電流を計測する。電流計19で計測された電流が記録され、オペレータは計測された電流を監視する。参照電極14と炉心シュラウド2の間の電圧が、所定時間の間、連続的に所定電圧に維持され、かつ、吸収部材12を常にCrめっき液32で満たされた状態に保持するために、弁31の開閉操作によってCrめっき液32がタンク28から吸収部材12に断続的に供給される。対極13と炉心シュラウド2の間に電流が流れることによって、き裂5の内面にCrめっき層(Cr層)43が形成され(図8参照)、やがて、き裂5がCrめっき層43によって封止される。Crめっき層43は、ハウジング11内で炉心シュラウド2の内面にも形成される。
対極13と炉心シュラウド2の間に所定の電流が流れることによって、き裂5内に浸入したCrめっき液32に含まれるCrが、き裂5の先端からき裂5の開口までのき裂5の内面に付着し、き裂5内にCrめっき層43を形成する。対極13と炉心シュラウド2の間に所定の電流が流れるように、参照電極14と炉心シュラウド2の間に印加する電圧を、上記したように、所定電圧に調節する。すなわち、参照電極14と炉心シュラウド2の間に印加する電圧を所定電圧に調節することによって、対極13と炉心シュラウド2の間に所定の電流が流れ、き裂5及び炉心シュラウド2の内面にCrめっき層43が形成される。
Crめっき層43の形成によって吸収部材12に含まれているCrめっき液32のCrの濃度が低下する。このため、弁31及び開閉弁53の開閉操作、及びポンプ52の起動、停止を断続的に行うことによって、吸収部材12内のCr濃度が低下したCrめっき液32の液戻り管51への排出、及びタンク29から吸収部材12へのCrめっき液32の供給を周期的に行い、吸収部材12内のCr濃度を所定濃度以上に保持する。これにより、き裂5内でのCrめっき層43の形成を効率良く行うことができる。
き裂5がCrめっき層43で封止されたとき、弁31が閉じられて吸収部材12へのCrめっき液32の供給が停止され、上記した開閉器が開放されて電源20からケーブル15への電流の供給が停止される。これにより、Crめっき工程が終了する。
その後、ステップS7の洗浄工程、及び図7には図示されていないが、ステップS5の乾燥工程が実施される。ステップS7の洗浄工程はステップS4の洗浄工程と同様に行われる。弁26及び開閉弁53が開けられて、タンク24内の洗浄水27が、ハウジング11内に導かれる。洗浄水27によって、吸収部材12、炉心シュラウド2の内面及びCrめっき層43の表面が洗浄され、Crめっき液32が除去される。Crめっき液32を含む洗浄水27が液戻り管51により回収タンクに回収される。洗浄が終了した後、弁26及び開閉弁53が閉じられ、ポンプ52が停止される。その後、炉心シュラウド2の内面及びCrめっき層43の表面が乾燥される。
次に、Niめっきが行われる。ハウジング11が炉心シュラウド2の内面に向って再び押し付けられ、吸収部材12が炉心シュラウド2の内面に接触する。吸収部材12が炉心シュラウド2の内面に接触している状態で、弁36を開いて、タンク34内に貯えられてNiが所定濃度に調整されたNiめっき液37を、注入管35を通して液供給管22内に供給し、液供給管22によってハウジング11内に導く。Niめっき液37は、吸収部材12内に浸透し、やがて、ハウジング11内で炉心シュラウド2の内面及びCrめっき層43の表面に接触する。この状態で開閉器が閉じられ、電源20からケーブル15に電流が供給される。この電流は、対極13から、吸収部材12内のNiめっき液37を流れて炉心シュラウド2に到達し、ケーブル17を経て電源20に戻る。
