JP2011163510A - 車両の制御装置 - Google Patents

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幸裕 稲葉
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Abstract

【課題】入力クラッチが接続状態で手動変速機がニュートラル状態の惰性走行時に、同期噛合クラッチにシンクロ押付負荷が加えられて摩耗、損傷することを防止する。
【解決手段】入力クラッチ14が接続状態で且つ手動変速機16がニュートラル状態の惰性走行時に、同期噛合クラッチ48がシンクロ押付負荷状態と判断された場合(ステップS2の判断がYES)には、ステップS3以下の同期噛合クラッチ保護処理が実行されることにより、ウォーニングが発せられるとともにエンジン回転速度NEが上昇させられるため、同期噛合クラッチ48の摩擦係合による摩耗や損傷が抑制されて手動変速機16の耐久性が向上する。
【選択図】図8

Description

本発明は車両の制御装置に係り、特に、同期噛合クラッチによって所定のギヤ段が成立させられる手動変速機の耐久性を向上させる技術に関するものである。
(a) 運転者のシフトレバー操作に従って機械的に同期噛合クラッチのクラッチハブスリーブが移動させられることにより、シンクロナイザリングが変速ギヤのコーン部に押し付けられて、回転を同期させながらニュートラル状態から所定のギヤ段に切り換えられる手動変速機と、(b) その手動変速機と走行用駆動源との間に配設され、運転者のクラッチ操作に従って動力伝達の接続、遮断状態が切り換えられる入力クラッチと、を有し、(c) 入力クラッチを遮断した状態でシフトレバーを操作して手動変速機を所定のギヤ段に切り換える手動変速式の車両が知られている。特許文献1に記載の変速機は、上記同期噛合クラッチによって変速が行われる同期噛合式変速機の一例で、手動変速機としても好適に用いられる。
上記手動変速機は、一般に前進4段以上のギヤ段を成立させることが可能で、そのギヤ段に対応して複数の同期噛合クラッチを備えている。また、シフトレバーは、ニュートラル選択時には自然状態において付勢手段等により所定の原位置に保持されるとともに、その原位置から車両前側へ操作されると例えば第3速ギヤ段が選択され、原位置から車両後側へ操作されると例えば第4速ギヤ段が選択されるようになっている。
特開2009−191922号公報
しかしながら、このような従来の手動変速式の車両において、例えば入力クラッチが接続状態で手動変速機がニュートラル状態の惰性走行を行っている際に、運転者がシフトレバーに手を置いていると、無意識のうちに車両前後方向へ力が加えられて、何れかのギヤ段の同期噛合クラッチのシンクロナイザリングが変速ギヤのコーン部に押し付けられ、同期回転させようとするシンクロ押付負荷が発生することがある。しかしながら、入力クラッチが接続状態とされた惰性走行時には、駆動源の回転速度によって入力側の回転速度が定まる一方、出力側の回転速度は車速によって決まるため、入出力回転を変速比に応じて同期させることはできず、シンクロナイザリングやコーン部が摩耗して損傷し、その後の通常のシフト操作時に摩擦による同期が損なわれてギヤ鳴り等の異音が発生するなどのシフト操作不良を生じることがある。
例えば、シフトレバーの原位置の車両前側に第3速ギヤ段の選択操作位置があり、原位置の車両後側に第4速ギヤ段の選択操作位置がある場合、運転者は無意識のうちにシフトレバーを車両後側すなわち手前に引くように力を加えていることが多く、これが長期間に亘って繰り返されると、第4速ギヤ段の同期噛合クラッチが集中的に摩耗して損傷する可能性がある。シフトレバーの原位置の手前側の選択ギヤ段が第4速ギヤ段以外の場合でも同様な問題が発生することは、第4速ギヤ段の場合と同じである。なお、シフトレバーの配設位置や取付角度、或いは運転者の運転姿勢等によっては、車両前側へ力が加えられる場合もあるし、原位置からセレクト方向(車両の左右方向)へ操作して車両の前後方向へ力を加えることもあるなど、必ずしも原位置の車両後側に設けられた選択ギヤ段のみに特有の問題ではない。
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、入力クラッチが接続状態で手動変速機がニュートラル状態の惰性走行時に、同期噛合クラッチにシンクロ押付負荷が加えられて摩耗、損傷することを防止することにある。
かかる目的を達成するために、第1発明は、(a) 運転者のシフトレバー操作に従って機械的に同期噛合クラッチのクラッチハブスリーブが移動させられることにより、シンクロナイザリングが変速ギヤのコーン部に押し付けられて、回転を同期させながらニュートラル状態から所定のギヤ段に切り換えられる手動変速機と、(b) その手動変速機と走行用駆動源との間に配設され、運転者のクラッチ操作に従って動力伝達の接続、遮断状態が切り換えられる入力クラッチと、を有する車両の制御装置において、(c) 前記入力クラッチが接続状態で且つ前記手動変速機がニュートラル状態の惰性走行時に、前記同期噛合クラッチのシンクロナイザリングを前記コーン部に押し付けるシンクロ押付負荷が加えられている場合には、ウォーニングを発するか前記走行用駆動源の回転速度を上昇させ、或いはその両方を行う同期噛合クラッチ保護手段を備えていることを特徴とする。
第2発明は、第1発明の車両の制御装置において、(a) 前記手動変速機は、複数のギヤ段を成立させることが可能なもので、そのギヤ段に対応して複数の同期噛合クラッチを備えているとともに、(b) 前記シフトレバーは、ニュートラル選択時には自然状態において所定の原位置に保持されるとともに、その原位置から車両後側へ操作されると後側ギヤ段が選択されるようになっており、(c) 前記同期噛合クラッチ保護手段は、前記後側ギヤ段を成立させるための同期噛合クラッチにシンクロ押付負荷が加えられている場合にのみ、前記ウォーニングを発するか前記走行用駆動源の回転速度を上昇させ、或いはその両方を行うことを特徴とする。
