この発明に係る保持治具に保持される小型部品は、小型部品の製造工程、搬送工程等において保持される必要性のある、小型部品を製造可能な小型部品用部材、例えば、小型器具用部材、小型機械要素用部材及び小型電子部品用部材等が挙げられる。また、小型部品の製造には小型部品の搬送工程等も含まれるから、小型部品は、小型部品そのもの、例えば、小型器具、小型機械要素及び小型電子部品等も含まれる。したがって、この発明においては、小型部品と小型部品用部材とは明確に区別される必要はなく、「小型部品」と称しても「小型部品及び小型部品用部材」を意味することがある。小型電子部品及び小型電子部品用部材としては、例えば、コンデンサチップ(積層セラミックコンデンサチップとも称されることがある。)、インダクタチップ、抵抗体チップ等の完成品若しくは未完成品等、及び/又は、これらを製造可能な例えば、角柱体若しくは円柱体、一端部に鍔を有する角柱体若しくは円柱体、両端部に鍔を有する角柱体若しくは円柱体等が挙げられる。
このような小型部品は、例えば、通常、保持治具の保持孔に挿入された状態における軸線長さが1.0〜3.2mmの寸法を有している。この発明に係る保持治具はその平面度が非常に高いから、前記寸法よりもより一層小型化された小型部品を用いることができる。例えば、この発明に係る保持治具に保持されることのできる、より一層小型化された前記小型部品として前記軸線長さが0.4〜1.0mmの小型部品を挙げることができる。
この発明に係る保持治具は、小型部品を保持して、小型部品を製造する工程、小型部品を搬送する工程、及び/又は、小型部品の保存等に使用される。この保持治具は、小型部品用部材例えばコンデンサチップ用部材の端部に電極を形成する工程に好適に使用され、例えばコンデンサチップ用部材の両端部に電極を順次又は一挙に形成する工程に特に好適に使用される。
この発明に係る保持治具は、厚さ方向に貫通形成された支持孔を有する補強部材と、前記補強部材を埋設し、前記支持孔の内部を通るように貫通形成された保持孔を有する弾性部材とを備えている。そして、この発明に係る保持治具は0.05mm以下の平面度を有している。換言すると、この発明に係る保持治具はその弾性部材が0.05mm以下の平面度を有している。このように前記保持治具が前記範囲の平面度を有していると、特に前記軸線長さが0.4〜1.0mmの小型部品であっても、複数の小型部品を均一な状態、例えば、弾性部材から一定の突出量となるように保持することができる。この発明に係る保持治具は保持する小型部品における前記軸線長さに応じて厚さが調整される。
この発明に係る保持治具の一例である保持治具1を、図面を参照して、説明する。この保持治具1は、図1及び図2に示されるように、厚さ方向に貫通形成された支持孔13を有する補強部材6と、この補強部材6の支持孔13が形成された領域(支持孔形成領域とも称する。)13Aを埋設し、前記支持孔13の内部を通るように貫通形成された保持孔11を有する弾性部材5とを備えている。
この保持治具1は、その表面における平面度の値が0.05mm以下である。平面度の値が0.05mm以下であると、複数の小型部品を均一な状態例えば弾性部材5からの小型部品の突出量が一定となるように保持することができる。前記のような、より一層小型化された小型部品であっても均一な状態に保持することができる点で、前記平面度の値は0.03mm以下であるのが特に好ましい。平面度の下限値は、理想的には「0」であるが、0.01mm程度が現実的である。この発明において、前記保持治具1の平面度は、その測定方法からも明らかなように補強部材6を埋設した弾性部材5の表面を測定して得られるから、弾性部材5の平面度と称することもできる。
前記平面度は次のようにして測定し求める。すなわち、保持治具1を吸着機構の設けられた平坦なベース上に置いて前記吸着機構で平坦となるように固定した後に、弾性部材5の任意の測定部分を10点選択し、各測定部分にレーザーを照射して前記測定部分の厚さを非接触にて測定する(厚さの測定には、例えば、レーザー変位計(商品名:LK−G35、キーエンス社製)を使用することができる。)。このようにして測定された測定値のうち最大測定値から最小測定値を引いた値、すなわち、測定値の最大差分を前記保持治具1の平面度とする。
補強部材6は、弾性部材5に埋設されて、弾性部材5が平坦になるように、弾性部材5を補強する。補強部材6は、図2及び図3に示されるように、支持孔13が貫通形成される支持孔形成領域13Aと、支持孔形成領域13Aにおける1組の対向する端縁から外側に向かって延在する1組の端部17と、支持孔形成領域13Aの外側であって補強部材6の四隅近傍に穿孔された位置決め孔16とを有する矩形の板状を成している。換言すると、補強部材6は1組の対向する端部17に挟まれた支持孔形成領域13Aが画成されている。この位置決め孔16は、保持治具1の製造工程、小型部品の製造工程等において位置決めされる際の基準となる。
補強部材6の支持孔形成領域13Aには、弾性部材5の保持孔11が貫通する支持孔13が貫通形成されている。この支持孔13は、多数、例えば、約100個以上、好ましくは少なくとも約1000個以上、より好ましくは少なくとも約2000個以上が形成されている。補強部材6に多数の支持孔13が形成されると、保持治具1を用いた小型部品の製造方法における生産性が向上する。この支持孔13は、通常、後述する保持孔11が形成されるパターンと同一のパターンで形成され、この例においては保持孔11と同様に8列×10行の碁盤目状に穿孔されている。支持孔13の穿孔間隔は、保持治具1に挿入保持する小型部品のサイズ等によって、任意に調整することができる。支持孔13の開口部形状、及び、支持孔13を補強部材6に平行な水平面で切断したときの断面形状は、特に限定されず、例えば、円形、楕円形、矩形、多角形等の形状を任意に選択することができる。前記開口部形状及び前記断面形状は同じ形状であるのがよい。この補強部材6において、支持孔13の開口部形状及び断面形状は略長方形とされている。なお、この支持孔13は、保持孔11に保持される小型部品のサイズに応じて、保持孔11よりも大きな適宜のサイズに調整されている。
補強部材6は、小型部品の生産性、小型部品のサイズ及び保持治具1の強度等を考慮して、そのサイズが調整される。例えば、補強部材6の厚さは、通常、0.1〜1mmに調整され、より一層小型化された前記小型部品を保持することを目的とするのであれば0.1〜0.6mmに調整される。保持治具1はより一層小型化された前記小型部品を保持する保持治具であるから補強部材6の厚さは0.1〜0.6mmに調整されている。
