JP2011162544A - 花粉症を阻害する外用剤組成物 - Google Patents

花粉症を阻害する外用剤組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】花粉の開裂を抑制する花粉症予防剤を提供すること。
【解決手段】ミリスチン酸オクチルドデシルを含有することを特徴とする外用組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、ミリスチン酸オクチルドデシルを含有する花粉外殻の開裂抑制剤、およびミリスチン酸オクチルドデシルを含有する花粉症の予防用または治療用の外用剤組成物に関する。
花粉症は、抗原性を有する各種植物の花粉が人体に侵入した際に起こるアレルギー疾患である。より具体的には、鼻腔、口腔、眼などから花粉が侵入して粘膜に付着後、粘膜の水性粘液によって花粉外殻が開裂して、アレルギーの原因となる花粉抗原が流出し粘膜中や体内に浸透する。花粉抗原に感作されている人体は、これによって即時性のアレルギー反応が起こり、特に、鼻や眼に耐え難い痒みや不快感を起こす。
花粉症を起こす植物は風媒花が多く、花粉症の症状は樹木や草本植物の花粉飛散時期に一致して発症する。中でもスギ花粉による花粉症はもっとも多く、春季に花粉症に悩まされる患者は多いことは周知の通りである。
現在、花粉症に対し様々な予防及び治療が行われている。予防法としては、マスクやゴーグル等、発症の原因となる花粉を如何に人体に侵入させないものが主である。治療法については、体内に入った抗原によるアレルギー反応を抑制、又は、惹起したアレルギー症状を緩和するという点から、抗アレルギー薬や抗ヒスタミン薬等の薬物療法が主である。
しかし、従来の予防法では、花粉を完全に捕捉することは困難であり効果の点で不充分であった。また、例えば、マスクでは効果を高めれば高めるほど通気性が損なわれ長時間の装着には難点がある。一方、薬剤を用いた従来の治療法では、例えば、眠気等の副作用があるため問題があった。
そこで、アレルゲン自体を不活性化させる技術(例えば、特許文献1参照)、花粉プロテアーゼを阻害してアレルギー反応を抑える技術(例えば、特許文献2参照)、アレルゲンを被覆して無害化する技術(例えば、特許文献3参照)、鼻腔粘膜上に遮断層を形成する鼻腔内塗布用剤(特許文献4参照)等が開示されている。
また、花粉からの抗原物質の流出を物理化学的に阻害してアレルギー反応を防止する方法として、花粉粒子はアルカリ性条件下でアレルゲンが流出することから、鼻腔内のpHを弱酸性に保ち、かつ、鼻粘膜表面に油膜を形成してアレルゲンの侵入を抑えた鼻洗浄剤が開示されている(特許文献1参照)。
しかし、上記技術の内、広く実用に供されているのは、マスクによる予防法と薬物による治療法のみであり、他の技術は人体に適用するには実用性の問題や薬事法規制上の課題が解決されていないことを裏付けるものと言える。
特開2009−155520号公報 特開平10−306025号公報 特開昭56−49080号公報 特開2004−256489号公報 特開平7−258070号公報
本発明の課題は、花粉外殻の開裂を抑制することによって花粉抗原によるアレルギー反応を阻止した外用組成物を見出し、製品として実現することである。そのためには、人体粘膜に適用しても実用性に問題なく、かつ、薬事規制をクリアできるものでなければならない。
花粉は、水性液中にてその外殻が開裂して抗原物質を流出するものの、非水状態(例えば、油脂中)では開裂しないことが明らかになっており(例えば、上記特許文献4)、その性質を利用して、鼻腔に製剤を適用し花粉の吸入をブロックする製品も市販されている。しかし、実際に鼻や眼に製剤を適用する際には、水分を含む体液と製剤が接触せざるを得ないため、鼻や眼に油脂100%の製剤を適用したとしても、花粉外殻の開裂を完全に防止することはできないのが現状である。
そこで、本発明者らは、非水状態を維持できる物質で、かつ外用剤として使用実績のある物質という条件の中から、体液と接触した場合に、その他の油脂と比較して花粉外殻の開裂を顕著に抑制する油脂を見つけるべく、鋭意検討を行った。その結果、ミリスチン酸オクチルドデシルには顕著にその効果があることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)高級脂肪酸と分岐状高級アルコールとのエステルを含有する、花粉外殻の開裂抑制剤;
(2)高級脂肪酸と分岐状高級アルコールとのエステルがミリスチン酸オクチルドデシルである、前記(1)に記載の花粉外殻の開裂抑制剤;
(3)高級脂肪酸と分岐状高級アルコールとのエステルを含有する、花粉症予防用または治療用の外用剤組成物;
