JP2011169643A - ガス濃度算出装置およびガス濃度計測モジュール - Google Patents

ガス濃度算出装置およびガス濃度計測モジュール Download PDF

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Abstract

【課題】受光手段の個体差による不具合を防止し、且つ光路長の変化や受光エネルギー値の差異を発生させるための要素の振動による光検出精度の低下を防止し、更に光の測定時間ずれによる光検出精度の低下を抑制することが可能なガス濃度算出装置を提供する。
【解決手段】対象ガスが導入される導入空間を形成するガスセル10と、ガスセル10内に配置された光源20と、ガスセル10の一端に配置され、光源20から放射された光に対する反射率を電気的に調整する変調鏡30と、前記ガスセル10の他端に配置され、光源20から直接放射される直接光、および光源20から放射され且つ変調鏡30により反射される反射光を受光する受光部50と、変調鏡30により反射率が電気的に調整された場合のそれぞれにおける、受光部50の受光エネルギー値の比に基づき、対象ガスの濃度を算出する算出回路3を備える。
【選択図】図1

Description

本発明は、ガス濃度算出装置およびガス濃度計測モジュールに関するものである。
従来、例えば、二酸化炭素などのガスの濃度を算出するガス濃度算出装置が空調システムの分野などで導入されている。このガス濃度算出装置での算出結果に基づいて換気のON/OFFなどを制御することにより、空調システムを効率よく作動させ、消費電力の低減を図ることが行われている。このようなガス濃度算出装置にはNDIR(Non-dispersive Infrared:非分散型赤外線吸収)法が用いられており、NDIR(非分散型赤外線吸収)法とは、光が対象ガス中を通る際の減衰に基づいてガスの濃度を算出する手法である。
NDIR(非分散型赤外線吸収)法を用いたガス濃度算出装置として、例えば、特許文献1に記載されたものがある。このガス濃度算出装置は、単一光源からの光をガスセル内に照射し、ガスセル内を通った光を第1の検出器と第2の検出器によって検出している。第1の検出器は、被測定ガス領域と、測定ガス室内に封入された不活性ガス領域と、からなる光路を通過した光を検出している。第2の検出器は、被測定ガス領域と、比較ガス室内に封入された被測定ガスと同種のガス領域と、からなる光路を通過した光を検出している。また、照射光量の増減を第2の検出器で検出し、第1の検出器の出力を校正することが開示されている。
また、特許文献2には、シリンダ内のサンプルガス濃度を検出するガス濃度算出装置が記載されている。ここでは、シリンダ内を往復動するピストンのヘッドに反射鏡を設けると共に、シリンダのヘッドにはシリンダ内に向けて光源と検出器とを配置する。このような構成により、光源から発せられ且つピストン上の反射鏡で反射された光が検出器で受光される。ピストンの往復動に伴って、反射鏡を経由する光源から検出器までの光路長が変化するため、検出器に受光されるエネルギー値が変化する。そして、検出器から出力される出力値の変化に基づいて、サンプルガスの濃度が算出される。
特開2007−256242号公報 特開平5−180760号公報
上記特許文献1に記載されたガス濃度算出装置においては、第1の検出器および第2の検出器という、それぞれ別々の二つの受光素子を用いてガスの濃度を算出している。このため、受光素子自体の個体差(感度、ノイズ特性の差、あるいはそれらの周囲温度に対する差や長期変化に対する差など)がガス濃度の測定精度に悪影響を与えてしまう。このような悪影響は、受光素子それぞれの個体差によるものであるため、両受光素子からの出力値の比を用いることでキャンセルされるものではない。
上記特許文献2のガス濃度算出装置においては、単一の受光素子を用いるため、受光素子の個体差による不具合はないといえる。しかし、シリンダの上下運動の振動や表面の変質などが光の検出精度に悪影響を及ぼすことになる。また信号の取り込みは上下死点になるので、測定間隔がシリンダの運動速度に従属することになり、高速化対応に難がある。単一の受光素子を用いる場合において、参照光の測定タイミングと信号光の測定タイミングとの間に時間ずれが生じては、それぞれの測定結果の比に基づき算出されたガス濃度にも時間ずれの分だけ誤差が生じるということになる。
