JP2011157913A - 排気圧力制御弁とそれを構成する軸部材 - Google Patents

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Abstract

【課題】排気圧力制御弁を構成する軸部材、特に、メインバルブを回動自在に支承する軸部材に簡易な構造改良を加えることで、軸部材とこれを支承する軸受けとの間から生じる異音を効果的に低減することのできる、排気圧力制御弁を構成する軸部材と、この軸部材を具備する排気圧力制御弁を提供する。
【解決手段】排気圧力制御弁を構成する軸部材10であって、この軸部材10を構成する軸部材本体Sの表層の一部もしくは全部で、少なくともその摺動領域Saには、窒化チタンからなる第1の被膜1が形成されており、かつ、該第1の被膜1の表層には、窒化チタンが酸化してできた酸化チタンからなる第2の被膜2が形成されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、排気圧力制御弁と、これを構成する軸部材に関するものである。
車両システムを構成する排気圧力制御弁は、たとえばそのメインバルブの開度を絞ることによって排気圧力を上昇させ、排気ガス中の未燃物と余剰酸素との反応を促進させて、排気ガス中の有害物質を低減するものである。また、この未燃物と余剰酸素との反応促進に応じて系内の温度を上昇させ、特に触媒温度を上昇させてその触媒活性化を促進させるものである。
ここで、図4には、従来の排気圧力制御弁の一実施の形態の内部構造を模擬した説明図を示しており、図5には、図4のV−V断面図を示している。
図4で示す従来の排気圧力制御弁PVでは、不図示の車両エンジンからハウジングHのメイン流路MR内に流れ込んでくる排気ガスの流れ(X3方向)を、排気絞り弁であるメインバルブMVによって所望に制御できるようになっており、たとえば図示の状態では、図示する制御位置のメインバルブMVによって画成された流入ポートIPから排気ガスをバイパス流路BRへ流入させ、出口ポートOPを介してメイン流路MRに戻した後に、制御弁PVの下流側のたとえばNOx触媒、三元触媒等に送られることになる(X3方向)。
メインバルブMVは、バキュームポンプVPによる負圧制御によってスライド自在な(X1方向)リンク機構と、メイン流路MR内を横断して該メインバルブMVを回動自在(X2方向)に支承する軸部材S(シャフト)と、により、メイン流路MR内での回動制御が実行され、この回動によって系内の圧力を調圧する。たとえば、図示の状態からメインバルブMVを図の左側へ回動させることで排気ガスのメイン流路MR内の流通を遮断したり、メイン流路MR等の開度を絞る等して系内の圧力を上昇させ、既述するように、排気ガス中の未燃物と余剰酸素との反応を促進させる等の作用が奏される。
また、図示例では、メイン流路MRにウエストゲート流路WRが迂回路として設けてあり、ウエストゲートアクチュエータの作動によってウエストゲートバルブWVの開閉調整や開度調整をおこない、排気ガスの一部もしくは全部をウエストゲート流路WRを介して迂回させる(X4方向)ことを可能とするものである。このウエストゲート流路WRを介した迂回も、系内の調圧制御の一つである。
上記するメインバルブMVやこれを支承する軸部材Sは、エンジン作動時に高温雰囲気下に置かれ、たとえば軸部材Sの温度は450〜500℃程度にも及ぶことが分かっている。そのため、この軸部材S等は耐熱性に優れたステンレス鋼から形成されており、たとえば、軸部材SはSUS310等から形成され、これを支承する図5で示す軸受けJは白銅焼結金属(Cu−Ni−Su−C)等から形成されている。
ところで、この軸受けJと軸部材Sの間の摺動領域SAにおいては、軸受けJと軸部材Sが高温雰囲気下でかつドライ条件下に置かれた状態で該軸部材Sが摺動することから、双方の間の摩擦抵抗も大きく、したがって、特に長時間に亘るメインバルブMVの回動制御の際に、この摺動領域SAから異音が発生し、さらには、長期間使用された場合に軸部材Sと軸受けJ双方の摺動領域SAに対応する箇所が摩耗し、クリアランスが広くなるなどの課題が生じ得る。
そこで、たとえば、軸部材Sの摺動領域SAに対応する箇所に潤滑油、グリース等を適用して上記摩擦抵抗を低減し、異音低減を図ることが方策の一つとして考えられるが、上記するように、系内の温度が450℃以上と極めて高温であることから、一般にその適用可能温度範囲の上限が200℃程度である潤滑油等を適用することはできない。そのため、他の有効な異音低減措置の開発が、当該技術分野における急務の課題となっている。