第3発明は、第2発明の車両の制御装置において、前記手動変速機は前進4段以上のギヤ段を成立させることが可能なもので、前記後側ギヤ段は第4速ギヤ段であることを特徴とする。
第4発明は、第1発明〜第3発明の何れかの車両の制御装置において、(a) 前記手動変速機は、変速比が異なる複数のギヤ段を成立させることが可能なもので、その複数のギヤ段に対応して複数の同期噛合クラッチを備えている一方、(b) 前記同期噛合クラッチ保護手段は、前記シンクロ押付負荷が加えられている同期噛合クラッチにより成立させられるギヤ段を検出するとともに、そのギヤ段および車速に基づいて前記走行用駆動源の同期回転速度を算出し、その同期回転速度に基づいて定められる目標回転速度までその走行用駆動源の回転速度を上昇させることを特徴とする。
このような車両の制御装置においては、入力クラッチが接続状態で且つ手動変速機がニュートラル状態の惰性走行時に同期噛合クラッチにシンクロ押付負荷が加えられている場合には、同期噛合クラッチ保護手段によってウォーニングが発せられるか走行用駆動源の回転速度が上昇させられ、或いはその両方が行われるため、同期噛合クラッチの摩耗や損傷が抑制されて手動変速機の耐久性が向上する。すなわち、ウォーニングによって運転者がシフトレバーを放すなどして同期噛合クラッチの押し付けが解除されれば、シンクロ押付負荷による摩耗や損傷が防止される一方、走行用駆動源の回転速度を上昇させれば、同期噛合クラッチの相対回転速度が小さくなって摩耗や損傷が抑制される。
第2発明は、ニュートラル選択時にはシフトレバーが自然状態において所定の原位置に保持されるとともに、その原位置から車両後側へ操作されると所定の後側ギヤ段が選択される場合で、同期噛合クラッチ保護手段は、その後側ギヤ段を成立させるための同期噛合クラッチにシンクロ押付負荷が加えられている場合にのみ、ウォーニングを発するか走行用駆動源の回転速度を上昇させ、或いはその両方を行うため、その保護処理の実行に伴う燃費の悪化等を抑制しつつ同期噛合クラッチの摩耗や損傷を適切に抑制することができる。すなわち、惰性走行時にシフトレバーに手を置いている運転者は無意識のうちに車両後側すなわち手前に引くように力を加えていることが多く、原位置の車両後側に選択操作位置が設定されている後側ギヤ段(例えば第4速ギヤ段など)の同期噛合クラッチが集中的に摩耗して損傷する可能性がある。このため、その後側ギヤ段を成立させるための同期噛合クラッチにシンクロ押付負荷が加えられている場合にのみ所定の保護処理を実行することにより、必要以上にその保護処理が行われて燃費等が悪化することを抑制しつつ、後側ギヤ段の同期噛合クラッチの摩耗や損傷を適切に抑制して手動変速機の耐久性を向上させることができる。
第4発明は、変速比が異なる複数のギヤ段を成立させることが可能な手動変速機を備えている場合で、同期噛合クラッチ保護手段は、シンクロ押付負荷が加えられている同期噛合クラッチにより成立させられるギヤ段を検出するとともに、そのギヤ段および車速に基づいて走行用駆動源の同期回転速度を算出し、その同期回転速度に基づいて定められる目標回転速度までその走行用駆動源の回転速度を上昇させるため、同期噛合クラッチの相対回転速度を適切に低減して摩耗や損傷を抑制することができる。すなわち、走行用駆動源の同期回転速度はギヤ段の変速比に応じてそれぞれ異なるため、シンクロ押付負荷が加えられている同期噛合クラッチにより成立させられるギヤ段を検出して同期回転速度を算出することにより、目標回転速度を適切に設定して同期噛合クラッチの摩耗や損傷を抑制することができるのである。
また、走行用駆動源の回転速度を同期回転速度まで上昇させれば同期噛合クラッチの相対回転速度が0になり、摩耗や損傷が確実に防止されるが、走行用駆動源の作動で燃費が悪化するとともに、同期により運転者の意に反して同期噛合クラッチが噛み合って所定のギヤ段が成立してしまう恐れがある。これに対し、第4発明では同期回転速度に基づいて目標回転速度を設定するため、その目標回転速度が同期回転速度よりも低回転に定められるようにすれば、運転者の意に反して所定のギヤ段が成立したり燃費が悪化したりすることをできるだけ抑制しつつ、同期噛合クラッチの摩耗や損傷が適切に抑制されるようにすることができる。
本発明が好適に適用される車両用駆動装置の概略構成を示す骨子図である。 図1の車両用駆動装置が備えている入力クラッチの概略構成を説明する図である。 図1の車両用駆動装置が備えている手動変速機の同期噛合クラッチを説明する図である。 図1の車両用駆動装置が備えている手動変速機のシフト・セレクトシャフトを説明する断面図である。 図4のシフト・セレクトシャフトの回転角度から同期噛合クラッチにシンクロ押付負荷が加えられているシンクロ押付負荷状態か否かを判定する方法を説明する図である。 図1の車両用駆動装置において、同期噛合クラッチ保護手段に関する制御系統を説明するブロック線図である。 図6の電子制御装置が同期噛合クラッチ保護手段に関して備えている各種の機能を説明する機能ブロック線図である。 図7の各種の機能によって実行される処理内容を具体的に説明するフローチャートである。 図8のフローチャートに従って各種の処理が行われた場合のエンジン回転速度NEおよびウォーニングのON、OFFの変化を示すタイムチャートの一例である。 本発明の他の実施例を説明する図で、図7に対応する機能ブロック線図である。 図10の各種の機能によって実行される処理内容を具体的に説明するフローチャートである。 本発明の更に別の実施例を説明する図で、エンジン回転速度NEの変化に基づいて同期噛合クラッチにシンクロ押付負荷が加えられたか否かを判定する方法を説明する図である。
手動変速機は、例えば前進4段以上のギヤ段を有し、各ギヤ段に対応して同期噛合クラッチが設けられるが、前進3段以下であっても良いし、前進1段および後進1段等の前後進切換え用の手動変速機であっても良い。また、シフトレバーは、例えば車両前後方向のシフト方向へシフト操作(移動操作乃至は傾倒操作)されることにより、ニュートラル状態から所定のギヤ段選択操作位置へ操作されるように構成される。ギヤ段が3つ以上ある場合、車両幅方向に複数のセレクト位置が設けられ、各セレクト位置において車両前後方向のシフト方向へシフト操作されることにより所定のギヤ段選択操作位置へ操作されるようにすれば良い。