そこで、本発明は上記に鑑みてなされたもので、受光素子の個体差による不具合を防止し、且つ光路長を変化させるための要素の振動による光検出精度の低下を防止し、更に光の測定時間ずれによる光検出精度の低下を抑制することが可能なガス濃度算出装置およびガス濃度計測モジュールを提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明のガス濃度算出装置は、ガス濃度計測モジュールおよびガス濃度算出モジュールを備え、対象ガスの濃度を算出するガス濃度算出装置であって、前記ガス濃度計測モジュールは、前記対象ガスが導入される導入空間を形成するガスセルと、前記ガスセル内に配置された光源と、前記ガスセルの一端に配置され、前記光源から放射された光に対する反射率を電気的に調整する反射率調整手段と、前記ガスセルの他端に配置され、前記光源から直接放射される直接光、および前記光源から放射され且つ前記反射率調整手段により反射される反射光を受光する受光手段と、を備え、前記ガス濃度算出モジュールは、前記反射率調整手段により前記反射率が電気的に調整された場合のそれぞれにおける、前記受光手段の受光エネルギー値の比に基づき、前記対象ガスの前記濃度を算出する、ことを特徴とする。
また、本発明のガス濃度計測モジュールは、対象ガスの濃度を算出するガス濃度算出装置におけるガス濃度計測モジュールであって、前記対象ガスが導入される導入空間を形成するガスセルと、前記ガスセル内に配置された光源と、前記ガスセルの一端に配置され、前記光源から放射された光に対する反射率を電気的に調整する反射率調整手段と、前記ガスセルの他端に配置され、前記光源から直接放射される直接光、および前記光源から放射され且つ前記反射率調整手段により反射される反射光を受光する受光手段と、を備えることを特徴とする。
このような本発明のガス濃度算出装置およびガス濃度計測モジュールによれば、受光手段が直接光および反射光の両方を受光するため、直接光および反射光をそれぞれ異なる受光手段で受光する場合や、反射率調整手段により反射率が電気的に調整された場合のそれぞれにおける光を異なる受光手段で別々に受光する場合の、受光手段の個体差による不具合が防止される。
また、本発明において、受光手段が受光する光における光路長の変化や受光エネルギー値の差異を発生させるための手段は反射率調整手段であり、この反射率調整手段の動作は反射率の電気的な制御による。したがって、光路長の変化や受光エネルギー値の差異を発生させるために振動等を伴わず、当該振動による位置ずれや付加的なノイズなどが無いので、ガス濃度計測モジュールの光検出精度の低下を防止できる。
また、反射率調整手段が反射率を電気的に制御を行うことにより、反射率切り替えを高速で行うことができる。したがって、受光手段が受光する光測定タイミングにおける時間ずれが無いものと同然か、有っても非常に短く、擬似同時測定が可能となる。
以上により、本発明によれば、受光手段の個体差による不具合、振動による誤差、時間ずれによる誤差が生じることを防止できる。なお、このような効果をもたらす反射率調整手段としては、電気光学デバイス(EOデバイス)や液晶光学素子が好適である。
また、本発明においては、前記光源と前記受光手段との間の光路上に配置され、所定波長の光のみを通過させるバンドパスフィルタをさらに備えることが好ましい。
バンドパスフィルタにより、受光される光の波長帯を同一波長帯とすることができ、異なる波長帯の光が受光されることによる光検出精度の低下を防止できる。
また、本発明においては、前記光源は、赤外線を放射するものであることが好ましい。
赤外線が対象ガスを通るときにエネルギーが減衰する現象を用いて、対象ガスの濃度を算出することができる。
また、本発明においては、前記対象ガスは二酸化炭素であることが好ましい。
光が二酸化炭素を通るときにエネルギーが減衰する現象を用いて、対象ガスの濃度を算出することができる。
