JP2011137531A - 軟質樹脂発泡一体化ばね - Google Patents

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Tsutomu Kamei
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Abstract

【課題】軽荷重用で、高周波においても十分な減衰が得られ、環境に優しい防振部材及び緩衝部材を提供する。
【解決手段】軟質樹脂発泡一体ばねSは、低反発ウレタンフォーム材1でウレタン発泡成形する際に、鋼材のばね体2を一体的に包みこんだものである。ばね体で荷重を支え、軟質樹脂発泡の粘性によって、単体でヒステリシスを持つ特殊ハイブリッドばねとして機能する。防振部材および緩衝部材として使用すれば、従来のゴムを使用したものに比べ、高い防振効果を得ることができる。圧縮速度に対して軟質樹脂発泡体の粘性が有効に働くため、防振部材および緩衝部材として使用した場合、良好な衝撃吸収性を発揮することができる。ばねが鋼材であるため再利用可能であり、且つ、ウレタンフォーム材は焼却した際に有毒ガスが発生しないため、廃棄した際にも、環境汚染物質の排出量が少ない。
【選択図】図2

Description

この発明は軟質樹脂発泡一体化ばねに関し、防振部材および緩衝部材として使用されるものである。
従来における防振部材および緩衝部材としては、ゴムを使用したもの、ガスやオイルを使用したダンパや、ばねに軟質樹脂を後加工にて巻いたものが知られている。ゴムを使用したものは良好な内部減衰性によって振動を弱めることができ、また、ガスやオイルを使用したダンパは手間がかからず大きなエネルギーを吸収することができるため、広く使用されている。また、軟質樹脂を巻いたばねについてはエネルギーの吸収力に限界があり前述二者に比べると汎用部品までには至っていない。
特開2009−197936
しかしながら、第一者にあってはゴムを使用しているため、廃棄焼却時に有毒ガスが発生する。また第一者は重荷重の場合、低周波での防振では向いているが、圧縮後の戻りは極めて早く、軽荷重の場合、高周波の防振には不向きである。また、第二者にあっては、ガスやオイルを使用しているため、廃棄分解時にこれらが環境に対する汚染物質となり、いずれにおいてもその廃棄処理に手間がかかるという不都合を有した。
さらに、第二者にあっては、ガスやオイルを使用していたため、その構造が複雑となるため、特に、ガスやオイルの漏れを防止するシール構造が必要となるため、生産コストが高額化にならざるを得ないという不都合を有した。
また第三者にあっては、変形量に限りがあるため防振特性にも限界がある。また、無発泡状態であるため、製品重量が重くなるという不都合を有した。
この発明の課題は軽荷重のもので、高周波においても十分な減衰が得られることと、環境に優しい防振部材および緩衝部材を提供する。
前記不都合を解消するために、発明者は、ばねの剛性および軟質樹脂発泡体の強い粘性に着目し鋭意研究した結果、この発明を完成させた。
この発明に係る軟質樹脂発泡一体化ばねは、軟質樹脂を発泡成形しながらばね体を一体化し、特に回復特性を遅くしたものである。
この発明に係る軟質樹脂発泡一体ばねにおいては、軟質樹脂を発泡成形しながらばね体を一体化し、特に回復特性を遅くしたものであるため、ばね体で荷重を支えた状態で、軟質樹脂発泡の粘性によってこのばね体の弾性力を吸収し、弾まない状態を維持することができる。即ち、単体でヒステリシスを持つ特殊ハイブリッドばねとして機能するものである。
ここで用いるばね体はテーパーコイルばね11(図11を参照のこと)で、このばねは初期ばね定数を極めて低く抑えることが可能であり、それに軟質樹脂を一体発泡することにより、軽荷重のものでもしっかりと受け止めることができ、またばねが圧縮されて沈み込むことによりばね定数が次第に高くなることによって、一体発泡ばねそのものが静的に硬いものになるため、低周波での振動を抑えることに有利となる。かつ高周波においても樹脂の粘性を活かし、効率よく振動を吸収することができるので、従来のゴム一体の問題点をクリアできる。本発明は前記の不都合をすべて解消する画期的な一体ばねである。また、テーパーコイルばねの代わりに、不等ピッチばね12(図12を参照のこと)でも同様の効果が期待できる。また用途によっては通常のストレートばねや円錐ばねでもよい。
