この発明に係る保持治具に保持される小型部品は、小型部品の製造工程、搬送工程等において保持される必要性のある、小型部品を製造可能な小型部品用部材、例えば、小型器具用部材、小型機械要素用部材及び小型電子部品用部材等が挙げられる。また、小型部品の製造には小型部品の搬送工程等も含まれるから、小型部品は、小型部品そのもの、例えば、小型器具、小型機械要素及び小型電子部品等も含まれる。したがって、この発明においては、小型部品と小型部品用部材とは明確に区別される必要はなく、「小型部品」と称しても「小型部品及び小型部品用部材」を意味することがある。小型電子部品及び小型電子部品用部材としては、例えば、コンデンサチップ(積層セラミックコンデンサチップとも称されることがある。)、インダクタチップ、抵抗体チップ等の完成品若しくは未完成品等、及び/又は、これらを製造可能な例えば、角柱体若しくは円柱体、一端部に鍔を有する角柱体若しくは円柱体、両端部に鍔を有する角柱体若しくは円柱体等が挙げられる。
この発明に係る保持治具に保持される小型部品として、これらの小型部品の中でも、前記保持治具に保持されたときに、前記保持治具における保持孔の軸線に沿う軸線長さがより一層短くされた小型部品及びこのような小型部品を製造可能な小型部品用部材が特に好適である。これらの小型部品及び小型部品用部材は、従来の保持治具では、保持位置が不均一となり、例えば、その両端部に寸法精度の高い電極を形成することができなかったが、この発明に係る保持治具によれば、ほとんどすべての小型部品又は小型部品用部材の保持位置を均一に、換言すると、ほとんどすべての小型部品又は小型部品用部材の突出高さを均一にすることができ、この発明の目的をよく達成することができる。このような軸線長さがより一層短くされた小型部品及び小型部品用部材は、例えば、軸線長さがわずか0.4mm程度しかなく、軸線長さが1.6〜3.2mmの従来の小型部品に比して極めて短い。
この発明に係る保持治具は、小型部品を保持して、小型部品を製造する工程、小型部品を搬送する工程、及び/又は、小型部品の保存等に使用される。この保持治具は、小型部品用部材例えばコンデンサチップ用部材の端部に電極を形成する工程に好適に使用され、例えばコンデンサチップ用部材の両端部に電極を順次又は一挙に形成する工程に特に好適に使用される。
この発明に係る保持治具が備えている突出部は、この発明に係る保持治具が備えている保持孔の軸線方向、すなわち、保持治具の厚さ方向に、突出しており、その形状は特に限定されない。例えば、突出部の形状として、後述するように、円柱体、突条体又は壁状体が挙げられ、また、楕円柱体、多角柱体、鉤形、楔形の突条体又は柱状体等が挙げられる。この突出部は、前記柱状体以外の形状を有することもでき、このような形状として、例えば、先端に向かって先細形状となるピン状体等が挙げられる。
前記突出部は、この発明に係る保持治具に設けられることができ、例えば、複数の保持孔が形成された領域を囲繞する領域例えば後述する補強部材の鍔部等に設けられることができ、また、前記領域内に設けられることもできる。この突出部は、前記保持治具例えば前記補強部材に一体に形成されることができ、また、前記保持治具例えば前記補強部材に、ネジ、磁石等の結合手段で着脱自在に形成されることも、又は、接着剤等の接着手段等で固着形成されることもできる。特にネジ、磁石等の結合手段で着脱自在に形成されていていると、保持する小型部品に応じて、所望の軸線長さを有する突出部に交換することができるから、軸線長さの異なる複数の小型部品、また、異なる寸法の電極を形成する小型部品にも使用することができる。
前記突出部は、少なくとも保持治具における一方の表面に形成されていればよく、保持治具における両表面に形成されることもできる。突出部の軸線長さすなわち保持治具からの突出量は、保持する小型部品の突出量と略同じ長さに調整される。この突出部は、保持孔に保持される小型部品の高さを調整することができれば、形成される数に制限はなく、適宜調整することができる。