また、本発明においては、前記対象ガスの前記濃度と前記比との相関関係を示すデータベースまたは近似式を予め格納する格納手段を更に備え、前記ガス濃度算出モジュールは、前記データベースまたは前記近似式に基づき、前記比に相応する前記濃度を算出することが好ましい。
この発明によれば、予め用意したデータベースまたは近似式に基づき、対象ガスの濃度を精度よく算出することができる。
また、本発明においては、前記対象ガスの異なる前記受光手段を複数備える前記ガス濃度計測モジュールと、複数の前記受光手段に対応する複数の前記ガス濃度算出モジュールを備えることが好ましい。
この発明によれば、対象ガスの異なるガス濃度計測モジュールを複数備えることで、複数のガスの濃度を同時に精度良く算出することができる。
本発明によれば、受光手段の個体差による不具合を防止し、且つ光路長の変化や受光エネルギー値の差異を発生させるための要素の振動による光検出精度の低下を防止し、更に光の測定時間ずれによる光検出精度の低下を抑制することが可能なガス濃度算出装置およびガス濃度計測モジュールを提供することができる。
ガス濃度算出装置1を示す概略断面図である。 光路長や受光エネルギー値に差異を発生させるための仕組みを説明するための図である。 格納部4の格納情報を説明するための図である。 格納部4に格納されるデータベースの一例を示す図である。 格納部4に格納されるグラフの一例を示す図である。 ガス濃度算出装置1による二酸化炭素濃度算出処理の流れを示すフローチャートである。 ガス濃度算出装置1の変形例を示す概略断面図である。 ガス濃度算出装置1の変形例を示す概略断面図である。
以下、添付図面を参照して本発明にかかるガス濃度算出装置およびガス濃度計測モジュールの好適な実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
(ガス濃度算出装置1の全体構成)
まず、本実施形態に係るガス濃度算出装置1の全体構成について説明する。図1は、ガス濃度算出装置1を示す概略断面図である。ガス濃度算出装置1は、光源20からの光を受光し、そのエネルギー値を測定するガス濃度計測モジュール2と、ガス濃度計測モジュール2による測定結果に基づいてガス濃度を算出する算出回路3(特許請求の範囲の「ガス濃度算出モジュール」に相当)と、算出回路3がガス濃度を算出する際に必要な情報を格納している格納部4(特許請求の範囲の「格納手段」に相当)とを含んで構成され、対象ガスの濃度を算出するものである。算出回路3によって算出されたガス濃度は、図示しない制御装置などに出力され、例えば空調システムなどの制御に利用される。なお、本実施形態では、ガス濃度計測モジュール2に導入されるサンプルガス60中の二酸化炭素を濃度算出の対象ガスとした場合の例について説明する。
ガス濃度計測モジュール2は、ガスセル10と、光源20と、変調鏡30(特許請求の範囲の「反射率調整手段」に相当)と、バンドパスフィルタ40と、受光部50(特許請求の範囲の「受光手段」に相当)とを含んで構成される。
ガスセル10は、内部にサンプルガス60が導入される導入空間11を形成するものである。ガスセル10は、ガスセル10の一端側に、導入空間11内にサンプルガス60を導入するためのガス導入部12が設けられ、ガスセル10の他端側に、導入空間11内のサンプルガス60を外部へ排出するためのガス排出部13が設けられている。ガス排出部13は、ガスセルの内壁(例えば底部)に多数の穴が設けられているものとしてもよい。
光源20は、ガスセル10内に配置されており、赤外線を放射するものである。本実施形態では、光源20として、4.2μm〜4.3μmの波長域の光を含む光を放射するものを用いる。図1においては、光源20がガスセル10内の中央の底部に配置されている例を示しているが、これに限らず、光源20がガスセル10内の中央の上部や中央部に配置されていても良く、変調鏡30側や受光部50側にある程度偏って配置されていても良い。光源20からの赤外線はサンプルガス60中の二酸化炭素分子61により吸収され減衰する。
