JP2011161609A - 中高圧用アルミニウム箔の製造方法 - Google Patents

中高圧用アルミニウム箔の製造方法 Download PDF

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達史 太田
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Abstract

【課題】ピット密度の向上とピット長の均一化により、アルミニウム箔の静電容量を向上させ、高電圧に適した中高圧用アルミニウム陽極箔を提供することを目的とするものである。
【解決手段】圧延痕を有するアルミニウム原箔1を連続的に走行させ、酸化物粒子と水を混合した溶液を前記アルミニウム原箔1の走行方向と逆方向からアルミニウム原箔に吹き付けて前記アルミニウム原箔1の圧延痕1aを取り除き、かつ前記アルミニウム原箔1の表面に多数の窪みを形成して表面積を拡大するようにした中高圧用アルミニウム箔の製造方法とする。
【選択図】図1

Description

本発明はアルミ電解コンデンサに用いられる陽極箔に関するもので、特に200V以上の中高圧用アルミ電解コンデンサの陽極箔に用いられるアルミニウム箔に関するものである。
近年、電子機器の小型化、高信頼性化に伴い、アルミ電解コンデンサに対するユーザーからのニーズも小型化が強く要望されている。そのため、アルミ電解コンデンサに用いられる電極箔も従来以上に単位面積当たりの静電容量を高める必要が生じている。
一般的なアルミ電解コンデンサは、アルミニウム箔をエッチング処理によって実効表面積を拡大させ、その表面に陽極酸化により誘電体酸化皮膜を形成した陽極箔と、アルミニウム箔をエッチング処理によって実効表面積を拡大させた陰極箔と、前記陽極箔と陰極箔をセパレータを介して巻回することによりコンデンサ素子を形成し、このコンデンサ素子に駆動用電解液を含浸させるとともに、このコンデンサ素子を金属ケ−ス内に封止することにより構成されている。
前記アルミ電解コンデンサにおいて、その静電容量を高める或いは小型化を図るには、陽極箔の実効表面積を拡大し単位面積当たりの静電容量を高めることが必要不可欠になっており、陽極箔の実効表面積を拡大させるエッチング技術と化成処理技術の開発が盛んに行われている。
一般的に陽極箔に用いられるアルミニウム箔のエッチング処理方法は、硫酸、硝酸、燐酸、蓚酸などの皮膜を形成する酸を添加した塩酸水溶液中で化学的あるいは電気化学的に行われている。特に中高圧用アルミニウム箔のエッチング処理方法は、基本的にはトンネル状のピット(以下、単にピットと称す)を生成させる前段エッチング工程と、このピットをアルミ電解コンデンサの使用電圧に適した径まで拡大する後段エッチング工程とからなる方法で、いかに数多くのピットを生成させて、そのピットを効率よく拡大させるかが重要なポイントとなっている。
前記中高圧用アルミニウム箔のエッチング処理方法において、ピットを効率よく生成させる技術として、アルミニウム箔の表面改質技術とエッチング処理技術に大別される。
前記アルミニウム箔の表面改質技術として、アルミニウム箔のミラー指数(100)面結晶占有率を80%以上とすることは一般的に知られている。
また、特許文献1には、電解コンデンサのアルミニウム箔において、Pb、In、Snの1種または2種以上が、表面から深さ0.1μmまでの表層部に合計で100〜5000ppm存在するとともに、前記表層部を除く内部に合計で1〜5ppm含有されてなるアルミニウム箔を用いることにより、表面溶解を抑えつつエッチングをアルミニウム箔の内部まで進行させることができ、多数のエッチングピットを効果的に形成することができ、その結果、拡面率が増大し、ひいては静電容量の増大化を図ることができるとされている。
