JP2011136643A - リム - Google Patents

Abstract

【課題】タイヤの性能を引き出すことが可能なリムを提供する。
【解決手段】車体に装着されるリム３であって、リム３におけるタイヤＴのビード３３：３４が当接する一対のビードシート１３：１４のうち、車体側Ｂのビードシート１４の表面粗さが、他方のビードシート１３の表面粗さよりも粗くなるようにリム３を構成し、当該リム３を備えたホイール２にタイヤＴを組み付けることにより、リム３の幅方向においてタイヤＴが左右非対称にホイール２に組み付けられるようにした。
【選択図】図１

Description

本発明は、タイヤを組み付けるリムに関する。

従来、タイヤを組み付けるホイールには、アルミホイールやスチールホイール等がある。
例えば、鋳造アルミホイールは、素材となるアルミを溶融して鋳型に流し込み、凝固した鋳っ放しのホイールを工作機械により、リム内周面及びリム外周面を加工することにより、リムを所定厚さに成型するとともにリムフランジ、ビードシート、ウェル等を所定寸法及び所定形状に成型し、ディスク表面（意匠面側）及びリムフランジをバフ研磨したのちに、メッキ加工や塗装することにより製造される。
また、スチールホイールは、リムとディスクにより構成される。リムは、リムの素材となるスチール製の板状部材を所定寸法の長方形に断裁し、ベンディング加工により短辺同士を当接させて溶接することにより円筒部材を成型し、円筒部材の両端の開口をフレア加工することによりリムフランジを成型し、さらに、円筒部材を加圧ローラで挟み込み、周方向に回転させ、ビードシートやウェルを所定寸法に拡径するエキスパンド加工により成型される。一方、ディスクは、ディスクの素材となるスチール製の板状部材を打ち抜き加工及びプレス加工することにより立体的な形状に成型される。そして、個別に成型されたリムとディスクとを組み合わせて溶接接合し、全体を塗装することによりスチールホイールが製造される。

上記のように製造されたアルミホイールやスチールホイールには、タイヤ組付装置によりタイヤが組み付けられる。ホイールに組み付けられたタイヤは、コンプレッサの供給する圧縮空気をホイールのバルブを介して注入し、タイヤのビードをホイールのビードシートに着座させるビードシーティングが行われる。ビードシーティングを行った後に、タイヤ内圧を所定の空気圧に調整することにより、車体に取り付け可能なタイヤホイールセットとして組み立てられる。このように、ホイールに組み付けられるタイヤは、スチールホイール、アルミホイール問わず、幅方向中心に対して左右対称となるようにホイールに組み付けられる。

しかしながら、上記のように製造されるホイールにタイヤを対称に組み付けてしまうと、走行時においてタイヤの内側及び外側に作用する力に対応できず、タイヤの性能を十分に引き出すことができないという問題がある。このため、直進性、旋回性に対して影響を及ぼし、車体が不安定となり、運転者に疲労感を与えるおそれがある。

特開２００７−１５７６号公報 特開平１０−１８０３８７号公報

本発明は、上記課題を解決するために、タイヤの性能を引き出すことが可能なリムを提供する。

本発明の第１の構成として、車体に装着されるリムであって、リムにおけるタイヤのビードが当接する一対のビードシートのうち、車体側のビードシートの表面粗さが、他方のビードシートの表面粗さよりも粗くなるようにリムを構成した。
本発明によれば、車体側のビードシートの表面粗さを車体外側の表面粗さよりも粗くしたことにより、車体側のビードよりも車体外側のビードの方がビードシートとの摩擦が小さいので、車体外側のビードをビードシートに対して直立するように密着させ、左右のビードをリムのビードシートに対して左右非対称に着座させることができる。

本発明に係るタイヤ・ホイールセット及びホイールの平面図。 本発明に係るホイールの部分拡大図。 本発明に係るホイールにタイヤのビードを着座させるまでの状態図。 本発明に係るビードが着座したタイヤ・ホイールセットの側面図。 本発明に係るフィーリング試験の評価結果図。

以下、発明の実施形態を通じて本発明を詳説するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明される特徴の組み合わせのすべてが発明の解決手段に必須であるとは限らず、選択的に採用される構成を含むものである。