上記シフトレバーは、ニュートラル位置ではセレクト方向へ移動操作可能とされるとともに、スプリング等の付勢手段により自然状態では常に所定の原位置、例えば車両前側の第3速ギヤ段選択操作位置と車両後側の第4速ギヤ段選択操作位置との間、に保持されるように構成される。このシフトレバーは、例えばリンクやプッシュプルケーブル等の機械式連動装置を介して手動変速機に連結され、同期噛合クラッチのクラッチハブスリーブを機械的に移動させるように構成される。
入力クラッチは、例えば乾式の摩擦クラッチにて構成され、ダイヤフラムスプリング等の付勢手段により常には接続状態(係合状態)に保持される一方、クラッチペダル等のクラッチ操作部材が運転者によって操作されることにより、付勢手段の付勢力に抗して遮断状態(解放状態)とされるように構成される。入力クラッチとクラッチ操作部材との間は、例えばリンクやプッシュプルケーブル等の機械式連動装置を介して連結され、クラッチ操作部材の遮断操作に従って機械的に入力クラッチが遮断状態とされるように構成される。クラッチ操作部材の操作を電気的に検出して、油圧アクチュエータや電動アクチュエータ等により入力クラッチを接続、遮断するように構成することもできるし、入力クラッチとして電磁クラッチ等の自動クラッチを採用することも可能である。そして、この入力クラッチが遮断状態とされることにより、シフトレバー操作により機械的に無理なく手動変速機のギヤ段を切り換えることが可能となる。
同期噛合クラッチ保護手段は、同期噛合クラッチにシンクロ押付負荷が加えられている場合に警告音や警告表示等のウォーニングを発するだけでも良いし、走行用駆動源の回転速度を上昇させるだけでも良いし、その両方を行う場合でも良い。単に一時的に手が触れただけの誤操作や極短時間だけシンクロ押付負荷が加えられた場合までそのような制御を行う必要はなく、また燃費の点からも、シンクロ押付負荷が予め定められた一定時間以上継続して加えられた場合に上記保護処理を実行するようにすることが望ましい。また、先にウォーニングを実行し、それでも改善されない場合に所定時間後に走行用駆動源の回転速度を上昇させることが望ましい。走行用駆動源としては、エンジン等の内燃機関や電動モータなど種々の駆動源を採用できる。
同期噛合クラッチにシンクロ押付負荷が加えられているか否かは、例えばシフトレバーやそのシフトレバーに機械的に連結された部材、或いは同期噛合クラッチそのもののシフトストローク(回転角度や移動量など)から判断することができる。また、同期噛合クラッチのシンクロナイザリングが変速ギヤのコーン部に押し付けられると、その摩擦により少なくとも一時的に入力側の回転速度が上昇するため、この時の入力側の回転速度変化からシンクロ押付負荷の有無を判定することも可能である。走行用駆動源がエンジンで、アイドル回転速度制御が行われる場合、入力側の回転速度変化およびそのアイドル回転速度制御の制御内容の変化から、シンクロ押付負荷の有無を判定することもできる。
第4発明では、シンクロ押付負荷が加えられている同期噛合クラッチにより成立させられるギヤ段(以下、シンクロ押付ギヤ段という)を検出し、そのシンクロ押付ギヤ段および車速に基づいて走行用駆動源の同期回転速度を算出するとともに、その同期回転速度に基づいて目標回転速度を設定するが、他の発明の実施に際しては、その同期回転速度を目標回転速度として走行用駆動源を制御するようにしても良い。第4発明の実施に際しては、同期回転速度よりも低い目標回転速度を設定して、燃費の悪化をできるだけ抑制することが望ましい。この目標回転速度は、例えば同期回転速度よりも予め定められた一定値だけ低い回転速度、或いは一定割合だけ低い回転速度などで、同期回転速度に応じて一定値が設定されても良いが、時間の経過に伴って連続的に或いは段階的に上昇するようにしても良いなど、種々の態様が可能である。同期回転速度は、例えば手動変速機の入力側回転速度Ninと走行用駆動源の回転速度とが同じ場合、車速に対応する出力側回転速度Nout にシンクロ押付ギヤ段の変速比esiを掛け算することによって求められる。
第2発明は、シフトレバーの原位置の車両後側に後側ギヤ段(例えば第4速ギヤ段)の選択操作位置が設けられている場合で、シンクロ押付ギヤ段がその後側ギヤ段の場合にのみ同期噛合クラッチ保護手段による保護処理が実行されるが、他の発明の実施に際しては、総てのギヤ段について同期噛合クラッチ保護手段による保護処理が実行されるようにしても良い。第3発明では、上記後側ギヤ段が第4速ギヤ段であるが、第2発明の実施に際しては、シフトレバーの原位置の車両後側の選択操作位置が第4速ギヤ段以外の場合でも、その原位置の車両後側の選択操作位置によって選択されるギヤ段についてのみ同期噛合クラッチ保護手段による保護処理が実行されるようにしても良い。シフトレバーの配設位置や取付角度などによっては、逆に原位置から車両前側へ押すように力が加えられる場合もあり、その場合は原位置の車両前側の選択操作位置によって選択される前側ギヤ段についてのみ同期噛合クラッチ保護手段による保護処理が行われるようにしても良いし、原位置の前後に選択操作位置が定められた前側ギヤ段および後側ギヤ段についてのみ同期噛合クラッチ保護手段による保護処理が行われるようにしても良いなど、種々の態様が可能である。
