以下、本発明の長尺中空状セラミック部材の実施の形態の例について図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明の長尺中空状セラミック部材の実施の形態の一例を示す、(a)は部分破断斜視図であり、(b)は(a)中の破線で囲んだ部分の拡大図である。
図1(a)および(b)に示す例の長尺中空状セラミック部材1は、長手方向に垂直な断面(以下、単に断面という)の外周が四角形状であり、内部に外形が四角形状の中空部
11が形成されている。また、この長尺中空状セラミック部材1の断面において、中空部11の外形の外周角部の近傍には、それぞれ長手方向に延びる溝12が設けられている。この溝12の断面形状は、底が丸みを帯びた形状のいわゆるUの字形状である。なお、図1(b)に示す溝12の深さD1および幅W1については後述する。
本発明の長尺中空状セラミック部材は、長手方向に貫通した中空部11を有する長尺中空状セラミック部材1であって、その断面の外周が多角形状であり、中空部11の外形の断面の外周角部の近傍(以下、断面の外周角部の近傍を単に外周角部近傍という)に、長手方向に延びる溝12が設けられていることが重要である。
本例の長尺中空状セラミック部材1によれば、断面の外周が多角形状であり、中空部11の外形の外周角部近傍に長手方向に延びる溝12が設けてあることから、その溝12から外周角部の中央付近の成形体内部から水分などの溶媒成分が蒸発しやすくなり、乾燥時に外周角部の中央付近に亀裂が生じるのを抑制することができる。また、焼成時にも、溝12から外周角部の全体に熱が伝わりやすいので、焼成工程でも外周角部に亀裂が生じるのを抑制することができる。なお、外周角部の中央付近の乾燥を促進するためには、溝12が角部の中央付近に近いほど好ましい。また、溝12の断面における形状は、断面形状において底が平坦な四角形状や底が次第に細くなって尖っている形状のいわゆるVの字状のような角がある形状の場合であれば、溝12の角部に応力が集中しやすくなり、その角部に亀裂が生じる可能性が高くなるので、底が丸みを帯びた形状のUの字形状のように溝12の底部が曲面である方が、溝12の周りへの応力集中を低減できて好ましい。
次に、図2は、図1(a)中の破線で囲んだ外周角部の近傍部分の拡大断面図である。
図2に示すように、長尺中空状セラミック部材1の断面における外周角部の頂点Oから外周の一方の辺上に距離X1だけ離れた点をpとし、その点pを通り点pのある辺に直交するY−Y’線と中空部11の外形の辺とが交わる点のうち点pとの最短の点をp’とし、点pのある外周の一方の辺とは隣り合う外周の他方の辺上にあり角部の頂点Oから距離X2だけ離れた点をqとし、その点qを通り点qのある辺に直交するZ−Z’線と中空部11の外形の辺とが交わる点のうち点qとの最短の点をq’とする。
そして、本発明者らは、図1に示す長尺中空状セラミック部材1において、図2に示す距離X1と距離X2とを、断面で中空部11の外形とその外周角部の頂点Oとの最短距離Xに等しくしたとき、中空部11の外形の点p’と点q’とのそれぞれを端点とする範囲内に、長手方向に延びる溝12を設ければ、その溝12から外周角部の中央付近の成形体内部から水分などの溶媒成分が蒸発しやすくなり、成形体の乾燥時に外周角部の中央付近に亀裂が生じるのを抑制することができることを見出した。そこで、以下の説明では、この中空部11の外形の点p’と点q’とのそれぞれを端点とする範囲を、中空部11の外形の外周角部近傍とする。
次に、図3〜図8に、本発明の長尺中空状セラミック部材の実施の形態の他の例を示す。なお、これらの図においては、図1に示した例と共通の部位を表す場合は同じ参照符号を用いて示す。
図3は、本発明の長尺中空状セラミック部材の実施の形態の他の例を示す、(a)は部分破断斜視図であり、(b)は(a)中の破線で囲んだ部分の拡大図である。
図3に示す例の長尺中空状セラミック部材2は、断面の外周が三角形状であり、内部に外形が三角形状の中空部11が形成されている。そして、この長尺中空状セラミック部材2の断面において、中空部11の外形の外周角部の近傍には、それぞれ長手方向に延びる溝12
が設けられている。
図4は、図3(a)中の破線で囲んだ外周角部の近傍部分の拡大断面図である。