実施形態１
図１（ａ）はタイヤＴとホイール２とが一体に組み付けられたタイヤ・ホイールセット１の断面図を示し、図１（ｂ）はホイール２の側面図を示す。図２は、ホイール２の部分拡大図を示す。
図１（ａ），（ｂ）において、２は、本発明に係るリム３を備えたホイール、Ｔはタイヤを示す。ホイール２は、リム３及びディスク４が鋳造等により一体に成型されるアルミホイールである。
ホイール２は、溶融されたアルミ素材を金型に流し込むことにより、所定の意匠形状及び所定寸法となるように鋳造される。
ホイール素材は、冷却された後に離型され、旋盤等の加工機械により、ホイール２のリム外周面５及びリム内周面６、ディスク４の意匠面７及び意匠面裏面８が加工される。

ホイール素材の意匠面７側のリム内周面６ａを旋盤のチャックにより保持し、リム外周面５、リム内周面６及び意匠面裏面８が切削加工される。
図２に示すように、リム外周面５には、一対のリムフランジ１１，１２、一対のビードシート１３，１４、ウェル１５とが形成される。
一対のリムフランジ１１，１２は、ホイール２の回転中心Ｏから径方向にタイヤＴの左右方向を保持するように壁状に形成される。
ビードシート１３，１４は、ホイール２の回転中心Ｏと平行な線に対して所定角度、例えば、５度の傾斜角を有するように形成される。一対のビードシート１３，１４は、タイヤＴのビード３３，３４と接触し、半径方向に保持する。なお、リムフランジ１１，１２の傾斜角及びリムフランジ１１，１２とビードシート１３，１４の連接部の曲率は、ＪＩＳ規格により規定される。
ウェル１５は、タイヤＴの着脱を容易にする深さと幅の寸法を有するように任意の形状で形成される。

リム外周面５は、図外の旋盤のチャックとともにホイール２を回転させ、まず、ホイール２の車体外側Ａに位置する一方のリムフランジ１１の縁部１１ａから加工を開始し、リムフランジ１１を所定形状に形成し、次に車体外側Ａのビードシート１３、次にウェル１５、次に車体側Ｂのビードシート１４、次に他方のリムフランジ１２を所定形状に形成する。本例においては、リム外周面５のビードシート１３，１４の加工について、車体側Ｂのビードシート１４を切削加工するときの幅方向の送り速度を車体外側Ａのビードシート１３を切削加工するときの幅方向の送り速度よりも速くなるように設定し、車体側Ｂのビードシート１４の表面粗さを車体外側Ａのビードシート１３の表面粗さよりも粗くする。
なお、切削加工の幅方向の送り速度を変化させて、車体側Ｂのビードシート１４の表面粗さが車体外側Ａのビードシート１３の表面粗さよりも粗くなるように切削加工したが、車体側Ｂのビードシート１４を切削加工するときのホイール２の回転速度を車体外側Ａのビードシート１３を切削加工するときの回転速度よりも遅くするように加工して、車体側Ｂのビードシート１４の表面粗さが車体外側Ａのビードシート１３の表面粗さよりも粗くなるように切削加工しても良い。

次に、リム内周面６とディスク４の意匠面裏面８が加工される。リム内周面６は、リム外周面５との厚さが所定の厚さとなるように加工され、ディスク４の意匠面裏面８には、ホイール２を車体に装着したときにハブと当接する装着面１６、ハブから突出する回転軸の逃げ孔となるハブ孔１７、ハブから突出するハブボルトが貫通する複数のハブボルト孔１８の加工及びブレーキキャリパとの干渉を避けるための逃げ加工が施された後に、タイヤに空気を注入するためのバルブ２１を設けるバルブ孔がリム３に形成される。

次に、ホイール２を旋盤のチャックから取り外し、反転させて車体側Ｂのリム内周面６ｂを旋盤に固定し、意匠面７側のリムフランジ１１の縁部１１ａから意匠面７までのリム内周面６ａを加工する。

次に、リムフランジ１１，１２の切削痕と、鋳造により意匠面７の表面に形成された“なし地”痕が見えなくなるように研磨し、リムフランジ１１，１２に防錆のメッキを施し、意匠面７に塗装を施すことによりホイール２が完成する。