Crめっきのときと同様に、電位差計18が参照電極14と炉心シュラウド2の間の電圧を計測し、オペレータはこの電圧が所定電圧になるように電源20を調節する。結果的に、対極13と炉心シュラウド2の間に所定の電流が流れ、吸収部材12内のNiめっき液37に含まれたNiが、ハウジング11内で、炉心シュラウド2の内面及びCrめっき層43の表面に付着する。したがって、Niめっき層44(図8参照)が、き裂5を封止したCrめっき層43及びCrめっき層43とき裂5の内面との接触面を覆って炉心シュラウド2の内面に掛けて形成される。
Niめっき層44の形成によって吸収部材12に含まれているNiめっき液37のNiの濃度が低下する。このため、弁36及び開閉弁53の開閉操作、及びポンプ52の起動、停止を断続的に行うことによって、吸収部材12内のNi濃度が低下したNiめっき液37の液戻り管51への排出、及びタンク34から吸収部材12へのNiめっき液37の供給を周期的に行って、吸収部材12内のNi濃度を所定濃度以上に保持する。これにより、き裂5内でのNiめっき層44の形成を効率良く行うことができる。
所定厚みのNiめっき層44がCrめっき層43の表面及び炉心シュラウド2の内面に連続して形成されたとき、弁36が閉じられ、吸収部材12へのNiめっき液37の供給が停止される。さらに、上記した開閉器が開放され、電源20からケーブル15への電流の供給が停止される。これにより、Niめっきが終了する。
その後、ステップS7の洗浄工程及びステップS5の乾燥工程が、Crめっき終了後と同様に、実施される。弁26及び開閉弁53が開けられて、タンク24内の洗浄水27が、ハウジング11内に導かれる。洗浄水27によって、吸収部材12、炉心シュラウド2の内面及びNiめっき層44の表面が洗浄され、Niめっき液37が除去される。Niめっき液37を含む洗浄水27が液戻り管51により回収タンクに回収される。洗浄終了後に、弁26及び開閉弁53が閉じられ、ポンプ52が停止される。その後、炉心シュラウド2の内面及びNiめっき層44の表面が乾燥される。
以上の工程の終了によって1つのき裂5の補修が終了する。補修が必要な別のき裂5が炉心シュラウド2の内面に存在する場合には、そのき裂5の近傍の、炉心シュラウドの内面に、吸収部材12を内蔵するハウジング11を押し付けて、ステップS3〜S7の各工程によるき裂の補修を実施する。炉心シュラウド5に存在する全てのき裂5に対して補修が終了したとき、炉心シュラウド2に対するき裂の補修が終了する。
ハウジング11が原子炉圧力容器1外に搬出され、原子炉圧力容器1及び原子炉ウェル4内に冷却水が充填される。燃料交換機を用いて燃料貯蔵プールに保管していた燃料集合体(新燃料集具体を含む)が炉心に装荷される。気水分離器及び蒸気乾燥器が原子炉圧力容器1内に設置され、原子炉圧力容器1の上端部に蓋が取り付けられ、原子炉圧力容器1が密封される。定期検査が終了した後、沸騰水型原子炉が起動される。
沸騰水型原子炉の定格出力運転時に、原子炉圧力容器1に接続された給水配管(図示せず)から水素注入を行い、この水素が原子炉圧力容器1内の炉水に供給される。このような炉水への水素注入により、炉水と接触する、原子炉の構造部材の腐食電位が−0.1Vvs.SHE以下となる。
本実施例によれば、き裂5をCrめっき層(Cr層)43で封止しているので、構造部材に生じたき裂の進展を抑制することができる。さらに、き裂5を封止したCrめっき層(Cr層)43の表面及びこのCrめっき層43とき裂5の内面との接触面を覆って炉心シュラウド2の内面に掛けて、酸素を含む炉水に接触したときの腐食電位がCrめっき層43よりも低いNiめっき層(Ni層)44を形成している。このように、本実施例では、き裂5の補修によりCrめっき層43及びこのCrめっき層43とき裂5の内面との接触面を覆ったNiめっき層44が、酸素を含む炉水と接触するので、特開平8−176881号公報のようにき裂内をCr層で封止した場合に比べて、き裂の進展をさらに抑制することができる。