この突出部は、保持孔の軸線方向に突出し、保持治具に保持される小型部品の突出量と略同じ軸線長さに調整されている。したがって、この突出部は、小型部品の保持状態を想定した被保持想定部と称することもでき、例えば、この発明に係る保持治具は、保持孔と、小型部品の保持状態に形成された被保持想定部とを備えて成るともいうことができる。この被保持想定部は、保持治具に保持される小型部品の突出量と略同じ軸線長さに調整されている。前記突出部はこのように形成されているから、小型部品を保持孔に挿入保持させる際に、この小型部品の挿入を規制して、保持孔に保持される小型部品の突出高さを調整することができる。特に、軸線長さがより一層短くされた小型部品であっても、突出部の軸線長さを調整するだけで、前記小型部品のほとんどすべてを所定の突出高さに調整することができる。
この発明に係る保持治具の一実施例の保持治具1を、図面を参照して、説明する。この保持治具1は、図1に示されるように、小型部品を保持することができるように貫通形成された保持孔11と、この保持孔11の軸線方向に突出し、保持孔11に保持される小型部品の高さを調整する突出部16とを備えて成る。より具体的には、保持治具1は、前記保持孔11を有する弾性部材5と、貫通形成された支持孔13、及び、この支持孔13の軸線方向に突出する前記突出部16を有する補強部材7とを備え、前記補強部材7が前記弾性部材5中に埋設されて成る。
補強部材7は、弾性部材5に埋設されて、弾性部材5が平坦になるように、弾性部材5を補強する。補強部材7は、図1に示されるように、支持孔13が貫通形成される平坦部14と、平坦部14を囲繞する鍔部15とを有する矩形の板状を成している。前記鍔部15は、図1(b)に明確に示されるように、平坦部14の端面に連設形成され、平坦部14の厚さよりも大きな厚さを有している。この鍔部15は、平坦部14の上面方向及び下面方向における突出量が一定になるように調整され、その厚さは、後述する弾性部材5の表面と面一となる厚さに調整されている。
補強部材7の前記平坦部14には、弾性部材5の保持孔11が貫通する支持孔13が貫通形成されている。この支持孔13は、多数、例えば、約100個以上、好ましくは少なくとも約1000個以上、より好ましくは少なくとも約2000個以上が形成されている(図1において、支持孔13の一部を図示していない。)。補強部材7に多数の支持孔13が形成されると、保持治具1を用いた小型部品の製造方法における生産性が向上する。この支持孔13は、通常、後述する保持孔11が形成されるパターンと同一のパターンで形成され、例えば、補強部材7においては、保持孔11と同様に、多数の支持孔13が縦横に所定の間隔をあけて碁盤目状に穿孔されている。支持孔13の穿孔間隔は、保持治具1に挿入保持する小型部品のサイズ等によって、任意に調整することができる。
補強部材7の表面に開口する支持孔13の開口部形状、及び、支持孔13を補強部材7に平行な水平面で切断したときの断面形状は、特に限定されず、例えば、円形、楕円形、矩形、多角形等の形状を任意に選択することができる。前記開口部形状及び前記断面形状は同じ形状であるのがよい。この補強部材7において、支持孔13の開口部形状及び断面形状は略正方形とされている。なお、この支持孔13は、保持孔11に保持される小型部品のサイズに応じて、保持孔11よりも大きな適宜のサイズに調整されている。
補強部材7の前記鍔部15には、図1(b)に明確に示されるように、鍔部15の両表面から、鍔部15の厚さ方向、換言すると、後述する保持孔11の軸線方向に、突出するように、突出部16が形成されている。この突出部16の突出量は、例えば図3に示されるように、保持治具1に小型部品を保持させたときに、小型部品が保持治具1の表面から突出する突出量にほぼ等しくなるように、調整されている。この例においては、鍔部15の両表面に形成された2つの突出部16の突出量P1及びP2と鍔部15の厚さtとの和(P1+t+P2)が小型部品の軸線長さLと略一致すると共に、前記2つの突出部16の突出量P1及びP2が同一(P1=P2)となるように、突出部16の突出量P1及びP2が調整されている。前記突出部16は、図1に示されるように、略円柱体を成し、鍔部15における隅部及び各辺の長手方向略中央部にそれぞれネジで着脱自在に形成されている。