補強部材6は弾性部材5を平坦な形状に維持することのできる材料で形成される。このような材料として、金属及び樹脂等が挙げられる。具体的には、金属として、ステンレス鋼、炭素鋼、アルミニウム又はアルミニウム合金及びニッケル合金等が挙げられ、樹脂として、例えば、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン及びポリ塩化ビニル等が挙げられる。補強部材6は、加工性、操作性の観点から、ステンレス鋼、アルミニウム又はアルミニウム合金及びポリフェニレンスルフィド樹脂等で形成されるのがよく、強度と軽さとを高い水準で両立することができる点で、ステンレス鋼で形成されるのが特によい。
保持治具1の前記弾性部材5は、図1及び図2に示されるように、補強部材6の支持孔形成領域13Aに形成され、前記端部17には形成されていない。このように、弾性部材5は前記支持孔形成領域13Aをその両表面側から埋蔵すると共に支持孔13の内部を貫通する保持孔11を有している。すなわち、弾性部材5は、支持孔形成領域13Aの両面を被覆すると共に補強部材6の支持孔13に貫入するように、形成されている。このように、弾性部材5は、その一部が補強部材6の支持孔13に貫入してなる柱状体を介して補強部材6の両面に配設された2つの板状成形体が一体に成っている。さらにいうと、弾性部材5は、支持孔形成領域13Aの一方の表面を覆う第1の板状成形体と、支持孔形成領域13Aの他方の表面を覆う第2の板状成形体と、第1の板状成形体及び第2の板状成形体を連結する柱状体とを備え、前記柱状体は前記支持孔13の寸法と同じ寸法を有し、その軸線上に保持孔11を有している。このように弾性部材5が形成されると、弾性部材5と補強部材6との密着性に優れる上、小型部品の挿入及び抜取りが容易になる。ここで、前記弾性部材5は、前記支持孔13それぞれの軸線と前記保持孔11それぞれの軸線とが一致するように、前記補強部材6特に平坦部14を埋設している。換言すると、保持孔11は、図2に示されるように、支持孔13内を、互いの軸線Cを共有するように、貫通形成されている。さらにいうと、補強部材6に穿孔されたある支持孔13を貫通する保持孔11はその軸線Cがこの支持孔13の軸線Cと一致する位置に穿孔されている。
弾性部材5は、図1及び図2に示されるように、自身に挿入又は貫入された小型部品を弾発的に保持する、厚さ方向に貫通する保持孔11を有している。弾性部材5は、保持孔11を多数有しており、通常、前記支持孔13と同数有している。この保持孔11は、小型部品の寸法、生産性等を考慮して、所望のパターンに従って形成され、前記支持孔13と基本的に同様に、縦10列×横8行に所定の間隔をあけた碁盤目状に形成されている。
弾性部材5の表面に開口する保持孔11の開口部形状、及び、保持孔11を弾性部材5に平行な水平面で切断したときの断面形状は、特に限定されず、例えば、円形、楕円形、矩形、多角形等の形状を任意に選択することができる。前記開口部形状及び前記断面形状は同じ形状であるのがよい。この弾性部材5において、保持孔11の開口部形状及び断面形状は支持孔13と同様に略長方形とされている。なお、この保持孔11は、小型部品のサイズに応じて、前記支持孔13よりも小さな適宜のサイズに調整されている。
前記弾性部材5は、図1及び図2に示されるように、保持治具1の製造工程において後述する規制体が補強部材6に当接して成る規制体跡12を有している。この規制体跡12は、補強部材6の両表面に当接した規制体の周囲に配置された弾性材料が硬化して弾性部材5に形成された穴であり、その底面は補強部材6の表面になっている。すなわち、規制体跡12は、補強部材6の両表面に配置された弾性材料中に規制体が存在していたことを示すものである。弾性部材5においては、図1に示されるように、保持孔11の長辺方向に略等間隔で4つの規制体跡12が、また、保持孔11の短辺方向に略等間隔で5つの規制体跡12が、保持孔11と同様の配列パターンで形成されている。
弾性部材5は、小型部品を挿入及び/又は抜き取る際に適度に弾性変形し、かつ、破損しないように、所定の伸び、引張強さ及び硬度を有しているのが好ましい。例えば、JIS K6249に規定の切断時伸び(引張速度500mm/min)は200〜1000%であるのが好ましく、400〜900%であるのが特に好ましく、JIS K6249に規定の引張強さ(引張速度500mm/min)は5〜15MPaであるのが好ましく、7〜14MPaであるのが特に好ましく、JIS K6253に規定の硬度(JIS A)は20〜80であるのが好ましく、40〜60であるのが特に好ましい。前記JIS K6249に規定の切断時伸び及び引張強さは、23℃、湿度50%の環境下で、3号ダンベル形状の試験片を作製して、切断時伸びはつかみ具間隔を標線距離で20mmに設定して、実施する。弾性部材5は、弾性変形し、小型部品を挿入保持することのできる成形材料で形成されていればよく、例えば後述するゴム及びエラストマー等が挙げられる。
弾性部材5は、小型部品の生産性及び小型部品の寸法等を考慮して、その寸法が調整されている。例えば、弾性部材5の厚さは補強部材6の厚さとこの補強部材6の両表面に形成された両板状成形体の厚さとの合計厚さであり、小型部品の寸法等に応じて調整される。具体的には、前記板状成形体の厚さは通常0.05〜0.3mmに調整され、より一層小型化された小型部品を保持することを目的とするのであれば0.05〜0.1mmに調整される。この保持治具1はより一層小型化された小型部品を保持する保持治具であるから、前記板状成形体の厚さは0.05〜0.1mmに調整されている。このように厚さの薄い弾性部材5としての前記板状成形体と厚さの薄い前記補強部材6とを備えた保持治具1は薄葉状保持治具とも称することができる。なお、弾性部材5の厚さが小型部品の軸線長さよりも薄いと保持孔11に小型部品が貫通した状態に保持することができ、例えば、保持治具1を反転させるだけで小型部品の両端部を連続して処理することができる。
この発明に係る保持治具の別の一例である保持治具2は、図4及び図5に示されるように、厚さ方向に貫通形成された支持孔13を有する補強部材8と、この補強部材8の平坦部14を埋設し、前記支持孔13の内部を通るように貫通形成された保持孔11を有する弾性部材7とを備えている。この保持治具2は、その厚さが比較的厚くなっている点で、薄葉状の前記保持治具1と異なる。