図4に示す外周角部の近傍部分は、長尺中空状セラミック部材2の外周角部の頂点Oから外周の一方の辺上に距離X1離れた点をpとし、その点pを通り点pのある辺に直交するY−Y’線と中空部11の外形の辺とが交わる点のうち点pとの最短の点をp’とし、点pのある外周の一方の辺とは隣り合う外周の他方の辺上にあり角部の頂点Oから距離X2離れた点をqとし、その点qを通り点qのある辺に直交するZ−Z’線と中空部11の外形の辺とが交わる点のうち点qとの最短の点をq’としている。そして、図3に示す長尺中空状セラミック部材2の中空部11の外形の外周角部近傍とは、図4に示す距離X1と距離X2とが断面で中空部11の外形とその外周角部の頂点Oとの最短距離Xと等しいとしたときの点p’と点q’とのそれぞれを端点とする中空部11の外形の範囲である。
図5は、本発明の長尺中空状セラミック部材の実施の形態の他の例を示す、(a)は部分破断斜視図であり、(b)は(a)中の破線で囲んだ部分の拡大図である。
図5に示す例の長尺中空状セラミック部材3は、断面の外周が五角形状であり、内部に外形が五角形状の中空部11が形成されている。そして、この長尺中空状セラミック部材3の断面において、中空部11の外形の外周角部の近傍には、それぞれ長手方向に延びる溝12が設けられている。
図6は、図5(a)中の破線で囲んだ外周角部の近傍部分の拡大断面図である。
図6に示す外周角部の近傍部分において、外周角部の頂点Oから外周の一方の辺上に距離X1離れた点をpとし、その点pを通り点pのある辺に直交するY−Y’線と中空部11の外形の辺とが交わる点のうち点pとの最短の点をp’とし、点pのある外周の一方の辺とは隣り合う外周の他方の辺上にあり角部の頂点Oから距離X2離れた点をqとし、その点qを通り点qのある辺に直交するZ−Z’線と中空部11の外形の辺とが交わる点のうち点qとの最短の点をq’としている。そして、図5に示す長尺中空状セラミック部材3の中空部11の外形の外周角部近傍とは、図6に示す距離X1と距離X2とが断面で中空部11の外形とその外周角部の頂点Oとの最短距離Xと等しいとしたときの点p’と点q’とのそれぞれを端点とする中空部11の外形の範囲である。
図7は、本発明の長尺中空状セラミック部材の実施の形態の他の例を示す、(a)は部分破断斜視図であり、(b)は(a)中の破線で囲んだ部分の拡大図である。
図7に示す例の長尺中空状セラミック部材4は、断面の外周が四角形状であり、内部に外形が円形状の中空部11が形成されている。そして、この長尺中空状セラミック部材4の断面において、中空部11の外形の外周角部の近傍には、それぞれ長手方向に延びる溝12が設けられている。
図8は、図7(a)中の破線で囲んだ外周角部の近傍部分の拡大断面図である。
図8に示す外周角部の近傍部分においても、外周角部の頂点Oから外周の一方の辺上に距離X1離れた点をpとし、その点pを通り点pのある辺に直交するY−Y’線と中空部11の外形の辺とが交わる点のうち点pとの最短の点をp’とし、点pのある外周の一方の辺とは隣り合う外周の他方の辺上にあり角部の頂点Oから距離X2離れた点をqとし、その点qを通り点qのある辺に直交するZ−Z’線と中空部11の外形の辺とが交わる点のうち点qとの最短の点をq’としている。そして、図7に示す長尺中空状セラミック部材4
における中空部11の外形の外周角部近傍とは、図8に示す距離X1と距離X2とが断面で中空部11の外形とその外周角部の頂点Oとの最短距離Xと等しいとしたときの点p’と点q’とのそれぞれを端点とする中空部11の外形の範囲である。
このように、図3〜図8に示す各例の長尺中空状セラミック部材2〜4の場合には、図1に示す長尺中空状セラミック部材1について説明したように、長尺中空状セラミック部材2〜4の中空部11の外形の外周角部近傍に、長手方向に延びる溝12を設けていることから、その溝12から外周角部の中央付近の水分などの溶媒成分が蒸発しやすくなり、乾燥時に外周角部の中央付近に亀裂が生じるのを抑制することができる。また、成形体の焼成時にも、溝12から外周角部の全体に熱が伝わりやすいので、焼成工程でも外周角部に亀裂が生じるのを抑制することができる。
ここで、本発明の長尺中空状セラミック部材の実施の形態の例を図1〜図8に示したが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば、断面における外周部の形状と中空部11の外形とが同じである必要はなく、例えば三角形状,四角形状,五角形状,六角形状,七角形状,八角形状または円形状(楕円形状を含む)の中から、断面における外周部の形状と中空部11の外形とを適宜変更したり、内部に長手方向に貫通する中空部11を複数設けたり、外周角部や中空部11の外形の角を取るいわゆる面取りを行なうなどの改良を加えたりすることができることは言うまでもない。