また、特許文献2には、アルミニウム箔上に蒸着等によりカーボンを均一に付与した後、エネルギーを与えてアルミニウムとカーボンを反応させ、Al43粒子を形成させることにより、導入したAl43が初期ピットの開始点とし、その開始点がエッチング中に欠落することがなく、エッチングピットを適当数均一に分散分布させ得ることから、静電容量の高い電解コンデンサを得ることができるとされている。
また、特許文献3には、アルミニウム箔の表面上に、複数のクレーター状の窪みを有し、かつその表面にCu、Ni、Co、Fe、Mn、Mg、Zn、Pb、Bi、In、Sn及びSbからなる群から選択される少なくとも1種の金属層を形成し、前記複数のクレーター状の窪みは、開口部の大きさの平均が0.05μm〜5μmの範囲内であるアルミニウム箔とすることにより、エッチング処理した場合に高い静電容量を発揮することができるとされている。
なお、本発明において、アルミニウム材を圧延した箔状のものをアルミニウム原箔とし、このアルミニウム原箔に酸化物粒子を衝突させたものをアルミニウム箔とし、このアルミニウム箔をエッチング処理して実効表面積を拡大されたものをエッチング箔とし、そのエッチング箔に化成処理されたものを化成箔とする。この化成箔をアルミ電解コンデンサに使用されるものを陽極箔とし、陽極箔と陰極箔を総称して電極箔とする。
特開平6−124855号公報 特開2003−229334号公報 特開2008−231512号公報
しかしながら、前記アルミニウム箔の表面改質技術において、Pb、Al43等を付着させたものは、思いのほか静電容量が高くならない。これは、PbやAl43等が付着したところからピットが発生するが、アルミニウム箔表面にはアルミニウム材を圧延したときに生じた圧延傷の凹凸が残存し、その凹凸部分からもピットが発生してしまい、ピットの食い潰しがあるからである。
また、Pb等は表面近傍(特に圧延痕)に濃縮して存在し、濃縮したPbの位置からピットが発生し易いため、狭い範囲でピットが重複して発生してしまい、ピットの食い潰しが生じる。
一方、アルミニウム箔の表面に複数のクレーター状の窪みを形成したものは、クレーターの形成が、陽極酸化処理して多孔質酸化皮膜を形成し、その多孔質酸化皮膜を除去することにより形成され、このアルミニウム箔に蒸着等により金属層を形成することから、工程が煩雑でコストアップとなり、実用的でない。
本発明は前記従来の課題を解決するもので、エッチング処理によるピット密度及びピット分散性の向上に適した中高圧用アルミニウム箔を提供し、このアルミニウム箔をエッチング処理により静電容量の高いアルミ電解コンデンサの陽極箔を得ることを目的とするものである。
前記目的を達成するために本発明は、圧延痕を有するアルミニウム原箔を連続的に走行させ、酸化物粒子と水を混合した溶液を前記アルミニウム原箔の走行方向と逆方向からアルミニウム原箔に吹き付けて前記アルミニウム原箔の圧延痕を取り除き、かつ前記アルミニウム原箔の表面に多数の窪みを形成して表面積を拡大するようにしたことを特徴とする中高圧用アルミニウム箔の製造方法である。
前記酸化物粒子は、鋭角を有する略多角状の粒子であり、アルミニウム原箔の表面に対して斜めに吹き付けるようにする。
前記酸化物粒子と水を混合した溶液の吹き付けは、アルミニウム原箔を走行させる走行ローラと接する所に吹き付けるようにする。
また、前記アルミニウム原箔を走行させる途中に、原箔に張力が掛かるようにテンションローラを配設し、さらに、前記酸化物粒子と水を混合した溶液の吹き付けノズルは、走行ローラの垂直中心線よりも走行の川上側に配置して、真下に吹き付けるようにした製造方法である。