以下、本発明の実施例を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明が適用された車両用駆動装置10の概略構成を説明する骨子図で、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)車両用のものであり、走行用駆動源としてのエンジン12、入力クラッチ14、手動変速機16、差動歯車装置18を備えている。入力クラッチ14は、例えば図2に示す乾式単板式の摩擦クラッチで、エンジン12のクランクシャフト20に取り付けられたフライホイール22、クラッチ出力軸24に配設されたクラッチディスク26、クラッチハウジング28に配設されたプレッシャプレート30、プレッシャプレート30をフライホイール22側へ付勢することによりクラッチディスク26を挟圧して動力伝達するダイヤフラムスプリング32、クラッチペダル34が踏み込み操作されることによりレリーズフォーク36を介して図の左方向へ移動させられ、ダイヤフラムスプリング32の内端部を図の左方向へ変位させてクラッチを遮断(解放)するレリーズスリーブ38、を有して構成されている。クラッチペダル34とレリーズフォーク36とは、リンクやプッシュプルケーブル等の機械式連動装置35を介して機械的に連結されている。また、クラッチペダル34の近傍にはクラッチセンサ150が設けられ、クラッチペダル34が踏み込み操作されたか否か、すなわち入力クラッチ14が遮断状態か否かを検出するようになっている。
手動変速機16は、差動歯車装置18と共に共通のハウジング40内に配設されてトランスアクスルを構成しており、そのハウジング40内に所定量だけ充填された潤滑油に浸漬され、差動歯車装置18と共に潤滑されるようになっている。手動変速機16は、(a) 平行な一対の入力軸42、出力軸44間に変速比e(=入力軸42の回転速度Nin/出力軸44の回転速度Nout )が異なる複数の変速ギヤ対46a〜46eが配設されるとともに、それ等の変速ギヤ対46a〜46eに対応して複数の同期噛合クラッチ48a〜48eが設けられた2軸噛合式の手動変速機構と、(b) それ等の同期噛合クラッチ48a〜48eの3つのクラッチハブスリーブ50a、50b、50cにそれぞれ係合させられ、クラッチハブスリーブ50a、50b、50cを移動させることにより何れかのギヤ段を成立させる3本のフォークシャフト52a、52b、52cと、(c) 図4に示すようにシフトレバー160の操作に従って機械的に軸方向であるセレクト方向(図4の左右方向)へ移動させられることにより前記複数のフォークシャフト52a、52b、52cの任意の一つに選択的に係合させられるとともに、そのセレクト方向と略直角なシフト方向、実施例では軸心まわりに回動させられることによりフォークシャフト52a、52b、52cを軸方向へ移動させて所定のギヤ段を成立させるシフト・セレクトシャフト53とを備えており、前進5段のギヤ段が成立させられるようになっている。入力軸42および出力軸44には更に後進ギヤ対54が配設され、図示しないカウンタシャフトに配設された後進用アイドル歯車と噛み合わされることにより後進ギヤ段が成立させられるようになっている。なお、入力軸42は、スプライン嵌合55によって前記入力クラッチ14のクラッチ出力軸24に連結されているとともに、出力軸44には出力歯車56が配設されて差動歯車装置18のリングギヤ58と噛み合わされている。図1は、入力軸42、出力軸44、およびリングギヤ58の軸心を共通の平面内に示した展開図である。
上記同期噛合クラッチ48a〜48eは基本構成が同じであり、図3に同期噛合クラッチ48aについて具体的に例示するように、キースプリング60によってクラッチハブスリーブ50aに係合させられたシフティングキー62と、所定の遊びを有する状態でシフティングキー62と共に回転させられるれるシンクロナイザリング64と、変速ギヤ対46aの入力歯車66に設けられたコーン部68とを備えている。クラッチハブスリーブ50aの内周面にはスプライン歯70が設けられて入力軸42とスプライン嵌合され、入力軸42と常に一体的に回転させられるようになっており、そのクラッチハブスリーブ50aが図の右方向へ移動させられると、シフティングキー62を介してシンクロナイザリング64がコーン部68に押圧されてテーパ嵌合させられ、それ等の間の摩擦によって入力歯車66との間で動力伝達が行われるようになる。クラッチハブスリーブ50aが更に右方向へ移動させられると、スプライン歯70は、シンクロナイザリング64に設けられたスプライン歯72、更には入力歯車66に設けられたスプライン歯74と噛み合わされ、これにより入力軸42と入力歯車66とが一体的に連結されて、変速ギヤ対46aを介して出力軸44との間で動力伝達が行われる。図3の(a) 、(b) は同期噛合クラッチ48aが遮断された状態で、図3の(c) 、(d) は同期噛合クラッチ48aが連結された状態である。なお、図3の(a) 、(c) は、軸心を含む一平面の断面図で、(b) 、(d) は(a) 、(c) の状態を外周側から見たクラッチハブスリーブ50aの円筒部分を除く展開図である。
他の同期噛合クラッチ48b〜48eも上記同期噛合クラッチ48aと実質的に同じ構成であるが、クラッチハブスリーブ50bは同期噛合クラッチ48bおよび48cに共通のもので、クラッチハブスリーブ50cは同期噛合クラッチ48dおよび48eに共通のものである。
図4において、シフト・セレクトシャフト53は、機械式連動装置としての一対のセレクト用プッシュプルケーブル162、シフト用プッシュプルケーブル164を介してシフトレバー160に機械的に連結されている。シフトレバー160は、運転席の横の斜め前方に配設されているとともに、図5の(c) に示すシフトパターン166に従って移動操作されるもので、「1」〜「5」の前進ギヤ段選択操作位置および「R」の後進ギヤ段選択操作位置へ選択的に操作される。「1」〜「5」は、第1速ギヤ段〜第5速ギヤ段を表している。そして、図5(c) の左右方向であるセレクト方向(車両の左右方向)へシフトレバー160が操作されると、セレクト用プッシュプルケーブル162を介してシフト・セレクトシャフト53は軸方向、すなわち図4の左右方向へ直線移動させられる。また、図5(c) の上下方向であるシフト方向(車両の前後方向)へシフトレバー160が操作されると、シフト用プッシュプルケーブル164を介してシフト・セレクトシャフト53は軸心まわりに回転させられる。図5(c) のシフトパターン166は、図の上方が車両前側である。