また、本発明の長尺中空状セラミック部材においては、断面において中空部11は外形が外周に平行な辺を有する多角形状に形成されており、中空部11の外形角部に、溝12が設けられていることが好ましい。
図1〜図6に示す本発明の長尺中空状セラミック部材1〜3は、断面の外周が多角形状であり、その断面において中空部11が、外形が外周に平行な辺を有する多角形状であれば、長尺中空状セラミック部材1〜3の中空部11と外周との間の肉厚を各辺において同じにできるので、成形体の乾燥の際に、長尺中空状セラミック部材1〜3の成形体全体の乾燥収縮の差を各辺において小さくできるので、乾燥が不十分となりがちな外周角部の中央付近に生じる歪みを小さくすることができる。その結果、外周角部の中央付近に亀裂が生じるのを抑えることができる。さらに、中空部11の外形の外周角部近傍に、長手方向に延びる溝12が設けられていることから、その溝12から外周角部の中央付近の成形体内部の水分などの溶媒成分が蒸発しやすくなり、成形体の乾燥時に外周角部の中央付近に亀裂が生じるのを抑制することができる。また、成形体の焼成時にも、溝12から外周角部の全体に熱が伝わりやすいので、焼成工程でも外周角部に亀裂が生じるのを抑制することができる。
また、本発明の長尺中空状セラミック部材は、図1,図3,図5および図7に示す、溝12の深さD1が、断面における溝12が設けられた中空部11の外形角部の辺と外周の辺との間の距離の1/4以上1/2以下であり、溝12の幅W1が、断面における溝12が設けられた中空部11の外形角部の他方の辺と外周の辺との間の距離の1/4以上1/2以下であることが好ましい。
本発明者は、長尺中空状セラミック部材1〜3の成形体から外周角部の中央付近の水分などの溶媒成分を効率よく蒸発させるためには、溝12の深さD1が、断面における溝12が設けられた中空部11の外形角部の辺と外周の辺との間の距離の1/4以上1/2以下であり、溝12の幅W1が、断面における溝12が設けられた中空部11の外形角部の辺と外周の他方の辺との間の距離の1/4以上1/2以下であればよいことを見出した。
溝12の深さD1が上記の1/4以上1/2以下の範囲であり、溝12の幅W1が上記の1/4以上1/2以下の範囲であれば、長尺中空状セラミック部材1〜4の成形体からの外
周角部の中央付近の水分などの溶媒成分の蒸発速度を最適化して、外周角部において亀裂が生じるのをより効果的に抑制することができて好ましい。
図1〜図6に示す各例の長尺中空状セラミック部材1〜3の外周角部に設けられた溝12の深さD1が、断面における溝12が設けられた中空部11の外形角部の辺と外周の辺との間の距離の1/4未満であると、溝12は相対的に浅くなり、溝12の幅W1が、断面における溝12が設けられた中空部11の外形角部の他方の辺と外周の辺との間の距離の1/4未満であると、溝12は相対的に狭くなるので、溝12から蒸発する外周角部の中央付近の水分などの溶媒成分が相対的に少なくなって、亀裂が生じるのを抑制する効果が減少する傾向がある。
また、図1〜図6に示す各例の長尺中空状セラミック部材1〜3の外周角部に設けられた溝12の深さD1が、断面における溝12が設けられた中空部11の外形角部の辺と外周の辺との間の距離の1/2より大きくなると、溝12は相対的に深くなり、溝12の幅W1が、断面における溝12が設けられた中空部11の外形角部の他方の辺と外周の辺との間の距離の1/2より大きくなると、溝12は相対的に広くなるので、溝12から蒸発する外周角部の中央付近の水分などの溶媒成分が相対的に多くなって、外周角部の中央付近の乾燥が早く進むようになり、他の部位の乾燥収縮と差が生じて亀裂が生じる可能性があり、外周角部の中央付近に亀裂が生じるのを抑制する効果が減少する傾向がある。
また、本発明の長尺中空状セラミック部材においては、断面において中空部11は外形が円形状に形成されており、中空部11の外形の外周角部の頂点Oとの最短距離Xの部位に、長手方向に延びる溝12が設けられていることが好ましい。