本実施例によれば、Crめっき層43によるき裂5の封止により、このき裂5内での硫酸イオンの濃縮が生じなく、さらに、炉心シュラウド2を構成する金属元素の、そのき裂5の先端からの溶出を防止できる。Crめっき層43及びNiめっき層44の形成は、室温での施工であるため、入熱量が非常に小さい。このように、本実施例は、特開2001−242280号公報及び特開2000−230996号公報のように、き裂を補修する際に構造部材に熱を加えることがないので、溶融した構造部材の固化に伴う引張残留応力の発生を懸念する必要がない。
対極13が挿入されている吸収部材12を炉心シュラウド2の内面に接触させた状態で、吸収部材12に、Crめっき液32及びNiめっき液37を順次供給するので、原子炉圧力容器2内にめっき液を満たす必要が無く、炉心シュラウド2の、き裂5が存在する局所的な部分にCrめっき層43及びCrめっき層43を覆ったNiめっき層44を容易に形成することができる。
本実施例では、き裂5内でのCrめっき層43の形成時に参照電極14と炉心シュラウド1の間の電圧を電位差計18で計測し、この電圧の計測値に基づいて参照電極14と炉心シュラウド1の間の電圧を設定電圧に調節するので、き裂が存在している、構造部材である炉心シュラウド2の電位を一定に保持することができる。このため、き裂5内でのCrめっき層43の形成が効率良く行うことができる。本実施例では、Crめっき層43の表面にNiめっき層44を形成するときにも、参照電極14と炉心シュラウド1の間の電圧の計測値に基づいて参照電極14と炉心シュラウド1の間の電圧を設定電圧に調節している。したがって、Crめっき層43の表面及び炉心シュラウド2の内面へのNiめっき層44の形成を効率良く行うことができる。
水素注入により炉水に含まれる酸素の濃度が100ppb以下に低減されたとき、腐食の駆動力である「酸素の還元反応」による電流がCrより小さくなるため(図4参照)、き裂の封止部表面(き裂5を封止したCrめっき層43の表面)をNiめっき層44で覆うことによって、Crめっき層43だけの場合よりも長期間に亘ってSCCを抑制することができる。換言すれば、き裂5を封止したCrめっき層43の表面をNiめっき層44で覆うことによって腐食電位をさらに低減させることができるので、構造部材である炉心シュラウド2からの金属元素イオン(例えば、鉄(II)イオン)の溶出を抑制することができ、さらに、炉心シュラウド2と接触する炉水に含まれた酸化種の還元反応速度を低下させることができる。この結果、炉心シュラウド2に生じたき裂5の進展速度を、より長期に亘って抑制することができる。形成されたNi層による、Cr層だけを形成したときよりも腐食の駆動力を弱める作用は、炉水の酸素濃度が100ppb以下になったときに発揮される。
原子炉圧力容器1に接続されてタービン(図示せず)に蒸気を導く主蒸気配管(図示せず)の表面線量率を上昇させない水素濃度になるように炉水に水素を注入した場合には、その炉水の酸素濃度は数ppbまで低下する。本実施例では、炉水の酸素濃度が、100ppb以下の範囲で、例えば、50ppbのような高濃度になる水素注入であっても、SCCの駆動力を抑制することができる。このため、水素の炉水への注入量を減少することができる。
一方のみが開放されたハウジング11は、吸収部材12の支持部材である。このため、ハウジング11の替りに、板状部材で吸収部材12を支持することも可能である。液供給管22の、活性化液42等の各種の液を放出する放出口を、吸収部材12の真上に配置して、吸収部材12への各種の液の供給を容易にし、液戻り管51を、吸収部材12を支持する板状部材に接続する。
本発明の他の実施例である実施例2の構造部材のき裂進展抑制方法を、図9を用いて説明する。本実施例も、沸騰水型原子炉の構造部材に対して適用される。
本実施例の構造部材のき裂進展抑制方法は、実施例1の構造部材のき裂進展抑制方法で用いたき裂補修装置10の替りに、き裂補修装置10Aを用いる点で、実施例1と異なっている。き裂補修装置10Aは、き裂補修装置10に、走査装置45を付加した構成を有する。き裂補修装置10Aの走査装置45以外の構成は、き裂補修装置10と同じである。