前記補強部材8は、図5及び図6に示されるように、前記補強部材6の端部17に代えて、支持孔13が形成される支持孔形成領域である平坦部14の周囲に平坦部14を囲繞する鍔部15を有し、前記位置決め孔16が平坦部14の四隅に穿孔されていること以外は、前記補強部材6と基本的に同様である。すなわち、補強部材8の平坦部14は補強部材6の支持孔形成領域13Aに対応し、多数の支持孔13が穿孔されている。前記鍔部15は、図5に明確に示されるように、平坦部14の端面に連設形成され、平坦部14の厚さよりも大きな厚さを有している。この鍔部15は、平坦部14の上面方向及び下面方向における突出量が一定になるように調整され、その厚さは、後述する弾性部材7の表面と面一となる厚さに調整されている。したがって、鍔部15の厚さは弾性部材7の厚さと同じ厚さに調整される。前記平坦部14の厚さは、弾性部材7が平坦になるように補強できる厚さであればよく、例えば、0.1〜7.0mmに調整され、好ましくは5.9〜7.0mmに調整される。前記弾性部材7は、平坦部14を埋設して鍔部15と面一になるように形成されていること以外は、保持治具1の弾性部材5と基本的に同様である。弾性部材5の厚さは、例えば、8.9〜10mmに調整される。
この発明に係る保持治具、例えば前記保持治具1及び前記保持治具2は、その平面度の値が0.05mm以下であるから、小さな値の前記平面度を有する保持治具、換言すると、平面度の値が小さく実質的に歪のない保持治具である。前記範囲の平面度の値を有する保持治具は、複数の小型部品を均一な状態、例えば弾性部材からの小型部品の突出量が一定となる状態に、保持することができ、その結果、精度の高い小型部品を製造すること、特に、精度の高い多数の小型部品を一挙に製造することができる。
この発明に係る保持治具は、例えば、この発明に係る保持治具の製造方法によって、製造することができる。すなわち、この発明に係る保持治具の製造方法は、厚さ方向に貫通形成された支持孔を有する補強部材と、この補強部材の少なくとも1部、例えば前記支持孔形成領域13A又は前記平坦部14を埋設し、前記支持孔の内部を通るように貫通形成された保持孔を有する弾性部材とを備えてなる保持治具を製造する方法である。
この発明に係る製造方法は、補強部材を、その厚さ方向の両表面に当接する規制体、好ましくは複数の規制体で挟持した状態で、この補強部材を挟むように補強部材の両表面側に配置された弾性材料をプレス成形する成形工程を有している。このように、補強部材は弾性部材を形成可能な弾性材料と一体的にプレス成形される。前記規制体は、挟持した補強部材の両表面に当接して補強部材がその厚さ方向に変形することを規制する。この規制体は、好ましくは、中心軸を共有して前記補強部材を介して互いに対向するように形成されている。規制体がこのように形成されていると、規制体で規制される補強部材の変形をより一層効果的に抑えることができる。補強部材の各表面に当接する規制体の数は複数であるのが好ましく、補強部材の寸法等を考慮して適宜の数とされ、例えば、2〜20とされる。規制体は補強部材に当接してその変形を防止できる形状に成形されていればよい。
この発明に係る製造方法において、弾性材料は、補強部材の両表面側に配置されればよく、例えば、前記両表面それぞれに接触するように配置されても、非接触状態となるように配置されてもよい。
この発明に係る製造方法において、プレス成形は、補強部材を規制体で挟持した状態で弾性材料を成形できる方法等を採用することができ、例えば、成形金型を用いたプレス成形を好適に挙げることができる。この発明に係る製造方法において、弾性部材を形成可能な弾性材料をプレス成形する条件としては、弾性材料を硬化させることのできる条件であればよく、例えば、弾性材料に応じて、プレス圧力、加熱温度等の条件が適宜に設定される。成形金型を用いたプレス成形に好適に用いられる金型としては、例えば、図7に示される成形金型30A、図10に示される成形金型30B等が挙げられる。
以下、成形金型30Aを用いて前記保持治具1を製造する製造方法を例に挙げて、この発明に係る保持治具の製造方法の一例(以下、この発明に係る一製造方法と称することがある。)を説明する。
この発明に係る一製造方法においては、まず、補強部材6を作製する。補強部材6は、前記金属又は樹脂等製の板体から平坦な板状体を切り出し、この板状体の支持孔形成領域13Aに対応する領域に所定形状を有する多数の支持孔13を、研削、切削、やすり仕上げ等によって所定のパターンに穿設して、作製される。この発明において、補強部材6特に支持孔形成領域13Aは規制体で規制された状態で弾性材料が硬化されるから、この補強部材6の支持孔形成領域13Aを薄肉化、例えば0.1〜0.6mmに薄肉化しても製造される保持治具1の平面度の値を前記範囲内に調整することができる。この発明に係る一製造方法において、作製した補強部材6における支持孔形成領域13Aの両表面に、弾性部材5との密着を高めるために、所望により、接着剤又はプライマー等が塗布されてもよい。
この発明に係る一製造方法においては、次いで、この補強部材6を用いて成形工程を実施する。この成形工程は、成形金型30Aを用いて、補強部材6を規制体44A及び54Aで挟持した状態で弾性材料を、弾性材料が硬化成形する条件、例えば、加圧下及び/又は加熱下で、プレス成形する。この成形工程として、図7及び図8に示される成形金型30Aを用いた好適な成形工程を例にして説明する。
この発明に係る一製造方法に好適に用いられる成形金型30Aは、図7及び図8に示されるように、弾性材料を収納可能な収納凹部33Aの相対面する内面42及び52それぞれに、これらの内面42及び52それぞれから他の内面52及び42に向かって突出する規制体44A及び54Aが立設された成形金型である。この成形金型30Aにおいて、前記規制体44A及び54Aは、それぞれ、複数が立設され、好ましくはその少なくとも1組が、この例においては図7及び図9に示されるようにすべての組が中心軸を共有して互いに対向するように前記内面42及び52に形成されている。前記規制体44A及び54Aは、図9に示されるように、それぞれ、収納凹部33Aに収納された補強部材6の厚さ方向の両表面に、好ましくは中心軸を共有した状態で当接して、補強部材6を挟持する。