シフト・セレクトシャフト53には係合突起168が一体的に固設されており、シフトレバー160が「1」、「2」の中間位置へ操作されると、シフト・セレクトシャフト53は係合突起168がフォークシャフト52cの係合部材170と係合する第1セレクト位置へ移動させられる。そして、その状態で「1」または「2」位置へ操作されてシフト・セレクトシャフト53が軸心まわりに回転させられると、フォークシャフト52cが軸方向へ移動させられて同期噛合クラッチ48eまたは48dが連結されることにより、変速比eが最も大きい第1速ギヤ段(1st)または変速比eが2番目に大きい第2速ギヤ段(2nd)が成立させられる。
シフトレバー160が、図5の(c) に示すように「3」、「4」の中間位置へ操作されると、シフト・セレクトシャフト53は係合突起168がフォークシャフト52bの係合部材172と係合する第2セレクト位置(図4の位置)へ移動させられる。そして、その状態で「3」または「4」位置へ操作されてシフト・セレクトシャフト53が軸心まわりに回転させられると、フォークシャフト52bが軸方向へ移動させられて同期噛合クラッチ48cまたは48bが連結されることにより、変速比eが3番目に大きい第3速ギヤ段(3rd)または変速比eが4番目に大きい第4速ギヤ段(4th)が成立させられる。この第4速ギヤ段の変速比eは1である。
シフトレバー160が「5」、「R」の中間位置へ操作されると、シフト・セレクトシャフト53は係合突起168がフォークシャフト52aの係合部材174と係合する第3セレクト位置へ移動させられる。そして、その状態で「5」位置へ操作されてシフト・セレクトシャフト53が軸心まわりに回転させられると、フォークシャフト52aが軸方向へ移動させられて同期噛合クラッチ48aが連結されることにより、変速比eが最も小さい第5速ギヤ段(5th)が成立させられる。「R」位置へ操作されると、フォークシャフト52aが逆方向へ移動させられることにより後進ギヤ段(リバース)が成立させられる。
シフト・セレクトシャフト53には、付勢手段として一対の圧縮コイルスプリング176、178が配設され、軸方向へ付勢されることにより常には前記第2セレクト位置に保持されるようになっている。これにより、シフトレバー160は、図5の(c) に示すように、「3」、「4」の中間位置に保持される。すなわち、シフトレバー160は、ニュートラル選択状態において自然状態では第3速ギヤ段の選択操作位置「3」と第4速ギヤ段の選択操作位置「4」との間の中間位置に保持されるのであり、この位置がシフトレバー160の原位置である。また、原位置の車両後側に選択操作位置が設定されている第4速ギヤ段が後側ギヤ段で、原位置の車両前側に選択操作位置が設定されている第3速ギヤ段が前側ギヤ段である。
上記シフト・セレクトシャフト53にはまた、シフトストローク検出用のセンサ部材180が固設され、ハウジング40に配設されたシフトストロークセンサ182によってシフトストローク、すなわち各フォークシャフト52a〜52cのシフト方向の移動量を検出できるようになっている。図5の(a) に示すように、シフトストロークセンサ182は非接触でセンサ部材180との間の離間距離Dを検出するもので、センサ部材180には、シフト・セレクトシャフト53が図5の(a) に示す中立位置の時、すなわちシフトレバー160が図5の(c) に示すようにシフト方向(車両前後方向)の中間位置に保持されている時に、シフトストロークセンサ182に対して最も接近するように突出する突起184が設けられている。これにより、図5の(b) に示すように離間距離DからシフトストロークS、すなわちシフト・セレクトシャフト53の中立位置からの回転角度、更にはシフトレバー160のシフト方向の移動量を検出することができる。したがって、このシフトストロークSにより、同期噛合クラッチ48a〜48eが何れも非噛合状態のニュートラル状態(図5(c) のニュートラル領域)か、同期噛合クラッチ48a〜48eの何れかが噛み合っているギヤ入状態(図5(c) のニュートラル領域を超えた領域)かを判定することができる。
シフト・セレクトシャフト53には更に、セレクト位置検出用のセンサ部材190が固設され、ハウジング40に配設されたセレクト位置センサ192によってセレクト位置、すなわちシフト・セレクトシャフト53の軸方向位置を検出できるようになっている。セレクト位置センサ192は、前記シフトストロークセンサ182と同様に非接触でセンサ部材190との間の離間距離を検出するもので、センサ部材190には、セレクト位置に応じてセレクト位置センサ192との離間距離が段階的に変化する段差が設けられており、この離間距離からセレクト位置を検出することができる。また、図示は省略するが、シフト・セレクトシャフト53が図5(a) に示す中立位置から何れの回転方向へ回転したか、言い換えればシフトレバー160が車両前後方向の何れの方向へ操作されたか、を検出するシフト方向センサ196(図6参照)が設けられている。したがって、前記シフトストロークセンサ182、セレクト位置センサ192、およびシフト方向センサ196により、シフトレバー160が何れのギヤ段選択操作位置へ操作されて、手動変速機16が何れのギヤ段とされているかを判定することができる。
図1に戻って、前記差動歯車装置18は傘歯車式のもので、一対のサイドギヤ80R、80Lにはそれぞれドライブシャフト82R、82Lがスプライン嵌合などによって連結され、左右の前輪(駆動輪)84R、84Lを回転駆動する。
図6は、前記同期噛合クラッチ48a〜48e(以下、特に区別しない場合は単に同期噛合クラッチ48という)の摩耗や損傷を抑制するために車両用駆動装置10が備えている制御系統を説明するブロック線図であり、電子制御装置100には、前記クラッチセンサ150、シフトストロークセンサ182、セレクト位置センサ192、およびシフト方向センサ196から各種の信号が供給される他、エンジン回転速度センサ102からエンジン回転速度NEを表す信号が供給されるとともに、車速センサ104から車速Vを表す信号、具体的には前記出力軸44の回転速度Nout を表す信号が供給される。また、電子制御装置100には、同期噛合クラッチ48の摩耗や損傷に対する警告表示や警告音等を発する表示器やスピーカ等のウォーニング機器110が接続されているとともに、エンジン回転速度NEを調整できる燃料噴射装置や電子スロットル弁等のエンジン制御機器112が接続されている。