走査装置45は、周方向位置決め装置46、水平方向位置決め装置47及び高さ方向位置決め装置48を有する。周方向位置決め装置46は、運転床3の床面に施設された環状レール49上に設置され、環状レール49に沿って移動する。水平方向位置決め装置47は、周方向位置決め装置46に設置され、水平方向に移動する。高さ方向位置決め装置48は、水平方向位置決め装置47に設置され、上下方向に移動する。吸収部材12を内蔵したハウジング11が、高さ方向位置決め装置48に取り付けられる。
沸騰水型原子炉の運転が停止されて、原子炉圧力容器1の蓋が取り外され、原子炉圧力容器1内から気水分離器及び蒸気乾燥器が取り出され、さらに、炉心に装荷されている全燃料集合体が燃料貯蔵プールに搬送された後、走査装置45が運転床3上で環状レール49上に移動可能に設置される。
本実施例の構造部材のき裂進展抑制方法においても、図7に示すステップS1〜S7の各工程が実施される。ステップS1及びS2は、実施例1と同様に実施される。
ステップS3の表面活性化処理では、実施例1において作業員が行っていたハウジング11の移動が走査装置45によって行われる。周方向位置決め装置46を環状レール49に沿って周方向に移動させ、水平方向位置決め装置47を水平方向で原子炉圧力容器1の半径方向に移動させ、高さ方向位置決め装置48を上下方向に移動させることによって、ハウジング11に保持される吸収部材12を、炉心シュラウドに存在する1つのき裂5に対向させることができる。その後、水平方向位置決め装置47を駆動して、吸収部材12、を炉心シュラウド2の、き裂5近傍の内面に向って移動させ、その内面に接触させる。実施例1と同様に、タンク39内の活性化液42を吸収部材12に供給して、吸収部材12が接触している炉心シュラウド2の内面及びき裂5の内面に形成された不働態皮膜が除去される。
その後、実施例1と同様に、ステップS4〜S7の各工程が順次行われ、き裂5がCrめっき層43で封止され、Crめっき層43の表面にNiめっき層44が形成される。実施例1で作業員が行っていたハウジング11の移動は、全て、走査装置45によって行われる。
全てのき裂5に対する補修が完了した後、高さ方向位置決め装置48が上方に向って移動され、ハウジング11を運転床3の上方まで移動させる。さらに、水平方向位置決め装置47を駆動してハウジング11を運転床3の上方まで移動させる。この状態でハウジング11を高さ方向位置決め装置48から取り外す。走査装置45も運転床3から撤去し、燃料集合体の炉心への装荷、気水分離器及び蒸気乾燥器の原子炉圧力容器1内への設置、原子炉圧力容器1の蓋による密封を行う。定期検査が終了した後、沸騰水型原子炉が起動される。
本実施例は、実施例1で生じた各効果を得ることができる。さらに、ハウジング11の移動を走査装置45で行うので、作業員の負担が非常に軽減される。
本発明の他の実施例である実施例3の構造部材のき裂進展抑制方法を、図10を用いて説明する。本実施例も、沸騰水型原子炉の構造部材に対して適用される。
実施例の構造部材のき裂進展抑制方法は、実施例1及び2と異なり、ステップS6のめっき処理においてCrめっきを実施しなくNiめっきだけを実施する。本実施例で用いるき裂補修装置10Bは、実施例2で用いるき裂補修装置10AからCrめっき液供給装置28を取り除いた構成を有する。すなわち、き裂補修装置10Bのめっき液供給装置21Aは、液供給管(例えば、可撓性のホース)22、洗浄水供給装置27、Niめっき液供給装置33、活性化液供給装置38及び液戻り管(例えば、可撓性のホース)51を有する。めっき液供給装置21AはCrめっき液供給装置28を有していない。めっき液供給装置21AのCrめっき液供給装置28以外の部分の構成はめっき液供給装置21と同じである。き裂補修装置10Bは、Crめっき液供給装置28を有していない点を除いて、き裂補修装置10Aと同じ構成を有する。