変調鏡30は、ガスセル10の一端に配置され、光源20から放射された光に対する反射率を電気的に調整するものである。本実施形態では、変調鏡30として、例えば液晶光学素子や電気光学デバイス(EOデバイス)を採用している。これ以外に、誘電体や金属メッシュ等で反射率の制御を行う他の手法を用いても良い。
バンドパスフィルタ40は、光源20と受光部50との間の光路上に配置され、所定波長の光のみを通過させるものである。本実施形態では、バンドパスフィルタ40は、ガスセル10の受光部50側の端部に配置され、4.2μm〜4.3μmの波長域の光のみを透過するものを用いる。
受光部50は、ガスセル10の他端に配置され、光源20から直接放射される直接光、および光源20から放射され且つ変調鏡30により反射される反射光の両方を受光する受光素子である。つまり、一つの受光部50が直接光および反射光の両方を受光する。言い換えれば、変調鏡30により反射率が電気的に調整された場合のそれぞれにおける光(後述するように、直接光、および直接光と反射光の合計など)を一つの受光部50が受光する。したがって、複数種類の光を受光するために複数の受光手段をそれぞれ用いる場合に比べて、受光手段の個体差による弊害が皆無である。
(光路長や受光エネルギー値に差異を発生させるための仕組み)
図2は、本実施形態において、光路長や受光エネルギー値に差異を発生させるための仕組みを説明するための図である。図1同様、ガスセル10の中央部に配置された光源20から出発し受光部50に到達する光の光路長および受光エネルギー値の変更は、変調鏡30の反射率の変更によって行われる。この説明では、説明の便宜のため、変調鏡30が全反射(変調鏡30がON)または全透過(変調鏡30がOFF)することにより、反射率を調整するものとして説明する。
図2(A)は、変調鏡30がONの状態になり、光源20から到達した光を全て反射する様子を示す。図2(A)において、光源20から放射され受光部50に直接到達する光である直接光はI1(→)と表示されており、直接光が通る光路の長さは概ねLである。また、反射光については、I1(←)(光源20から放射され変調鏡30に到達する光)およびI2(変調鏡30により反射され受光部50に到達する光)と表示されており、反射光が通る光路の長さは概ね3L(L+2L)である。変調鏡30がONの状態では、直接光および反射光の両方がそれぞれLおよび3Lの光路を経て受光部50に到達され、受光エネルギー値が測定される。一方、図2(B)は、変調鏡30がOFFの状態になり、光源20から到達した光を全く反射せず透過している様子を示す。この場合には、直接光のみが概ねLの光路を経て受光部50に到達され、受光エネルギー値が測定される。なお、図2では、ハッチングの有無により変調鏡30のON/OFFを示している。また、図2(B)では反射しない光を透過することを記載しているが、これに限らず、吸収するようにしても良い。
以上のように、本実施形態において、光路長および受光エネルギー値の変更は変調鏡30により電気的に行われる。このため、コンパクトで、しかも可動部を無くすことができ、振動による位置ずれや付加的なノイズなどの弊害が無く、精度が向上する。更に、変調速度が機械式に比べ大幅に高速化できる。
(格納部4の格納情報)
次に、格納部4が格納する情報について説明する。格納部4には、変調鏡30により反射率が電気的に調整された場合のそれぞれにおける、受光部50の受光エネルギー値の比と、対象ガスである二酸化炭素の濃度との相関関係を示すデータベースまたは近似式が予め格納されている。
図3は、格納部4の格納情報を説明するための図である。図3は、基本的には図1や図2と同様の図であるが、以下の説明のために必要な要素のみを残し、光路長についてはLや2Lで概略的に表示している。図3においては、以下のような式(1)〜(3)が成立する。
I=I1(→)+I1(←)…(1)
I1(→)/I=x…(2)
I1(←)/I=1−x…(3)
ここで、Iは光源20から放射される赤外線のトータルのエネルギー値であり、I1(→)は直接光であって図3において光源20から右方向に放射される赤外線のエネルギー値であり、I1(←)は図3において光源20から左方向に放射される赤外線のエネルギー値であり、xはI1(→)とI1(←)の分配比率である。