(4)高級脂肪酸と分岐状高級アルコールとのエステルがミリスチン酸オクチルドデシルである、前記(3)に記載の外用剤組成物;
(5)点鼻剤である前記(3)または(4)に記載の外用剤組成物;
(6)点眼剤である前記(3)または(4)に記載の外用剤組成物;ならびに、
(7)さらに、抗アレルギー剤、抗ヒスタミン剤、血管収縮剤、抗炎症剤および清涼化剤からなる群より選択される1種以上を含有する、前記(3)〜(6)いずれか1項に記載の外用剤組成物;
に関する。
本発明によれば、花粉抗原(アレルゲン)の放出をもたらす花粉の外殻の開裂を抑制することができるので、物理的に花粉症を予防または治療することができるという、効果を奏し、さらに、従来のように抗アレルギー剤や抗ヒスタミン剤の投与による花粉症の薬理的な治療と組み合わせることにより、花粉症のさらなる予防または治療効果が期待できる。
本明細書において「高級脂肪酸」とは、炭素数が12以上の飽和または不飽和脂肪酸をいい、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸などが挙げられ、好ましくは、ミリスチン酸である。
本明細書において「分岐状高級アルコール」とは、炭素数が12以上の分岐状アルコールをいい、例えば、2−オクチル−ドデカン−1−オール、14−メチル−ペンタデカン−1−オールなどが挙げられ、好ましくは、2−オクチル−ドデカン−1−オールである。
本明細書において「高級脂肪酸と分岐状高級アルコールとのエステル」とは、前記「高級脂肪酸」と前記「分岐状高級アルコール」とのエステルをいい、例えば、ミリスチン酸と2−オクチル−ドデカン−1−オールとのエステルであるミリスチン酸オクチルドデシル、オレイン酸と2−オクチル−ドデカン−1−オールとのエステルであるオレイン酸オクチルドデシル、パルミチン酸と14−メチル−ペンタデカン−1−オールとのエステルであるパルミチン酸イソセチル、ステアリン酸と14−メチル−ペンタデカン−1−オールとのエステルであるステアリン酸イソセチルなどが挙げられ、好ましくは、ミリスチン酸オクチルドデシルである。これらのエステルは、当該分野で公知の方法により製造することもできるし、市販されているものを入手することもできる。
本発明に用いられるミリスチン酸オクチルドデシルは、ミリスチン酸オクチルドデカンとも言われ、ミリスチン酸とオクチルドデカノールのエステルであり、医薬品添加物規格や化粧品原料規格に収載されている(医薬品添加物事典2005)。また、化粧品分野では保護剤としての目的で配合され(日本化粧品成分表示名称事典、薬事日報社、2001)、医薬品分野では外用剤では基剤、乳化剤として用いられており(医薬品添加物事典2005)、容易に入手することができる。
本発明の花粉外殻の開裂抑制剤は、花粉外殻の開裂を抑制することができるため、物理的に花粉症の予防または治療に利用することができることから、花粉症の予防用または治療用の外用剤組成物として利用することもできる。
さらに、本発明は、上記の花粉外殻の開裂抑制剤と、従来から花粉症の予防または治療に利用されてきた抗アレルギー剤、抗ヒスタミン剤、血管収縮剤、抗炎症剤、清涼化剤などと組み合わせることで、花粉症の予防または治療用の外用剤組成物を提供することができる。抗アレルギー剤、抗ヒスタミン剤、血管収縮剤、抗炎症剤または清涼化剤としては、例えば、塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸ナファゾリン、マレイン酸クロルフェニラミン、塩化ベンザルコニウム、グリチルリチン酸二カリウム、アラントイン、アズレンスルホン酸ナトリウム、プラノプロフェン、クロモグリク酸ナトリウム、フマル酸ケトチフェン、アシタザノラスト、アンレノキサノクス、イブジラスト、ペミロラストカリウム、l−メントールなどが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の外用剤組成物の剤形は、適用される経路に応じて、エアゾール剤、液剤、眼軟膏剤、懸濁剤、乳剤、点鼻剤、点眼剤、軟膏剤、リニメント剤、ローション剤など適宜選択することができ、これらの製剤は、例えば、日局に記載の方法に従って調製することができる。本発明の外用剤組成物には、ミリスチン酸オクチルドデシル以外に、適用される剤形に応じて、その他の添加剤や基剤を本発明の効果を損なわない範囲内で配合してもよい。
本発明の外用剤組成物は、医薬品、医薬部外品、または、家庭用品であってもよい。
本発明の実施例を以下に記載するが、これに限定されるものではない。
(実施例1)鼻洗浄剤
公知の方法に準じて下記組成の鼻洗浄剤を調製する。