本実施例においても、ハウジング11は、実施例2と同様に、高さ方向位置決め装置48に取り付けられ、ハウジング11の移動が走査装置45によって行われる。
実施例の構造部材のき裂進展抑制方法では、図7に記載されたステップS1〜S7の各工程が実施される。しかしながら、本実施例では、上記したように、ステップS6のめっき処理の工程において、Crめっきが実施されず、Niめっきが実施される。本実施例におけるめっき処理は、実施例1でのめっき処理と同様に実施される。吸収部材12が、炉心シュラウド2の、き裂5近傍の内面に、走査装置45によって押し付けられる。
タンク34内のNiめっき液37が、液供給管22を通って吸収部材12に供給される。吸収部材12内のNiめっき液37が、炉心シュラウド2の内面に接触し、さらに、き裂5内に浸入する。電源20からケーブル15に供給された電流は、対極13から吸収部材12内のNiめっき液37を伝わって炉心シュラウド2へと流れ、ケーブル17を経て電源20に戻る。このため、Niめっき液37に含まれたNiが、き裂5の内面に付着し、き裂5の内面にNiめっき層44A(図11参照)が形成され、き裂5がNiめっき層44Aによって封止される。Niめっき層44Aは炉心シュラウド2の内面にも形成される。すなわち、炉心シュラウド2に生じているき裂5内にNiめっき層44Aを形成してNiめっき層44Aによりき裂を封止し、Niめっき層44Aが、き裂5内に形成されたNiめっき層44Aの部分とき裂5の内面との接触面を覆って炉心シュラウド2の内面に掛けて形成される。
Niめっきが終了した後、実施例1と同様に、ステップS7において、洗浄水27による吸収部材12及びNiめっき層44Aの表面の洗浄が行われる。その後、Niめっき層44Aの表面が乾燥される。
その後、実施例2と同様に、走査装置45を駆動してハウジング11を運転床3上に移動させ、ハウジング11を高さ方向位置決め装置48から取り外す。そして、所定の作業を行い、沸騰水型原子炉を起動できる状態に復帰させる。
本実施例は、き裂5をNiめっき層(Ni層)44Aで封止し、Niめっき層44Aが、き裂5内のNiめっき層44Aの部分とき裂5の内面との接触面を覆って炉心シュラウド2の内面に掛けて形成される。このような本実施例は、酸素を含む炉水と接触したときにCr層よりも腐食電位が小さくなるNi層でき裂5を封止し、さらに、き裂5内のNiめっき層44Aの部分とき裂5の内面との接触面を覆って炉心シュラウド2の内面に掛けてNi層を形成するので、炉心シュラウド2(構造部材)に生じたき裂5の進展を、特開平8−176881号公報よりも、さらに抑制することができる。本実施例は、Crめっきを行わないので、実施例1及び2に比べてき裂の補修に要する時間を短縮することができる。
本実施例において参照電極14を使用しない理由は、対極13と模擬構造部材の間の電圧を事前に計測し、対極13と実際の構造部材(例えば、炉心シュラウド2)の間の電圧が、計測されたその電圧になるように、電源20を予め調節するからである。対極13と模擬構造部材間の電圧の事前計測について説明する。対極13を設けた吸収部材11を、原子炉の構造部材と同じ材質で製作した模擬構造部材に接触させて、吸収部材11にNiめっき液を浸透させ、対極13と模擬構造部材の間に電圧を印加し、模擬構造部材の表面にNiめっき層が形成される時点での対極13と模擬構造部材間の電圧を計測する。この電圧の計測値に基づいて、電源20が予め調節される。
本実施例においても、実施例1及び2のように、吸収部材10に参照電極14を設けてもよい。
なお、実施例1及び2においても、本実施例と同様に、参照電極14、ケーブル16及び電位差計18を削除し、事前に計測した、Crめっき時の電圧及びNiめっき時の電圧になるように電源20を予め調節してもよい。実施例1及び2では、Crめっき液32及びNiめっき液37を用いるので、吸収部材11にCrめっき液32を浸透させた場合、及び吸収部材11にNiめっき液37を浸透させた場合のそれぞれにおいて、対極13と模擬構造部材の間の電圧を計測する必要がある。