ここで、従来の公開技術へ目を転じるに、排気圧力制御弁において、上記と同様の解決課題、すなわち異音低減を掲げ、この課題を解決するために発案された排気圧力制御弁に関する技術が特許文献1に開示されている。
この排気圧力制御弁は、メイン流路とバイパス流路を備えるハウジングと、メイン流路を閉じる閉状態とメイン流路を開く開状態とに切換えるスロットルバルブと、バイパス流路を開閉するバイパスバルブと、を具備するものであり、バイパス流路の入口ポートがスロットルバルブ上流側のメイン流路内壁面に設けられ、バイパス流路の出口ポートがスロットルバルブ下流側のメイン流路内壁面に設けられており、出口ポートの位置と、スロットル軸の軸線から弁体の周縁までの距離が最も長くなる弁体の周縁上の点の位置と、を周方向にずらすことで、異音を低減させようとするものである。
しかし、この公開技術によっても、軸部材とこれを支承する軸受けとの間の摩擦抵抗が低減されるものではなく、双方の摺動領域から発生する異音を効果的に低減するまでには至らない。
特開2007−255395号公報
本発明は、上記する問題に鑑みてなされたものであり、排気圧力制御弁を構成する軸部材、特に、メインバルブを回動自在に支承する軸部材に簡易な構造改良を加えることで、軸部材とこれを支承する軸受けとの間から生じる異音を効果的に低減することのできる、排気圧力制御弁を構成する軸部材と、この軸部材を具備する排気圧力制御弁を提供することを目的とする。
前記目的を達成すべく、本発明による排気圧力制御弁を構成する軸部材は、前記軸部材の表層の一部もしくは全部には、窒化チタンからなる第1の被膜が形成されており、かつ、該第1の被膜の表層には、窒化チタンが酸化してできた酸化チタンからなる第2の被膜が形成されているものである。
本発明の軸部材は、その表層の一部もしくは全部で、少なくとも他の部材との間の摺動領域に対応する箇所において、双方の摩擦抵抗を低減させるために潤滑作用を高めること、および、軸部材自身の耐摩耗性を向上させること、の双方を同時に満たすべく、その表層の所望箇所に、窒化チタンからなる第1の被膜を具備し、さらにこの第1の被膜の表層に、この窒化チタンが酸化してできた酸化チタンからなる第2の被膜を具備するものである。
まず、窒化チタン(TiN)は、耐摩耗性や耐蝕性に優れた素材である一方で硬いため、窒化チタンの処理をおこなう前に軸部材を鏡面(0.1Ra以下)に平滑にしておく。
次いで、耐熱性を有するステンレス素材等からなる軸部材の表面の所望箇所に、真空蒸着やスパッタリング等の物理蒸着(PVD)を適用して窒化チタンからなる被膜(第1の被膜)を形成する。
次いで、第1の被膜が所望箇所に形成された軸部材を加熱処理することにより、窒化チタン被膜の表層を酸化させ、酸化チタン(TiO,TiO)からなる被膜(第2の被膜)を形成する。
なお、この第2の被膜を形成するまでもなく、第1の被膜が形成された段階で、軸部材を排気圧力制御弁に装着してその使用に供してもよい。この場合、軸部材の使用環境は高温雰囲気下であるのが望ましく、高温雰囲気下で軸部材が連続使用されることで、窒化チタン被膜の表層が酸化し、自動的に酸化チタン被膜(第2の被膜)が形成されるからである。
また、軸部材の繰り返し使用によってこの第2の被膜が摩耗し、第1の被膜が露出しても、再度、この軸部材が高温雰囲気下で使用されることで第1の被膜の露出面が再度酸化され、自動的に酸化チタン被膜が形成されることになる。
本発明者等によれば、この酸化チタン被膜が極めて優れた潤滑性能(摺動面の凝着を防止する潤滑性能)を有することが分かっており、良好なすべり性能を具備する第2の被膜によって、軸部材とたとえばこれを支承する他の部材との間の摩擦抵抗を低減し、軸部材の摺動の際に生じ得る異音を効果的に低減することが可能となる。
ここで、上記する軸部材の実施の形態として、この軸部材は、前記排気圧力制御弁を構成するメイン流路を横断して、ガスの圧力調整をおこなうメインバルブを回動自在に支承し、かつ、その両端が前記メイン流路の側方に配された軸受けにて支承されるものであり、前記軸部材のうち、少なくとも前記軸受けとの間で摺動する領域に、前記第1の被膜と前記第2の被膜が形成されている形態を挙げることができる。
