JP2011156818A - インクジェット記録用メンテナンス液、インクジェット記録用インクセット及び画像形成方法 - Google Patents

インクジェット記録用メンテナンス液、インクジェット記録用インクセット及び画像形成方法 Download PDF

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Abstract

【課題】pH経時安定性に優れたインクジェット用メンテナンス液、並びに長期に亘って安定した吐出性能を維持し、所望の画像を形成し得るインクジェット記録用インクセット及び画像形成方法を提供する。
【解決手段】水と、エーテル結合を有する水溶性有機溶媒と、塩基性化合物と、酸化防止剤とを含み、25℃におけるpHが6〜9であるインクジェット記録用メンテナンス液。
【選択図】なし

Description

本発明は、インクジェット記録用メンテナンス液並びにそれを用いたインクジェット記録用インクセット及び画像形成方法に関する。
近年の情報技術産業の急速な発展に伴い、種々の情報処理システムが開発されると共に、各々の情報処理システムに適した記録方法及び記録装置も実用化されている。これらの中でも、インクジェット記録方法は、多種の被記録材料に記録可能なこと、ハード(装置)が比較的安価でコンパクトであること、静粛性に優れること等の利点から広く利用されるようになっている。そして、インクジェット記録方法を利用した記録では、いわゆる写真ライクな高画質記録物を得ることも可能になってきている。
一般に染料インクを用いたインクジェット記録方法に比べて顔料インクを用いたインクジェット記録方法は保存性に優れるとされている。
また、顔料インクは、インク中の水分が蒸発して固化すると、固化したまま再溶解しないため、インクジェットヘッドのノズル先端部等で目詰まりの原因となり、インクの不吐出を生じさせていた。また、キャップ、ワイプ部分等でインクが固化すると、ワイピング等が困難となり、メンテナンス系に負担がかかるという問題があった。
ノズルヘッド部等のインクが付着し汚れた部分の拭き取りや洗浄に用いられる液は、洗浄液、メンテナンス液、又はクリーニング液と称されている。
インクジェット記録方法に用いられるメンテナンス液として、水と0.3質量%〜15質量%のアルキレングリコールモノアルキルエーテルを含有するインクジェット用メンテナンス液が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、界面活性剤、塩基性化合物及び水を含有し、pHが9以上であるインクジェット用洗浄液が開示され、顔料インクの洗浄に有効であるとされている(例えば、特許文献2参照)。pHを上昇させるためにトリエタノールアミンや水酸化カリウムを添加し、pH9.2,及び10.1とすることが開示されている。
また、インクジェットヘッド部に形成される異物等の除去に適するとして、アルキルアミンオキシドと水とを含むA液と、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム及びアルキルベンゼンスルホン酸またはその塩からなる群から選ばれた少なくとも1種と水とを含むB液とを組み合わせてなる、2液型インクジェットヘッド洗浄液が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。
特開2005−7703号公報 特開2000−127419号公報 特開2009−155424号公報
しかしながら、上記特許文献1、2に記載のメンテナンス液は、保存中にpHが低下する現象が明らかになった。また、特許文献3に記載の洗浄液は2液を混ぜて使用するため、粘度上昇を招きやすく、pHも不安定になる懸念がある。
pHが低下する要因は種々あるが、例えば、空気中の炭酸ガスを吸収して炭酸によるpH低下、あるいは溶存酸素により分解によるpH低下等がある。特に、グリコールエステルやアルキレングリコールアルキルエーテルを含有するメンテナンス液は溶存酸素により分解して、pHが低下する傾向がある。pH低下はメンテナンス液の洗浄能の低下をもたらすだけでなく、顔料やポリマー粒子を用いたインクジェットインクと併用した場合、該インクを凝集しやすくする。該インクを用いてインクジェット記録後、吐出ヘッドをpHの低下したメンテナンス液で洗浄すると、インクの凝集を引き起こし洗浄性が顕著に悪化する。
本発明は上記に鑑みなされたものであり、pH経時安定性に優れたインクジェット記録用メンテナンス液、並びに長期に亘って安定した吐出性能を維持し、所望の画像を形成し得るインクジェット記録用インクセット及び画像形成方法を提供することを課題とする。
前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 水と、エーテル結合を有する水溶性有機溶媒と、塩基性化合物と、酸化防止剤とを含み、25℃におけるpHが6〜9であるインクジェット記録用メンテナンス液。
<2> 前記水溶性有機溶媒が下記一般式(1)で表される化合物から選ばれる<1>に記載のインクジェット記録用メンテナンス液。
(式中、Rはエチレン基またはプロピレン基を表し、R、Rはそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表し、xは1〜4の整数を表す。)
<3> 前記酸化防止剤の含有量が前記水溶性有機溶媒の全質量に対して、0.008質量%以上である<1>又は<2>に記載のインクジェット記録用メンテナンス液。
<4> 酸化防止剤がチオエーテル基を有する化合物、オルト位の少なくとも一つが炭素原子数3以上のアルキル基で置換されているフェノール構造を有する化合物、及び還元能を有する無機酸の塩又はエステルの中から選択される少なくとも一種を含有する<1>〜<3>のいずれか1項に記載のインクジェット記録用メンテナンス液。
<5> pHが7〜10であるインクジェット記録用インク組成物と、<1>〜<4>のいずれか1項に記載のインクジェット記録用メンテナンス液と、を有するインクジェット記録用インクセット。
<6> 前記インクジェット記録用インク組成物が顔料を含む顔料インクである<5>に記載のインクジェット記録用インクセット。
<7> 前記顔料は、その表面の少なくとも一部がアニオン性ポリマー分散剤で被覆された水分散性顔料である<6>に記載のインクジェット記録用インクセット。
<8> 前記インクジェット記録用インク組成物がポリマー粒子の少なくとも1種を更に有する<5>〜<7>のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インクセット。
<9> 前記インクジェット記録用インク組成物中の成分を凝集させる凝集剤を含む処理液を更に有する<5>〜<8>のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インクセット。
<10> <5>〜<9>のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インクセットを用いて、前記インクジェット記録用インク組成物をインクジェットヘッドから吐出して記録媒体に付与するインク付与工程と、インクジェット記録用メンテナンス液により前記インクジェットヘッドに付着したインクジェット記録用インク組成物を除去するインク除去工程と、を有する画像形成方法。
<11> 前記インクジェット記録用インク組成物中の成分を凝集させる凝集剤を含む凝集液を前記記録媒体に付与する凝集液付与工程を有する<10>に記載の画像形成方法。
本発明によれば、pH経時安定性に優れたインクジェット記録用メンテナンス液、並びに長期に亘って安定した吐出性能を維持し、所望の画像を形成し得るインクジェット記録用インクセット及び画像形成方法を提供することができる。
1.インクジェット記録用メンテナンス液
本発明のインクジェット記録用メンテナンス液(以下、単に「メンテナンス液」ともいう。)は、水と、エーテル結合を有する水溶性有機溶媒(以下、「特定の水溶性有機溶媒」、単に、「水溶性有機溶媒」ともいう。)と、塩基性化合物と、酸化防止剤とを含み、25℃におけるpHが6〜9として構成されたものである。
メンテナンス液のpHが9を超えると、吐出ヘッド金属あるいは撥水処理膜に損傷を与える。また、pHが6を下まわると、洗浄力が低下する。特に凝集系顔料インクを用いた場合に、インクの凝集を促進するために著しく洗浄性が悪化するため好ましくない。
本発明のメンテナンス液は、上記構成とすることにより、特に、前記水溶性有機溶媒と酸化防止剤とを用いて、塩基性化合物でpH6〜9とすることにより、pHの安定性が顕著に向上する効果を有するものである。
塩基性化合物の添加量を多くすることでpHが上昇するので、pH6〜9に保つためには塩基性化合物の添加量が低く抑えることが好ましい。
従来、アルキレングリコール類やアルキレングリコールエーテル類は、インク洗浄性の点で優れているが、保存中にpHが低下する問題を有していた。原因は明確ではないが、アルキレングリコール類やアルキレングリコールエーテル類は、酸化により過酸化物を生じ、更に後続反応により酸を発生するためと推測される。
この点については、例えば特開2009−190232号公報に記載のようなポリマー微粒子、色材及び水を含有するインクジェットインクと該インクと接触することで凝集体を形成し得る反応液とを含むインクセットを用いた記録形態では、画質や定着性向上の点からインクを高速凝集させようとするため、液物性を低pH側に変化させる。pHの変化は凝集に大きく影響し、pH変化で凝集させて画像形成するインクジェットインクでは、メンテナンス液のpH低下が洗浄中にインクの凝集を招来し、洗浄性を悪化させる一因となる。
本発明においては、上記状況、即ち、アルキレングリコール類やアルキレングリコールエーテル類等のエーテル結合を有する水溶性有機溶媒を用いる際に発生する問題に対して、塩基性化合物と酸化防止剤とを併用し、かつ、メンテナンス液のpHを6〜9とすることにより、pH安定効果に特に優れるメンテナンス液が得られる。
本発明のメンテナンス液の25℃におけるpH、即ち、メンテナンス液の調液直後のpHは、pHの経時安定性の観点から、好ましくはpH6.5〜pH8.5、より好ましくはpH7.0〜pH8.3である。pHは塩基性化合物の種類や添加量により調節できる。
メンテナンス液の組成について詳細に説明する。
(塩基性化合物)
本発明のメンテナンス液に用いられる塩基性化合物は、塩基性を示すものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができ、例えば、無機アルカリ化合物や有機アルカリ化合物等が挙げられる。
前記無機アルカリ化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、メタケイ酸ナトリウム等のケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。これらの無機アルカリ化合物は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記有機アルカリ化合物としては、例えば、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、ブチルアミン、フェニルヒドラジン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、イミダゾール、N−メチルモルホリン、ヒドラジン、トリスヒドロキシアミノメタン、トリスヒドロキシメチルアミノメタン等が挙げられる。これらの有機アルカリ化合物は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記塩基性化合物としては、メンテナンス液が接するノズルヘッド部等を痛めない、取り扱い性、pH安定性の向上等の観点から、弱酸の塩を用いるのが好ましい。該弱酸の塩としては、具体的には、炭酸塩、リン酸塩が好適に用いられる。
前記炭酸塩およびリン酸塩としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素カリウム、リン酸二水素カリウム、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、及び、これらの水和塩が挙げられる。これらは単独で使用しても良いが、例えば、炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウムと炭酸水素カリウム、リン酸ナトリウムとリン酸水素ナトリウム、リン酸カリウムとリン酸水素カリウム、のように、組合せてもよい。また、廃液処理の観点からは炭酸塩が最も好ましい。
本発明の炭酸塩及びリン酸塩は、原料として添加する塩の形態で記載したが、本発明のメンテナンス液中では、これらの塩の一部が解離した状態で存在するのは言うまでも無い。
前記塩基性化合物の前記メンテナンス液における含有量は、特に、限定されないが、上記メンテナンス液のpHを調整するため、0.01〜50質量%が好ましく、0.01〜20質量%がより好ましく、0.05〜15質量%が更に好ましく、0.1〜10質量%が特に好ましい。前記含有量が、0.01質量%以上50質量%とすると、メンテナンス性が充分発揮される傾向となる点で好ましい。
(酸化防止剤)
本発明のメンテナンス液に含まれる酸化防止剤としては、含硫黄化合物(例えば、メルカプト基を含有する化合物、チオエーテル基を含有する化合物)、還元能を有する無機酸の塩又はエステル(例えば、亜リン酸エステル構造を有する化合物、チオ硫酸等の塩)、ヒンダードアミン系化合物、オルト位の少なくとも一つが炭素原子数3以上のアルキル基で置換されているフェノール構造を有する化合物(例えば、ヒンダードフェノール系化合物)、ハイドロキノン構造を有する化合物、アスコルビン酸、クロマン構造を有する化合物、クマラン構造を有する化合物、スピロインダン構造を有する化合物などがある。また、特開昭61−159644号記載の化合物、ヒドロキサム酸〔特開平8−76311のA−I〜A−Vなど〕、エポキシ基を有する化合物も有効である。
好ましくは、メルカプト基を有する化合物、チオエーテル基を有する化合物、還元能を有する無機酸の塩、ヒンダードアミン系化合物、及びオルト位の少なくとも一つが炭素原子数3以上のアルキル基で置換されているフェノール構造を有する化合物の中から選択される少なくとも一種であり、より好ましくは、チオエーテル基を有する化合物、還元剤として働く無機エステル、及びオルト位の少なくとも一つが炭素原子数3以上のアルキル基で置換されているフェノール構造を有する化合物の中から選択される少なくとも一種である。
メルカプト基含有化合物としては、メルカプトイミダゾール系化合物などを挙げることができ、具体的には、例えば、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトメチルベンズイミダゾール等が挙げられる。
チオエーテル基含有化合物としては、例えば、ジラウリル3,3’−チオ−ジプロピオン酸エステル、ジステアリル3,3’−チオ−ジプロピオン酸エステル、ペンタエリスリチルテトラキス−〔3−(3、5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート〕、チオジプロピオン酸、フェニルチオ酢酸、等が挙げられる。
還元能を有する無機酸の塩又は無機酸エステルとしては、チオ硫酸、スルフィン酸、亜硫酸、亜リン酸等の塩又は無機酸エステルが挙げられる。
還元能を有する無機酸の塩としては、具体的には、チオ硫酸アンモニウム、チオ硫酸カリウム、チオ硫酸カルシウム、チオ硫酸ナトリウム、p−トルエンスルフィン酸ナトリウム、p−クロロベンゼンスルフィン酸ナトリウム、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、亜硫酸アンモニウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸カリウムが挙げられ、好ましくは、チオ硫酸ナトリウムである。
また、還元能を有する無機酸のエステルとしては、亜リン酸エステル構造を有する化合物等が挙げられる。亜リン酸エステル構造を有する化合物とは、亜リン酸の水素が炭化水素基で置換された化合物のことである。このような亜リン酸エステル類としては、例えば、亜リン酸トリフェニル、亜リン酸ジフェニルイソデシル、亜リン酸フェニルイソデシル、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリ−n−プロピル、亜リン酸トリメチル、亜リン酸ジラウリル、亜リン酸ジステアリル、亜リン酸ジブチル等が挙げられる。
ヒンダードアミン系化合物としては、2,6位をテトラアルキル置換したピペリジンの基本骨格構造(ヒンダートアミン構造)を持つ化合物が好ましく、例えば、セバシン酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)、セバシン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、ポリ[(6−モルフォリノ−S−トリアジン−2,4−ジイル)〔2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル〕イミノ]−ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ](商品名 CYASORB UV−3346 サンケミカル株式会社製)が挙げられる。その他、ヒンダードアミン構造を有するオリゴマータイプおよびポリマータイプの化合物等が挙げられる。
オルト位の少なくとも一つが炭素原子数3以上のアルキル基で置換されているフェノール構造(ヒンダートフェノール構造)を有する化合物とは、ヒンダートフェノール構造を有するヒンダートフェノール系化合物をいい、特に前記アルキル基としてt-ブチル基で置換された化合物が好ましく、フェノールの2位および6位がともにt-ブチル基置換された化合物が好ましい。例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)、テトラキス−[メチレン−3−(3,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、4,4’−ブチリデンビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、2,6−ブチル−4−ノニルフェノールなどが挙げられる。
酸化防止剤としては、一般的に、シーエムシー社出版の「高分子添加剤の市場動向」(1993年8月31日)102頁から119頁に記載されている。
上記の酸化防止剤の中でも、更に、pH経時安定性向上の点で、チオエーテル基を含有する化合物、亜リン酸エステル構造を有する化合物、ヒンダードフェノール系化合物が好ましい。
前記酸化防止剤の前記メンテナンス液における含有量は、pH経時安定性向上の点で、含有される後述の特定の水溶性有機溶媒の全質量に対して0.008質量%以上が好ましく、0.008〜5質量%がより好ましく、0.008〜1.5質量%が更に好ましく、0.01〜1.2質量%が特に好ましく、0.01〜1質量%が最も好ましい。前記含有量が、0.008質量%以上であると、pH経時安定性が向上し易く、1.5質量%以下とすることで酸化防止剤の結晶化を防止し易い点で好ましい。
(水溶性有機溶媒)
本発明のメンテナンス液はエーテル結合を有する水溶性有機溶媒(特定の水溶性有機溶媒)の少なくとも1つを含有する。本発明における水溶性とは25℃で水に対する溶解度が1質量%以上を意味する。
特定の水溶性有機溶媒としては、メンテナンス液用の水溶性有機溶媒、或いは水性インク用水溶性有機溶媒として従来知られている中から適宜選択して用いることができる。
例えば、特定の水溶性有機溶媒として、多価アルコール類、エーテル類等が挙げられる。多価アルコールの具体例として、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ジプロピレングリコールが挙げられる。エーテル類の具体例としては、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、エチルメチルエーテル、ジヘキシルエーテル、フラン等のアルキルエーテル類、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールt−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル等のグリコールエーテル類、グリセリンのエチレンオキシド又はプロピレンオキシド付加物などのグリセリンエーテルが挙げられる。
これらの特定の水溶性有機溶媒は、1種類を単独で用いても、複数を併用して用いても良い。
本発明に用いられる特定の水溶性有機溶媒は、好ましくは、下記一般式(1)で表される水溶性有機溶媒である。
式中、Rはエチレン基又はプロピレン基を表し、R、Rはそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表し、xは1〜4の整数を表す。xが1のとき、R及びRの少なくとも1方はアルキル基を表す。
炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基である。
上記の中でも、SP値27.5以下の水溶性有機溶媒を特定の水溶性有機溶媒中50質量%以上含むことが好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上が更に好ましく、80質量%以上が特に好ましい。
SP値27.5以下の水溶性有機溶媒を特定の水溶性有機溶媒中50質量%以上含有することにより、メンテナンス液におけるインクジェットヘッドへのインク固着物の溶解性が向上し、その結果、洗浄性が向上する点で好ましい。
本発明でいう前記溶解度パラメーター(SP値)とは、分子凝集エネルギーの平方根で表される値で、R.F.Fedors,Polymer Engineering Science,14,p.147〜154(1974)に記載の方法で計算することができ、本発明においてはこの数値を採用する。
本発明における特定の水溶性有機溶媒として好ましい化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれに限定されるものではない。カッコ内に略称とそのSP値である。
・ジエチレングリコールモノエチルエーテル(DEGmEE、22.4)
・ジエチレングリコールモノブチルエーテル(DEGmBE、21.5)
・トリエチレングリコールモノブチルエーテル(TEGmBE、21.1)
・ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(DPGmME、21.3)
・トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(TPGmME、20.4)
・ジプロピレングリコール(DPG、27.2)