図3において、変調鏡30がONの状態である場合には、ランバート・ベールの法則により、以下のような式(4)〜(7)が成立する。
I1(→)=xIexp(−KCL)…(4)
I1(←)=(1−x)Iexp(−KCL)…(5)
I2=(I1(←)Ron)exp(−2KCL)=(((1−x)Iexp(−KCL))Ron)exp(−2KCL)…(6)
Ion=I1(→)+I2=xIexp(−KCL)+(((1−x)Iexp(−KCL))Ron)exp(−2KCL)…(7)
ここで、Kは吸収係数であり、Cはガスセル10内に導入されたサンプルガス60中の二酸化炭素の濃度であり、Lは光源20から受光部50までの距離であり、2Lは変調鏡30から受光部50までの距離であり、I2は反射光であって光源20から左方向に放射され且つ変調鏡30により反射された赤外線のエネルギー値であり、Ronは変調鏡30のON状態における反射率であり、Ionは変調鏡30がONの状態に受光部50に到達する赤外線のトータルのエネルギーであって、直接光と反射光との合計エネルギー値である。
また、図3において、変調鏡30がOFFの状態である場合には、ランバート・ベールの法則により、以下のような式(8)〜(11)が成立する。
I1(→)=xIexp(−KCL)…(8)
I1(←)=(1−x)Iexp(−KCL)…(9)
I2=(I1(←)Roff)exp(−2KCL)=(((1−x)Iexp(−KCL))Roff)exp(−2KCL)…(10)
Ioff=I1(→)+I2=xIexp(−KCL)+(((1−x)Iexp(−KCL))Roff)exp(−2KCL)…(11)
ここで、Roffは変調鏡30がOFFの状態における反射率であり、Ioffは変調鏡30がOFFの状態に受光部50に到達する赤外線のトータルのエネルギーであって、直接光と反射光との合計エネルギー値である。
変調鏡30がONの状態に受光部50が受光した光のエネルギー値Ionと変調鏡30がOFFの状態に受光部50が受光した光のエネルギー値Ioffの比(特許請求の範囲の「前記反射率調整手段により前記反射率が電気的に調整された場合のそれぞれにおける、前記受光手段の受光エネルギー値の比」に相当)は以下のようである。
Ion/Ioff=[xIexp(−KCL)+(((1−x)Iexp(−KCL))Ron)exp(−2KCL)]/[xIexp(−KCL)+(((1−x)Iexp(−KCL))Roff)exp(−2KCL)] …(12)
仮に、Roff=0且つx=0.5、つまり変調鏡30がOFFの状態には完全に透明(全透過)であり、且つ光源20の分配は半分である場合には、IonとIoffの比について下記の関係が成立する。
Ion/Ioff=(1+(Ron)exp(−2KCL))…(13)
ここで、装置構成によりRon、K、Lは定数となるため、上記の式(13)は以下のように書き換えられる。
C=f(Ratio(透明鏡))…(14)
ここで、Ratio(透明鏡)はRoff=0且つx=0.5の場合のIonとIoffの比であり、fは関数であり、Ratio(透明鏡)と濃度Cとの相関関係を示す近似式である。格納部4はこの式(14)の近似式fを示す情報を格納している。
一方で、上記の近似式fを求める代わりに、既知のI、K、C、L、x、Ron、Roffを用い、且つ上記(7)や(11)を用いて、それぞれの場合におけるIonやIoffを算出し、その比であるIon/Ioffを算出するようにしても良い。そして、その結果をテーブルとしてデータベースを作成する。図4はこのように作成したデータベースの一例を示す。図4のデータベースには、Ion/I,Ioff/I,Ion/Ioffの各値に対応する二酸化炭素の濃度が示されている。