図7に示す、断面において中空部11の外形が円形状に形成された本発明の長尺中空状セラミック部材4は、中空部11の外形の外周角部の頂点Oとの最短距離Xの部位に長手方向に延びる溝12が設けられていれば、より外周角部の中央付近に近い位置に溝12を設けることができ、その溝12から外周角部の中央付近の成形体内部の水分などの溶媒成分が蒸発しやすくなり、成形体の乾燥時に外周角部の中央付近に亀裂が生じるのを抑制することができる。また、成形体の焼成時にも、溝12から外周角部の全体に熱が伝わりやすいので、焼成工程でも外周角部に亀裂が生じるのを抑制することができる。また、中空部11の外形がその外周の辺と平行な多角形に内接するような円形状に形成すれば、長尺中空状セラミック部材4の中空部11と外周との間の肉厚を各辺において同じにできるので、成形体の乾燥の際に、長尺中空状セラミック部材4の成形体全体の乾燥収縮を外周の各辺において同じにすることができ、乾燥が不十分となりがちな外周角部の中央付近に生じる歪みを小さくすることができる。その結果、外周角部の中央付近に亀裂が生じるのを抑えることができるのでより好ましい。
また、本発明の長尺中空状セラミック部材は、図7および図8に示す例においても、溝12の深さD1が、断面における中空部11の外形の外周角部の頂点Oとの最短距離Xの1/4以上1/2以下であり、溝12の幅W1が、断面における中空部11の外形の外周角部の頂点Oとの最短距離Xの1/4以上1/2以下であることが好ましい。
本発明者は、長尺中空状セラミック部材4の成形体から外周角部の中央付近の水分などの溶媒成分を効率よく蒸発させるためには、溝12の深さD1が、断面における中空部11の外形の外周角部の頂点Oとの最短距離Xの1/4以上1/2以下であり、溝12の幅W1が、断面における中空部11の外形の外周角部の頂点Oとの最短距離Xの1/4以上1/2以下であればよいことを見出した。
溝12の深さD1が断面における中空部11の外形の外周角部の頂点Oとの最短距離Xの1
/4以上1/2以下の範囲であり、溝12の幅W1が断面における中空部11の外形の外周角部の頂点Oとの最短距離Xの1/4以上1/2以下の範囲であれば、長尺中空状セラミック部材4の成形体からの外周角部の中央付近の水分などの溶媒成分の蒸発速度を最適化して、外周角部において亀裂が生じるのをより効果的に抑制することができて好ましい。
本例の長尺中空状セラミック部材4の外周角部に設けられた溝12の深さD1が、断面における溝12が設けられた中空部11の外形角部の辺と外周の辺との間の距離の1/4未満であると、溝12は相対的に浅くなり、溝12の幅W1が、断面における溝12が設けられた中空部11の外形角部の他方の辺と外周の辺との間の距離の1/4未満であると、溝12は相対的に狭くなるので、溝12から蒸発する外周角部の中央付近の水分などの溶媒成分が相対的に少なくなって、亀裂が生じるのを抑制する効果が減少する傾向がある。
また、本例の長尺中空状セラミック部材4の中空部11の外形の外周角部の頂点Oとの最短距離Xの部位に設けられた溝12の深さD1が、断面における溝12が設けられた中空部11の外形角部の辺と外周の辺との間の距離の1/2より大きくなると、溝12は相対的に深くなり、溝12の幅W1が、断面における溝12が設けられた中空部11の外形角部の他方の辺と外周の辺との間の距離の1/2より大きくなると、溝12は相対的に広くなるので、溝12から蒸発する外周角部の中央付近の水分などの溶媒成分が相対的に多くなって、外周角部の中央付近の乾燥が早く進むようになり、他の部位の乾燥収縮と差が生じて亀裂が生じる可能性があり、外周角部の中央付近に亀裂が生じるのを抑制する効果が減少する傾向がある。
また、本発明の長尺中空状セラミック部材においては、溝12の内面の表面粗さである算術平均粗さRaが、中空部11の内周面の表面粗さである算術平均粗さRaよりも大きいことが好ましい。
図1〜図8に示す例の長尺中空状セラミック部材1〜4の成形体では、溝12の内面の表面粗さ(算術平均粗さRa)を大きくすれば、溝12の内面の表面積はより大きくなり、この大きくなった表面積の表面から水分などの溶媒成分が蒸発するので、成形体の外周角部の中央付近の乾燥をより効果的に促進することができる。
なお、溝12の表面積の大きさを変えるのは、溝12の表面粗さを変えることの他にも、長尺中空状セラミック部材1〜4の断面における溝12の形状を変えることでも可能である。以上の例では溝12の断面形状はUの字形状のものを示したが、例えば、図9(a)〜(c)にそれぞれ本発明の長尺中空状セラミック部材の断面における溝12の形状の例を要部断面図で示すように、図9(a)に示す例の四角状、図9(b)に示す例のVの字状または図9(c)に示す例のVの字状の底部に平坦な底面を設けた形状などを適宜選択して採用することもできる。なお、図9(a)〜(c)は要部断面図であるが、それぞれ断面に施すハッチングは省略している。