・nCO(AO)−H(AO=EO又はPO;比率はEO:PO=1:1)(20.1)
・nCO(AO)10−H(AO=EO又はPO;比率はEO:PO=1:1)(18.8)
・HO(A’O)40−H(A’O=EO又はPO;比率はEO:PO=1:3)(18.7)
・HO(A’’O)55−H(A’’O=EO又はPO;比率はEO:PO=5:6)(18.8)
・HO(PO)−H(24.7)
・HO(PO)−H(21.2)
EO、POはエチレンオキシ基、プロピレンオキシ基を表す。
これらは1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
本発明において、SP値27.5以下の水溶性有機溶媒を特定の水溶性有機溶媒中50質量%以上含むことが好ましいが、インク固着物の溶解性、膨潤性の向上の観点から、SP値24以下の水溶性有機溶媒であることがより好ましく、SP値22以下の水溶性有機溶媒であることが更に好ましい。
特定の水溶性有機溶媒のメンテナンス液中における含有量としては、メンテナンス液の全質量に対して、1質量%〜50質量%の範囲が好ましい。水溶性有機溶媒の含有量は、1質量%以上であると、インク組成物の洗浄性が良好であり、また50質量%以下にすることにより、インク組成物の洗浄性を高く維持することができる。
また、特定の水溶性有機溶媒の全質量中50質量%以上がポリアルキレンオキシアルキルエーテルであることがより好ましい態様である。
前記ポリアルキレンオキシアルキルエーテルを特定の水溶性有機溶媒の全質量中50質量%以上含有することにより、インクジェットヘッドにおけるインク固着物のメンテナンス液への溶解性が向上し、洗浄性が向上する。
上記特定の水溶性有機溶媒全質量中におけるポリアルキレンオキシアルキルエーテルの含有量は、上記の中でも、インク固着物の溶解性向上の観点から、60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましい。なお、上限は特に制限されない。
ポリアルキレンオキシアルキルエーテルとしては、好ましくは、アルキレン部位の炭素数が1〜4であり、かつ、アルキル部位の炭素数が1〜4である。
ポリアルキレンオキシアルキルエーテルの具体例としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングルコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルなどが挙げられる。
これらの水溶性有機溶媒は、1種類を単独で用いても、複数を併用して用いてもよい。
本発明のメンテナンス液は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記水溶性有機溶媒とは異なるその他の水溶性有機溶媒を含有することができ、例えば、水溶性有機溶媒として、アルコール類等が挙げられる。アルコールの具体例として、エタノール、ブタノール、イソプロパノールなどの直鎖又は分岐アルキルアルコール類がある。
その他、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルスルホキシド、ソルビット、ソルビタン、アセチン、ジアセチン、トリアセチン、スルホラン等も水溶性有機溶媒として用いることが出来る。
(界面活性剤)
本発明におけるメンテナンス液は、表面張力調整剤として界面活性剤の少なくとも1種を含むことができる。
界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩、アルキルカルボン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等のアニオン系界面活性剤や、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンジオール誘導体、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー等のノニオン系界面活性剤が好ましい。
中でも、インクとの凝集反応を起こさない等の点で、アセチレンジオール誘導体やアルキルカルボン酸ナトリウムやアルキルスルホン酸ナトリウムがより好ましい。
界面活性剤のメンテナンス液中における含有量としては、メンテナンス液の全質量に対して、0.5質量%〜10質量%が好ましく、より好ましくは1質量%〜3質量%である。界面活性剤の含有量が前記範囲内であると、洗浄性の点で有利である。
(水)
メンテナンス液は、水を含有するものであるが、水の量には特に制限はない。中でも、水の好ましい含有量は、メンテナンス液全質量に対して50質量%〜99質量%である。
(その他添加剤)
メンテナンス液は、上記の成分に加え、必要に応じて、例えば、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤(ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、ベタイン系界面活性剤等)、消泡剤、粘度調整剤などのその他の添加剤を含むことができる。
上記の中でも、好ましいメンテナンス液の成分としては、pH経時安定性の向上の点から、特定の水溶性有機溶媒としてはアルキルエーテル類、グリコールエーテル類又はグリセリンエーテル類であり、塩基性化合物としては無機アルカリ化合物(例えば、炭酸塩、リン酸塩等)又は有機アルカリ化合物であり、酸化防止剤としてはチオエーテル基を有する化合物、ヒンダートフェノール系化合物、又は亜リン酸エステル構造を有する化合物である組合せが好ましく、特定の水溶性有機溶媒としてはグリコールエーテル類又はグリセリンエーテル類であり、塩基性化合物としては炭酸塩(例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等)又はリン酸塩であり、酸化防止剤としてはチオエーテル基を有する化合物、ヒンダートフェノール系化合物である組合せがより好ましく、特定の水溶性有機溶媒としてはグリコールエーテル類であり、塩基性化合物としては炭酸塩(例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム)であり、酸化防止剤としてはヒンダートフェノール系化合物である組合せが特に好ましい。
(メンテナンス液の物性等)
メンテナンス液は、本発明におけるインク組成物と混合した際に凝集を起こさない液であることが好ましい。凝集を起こしてしまうと、インク組成物中の顔料等の成分が更にインクジェットヘッド等に固着して本発明の効果を低減させてしまうためである。
メンテナンス液の20℃での粘度は、作業性の観点から、1mPa・s以上1000mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは1mPa・s以上500mPa・s未満、更に好ましくは2mPa・s以上100mPa・s未満である。
本発明における粘度の測定は、凝集液の項に記載の測定方法と同様である。
本発明のメンテナンス液は、顔料を含まない無色の液体であることが好ましい。
また、メンテナンス液における固形分(25℃)の含量としては、特に限定されるものではないが、洗浄後の固形物残留を防ぐ観点から、5質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましい。
また、本発明においては、乾燥防止、湿潤性向上、浸透性向上の観点で、本発明の効果を損なわない範囲で、他の溶剤を併用しても良い。
併用できる水溶性有機溶媒は、先に水溶性有機溶媒として記載した中から適宜選択して用いることが出来る。
本発明の特定の水溶性有機溶媒の総含有量としては、全メンテナンス液中、インク固着物の除去性向上の観点から、5質量%以上が好ましく、5質量%以上90質量%以下がより好ましく、10質量%以上80質量%以下が更に好ましい。
また、メンテナンス液における固形分(25℃)の含量としては、特に限定されるものではないが、洗浄後の固形物残留を防ぐ観点から、5質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましい。
2.インクジェット記録用インクセット
本発明のインクジェット記録用インクセットは、前記インクジェット記録用メンテナンス液とpH7〜10のインク組成物を含有して構成される。
2−1.インク組成物
本発明におけるインク組成物は、pH7〜10の水性インク組成物であり、好ましくは少なくとも顔料を含有する顔料インクであり、更に好ましくはポリマー粒子とを含有する構成である。
以下、インク組成物に含まれる各成分について説明する。
(顔料)
本発明におけるインク組成物は、顔料の少なくとも1種を含む。
本発明において用いられる顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、有機顔料、無機顔料のいずれであってもよい。
前記有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、多環式顔料、染料キレート、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、などが挙げられる。これらの中でも、アゾ顔料、多環式顔料などがより好ましい。前記アゾ顔料としては、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、などが挙げられる。前記多環式顔料としては、例えば、フタロシアニン顔料、ぺリレン顔料、ぺリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料、などが挙げられる。前記染料キレートとしては、例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート、などが挙げられる。
前記無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエロー、カーボンブラック、などが挙げられる。これらの中でも、カーボンブラックが特に好ましい。なお、前記カーボンブラックとしては、例えば、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたものが挙げられる。
上記の顔料は、単独種で使用してもよく、また上記した各群内もしくは各群間より複数種選択してこれらを組み合わせて使用してもよい。
本発明における顔料は、液安定性及び吐出安定性の観点から、下記(1)〜(4)から選ばれる少なくとも1種の顔料水分散物で用いるのが好ましい。
(1)カプセル化顔料、即ち、水不溶性樹脂粒子に顔料を含有させてなるポリマーエマルジョンであり、より詳しくは、親水性水不溶性の樹脂で顔料を被覆し顔料表面の樹脂層にて親水化することで顔料を水に分散したものである。
(2)自己分散型顔料、即ち、表面に少なくとも1種の親水基を有し、分散剤の不存在下で水分散性及び水溶性の少なくともいずれかを示す顔料、より詳しくは、主にカーボンブラックなどを表面酸化処理して親水化し、顔料単体が水に分散するようにしたものである。
(3)樹脂分散顔料、即ち、重量平均分子量50,000以下の水溶性高分子化合物により分散された顔料。
(4)界面活性剤分散顔料、即ち、界面活性剤により分散された顔料。
好ましい例として、(1)カプセル化顔料と(2)自己分散型顔料と(3)樹脂分散顔料を挙げることができ、特に好ましい例として、(1)カプセル化顔料、(3)樹脂分散顔料を挙げることができる。
<顔料と顔料分散剤の比率>
顔料と顔料分散剤の比率は、質量比(顔料:顔料分散剤)で100:25〜100:140が好ましく、さらに好ましくは100:25〜100:50である。顔料分散剤が100:25以上の場合は分散安定性と耐擦性が良化する傾向となる。顔料分散剤が100:140以下の場合も、分散安定性が良化する傾向となる。
インク組成物中における顔料の含有量は、発色性、粒状性、インク安定性、吐出信頼性の観点から、0.1質量%以上15質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上12質量%以下であることがより好ましく、1質量%以上10質量%以下が特に好ましい。
<カプセル化顔料>
カプセル化顔料について詳述する。
カプセル化顔料の樹脂は、限定されるものではないが、水と水溶性有機溶媒の混合溶媒中で自己分散能または溶解能を有し、かつアニオン性基(酸性)を有する親水性且つ水不溶性ポリマーであることが好ましい。該カプセル化顔料は該アニオン性ポリマーの分散剤で被覆された水分散性顔料という。この樹脂は、通常、数平均分子量が1,000〜100,000範囲程度のものが好ましく、3,000〜50,000範囲程度のものが特に好ましい。また、この樹脂は有機溶剤に溶解して溶液となるものが好ましい。樹脂の数平均分子量がこの範囲であることにより、顔料における被覆膜として、またはインク組成物における塗膜としての機能を十分に発揮することができる。樹脂は、アルカリ金属や有機アミンの塩の形で使用されることが好ましい。
カプセル化顔料の樹脂の具体例としては、熱可塑性、熱硬化性あるいは変性のアクリル系、エポキシ系、ポリウレタン系、ポリエーテル系、ポリアミド系、不飽和ポリエステル系、フェノール系、シリコーン系、フッ素系高分子化合物、塩化ビニル、酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のポリビニル系、アルキド樹脂、フタル酸樹脂等のポリエステル系、メラミン樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、アミノアルキド共縮合樹脂、ユリア樹脂、尿素樹脂等のアミノ系の材料、およびそれらの共重合体または混合物などのアニオン性基を有する材料などが挙げられる。
上記樹脂の中、アニオン性アクリル系樹脂は、例えば、アニオン性基を有するアクリルモノマー(以下、アニオン性基含有アクリルモノマーという)と、更に必要に応じてこれらのモノマーと共重合し得る他のモノマーを溶媒中で重合して得られる。アニオン性基含有アクリルモノマーとしては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、およびホスホン基からなる群から選ばれる1個以上のアニオン性基を有するアクリルモノマーが挙げられ、これらの中でもカルボキシル基を有するアクリルモノマーが特に好ましい。
カルボキシキル基を有するアクリルモノマーの具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、エタアクリル酸、プロピルアクリル酸、イソプロピルアクリル酸、イタコン酸、およびフマル酸等が挙げられる。これらの中でもアクリル酸およびメタクリル酸を好ましいアクリルモノマーとして挙げることができる。
マイクロカプセル化顔料は、上記した成分を用いて、従来の物理的、化学的方法によって製造することができる。本発明の好ましい態様によれば、特開平9−151342号、特開平10−140065号、特開平11−209672号、特開平11−172180号、特開平10−25440号、または特開平11−43636号等の各公報に開示されている方法によって製造することができる。
具体的には、特開平9−151342号及び特開平10−140065号の各公報に記載の転相乳化法と酸析法等が挙げられる。
転相乳化法は、基本的には、自己分散能又は溶解能を有する樹脂と顔料との混合溶融物を水に分散させる自己分散(転相乳化)方法である。また、この混合溶融物には、上記の硬化剤又は高分子化合物を含んでなるものであってもよい。ここで、混合溶融物とは、溶解せず混合した状態、溶解して混合した状態、又はこれら両者の状態のいずれの状態を含むものをいう。「転相法」のより具体的な製造方法は、特開平10−140065号に記載の方法が挙げられる。
上記の転相乳化法及び酸析法のより具体的な方法については、特開平9−151342号、特開平10−140065号の各公報に記載を参照することができる。
<水不溶性樹脂>
本発明において、顔料分散剤として用いられる水不溶性樹脂は、親水性構造単位(a)と疎水性構造単位(b)とを有する親水性且つ水不溶性の樹脂であることが好ましい。この水不溶性樹脂は、必要に応じて、親水性構造単位(a)及び疎水性構造単位(b)に包含されない他の構造単位が更に含まれてもよい。
−親水性構造単位(a)−
親水性構造単位(a)は、親水性基含有のモノマーに由来するものであれば、特に制限はなく、1種の親水性基含有モノマーに由来するものでも、2種以上の親水性基含有モノマーに由来するものでもよい。前記親水性基としては、特に制限はなく、解離性基であっても、非イオン性の親水性基であってもよい。
本発明における水不溶性樹脂は、解離性基を有するモノマー(解離性基含有モノマー)及び/又は非イオン性の親水性基を有するモノマーを用いて解離性基及び/又は非イオン性の親水性基を導入することができる。
前記解離性基は、乳化又は分散状態の安定性の観点から好ましい。解離性基としては、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基などが挙げられ、中でも、インク組成物を構成した場合の分散安定性の観点から、カルボキシル基が好ましい。
前記親水性基含有モノマーとしては、解離性基含有モノマーが好ましく、解離性基とエチレン性不飽和結合とを有する解離性基含有モノマーがより好ましい。解離性基含有モノマーとしては、例えば、不飽和カルボン酸モノマー、不飽和スルホン酸モノマー、不飽和リン酸モノマー等が挙げられる。
前記不飽和カルボン酸モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、2−メタクリロイルオキシメチルコハク酸等が挙げられる。前記不飽和スルホン酸モノマーとしては、例えば、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−スルホプロピル(メタ)アクリレート、ビス−(3−スルホプロピル)−イタコン酸エステル等が挙げられる。前記不飽和リン酸モノマーとしては、例えば、ビニルホスホン酸、ビニルホスフェート、ビス(メタクリロキシエチル)ホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジブチル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート等が挙げられる。
解離性基含有モノマーの中では、分散安定性、吐出安定性の観点から、不飽和カルボン酸モノマーが好ましく、アクリル酸及びメタクリル酸がより好ましい。
即ち、前記親水性構造単位(a)は、(メタ)アクリル酸に由来する構造単位を含むことが好ましい。
このほかの親水性構造単位(a)としては、非イオン性の親水性基を有するモノマーに由来の構造単位を用いることができる。非イオン性の親水性基を有する構造単位を形成するモノマーとしては、エチレン性不飽和結合等の重合体を形成しうる官能基と非イオン性の親水性の官能基とを有していれば、特に制限はなく、公知のモノマーから選択することができる。入手性、取扱い性、汎用性の観点から、ビニルモノマー類が好ましい。
親水性構造単位(a)としては、親水性の官能基を有する(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類、及びビニルエステル類等の、親水性の官能基を有するビニルモノマー類を挙げることができる。
ここで、「親水性の官能基」としては、水酸基、アミノ基、(窒素原子が無置換の)アミド基、及び後述のポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のアルキレンオキシド、等が挙げられる。
親水性構造単位(a)の具体例としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、アミノエチルアクリレート、アミノプロピルアクリレート、アルキレンオキシド重合体を含有する(メタ)アクリレートを好適に挙げることができる。
非イオン性の親水性基を有する親水性構造単位は、対応するモノマーの重合により形成することができるが、重合後のポリマー鎖に親水性の官能基を導入してもよい。
非イオン性の親水性基を有する親水性構造単位は、アルキレンオキシド構造を有する親水性の構造単位がより好ましい。アルキレンオキシド構造のアルキレン部位としては、親水性の観点から、炭素数1〜6のアルキレン部位が好ましく、炭素数2〜6のアルキレン部位がより好ましく、炭素数2〜4のアルキレン部位が特に好ましい。また、アルキレンオキシド構造の重合度としては、1〜120が好ましく、1〜60がより好ましく、1〜30が特に好ましい。
また、非イオン性の親水性基を有する親水性構造単位は、水酸基を含む親水性の構造単位であることも好ましい態様である。構造単位中の水酸基数としては、特に制限はなく、水不溶性樹脂の親水性、重合時の溶媒や他のモノマーとの相溶性の観点から、1〜4が好ましく、1〜3がより好ましく、1〜2が特に好ましい。
上記において、例えば、親水性構造単位の含有割合は、後述する疎水性構造単位(b)の割合で異なる。例えば、水不溶性樹脂がアクリル酸及び/又はメタクリル酸〔親水性構造単位(a)〕と後述の疎水性構造単位(b)とのみから構成される場合、アクリル酸及び/又はメタクリル酸の含有割合は、「100−(疎水性構造単位の質量%)」で求められる。
親水性構造単位(a)は、一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
親水性構造単位(a)の含有比率としては、水不溶性樹脂の全質量に対して、0質量%を超え15質量%以下の範囲が好ましく、2質量%以上15質量%以下の範囲がより好ましく、5質量%以上15質量%以下の範囲が更に好ましく、8質量%以上12質量%以下の範囲が特に好ましい。
−疎水性構造単位(b)−
疎水性構造単位(b)は、主鎖を形成する原子に連結基を介して結合された芳香環を有する構造単位を含むことが好ましい。
このような芳香環を持つ構造単位では、芳香環が、連結基を介して水不溶性樹脂の主鎖をなす原子と結合され、水不溶性樹脂の主鎖をなす原子に直接結合しない構造を有するので、疎水性の芳香環と親水性構造単位との間に適切な距離が維持されるため、水不溶性樹脂と顔料との間で相互作用が生じやすく、強固に吸着して分散性がさらに向上する。
「主鎖を形成する原子に連結基を介して結合された芳香環を有する構造単位」の中でも、顔料の微粒子化を容易に行なえる点で、下記構造式(2)で表される構造単位が好ましい。