電子制御装置100は、所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うもので、図7に示す同期噛合クラッチ保護手段120を機能的に備えている。この同期噛合クラッチ保護手段120は、シンクロ押付判定手段122、ウォーニング手段124、シンクロ押付ギヤ段判定手段126、同期エンジン回転速度演算手段128、目標エンジン回転速度演算手段130、およびエンジン回転速度制御手段132を備えて構成されており、図8のフローチャートに従って信号処理を実行する。図8のステップS1およびS2はシンクロ押付判定手段122に相当し、ステップS3はウォーニング手段124に相当し、ステップS4はシンクロ押付ギヤ段判定手段126に相当し、ステップS5は同期エンジン回転速度演算手段128に相当し、ステップS6は目標エンジン回転速度演算手段130に相当し、ステップS7はエンジン回転速度制御手段132に相当する。
図8のステップS1では、入力クラッチ14が係合状態(接続状態)か否かを、入力クラッチ14の遮断状態を検出するクラッチセンサ150がOFFか否かによって判断する。入力クラッチ14が遮断状態の場合は通常のシフト操作と判断してそのまま終了するが、入力クラッチ14が係合状態の場合はステップS2を実行する。ステップS2では、複数の同期噛合クラッチ48の何れかのシンクロナイザリング64がコーン部68に押し付けられて摩擦係合しているシンクロ押付状態か否かを、シフトストロークセンサ182によって検出されるシフトストロークSが図5の(c) に斜線で示す予め定められたシンクロ押付領域Spの範囲内か否かによって判断する。このシンクロ押付領域Spは、ニュートラル領域の範囲内で且つギヤ入直前の領域であり、各部の寸法誤差や摩耗等を考慮して余裕をもって定められる。図5の(b) に示すように離間距離Dがシンクロ押付領域Dpの範囲内か否かによって判断することもできる。そして、シンクロ押付状態でなければ、手動変速機16が完全なニュートラルか、所定のギヤ段で走行中のギヤ入状態と判断してそのまま終了するが、シンクロ押付状態の場合は、入力クラッチ14が接続状態であることから同期噛合クラッチ48の何れかに負荷が掛かって摩耗、損傷し易いシンクロ押付負荷状態と判断し、ステップS3以下を実行する。
すなわち、入力クラッチ14が接続状態で且つ手動変速機16がニュートラル状態の惰性走行を行っている際に、運転者がシフトレバー160に手を置いていると、無意識のうちにシフト方向(車両前後方向)へ力が加えられて、同期噛合クラッチ48の何れかのシンクロナイザリング64がコーン部68に押し付けられ、同期回転させようとするシンクロ押付負荷が発生することがある。しかしながら、入力クラッチ14が接続状態とされた惰性走行時には、エンジン回転速度NEによって入力側の回転速度Ninが定まる一方、出力側の回転速度Nout は車速Vによって決まるため、入出力回転を変速比eに応じて同期させることはできず、シンクロナイザリング64やコーン部68(本実施例では特にシンクロナイザリング64)が摩耗して損傷し、その後の通常のシフト操作時に摩擦による同期が損なわれてギヤ鳴り等の異音が発生するなどのシフト操作不良を生じることがある。このため、ステップS3以下の同期噛合クラッチ保護処理を実行して、シンクロナイザリング64やコーン部68の摩耗、損傷を抑制するのである。
ステップS3では、先ず、予め定められた一定時間後に警告表示や警告音等のウォーニングをウォーニング機器110から発生させ、運転者にシンクロ押付負荷状態の回避を促す。一定時間後にウォーニングを発生させるのは、単なる一時的な誤操作の場合や極短時間だけシンクロ押付負荷が加えられた場合までウォーニングを発する必要はないからである。図9は、図8のフローチャートに従って同期噛合クラッチ保護処理が実行される際のエンジン回転速度NEおよびウォーニングの有無(ON、OFF)の変化を示すタイムチャートの一例で、時間t1はシンクロ押付負荷状態である旨の判定が為されてステップS2の判断がYES(肯定)となった時間であり、時間t2はステップS3の実行により一定時間後にウォーニングが発せられた時間である。なお、図9のエンジン回転速度NEの欄の「NEidl 」は、アイドル回転速度を表している。
ステップS4では、セレクト位置センサ192によって検出されるセレクト位置およびシフト方向センサ196によって検出されるシフト方向に基づいて、シンクロナイザリング64がコーン部68に押し付けられている同期噛合クラッチ48によって成立させられるギヤ段、すなわちシンクロ押付ギヤ段を特定する。具体的には、例えば第1セレクト位置でシフト方向が車両前側であれば第1速ギヤ段をシンクロ押付ギヤ段と判定し、第1セレクト位置でシフト方向が車両後側であれば第2速ギヤ段をシンクロ押付ギヤ段と判定し、第2セレクト位置でシフト方向が車両前側であれば第3速ギヤ段をシンクロ押付ギヤ段と判定し、第2セレクト位置でシフト方向が車両後側であれば第4速ギヤ段をシンクロ押付ギヤ段と判定する。
ステップS5では、上記シンクロ押付ギヤ段が成立した場合、言い換えればシンクロ押付ギヤ段の同期噛合クラッチ48に関するシンクロナイザリング64とコーン部68との回転速度差が0となる場合、のエンジン12の回転速度NEを、同期エンジン回転速度NEdokiとして算出する。エンジン12は入力クラッチ14やスプライン嵌合55等を介して入力軸42に直結されるため、車速Vに対応する出力側回転速度Nout にシンクロ押付ギヤ段の変速比esiを掛け算することによって同期エンジン回転速度NEdokiを求めることができる。次のステップS6では、その同期エンジン回転速度NEdokiに基づいて、経過時間に応じて目標エンジン回転速度NEmを算出し、ステップS7では、実際のエンジン回転速度NEがその目標エンジン回転速度NEmとなるようにエンジン制御機器112を制御する。本実施例では、図9に示すようにウォーニング発生時間t2から所定時間経過した時間t3で、同期エンジン回転速度NEdokiよりも一定回転或いは一定割合だけ低い第1回転速度まで上昇させるとともに、その後一定時間経過した後に一定の変化率で漸増させ、同期エンジン回転速度NEdokiよりも一定回転或いは一定割合だけ低い第2回転速度で一定に維持されるように、予め定められた変化パターンに従って段階的に上昇させる。シンクロ押付ギヤ段に関する同期噛合クラッチ48のシンクロナイザリング64とコーン部68との回転速度差が0となる同期エンジン回転速度NEdokiまで上昇させないのは、同期により運転者の意に反してギヤ入りして所定のギヤ段が成立させられることを回避するとともに、エンジン12の作動で燃費が悪化することを少しでも抑制するためである。