よって、この軟質樹脂発泡一体ばねを防振部材および緩衝部材として使用すれば、従来のゴムを使用したものに比べ、高い防振効果を得ることができる。
また、図4及び図8に示すように、この軟質樹脂発泡一体ばねは、圧縮時において特に高い抵抗を示すものである。即ち、圧縮速度に対して軟質樹脂発泡体の粘性が有効に働くため、防振部材および緩衝部材として使用した場合、良好な衝撃吸収性を発揮することができる。
さらに、この発明に係る軟質樹脂発泡一体ばねにあっては、ばねが鋼材であるため再利用可能であり、且つ、ウレタンフォーム材は焼却した際に有毒ガスが発生しないため、廃棄した際にも、従来の防振部材と異なり、環境汚染物質の排出量が少なく、地球環境に配慮したものを提供することができる。
また、軟質樹脂発泡体を使用しているため、従来の無発泡のものと比較して変位量を大きくとることができ、より防振効果を発揮することができる。
また、軟質樹脂発泡体を使用しているため、従来の無発泡のものと比較して軽量化を図ることができる。
この発明に係る軟質樹脂発泡一体ばねは、ばね単体において軟質樹脂発泡を施すものである。ここで使用するばね体は、テーパーコイルばねで、固定側を太く、圧縮側を細くした特殊ばねを使用したものである。また、不等ピッチばねでも同様の効果を効果が期待できる。用途によっては通常のコイルスプリングを使用してもよい。またばね体の形態は通常のストレートばね、円錐ばねを基本形態とするが、その用途によっては形を限定するものではない。また軟質樹脂発泡は発泡倍率を調整することによって発泡樹脂の粘性をコントロールすることができることから、設計仕様にあわせた粘性をセッティングすることが可能である。すなわち、軟質樹脂発泡を円錐台などの筒状に発泡成形しながらばね体(円錐状の)を一体的に包み込んだことに最も主要な特徴を有する。
以下、この発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1はこの発明に係る軟質樹脂発泡一体ばねの斜視図、図2は図1におけるII- II断面図、図3は第一実施例の比較データのグラフ、図4は第一実施例の基礎データのグラフ、図5は第一実施例の振動試験の装置を示した図、図6は第一実施例の振動試験結果のグラフ、図7は第二実施例の比較データのグラフ、図8は第二実施例の基礎データのグラフ、図9は第二実施例の振動試験結果のグラフ、図10は第三実施例の断面図、図11は第テーパーコイルばねの斜視図、図12は不等ピッチばねの斜視図である。
図1〜2において、Sはこの発明に係る軟質樹脂発泡一体ばねであり、円錐台をした筒状に形成されている。この軟質樹脂発泡一体ばねSは、低反発ウレタンフォーム材(この発明の「軟質樹脂」に相当する。以下、「ウレタン材」と記す)1でウレタン発泡成形する際にばね体(円錐渦巻き状:以下、「コイルスプリング」と記す)2を一体的に包み込んだものであり、その上下方向は前記コイルスプリング2の伸縮方向に一致している。このため、この軟質樹脂発泡一体ばねSは、図2において、A矢印方向に伸縮する。この軟質樹脂発泡一体ばねSは前記コイルスプリング2を前記ウレタン材1によって一定の厚さtで包み込んだものであるため、その中心部には下方に向かって拡経している貫通孔3が形成される。この貫通孔3はあってもなくても良いし,また、全体形状は円錐台状に限らず、柱状であってもよい。