補強部材7は、小型部品の生産性、小型部品のサイズ及び保持治具1の強度等を考慮して、そのサイズが調整される。例えば、補強部材7における鍔部15の厚さtは0.2〜0.7mmに調整され、平坦部14の厚さは0.1〜0.6mmに調整されることができる。軸線長さの短い小型部品であっても、図1に示されるように、保持孔11に小型部品が貫通した状態に保持することができる点で、補強部材7の厚さはこのような小型部品の軸線長さよりも小さいのが好ましく、例えば、鍔部15の厚さtは0.2〜0.6mmに調整され、平坦部14の厚さは0.1〜0.5mmに調整されるのが好ましい。保持治具1をこのような厚さの薄い補強部材7を備えた薄葉状保持治具とすると、小型部品の高さ調整を一度行うだけで、換言すると、小型部品における両端部それぞれの高さ調整を行わなくても、保持治具1を反転させて小型部品の両端部に電極を形成することができ、生産性の向上を図ることができると共に、この発明の目的をよく達成することができる。
補強部材7は弾性部材5を平坦な形状に維持することのできる材料で形成され、前記突出部16は小型部品の保持孔11への押圧挿入時に変形することのない材料で形成される。このような材料として、金属及び樹脂等が挙げられる。具体的には、金属として、ステンレス鋼、炭素鋼、アルミニウム又はアルミニウム合金及びニッケル合金等が挙げられ、樹脂として、例えば、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン及びポリ塩化ビニル等が挙げられる。補強部材7は、加工性、操作性の観点から、ステンレス鋼、アルミニウム又はアルミニウム合金及びポリフェニレンスルフィド樹脂等で形成されるのがよく、強度と軽さとを高い水準で両立することができる点で、ステンレス鋼で形成されるのが特によい。前記補強部材7と前記突出部16とは基本的に前記同じ材料で形成されるのが好ましい。
保持治具1の前記弾性部材5は、図1(a)及び図1(b)に示されるように、多数の保持孔11が穿孔され、前記平坦部14を内部に収容可能な空隙を有している。そして、図1(b)に示されるように、弾性部材5は、補強部材7の平坦部14を埋設し、換言すると、平坦部14の両面を被覆すると共に補強部材7の支持孔13に貫入し、補強部材7の鍔部15と面一になるように、形成されている。すなわち、弾性部材5は、平坦部14の表面に配置され、補強部材7の鍔部15によって囲繞されている。このように、弾性部材5は、その一部が補強部材7の支持孔13に貫入してなる柱状体を介して、補強部材7の両面に配設された2つの板状成形体が一体に成っている。さらにいうと、弾性部材5は、平坦部14の一方の表面を覆う第1の板状成形体と、平坦部14の他方の表面を覆う第2の板状成形体と、第1の板状成形体及び第2の板状成形体を連結する柱状体とを備え、前記柱状体は前記支持孔13の寸法と同じ寸法を有し、その軸線上に保持孔11を有している。ここで、前記弾性部材5は、前記支持孔13それぞれの軸線と前記保持孔11それぞれの軸線とが一致するように、前記補強部材7特に平坦部14を埋設している。換言すると、保持孔11は、図1(b)に示されるように、支持孔13のうち1つの支持孔13を、互いの軸線を共有するように、貫通形成されている。さらにいうと、補強部材7に穿孔されたある支持孔13を貫通する保持孔11は、その軸線がこの支持孔13の軸線と一致する位置に穿孔されている。このように弾性部材5が形成されると、弾性部材5と補強部材7との密着性に優れる上、小型部品の挿入及び抜取りが容易になる。