ステップS8では、入力クラッチ14が遮断状態になったか、シンクロ押付状態が解除されたか、或いは車速Vが所定の閾値範囲外になったか、を判断し、何れもNO(否定)の場合にはステップS5以下を繰り返してエンジン回転速度制御を継続するが、何れか1つでも成立した場合にはステップS9を実行し、エンジン回転速度制御およびウォーニングを終了する。入力クラッチ14が遮断状態になれば、同期噛合クラッチ48のシンクロナイザリング64とコーン部68との間に掛かる負荷が低下して摩耗や損傷の恐れが無くなるのであり、入力クラッチ14が遮断状態か否かは、ステップS1と同様にクラッチセンサ150から供給される信号に基づいて判断できる。シフトレバー160による押付解除或いはギヤ入りによりシンクロ押付状態が解除された場合も、同期噛合クラッチ48のシンクロナイザリング64とコーン部68との摩擦係合が解除されて摩耗や損傷の恐れが無くなるのであり、シンクロ押付状態が解除されたか否かは、ステップS2と同様にシフトストロークセンサ182によって検出されるシフトストロークSから判断できる。車速Vについては、例えばブレーキの踏み込み操作などで停車する場合、車速Vが10〜15km/h程度以下になれば、クラッチペダル34が踏み込み操作されて入力クラッチ14が遮断状態とされる蓋然性が高くなるため、敢えてステップS3〜S8の同期噛合クラッチ保護処理を継続する必要はない。
このように本実施例の車両用駆動装置10においては、入力クラッチ14が接続状態で且つ手動変速機16がニュートラル状態の惰性走行時に同期噛合クラッチ48の何れかがシンクロ押付負荷状態とされた場合には、図8のステップS3以下の同期噛合クラッチ保護処理が実行されることにより、ウォーニングが発せられるとともにエンジン回転速度NEが上昇させられるため、同期噛合クラッチ48の摩擦係合によるシンクロナイザリング64やコーン部68(特にシンクロナイザリング64)の摩耗、損傷が抑制されて手動変速機16の耐久性が向上する。すなわち、ウォーニングによって運転者がシフトレバー160を放すなどして同期噛合クラッチ48の押し付けが解除されれば、シンクロ押付負荷によるシンクロナイザリング64やコーン部68の摩耗、損傷が防止される一方、エンジン回転速度NEを上昇させれば、同期噛合クラッチ48の相対回転速度が小さくなってシンクロ押付負荷による摩耗や損傷が抑制される。
また、本実施例では、変速比eが異なる複数のギヤ段を成立させることが可能な手動変速機16を備えており、同期噛合クラッチ保護手段120は、シンクロ押付負荷が加えられている同期噛合クラッチ48により成立させられるシンクロ押付ギヤ段を検出するとともに、そのシンクロ押付ギヤ段の変速比esiおよび車速Vに基づいて同期エンジン回転速度NEdokiを算出し、その同期エンジン回転速度NEdokiに基づいて定められる目標エンジン回転速度NEmに従ってエンジン回転速度NEを上昇させるため、同期噛合クラッチ48の相対回転速度を適切に低減して摩耗や損傷を抑制することができる。すなわち、同期エンジン回転速度NEdokiはギヤ段の変速比eに応じてそれぞれ異なるため、シンクロ押付負荷が加えられている同期噛合クラッチ48により成立させられるシンクロ押付ギヤ段を検出して同期エンジン回転速度NEdokiを算出することにより、目標エンジン回転速度NEmを適切に設定して同期噛合クラッチ48の摩耗や損傷を抑制することができるのである。
ここで、エンジン回転速度NEを同期エンジン回転速度NEdokiまで上昇させれば同期噛合クラッチ48の相対回転速度が0になり、摩耗や損傷が確実に防止されるが、エンジン12の作動で燃費が悪化するとともに、同期により運転者の意に反して同期噛合クラッチ48が噛み合って所定のギヤ段が成立してしまう恐れがある。これに対し、本実施例では、同期エンジン回転速度NEdokiに基づいて目標エンジン回転速度NEmを設定するため、運転者の意に反して所定のギヤ段が成立したり燃費が悪化したりすることをできるだけ抑制しつつ、同期噛合クラッチ48の摩耗や損傷が適切に抑制されるようにすることができる。具体的には、目標エンジン回転速度NEmを、図9に示すように同期エンジン回転速度NEdokiよりも低い回転速度範囲で段階的に上昇させるようにしているため、運転者の意に反して所定のギヤ段が成立することを回避できるとともに、エンジン回転速度NEの上昇に伴う燃費の悪化をできるだけ抑制しつつ同期噛合クラッチ48の摩耗や損傷を適切に抑制できる。
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の実施例において前記実施例と実質的に共通する部分には同一の符号を付して詳しい説明を省略する。
図10および図11は、それぞれ前記図7および図8に対応する機能ブロック線図およびフローチャートで、本実施例の同期噛合クラッチ保護手段200は、前記シンクロ押付ギヤ段判定手段126の代わりに第4速ギヤ段押付判定手段202を備えており、シンクロ押付ギヤ段が第4速ギヤ段の場合にのみ、その第4速ギヤ段を成立させる同期噛合クラッチ48bの摩耗や損傷を抑制するために、ウォーニング手段124によってウォーニングを発したりエンジン回転速度制御手段132によってエンジン回転速度制御を行ったりする点が相違する。図11のフローチャートのステップS2−1およびS2−2は第4速ギヤ段押付判定手段202に相当し、ステップS2−1では、前記ステップS4と同様にしてシンクロ押付ギヤ段を判定する。また、ステップS2−2では、そのシンクロ押付ギヤ段が第4速ギヤ段か否かを判断し、第4速ギヤ段の場合にはステップS3以下の同期噛合クラッチ保護処理を実行するが、第4速ギヤ段以外の場合は一時的な誤操作と見做してそのまま終了する。