本発明は、圧延痕を有するアルミニウム原箔を連続的に走行させ、酸化物粒子と水を混合した溶液を前記アルミニウム原箔の走行方向と逆方向からアルミニウム原箔に吹き付けることにより、アルミニウム原箔の走行速度に対して酸化物粒子の衝突衝撃が大きくなり、アルミニウム原箔の圧延痕を効率的に取り除くことができる。
また、酸化物粒子を斜めから吹き付けることにより、酸化物粒子がアルミニウム原箔にめり込むことがなく、酸化物粒子の一部がアルミニウム原箔の表面に衝突してアルミニウム原箔の表面の圧延痕を取り除くとともに、アルミニウム原箔の表面層に深さ10μmまでの先端が鋭角を有する多角錐の窪みを多数形成することができる。
また、酸化物粒子と水を混合した溶液を吹き付けるので、衝突後の酸化物粒子を速やかにアルミニウム原箔の表面から除去することができ、酸化物粒子が飛散して他の吹き付け場所に与える影響が少なく、アルミニウム原箔の表面に多数の均一な略多角錐の窪みを形成して表面積を拡大したアルミニウム箔を得ることができる。
そして、その後の直流エッチング処理により、前記多数の窪みを起点としてピットが発生し、かつ発生するピットの分散性が均一で、食い潰しがなく、効率的にエッチングを行うことが可能となり、静電容量を高くすることができる。
前記酸化物粒子は、鋭角を有する略多角状の粒子であり、アルミニウム原箔の表面に対して斜めに吹き付けることにより、酸化物粒子がアルミニウム原箔にめり込むことがなく酸化物粒子の先端部だけが衝突して、アルミニウム原箔の表面に先端が鋭角を有する多角錐の窪みを多数形成させることができる。
その多角錐の窪みは、アルミニウム原箔の表面から深さ10μmまでに形成される。その結果、その後の直流エッチング処理によるピットの分散性が向上し、均一にピットを形成することができる。
また、前記酸化物粒子と水を混合した溶液の吹き付けは、アルミニウム原箔を走行させる走行ローラと接する所にする、また、前記アルミニウム原箔を走行させる途中に、アルミニウム原箔に張力が加わるようにテンションローラを配設し、アルミニウム原箔が走行ローラを走行している場所に酸化物粒子と水を混合した溶液を吹き付けることにより、アルミニウム原箔に張力が加わるので、アルミニウム原箔のうねり及びしわを抑制し、吹き付け効率を向上させることができる。
また、前記酸化物粒子と水を混合した溶液の吹き付けノズルは、走行ローラの垂直中心線よりも走行の川上側に配置して、真下に吹き付けるようにすることにより、先端が鋭角を有する多角錐の窪みが多数形成させることができ、アルミニウム原箔の表面から深さ10μmまでに形成することができる。
本発明の実施の形態1におけるアルミニウム原箔に酸化物粒子と水を混合した溶液を噴射する様子を表した概念図 同実施の形態1における具体的なアルミニウム原箔の走行を表した断面図 同実施の形態1によるアルミニウム箔の表面SEM写真 同実施の形態1によるアルミニウム箔の直流エッチング処理の装置を表す断面図 同実施の形態2によるアルミニウム原箔の走行を表した断面図
本発明は、アルミニウム原箔の圧延油と圧延傷を同時に取り除くとともに、アルミニウム原箔の表面に多数の窪みを形成して表面積を拡大することにより、食い潰しなく(ピットの重複形成がなく)効率的に直流エッチング処理を行うことが可能となり、静電容量を高くする製造方法であり、前記アルミニウム原箔の圧延痕を取り除き、表面積を拡大させるには、酸化物粒子を衝突させることにより達成できる。
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
(実施の形態1)