前記構造式(2)において、Rは、水素原子、メチル基、又はハロゲン原子を表す。
また、Lは、−COO−、−OCO−、−CONR−、−O−、又は置換もしくは無置換のフェニレン基を表し、Rは水素原子、炭素数1〜10のアルキル基を表す。なお、Lで表される基中の*印は、主鎖に連結する結合手を表す。フェニレン基が置換されている場合の置換基としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、水酸基等、シアノ基等が挙げられる。
は、単結合、又は炭素数1〜30の2価の連結基を表し、2価の連結基である場合は、好ましくは炭素数1〜25の連結基であり、より好ましくは炭素数1〜20の連結基であり、更に好ましくは炭素数1〜15の連結基である。中でも、特に好ましくは、炭素数1〜25(より好ましくは1〜10)のアルキレンオキシ基、イミノ基(−NH−)、スルファモイル基、及び、炭素数1〜20(より好ましくは1〜15)のアルキレン基やエチレンオキシド基[−(CHCHO)−,n=1〜6]などの、アルキレン基を含む2価の連結基等、並びにこれらの2種以上を組み合わせた基などである。
前記構造式(2)において、Arは、芳香環から誘導される1価の基を表す。
Arで表される芳香環としては、特に限定されないが、ベンゼン環、炭素数8以上の縮環型芳香環、芳香環が縮環したヘテロ環、又は2個以上連結したベンゼン環が挙げられる。炭素数8以上の縮環型芳香環、及び芳香環が縮環したヘテロ環の詳細については既述の通りである。
前記構造式(2)で表される構造単位のうち、Rが水素原子又はメチル基であり、L−COO−であり、Lがアルキレンオキシ基及び/又はアルキレン基を含む炭素数1〜25の2価の連結基である構造単位の組合せが好ましく、より好ましくは、Rが水素原子又はメチル基であり、L−COO−であり、L−(CH−CH−O)−〔nは平均の繰り返し数を表し、n=1〜6である。〕である場合の組合せが好ましい。
前記「炭素数8以上の縮環型芳香環」は、少なくとも2以上のベンゼン環が縮環した芳香環、少なくとも1種の芳香環と該芳香環に縮環して脂環式炭化水素で環が構成された炭素数8以上の芳香族化合物である。具体的な例としては、ナフタレン、アントラセン、フルオレン、フェナントレン、アセナフテンなどが挙げられる。
前記「芳香環が縮環したヘテロ環」とは、ヘテロ原子を含まない芳香族化合物(好ましくはベンゼン環)と、ヘテロ原子を有する環状化合物とが縮環した化合物である。ここで、ヘテロ原子を有する環状化合物は、5員環又は6員環であることが好ましい。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子が好ましい。ヘテロ原子を有する環状化合物は、複数のヘテロ原子を有していてもよい。この場合、ヘテロ原子は互いに同じでも異なっていてもよい。ヘテロ環が縮環した芳香環の具体例としては、フタルイミド、アクリドン、カルバゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾールなどが挙げられる。
以下、前記構造式(2)で表される構造単位を形成し得るモノマーの具体例を列挙する。但し、本発明においては、これらの具体例に制限されるものではない。