弾性部材5は、図1に示されるように、挿入又は貫入された小型部品を弾発的に保持する多数の保持孔11を有する。この保持孔11は、小型部品の軸線長さよりも短い軸線長さを有している。保持孔11がこのような軸線長さを有していると、例えば図4に示されるように、小型部品の軸線方向両端部を保持治具1の両表面から突出した状態に保持することができ、小型部品の生産性等を向上させることができる。弾性部材5は、保持孔11を多数、例えば、約100個以上、好ましくは、少なくとも約1000個以上、より好ましくは、少なくとも約2000個以上有している(図1において、保持孔11の一部を図示していない。)。弾性部材5に多数の保持孔11が形成されると、保持治具1を用いた小型部品の製造方法における生産性が向上する。この保持孔11は、小型部品の寸法、生産性等を考慮して、所望のパターンに従って形成される。この例において、保持孔11は縦横に所定の間隔をおいて碁盤目状に形成されている。
弾性部材5の表面に開口する保持孔11の開口部形状、及び、保持孔11を弾性部材5に平行な水平面で切断したときの断面形状は、特に限定されず、例えば、円形、楕円形、矩形、多角形等の形状を任意に選択することができる。前記開口部形状及び前記断面形状は同じ形状であるのがよい。この弾性部材5において、保持孔11の開口部形状及び断面形状は略正方形とされている。なお、この保持孔11は、小型部品のサイズに応じて、前記支持孔13よりも小さな適宜のサイズに調整されている。
弾性部材5は、平坦な表面を有しているのが好ましい。また、弾性部材5は、小型部品を挿入及び/又は抜き取る際に弾性変形し、かつ、破損しないように、所定の伸び、引張強さ及び硬度を有しているのが好ましい。例えば、JIS K6249に規定の切断時伸び(引張速度500mm/min)は200〜1000%であるのが好ましく、400〜900%であるのが特に好ましく、JIS K6249に規定の引張強さ(引張速度500mm/min)は5〜15MPaであるのが好ましく、7〜14MPaであるのが特に好ましく、JIS K6253に規定の硬度(JIS A)は20〜80であるのが好ましく、40〜60であるのが特に好ましい。
弾性部材5は、小型部品の生産性及び小型部品の寸法等を考慮して、その寸法が調整されている。例えば、弾性部材5の厚さは前記補強部材7における鍔部15と面一となる厚さに調整されることができる。弾性部材5が前記した厚さtの鍔部15と面一となる厚さを有していると、保持治具1は、生産性の向上を図ることができると共に、この発明の目的をよく達成することができる点で、特に好ましい。
弾性部材5は、弾性変形し、小型部品を挿入保持することのできる成形材料で形成されていればよく、例えば、ゴム及びエラストマー等が挙げられ、より具体的には、シリコーンゴムが挙げられる。シリコーンゴムの中でも、高重合度の線状ポリジメチルシロキサン若しくはその共重合体を架橋してゴム弾性を付与したシリコーンゴム、又は、耐酸性のシリコーンゴムが好ましい。高重合度の線状ポリジメチルシロキサンを架橋したシリコーンゴムとしては、例えば、商品名「KE−1950−50」、「KE−9510U」(共に信越化学工業株式会社製)等を入手することができる。
この発明に係る保持治具の別の一実施例である保持治具2は、図2に示されるように、小型部品を保持することができるように貫通形成された保持孔11と、保持孔11の軸線方向に突出し、前記保持孔11に保持される前記小型部品の高さを調整する突出部17及び18とを備えて成る。
この保持治具2は、突出部17及び18の形状及び形成位置が異なること以外は、保持治具1と基本的に同様である。すなわち、保持治具2の突出部17は、補強部材8の鍔部15における隅部に鉤形の突条体に形成され、突出部18は、補強部材8の略中央に十字型の突条体に形成されている。これらの突出部17及び突出部18の突出量はほぼ同一になっている。
この発明に係る保持治具は、保持孔で小型部品を弾発的に保持することができる。この発明に係る保持治具に小型部品を保持するには、平坦な表面を有し、保持孔11に仮保持される小型部品を押圧する押圧板を用いると、複数の小型部品を効率よく保持治具に保持させることができる。したがって、この発明に係る保持治具に小型部品を効率よく保持させるには、この発明に係る保持治具は、前記押圧板と共に保持装置を構成するのが好ましい。この発明において、この発明に係る保持治具と前記押圧板とを備えて成る保持装置をこの発明に係る保持装置と称する。