図1は本実施の形態1によるアルミニウム原箔に酸化物粒子と水を混合した溶液を噴射する様子を表した概念図である。図1において、1はアルミニウム原箔であり、このアルミニウム原箔1はアルミニウム材を圧延して熱処理によりミラー指数(100)面結晶占有率が80%以上のもので、一般に中高圧用アルミニウム箔に用いられており、圧延痕1aと圧延油(図示せず)が存在する。
前記アルミニウム原箔1の圧延痕1aを取り除くために、アルミニウム原箔1の幅方向に噴射孔を複数有するノズル2から酸化物粒子と水とを混合した溶液をアルミニウム原箔の走行方向(矢印A)に対して逆方向から吹き付けることにより、圧延痕1aを取り除くことができる。
前記酸化物粒子は、鋭角を有する略多角状の粒子を用い、アルミニウム原箔の表面に対して斜めに吹き付けることにより、酸化物粒子がアルミニウム原箔にめり込むことがなく、酸化物粒子の先端部がアルミニウム原箔の表面に衝突してアルミニウム原箔の表面の圧延痕を取り除くとともに、アルミニウム原箔の表面層に深さ10μmまでの先端が鋭角を有する多角錐の窪みが多数形成される。
アルミニウム原箔1に逆方向から斜めに吹き付けることは、ノズル2がアルミニウム原箔1の表面に対して角度(R)を有することで、ノズル2の角度(R)は、アルミニウム原箔1の表面に対して45度以上90度未満が好ましい。角度(R)が45度未満ではアルミニウム原箔1に対する酸化物粒子の衝撃が弱くなり、圧延痕1aを効率的に取り除くことができない。また、角度(R)が90度以上になると、アルミニウム原箔1の走行方向と同じ方向から吹き付けるようになるので、酸化物粒子がアルミニウム原箔1の表面を追うようになるので圧延痕1aの除去にむらが生じ、その後の直流エッチング処理によるピットの発生が不均一になり好ましくない。
前記ノズル2から吹き付けられる酸化物粒子はある程度の幅に広がるので、アルミニウム原箔1からノズル2までの距離(L)は、吹き付けの酸化物粒子が全体の70%をアルミニウム原箔1の走行方向に対して逆方向になるような距離に調整する。
より具体的には図2を用いて説明する。図2において、4はアルミニウム原箔1の巻き出し部であり、アルミニウム原箔1は巻き出し部4から走行ローラ3を通過して巻き取り部5で巻き取られる。また、巻き出し部4と巻き取り部5の間にアルミニウム原箔1を走行させる走行ローラ3が配置されている。この走行ローラ3はアルミニウム原箔1の表裏面にそれぞれ配置され、アルミニウム原箔1に張力が加わるようにそれぞれの走行ローラの取り付け位置を決定する。
そして、アルミニウム原箔1が走行ローラ3と接する所に、酸化物粒子と水を混合した溶液をノズル2から噴射する。このとき、ノズル2からの吹き付けはアルミニウム原箔1の走行方向(矢印A)と逆方向から吹き付ける。
前記酸化物粒子と水を混合した溶液の吹き付けを、アルミニウム原箔を走行させる走行ローラと接する所にすることにより、アルミニウム原箔1のうねり及びしわを抑制し、吹き付け効率を向上させることができる。
前記ノズル2の角度(R)は、アルミニウム原箔1の走行速度に対応して調整する。走行速度が遅い場合には、角度(R)を90度により近づけてもかまわないが、走行速度が速い場合には、角度(R)を45度に近づけた方が好ましい。また、酸化物粒子と水との混合比、吹き付ける圧力、吹き付け距離Lは、走行速度に対応して適宜設定する。
前記酸化物粒子は、平均粒径が5〜15μmの範囲のものを使用する。前記酸化物粒子は、鋭い角と適度の靭性を有する略多角状の粒子のものを用い、高圧力で吹き付けることにより、圧延油と圧延傷が取り除かれ、アルミニウム箔表面に少なくとも先端が鋭角を有する多角錐の窪みを多数形成することができる。