前記構造式(2)で表される構造単位の中でも、分散安定性の観点から、ベンジルメタアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、及びフェノキシエチルメタクリレートから選ばれる化合物に由来する構造単位が好ましい。本発明における水不溶性樹脂は、疎水性構造単位(b)として、これらから選ばれる構造単位の1種又は2種以上を有することが好ましい。
前記「主鎖を形成する原子に連結基を介して結合された芳香環を有する構造単位」の水不溶性樹脂中における含有比率は、顔料の分散安定性、吐出安定性、洗浄性の観点から、水不溶性樹脂の全質量に対して40質量%以上であることが好ましい。この構成単位の含有比率は、好ましくは40質量%以上75質量%未満であり、より好ましくは40質量%以上70質量%未満であり、更に好ましくは40質量%以上60質量%未満である。
また、主鎖を形成する原子に連結基を介して結合された芳香環の割合は、耐擦性の向上の点で、水不溶性樹脂の全質量に対して15質量%以上27質量%以下が好ましく、15質量%以上25質量%以下がより好ましく、15質量%以上20質量%以下が特に好ましい。
前記範囲に調整すると、耐擦性、インク安定性、吐出信頼性が向上する。
また、疎水性構造単位(b)は、分散安定性の観点から、(メタ)アクリル酸の炭素数1〜4のアルキルエステルに由来する構造単位を有する場合が好ましい。(メタ)アクリル酸には、アクリル酸及びメタクリル酸が含まれる。
(メタ)アクリル酸のアルキルエステルの具体例としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、(イソ又はターシャリー)ブチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。アルキルエステルのアルキル部位の炭素数は1〜4であるが、好ましくは1〜2である。
前記「(メタ)アクリル酸の炭素数1〜4のアルキルエステルに由来する構造単位」の水不溶性樹脂中における含有比率は、水不溶性樹脂の全質量に対して15質量%以上であることが、分散安定性付与の点で好ましい。この構成単位の含有比率は、好ましくは20〜60質量%であり、より好ましくは20〜50質量%である。
以上より、分散安定性を更に向上させる観点からは、前記疎水性構造単位(b)は、主鎖を形成する原子に連結基を介して結合された芳香環を有する構造単位を水不溶性樹脂の全質量に対して40質量%以上(より好ましくは、40〜75質量%、更に好ましくは40〜70質量%、特に好ましくは40〜60質量%)と、(メタ)アクリル酸の炭素数1〜4のアルキルエステルに由来する構造単位を水不溶性樹脂の全質量に対して15質量%以上(より好ましくは20〜60質量%、特に好ましくは20〜50質量%)含むことが好ましい。
上記以外の他の疎水性構造単位(b)としては、例えば、前記親水性構造単位(a)に属しない(例えば親水性の官能基を有しない)例えば(メタ)アクリルアミド類及びスチレン類及びビニルエステル類などのビニルモノマー類、(メタ)アクリル酸のアルキル(炭素数1〜4)エステル類などの(メタ)アクリレート類、等に由来の構造単位を挙げることができる。これらの構造単位は、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
前記(メタ)アクリルアミド類としては、例えば、N−シクロヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−(2−メトキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアリル(メタ)アクリルアミド、N−アリル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類が挙げられる。
前記スチレン類としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、n−ブチルスチレン、tert−ブチルスチレン、メトキシスチレン、ブトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、クロロメチルスチレン、酸性物質により脱保護可能な基(例えばt−Bocなど)で保護されたヒドロキシスチレン、ビニル安息香酸メチル、及びα−メチルスチレン、ビニルナフタレン等などが挙げられ、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
前記ビニルエステル類としては、例えば、ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニルメトキシアセテート、及び安息香酸ビニルなどのビニルエステル類が挙げられる。中でも、ビニルアセテートが好ましい。
前記(メタ)アクリレート類としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、(イソ又はターシャリー)ブチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
前記親水性構造単位(a)及び前記疎水性構造単位(b)の組成としては、それぞれの親水性、疎水性の程度にもよるが、疎水性構造単位(b)の含有割合が、水不溶性樹脂の全体質量に対して、80質量%を超える組成である場合が好ましく、85質量%を超える組成である場合がより好ましい。換言すれば、親水性構造単位(a)の含有割合としては、水不溶性樹脂の全体質量に対して、15質量%以下の範囲が好ましい。親水性構造単位(a)が15質量%以下であると、顔料の分散に寄与せず単独で水性液媒体中に溶解する成分が減少し、顔料の分散状態を良好に維持でき、粘度上昇が抑えられるので、インクジェット記録用インクとしたときの吐出性を良好にすることができる。
本発明における水不溶性樹脂は、各構造単位が不規則的に導入されたランダム共重合体、又は規則的に導入されたブロック共重合体のいずれでもよい。ブロック共重合体である場合の各構造単位は、いかなる導入順序で合成されたものであってもよく、同一の構成成分を2回以上利用してもよい。汎用性、製造性の観点から、水不溶性樹脂は、ランダム共重合体であることが好ましい。
本発明における水不溶性樹脂の酸価としては、顔料分散性、保存安定性の観点から、100以下が好ましく、30mgKOH/g以上100mgKOH/g以下であることがより好ましく、30mgKOH/g以上85mgKOH/g以下であることが更に好ましく、50mgKOH/g以上85mgKOH/g以下であることが特に好ましい。
なお、酸価とは、水不溶性樹脂の1gを完全に中和するのに要するKOHの質量(mg)で定義され、JIS規格(JISK0070、1992)記載の方法により測定されるものである。
本発明における水不溶性樹脂の分子量としては、重量平均分子量(Mw)で3万以上が好ましく、3万〜15万がより好ましく、更に好ましくは3万〜10万であり、特に好ましくは3万〜8万である。分子量が3万以上であると、分散剤としての立体反発効果が良好になる傾向があり、立体効果により顔料へ吸着し易くなる。
また、数平均分子量(Mn)では1,000〜100,000の範囲程度のものが好ましく、3,000〜50,000の範囲程度のものが特に好ましい。数平均分子量が前記範囲内であると、顔料における被覆膜としての機能又はインクの塗膜としての機能を発揮することができる。本発明における水不溶性樹脂は、アルカリ金属や有機アミンの塩の形で使用されることが好ましい。
また、本発明における水不溶性樹脂の分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)としては、1〜6の範囲が好ましく、1〜4の範囲がより好ましい。分子量分布が前記範囲内であると、インクの分散安定性、吐出安定性を高められる。
数平均分子量及び重量平均分子量は、TSKgel GMHxL、TSKgel G4000HxL、TSKgel G2000HxL(いずれも東ソー(株)製)のカラムを使用したGPC分析装置により、溶媒THFにて示差屈折計により検出し、標準物質としてポリスチレンを用いて換算することにより表される分子量である。
本発明における水不溶性樹脂は、種々の重合方法、例えば溶液重合、沈澱重合、懸濁重合、沈殿重合、塊状重合、乳化重合により合成することができる。重合反応は、回分式、半連続式、連続式等の公知の操作で行なうことができる。重合の開始方法は、ラジカル開始剤を用いる方法、光又は放射線を照射する方法等がある。これらの重合方法、重合の開始方法は、例えば、鶴田禎二「高分子合成方法」改定版(日刊工業新聞社刊、1971)や大津隆行、木下雅悦共著「高分子合成の実験法」化学同人、昭和47年刊、124〜154頁に記載されている。
具体的には、水不溶性樹脂は、モノマー混合物と必要に応じて有機溶媒及びラジカル重合開始剤とを含んだ混合物を、不活性ガス雰囲気下で共重合反応させることにより製造することができる。重合方法のうち、特にラジカル開始剤を用いた溶液重合法が好ましい。
溶液重合法で用いられる溶剤は、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール等の種々の有機溶剤が挙げられる。溶剤は、1種単独で又は2種以上を併用してもよい。また、水との混合溶媒として用いてもよい。重合温度は、生成するポリマーの分子量、開始剤の種類などと関連して設定する必要があり、通常は0℃〜100℃程度であるが、50℃〜100℃の範囲で重合を行なうことが好ましい。反応圧力は、適宜選定可能であるが、通常は1kg/cm〜100kg/cmであり、特に1kg/cm〜30kg/cm程度が好ましい。反応時間は、5時間〜30時間程度である。得られた樹脂は、再沈殿などの精製を行なってもよい。
以下、本発明における水不溶性樹脂として好ましい具体例を示す。但し、本発明においては、下記に限定されるものではない。