前記成形金型30Aは、より具体的には、弾性材料が収納される収納凹部33Aを形成する第1凹部41Aの底面42から開口43に向かって突出する第1規制体44Aが第1凹部41A内に立設された第1金型31Aと、収納凹部33Aを第1凹部41Aと共に形成する第2凹部51Aの底面52から開口53に向かって突出する第2規制体54Aが第2凹部51A内に立設された第2金型32Aとを備えて成る。前記第1金型31Aは上側成形金型又は可動型と称することができ、前記第2金型32Aは下側成形金型又は固定型と称することができる。
この成形金型30Aは、図9に示されるように、第1凹部41Aの開口43と第2凹部51Aの開口53とが互いに向かい合うように、補強部材6を挟んで第1金型31Aと第2金型32Aとを重ね合せたときに、補強部材6の支持孔形成領域13Aを介してその両表面側に配置された第1凹部41Aと第2凹部51Aとで前記収納凹部33Aが形成される。前記第1凹部41Aの底面42及び第2凹部51Aの底面52は鏡面加工されていてもよい。
まず、第2金型32Aについて説明する。第2金型32Aは、図7及び図8に示されるように、第2凹部51Aの底面52に複数の第2規制体54Aが立設されていること以外は、基本的には、従来の成形金型と同様に構成することができる。すなわち、第2金型32Aは、水平断面が矩形を成しており、その深さ方向に凹陥する第2凹部51Aが凹設されている。この第2凹部51Aは、図9に示されるように、支持孔形成領域13Aの一方の表面を覆い、前記表面上に形成される弾性部材5としての板状成形体の形状及び寸法と基本的に同じ形状及び寸法になっている。したがって、第2凹部51Aは深さの浅い扁平な直方体になっている。
この第2凹部51Aには、図7及び図8に示されるように、4列×5行の互いに垂直に交わる2つの配列方向に所定の間隔で配列された20本の第2規制体54Aが立設されている。これらの第2規制体54Aは、図9に示されるように、成形金型30Aに補強部材6を定置したときに、補強部材6の支持孔13に対向しないように、具体的には、2つの配列方向それぞれにおいて、最外列の支持孔13を除いて2つの支持孔13を挟む間隔で配列されている。その配列状態は、規制体跡12を第2規制体54Aと仮定すると、図1に示されている。第2規制体54Aそれぞれは、水平断面が略円形の棒状体であり、収納第1金型31Aと第2金型32Aとの間に定置された補強部材6の表面すなわち支持孔形成領域13Aの表面に当接するように第2凹部51Aの深さと同じ高さに調整されている。したがって、第2規制体54Aは、支持孔13が形成されていない支持孔形成領域13Aの表面に当接して、その先端面に補強部材6を載置、支持して所定の位置に配置する。
前記第2金型32Aは、図7及び図8に示されるように、第2凹部51Aの外側に、補強部材6の位置決め孔16に貫通して補強部材6の定置位置を位置決めする位置決めピン55Aが立設されている。この位置決めピン55Aは補強部材6の厚さと略同一の高さを有している。
第2金型32Aは、図8に示されるように、第2凹部51Aを囲繞する側壁のうち相対向する1組の側壁57及び57に、第2凹部51Aから溢れ出る弾性材料を一時的に貯留する貯留部58が形成されている。この貯留部58及び第2凹部51Aの相対向する内側面に開口し、貯留部58と第2凹部51Aとを連通させて収納凹部33Aに配置された過剰の弾性材料を排出させる排出孔56が前記側壁57それぞれに4本ずつ設けられている。相対向する側壁57に設けられた排出孔56は、図8に示されるように、反対側の側壁57に設けられた排出孔56と中心軸を共有している。排出孔56の開口はその中心が規制体54の高さの略中央になっている。前記貯留部58は弾性材料が外部に漏出しないようになっており、貯留部58及び排出孔56の容積は形成する弾性部材の体積等に応じて適宜に決定される。
第1金型31Aは、図7に示されるように、前記位置決めピン55Aが形成されていないこと以外は第2金型32Aと基本的に同様である。したがって、第1金型31Aの第1規制体44Aそれぞれは、図7及び図9に示されるように、第2金型32Aの上に定置された補強部材6に第1金型31Aを積層状態に重ね合せたときに、第1凹部41A内で懸垂状態になっている。この第1規制体44Aは、支持孔13が形成されていない支持孔形成領域13Aのもう一方の表面に当接して、その先端面で補強部材6を突き当て押える。
成形金型30Aにおいては、図7に示されるように、第1金型31Aに立設された第1規制体44と第2金型32Aに立設された第2規制体54とのすべてが中心軸を共有して互いに対向している。
この発明に係る一製造方法における前記成形工程は、収納凹部33Aの相対面する内面42及び52それぞれに他の前記内面52及び42に向かって突出する第1規制体44A及び第2規制体54Aが立設された成形金型30Aの前記収納凹部33Aに、第1規制体44A及び第2規制体54Aで補強部材6の厚さ方向の両表面側から挟持された状態に、補強部材6を定置する定置工程と、補強部材6及び収納凹部33Aで形成されたキャビティ34Aに弾性材料を配置する配置工程と、補強部材6の前記挟持状態を維持しつつ前記弾性材料をプレス成形するプレス工程とを有する。
前記定置工程は、第2金型32Aと第1金型31Aとの間に、支持孔形成領域13Aの両表面が第2凹部51A及び第1凹部41Aで覆われる所定の位置に、補強部材6を配置する工程である。補強部材6がこのように定置されると、図9に示されるように、第2規制体54A上に載置された補強部材6は、その支持孔形成領域13Aにおける一方の表面が第2規制体54Aに支持され、支持孔形成領域13Aにおける他方の表面が第1規制体44Aで押えられ、両表面が第1規制体44Aと第2規制体54Aとで挟持される。このとき、補強部材6は、相対向する第1規制体44A及び第2規制体54Aで、同軸上から挟持されている。このように補強部材6は成形金型30Aに挟入されている。前記定置工程が終了すると、図9に示されるように、補強部材6及び収納凹部33Aでキャビティ34Aが形成される。