本実施の形態1における中高圧用アルミニウム箔の表面SEM写真を図3に示す。図3において、6は鋭角を有する多角錐の窪みである。この鋭角を有する多角錐の窪み6は、大きさが長さ0.5〜15μm、深さ15μm以下のものが500〜2000個/mm2存在するのが好ましい。この範囲にすることにより、静電容量を高くすることができる。
前記アルミニウム原箔1は、通常は何ら物理的な処理を行っておらず、静電容量を測定するとEIAJ検査で約3.6μF/cm2である。
このアルミニウム原箔1を酸化物粒子と水を混合した溶液を吹き付けて表面積が拡大されたアルミニウム箔の静電容量は高くなる。アルミニウム箔の静電容量が、アルミニウム原箔の静電容量の1.19倍以上(アルミニウム箔の静電容量として4.28μF/cm2以上)とすることにより、その後の直流エッチング処理後の静電容量を高くすることができる。
なお、静電容量はEIAJ規格(RC−2364A)のアルミニウム電解コンデンサ用電極はくの試験方法における、中高圧用陽極化成はくの静電容量試験方法に準拠して測定した。
このように、圧延痕1aを有するアルミニウム原箔1を連続的に走行させて、酸化物粒子と水を混合した溶液を前記アルミニウム原箔1の走行方向とは逆方向からアルミニウム原箔1に吹き付けることにより、アルミニウム原箔1の走行速度に対して酸化物粒子の衝突衝撃が大きくなり、アルミニウム原箔1の圧延痕を効率的に取り除くことができ、かつアルミニウム原箔1の不純物の濃縮が緩和される。
さらに、酸化物粒子と水を混合した溶液を吹き付けるので、酸化物粒子が飛散して他の吹き付け場所に与える影響が少ないので、アルミニウム原箔1の表面に多数の先端が鋭角を有する多角錐の窪みをアルミニウム原箔1の表面から深さ15μmまでに形成させて表面積を拡大した中高圧用アルミニウム箔を得ることができる。
また、アルミニウム原箔1に張力が加わるので、アルミニウム原箔1のうねり及びしわを抑制し、吹き付け効率をさらに向上させることができる。
そして、その後の直流エッチング処理により、前記多数の先端が鋭角を有する多角錐の窪みよりピットが発生し、ピットの重複形成が緩和されて分散性が向上して、ピットの食い潰しがなく、効率的に直流エッチングを行うことが可能となり、結果としてアルミニウム陽極箔の静電容量を向上させることができる。
なお、アルミニウム原箔1の表面から15μmを超える深さの窪みを形成しても、深い位置からのピットの発生は却って困難になっていき、分散性向上の効果が小さくなるので好ましくない。
なお、酸化物粒子を衝突させることによりアルミニウム原箔1の圧延痕を取り除くことができるが、この圧延痕が目視的に薄く見える場合もあるが、エッチング処理のピット発生には影響はない。
前記直流エッチング処理は、図4に示すように前処理16、前段エッチング17、後段エッチング18とからなり、複数のローラを介して連続的にエッチング処理を行う。
ここで、直流エッチング処理を行う最初のローラの直径を30mm以上とするということは、前処理16の最初のローラ11を表す。なお、中高圧用アルミニウム箔10を連続的に走行させる複数のローラは、全て直径30mm以上が好ましいが、少なくとも直流エッチング処理の各槽に走行させる最初のローラは直径30mm以上のローラを使用するのが好ましい。すなわち、前段エッチング17の最初のローラであるローラ14、後段エッチング18の最初のローラであるローラ15は直径30mm以上のものを用いる。
前記直流エッチング処理は、複数のローラを介して連続的にエッチング処理を行うが、曲率の小さいローラを使用すると、酸化物粒子を吹き付けることにより生成させた窪みが、変形してピットの分散性の効果が小さくなるため、最初のローラは直径30mm以上のローラを使用することにより、アルミニウム原箔に形成した窪みと窪みの間に発生するクラックを最小限度に抑制することができことから、ピットの分散性を一層高めることができる。