この発明に係る保持治具及びこの発明に係る保持装置を、この発明に係る保持治具として図1に示される保持治具1、小型部品として四角柱体のコンデンサチップ用部材21を例に挙げて、具体的に説明する。このコンデンサチップ用部材21は、保持治具1の保持孔11の軸線に沿う軸線長さが0.4mmであり、従来のコンデンサチップ用部材よりも軸線長さがより一層短くされたコンデンサチップ用部材である。
コンデンサチップ用部材21を保持するには、例えば図3に示されるように、保持孔11の軸線とコンデンサチップ用部材21の軸線とが一致するように、保持孔11にコンデンサチップ用部材21を挿入する。コンデンサチップ用部材21をこのように保持孔11に挿入するには、例えば、保持治具1における保持孔11と同じ間隔で同じパターンで配列された貫通孔を有し、コンデンサチップ用部材21をその軸線が略垂直となる状態に一時的に収納する整列板(図3において図示しない。)を準備する。そして、この整列板を、その貫通孔と保持孔11の軸線との軸線とが略一致するように、保持治具1の上に重ね合わせる。次いで、整列板上に多数のコンデンサチップ用部材21を載置して、整列板を適宜の手段で振動させる。そうすると、コンデンサチップ用部材21は整列板上を移動して貫通孔に一時的に収納される。このようにして貫通孔に一時的に収納されたコンデンサチップ用部材21の端面上に前記押圧板を配置して、この押圧板を保持治具1側に平行移動させる。そうすると、貫通孔に一時的に収納されたコンデンサチップ用部材21は、その保持状態を保持しつつ保持孔11に圧入される。次いで、整列板を除去した後に、図3に示されるように、押圧板20の底面が保持治具1の突出部16に当接するまで前記押圧板20を保持治具1側に平行移動させる。そうすると、図4に示されるように、保持孔11に圧入されたコンデンサチップ用部材21は、保持治具1の弾性部材5の表面から所定の突出高さ(前記突出部の軸線長さP1と一致する高さ)を有し、大多数のコンデンサチップ用部材21の端面を略面一にすることができる。すなわち、大多数のコンデンサチップ用部材21をほぼ均一な状態に保持することができる。なお、必要に応じて、保持治具1の反対側から押圧板20でコンデンサチップ用部材21を同様にして押圧することもできる。
このようにして保持したコンデンサチップ用部材21の端面を例えば電極ペースト浴に浸漬して、前記端面に前記電極ペーストを塗布し、この電極ペーストを乾燥すると、コンデンサチップ用部材21の端面に電極を形成することができる。このとき、前記したように、大多数のコンデンサチップ用部材21は均一な状態に保持されているから、形成される電極は高い寸法精度を有している。
特に、保持治具1はクリアランスのない突出部16を備えているから、軸線長さがより一層短くされたコンデンサチップ用部材21であっても、そのほとんどすべてが前記突出部16の軸線長さP1と略同一の所定の突出高さとなるように、保持孔11に保持される。したがって、保持治具1によれば、寸法精度の高い電極をコンデンサチップ用部材21に形成することができる。
また、保持治具1は、鍔部15の両表面に突出部16を備えているから、押圧板20でコンデンサチップ用部材21を押圧する際に、保持治具1を平坦な面に載置すると、又は、2枚の押圧板20を保持治具1に重ね合わせて押圧すると、両表面に形成された突出部16それぞれによって弾性部材5の両表面に対するコンデンサチップ用部材21の突出量が同時に調整された状態に、コンデンサチップ用部材21を保持孔11に保持させることができる。そうすると、例えばコンデンサチップ用部材21の両端に電極を形成する工程において、保持治具1を単に反転させるのみで、保持されたコンデンサチップ用部材21の両端部それぞれに電極ペーストを塗布することができる。すなわち、保持治具1によれば、電極ペーストを塗布する工程において、塗布されるコンデンサチップ用部材21の端部の突出量を端部毎に調整する必要がなく、電極ペーストの塗布を効率よく行うことができると同時に、高い寸法精度の電極を形成することができる。