この形態の軸部材は、排気圧力制御弁の構成部材の中でも排気絞り弁であるメインバルブを回動自在に支承する軸部材であり、この軸部材を支承する軸受けとの間で異音の発生があり、そのレベルによっては運転者に聞こえることがある。
材料コストを勘案し、たとえば、軸部材のうち、軸受けとの間で摺動する領域にのみ第1の被膜と第2の被膜が形成されてもよい。また、この摺動領域以外の領域の耐摩耗性、耐蝕性も摺動領域と同様に向上させたい場合には、軸部材のうち、摺動領域以外の領域は、第1の被膜のみが形成された軸部材としてもよいし、摺動領域と同様に第1の被膜と第2の被膜の双方が形成された軸部材としてもよい。
なお、この実施の形態では、軸部材表面の所望箇所に第1の被膜のみが形成された軸部材を排気圧力制御弁に取り付け、その供用を開始後に、排気ガスの高温雰囲気下で第1の被膜の表層を自然に酸化させて、酸化チタンからなる第2の被膜が形成されるものであってもよい。
上記する本発明の軸部材を排気圧力制御弁に適用することで、排気ガスの高温雰囲気下における長期の繰り返し使用によっても、軸部材の有する耐摩耗性に優れた第1の被膜によってその耐蝕性も担保されていることから、軸部材の耐久期間を飛躍的に長期化させることができる。さらに、少なくとも軸受け等との間で摺動する領域に第2の被膜を具備することで、その潤滑性が高められ、双方の摩擦抵抗が格段に低減されることで、軸部材摺動時に生じ得る異音が効果的に解消される。
以上の説明から理解できるように、本発明の排気圧力制御弁を構成する軸部材とこれを具備する排気圧力制御弁によれば、この軸部材が他の部材と摺動する領域に潤滑性に優れた被膜を有し、さらには、耐摩耗性を有する別途の被膜を有するものであることから、この摺動領域における摺動部材間の摩擦抵抗が低減され、摺動時に生じ得る異音を効果的に解消もしくは低減しながら、しかも摺動部材双方の耐久性を向上させることができる。
本発明の軸部材を具備する排気圧力制御弁の横断面図であって、従来の排気圧力制御弁を説明した図5に対応する図である。 (a)、(b)はともに、軸部材の実施の形態を示した斜視図である。 比較例および実施例それぞれの軸部材の摩耗量を検証した比較実験結果を示すグラフである。 従来の排気圧力制御弁の一実施の形態の内部構造を模擬した説明図である。 図4のV−V断面図である。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。なお、軸部材以外の排気圧力制御弁の構成は、従来技術を説明する図4の形態を適用でき、したがって、図1,2で示す本発明の軸部材を具備する本発明の排気圧力制御弁の一実施の形態となるものである。したがって、軸部材以外の排気圧力制御弁の説明は、以下では省略する。
図1は、本発明の軸部材を具備する排気圧力制御弁の横断面図であって、従来の排気圧力制御弁を説明した図5に対応する図であり、図2a,bはともに、軸部材の実施の形態を示した斜視図である。
図1および、同図における軸部材のみを取り出して示した図2aで示す軸部材10は、耐熱性を有するステンレス素材からなる軸部材本体Sのうち、その両端部であって軸受けJで軸受けされる領域、したがって、軸受けJとの間で静止摩擦、動摩擦が生じる摺動領域Saの表面に、窒化チタンからなる第1の被膜1を具備し、さらに、この第1の被膜1の表層で、該窒化チタンが酸化してできた酸化チタンからなる第2の被膜2を具備するものである。
ここで、第1の被膜1、第2の被膜2の形成方法を概説する。まず、軸部材本体Sの表面の摺動領域Saに、真空蒸着やスパッタリング等の物理蒸着(PVD)を適用して第1の被膜1を形成する。ここで、第1の被膜1の膜厚は、0.5μm以上とするのがよい。膜厚が薄過ぎると、車両寿命終了前に、繰り返し使用で受ける排気ガスの高温雰囲気による酸化と、摺動による摩滅で軸部材の摺動領域において軸部材本体が露出する虞があるからである。
次いで、第1の被膜1が摺動領域Saに形成された軸部材本体Sを、たとえば、大気中(酸素濃度が20%以上)、500〜800℃の高温雰囲気下で1時間程度加熱処理することにより、第1の被膜1の特に表層の窒化チタンが酸化され、酸化チタン(TiOやTiO)からなる第2の被膜2が形成される。
なお、第2の被膜2の形成方法は、この方法以外にも、第1の被膜1を軸部材本体Sの摺動領域Saに形成した段階で排気圧力制御弁の軸受けJに取り付け、排気圧力制御弁を供用した後に、排気ガスの高温雰囲気下で第1の被膜1の表層を酸化する(実質的に、数時間の車両運転にて加熱処理できる)方法であってもよい。