前記配置工程は、補強部材6及びキャビティ34Aに弾性材料を配置する工程である。この配置工程によれば、前記補強部材6を挟むように、前記補強部材6の厚さ方向の両表面側に接触又は非接触の状態で弾性材料を配置することができる。弾性材料のキャビティ34Aへの配置は、種々の方法を採用することができ、例えば、射出機、ディスペンサー等を用いて前記キャビティ34Aに直接又は前記排出孔56から注入し又は配置する方法等が挙げられ、第1凹部41A及び/又は第2凹部51Aに予め弾性材料を配置しておいてもよいし、形成されたキャビティ34Aに弾性部材を配置してもよい。このように、弾性材料の配置は、弾性材料、作業性等に応じて適宜の方法、手段等を採用することができる。ここで、前記補強部材6の厚さ方向の両表面側に配置される弾性材料は、第1金型31Aにおける第1凹部41Aと貯留部58と排出孔56との合計容積、及び、第2金型32Aにおける第2凹部51Aと貯留部58と排出孔56との合計容積の総容積(第1規制体44A又は第2規制体54Aの合計体積を除く。)に対して20〜55%程度の体積であるのが好ましく、20〜50%の体積であるのが特に好ましい。前記範囲の体積で弾性材料が配置されると、弾性材料のロスを抑えつつ、プレス成形中に第1規制体44A及び第2規制体54Aで挟持された補強部材6の平坦状態をほぼ保持することができる。
前記配置工程は、前記定置工程の前に前記第2凹部51A内に弾性材料を配置する第1配置工程と、前記定置工程の後に前記補強部材6上であって前記第1凹部41A内に弾性材料を配置する第2配置工程とを有しているのが好ましい。このように、前記定置工程の前後に弾性材料を補強部材6の厚さ方向の両表面側それぞれ独立に配置すると、補強部材6の平坦状態を高度に維持することができる。
前記第1配置工程は、前記定置工程の前に、すなわち補強部材6が第2規制体54A上に載置される前に、第2金型32Aの第2凹部51A内に弾性材料を配置する。弾性材料を配置する方法は前記した通りである。第2凹部51A内に配置される弾性材料は前記理由と同様の理由で第2凹部51Aの容積(第2規制体54Aの合計体積を除く。)と貯留部58及び排出孔56に対して20〜55%程度の体積であるのが好ましく、20〜50%の体積であるのが特に好ましい。第2凹部51A内に配置される弾性材料が第2凹部51Aの容積よりも多いと、前記定置工程において収納される補強部材6が第2規制体54Aに載置されない場合があるが、第1金型31Aを第2金型32Aに重ねると、第1規制体44Aによって補強部材6が押圧され、少なくともプレス成形時に補強部材6が第1規制体44Aと第2規制体54Aとで挟持される。このように、この発明において、補強部材6は少なくともプレス成形時に第1規制体44Aと第2規制体54Aとで挟持されていればよく、成形金型30Aに収納されている間中、第1規制体44Aと第2規制体54Aとで挟持されている必要はない。
前記好ましい配置工程においては、次いで前記定置工程が実施され、第2規制体54A及び/又は第2凹部51Aに配置された弾性材料上に補強部材6が載置される。次いで、前記補強部材6上であって前記第1凹部41A内に弾性材料を配置する。第1凹部41A内に弾性材料を配置する方法は前記した通りであるが、第1金型31Aを第2金型32Aに重ねる前に補強部材6の表面上又は第1凹部41A内に弾性部材を予め配置しておくと、第1金型31Aを第2金型32Aに重ね合わせることで補強部材6上であって第1凹部41A内に弾性材料を配置することができ、作業性に優れる。第1凹部41A内に配置される弾性材料は前記理由と同様の理由で第1凹部41Aの容積(第1規制体44Aの合計体積を除く。)と貯留部58及び排出孔56に対して20〜55%程度の体積であるのが好ましく、20〜50%の体積であるのが特に好ましい。第1凹部41A内に配置される弾性材料が第1凹部41Aの容積よりも多いと、第1規制体44Aが補強部材6に接触されない場合があるが、第1金型31Aを第2金型32Aに重ねると、少なくともプレス成形時に補強部材6が第1規制体44Aと第2規制体54Aとで挟持される。
第2凹部51A内に配置される弾性材料と第1凹部41A内に配置される弾性材料との体積は実質的に同じ体積であるのが、補強部材6の両表面側を実質的に同一の状態にすることができ、補強部材6の平坦状態をほぼ保持することができる点で特に好ましい。
この発明に係る一製造方法においては、このようにして、補強部材6をその厚さ方向から挟持した状態を維持しつつ弾性材料をプレス成形する。プレス成形の条件等は前記した通りである。
この発明に係る一製造方法においては、このようにして、補強部材6を埋設した弾性材料を成形してなる一体成形体が形成され、成形金型30Aから取り出される。ここで、キャビティ34Aに配置された弾性材料がキャビティ34A内で偏在しても、また、各排出孔56から排出される弾性材料の排出量が均一でなくても、さらに、プレス成形時のプレス圧力等が部分的に相違していても、図9に示されるように、補強部材6は前記のように第1規制体44A及び第2規制体54Aで挟持され、少なくとも所定のプレス圧力到達時には補強部材6の平坦状態が高度に維持されている。その結果、弾性材料は平坦な状態にある補強部材6を埋設するように硬化成形されるから、補強部材6と弾性材料との一体成形体を成形金型30Aから取り出しても、補強部材6の平坦状態はほとんど変化することなく、保持治具1の前駆体である一体成形体は高い平面性を有している。
この発明に係る製造方法において、弾性材料は、予め成形される必要はなく、未成形体であるのが製造効率に優れる点で好ましい。弾性材料の未成形体としては、例えば、液状、緻粘状、流動性のある状態、ゲル状等の、形状を保持しない状態であればよく、例えば、250〜750Pa・sの粘度(25℃)を有しているのが好ましい。
このような弾性材料としては、弾性部材を形成可能な材料であればよく、例えば、ゴム及びエラストマー等が挙げられ、より具体的には、シリコーンゴムが挙げられる。シリコーンゴムの中でも、高重合度の線状ポリジメチルシロキサン若しくはその共重合体を架橋してゴム弾性を付与したシリコーンゴム、又は、耐酸性のシリコーンゴムが好ましい。高重合度の線状ポリジメチルシロキサンを架橋したシリコーンゴムとしては、例えば、商品名「KE−1950−50」、「KE−9510U」(共に信越化学工業株式会社製)等を入手することができる。この弾性材料には、ゴム及びエラストマーの他に各種の添加剤、例えば、顔料を含有していてもよい。
この発明に係る一製造方法においては、次いで、所望により、一体成形体に生じた成形バリを取り除く工程が実施される。この工程は、例えば、平面研削、フライス研削、ラッピング等の表面処理等が採用される。なお、成形体の表面を鏡面加工することもできる。