次に、図10は、本発明の長尺中空状セラミック部材の実施の形態の他の例を示す、(a)は部分破断斜視図であり、(b)は(a)中の破線で囲んだ部分の拡大図である。なお、図1に示した例と共通の部位を表す場合は同じ参照符号を用いて示す。
図10に示す例の長尺中空状セラミック部材5は、断面の外周が四角形状であり、内部に外形が四角形状の中空部11が形成されている。そして、この長尺中空状セラミック部材5の断面において、中空部11の外形の外周角部の近傍には、それぞれ長手方向に延びる溝12が設けられている。また、溝12の間に、長手方向に延びる複数の第2の溝14が設けられている。なお、図10(b)に示す溝14の深さD2,幅W2および隣り合う外周角部の間の辺の長さW3については後述する。
そして、本例の長尺中空状セラミック部材においては、中空部11の外形の断面の隣り合う外周角部の近傍の溝12の間に、長手方向に延びる複数の第2の溝14が設けられていることが好ましい。
本例の長尺中空状セラミック部材5によれば、中空部11の外形の断面の隣り合う外周角部の近傍の溝12の間に、長手方向に延びる複数の第2の溝14が設けてあるから、成形体の乾燥の際に、第2の溝14から水分などの溶媒成分が蒸発するので、成形体の中空部側付近の乾燥が促進され、中空部側付近の乾燥と外周側付近との乾燥の度合いの差が小さくなる。その結果、乾燥の度合いの差による成形体の乾燥収縮の歪みが小さくなるので、乾燥が不十分となりがちな外周角部の中央付近に生じる歪みも小さくなり、外周角部の中央付近に亀裂が生じるのをさらに抑制することができる。また、長尺中空状セラミック部材の肉厚が厚くなれば、焼成工程において成形体の焼成に時間がかかるが、本例の長尺中空状セラミック部材5によれば、第2の溝14から成形体全体に熱が伝わりやすいので焼成時間を短縮することができる。
また、第2の溝14の断面における形状は、Uの字形状のように第2の溝14の底部が曲面である方が、第2の溝14の周りへの応力集中を低減できて好ましい。
次に、図11〜図13に、本発明の長尺中空状セラミック部材であって、中空部11の外形の断面の隣り合う外周角部の近傍の溝12の間に、長手方向に延びる複数の第2の溝14が設けられた形態の他の例を示す。なお、これらの図においては、図10に示した例と共通の部位を表す場合は同じ参照符号を用いて示す。
図11は、本発明の長尺中空状セラミック部材の実施の形態の他の例を示す、(a)は部分破断斜視図であり、(b)は(a)中の破線で囲んだ部分の拡大図である。
図11に示す例の長尺中空状セラミック部材6は、断面の外周が四角形状であり、内部に外形が三角形状の中空部11が形成されている。そして、この長尺中空状セラミック部材6の断面において、中空部11の外形の外周角部の近傍には、それぞれ長手方向に延びる溝12が設けられている。また、隣り合う溝12の間に、長手方向に延びる複数の第2の溝14が設けられている。
図12は、本発明の長尺中空状セラミック部材の実施の形態の他の例を示す、(a)は部分破断斜視図であり、(b)は(a)中の破線で囲んだ部分の拡大図である。
図12に示す例の長尺中空状セラミック部材7は、断面の外周が五角形状であり、内部に外形が三角形状の中空部11が形成されている。そして、この長尺中空状セラミック部材7の断面において、中空部11の外形の外周角部の近傍には、それぞれ長手方向に延びる溝12が設けられている。また、隣り合う溝12の間に、長手方向に延びる複数の第2の溝14が設けられている。
図13は、本発明の長尺中空状セラミック部材の実施の形態の他の例を示す、(a)は部分破断斜視図であり、(b)は(a)中の破線で囲んだ部分の拡大図である。
図13に示す例の長尺中空状セラミック部材8は、断面の外周が四角形状であり、内部に外形が円形状の中空部11が形成されている。そして、この長尺中空状セラミック部材8の断面において、中空部11の外形の外周角部の近傍には、それぞれ長手方向に延びる溝12が設けられている。また、隣り合う溝12の間に、長手方向に延びる複数の第2の溝14が設けられている。