<自己分散型顔料>
本発明において、(2)自己分散型顔料も好ましい例として挙げることができる。自己分散型顔料とは、顔料表面に多数の親水性官能基および/またはその塩(以降、分散性付与基という)を、直接またはアルキル基、アルキルエーテル基、アリール基等を介して間接的に結合させたもので、分散剤なしに水性媒体中に分散可能な顔料である。ここで「分散剤なしに水性媒体中に分散」とは、顔料を分散させるための分散剤を用いなくても水性媒体中に分散可能な状態をいう。
自己分散型顔料を着色剤として含有するインクは、通常の顔料を分散させるために含有させる前述のような分散剤を含む必要が無いため、分散剤に起因する消泡性の低下による発泡がほとんど無く吐出安定性に優れるインクが調製しやすい。
自己分散型顔料の表面に結合される分散性付与基としては、−COOH、−CO、−OH、−SOH、−PO及び第4級アンモニウム並びにそれらの塩が例示でき、これらは、原料となる顔料に物理的処理または化学的処理を施すことで、分散性付与基または分散性付与基を有する活性種を顔料の表面に結合(グラフト)させることによって製造される。前記物理的処理としては、例えば真空プラズマ処理等が例示できる。また前記化学的処理としては、例えば水中で酸化剤により顔料表面を酸化する湿式酸化法や、p−アミノ安息香酸を顔料表面に結合させることによりフェニル基を介してカルボキシル基を結合させる方法等が例示できる。
本発明においては、次亜ハロゲン酸及び/または次亜ハロゲン酸塩による酸化処理、またはオゾンによる酸化処理により表面処理される自己分散型顔料を好ましい例として挙げることができる。自己分散型顔料としては市販品を利用することも可能であり、マイクロジェットCW−1(商品名;オリヱント化学工業(株)製)、CAB−O−JET200、CAB−O−JET300(以上商品名;キャボット社製)等が例示できる。
本発明において顔料は、1種単独で用いてもよいし、上記の各群内もしくは各群間より複数種選択してこれらを組み合わせて使用してもよい。
<樹脂分散顔料>
本発明において「水不溶性樹脂によって被覆されている顔料」を作製する方法としては、前述のカプセル化法以外に、例えば、水不溶性樹脂を分散剤として用い、該分散剤により顔料を分散させて顔料分散物を調製することにより作製することもできる。
上記のようにすることで顔料粒子を微粒径にして存在させることができ、分散後には高い分散安定性が得られる。この場合、顔料は必ずしも粒子表面の全体が水不溶性樹脂で被覆されている必要はなく、場合により粒子表面の少なくとも一部が水不溶性樹脂で被覆された状態であってもよい。
前記顔料分散物の調製は、例えば、前述のとおり転相乳化法を用いて行うことができる。具体的には、前述の顔料と、分散剤としての前述の水不溶性樹脂と、水と、非水溶性揮発溶剤と、を混合し分散して分散物を得た後、得られた分散物から該非水溶性揮発溶剤を除去することにより行うことができる。このとき、塩基性化合物を添加して水不溶性樹脂のアニオン性基の一部、または全部を中和してもよい。中和条件を調整することで良好な分散性を実現することが可能である。塩基性化合物の例としては水酸化ナトリウム等が挙げられる。
また、このとき、非水溶性揮発溶剤とともに、後述するグリセリンのアルキレンオキシド付加物を添加してもよい。
前記分散は、所望の成分を混合した後に、攪拌、分散等が行なえる公知の方法や混合攪拌装置、分散装置などを利用して行なうことができる。分散は、例えば、ボールミル、ロールミル、ビーズミル、高圧ホモジナイザー、高速攪拌型分散機、超音波ホモジナイザーなどを用いて行なうことが可能である。
−顔料分散剤−
前記顔料分散物の調製時には、分散剤として前述の水不溶性樹脂を用いることができる。この際、該水不溶性樹脂以外のその他の顔料分散剤を併用してもよい。
前記その他の顔料分散剤としては、顔料を水相中で分散させる機能を持つ化合物の中から適宜選択することができる。顔料分散剤の例としては、ノニオン性化合物、アニオン性化合物、カチオン性化合物、両性化合物等が挙げられる。
例えば、α,β−エチレン性不飽和基を有するモノマーの単独重合体又は共重合体等が挙げられる。α,β−エチレン性不飽和基を有するモノマーの例としては、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、酢酸ビニル、酢酸アリル、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、クロトン酸エステル、イタコン酸、イタコン酸モノエステル、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、マレイン酸ジエステル、フマル酸、フマル酸モノエステル、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホン化ビニルナフタレン、ビニルアルコール、アクリルアミド、メタクリロキシエチルホスフェート、ビスメタクリロキシエチルホスフェート、メタクリロキシエチルフェニルアシドホスフェート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン誘導体、ビニルシクロヘキサン、ビニルナフタレン、ビニルナフタレン誘導体、芳香族基を置換してもよいアクリル酸アルキルエステル、アクリル酸フェニルエステル、芳香族基を置換してもよいメタクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸フェニルエステル、メタクリル酸シクロアルキルエステル、クロトン酸アルキルエステル、イタコン酸ジアルキルエステル、マレイン酸ジアルキルエステル、ビニルアルコール、並びにこれら化合物の誘導体等が挙げられる。
前記α,β−エチレン性不飽和基を有するモノマーの単独重合体又は共重合体を高分子分散剤として用いることができる。具体的には、アクリル酸アルキルエステル−アクリル酸共重合体、メタクリル酸アルキルエステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸アルキルエステル−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸フェニルエステル−メタクリル酸、スチレン−メタクリル酸シクロヘキシルエステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−スチレンスルホン酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−メタクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ポリスチレン、ポリエステル、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
前記顔料分散物を調製する際には、非水溶性揮発性溶剤の少なくとも一種を用いることができる。非水溶性揮発性溶剤は分散性への影響が少ないので、分散工程では良好な分散性を保ちながら、最終的に非水溶性揮発性溶剤を除去することで、良好な分散状態のまま濃厚化が可能であり、長期での保存安定性に優れた顔料分散物が得られる。また、インク組成物を調製して記録に用いる場合には、吐出安定性に優れ、カールの発生を抑えた画像記録が行なえる。
「非水溶性」とは、1気圧、温度20℃下で同容量の純水と緩やかに掻き混ぜた場合に、流動がおさまった後も混合液が均一な外観を示さない性質のことである。水への溶解度は、20℃で80g/100mL以下が好ましく、50g/100mLがより好ましい。
また、「揮発性」とは、沸点が200℃以下のことを指す。150℃以下がより好ましい。
非水溶性揮発性溶剤としては、非水溶性で揮発性を持つ有機溶剤の中から所望により選択することができる。非水溶性揮発性溶剤の具体例としては、ケトン系溶剤(例えば、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等)、エーテル系溶剤(例えば、ジブチルエーテル等)などが挙げられる。中でも、分散安定性付与の点で、ケトン系溶剤が好ましく、その中でもメチルエチルケトンが最も好ましい。
前記顔料分散物中に分散する顔料粒子の平均粒子径としては、30〜200nmの範囲が好ましく、50〜150nmの範囲が好ましい。平均粒子径は、30nm以上であると製造適性が向上し、200nm以下であると保存安定性が良好になる。なお、樹脂被覆顔料粒子の粒径分布に関しては、特に制限はなく、広い粒径分布を持つもの、又は単分散の粒径分布を持つもののいずれでもよい。
なお、顔料粒子の平均粒子径及び粒径分布は、ナノトラック粒度分布測定装置UPA−EX150(日機装(株)製)を用いて、動的光散乱法により体積平均粒径を測定することにより求められる。
本発明のインク組成物中の「水不溶性樹脂によって被覆されている顔料」の含有量には特に限定はないが、0.05質量%〜30質量%が好ましく、0.1質量%〜20質量%がより好ましく、0.15質量%〜15質量%が特に好ましい。0.05質量%以上であると、インクの発色性が不十分となる現象をより効果的に抑制できる。また、30質量%以下であると、インクの粘度をより効果的に抑制でき、インクの吐出安定性等の劣化をより効果的に抑制できる。
(ポリマー粒子)
本発明のインク組成物は、耐擦性、耐ブロッキング性、及び耐オフセット性を高める観点から、ポリマー粒子の少なくとも1種を含有することが好ましい。
ポリマー粒子としては、該粒子が水中に分散されたポリマーラテックスを好ましく用いることが出来る。
ポリマー粒子としては、特に制限はなく、例えば、熱可塑性のアクリル系、エポキシ系、ポリウレタン系、ポリエーテル系、ポリアミド系、不飽和ポリエステル系、フェノール系、シリコーン系、又はフッ素系の樹脂、塩化ビニル、酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、又はポリビニルブチラール等のポリビニル系樹脂、アルキド樹脂、フタル酸樹脂等のポリエステル系樹脂、あるいはそれらの共重合体又は混合物などの樹脂から構成されるポリマー粒子が挙げられる。
ポリマー粒子は、後述するインク組成物と接触することで凝集体を形成可能な反応液又はこれを乾燥させた紙領域と接触した際に凝集、又は分散不安定化してインクを増粘させることにより、インク組成物、すなわち画像を固定化させる機能を有することが好ましい。このようなポリマー粒子は、水及び有機溶剤の少なくとも1種に分散されているものが好ましい。
本発明におけるポリマー粒子の重量平均分子量は、インク組成物の安定性の観点から、1万以上、20万以下が好ましく、より好ましくは10万以上、20万以下である。
本発明におけるポリマー粒子の平均粒径は、10nm〜1μmの範囲が好ましく、10nm〜200nmの範囲がより好ましく、20nm〜100nmの範囲が更に好ましく、20nm〜50nmの範囲が特に好ましい。
また、ポリマー粒子の粒径分布に関しては、特に制限は無く、広い粒径分布を持つもの、又は単分散の粒径分布を持つもの、いずれでもよい。また、単分散の粒径分布を持つラテックスを、2種以上混合して使用してもよい。
本発明におけるポリマー粒子のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは50℃以上である。Tgが50℃以上のポリマー粒子を含むことにより、インク組成物の記録媒体への定着性、及び耐擦性を効果的に向上させることができる。ポリマー粒子のTgは、より好ましくは50℃以上180℃以下、更に好ましくは70℃以上170℃以下である。
ポリマー粒子のTgは、通常用いられる方法によって適宜制御することができる。例えば、ポリマーを構成するモノマーの重合性基の種類、モノマー上の置換基の種類やその構成比率、ポリマー粒子を構成するポリマー分子の分子量等を適宜選択することで、ポリマー粒子のTgを所望の範囲に制御することができる。
Tgは、実測によって得られる測定Tgを適用する。具体的には、測定Tgとしては、エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製の示差走査熱量計(DSC)EXSTAR6220を用いて通常の測定条件で測定された値を意味する。但し、樹脂の分解等により測定が困難な場合には、下記の計算式で算出される計算Tgを適用する。計算Tgは下記の式(1)で計算されるものである。
1/Tg=Σ(X/Tg) ・・・(1)
ここで、計算対象となるポリマーはi=1からnまでのn種のモノマー成分が共重合しているとする。Xはi番目のモノマーの重量分率(ΣX=1)、Tgはi番目のモノマーの単独重合体のガラス転移温度(絶対温度)である。但し、Σはi=1からnまでの和をとる。尚、各モノマーの単独重合体ガラス転移温度の値(Tg)は、Polymer Handbook (3rd Edition) (J.Brandrup, E.H.Immergut著(Wiley−Interscience、1989))の値を採用する。
本発明におけるインク組成物では、耐擦性、耐ブロッキング性、及び耐オフセット性を高める観点から、ポリマー粒子の含有量(樹脂固形分の質量)が、顔料の含有量(顔料固形分の質量)を超えることが好ましい。本発明において、ポリマー粒子(a)と顔料(b)の固形分質量比(a)/(b)は、1〜10であることが好ましく、1.2〜5であることがより好ましい。
<自己分散性ポリマー粒子>
本発明におけるポリマー粒子としては、吐出安定性、顔料を用いた場合の液安定性(特に分散安定性)、及び高速打滴印画適性の付与の観点から、自己分散性ポリマー粒子が好ましく、カルボキシル基を有する自己分散性ポリマー粒子がより好ましい。
本発明における自己分散性ポリマー粒子とは、他の界面活性剤の不存在下に、ポリマー自身が有する官能基(特に、酸性基またはその塩)によって、水性媒体中で分散状態となりうる水不溶性ポリマー(「第1のポリマー」ともいう。)であって、遊離の乳化剤を含有しない水不溶性ポリマーの微粒子を意味する。
ここで分散状態とは、水性媒体中に水不溶性ポリマーが液体状態で分散された乳化状態(エマルジョン)、及び、水性媒体中に水不溶性ポリマーが固体状態で分散された分散状態(サスペンジョン)の両方の状態を含むものである。
本発明における水不溶性ポリマーにおいては、インク組成物に含有されたときのインク凝集速度とインク定着性の観点から、水不溶性ポリマーが固体状態で分散された分散状態となりうる水不溶性ポリマーであることが好ましい。
本発明における自己分散性ポリマー粒子の分散状態とは、水不溶性ポリマー30gを70gの有機溶媒(例えば、メチルエチルケトン)に溶解した溶液、該水不溶性ポリマーの塩生成基を100%中和できる中和剤(塩生成基がアニオン性であれば水酸化ナトリウム、カチオン性であれば酢酸)、及び水200gを混合、攪拌(装置:攪拌羽根付き攪拌装置、回転数200rpm、30分間、25℃)した後、該混合液から該有機溶媒を除去した後でも、分散状態が25℃で少なくとも1週間安定に存在することを目視で確認することができる状態をいう。
また、水不溶性ポリマーとは、ポリマーを105℃で2時間乾燥させた後、25℃の水100g中に溶解させたときに、その溶解量が10g以下であるポリマーをいい、その溶解量が好ましくは5g以下、更に好ましくは1g以下である。前記溶解量は、水不溶性ポリマーの塩生成基の種類に応じて、水酸化ナトリウム又は酢酸で100%中和した時の溶解量である。
前記水性媒体は、水を含んで構成され、必要に応じて親水性有機溶媒を含んでいてもよい。本発明においては、水と水に対して0.2質量%以下の親水性有機溶媒とから構成されることが好ましく、水から構成されることがより好ましい。
前記水不溶性ポリマーの主鎖骨格としては、特に制限は無く、例えば、ビニルポリマー、縮合系ポリマー(エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、セルロース、ポリエーテル、ポリウレア、ポリイミド、ポリカーボネート等)を用いることができる。その中で、特にビニルポリマーが好ましい。
ビニルポリマー及びビニルポリマーを構成するモノマーの好適な例としては、特開2001−181549号公報及び特開2002−88294号公報に記載されているものを挙げることができる。また、解離性基(あるいは解離性基に誘導できる置換基)を有する連鎖移動剤や重合開始剤、イニファーターを用いたビニルモノマーのラジカル重合や、開始剤或いは停止剤のどちらかに解離性基(あるいは解離性基に誘導できる置換基)を有する化合物を用いたイオン重合によって高分子鎖の末端に解離性基を導入したビニルポリマーも使用できる。
また、縮合系ポリマーと縮合系ポリマーを構成するモノマーの好適な例としては、特開2001−247787号公報に記載されているものを挙げることができる。
本発明における自己分散性ポリマー粒子は、自己分散性の観点から、親水性の構成単位と、疎水性の構成単位として芳香族基含有モノマー又は環状脂肪族基含有モノマーに由来する構成単位とを含む水不溶性ポリマーを含有することが好ましい。疎水性の構成単位は、耐ブロッキング性、耐擦性、分散安定性の観点から、環状脂肪族基含有(メタ)アクリレート(以下、「脂環式(メタ)アクリレート」いうことがある。)がより好ましい。
なお、脂環式(メタ)アクリレートとは、(メタ)アクリル酸に由来する構造部位と、アルコールに由来する構造部位とを含み、アルコールに由来する構造部位に、無置換又は置換された脂環式炭化水素基(環状脂肪族基)を少なくとも1つ含む構造を有しているものである。なお、前記脂環式炭化水素基は、アルコールに由来する構造部位そのものであっても、連結基を介してアルコールに由来する構造部位に結合していてもよい。
また、「脂環式(メタ)アクリレート」とは、脂環式炭化水素基を有するメタクリレート又はアクリレートを意味する。
前記親水性の構成単位は、親水性基含有モノマーに由来するものであれば特に制限はなく、1種の親水性基含有モノマーに由来するものであっても、2種以上の親水性基含有モノマーに由来するものであってもよい。前記親水性基としては、特に制限はなく、解離性基であってもノニオン性親水性基であってもよい。
本発明において前記親水性基は、自己分散促進の観点、形成された乳化又は分散状態の安定性の観点から、解離性基であることが好ましく、アニオン性の解離基であることがより好ましい。前記解離性基としては、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基などが挙げられ、中でも、インク組成物を構成した場合の定着性の観点から、カルボキシル基が好ましい。
本発明における親水性基含有モノマーは、自己分散性と凝集性の観点から、解離性基含有モノマーであることが好ましく、解離性基とエチレン性不飽和結合とを有する解離性基含有モノマーであることが好ましい。
解離性基含有モノマーとしては、例えば、不飽和カルボン酸モノマー、不飽和スルホン酸モノマー、不飽和リン酸モノマー等が挙げられる。
不飽和カルボン酸モノマーとして具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、2−メタクリロイルオキシメチルコハク酸等が挙げられる。不飽和スルホン酸モノマーとして具体的には、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−スルホプロピル(メタ)アクリレート、ビス−(3−スルホプロピル)−イタコン酸エステル等が挙げられる。不飽和リン酸モノマーとして具体的には、ビニルホスホン酸、ビニルホスフェート、ビス(メタクリロキシエチル)ホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジブチル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート等が挙げられる。
上記解離性基含有モノマーの中では、分散安定性、吐出安定性の観点から、不飽和カルボン酸モノマーが好ましく、アクリル酸及びメタクリル酸がより好ましい。
本発明における自己分散性ポリマー粒子は、自己分散性と反応液と接触したときの凝集速度の観点から、カルボキシル基を有し、酸価(mgKOH/g)が25〜100である第1のポリマーを含むことが好ましい。更に前記酸価は、自己分散性と反応液と接触したときの凝集速度の観点から、25〜80であることがより好ましく、30〜65であることが特に好ましい。
酸価が25以上であることで自己分散性の安定性が良好になり、また酸価が100以下であることで、凝集性が向上する点で好ましい。更に、自己分散性ポリマーの酸価は、前記水不溶性ポリマー(第2のポリマー)の酸価よりも小さいことが、顔料の分散安定性と反応液と接触したときの凝集速度の両立の観点から好ましく、それらの差が5〜70であることがより好ましく、10〜70が特に好ましい。
前記芳香族基含有モノマーとしては、芳香族基と重合性基とを含む化合物であれば特に制限はない。前記芳香族基は芳香族炭化水素に由来する基であっても、芳香族複素環に由来する基であってもよい。本発明においては水性媒体中での粒子形状安定性の観点から、芳香族炭化水素に由来する芳香族基であることが好ましい。
また前記重合性基は、縮重合性の重合性基であっても、付加重合性の重合性基であってもよい。本発明においては水性媒体中での粒子形状安定性の観点から、付加重合性の重合性基であることが好ましく、エチレン性不飽和結合を含む基であることがより好ましい。
本発明における芳香族基含有モノマーは、芳香族炭化水素に由来する芳香族基とエチレン性不飽和結合とを有するモノマーであることが好ましく、芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマーであることがより好ましい。
本発明において前記芳香族基含有モノマーは、1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記芳香族基含有モノマーとしては、例えば、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、スチレン系モノマー等が挙げられる。中でも、ポリマー鎖の親水性と疎水性のバランスとインク定着性の観点から、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、及びフェニル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、フェノキシエチル(メタ)アクリレートであることがより好ましく、フェノキシエチルアクリレートであることが特に好ましい。
なお、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
脂環式炭化水素基としては、環状の非芳香族炭化水素基を含むものであれば特に限定はなく、単環式炭化水素基、2環式炭化水素基、3環式以上の多環式炭化水素基が挙げられる。脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基や、シクロアルケニル基、ビシクロヘキシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基、アダマンチル基、デカヒドロナフタレニル基、ペルヒドロフルオレニル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基、及びビシクロ[4.3.0]ノナン等を挙げることができる。
前記脂環式炭化水素基は、更に置換基を有してもよい。該置換基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、水酸基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、アルキル又はアリールカルボニル基、及びシアノ基等が挙げられる。また、脂環式炭化水素基は、さらに縮合環を形成していてもよい。本発明における脂環式炭化水素基としては、粘度や溶解性の観点から、脂環式炭化水素基部分の炭素数が5〜20であることが好ましい。
脂環式炭化水素基とアルコールに由来する構造部位とを結合する連結基としては、炭素数1から20までの、アルキル基、アルケニル基、アルキレン基、アラルキル基、アルコキシ基、モノ又はオリゴエチレングルコール基、モノ又はオリゴプロピレングリコール基などが好適なものとして挙げられる。
本発明における脂環式(メタ)アクリレートの具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
単環式(メタ)アクリレートとしては、シクロプロピル(メタ)アクリレート、シクロブチル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘプチル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、シクロノニル(メタ)アクリレート、シクロデシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル基の炭素数が3〜10のシクロアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
2環式(メタ)アクリレートとしては、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
3環式(メタ)アクリレートとしては、アダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
これらのうち、自己分散性ポリマー粒子の分散安定性と、定着性、ブロッキング耐性の観点から、2環式(メタ)アクリレート、又は3環式以上の多環式(メタ)アクリレートを少なくとも1種であることが好ましく、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、及びジシクロペンタニル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
本発明における自己分散性ポリマーは、(メタ)アクリレートモノマーに由来する構成単位を含むアクリル系樹脂が好ましく、芳香族基含有(メタ)アクリレート又は脂環式(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含むアクリル系樹脂が好ましく、更には、芳香族基含有(メタ)アクリレート又は脂環式(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含み、その含有比が10質量%〜95質量%であることが好ましい。芳香族基含有(メタ)アクリレート又は脂環式(メタ)アクリレートの含有比が10質量%〜95質量%であることで、自己乳化又は分散状態の安定性が向上し、更にインク粘度の上昇を抑制することができる。本発明においては、自己分散状態の安定性、芳香環同士又は脂環式炭化水素基同士の疎水性相互作用による水性媒体中での粒子形状の安定化、粒子の適度な疎水化による水溶性成分量の低下の観点から、15質量%〜90質量%の範囲がより好ましく、15質量%〜80質量%の範囲がより好ましく、25質量%〜70質量%の範囲が特に好ましい。
本発明における自己分散性ポリマーは、例えば、芳香族基含有モノマー又は環状脂肪族基含有モノマーに由来する構成単位と、解離性基含有モノマーに由来する構成単位とを用いて構成することができる。更に、必要に応じて、その他の構成単位を更に含んでもよい。
前記その他の構成単位を形成するモノマーとしては、前記芳香族基含有モノマー又は環状脂肪族基含有モノマーと解離性基含有モノマーと共重合可能なモノマーであれば、特に制限はない。中でも、ポリマー骨格の柔軟性やガラス転移温度(Tg)制御の容易さの観点から、アルキル基含有モノマーであることが好ましい。
前記アルキル基含有モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、並びにヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等の水酸基を有するエチレン性不飽和モノマー、並びにジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、等の(メタ)アクリルエステル系モノマー;N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、Nーヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド等のN−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド、並びにN−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−(n−,イソ)ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−(n−,イソ)ブトキシエチル(メタ)アクリルアミド等のN−アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド等、等の(メタ)アクリルアミド系モノマーが挙げられる。
本発明における自己分散性ポリマーを構成する水不溶性ポリマーの分子量範囲は、重量平均分子量で、3000〜20万であることが好ましく、5000〜15万であることがより好ましく、10000〜10万であることが更に好ましい。重量平均分子量を3000以上とすることで水溶性成分量を効果的に抑制することができる。また、重量平均分子量を20万以下とすることで、自己分散安定性を高めることができる。
なお、重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフ(GPC)で測定される。GPCは、HLC−8220GPC(東ソー(株)製)を用い、カラムとして、TSKgeL SuperHZM−H、TSKgeL SuperHZ4000、TSKgeL SuperHZ2000(東ソー(株)製、4.6mmID×15cm)を3本用い、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いる。
本発明における自己分散性ポリマー粒子を構成する水不溶性ポリマーは、ポリマーの親疎水性制御の観点から、芳香族基含有(メタ)アクリレート又は脂環式(メタ)アクリレートに由来する構造単位(好ましくは、フェノキシエチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位及び/又はベンジル(メタ)アクリレートに由来する構造単位、あるいはイソボルニル(メタ)アクリレート及び/又はアダマンチル(メタ)アクリレート及び/又はジシクロペンタニル(メタ)アクリレート)を共重合比率として自己分散性ポリマー粒子の全質量の15〜80質量%を含むことが好ましい。
また、水不溶性ポリマーは、ポリマーの親疎水性制御の観点から、芳香族基含有(メタ)アクリレート又は脂環式(メタ)アクリレートに由来する構成単位を共重合比率として15〜80質量%と、カルボキシル基含有モノマーに由来する構成単位と、アルキル基含有モノマーに由来する構成単位(好ましくは、(メタ)アクリル酸のアルキルエステルに由来する構造単位)とを含むことが好ましい。更には、フェノキシエチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位及び/又はベンジル(メタ)アクリレートに由来する構造単位、あるいはイソボルニル(メタ)アクリレート及び/又はアダマンチル(メタ)アクリレート及び/又はジシクロペンタニル(メタ)アクリレートに由来する構造単位を共重合比率として15〜80質量%と、カルボキシル基含有モノマーに由来する構成単位と、アルキル基含有モノマーに由来する構成単位(好ましくは、(メタ)アクリル酸の炭素数1〜4のアルキルエステルに由来する構造単位)とを含むことがより好ましく、更には加えて、酸価が25〜100であって重量平均分子量が3000〜20万であることが好ましく、酸価が25〜95であって重量平均分子量が5000〜15万であることがより好ましい。
以下に、自己分散性ポリマー粒子を構成する水不溶性ポリマーの具体例として、例示化合物B−01〜B−19、C−01〜C−05を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、括弧内は共重合成分の質量比を表す。
B−01:フェノキシエチルアクリレート/メチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(50/45/5)
B−02:フェノキシエチルアクリレート/ベンジルメタクリレート/イソブチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(30/35/29/6)
B−03:フェノキシエチルメタクリレート/イソブチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(50/44/6)
B−04:フェノキシエチルアクリレート/メチルメタクリレート/エチルアクリレート/アクリル酸共重合体(30/55/10/5)
B−05:ベンジルメタクリレート/イソブチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(35/59/6)
B−06:スチレン/フェノキシエチルアクリレート/メチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(10/50/35/5)
B−07:ベンジルアクリレート/メチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(55/40/5)
B−08:フェノキシエチルメタクリレート/ベンジルアクリレート/メタクリル酸共重合体(45/47/8)
B−09:スチレン/フェノキシエチルアクリレート/ブチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(5/48/40/7)
B−10:ベンジルメタクリレート/イソブチルメタクリレート/シクロヘキシルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(35/30/30/5)
B−11:フェノキシエチルアクリレート/メチルメタクリレート/ブチルアクリレート/メタクリル酸共重合体(12/50/30/8)
B−12:ベンジルアクリレート/イソブチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(93/2/5)
B−13:スチレン/フェノキシエチルメタクリレート/ブチルアクリレート/アクリル酸共重合体(50/5/20/25)
B−14:スチレン/ブチルアクリレート/アクリル酸共重合体(62/35/3)
B−15:メチルメタクリレート/フェノキシエチルアクリレート/アクリル酸共重合体(45/51/4)
B−16:メチルメタクリレート/フェノキシエチルアクリレート/アクリル酸共重合体(45/49/6)
B−17:メチルメタクリレート/フェノキシエチルアクリレート/アクリル酸共重合体(45/48/7)
B−18:メチルメタクリレート/フェノキシエチルアクリレート/アクリル酸共重合体(45/47/8)
B−19:メチルメタクリレート/フェノキシエチルアクリレート/アクリル酸共重合体(45/45/10)
C−01:メチルメタクリレート/イソボルニルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(20/72/8)
C−02:メチルメタクリレート/イソボルニルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(40/52/8)
C−03:メチルメタクリレート/イソボルニルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(10/13/2)
C−04:メチルメタクリレート/イソボルニルメタクリレート/ジシクロペンタニルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(20/62/10/8)
C−05:メチルメタクリレート/ジシクロペンタニルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(20/72/8)
本発明における自己分散性ポリマー粒子を構成する水不溶性ポリマーの製造方法としては特に制限はなく、例えば、重合性界面活性剤の存在下に、乳化重合を行い、界面活性剤と水不溶性ポリマーとを共有結合させる方法、上記親水性基含有モノマーと芳香族基含有モノマーとを含むモノマー混合物を溶液重合法、塊状重合法等の公知の重合法により、共重合させる方法を挙げることができる。前記重合法の中でも、凝集速度とインク組成物としたときの打滴安定性の観点から、溶液重合法が好ましく、有機溶媒を用いた溶液重合法がより好ましい。
本発明における自己分散性ポリマー粒子は、凝集速度の観点から、有機溶媒中で合成された第1のポリマーを含み、前記第1のポリマーはカルボキシル基を有し、酸価が25〜100であって、前記第1のポリマーのカルボキシル基の少なくとも一部は中和され、水を連続相とするポリマー分散物として調製されたものであることが好ましい。
すなわち、本発明における自己分散性ポリマー粒子の製造方法は、有機溶媒中で前記第1のポリマーを合成する工程と、前記第1のポリマーのカルボキシル基の少なくとも一部が中和された水性分散物とする分散工程とを含むことが好ましい。
前記分散工程は、次の工程(1)及び工程(2)を含むことが好ましい。
工程(1):第1のポリマー(水不溶性ポリマー)、有機溶媒、中和剤、及び水性媒体を含有する混合物を、攪拌する工程。
工程(2):前記混合物から、前記有機溶媒を除去する工程。
前記工程(1)は、まず前記第1のポリマー(水不溶性ポリマー)を有機溶媒に溶解させ、次に中和剤と水性媒体を徐々に加えて混合、攪拌して分散体を得る処理であることが好ましい。このように、有機溶媒中に溶解した水不溶性ポリマー溶液中に中和剤と水性媒体を添加することで、強いせん断力を必要とせずに、より保存安定性の高い粒径の自己分散性ポリマー粒子を得ることができる。
該混合物の攪拌方法に特に制限はなく、一般に用いられる混合攪拌装置や、必要に応じて超音波分散機や高圧ホモジナイザー等の分散機を用いることができる。
有機溶媒としては、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒及びエーテル系溶媒が好ましく挙げられる。
アルコール系溶媒としては、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、t−ブタノール、エタノール等が挙げられる。ケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。エーテル系溶媒としては、ジブチルエーテル、ジオキサン等が挙げられる。これらの溶媒の中では、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒とイソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒が好ましい。また、油系から水系への転相時への極性変化を穏和にする目的で、イソプロピルアルコールとメチルエチルケトンを併用することも好ましい。該溶剤を併用することで、凝集沈降や粒子同士の融着が無く、分散安定性の高い微粒径の自己分散性ポリマー粒子を得ることができる。
中和剤は、解離性基の一部又は全部が中和され、自己分散性ポリマーが水中で安定した乳化又は分散状態を形成するために用いられる。自己分散性ポリマーが解離性基としてアニオン性の解離基(例えば、カルボキシル基)を有する場合、用いられる中和剤としては有機アミン化合物、アンモニア、アルカリ金属の水酸化物等の塩基性化合物が挙げられる。有機アミン化合物の例としては、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノプロピルアミン、ジプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチル−エタノールアミン、N,N−ジエチル−エタノールアミン、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアニン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等が挙げられる。アルカリ金属の水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。中でも、自己分散性ポリマー粒子の水中への分散安定化の観点から、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエチルアミン、トリエタノールアミンが好ましい。
これら塩基性化合物は、解離性基100モル%に対して、5〜120モル%使用することが好ましく、10〜110モル%であることがより好ましく、15〜100モル%であることが更に好ましい。15モル%以上とすることで、水中での粒子の分散を安定化する効果が発現し、100モル%以下とすることで、水溶性成分を低下させる効果がある。
前記工程(2)においては、前記工程(1)で得られた分散体から、減圧蒸留等の常法により有機溶剤を留去して水系へと転相することで自己分散性ポリマー粒子の水性分散物を得ることができる。得られた水性分散物中の有機溶媒は実質的に除去されており、有機溶媒の量は、好ましくは0.2質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下である。
本発明における自己分散性ポリマー粒子の平均粒径は、10nm〜400nmの範囲であることが好ましく、10nm〜200nmがより好ましく、10nm〜100nmがさらに好ましい。10nm以上の平均粒径であることで製造適性が向上する。また、400nm以下の平均粒径とすることで保存安定性が向上する。
また、自己分散性ポリマー粒子の粒径分布に関しては、特に制限は無く、広い粒径分布を持つもの、又は単分散の粒径分布を持つもの、いずれでもよい。また、水不溶性粒子を、2種以上混合して使用してもよい。
尚、自己分散性ポリマー粒子の平均粒径及び粒径分布は、例えば、光散乱法を用いて測定することができる。
本発明の自己分散性ポリマー粒子は、例えば、水性インク組成物に好適に含有させることができ、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
(水溶性有機溶剤)
インク組成物は、水を溶媒として含むものであるが、水溶性有機溶剤の少なくとも1種を含有するのが好ましい。
前記水溶性有機溶剤の例としては、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ジプロピレングリコール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,2−オクタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ペンタンジオール、4−メチル−1,2−ペンタンジオール等のアルカンジオール(多価アルコール類);エタノール、メタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの炭素数1〜4のアルキルアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテルなどのグリコールエーテル類;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルスルホキシド、ソルビット、ソルビタン、アセチン、ジアセチン、トリアセチン、スルホラン等が挙げられる。これらは、1種のみならず2種以上を併用してもよい。
また、乾燥防止や湿潤の付与の点では、多価アルコール類が有用である。例えば、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、テトラエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、ポリエチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオールなどが挙げられる。これらは、1種のみならず2種以上を併用してもよい。浸透性の点からは、ポリオール化合物が好ましく、脂肪族ジオールとして、例えば、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、3,3−ジメチル−1,2−ブタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジメチル−2,4−ペンタンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、5−ヘキセン−1,2−ジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオールなどが挙げられる。中でも、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールが好ましい。これらは、1種のみならず2種以上を併用してもよい。
グリセリンのアルキレンオキシド付加物を好ましく用いることが出来る。グリセリンのアルキレンオキシド付加物は、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、ポリオキシプロピル化グリセリン(ポリプロピレングリコールとグリセリンとのエーテル)として、サンニックスGP−250(平均分子量250)、GP−400(平均分子量400)、GP−600(平均600)〔以上、三洋化成工業(株)製〕、レオコンGP−250(平均分子量250),GP−300(平均分子量300、GP−400(平均分子量400)、GP−700(平均分子量700)〔以上、ライオン(株)製〕、ポリプロピレントリオールグリコール・トリオール型 平均分子量300、平均分子量700〔以上、和光純薬工業(株)製〕などが挙げられる。
インク組成物に含まれる水溶性有機溶剤の含有量としては、インクの乾燥防止や湿潤の付与の観点より、1.0質量%〜50質量%であることが好ましく、5.0質量%〜40質量%であることがより好ましく、10質量%〜30質量%であることが特に好ましい。
(水)
本発明におけるインク組成物は、水を含有するものであるが、水の量には特に制限はない。中でも、水の好ましい含有量は、10〜99質量%であり、より好ましくは30〜80質量%であり、更に好ましくは50〜70質量%である。
(その他成分)
インク組成物は、上記で説明した各成分に加え、必要に応じて、例えば、界面活性剤、紫外線吸収剤、褪色防止剤、防黴剤、pH調整剤、防錆剤、酸化防止剤、乳化安定剤、防腐剤、消泡剤、粘度調整剤、分散安定剤、キレート剤、固体湿潤剤等の他の成分を含有してもよい。
前記界面活性剤は、表面張力調整剤として用いられ、ノニオン系、カチオン系、アニオン系、ベタイン系の界面活性剤が挙げられる。界面活性剤は、インクジェット法で良好に打滴するために、インク組成物の表面張力を20mN/m〜60mN/mに調整できる量を含有するのが好ましい。中でも、界面活性剤の含有量は、表面張力を20mN/m〜45mN/mに調整できる量が好ましく、より好ましくは25mN/m〜40mN/mに調整できる量である。
界面活性剤のインク組成物中における含有量は、特に制限はなく、1質量%以上が好ましく、より好ましくは1〜10質量%であり、更に好ましくは1〜3質量%である。
(インク組成物の物性等)
インク組成物の表面張力は、インクジェット記録方法に用いられた場合、吐出安定性の点で、20mN/m以上60mN/m以下であることが好ましい。より好ましくは、20mN以上45mN/m以下であり、更に好ましくは、25mN/m以上40mN/m以下である。
インク組成物の20℃での粘度は、1.2mPa・s以上15.0mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは2mPa・s以上13mPa・s未満、更に好ましくは2.5mPa・s以上10mPa・s未満である。
インク組成物は、多色のカラー画像(例えばフルカラー画像)の形成に用いることができる。フルカラー画像の形成には、インク組成物に用いる顔料の色相を所望により変更することにより、マゼンタ色調のインク、シアン色調のインク、イエロー色調のインクとして用いることができる。さらに、色調を整えるために、ブラック色調のインクを用いることができる。
また、インク組成物は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の色調以外のレッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)、白色(W)の色調のインクや、いわゆる印刷分野における特色のインク等として用いることができる。
2−2.凝集液
本発明のインクセットは、更に、前記インク組成物と接触することで凝集体を形成可能な凝集液(以下、反応液ともいう。)の少なくとも1種を含むことが好ましい。
凝集液は、前記インク組成物と接触した時に凝集体を形成可能な凝集剤(以下、「凝集促進剤」ともいう。)の少なくとも1種を含有する。記録媒体上でインク組成物と凝集剤とが混合することにより、インク組成物中で安定的に分散している顔料等の凝集が促進される。本発明における凝集剤としては、形成される画像品質の観点からカチオンポリマー、酸性化合物、および多価金属塩から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
前記カチオンポリマーとしては、カチオン性基として、第1級〜第3級アミノ基、又は第4級アンモニウム塩基を有するポリマーが好適に用いられる。
上記カチオンポリマーとしては、第1級〜第3級アミノ基およびその塩、又は第4級アンモニウム塩基を有する単量体(カチオン性モノマー)の単独重合体や、該カチオン性モノマーと他のモノマー(非カチオン性モノマー)との共重合体又は縮重合体として得られるものが好ましい。また、これらのポリマーは、水溶性ポリマー又は水分散性ラテックス粒子のいずれの形態でも使用できる。
具体的には、ポリ(ビニルピリジン)塩、ポリアルキルアミノエチルアクリレート、ポリアルキルアミノエチルメタクリレート、ポリ(ビニルイミダゾール)、ポリエチレンイミン、ポリビグアニド、ポリグアニド、及びエピハロヒドリン誘導体とアミン誘導体とを含むコポリマー、及びそれらの組み合わせ等から選択される。
本発明における凝集液は、上記カチオンポリマーに加えて、水系溶媒(例えば、水)を更に含んで構成することができる。
凝集液中のカチオンポリマーの含有率としては、凝集効果の観点から、凝集液の全質量に対して、5〜95質量%であることが好ましく、10〜80質量%であることがより好ましい。
酸性化合物を含む凝集液の例としては、インク組成物のpHを変化させることにより凝集物を生じさせることができる液体が挙げられる。このとき、凝集液のpH(25℃)は、インク組成物の凝集速度の観点から、1〜6であることが好ましく、2〜5であることがより好ましく、3〜5であることが更に好ましい。この場合、吐出工程で用いる前記インク組成物のpH(25℃)は、7.5以上(より好ましくは8以上)であることが好ましい。
中でも、本発明においては、画像濃度、解像度、及びインクジェット記録の高速化の観点から、前記インク組成物のpH(25℃)が7.5以上であって、凝集液のpH(25℃)が3〜5である場合が好ましい。
前記凝集成分は、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
凝集液は、凝集促進剤として、酸性化合物の少なくとも1種を用いて構成することができる。酸性化合物としては、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、硫酸基、スルホン酸基、スルフィン酸基、又はカルボキシル基を有する化合物、あるいはその塩(例えば多価金属塩)を使用することができる。中でも、インク組成物の凝集速度の観点から、リン酸基又はカルボキシル基を有する化合物がより好ましく、カルボキシル基を有する化合物であることが更に好ましい。
カルボキシル基を有する化合物としては、ポリアクリル酸、酢酸、グリコール酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、スルホン酸、オルトリン酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ピリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、若しくはこれらの化合物の誘導体、又はこれらの塩(例えば多価金属塩)等の中から選ばれることが好ましい。これらの化合物は、1種類で使用されてもよく、2種類以上併用されてもよい。
凝集液の酸性化合物の含有量としては、凝集効果の観点から、凝集液の全質量に対して、5〜95質量%であることが好ましく、10〜80質量%であることがより好ましい。
また、高速凝集性を向上させる凝集液の好ましい一例として、多価金属塩を添加した凝集液を挙げることができる。多価金属塩としては、周期表の第2属のアルカリ土類金属(例えば、マグネシウム、カルシウム)、周期表の第3属の遷移金属(例えば、ランタン)、周期表の第13属からのカチオン(例えば、アルミニウム)、およびランタニド類(例えば、ネオジム)の塩を挙げることができる。金属の塩としては、カルボン酸塩(蟻酸、酢酸、安息香酸塩など)、硝酸塩、塩化物、及びチオシアン酸塩が好適である。中でも、好ましくは、カルボン酸(蟻酸、酢酸、安息香酸塩など)のカルシウム塩又はマグネシウム塩、硝酸のカルシウム塩又はマグネシウム塩、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、及びチオシアン酸のカルシウム塩又はマグネシウム塩である。
金属の塩の凝集液中における含有量としては、1〜10質量%が好ましく、より好ましくは1.5〜7質量%であり、更に好ましくは2〜6質量%の範囲である。
凝集液の粘度としては、インク組成物の凝集速度の観点から、1mPa・s〜30mPa・sの範囲が好ましく、1mPa・s〜20mPa・sの範囲がより好ましく、2mPa・s〜15mPa・sの範囲がさらに好ましく、2mPa・s〜10mPa・sの範囲が特に好ましい。なお、粘度は、VISCOMETER TV−22(TOKI SANGYO CO.LTD製)を用いて20℃の条件下で測定されるものである。
また、凝集液の表面張力としては、インク組成物の凝集速度の観点から、20mN/m〜60mN/mであることが好ましく、20mN/m〜45mN/mであることがより好ましく、25mN/m〜40mN/mであることがさらに好ましい。なお、表面張力は、Automatic Surface Tensiometer CBVP−Z(協和界面科学(株)製)を用いて25℃の条件下で測定されるものである。
3.画像形成方法
本発明の画像形成方法は、インクジェット記録用インクセットを用いて、インク組成物をインクジェットヘッドから吐出して記録媒体にインクを付与するインク付与工程と、メンテナンス液により前記インクジェットヘッドに付着したインク組成物を除去するインク除去工程とを有する。
−インク付与工程−
本発明におけるインク付与工程は、公知の液体付与方法を特に制限なく用いることができる。インク付与方法としては、例えば、一般的な筆記用具を用いたインク付与、ペンプロッターを用いたインク付与、およびインクジェット方式による付与等を挙げることができる。本発明においては、迅速記録性の観点から、インク組成物の付与はインクジェット方式による付与であることが好ましい。
前記インクジェット方式として、インクジェット記録用インク(インク組成物)にエネルギーを供与して、公知の受像材料、即ち普通紙、樹脂コート紙、例えば特開平8−169172号公報、同8−27693号公報、同2−276670号公報、同7−276789号公報、同9−323475号公報、特開昭62−238783号公報、特開平10−153989号公報、同10−217473号公報、同10−235995号公報、同10−337947号公報、同10−217597号公報、同10−337947号公報等に記載されているインクジェット専用紙、フィルム、電子写真共用紙、布帛、ガラス、金属、陶磁器等に画像を形成する。なお、本発明に好ましいインクジェット記録方法として特開2003−306623号公報の段落番号0093〜0105の記載が適用できる。
インクジェットヘッド(以下、単にヘッドともいう。)には、公知のものを適用でき、コンティニアスタイプ、ドットオンデマンドタイプが使用可能である。ドットオンデマンドタイプのうち、サーマルヘッドでは、吐出のため、特開平9−323420号に記載されているような稼動弁を持つタイプが好ましい。ピエゾヘッドでは、例えば、欧州特許A277,703号、欧州特許A278,590号などに記載されているヘッドを使うことができる。ヘッドはインクの温度が管理できるよう温調機能を持つものが好ましい。インク吐出工程においては、インク粘度の変動幅が±5%以内になるようインク温度を制御することが好ましい。また、駆動周波数としては、1〜500kHzで稼動することが好ましい。ノズルの形状は必ずしも円形である必要はなく、楕円形、矩形等、形にはこだわらない。ノズル径は10〜100μmの範囲であることが好ましい。尚、ノズルの開口部自身必ずしも真円とは限らないが、その場合にノズル径とは該開口部の面積と同等の円を仮定しその径とする。
インク吐出工程におけるインク吐出時のインクの温度は、30℃以上であることが吐出時のインクの温調およびワイプ性向上の観点から好ましく、35℃以上がさらに好ましい。また、インク安定性および吐出信頼性の観点から、70℃以下が好ましい。
ヘッドのノズル面は、インクの付着性を低下させるために、撥インク処理されていることが好ましい。PTFE、PFA、FEP等のパーフルオロポリマーを用いてノズル面を被覆することにより、撥液性能が特に良好となる。
−インク除去工程−
インク除去工程では、ヘッドのノズル面からインク又はその固着物を除去するために、メンテナンス液をインクジェットヘッド(例えば、ヘッド周辺及びインク流路等;以下、ヘッド等ともいう。)に付与する。
前記メンテナンス液をヘッド等に付与することにより、ノズル面のインク由来のインク固着物は溶解、又は膨潤等して除去しやすくなる。
また、メンテナンス液を付与する前又は後に、ブレードによる掻き取り、布や紙類での払拭や、インク固形物由来のものを除去してもよい。好ましくは、メンテナンス液を付与後にワイパブレードを用いてノズル面を擦り(ワイピング)、インク固着物を掻き落とす方法、風圧やメンテナンス液等の液圧等により取り除く方法、及び布・紙類で払拭する方法が好ましく、中でも、ブレードによる掻き取り、布や紙類での払拭が好ましい。
前記ワイパブレードの材質は弾性を有するゴムが好ましく、具体的な材質としては、ブチルゴム、クロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、二トリルゴム等が挙げられる。ワイパブレードに撥インク性を付与するためにフッ素樹脂等によりコーティングしてあるワイパブレードを用いても構わない。
本発明の画像形成方法では上記所定のインク組成物を用いるため、ノズル面のインク組成物由来のインク固着物を固体として容易に掻き取ることができる。
本発明の画像形成方法においては、インク付与工程での記録媒体上へのインクの吐出による画像形成の後、該記録媒体を加熱して画像を定着する工程(熱定着工程)をさらに有していてもよい。
前記乾燥除去工程としては、記録媒体に吐出されたインク組成物中に含まれるインク溶媒(水及び溶剤)を乾燥除去する以外は特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記熱定着工程としてはインク組成物中に含まれるポリマー粒子を軟化させ、画像の耐擦性を付与する以外には特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
本発明における記録媒体としては特に制限は無く、例えば、普通紙、上質紙、塗工紙等を挙げることができる。
−凝集液付与工程−
前記凝集液付与工程は、インク組成物を用いた既述のインク付与工程の前又は後に、記録媒体上に、既述のインク組成物と接触したときに凝集体を形成可能な凝集剤を含む凝集液を付与する工程を設け、インク組成物と凝集液を接触させて画像を形成する工程とすることが好ましい。
本発明においては、凝集液付与工程で凝集液を付与した後にインク付与工程を設ける態様が好ましい。すなわち、記録媒体上に、インク組成物を付与する前に、予めインク組成物に含まれる顔料等の粒子を凝集させるための凝集液を付与しておき、記録媒体上に付与された処理系と接触するようにインク組成物を付与して画像を形成する態様が好ましい。これにより、インクジェット記録を高速化でき、高速記録しても濃度、解像度の高い画像が得られる。
本発明の画像形成方法においては、最初に画像記録する記録媒体として中間転写体を用い、中間転写体上に、本発明におけるインク組成物をインクジェット法により付与するインク付与工程と、中間転写体上に、インク組成物と接触したときに凝集体を形成可能な凝集液を付与する凝集液付与工程とを設け、インク組成物と凝集液とを接触させて中間転写体上に画像を形成した後、中間転写体に形成された画像を所望とする最終の記録媒体に転写する転写工程を設けた方法であってもよい。この場合も、凝集液付与工程で凝集液を付与した後にインク付与工程を設ける態様が好ましい。
本発明のインクセットを用いて記録された記録物は、長期に亘って安定したインク吐出性能を維持するインクジェット記録用インクセットを用いていることにより、濃度、解像度の高い画像記録物とすることができる。
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、特に断りの無い限り、「部」及び「%」は質量基準である。
なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定した。GPCは、HLC−8020GPC(東ソー(株)製)を用い、カラムとして、TSKgel、Super Multipore HZ−H(東ソー(株)製、4.6mmID×15cm)を3本用い、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いた。また、条件としては、試料濃度を0.35質量%、流速を0.35mL/min、サンプル注入量を10μL、測定温度を40℃とし、RI検出器を用いて行なった。また、検量線は、東ソー(株)製「標準試料TSK standard,polystyrene」:「F−40」、「F−20」、「F−4」、「F−1」、「A−5000」、「A−2500」、「A−1000」、「n−プロピルベンゼン」の8サンプルから作製した。
また、表面張力の測定は、Automatic Surface Tensiometer CBVP−Z(協和界面科学(株)製)を用いて、白金プレートを用いたウィルヘルミ法にて25℃の条件下で行なった。粘度の測定は、VISCOMETER TV−22(TOKI SANGYO CO.LTD製)を用いて30℃の条件下で行なった。pHの測定は、東亜DKK(株)製のpHメータWM−50EGを用い、25℃±1℃にて行なった。
実施例に用いた材料を下記のように準備した。
(自己分散性ポリマー粒子A−01の調製)
攪拌機、温度計、還流冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた2リットル三口フラスコに、メチルエチルケトン360.0gを仕込んで、75℃まで昇温した。これにメチルメタクリレート162.0g、イソボルニルメタクリレート126.0g、「PME−100」(メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(n=2)、日油(株)製)50.4g、メタクリル酸21.6g、メチルエチルケトン72g、及び「V−601」(和光純薬工業(株)製)1.44gからなる混合溶液を、2時間で滴下が完了するように等速で滴下した。滴下完了後、「V−601」0.72g及びメチルエチルケトン36.0gからなる溶液を加え、75℃で2時間攪拌した後、さらに「V−601」0.72g及びメチルエチルケトン36.0gからなる溶液を加え、75℃で2時間攪拌した。その後、85℃に昇温してさらに2時間攪拌を続け、メチルメタクリレート/イソボルニルメタクリレート/PME−100/メタクリル酸共重合体(=45/35/14/6[質量比])共重合体の樹脂溶液を得た。
得られた共重合体の重量平均分子量(Mw)は、65000(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算で算出)、酸価は39(mgKOH/g)、ガラス転移温度(Tg)は92℃であった。
次に、得られた樹脂溶液668.3gを秤量し、これにイソプロパノール388.3g及び1モル/LのNaOH水溶液145.7mLを加え、反応容器内温度を80℃に昇温した。次に、蒸留水720.1gを20mL/minの速度で滴下し、水分散化した。その後、大気圧下にて反応容器内温度80℃で2時間、85℃で2時間、90℃で2時間保った後、反応容器内を減圧にし、イソプロパノール、メチルエチルケトン、及び蒸留水を合計で913.7g留去し、固形分濃度28.0%の自己分散性ポリマー粒子A−01の水分散物(エマルジョン)を得た。
(水不溶性ポリマー分散剤の調製)
下記スキームに従って水不溶性ポリマー分散剤として用いる水不溶性樹脂を合成した。