コンデンサチップ用部材21に、このような極めて高い寸法精度の電極を形成するには、クリアランスの存在する特許文献2の高さ調整装置は適しておらず、また、薄葉状保持治具の端面すなわち補強部材の端面に支持溝を形成することは容易ではない。ところが、この保持治具1は、軸線長さがより一層短くされたコンデンサチップ用部材21を保持することを目的とする薄葉状保持治具であるから、極めて高い電極の寸法精度が要求される軸線長さがより一層短くされたコンデンサチップ用部材21にも、用いることができ、その有用性は極めて大きい。
なお、前記保持治具2についての説明は省略するが、保持治具2も保持治具1と同様の効果を有している。
この発明に係る保持治具の製造方法を、前記保持治具1を挙げて以下説明する。まず、補強部材7を作製する。補強部材7は、前記金属又は樹脂等製の板体から、平坦部14とその周囲に鍔部15とを有する板状体を切り出して、又は、平坦部14と鍔部15とを別個に切り出しこれらを接合して、作製することができる。このようにして作製された鍔部15に突出部を固定する固定部例えばネジ穴等を必要により形成すると共に、板状体の平坦部14に所定形状を有する多数の支持孔13を、研削、切削、やすり仕上げ等によって、所定のパターンに穿設する。一方、円柱体を成し、ネジ等の固定部を有する突出部16を前記材料で作製する。前記鍔部15の固定部に突出部16の固定部を固定して、補強部材7を作製する。なお、突出部16は所定の厚さ以上の厚さを有する前記板体を用いて、鍔部15と一体に形成することもできる。
このようにして作製した補強部材7を収納可能なキャビティを有する金型を準備し、補強部材7を収納する。金型と補強部材7とで形成される間隙に弾性材料を注入して、弾性材料を成形する。弾性材料の成形方法は、特に限定されず、例えば、圧縮成形、射出成形、トランスファー成形等の成形方法を採用することができる。成形された弾性部材5には、その表面に成形バリが生じていた場合、成形バリを取り除くため、研削等の表面処理が行われてもよい。例えば、表面処理として、平面研削、フライス研削、ラッピング等が挙げられる。なお、弾性部材5の成形後に、弾性部材5の硬化を確実にするため、二次加熱又は熱処理等を行ってもよい。
このようにして成形された成形体に例えば切削工具、カッター等で、埋設されている補強部材7の支持孔13を貫通するように保持孔11を穿孔する。このようにして、保持孔11が貫通形成された弾性部材5を備えて成る保持治具1を製造することができる。
この発明に係る保持治具を製造する別の製造方法として、例えば、以下の方法が挙げられる。まず、補強部材7を収納可能なキャビティを有し、前記保持孔11を形成することのできる成形ピンを備えた金型を準備する。次いで、この金型に補強部材7を収納すると、補強部材7の各支持孔13を貫通するように成形ピンが配置されると共に弾性部材5が形成される部分に空間が形成される。その後、この間隙に弾性材料を注入して、前記製造方法と同様にして前記弾性材料を成形すると、保持孔11を有する弾性部材5が1工程で成形され、前記保持治具1を製造することができる。
この発明に係る保持治具は、前記した実施例に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。例えば、保持治具1においては、支持孔13及び保持孔11は何れも碁盤目状に配列されているが、この発明において、支持孔及び保持孔の配列は碁盤目状に限定されず、支持孔及び保持孔は、例えば、正六角形が最密に配置されるハニカム配列、45度回転して縦横に配列されるスクエア配列、一点から放射状とされる放射形状の配列、放射曲線形状の配列、同心円形状の配列、一点から渦巻き状とされる渦巻き形状の配列等に従って、配列されてもよい。