このように、図11〜図13に示す各例の長尺中空状セラミック部材6〜8の場合には、図10に示す例の長尺中空状セラミック部材5について説明したように、長尺中空状セラミック部材6〜8の中空部11の隣り合う外周角部の溝12の間に、長手方向に延びる複数の第2の溝14が設けてあるから、成形体の乾燥の際に、第2の溝14から水分などの溶媒成分が蒸発するので、乾燥しづらい成形体の中空部側付近の乾燥が促進され、中空部側付近の乾燥と外周側付近との乾燥の度合いの差が小さくなる。その結果、乾燥の度合いの差による成形体の乾燥収縮の歪みが小さくなるので、乾燥が不十分となりがちな外周角部の中央付近にかかる歪みも小さくなり、外周角部の中央付近に亀裂が生じるのをさらに抑制することができる。また、長尺中空状セラミック部材の肉厚が厚くなれば、焼成工程において成形体の焼成に時間がかかるが、本例の長尺中空状セラミック部材6〜8によれば、第2の溝14から成形体全体に熱が伝わりやすいので焼成時間を短縮することができる。
また、本発明の長尺中空状セラミック部材は、図10〜図13に示す、第2の溝14の深さD2が中空部11の外形と外周との間の厚みの1/10以上1/4以下であり、第2の溝14の幅W2が中空部11の外形と外周との間の厚みの1/10以上1/4以下であり、中空部11の外形の断面の隣り合う外周角部の間に設けられた複数の第2の溝14の幅W2の合計が隣り合う外周角部の間の辺の長さW3の30%〜50%であることが好ましい。なお、隣り合う外周角部の間の辺の長さW3は、図10(b)〜図12(b)に示すように、断面において中空部11の外形の辺の延長線の交点の間の距離を示す。また、図7に示す例の長尺中空状セラミック部材4のように、断面において、中空部11の外形の形状が多角形状でない長尺中空状セラミック部材8の場合は、図7(b)に示すように、断面における中空部11の外形において、外周角部の頂点Oとの最短の点と、隣り合うもう一方の外周角部の頂点Oとの最短の点との間の中空部11の外形に沿った最短の距離を、隣り合う外周角部の間の辺の長さW3とすればよい。
本発明者は、長尺中空状セラミック部材5〜8において、成形体の中空部側付近の乾燥を効率的に促進させるためには、第2の溝14の深さが中空部11の外形と外周との間の厚みの1/10以上1/4以下であり、第2の溝14の幅W2が中空部11の外形と外周との間の厚みの1/10以上1/4以下であり、中空部11の外形の断面の隣り合う外周角部の間に設けられた複数の第2の溝14の幅W2の合計が隣り合う外周角部の間の辺の長さW3の30%〜50%であればよいことを見出した。
第2の溝14の深さD2が中空部11の外形と外周との間の厚みの1/10以上1/4以下であり、第2の溝14の幅W2が中空部11の外形と外周との間の厚みの1/10以上1/4以下であり、中空部11の外形の断面の隣り合う外周角部の間に設けられた複数の第2の溝14の幅W2の合計が隣り合う外周角部の間の辺の長さW3の30%〜50%の範囲であれば、長尺中空状セラミック部材5〜8の成形体の中空部側付近からの水分などの溶媒成分の蒸発速度を最適化して、外周角部において亀裂が生じるのをより効果的に抑制することができて好ましい。
図10〜図13に示す各例の長尺中空状セラミック部材5〜8に設けられた第2の溝14の深さD2が中空部11の外形と外周との間の厚みの1/10未満であると、第2の溝14は相対的に浅くなり、第2の溝14の幅W2が中空部11の外形と外周との間の厚みの1/10未満であると、溝12は相対的に狭くなるので、第2の溝14から蒸発する成形体の中空部側付近の水分などの溶媒成分が相対的に少なくなって、中空部側付近の乾燥と外周側付近との乾燥の度合いの差があまり小さくならず、外周角部の中央付近に亀裂が生じるのを抑制する効果が減少する傾向がある。
また、図10〜図13に示す各例の長尺中空状セラミック部材5〜8に設けられた第2の溝
14の深さD2が中空部11の外形と外周との間の厚みの1/4より大きくなると、第2の溝14は相対的に深くなり、第2の溝14の幅W2が中空部11の外形と外周との間の厚みの1/4より大きくなると、第2の溝14は相対的に広くなるので、第2の溝14から蒸発する外周角部の中央付近の水分などの溶媒成分が相対的に多くなって、成形体の中空部側付近の乾燥が外周側より早く進むようになり、外周角部の中央付近に亀裂が生じるのを抑制する効果が減少する傾向がある。