この発明に係る一製造方法においては、次いで、所望により、弾性材料の硬化をより一層確実にするため、二次加熱又は熱処理等する加熱工程が実施される。このときの加熱条件等は弾性材料に応じて適宜の条件が採用される。
この発明に係る一製造方法においては、次いで、弾性材料の成形体すなわち前記一体成形体に保持孔11を形成する工程を実施する。保持孔11は、例えば、切削工具、カッター、フライス盤、ボール盤、NCマシニングセンタ、ドリルマシン等を用いて、前記一体成形体に埋設されている補強部材6の支持孔13を通過するように、好ましくは支持孔13と軸線を共有するように、穿孔される。
この発明に係る一製造方法においては、次いで、所望により、保持孔11の穿孔時に生じた成形バリを取り除く工程が、例えば前記成形バリを取り除く工程と同様にして実施される。このようにして、保持治具1を製造することができる。
次に、成形金型30Bを用いて前記保持治具2を製造する製造方法を例に挙げて、この発明に係る保持治具の製造方法の別の一例(以下、この発明に係る別の一製造方法と称することがある。)を説明する。
この発明に係る別の一製造方法においては、まず、補強部材8を作製する。例えば、鍔部15の厚さと同じ又はそれよりも厚い前記金属又は樹脂等製の板体から、支持孔13が形成されていない平坦部とその周囲に鍔部15とを有する板状体を所望寸法に切り出す。又は、支持孔13が形成されていない平坦部と鍔部15とを別個に作製し、溶接又は接着等の接合手段によって、平坦部と鍔部15とを所望の位置に接合して、前記板状体を作製する。このようにして作製された板状体の平坦部に所定形状を有する多数の支持孔13を、研削、切削、やすり仕上げ等によって所定のパターンに穿設して、補強部材8を作製する。あるいは、支持孔13が形成された平坦部14と鍔部15とを別個に作製し、溶接又は接着等の接合手段によって平坦部14と鍔部16とを所望の位置に接合して、補強部材8を作製する。なお、平坦部14の表面に、弾性部材7との密着を高めるために、接着剤又はプライマー等を塗布してもよい。
この発明に係る別の一製造方法においては、次いで、この補強部材8を用いて成形工程を実施する。この成形工程は、この発明に係る一製造方法における成形工程と基本的に同様であり、図10に示される成形金型30Bを用いた好適な成形工程を例にして説明する。この発明に係る別の一製造方法に好適に用いられる成形金型30Bは、図10に示されるように、収納凹部33Bの寸法、規制体44B及び54Bの長さ、位置決めピン55Bの形成位置が異なること以外は、前記成形金型30Aと基本的に同様である。したがって、成形金型30Bはこの発明に係る一製造方法における前記成形金型30Aに対応する。また、成形金型30Bにおいて、第1金型31B、第2金型32B、収納凹部33B、キャビティ34B、第1凹部41B、第1規制体44B、第2凹部51B、第2規制体54B及び位置決めピン55Bはそれぞれ、成形金型30Aにおける第1金型31A、第2金型32A、収納凹部33A、キャビティ34A、第1凹部41A、第1規制体44A、第2凹部51A、第2規制体54A及び位置決めピン55Aに対応する。
前記収納凹部33Bは、第1凹部41Bの開口43と第2凹部51Bの開口53とが互いに向かい合うように第1金型31Bと第2金型32Bとを重ね合せたときに、第1凹部41Bと第2凹部51Bとで形成され、図11に示されるように、補強部材8をその内部に所定の位置に定置するように収納可能になっている。前記第2規制体54Bそれぞれは、前記収納部材33Bに収納された補強部材8の厚さ方向の表面すなわち平坦部14の表面に当接するように、第1凹部41Bの深さよりも平坦部14の厚さの略半分の長さ分だけ短い高さに調整されている。この第2規制体54Bは平坦部14の表面に当接して、その先端面に補強部材8を載置、支持して所定の位置に配置する。第1規制体44Bそれぞれは、前記収納部材33Bに収納された補強部材8の厚さ方向の表面すなわち平坦部14の表面に当接すると共に第1凹部41Bから突出しない高さに調整されている。この第1規制体44Bは、平坦部14のもう一方の表面に当接して、その先端面で補強部材8を突き当て押える。前記位置決めピン55Bは、前記第2金型32Bの第2凹部52の四隅に立設され、収納凹部33Bの高さすなわち鍔部15の厚さと略同一の高さを有している。
この発明に係る別の一製造方法における前記成形工程は、収納凹部33Bの相対面する内面42及び52それぞれに他の前記内面52及び42に向かって突出する第1規制体44B及び第2規制体54Bが立設された成形金型30Bの前記収納凹部33Bに、第1規制体44B及び第2規制体54Bで補強部材8の厚さ方向の両表面側から挟持された状態に、補強部材6を収納して定置する定置工程と、補強部材8及び収納凹部33Bで形成されたキャビティ34Bに弾性材料を配置する配置工程と、補強部材8の前記挟持状態を維持しつつ前記弾性材料をプレス成形するプレス工程とを実施する。
前記定置工程は、成形金型30Bの収納凹部33Bに補強部材8を収納する工程である。補強部材8がこのように収納凹部33Bに収納されると、図11に示されるように、その平坦部14における一方の表面が第2規制体54Bに支持され、平坦部14における他方の表面が第1規制体44Bで押えられ、両表面が第1規制体44Bと第2規制体54Bとで挟持される。このようにして、補強部材8は収納凹部33B内に第1規制体44B及び第2規制体54Bで挟持された状態に収納され、キャビティ34Bが形成される。
この発明に係る別の一製造方法における配置工程は前記キャビティ34Bに弾性材料を配置する工程であり、この発明に係る一製造方法における前記配置工程と基本的に同様である。この発明に係る別の一製造方法においては、このようにして、補強部材8をその厚さ方向から挟持した状態を維持しつつ弾性材料をプレス成形する。プレス成形の条件等はこの発明に係る一製造方法と基本的に同様である。
この発明に係る別の一製造方法においては、このようにして、補強部材8を埋設した弾性材料を成形してなる一体成形体が形成され、成形金型30Bから取り出される。この一体成形体はこの発明に係る一製造方法における一体成形体と同様に高い平面性を有している。