次に、図外のタイヤ組付装置によりホイール２にタイヤＴが組み付けられる。
図３（ａ），（ｂ），（ｃ）は、ホイール２に嵌め込まれたタイヤＴのビード３３，３４がビードシート１３，１４に着座するまでの状態を示した図である。
図３（ａ）に示すように、ホイール２に嵌め込まれたタイヤＴの一方のビード３４は車体側Ｂに位置するビードシート１４と接触した状態であり、他方のビード３４は車体外側Ａに位置するビードシート１３と接触した状態である。この状態から、コンプレッサに蓄えられた圧縮空気をバルブ２１を介してタイヤＴ内に供給することにより、供給された空気がタイヤ内面を外向きに押圧し、図３（ｂ）に示すように、ビード３３，３４がビードシート１３，１４の傾斜面に沿って徐々に移動し、タイヤ内面とリム外周面５により、完全な密閉空間が形成される。さらに、密閉空間内に空気の供給を継続することでタイヤＴ内の内圧を上昇させ、タイヤ内面が均等な圧力で静的に押圧されることにより、図３（ｃ）に示すように、ビード３３，３４がビードシート１３，１４に着座する。

ビード３３，３４がビードシート１３，１４に着座した状態において、車体側Ｂのビードシート１４の表面粗さが、車体外側Ａのビードシート１３の表面粗さよりも粗いため、ビード３４とビードシート１４との間の摩擦が大きくなり、ビード３４の外側側面３４ａがリムフランジ１２と接触した位置で停止し、ホイール２のリムフランジ１２の側縁１２ａよりも外側にサイドウォール３６がはみ出るように傾斜した状態でビード３４が着座する。
一方、車体外側Ａのビード３３は、ビードシート１３の表面粗さが、車体側Ｂのビードシート１４の表面粗さよりも滑らかなため、ビード３３の外側側面３３ａがリムフランジ１１と接触した位置からさらにビード３３がビードシート１３上をリムフランジ１１方向に滑り、サイドウォール３５を径方向に押し上げ、ビードシート１３に直立するようにビード３３が着座する。

図４（ａ），（ｂ）は、ビード３３，３４がビードシート１３，１４に着座した状態を意匠面７側及び意匠面裏面８から側方視した図である。
図４（ａ）に示すように、車体側Ｂのビードシート１４に着座したタイヤＴの側面は、サイドウォール３５側のリムライン３７がホイール２のリムフランジ１２の外周径Ｄよりやや大きい直径Ｄinで表れるが、図４（ｂ）に示すように、車体外側Ａのビードシート１３に着座したタイヤＴの側面は、サイドウォール３６側のリムライン３８がホイール２のリムフランジ１１の外周径Ｄよりも大きな直径Ｄoutで表れる。
つまり、本発明のホイール２に組み付けられたタイヤＴは、図１（ａ）及び図３（ｃ）に示すように、径方向断面において、左右非対称となる。

図５は、従来のホイールにタイヤＴを組み付けたものと、本発明のホイール２にタイヤＴを組み付けたものを車体に装着し、実際に走行して操縦性の総合的なフィーリング試験を実施したフィーリング評価の結果を示す。
図５に示すように、従来のホイールにタイヤＴを装着したものよりも、本発明に係るリム３を備えたホイール２にタイヤＴを組み付けた方が、フィーリング評価において高い評価が得られた。特に、限界走行時の旋回走行において、グリップ力とコントロール性が向上したように体感され、試験したタイヤＴよりも上位のスポーツタイヤと同等の評価が得られた。
フィーリング評価の結果について考察すると、図１（ａ）及び図３（ｃ）に示すように、車体外側Ａのサイドウォールが車体側Ｂのサイドウォールに比べ起きた状態となるため、車体に対し、タイヤＴの踏面に傾斜が付加され、タイヤ・ホイールセット１に小さなキャンバー角を付加したときと同等の状態が得られたため、旋回性能が向上したものと考えられる。また、本発明のタイヤ・ホイールセット１の車体外側Ａのサイドウォール３５の方が車体側Ｂのサイドウォール３６の撓みよりも撓みが小さいため、タイヤＴに荷重が作用したときに、タイヤＴの車体外側Ａに作用する力がサイドウォール３５の径方向に直線的に作用することで、タイヤＴ全体の撓みが減少し、コントロール性が向上したものと考えられる。