なお、図4では、酸化物粒子を吹き付けた中高圧用アルミニウム箔10を巻き取ったものを配置しているが、アルミニウム原箔に酸化物粒子を吹き付ける工程と直流エッチング工程とを連続した工程で行うこともできる。
前記前段エッチングする前に、酸性の溶液で前処理16を行うことにより、水と酸化物粒子を衝突させる過程で生成する微少な酸化皮膜を除去し、残存した少量の圧延痕を溶解するので、ピットの分散性の効果を一層高めることができる。
以下、本実施の形態1による具体的な実施例について説明する。
(実施例1)
アルミニウム原箔として、昭和電工(株)製のアルミニウム電解コンデンサ用陽極箔(高圧用)(品名CH99(厚み115μm))を用いた。
アルミニウム原箔を図2に示す装置を用いて、走行速度5.2m/分で走行させて、ノズルの角度をR=45、60、75、90、105度の5水準で前記酸化物粒子を衝突させた。また、それぞれの角度においてアルミニウム原箔の走行速度を2.8、5.2、7.2m/分の3水準で前記酸化物粒子を衝突させた。
なお、前記酸化物粒子は(株)不二製作所製のセラミック系研磨材(品名ホワイトアランダム サイズ#2000)を用い、酸化物粒子と水の混合(14/86)したものを衝突させた。なお、吹き付ける圧力を0.1MPa、アルミニウム原箔と吹き付け口との距離を20mmとした。
前記それぞれの中高圧用アルミニウム箔を図4に示す装置で、ローラ11の直径30mmを用いて直流エッチング処理を行った。
(実施例2)
ノズルの角度をR=60度、アルミニウム原箔の走行速度=5.2m/分、酸化物粒子と水の混合(14/86)したものを衝突させた。なお、吹き付ける圧力を0.1MPa、アルミニウム原箔と吹き付け口との距離を20mmで、アルミニウム原箔に酸化物粒子を衝突させたアルミニウム箔を作成して、図4に示す装置を用いて10、15、20、30、40、90、110、130、250mmの直径のローラ11を介してアルミニウム箔を走行させた後に直流エッチング処理を行った。
(比較例1)
前記実施例1で用いたアルミニウム原箔を直接直流エッチング処理したものを比較例とした。
前記実施例1、2及び比較例の直流エッチング処理は次のように行った。
まず、80℃の塩酸30g/lの水溶液中で90秒間浸漬させて前処理を行った。
次に、前段エッチングは、エッチング液として塩酸30g/l、硫酸300g/l、リン酸0.5g/l、アルミニウム12g/lの水溶液(液温度75℃)を用い、このエッチング液中で対向する陰極板を配置させ、中高圧用アルミニウム箔を直流エッチング処理して水洗を行った。なお、直流エッチング処理の条件は、電流密度1.0A/cm2で30秒間印加した。
続いて、後段エッチングは、5%硝酸溶液に0.5%硼酸を添加した70℃のエッチング液で電流密度を0.1A/cm2にして直流エッチング処理を行い、その後水洗をして、最後に脱Cl処理してエッチング箔を作製した。
続いて、前記エッチング箔を通常用いられている化成処理(500V)により、化成箔を得た。
前記実施例1及び比較例1の化成箔について静電容量と折曲げ強度(φ1.0mm、250g荷重、折曲げ角度90度の条件下で1往復を1回とする)を測定した。その結果を(表1)に示す。
(表1)から明らかなように、ノズルの角度がR=45〜85度の範囲では、エッチング箔の静電容量を向上させることができた。なお、アルミニウム原箔の進行方向とは逆の方向から、すなわちR<90度で酸化物粒子を衝突させる方がより静電容量を高めることができた。
また、走行速度は2.8m/分以上が好ましいが、7.2m/分以上に上げた場合には、静電容量向上の効果を更に高めることができないが、生産性を高めることができる。