更に、図4のデータベースを用いて、図5に示すようなグラフを求めても良い。図5に示すグラフは、二酸化炭素の濃度と比Ion/Ioffとの相関関係等を示している。図5において、G1は二酸化炭素の濃度と比Ion/Ioffとの相関関係を示すグラフであり、G2は二酸化炭素の濃度と比Ion/Iとの相関関係を示すグラフであり、G3は二酸化炭素の濃度と比Ioff/Iとの相関関係を示すグラフである。格納部4はこのようなデータベースまたはグラフを示す情報を格納している。なお、図4や図5では、データベースやグラフを判りやすくするため、二酸化炭素の濃度がゼロppmの時に、各エネルギー値の光源から放射されるエネルギー値Iに対する比、Ion/Iが1となるように、Ioff/Iが0.5となるように、I1(→)/I、I1(←)/IおよびI2/Iが0.5となるように示してあるが、実際の測定では光源から放射されるエネルギーIは測定できないので、データベースやグラフに示された値のうち、測定値として得られる値はエネルギー値の比Ion/Ioffのみである。
以上により、式(14)の近似式fや、図4のデータベース、または図5のグラフに基づき、二酸化炭素の濃度とIon/Ioffとの相関関係が分かるので、Ion/Ioffが測定されれば、二酸化炭素の濃度を算出できるようになる。
(二酸化炭素の濃度算出処理)
次に、受光部50が受光した光のエネルギー値より、算出回路3が二酸化炭素の濃度を算出する処理の流れについて説明する。算出回路3は、変調鏡30により反射率が電気的に調整された場合のそれぞれにおける、受光部50の受光エネルギー値の比(上記Ion/Ioff)に基づき、更に上記説明した近似式fや、図4のデータベース、または図5のグラフに基づき、当該比に相応する二酸化炭素の濃度を算出するものであって、CPU等を含んで構成された演算回路である。図6は、二酸化炭素濃度算出処理の流れを示すフローチャートである。
ステップS101において算出回路3は、変調鏡30がONの状態に受光部50が受光した光のエネルギー値Ionと、変調鏡30がOFFの状態に受光部50が受光した光のエネルギー値Ioffとを取得する。
次に、ステップS102において算出回路3は、取得したエネルギー値Ionとエネルギー値Ioffの比(Ion/Ioff)を算出する。ステップS103において算出回路3は、格納部4に格納された近似式fを用いて、ステップS103で算出した比(Ion/Ioff)から二酸化炭素の濃度を算出する。近似式fを用いて濃度を算出することにより、算出処理を容易に行うことができる。
ステップS104において算出回路3は、算出された二酸化炭素の濃度を示す信号を、図示しない制御装置などに出力する。二酸化炭素の濃度を示す信号は、例えば、制御装置において空調の制御等に利用される。
以上、近似式fを用いた場合について説明したが、図4に示したテーブルを用いる場合には、ステップS102で算出した比(Ion/Ioff)を用いてテーブルを検索し、相応する濃度値をステップS104における出力値として出力しても良い。また、図5に示したグラフを用いる場合には、ステップS102で算出した比(Ion/Ioff)に相応する濃度値を図5のグラフから読み出し、当該濃度値をステップS104における出力値として出力しても良い。
(本実施形態の作用・効果)
続いて、本実施形態にかかるガス濃度算出装置1の作用及び効果について説明する。本実施形態のガス濃度算出装置1によれば、受光部50が直接光および反射光の両方を受光するため、直接光および反射光をそれぞれ異なる受光部50で受光する場合や、変調鏡30により反射率が電気的に調整された場合のそれぞれにおける光を異なる受光部50で別々に受光する場合の、受光部50の個体差による不具合が防止される。
また、本実施形態において、受光部50が受光する光における光路長の変化や受光エネルギー値の差異を発生させるための手段は変調鏡30であり、この変調鏡30の動作は反射率の電気的な制御による。したがって、光路長の変化や受光エネルギー値の差異を発生させるために振動等を伴わず、当該振動による位置ずれや付加的なノイズなどが無いので、ガス濃度計測モジュール2の光検出精度の低下を防止できる。
また、変調鏡30が反射率を電気的に制御を行うことにより、反射率切り替えを高速で行うことができる。したがって、受光部50が受光する光測定タイミングにおける時間ずれが無いものと同然か、有っても非常に短く、擬似同時測定が可能となる。