すなわち、シフトレバー160は運転席の横の斜め前方に配設されているため、惰性走行時に原位置に保持されているシフトレバー160に運転者が手を載せている場合、運転者は無意識のうちにシフトレバー160を車両後側すなわち手前に引くように力を加えていることが多い。このため、その原位置の手前(車両後側)に選択操作位置が設けられている第4速ギヤ段(後側ギヤ段)の同期噛合クラッチ48bにシンクロ押し付け力が加えられ、これが長期間に亘って繰り返されることにより、その同期噛合クラッチ48bのみが集中的に摩耗して損傷する可能性がある。このため、本実施例では、シンクロ押付ギヤ段が第4速ギヤ段の場合にのみステップS3以下の同期噛合クラッチ保護処理を実行し、必要以上にその保護処理が行われて燃費等が悪化することを抑制しつつ、同期噛合クラッチ48bの摩耗や損傷を適切に抑制するようにしたのであり、これにより手動変速機16の耐久性が向上する。
また、前記実施例1では、入力クラッチ14が接続状態で且つ手動変速機16がニュートラル状態の惰性走行を行っている際に、シフトストロークセンサ182によって検出されるシフトストロークSが予め定められたシンクロ押付領域Spの範囲内の場合に、何れかの同期噛合クラッチ48が摩擦係合させられているシンクロ押付負荷状態と判定するようになっていたが、同期噛合クラッチ48のシンクロナイザリング64がコーン部68に押し付けられると、それ等の摩擦による動力伝達によってエンジン回転速度NEは図12に示すように一時的に上昇させられるため、この時のエンジン回転速度NEの変化やアイドル回転速度制御手段の制御内容の変化からシンクロ押付負荷状態を判定することもできる。すなわち、惰性走行時には一般にアイドル回転速度制御手段によってエンジン回転速度NEが所定のアイドル回転速度NEidl に維持されるようにエンジン制御機器112等が制御されるが、シンクロナイザリング64がコーン部68に押し付けられて摩擦係合させられると、アイドル回転速度制御の応答遅れによりエンジン回転速度NEが一時的に上昇してしまうのである。この場合には、実際にシンクロナイザリング64がコーン部68に押し付けられるシンクロ押付負荷状態を検出して同期噛合クラッチ保護処理を実行することになるため、その同期噛合クラッチ保護処理の実行が必要最小限に抑えられ、燃費の悪化が一層効果的に抑制される。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これ等はあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
10:車両用駆動装置 12:エンジン(走行用駆動源) 14:入力クラッチ 16:手動変速機 48a〜48e:同期噛合クラッチ 50a〜50c:クラッチハブスリーブ 64:シンクロナイザリング 68:コーン部 100:電子制御装置 110:ウォーニング機器 112:エンジン制御機器 120、200:同期噛合クラッチ保護手段 150:クラッチセンサ 160:シフトレバー 182:シフトストロークセンサ S:シフトストローク Sp、Dp:シンクロ押付領域 NEdoki:同期エンジン回転速度(同期回転速度) NEm:目標エンジン回転速度(目標回転速度)

Claims (4)

  1. 運転者のシフトレバー操作に従って機械的に同期噛合クラッチのクラッチハブスリーブが移動させられることにより、シンクロナイザリングが変速ギヤのコーン部に押し付けられて、回転を同期させながらニュートラル状態から所定のギヤ段に切り換えられる手動変速機と、
    該手動変速機と走行用駆動源との間に配設され、運転者のクラッチ操作に従って動力伝達の接続、遮断状態が切り換えられる入力クラッチと、
    を有する車両の制御装置において、
    前記入力クラッチが接続状態で且つ前記手動変速機がニュートラル状態の惰性走行時に、前記同期噛合クラッチのシンクロナイザリングを前記コーン部に押し付けるシンクロ押付負荷が加えられている場合には、ウォーニングを発するか前記走行用駆動源の回転速度を上昇させ、或いはその両方を行う同期噛合クラッチ保護手段を備えている
    ことを特徴とする車両の制御装置。
  2. 前記手動変速機は、複数のギヤ段を成立させることが可能なもので、該ギヤ段に対応して複数の同期噛合クラッチを備えているとともに、
    前記シフトレバーは、ニュートラル選択時には自然状態において所定の原位置に保持されるとともに、該原位置から車両後側へ操作されると後側ギヤ段が選択されるようになっており、
    前記同期噛合クラッチ保護手段は、前記後側ギヤ段を成立させるための同期噛合クラッチにシンクロ押付負荷が加えられている場合にのみ、前記ウォーニングを発するか前記走行用駆動源の回転速度を上昇させ、或いはその両方を行う
    ことを特徴とする請求項1に記載の車両の制御装置。
  3. 前記手動変速機は前進4段以上のギヤ段を成立させることが可能なもので、前記後側ギヤ段は第4速ギヤ段である
    ことを特徴とする請求項2に記載の車両の制御装置。
  4. 前記手動変速機は、変速比が異なる複数のギヤ段を成立させることが可能なもので、該複数のギヤ段に対応して複数の同期噛合クラッチを備えている一方、
    前記同期噛合クラッチ保護手段は、前記シンクロ押付負荷が加えられている同期噛合クラッチにより成立させられるギヤ段を検出するとともに、該ギヤ段および車速に基づいて前記走行用駆動源の同期回転速度を算出し、該同期回転速度に基づいて定められる目標回転速度まで該走行用駆動源の回転速度を上昇させる
    ことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の車両の制御装置。
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