実施例1〜3のそれぞれの構造部材のき裂進展抑制方法は、沸騰水型原子炉の原子炉圧力容器1内に設けられた炉心シュラウド2以外の炉内構造物の表面に、万が一、き裂が生じた場合においても、このき裂の補修に適用することができる。さらに、実施例1〜3のそれぞれの構造部材のき裂進展抑制方法は、加圧水型原子炉の構造部材にき裂が生じた場合にも適用することができる。
1…原子炉圧力容器、2…炉心シュラウド、3…運転床、5…き裂、10,10A,10B…き裂補修装置、11…ハウジング、12…吸収部材、15,17…ケーブル、18…電位差計、20…電源、23…洗浄水供給装置、24,29,34,39…タンク、28…Crめっき液供給装置、33…Niめっき液供給装置、38…活性化液供給装置、43…Crめっき層、44,44A…Niめっき層、45…走査装置、46…周方向位置決め装置、47…水平方向位置決め装置、48…高さ方向位置決め装置。

Claims (8)

  1. 原子炉の運転が停止されている状態で前記原子炉の構造部材に生じているき裂内に電気めっきによりCr層を形成して前記Cr層により前記き裂を封止し、Ni層を、電気めっきにより、前記き裂を封止した前記Cr層及び前記Cr層と前記き裂の内面との接触面を覆って前記構造部材の表面に掛けて形成することを特徴とする構造部材のき裂進展抑制方法。
  2. 前記き裂内への前記Cr層の形成は、前記構造部材の、前記き裂が存在する部分の表面に、第1電極が挿入された吸収部材を接触させ、前記吸収部材にCrめっき液を供給し、前記吸収部材に浸透した前記Crめっき液を介して前記第1電極と前記構造部材の間に電流を流すことによって行われ、
    前記Cr層の表面への前記Ni層の形成は、前記吸収部材を洗浄した後に、前記構造部材の、前記き裂が存在する部分の前記表面に接触した前記吸収部材にNiめっき液を供給し、前記吸収部材に浸透した前記Niめっき液を介して前記第1電極と前記構造部材の間に電流を流すことによって行われる請求項1に記載の構造部材のき裂進展抑制方法。
  3. 前記構造部材の前記表面に接触された前記吸収部材内に挿入された第2電極と前記構造部材間の電圧を電圧検出器で計測し、前記電圧検出器で計測された電圧に基づいて前記第2電極と前記構造部材間の前記電圧を設定電圧に調節する請求項2に記載の構造部材のき裂進展抑制方法。
  4. 原子炉の運転が停止されている状態で前記原子炉の構造部材に生じているき裂内に電気めっきによりNi層を形成して前記Ni層により前記き裂を封止し、前記Ni層を、前記電気めっきにより、前記き裂内に形成された前記Ni層の部分と前記き裂の内面との接触面を覆って前記構造部材の表面に掛けて形成したことを特徴とする構造部材のき裂進展抑制方法。
  5. 前記Ni層の形成は、前記構造部材の、前記き裂が存在する部分の表面に、電極が挿入された吸収部材を接触させ、前記吸収部材にNiめっき液を供給し、前記吸収部材に浸透した前記Niめっき液を介して前記電極と前記構造部材の間に電流を流すことによって行われる請求項4に記載の構造部材のき裂進展抑制方法。
  6. 前記吸収部材への前記めっき液の供給は液供給管を用いて行う請求項2,3及び5のいずれか1項に記載の構造部材のき裂進展抑制方法。
  7. 前記吸収部材の移動が走査装置によって行われる請求項2,3,5及び6のいずれか1項に記載の構造部材のき裂進展抑制方法。
  8. 前記電気めっきが、前記構造部材の表面に形成された不働態皮膜を除去した後に行われる請求項1または4に記載の構造部材のき裂進展抑制方法。
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