以上により、本実施形態によれば、受光部50の個体差による不具合、振動による誤差、時間ずれによる誤差が生じることを防止できる。なお、このような効果をもたらす変調鏡30としては、電気光学デバイス(EOデバイス)や液晶光学素子が好適である。
また、バンドパスフィルタにより、受光される光の波長帯を同一波長帯とすることができ、異なる波長帯の光が受光されることによる光検出精度の低下を防止できる。
また、本実施形態によれば、予め用意したデータベースまたは近似式に基づき、対象ガスの濃度を精度よく算出することができる。
(変形例)
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。
(変形例、その1)
例えば、上記実施形態では、ガス濃度算出装置1によって二酸化炭素の濃度を算出する場合について説明したが、測定に使用する光の波長を変えることで、これ以外のガスの濃度を算出可能であることはいうまでもない。また、濃度を測定しようとするガスの種類や測定レンジ、更に測定精度等に応じて、光源の種類やガスセルの形状について適宜最適化を行うことができる。
(変形例、その2)
図7および図8に複数種類のガスが混在したサンプルガス60のガス濃度を一括した処理として検出する為の変形例を示す。上述のように種類の異なるガスの濃度を算出するには、異なる光の波長を用いて、夫々ガス濃度を測定する必要があるが、本願のガス濃度測定モジュールにおいては、受光手段を複数用いることと、受光手段ごとにガス濃度算出モジュールを設けることで、複数種類のガスに対する濃度測定を一括した処理として実現可能となる。つまり、図7および図8に示すように、対象ガスの異なる受光手段50A,50B,50C,50Dを複数備えるガス濃度計測モジュール2と、複数の受光手段50A,50B,50C,50Dに対応する複数のガス濃度算出モジュール(算出回路3A,3B,3C,3Dおよび格納部4A,4B,4C,4D)を備えることにより、複数種類のガスが混在したサンプルガス60における複数のガス濃度を同時に検出することができる。
図7および図8は、4種類のガスが混在したサンプルガス60の各ガスのガス濃度を測定する装置を例示している。ガスセル10の内部には、測定に用いる波長の光を放射する光源が配置されている。放射する光の波長範囲が広く、各ガスの吸収に利用できる波長域を含むものであれば、図7に示すように、一つの光源20を用いることができる。また、図8に示すように、各受光手段50A,50B,50C,50Dで検出する波長範囲の光をそれぞれ放射する異なる種類の光源20A,20B,20C,20Dを受光手段50A,50B,50C,50D毎に設けても構わない。また、変調鏡において、反射率を制御できる波長範囲が狭い場合は、図8に示すように、各ガスの吸収に利用できる波長毎に対応して4つの変調鏡30A,30B,30C,30Dを用い、夫々ON-OFF制御を行うようにしても良い。
図7および図8において、各受光手段50A,50B,50C,50Dに夫々配置されたバンドパスフィルタ40A,40B,40C,40Dは、各受光手段50A,50B,50C,50Dで測定対象となるガスが吸収する波長の光を透過し、それ以外の波長の光を遮断する光学素子であって、各受光手段50A,50B,50C,50D毎に異なるバンドパスフィルタ40A,40B,40C,40Dが配置される。また、ガスセル10には、サンプルガス60が供給され、測定が行われる。また、各受光手段50A,50B,50C,50D毎に算出されるガス濃度の算出方法については、上述のアルゴリズムと同じである。なお、図8においては、ガスセル10が各受光手段50A,50B,50C,50Dごとに分割された形となっているが、これに限らず、図7に示したように、全ての受光手段50A,50B,50C,50Dに共通の一つのガスセル10であっても良い。
(変形例、その3)
また、ガス濃度算出装置1を、変調鏡30が全反射(Ron=1)及び全透過(Roff=0)するように構成しても良く、この場合には、以下の数式が成立する。
Ion=I1(→)+I2=xIexp(−KCL)+(((1−x)Iexp(−KCL)))exp(−2KCL)…(15)
Ioff=I1(→)=xIexp(−KCL)…(16)
(変形例、その4)