この発明に係る別の一製造方法においては、この発明に係る一製造方法と基本的に同様にして、所望により、成形バリを取り除く工程及び/又は加熱工程が実施され、次いで、前記一体成形体に保持孔11を形成する工程が実施され、所望により、さらに、保持孔11の穿孔時に生じた成形バリを取り除く工程が実施される。このようにして保持治具2を製造することができる。
この発明に係る一製造方法及びこの発明に係る別の一製造方法によれば、前記のように、第1規制体44A又は44Bと第2規制体54A又は54Bとで補強部材6又は8をその厚さ方向側から挟持した状態で補強部材6又は8と弾性材料とを一体成形できるから、製造効率が高いにもかかわらず、一体成形中に補強部材6又は8の平坦状態を保持することができ、一体成形中の補強部材6又は8の平坦状態と保持治具1又は2における補強部材6又は8の平坦状態とをほぼ一致させることができる。したがって、この発明に係る一製造方法及びこの発明に係る別の一製造方法によれば、平面度の値が小さな、例えば、0.05mm以下の保持治具1又は2を製造することができる。
そして、製造された保持治具1又は2は自身の平面度の値が小さいから、複数の小型部品を均一な状態、例えば弾性部材5又は7からの小型部品の突出量が一定となるように保持することができ、製造される部品は高い精度を有する。特に、保持治具1又は2は、前記寸法を有する、より一層小型化された小型部品、例えば、軸線長さがより一層短縮された小型部品であっても、そのほとんどすべてをほぼ均一な状態で保持することができ、製造される部品は高い精度を有する。例えば、保持治具1又は2は、多数のコンデンサチップ用部材を均一な状態で保持することができ、このように保持された各コンデンサチップ用部材の両端部に寸法精度の高い電極を一挙に形成することができる。
このように、この発明によれば、精度の高い小型部品を製造することのできる保持治具、及び、精度の高い多数の小型部品を一挙に製造することのできる保持治具を、効率よく製造できる保持治具の製造方法を提供することができる。
次に、前記成形工程として、前記成形金型30Aに代えて図12に示される第3金型36を用いる好適な成形工程を説明する。この第3金型36は、図12に示されるように、成形ピン37が第2凹部51Aに立設されていること以外は、前記第2金型32Aと基本的に同様である。この第3金型36は、例えば、前記第1金型31Aと共に成形金型を構成する。前記成形ピン37は、第2凹部51Aに補強部材8が定置されたときに、支持孔13を貫通するように支持孔13と同様に配列され、保持孔11とほぼ同様の断面形状を有する壁状体に形成されている。この成形ピン37は、前記成形金型において、収納凹部の高さと略同一の高さで複数が立設されている。換言すると、成形ピン37は、収納凹部の相対面する内面の一方、すなわち第3金型36の底面52から他の内面、すなわち第1金型31Aにおける第1凹部41Aの底面42まで延在するように、形成されている。
前記第3金型36で構成される成形金型は、第1金型31A及び第2金型32Aとからなる前記成形金型30Aを用いた場合と同様に、収納凹部33Aに定置された補強部材6を第1規制体44Aと第2規制体54Aとで厚さ方向から挟持する。そして、第3金型36を用いて前記成形工程を実施すると、平坦状態が高度に維持された補強部材6と弾性材料とを一体成形すると同時に保持孔13を形成することができる。故に、この第3金型36を用いても前記成形金型30Aを用いた場合と同様の効果が得られる。
前記成形金型30Bに代えて前記第3金型36を用いることもできる。この第3金型36は、前記第1金型31Bと共に成形金型を構成して、収納凹部33Aに収納された補強部材8を第1規制体44Bと第2規制体54Bとで厚さ方向から挟持する。したがって、この第3金型36を用いても前記成形金型30Bを用いた場合と同様の効果が得られる。
前記第3金型36を用いると、前記成形金型30A又は30Bを用いる場合に実施される保持孔13を穿孔する工程を実施する必要がなく、前記成形工程後に、所望により、成形バリを取り除く工程、及び/又は、前記加熱工程が実施されて、保持治具1又は2が製造される。
この発明に係る保持治具及び保持治具の製造方法は、前記した実施例に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において種々の変更が可能である。
例えば、前記保持治具1及び2において、支持孔13及び保持孔11はいずれも互いに垂直に交わる2つの配列方向に沿って碁盤目状に整列されているが、この発明において、貫通孔及び保持孔は、例えば、正六角形が最密に配置されるハニカム配列、45度回転して縦横に配列されるスクエア配列、一点から放射状とされる放射形状の配列、放射曲線形状の配列、同心円形状の配列、一点から渦巻き状とされる渦巻き形状の配列等に従って、穿孔されてもよい。
また、保持治具1において、図1〜図3に示されるように、補強部材6は支持孔形成領域13Aの両端縁に端部17が形成され、また、保持治具2において、図4〜図6に示されるように、補強部材8は平坦部14の周囲に鍔部15が形成されているが、この発明において、端部又は鍔部は、支持孔形成領域又は平担部の周囲に形成されている必要はなく、形成されてなくてもよく又は支持孔形成領域若しくは平坦部の少なくとも1辺に形成されてもよい。
さらに、保持治具1及び2において、図1〜図6に示されるように、支持孔13は保持孔11の開口部と同様の開口部形状に穿孔されているが、この発明においては、支持孔は保持孔の開口部と異なる開口部形状に穿孔されてもよい。
保持治具1及び2において、補強部材6及び8並びに弾性部材5及び7は、図1〜図6に示されるように、ほぼ正方形又は長方形を成しているが、この発明において、補強部材及び弾性部材は、例えば、多角形、円形、楕円形等を成していてもよい。
また、保持治具1及び2は、図1〜図6に示されるように、8列×10行の互いに垂直に交わる2つの配列方向に配列された保持孔11及び支持孔13を備えているが、この発明において、保持治具は、8列×10行に限定されず、より多数列×より多数列に配列された保持孔及び支持孔を備えていてもよく、具体的には100個以上の保持孔及び支持孔を備えていてもよい。
この発明に係る一製造方法及び別の一製造方法においては成形金型30A及び30Bを用いているが、この発明においては、成形金型30A及び30Bに代えて前記第3金型36、他の金型を用いてもよく、成形金型30A及び30Bを構成する第1金型31A及び31B、第2金型32A及び32Bそれぞれを種々改良した金型を用いてもよい。