この軟質樹脂発泡一体ばねSにおいて、前記ウレタン材1は、前記コイルスプリング2を付着した状態で包み込み、その優れた粘性によって前記コイルスプリング2の弾性を減衰する。即ち、この軟質樹脂発泡一体ばねSにおいて、前記コイルスプリング2は荷重を支える部材として機能し、前記ウレタン材1は前記コイルスプリング2の弾性力をある程度無力化し且つ粘性を発揮する部材として機能するものである。前記ウレタン材1のみでは荷重を支えることはできないし、前記コイルスプリング2のみでは弾性力を無力化することはできない。
なお、ここで使用される軟質樹脂発泡体ウレタン材1とはポリオールとイソシアネートを攪拌し化学反応させ、ウレタン結合を形成させたものであり、又、コイルスプリング2とは鋼材でコイル状に形成されたスプリングである。
また、ウレタン発泡成形の方法は従来から使用されている部材を包み込む通常の方法を使用する。
この軟質樹脂発泡一体ばねの使用環境温度は−10°C〜80°Cの範囲であり、圧縮限度は製品の50パーセント,耐久回数は(製品の50パーセント圧縮時)は小(上径10.4mm、下径23.5mm、高さ23mm)の場合100万回、大(上径31.8mm、下径60.6mm、高さ60mm)の場合60万回である。また、使用場所は屋内又は筐体内で使用することが必要である。
この軟質樹脂発泡一体ばねSは防振部材として、工場における機械の制御盤などの防振、研究所における精密電子機器などの防振、同防振を必要とする機材類の防振、一般家庭における戸当たり部の防音防振、エアコン室外機、洗濯機などの一般家電製品の防振、その他、航空機・鉄道・自動車などの輸送機器における防振を図る際に使用することができる。
コイルスプリング2として、材質:SWPB,線径2.3mm,最大中心径:50mm,最小中心径:20mm,有効巻数:5巻,ばね定数;1.08N/mm(50パーセント圧縮時のばね定数は約0.93N/mm),自由長さ;60mmのものを使用した。このコイルスプリング2の試験力(N)と変位(mm)との関係は図3のグラフに示されている。
また、ウレタン材2としては、低反発特殊ウレタンフォーム材(発泡倍率3倍、粘弾性率約80パーセント)品を使用した。
この低反発特殊ウレタン材で前記コイルスプリングを一体的に包み込みながら、軟質樹脂発泡一体ばねSを円錐台の筒状にウレタン発泡成形する。成形された軟質樹脂発泡一体ばねのウレタン厚t(図2を参照のこと)は約10mm、また、成形の際の圧縮速度は100mm/min、自由高さhは60mmである。
このようにして成形された軟質樹脂発泡一体ばねにおける試験力(N)と変位(mm)との関係を図4のグラフに示した。50パーセント圧縮時におけるばね定数は、増側において2.50N/mm,減側において2.36N/mm)であり、ヒステリシスは、0.25N/mmである。図3と比較して、ばね定数が大きくなるとともにヒステリシスを持つようになったのは、コイルスプリングを包み込んでいる低反発特殊ウレタンフォーム材の粘性の作用であると解される。
次に、この実施例1の軟質樹脂発泡一体ばねの振動試験を図5に示す装置によっておこなった。
振動試験は、図5に示すように、テーブル5を4個の軟質樹脂発泡一体ばねに載置する。そして、約11Kgの錘6を載せた状態でおこなう。振動条件として、掃引モード:直線掃引,掃引方向:順方向から逆方向,掃引速度:10.0min/single−sweep,周波数範囲;5.00〜300.00Hz,加速度;5.0m/S2を採用した。
振動試験結果を図6のグラフに示す。27.5Hz時に振動を10分の1に、100Hz以上の時に振動を100分の1に低減することが判明した。この結果、27.5Hz以上の振動に対して、防振部材として使用することができる。
なお、この場合、防振を必要とする物の重さによって、ウレタンフォーム材で包み込むスプリングばねの仕様を変更することによって、同等の防振性能が得られ、さまざまな用途に対応することができる。
コイルスプリング2として、材質:SWPB,線径0.6mm,最大中心径:18mm,最小中心径;6mm,有効巻数:5巻,ばね定数;0.20N/mm(50パーセント圧縮時のばね定数は約0.20N/mm),自由高さ:21mmのものを使用した。このコイルスプリング2の試験力(N)と変位(mm)との関係は図7のグラフに示されている。