攪拌機、冷却管を備えた1000mLの三口フラスコにメチルエチルケトン88gを加え窒素雰囲気下で72℃に加熱し、ここにメチルエチルケトン50gにジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート0.85g、ベンジルメタクリレート60g、メタクリル酸10g、及びメチルメタクリレート30gを溶解した溶液を3時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに1時間反応した後メチルエチルケトン2gにジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート0.42gを溶解した溶液を加え、78℃に昇温し4時間加熱した。得られた反応溶液は大過剰量のヘキサンに2回再沈殿し、析出した樹脂を乾燥して樹脂分散剤P−1(水不溶性樹脂)を96g得た。
得られた樹脂の組成はH−NMRで確認し、GPCより求めた重量平均分子量(Mw)は44600であった。さらに、JIS規格(JISK0070:1992)記載の方法により、このポリマーの酸価を求めたところ、65.2mgKOH/gであった。
(シアン顔料分散液Cの調製)
上記で得られた水不溶性ポリマー分散剤を5.0g、シアン顔料ピグメント・ブルー15:3(大日精化(株)製)10.0g、メチルエチルケトン40.0g、1mol/L水酸化ナトリウム8.0g、イオン交換水82.0g、0.1mmジルコニアビーズ300gをベッセルに供給し、レディーミル分散機(アイメックス社製)で1000rpm、6時間分散した。得られた顔料分散液をエバポレーターでメチルエチルケトンが十分留去できるまで減圧濃縮し、顔料濃度が約12質量%になるまで濃縮した。
その後、顔料分散液に対して8000rpm、30分間の遠心処理を行い、沈殿物として残留した粗大粒子を除去した。上澄みの吸光度を測定し、顔料濃度を決定した。
上記のようにして、色材としてのシアン調製分散液を調液した。平均粒径は97nmで、経時粒径は99nmであった。
(水溶性有機溶剤の準備)
本実施例で用いる水溶性有機溶剤の詳細は、以下の通りである。
・GP250:サンニックス250(三洋化学工業(株)製、下記構造式で表されるオキシプロピレングリセリルエ−テル、SP値=26.4)