また、上記実施形態では、特許請求の範囲の「前記反射率調整手段により前記反射率が電気的に調整された場合」に対して、変調鏡30がON/OFFされる場合を例示したが、これに限らず、変調鏡30がONの状態を維持しながらも反射率を異ならせる場合を、特許請求の範囲の「前記反射率調整手段により前記反射率が電気的に調整された場合」の一例としても良い。
(変形例、その5)
また、ガス濃度算出装置1で算出されたガスの濃度は、空調の制御以外にも、ガスの濃度を算出する様々な機器に適用することができる。
1…ガス濃度算出装置、2…ガス濃度計測モジュール、3…算出回路、4…格納部、10…ガスセル、11…導入空間、12…ガス導入部、13…ガス排出部、20…光源、30…変調鏡、40…バンドパスフィルタ、50…受光部、60…サンプルガス。

Claims (9)

  1. ガス濃度計測モジュールおよびガス濃度算出モジュールを備え、対象ガスの濃度を算出するガス濃度算出装置であって、
    前記ガス濃度計測モジュールは、
    前記対象ガスが導入される導入空間を形成するガスセルと、
    前記ガスセル内に配置された光源と、
    前記ガスセルの一端に配置され、前記光源から放射された光に対する反射率を電気的に調整する反射率調整手段と、
    前記ガスセルの他端に配置され、前記光源から直接放射される直接光、および前記光源から放射され且つ前記反射率調整手段により反射される反射光を受光する受光手段と、
    を備え、
    前記ガス濃度算出モジュールは、前記反射率調整手段により前記反射率が電気的に調整された場合のそれぞれにおける、前記受光手段の受光エネルギー値の比に基づき、前記対象ガスの前記濃度を算出する、
    ことを特徴とするガス濃度算出装置。
  2. 前記反射率調整手段は電気光学デバイスであることを特徴とする請求項1に記載のガス濃度算出装置。
  3. 前記反射率調整手段は液晶光学素子であることを特徴とする請求項1に記載のガス濃度算出装置。
  4. 前記光源と前記受光手段との間の光路上に配置され、所定波長の光のみを通過させるバンドパスフィルタをさらに備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のガス濃度算出装置。
  5. 前記光源は、赤外線を放射するものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のガス濃度算出装置。
  6. 前記対象ガスは二酸化炭素であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のガス濃度算出装置。
  7. 前記対象ガスの前記濃度と前記比との相関関係を示すデータベースまたは近似式を予め格納する格納手段を更に備え、
    前記ガス濃度算出モジュールは、前記データベースまたは前記近似式に基づき、前記比に相応する前記濃度を算出する、
    ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のガス濃度算出装置。
  8. 前記対象ガスの異なる前記受光手段を複数備える前記ガス濃度計測モジュールと、複数の前記受光手段に対応する複数の前記ガス濃度算出モジュールを備える、
    ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のガス濃度算出装置。
  9. 対象ガスの濃度を算出するガス濃度算出装置におけるガス濃度計測モジュールであって、
    前記対象ガスが導入される導入空間を形成するガスセルと、
    前記ガスセル内に配置された光源と、
    前記ガスセルの一端に配置され、前記光源から放射された光に対する反射率を電気的に調整する反射率調整手段と、
    前記ガスセルの他端に配置され、前記光源から直接放射される直接光、および前記光源から放射され且つ前記反射率調整手段により反射される反射光を受光する受光手段と、
    を備えることを特徴とするガス濃度計測モジュール。
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