また、軸部材本体Sの表面粗さ:Raは、0.1以下に調整しておくのが好ましい。軸部材本体Sの表面に形成される窒化チタンからなる第1の被膜1の硬度は非常に高いことから(HV2000程度)、表面粗さが粗過ぎると第1の被膜の表面も粗くなり、結果として、軸受けを摩耗させてしまう虞があるからである。
さらに、第1の被膜1の表面にドロップレットが形成された際には、これを除去しておくのが好ましい。残存するドロップレットにより、軸受けを摩耗させてしまう虞があるからである。
軸部材本体Sは、それ自身がステンレス素材からなることで耐熱性を有しており、その摺動領域Saでは、潤滑性に優れた酸化チタンからなる第2の被膜2を具備して、この第2の被膜2が軸受けJ内で摺動することとなる。酸化チタン素材の第2の被膜2が潤滑性に優れていることから、軸受けJと軸部材10の間の摩擦抵抗が従来構造の軸部材を使用する場合に比して格段に低減される。
そして、双方の摩擦抵抗が大幅に低減されることにより、従来構造の軸部材と軸受けの場合に問題となっていた、軸部材が軸受けとの間で摺動する際に生じる異音は大幅に低減され、場合によっては、異音発生が完全に解消されることとなる。
また、軸受けJ、軸部材10双方の摺動領域における摩擦抵抗が低減されることで、この摩擦抵抗に起因する双方の摩耗(もしくは摩耗量)も大幅に低減され、軸受けJおよび軸部材10の耐久性も大幅に向上する。
一方、図2bに、軸部材の他の実施の形態を示している。この軸部材10Aは、軸部材本体Sの全表面に窒化チタンからなる第1の被膜1を形成し、軸部材本体Sの摺動領域Saのみを加熱処理して、当該領域にのみ第2の被膜2を形成したものである。
軸部材本体Sのうち、摺動領域Sa以外の領域には、高い潤滑性能を要しないことから、この摺動領域Sa以外の領域は、第1の被膜1のみを形成してその耐熱性を向上させたものである。尤も、上記するように、排気圧力制御弁の繰り返し使用により、軸部材10Aが排気ガスの高温雰囲気に曝される過程で、露出した第1の被膜1の表面に第2の被膜が形成されることとなる。
[比較例および実施例それぞれの軸部材の摩耗量を検証した比較実験とその結果]
本発明者等は、図1で示す軸部材を有する排気圧力制御弁(実施例)と、図4,5で示す排気圧力制御弁(比較例)をそれぞれ試作し、双方の排気圧力制御弁に500℃の大気ガスを流し、1000回のバルブ開閉試験を実施した。この試験後、実施例、比較例双方の軸部材を装置から取り外して、その摺動領域における摩耗量を測定した。この測定結果を図3に示している。
同図において、比較例の摩耗量を1に正規化し、実施例のそれを比較例に対する比率で示している。同図より、実施例の軸部材の摩耗量は、比較例の軸部材の23%であり、およそ8割程度もの摩耗量低減効果が期待できることが実証されている。
さらに、比較例の場合に生じていた異音は、実施例では全く発生しないことが実証されており、軸部材の摩耗量低減効果と、摺動領域における異音防止効果の双方が得られることが実証された。
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
1…第1の被膜、2…第2の被膜、10,10A…軸部材、S…軸部材本体、Sa…摺動領域

Claims (4)

  1. 排気圧力制御弁を構成する軸部材であって、
    前記軸部材の表層の一部もしくは全部には、窒化チタンからなる第1の被膜が形成されており、かつ、該第1の被膜の表層には、窒化チタンが酸化してできた酸化チタンからなる第2の被膜が形成されている、排気圧力制御弁を構成する軸部材。
  2. 前記軸部材は、前記排気圧力制御弁を構成するメイン流路を横断して、ガスの圧力調整をおこなうメインバルブを回動自在に支承し、かつ、その両端が前記メイン流路の側方に配された軸受けにて支承されるものであり、
    前記軸部材のうち、少なくとも前記軸受けとの間で摺動する領域に、前記第1の被膜と前記第2の被膜が形成されている、請求項1に記載の排気圧力制御弁を構成する軸部材。
  3. 前記第2の被膜は、排気圧力制御弁の供用後に、排気ガスの高温雰囲気下で第1の被膜が酸化して形成されたものである、請求項1または2に記載の排気圧力制御弁を構成する軸部材。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の軸部材を具備する、排気圧力制御弁。
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