・DEGmBE:ジエチレングリコールモノブチルエーテル(和光純薬工業(株)製)(SP値=21.5)
・TEGmBE:トリエチレングリコールモノブチルエーテル(和光純薬工業(株)製)、SP値=21.1)
・DEGmEE:ジエチレングリコールモノエチルエーテル(和光純薬工業(株)製)(SP値=22.4)
・TPGmME:トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(和光純薬工業(株)製)、SP値=20.4)
[実施例1]
1.インク組成物の調製
上記で得られたシアン顔料分散液C、自己分散性ポリマー粒子A−01の分散物を用いて、下記のインク組成となるように各成分を混合し、水性インクを調液した。得られた水性インクは、プラスチック製のディスポーザブルシリンジに詰め、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)製の孔径5μmフィルタ(ミリポア社製のMillex−SV、直径25mm)にて濾過して完成インクとした。
・シアン顔料(ピグメント・ブルー15:3) 2.5%
・前記水不溶性ポリマー分散剤(固形分) 1.25%
・前記自己分散性ポリマー粒子A−01の水分散物(固形分) 8.0%
・サンニックスGP250(SP値26.4) 8.0%
・TPGmME(SP値20.4) 8.0%
・オルフィンE1010(界面活性剤、日信化学工業(株)製) 1.0%
・イオン交換水 71.25%
尚、インク組成物(原液)のpH(25℃)は8.3とした。
2.凝集液の調製
下記組成の成分を混合して、凝集液を調製した。凝集液の粘度、表面張力、及びpH(25℃)を測定したところ、粘度4.9mPa・s、表面張力24.3mN/m、pH1.5であった。なお、粘度、表面張力、pHの測定は、上記と同様の方法で行なった。
<凝集液の組成>
・ジメチルアミン/エピクロロヒドリンコポリマー 5%
(重合比率1:1、重量平均分子量6000)
・DEGmEE(和光純薬工業(株)製) 20.0%
・Zonyl FSN−100(デュポン社製) 1.0%
・イオン交換水 74%
(本発明のメンテナンス液)
下記組成の成分を混合して、メンテナンス液を調製した。ここで、BHT(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール)を添加する場合は、予め使用する水溶性有機溶媒の25%に溶解し、その後に水等のその他の成分を添加して調製した。また、pHは調液直後の値である。
−メンテナンス液1−
・DEGmBE 25%
・BHT 0.01%
・NaHCO 0.04%
・イオン交換水 74.96%
(pH 8.6)
−メンテナンス液2−
・DEGmBE 25%
・BHT 0.002%
・NaHCO 0.04%
・イオン交換水 74.96%
(pH 8.3)
−メンテナンス液3−
・TEGmBE 25%
・BHT 0.01%
・NaHCO 0.04%
・イオン交換水 74.96%
(pH 8.4)
−メンテナンス液4−
・TPGmME 25%
・BHT 0.01%
・NaHCO 0.04%
・イオン交換水 74.96%
(pH 8.4)
−メンテナンス液5−
・DEGmBE 25%
・Na 0.08%
・NaHCO 0.04%
・イオン交換水 74.88%
(pH 9.0)
−メンテナンス液6−
・DEGmBE 25%
・チオジエタノール 1%
・NaHCO 0.04%
・イオン交換水 73.96%
(pH 8.7)
−メンテナンス液7−
・DEGmBE 25%
・BHT 0.01%
・イミダゾール 0.01%
・イオン交換水 74.96%
(pH 6.1)
(比較のメンテナンス液)
−メンテナンス液A−
・DEGmBE 25%
・イオン交換水 75%
(pH 4.83)
−メンテナンス液B−
・DEGmBE 25%
・BHT 0.01%
・イオン交換水 75%
(pH 4.75)
−メンテナンス液C−
・DEGmBE 25%
・NaHCO 0.04%
・イオン交換水 74.96%
(pH 8.5)
−メンテナンス液D−
・DEGmBE 25%
・BHT 0.01%
・NaHCO 0.15%
・イオン交換水 74.84%
(pH 9.4)
(過酸化物量のモル濃度測定法)
試料(溶剤)30gを三角フラスコに取り、これに飽和ヨウ化カリウム水溶液1mlを添加した。0.05N−Na水溶液を0.1mlずつ滴下し、黄色が消えたところを終点とした。黄色の消失までに要した0.05N−Na水溶液量から、試料中の過酸化物濃度を算出した。
(メンテナンス液の保存安定性)
作製した本発明のメンテナンス液及び比較のメンテナンス液をそれぞれ下記の環境下に保存し、保存後のpH(25℃)を測定し、調製直後のpH(25℃)と比較した。得られた結果を表1に示した。
保存条件1:60℃のインキュベーターで14日間
保存条件2:室温(約25℃)で28日間
下記式で表されるpH変化量に基づき、下記評価基準で保存安定性を評価した。
ΔpH=(調製直後のpH)−(保存後のpH)
〜評価基準〜
AA:ΔpHが0.3以内の場合
A:ΔpHが0.3より大きく0.5以下の場合
B:ΔpHが0.5より大きく2.0以下の場合
C:ΔpHが2.0より大きい場合
(ノズルプレートの表面変化)
作製した本発明のメンテナンス液及び比較のメンテナンス液に、ノズルプレート(ヘッド部材)を浸漬し、40℃で5日間保存し、ノズルプレート表面の変化(撥水処理膜の劣化)を目視確認した。変化が無ければ「○」、変化していれば「×」として評価した。得られた結果を表1に示した。