なお、上記説明において、切削加工により車体側Ｂに位置するビードシート１４の表面粗さを車体外側Ａに位置するビードシート１３の表面粗さよりも粗く加工するとして説明したが、ホイール２の車体側Ｂに位置するビードシート１４以外をマスキングし、切削加工によりビードシート１４の表面に残る切削痕よりも表面粗さが粗くなるように、例えば、サンドブラストによりビードシート１４の表面を加工して、車体側Ｂのビードシート１４を車体外側Ａのビードシート１３よりも粗くなるように加工しても良い。

また、車体外側Ａのビードシート１３の表面粗さを車体側Ｂのビードシート１４の表面粗さよりも滑らかになるように加工しても良い。
すなわち、リム外周面５を所定寸法となるように切削加工した後に、車体外側Ａのビードシート１３を研磨して、車体外側Ａのビードシート１３の表面粗さが、車体側Ｂのビードシート１４の表面粗さよりも滑らかになるように構成すれば良い。具体的には、意匠面７の研磨を行う工程で、車体外側Ａのビードシート１３を研磨すれば、加工機械を変更する段取りを増やすことなく、本発明を実施することができる。

実施形態２
実施形態１において、ホイールを鋳造により製造されるアルミホイールとして説明したが、スチールホイールであっても良い。
以下、スチールホイールに本発明を適用する場合について説明する。
スチールホイールは、ホイールを構成するリムとディスクとを個別に成型し、リムとディスクとを組み合わせて溶接接合することにより製造される。
リムは、スチール製の板状部材を所定の寸法の長方形に断裁し、短辺同士が当接するようにベンディング加工を施し、当接部分を溶接することにより円筒状に成型される。その後、開口する両端部をフレア加工することによりリムフランジが形成される。さらに、リムを加圧ローラで挟み込み、リムを周方向に回転させつつ加圧ローラを径方向に移動させて拡径するエキスバンド加工を施すことにより、ビードシートやウェルが所定寸法及び所定形状に成型される。一方、ディスクは、スチール製の板状部材を打ち抜き、プレス加工することにより立体的な形状に成型される。別々に成型されたリムとディスクを溶接することで一体にする。
次に、リムの車体側Ｂのビードシート以外の部分をマスキングして、車体側Ｂのビードシートをサンドブラスト等により、車体側Ｂのビードシートの表面粗さが車体外側Ａのビードシートの表面粗さよりも粗くなるように表面を加工し、ホイール全体を塗装することによりスチールホイールを製造する。
なお、サンドブラスト又は機械加工等により加工できない場合には、車体側Ｂのビードシートに摩擦材としてのゴムや粘着材を巻き付けて、車体側Ｂのビードシートを移動するビードに作用する摩擦が、車体外側Ａのビードシートを移動するビードに作用する摩擦よりも大きくなるように設定して、擬似的に車体側Ｂのビードシートの表面粗さを車体外側Ａのビードシートの表面粗さよりも粗くなるようにすれば良い。

以上説明したように、本発明によれば、車体側Ｂに位置するビードシート１４の表面粗さが、車体外側Ａに位置するビードシート１３の表面粗さよりも粗くなるようにリム３をなすことにより、リム３を備えるホイール２に組み付けられるタイヤＴは、ホイール２に非対称に組み付けられるので、タイヤＴの性能を引き出すことが可能となり、当該ホイール２にタイヤＴを組み付けたタイヤ・ホイールセット１を装着した車体は、操縦性が向上する。

なお、上記説明において、ホイールの製造工程において、車体側のビードシートの表面粗さを車体外側のビードシートの表面粗さよりも粗くなるように表面加工するとして説明したが、すでにタイヤが組み付けられたホイールのリムに対して表面加工しても良い。

以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能である。

Ｔ タイヤ、１ タイヤホイールセット、２ ホイール、３ リム、４ ディスク、
５ リム外周面、６：６ａ：６ｂ リム内周面、７ 意匠面、８ 意匠面裏面、
１１：１２ リムフランジ、１１ａ；１２ａ 縁部、１３：１４ ビードシート、
１５ ウェル、１６ 装着面、１７ ハブ孔、１８ ハブボルト孔、２１ バルブ、
３３：３４ ビード、３５：３６ サイドウォール、３７：３８ リムライン、
Ｏ 回転中心、α 傾斜角、Ａ 車体外側、Ｂ 車体側。

Claims (1)

1. 車体に装着されるリムであって、前記リムにおけるタイヤのビードが当接する一対のビードシートのうち、前記車体側のビードシートの表面粗さが、他方のビードシートの表面粗さよりも粗いことを特徴とするリム。

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