また、図10〜図13に示す各例の長尺中空状セラミック部材5〜8に設けられた第2の溝14の深さD2が中空部11の外形と外周との間の厚みの1/10以上1/4以下であり、第2の溝14の幅W2が中空部11の外形と外周との間の厚みの1/10以上1/4以下であるとき、中空部11の外形の断面の隣り合う外周角部の間に設けられた複数の第2の溝14の幅W2の合計が隣り合う外周角部の間の辺の長さW3の30%未満であると、中空部11の外形の断面の隣り合う外周角部の間に設けられた複数の第2の溝14それぞれから蒸発する成形体の中空部側付近の水分などの溶媒成分が相対的に少なくなって、中空部側付近の乾燥と外周側付近との乾燥の度合いの差があまり小さくならず、外周角部の中央付近に亀裂が生じるのを抑制する効果が減少する傾向がある。
また、逆に、中空部11の外形の断面の隣り合う外周角部の間に設けられた複数の第2の溝14の幅W2の合計が隣り合う外周角部の間の辺の長さW3の50%以上であると、中空部11の外形の断面の隣り合う外周角部の間に設けられた複数の第2の溝14それぞれから蒸発する成形体の中空部側付近の水分などの溶媒成分が相対的に多くなって、中空部側付近の乾燥と外周側付近との乾燥の度合いの差があまり小さくならず、成形体の中空部側付近の乾燥が外周側より早く進むようになり、外周角部の中央付近に亀裂が生じるのを抑制する効果が減少する傾向がある。
なお、図10〜図13に示す各例の長尺中空状セラミック部材5〜8の中空部11の外形の断面の隣り合う外周角部の間に設けられた複数の第2の溝14はそれぞれ等間隔に配置されていることが好ましい。
長尺中空状セラミック部材5〜8の中空部11の外形の断面の隣り合う外周角部の間に設けられた複数の第2の溝14がそれぞれ等間隔に配置されていれば、複数の第2の溝14が設けられた成形体の中空部側付近の水分などの溶媒成分を偏り無く蒸発させることができ、乾燥の度合いの差による成形体の乾燥収縮の歪みをより小さくできるので、外周角部の中央付近に亀裂が生じるのをさらに抑制することができる。
また、図10〜図13に示す各例の長尺中空状セラミック部材5〜8の中空部11の外形の断面の隣り合う外周角部の間に設けられた複数の第2の溝14の、隣り合う第2の溝14の間の距離は、第2の溝14の深さD2の1/2以上が好ましい。なお、隣り合う第2の溝14の深さD2がそれぞれ異なる場合は、隣り合う第2の溝14の間の距離は、より深い方の第2の溝14の深さD2の1/2以上が好ましい。
図10〜図13に示す各例の長尺中空状セラミック部材5〜8の中空部11の外形の断面の隣り合う外周角部の間に設けられた複数の第2の溝14の、隣り合う第2の溝14の間の距離は、第2の溝14の深さD2の1/2以上であれば、複数の第2の溝14において、隣り合う第2の溝14の間の距離を十分に確保できるので、複数の第2の溝14を切削などで設けるとき、第2の溝14同士の間の部分に捻じれ生じにくくなる。また、曲げ応力などが加わったとき外周角部に応力が集中しやすいため、溝12と、溝12と隣り合う第2の溝14との間の距離は十分確保したほうがよい。好ましくは、溝12と、溝12と隣り合う第2の溝14との間の距離が、溝12の深さD1以上であれば、長尺中空状セラミック部材5〜8の強度を十分に確保できる。
次に、本発明の長尺中空状セラミック部材について、複数の中空部を設けた場合の例を説明する。
図14は、長手方向に貫通する複数の中空部が設けられた本発明の長尺中空状セラミック部材の実施の形態の例における外周および中空部の形状を示す、(a)はそれぞれ外周が四角形状の場合の2つの例の断面図であり、(b)は断面の外周の形状が三角形状の場合の例の断面図であり、(c)はそれぞれ断面の外周の形状が五角形状の場合の2つの例の断面図である。
図14(a)は、断面の外周の形状が四角形状の場合に、複数の中空部11が設けられた例の長尺中空状セラミック部材A1およびA2を示してある。これらの中空部11は、全ての中空部11を内包し、かつ最小の面積を持つ四角形状の外形62の各辺が外周の各辺と平行になるような配置で形成されている。なお、長尺中空状セラミック部材A2は、外周が四角形状であり、楕円形状の外形の中空部11が、外周の各辺と平行な各辺を有する四角形状の外形62に内包されるように2つ設けられている。
次に、図14(b)に示す例は、断面の外周の形状が三角形状の場合に、複数の中空部11が設けられた例の長尺中空状セラミック部材Bを示す断面図である。この中空部11は、全ての中空部11を内包し、かつ最小の面積を持つ三角形状の外形62の各辺が外周の各辺と平行になるような配置で形成されている。