いずれの保存条件でも、本発明のメンテナンス液はpH変化が小さいのに対して、比較のメンテナンス液はpHが大きく変動した。比較のメンテナンス液Dはヘッド部材への損傷が観察された。
(画像形成および評価)
上記で得られたインク組成物、凝集液、及び各種メンテナンス液を組合せて、インクセットとした。
記録媒体として特菱アート両面N(84.9g/m、三菱製紙(株)製)を、500mm/秒で所定の直線方向に移動可能なステージ上に固定し、これに凝集液をワイヤーバーコーターで約5μmの厚みとなるように塗布し、塗布直後に50℃で2秒間乾燥した。
[メンテナンス性の評価]
インクジェット記録装置として、リコー社製GELJET GX5000プリンターを改造したインクジェットプリンターを用い、打滴量3.5pL、インク塗設量が5g/mとなる量でインク組成物を下記(1)〜(3)の条件で吐出後に、前記インクジェットプリンターに装填された前記メンテナンス液をヘッドのノズル面にローラーにて付与した後、ワイパブレード(水素化NBR)でインクジェットヘッドのノズル面をワイピングし、その後の再吐出性評価の結果より、その合否を判定した。ついで下記評価基準に従ってメンテナンス性を評価した。結果を表2に示した。
〜再吐出性評価の評価基準〜
(1)60分連続吐出終了直後にブレードワイプを1回実施し、その後のインク吐出率が90%以上の場合、合格。
(2)1分間吐出後30分休止し、休止後にブレードワイプを1回実施し、その後のインク吐出率が90%以上の場合、合格。
(3)10分間吐出終了直後にブレードワイプを1回実施し、その後に形成された画像に画像ムラが見られない場合、合格。
−インク吐出率の測定法−
実験開始時に全ノズルが吐出していることを確認し、メンテナンスを含めた実験終了後の吐出ノズル数をカウントして、下記の通り吐出率を算出した。
吐出率(%)=[メンテナンス後の吐出ノズル数]/[全ノズル数]×100(%)
〜評価基準〜
A:3項目とも合格の場合
B:2項目が合格の場合
C:1項目のみ合格の場合
D:3項目とも不合格の場合
本発明のメンテナンス液を用いたインクセットは、いずれも優れたメンテナンス性を示し、吐出ヘッド部のクリーニングが良好に成されていて、ヘッドの目詰まり故障の発生が抑制された。

Claims (11)

  1. 水と、エーテル結合を有する水溶性有機溶媒と、塩基性化合物と、酸化防止剤とを含み、25℃におけるpHが6〜9であるインクジェット記録用メンテナンス液。
  2. 前記水溶性有機溶媒が下記一般式(1)で表される化合物から選ばれる請求項1に記載のインクジェット記録用メンテナンス液。

    (式中、Rはエチレン基またはプロピレン基を表し、R、Rはそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表し、xは1〜4の整数を表す。)
  3. 前記酸化防止剤の含有量が前記水溶性有機溶媒の全質量に対して、0.008質量%以上である請求項1又は請求項2に記載のインクジェット記録用メンテナンス液。
  4. 前記酸化防止剤がチオエーテル基を有する化合物、オルト位の少なくとも一つが炭素原子数3以上のアルキル基で置換されているフェノール構造を有する化合物、及び還元能を有する無機酸の塩又はエステルの中から選択される少なくとも一種を含有する請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のインクジェット記録用メンテナンス液。
  5. pHが7〜10であるインクジェット記録用インク組成物と、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のインクジェット記録用メンテナンス液と、を有するインクジェット記録用インクセット。
  6. 前記インクジェット記録用インク組成物が顔料を含む顔料インクである請求項5に記載のインクジェット記録用インクセット。
  7. 前記顔料は、その表面の少なくとも一部がアニオン性ポリマー分散剤で被覆された水分散性顔料である請求項6に記載のインクジェット記録用インクセット。
  8. 前記インクジェット記録用インク組成物がポリマー粒子の少なくとも1種を更に有する請求項5〜請求項7のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インクセット。
  9. 前記インクジェット記録用インク組成物中の成分を凝集させる凝集剤を含む処理液を更に有する請求項5〜請求項8のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インクセット。
  10. 請求項5〜請求項9のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インクセットを用いて、前記インクジェット記録用インク組成物をインクジェットヘッドから吐出して記録媒体に付与するインク付与工程と、インクジェット記録用メンテナンス液により前記インクジェットヘッドに付着したインクジェット記録用インク組成物を除去するインク除去工程と、を有する画像形成方法。
  11. 前記インクジェット記録用インク組成物中の成分を凝集させる凝集剤を含む凝集液を前記記録媒体に付与する凝集液付与工程を更に有する請求項10に記載の画像形成方法。
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