また、(表2)から明らかなように、アルミニウム箔を直流エッチング処理の中を走行させるローラ径が10mm以上において静電容量を高めることができる。ローラ径が200mm以上でもかまわないが、250mm以上にした場合には容量アップ効果に変化はない。ローラ径が30mmより小さいと、容量アップ効果はあるが、走行中にシワ、蛇行、陰極板とのショート等の別の課題が発生する。また、ローラ径が大きいと、エッチング設備が大きくなり、設備コストが高くなる。従って、工業的には30mm〜250mmが好ましい。
(実施の形態2)
前記実施の形態1において、アルミニウム原箔1を巻き出し部4から走行ローラ3を通過して巻き取り部5で巻き取られる際、図5に示すように走行ローラ3の前後にテンションローラ7を配置して、アルミニウム原箔1に張力を加えることにより、アルミニウム原箔に張力が加わるので、アルミニウム原箔のうねり及びしわを抑制し、吹き付け効率を向上させることができ、生産効率を高めることができる。
図5において、ノズル2は走行ローラ3の垂直中心線よりも川上側に配置し、ノズル2の吹き出し部を真下に向け、かつアルミニウム原箔1が走行ローラ3と接する所に吹き付けるようにしてある。
このような配置にすることにより、ノズル2の角度の調整が不要になり、アルミニウム原箔1の走行速度とテンションローラ7の取り付け位置をコントロールするだけで最適な吹き付け条件を容易に設定することができる。
本実施の形態2における中高圧アルミニウム箔を作製したものは、前記実施の形態1の実施例1と同等の特性を有することができる。
本発明は、ピット密度の向上、ピット分散性の向上に適した中高圧用アルミニウム箔を提供し、中高電圧用の電極箔の静電容量を向上させ、さらに電極箔の機械的強度の高いアルミ電解コンデンサ用電極箔を製造することにより、その電極箔を用いたアルミ電解コンデンサの定格容量・電圧を高めることができ、電子機器の小型化、高信頼性化、高電圧化を図ることができる。
1 アルミニウム原箔
1a 圧延痕
2 ノズル
3 走行ローラ
4 巻き出し部
5 巻き取り部

Claims (7)

  1. 圧延痕を有するアルミニウム原箔を連続的に走行させ、酸化物粒子と水を混合した溶液を前記アルミニウム原箔の走行方向と逆方向からアルミニウム原箔に吹き付けて前記アルミニウム原箔の圧延痕を取り除き、かつ前記アルミニウム原箔の表面に多数の窪みを形成して表面積を拡大するようにしたことを特徴とする中高圧用アルミニウム箔の製造方法。
  2. 前記酸化物粒子は、鋭角を有する略多角状の粒子で、アルミニウム原箔の表面に対して斜めに吹き付けるようにした請求項1に記載の中高圧用アルミニウム箔の製造方法。
  3. 前記窪みは、先端が鋭角を有する多角錐の窪みを多数形成させるようにした請求項2に記載の中高圧用アルミニウム箔の製造方法。
  4. 前記窪みは、原箔表面から深さ15μmまでに形成されるようにした請求項3に記載の中高圧用アルミニウム箔の製造方法。
  5. 前記酸化物粒子と水を混合した溶液の吹き付けは、アルミニウム原箔を走行させる走行ローラと接する所に吹き付けるようにした請求項1または2に記載の中高圧用アルミニウム箔の製造方法。
  6. 前記アルミニウム原箔を走行させる途中に、アルミニウム原箔に張力が加わるようにテンションローラを配設するようにした請求項5に記載の中高圧用アルミニウム箔の製造方法。
  7. 前記酸化物粒子と水を混合した溶液の吹き付けノズルは、走行ローラの垂直中心線よりも走行の川上側に配置して、真下に吹き付けるようにした請求項6に記載の中高圧用アルミニウム箔の製造方法。
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