Figure 2011162544
(実施例2)点鼻薬
公知の方法に準じて下記組成の点鼻薬を調製する。
Figure 2011162544
(実施例3)軟膏
日局製剤総則「軟膏剤」の項に準じて下記組成の軟膏を調製する。
Figure 2011162544
(試験例)花粉外殻の開裂阻止効果試験
1)油脂
油脂は、ヒマシ油、ダイズ油(いずれも小堺製薬(株)製)、流動パラフィン(カネダ(株)製)、スクワラン((株)クラレ製)、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル(いずれも日光ケミカルズ(株)製)および中鎖脂肪酸トリグリセリド(日本油脂(株)製)を使用した。花粉に対する各油脂の直接的な影響を確認するため、予め、上記油脂中にスギ花粉を懸濁して、各種油脂中における花粉外殻の開裂を確認したが、花粉外殻の開裂はいずれの油脂においても生じなかった。
2)花粉
花粉は、和光純薬工業(株)のスギ花粉を試用した。
3)人工鼻汁
佐分利ら、日本公衆衛生雑誌、1992;39;341−を参考に、下記組成の人工鼻汁を調製し、希釈アンモニア水でpHを9.1に調整した。なお、トリパンブルーは開裂した花粉の細胞質のみを染色する性質があるため、未開裂花粉と開裂花粉との区別をしやすくするために人工鼻汁に添加した。
Figure 2011162544
4)試験方法
スギ花粉を約1μL分取し、200μLの上記油脂にそれぞれ懸濁した。5分後にこの懸濁液100μLを、ポリカーボネートメンブレンフィルター(アドバンテック東洋(株)製、K020A13A)でろ過し、フィルター上に花粉を付着させた。
スライドグラス上に人工鼻汁を40μL滴下し、フィルターの花粉が付着した面と人工鼻汁の液面とを接触させた。90秒後にフィルターを除去して、液面にカバーグラスをかぶせた。そして、フィルターと人工鼻汁を接触させてから3分後に顕微鏡を用いて花粉外殻の開裂状況を確認した。以降、3分間隔で30分後まで確認を行った。
なお、ヒマシ油に懸濁した花粉を用いた試験を試験1、ダイズ油に懸濁した花粉を用いた試験を試験2、流動パラフィンに懸濁した花粉を用いた試験を試験3、スクワランに懸濁した花粉を用いた試験を試験4、中鎖脂肪酸トリグリセリドに懸濁した花粉を用いた試験を試験5、ミリスチン酸イソプロピルに懸濁した花粉を用いた試験を試験6、ミリスチン酸オクチルドデシルに懸濁した花粉を用いた試験を試験7とした。また、人工鼻汁に花粉を直接添加した試験をコントロールとした。そして各試験はn=3で行った。
5)測定方法
顕微鏡写真をもとに、花粉外殻の開裂状況を観察し、花粉外殻の開裂率は次式で算出した。
開裂率(%)=100×(開裂花粉数/(未開裂花粉数+開裂花粉数))
6)試験結果
各試験における花粉外殻の開裂率の経時変化を表5に示す。
Figure 2011162544
表5の結果より、油脂の種類によっては、人工鼻汁と接触した際に、花粉外殻の開裂を促進する方向に作用するものがある中、ミリスチン酸オクチルドデシルで処理をした花粉を用いた試験7は、唯一コントロールに対して開裂率の抑制に有意差があり、ミリスチン酸オクチルドデシルが花粉の開裂を顕著に抑制する作用を有することが判った。
本発明の花粉外殻の開裂抑制剤は、物理的な花粉症の予防または治療に利用することができ、薬理的に花粉症の予防または治療に利用されてきた従来の点眼剤や点鼻剤に添加することにより、アレルギー症状の発症をさらに抑制する製剤が実現できる。

Claims (7)

  1. 高級脂肪酸と分岐状高級アルコールとのエステルを含有する、花粉外殻の開裂抑制剤。
  2. 高級脂肪酸と分岐状高級アルコールとのエステルがミリスチン酸オクチルドデシルである、請求項1に記載の花粉外殻の開裂抑制剤。
  3. 高級脂肪酸と分岐状高級アルコールとのエステルを含有する、花粉症予防用または治療用の外用剤組成物。
  4. 高級脂肪酸と分岐状高級アルコールとのエステルがミリスチン酸オクチルドデシルである、請求項3に記載の外用剤組成物。
  5. 点鼻剤である請求項3または4に記載の外用剤組成物。
  6. 点眼剤である請求項3または4に記載の外用剤組成物。
  7. さらに、抗アレルギー剤、抗ヒスタミン剤、血管収縮剤、抗炎症剤および清涼化剤からなる群より選択される1種以上を含有する、請求項3〜6いずれか1項に記載の外用剤組成物。
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JPS4610886Y1 (ja) * 1967-06-01 1971-04-16
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