また、ウレタン材2としては、低反発特殊ウレタンフォーム材(発泡倍率3倍、粘弾性率約80パーセント)品を使用した。
この低反発特殊ウレタンフォーム材で、前記コイルスプリングを一体的に包み込みながら、軟質樹脂発泡一体ばねSを円錐台の筒状にウレタン発泡成形する。成形された軟質樹脂発泡一体ばねのウレタン厚t(図2を参照のこと)は約5mm、また、成形の際の圧縮速度は50mm/min,自由高さhは21mmである。
このようにして成形された軟質樹脂発泡一体ばねにおける試験力(N)と変位(mm)との関係を図8のグラフに示した。50パーセント圧縮時におけるばね定数は、増側において2.50N/mm,減側において2.36N/mm)であり、ヒステリシスは、0.25N/mmである。図7と比較して、ばね定数が大きくなるとともにヒステリシスを持つようになったのは、コイルスプリングを包み込んでいる低反発特殊ウレタンフォーム材の粘性の作用であると解される。
次に、この実施例2の軟質樹脂発泡一体ばねの振動試験結果をおこなった。
振動試験は実施例1の場合と同じ装置を使用した(図5を参照のこと)。
そして、約4Kgの錘を載せた状態でおこなう。振動条件は実施例1の場合と同様である。
振動試験結果を図9のグラフに示す。50Hz時に振動を10分の1に、100Hz時に振動を20分の1に、200Hz時に振動を100分の1に低減することが判明した。この結果、50Hz以上の振動に対して、防振部材として使用することができる。
なお、この場合、防振を必要とする物の重さによって、ウレタンフォーム材で包み込むスプリングばねの仕様を変更することによって、同等の防振性能が得られ、さまざまな用途に対応することができる。
図10は第三実施例を示したものである。この発明に係る軟質樹脂発泡一体ばねは通常のコイルスプリング同様にばね座に設置して使用されるものであるが、この図に示すようにスプリングばね2をウレタン材1で包み込む際に、ワッシャ7をスプリングばね2に掛け止めした状態で同時に包み込み、このワッシャ7にボルト8を貫通し、取付部材9にナット10止めすることもできる。
この発明に係る軟質樹脂発泡一体ばねは、単体でヒステリシスを持つ特殊ハイブリッドばねとして機能し、圧縮時において特に高い抵抗を示すため防振部材として使用した場合、良好な衝撃吸収性を発揮することができる。
さらに、この発明に係る軟質樹脂発泡一体ばねにあっては、コイルスプリングが鋼材であるため再利用可能であり、且つ、ウレタンフォーム材は焼却した際に有毒ガスが発生しないため、廃棄した際にも、従来の防振部材と異なり、環境汚染物質の排出量が少なく、地球環境に配慮されている。
よって、産業上の利用可能性は極めて高いものである。
図1はこの発明に係る軟質樹脂発泡一体ばねの斜視図である。 図2は同側面図である。 図3は第一実施例の比較データのグラフである。 図4は第一実施例の基礎データのグラフである。 図5は第一実施例の振動試験の装置を示した図である。 図6は第一実施例の振動試験結果のグラフである。 図7は第二実施例の比較データのグラフである。 図8は第二実施例の基礎データのグラフである。 図9は第二実施例の振動試験結果のグラフである。 図10は第三実施例の断面図である。 図11はテーパーコイルばねの斜視図である。 図12は不等ピッチばねの斜視図である。
S … 軟質樹脂発泡一体ばね
A … 軟質樹脂発泡一体ばねの伸縮方向
t … 軟質樹脂発泡一体ばねの厚さ
h … 軟質樹脂発泡一体ばねの高さ
1 … 軟質樹脂発泡体
2 … ばね
3 … 貫通孔
5 … テーブル
6 … 錘
7 … ワッシャ
8 … ボルト
9 … 取付部材
10 … ナット
11 … テーパーコイルばね
12 … 不等ピッチばね

Claims (1)

  1. 軟質樹脂を発泡成形しながらばね体を一体化し、特に回復特性を遅くし た軟質樹脂一体化ばね。
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