例えば、前記成形金型30A及び30Bにおいて、第1規制体44A及び44B並びに第2規制体54A及び54Bは、水平断面が略円形の棒状体とされているが、この発明において、第1規制体及び第2規制体は、水平断面が略円形である必要はなく、例えば、楕円形、多角形、軌条等であってもよく、また、棒状体に限られず、例えば、壁体であってもよい。
また、前記成形金型30A及び30Bにおいて、第1規制体44A及び44B並びに第2規制体54A及び54Bは20本ずつ立設形成されているが、この発明において、第1規制体及び第2規制体が形成される数は弾性材料の配置を大きく妨げない限り特に限定されず、1本であってもよく2本以上であってもよい。
さらに、前記成形金型30A及び30Bにおいて、第1規制体44A及び44B並びに第2規制体54A及び54Bは中心軸を共有するように立設されているが、この発明において、第1規制体及び第2規制体は中心軸を共有することなく交互になるように立設されていてもよい。このとき、隣接する第1規制体及び第2規制体の間隔が大きくなりすぎると補強部材の変形を効果的に防止できないことがあるので、補強部材の変形を効果的に防止するためには隣接する第1規制体と第2規制体との中心軸の間隔は、例えば、5〜10mmの範囲内に設定されるのが好ましい。
前記成形ピン37は、すべて、第3金型37の第2凹部51Aに立設されているが、この発明において、成形ピンは、第3金型及びこれと組み合わされる他方の金型における凹部に立設されていてもよく、好ましくは、成形金型としたときに隣接する成形ピンが他方の金型に立設されており、第3金型と他方の金型とに立設される成形ピンの立設数比は好ましくは1:1〜1:3の範囲内から適宜に選択される。
(実施例1)
厚さ0.3mmのアルミニウム板を縦160mm×横220mmに切り出し、縦0.8mm×横1.5mmの支持孔13を、縦方向及び横方向に3mmの間隔(支持孔13を含む。)で縦50列及び横60行に整列した状態に、穿孔した。このようにして、支持孔13を形成した支持孔形成領域13Aにおける横方向の両側に端部17を有する、図3に示される補強部材6を作製した。この補強部材6の中心点と前記支持孔形成領域13Aの中心点とはほぼ一致していた。この補強部材6にプライマー(商品名「X30−156−20」、信越化学工業株式会社製)を塗布した。
成形金型として図7及び図8に示される成形金型30Aを準備した。この収納凹部33Aを形成する第1金型31A及び第2金型32Aにおける第1凹部41A及び第2凹部51Aそれぞれには、第1規制体44A及び第2規制体54Aが、例えば図1に示されるように前記支持孔13の間に位置するように、かつ、中心軸を共有して互いに対向するように、横方向(支持孔13の長辺方向)に10mm、縦方向(支持孔13の短辺方向)に9mmの間隔で、立設されていた。第1規制体44A及び第2規制体54Aは外径が1mmの円柱体であった。第1金型31Aにおいて、第1凹部41Aの容積(第1規制体44Aの合計体積を除く。)と貯留部58と排出孔56との合計容積は12000mm3であり、第2金型32Aにおいて、第2凹部51Aの容積(第2規制体54Aの合計体積を除く。)と貯留部58と排出孔56との合計容積は12000mm3であった。
一方、弾性材料として、シリコーンゴム(商品名「KE−1950/50AB」、信越化学工業株式会社製)と、顔料(商品名「K−COLOR−W10」、信越化学工業株式会社製)とを含有する、流動性を有するシリコーンゴム組成物(25℃における粘度は500Pa・sであった。)を準備した。
このシリコーンゴム組成物6000mm3(第2凹部51A(第2規制体54Aの合計体積を除く。)と貯留部58と排出孔56との合計容積12000mm3に対して50%)を第2金型32Aの第2凹部51A内にディスペンサーを用いて配置した。次いで、第2金型32Aに配置されたシリコーンゴム組成物の上に前記補強部材6を載置した。その後、前記シリコーンゴム組成物6000mm3(第1凹部41A(第1規制体44Aの合計体積を除く。)と貯留部58と排出孔56との合計容積12000mm3に対して50%)、シリコーンゴム組成物の総量は第1金型31Aの前記合計容積及び第2金型32Aの前記合計容積の総容積24000mm3に対して50%)を、ディスペンサーを用いてこの補強部材6上に配置した。その後、第1金型31Aを第2金型32Aに重ね合わせた。第1金型31Aを第2金型32Aに重ね合わせると、過剰なシリコーンゴム組成物は排出孔56を流通して貯留部58に流入した。次いで、成形金型30Aを徐々に加圧し、最終的に圧力200kgfまで加圧した。このとき、成形金型30Aに収納された補強部材6は第1規制体44Aと第2規制体54Aとでその厚さ方向から挟持されていた。200kgfの圧力を保持したまま、成形金型30Aごと100℃に加熱して20分間プレス成形した。
このようにして得られた一体成形体のバリを除去した後に、200℃で60分加熱して二次加熱した。次いで、この一体成形体にドリルマシン(ファナック株式会社製)を用いて各支持孔13の内部を貫通するように保持孔11を穿孔して、補強部材6の厚さが0.3mmで、弾性部材5の厚さが0.4mmすなわち前記板状成形体それぞれの厚さが0.05mmの保持治具を製造した。
(比較例1)
第1規制体44A及び第2規制体54Aが立設されていないこと以外は前記成形金型30Aと基本的に同様の成形金型を用いて実施例1と基本的に同様にして保持治具を製造した。
(比較例2)
前記シリコーンゴム組成物を第2金型32Aの第2凹部51A内に配置することなく補強部材6を第2規制体54Aに載置し、この補強部材6上に12000mm3(前記総容積24000mm3に対して50%)の前記シリコーンゴム組成物を配置して第1金型31Aを第2金型32Aに重ね合わせたこと以外は、実施例1と基本的に同様にして保持治具を製造した。
(平面度の測定)
製造した各保持治具の平坦度を前記測定方法に従って測定した。その結果、実施例1の保持治具の平面度は0.05mmと小さな値であったのに対して、比較例1及び2の保持治具の平面度はいずれも0.5mmであった。
このように、実施例1の保持治具は、平面度が比較例1及び2の保持治具に対して90%も大幅に低下しているので、この保持治具に保持された複数の小型部品は一定の突出量となるように均一な状態にあり、精度の高い小型部品を製造できることが容易に推測される。