図14(b)に示す例の長尺中空状セラミック部材Bの場合は、外周が三角形状であり、三角形状の外形の中空部11が、外周の各辺と平行な各辺を有する三角形状の外形62に内包されるように2つ設けられている。
次に、図14(c)に示す例は、断面の外周の形状が五角形状の場合に、複数の中空部11が設けられた例の長尺中空状セラミック部材C1,C2を示す断面図である。これらの中空部11は、全ての中空部11を内包し、かつ最小の面積を持つ五角形状の外形62の各辺が外周の各辺と平行になるような配置で形成されている。なお、長尺中空状セラミック部材C2は、外周が五角形状であり、円形状の外形の中空部11が、外周の各辺と平行な各辺を有する五角形状の外形62に内包されるように、外形62の各角部に1つずつと中心部に1つとの計6つ設けられている。
これらの例のように、長尺中空状セラミック部材に、多角形状の外周の各辺に平行な各辺を有する多角形状の外形62に内包されるような配置で長手方向に貫通する複数の中空部11を設けることによって、それら中空部11と中空部11との間のセラミックス部分が補強部61となり、長手方向の曲げ強度を強化した長尺中空状セラミック部材A1,A2,B,C1およびC2を得ることができる。
このように複数の中空部11を設けた本例の長尺中空状セラミック部材A1,A2,B,C1およびC2では、断面において全ての中空部11を内包し、かつ最小の面積を持つ多角形状の外形62の各辺が外周の各辺と平行になるように配置してそれらの中空部11を形成して、外周角部に長手方向に延びる溝12を設けている。このように中空部11を形成すれば、長尺中空状セラミック部材の中空部11と外周との間の肉厚のばらつきを小さくできるので、成形体の乾燥収縮のときに外周角部の中央付近にかかる歪みを小さくすることができ、また、溝12から外周角部の中央付近の水分などの溶媒成分が蒸発しやすいので、成形体の乾燥時に外周角部の中央付近に亀裂が生じるのを抑制することができる。
なお、本発明の長尺中空状セラミック部材において、溝12の深さ方向は、溝12を設ける
外周面に対して垂直でなくてもよい。
また、本発明の長尺中空状セラミック部材において、中空部11の外形の外周角部近傍に設ける溝12は、必ずしも全ての外周角部近傍に設ける必要はなく、外周角部における亀裂の発生状況に応じて、中空部11の外形の外周角部近傍の1つ以上に設ければよい。
本発明の長尺中空状セラミック部材は、構造部品の大型化に求められる、長尺で強度が高く、かつ軽量であるとの要求に応えるために、図1,3,5および図7に示す長さLが0.5m以上であり、中空部11を有して強度を保つための厚みtが10mm以上40mm以下で
あるものに好適に適用できる。
また、本発明の長尺中空状セラミック部材に用いるセラミックスには、アルミナ,ジルコニアなどの酸化物セラミックス、または窒化珪素,炭化珪素などの非酸化物セラミックスを適用することが可能である。その中でも特に、液晶および半導体の製造工程や精密測定で用いられる薬品や腐食性ガスに対して良好な耐食性を有し、かつ適度な機械的強度を有するとともに他のセラミック材料と比較して安価である、アルミナセラミックスを用いるのが好ましい。
次に、本発明の長尺中空状セラミック部材の製造方法について説明する。
図15は、本発明の長尺中空状セラミック部材を得るための押出成形機の例を示す概略断面図である。
図15に示すスクリュー式の押出成形機80は、坏土投入口82および坏土を混練するパッグスクリュー83を有するパッグミル部81と、真空引きして坏土中の気泡を排出する真空室84と、坏土を押し出すオーガスクリュー86を有するオーガ部85と、坏土を分断する複数の整流はねを放射状に備えた坏土整流部88および坏土剪断部89を備えて坏土を特定形状に成形する押し出し金型部87とから構成されている。
また、図示していないが、パッグスクリュー83およびオーガスクリュー86は、それぞれ片方を軸受けに接続固定されて、動力源に接続されている。さらに、真空室84にはその内部を真空引きするための真空ポンプ(図示せず)が接続されている。
この押出成形機80を用いる本発明の長尺中空状セラミック部材の製造方法では、アルミナ原料を主としたセラミック材料、バインダおよび溶媒を混合して坏土とし、この坏土を、複数の整流はねを放射状に備えた坏土整流部88と、長尺中空状成形体を得るための坏土剪断部89とを有するスクリュー式の押出成形機80を用いて押し出し成形し、得られた長尺中空状成形体を焼成する。
次に、本発明の長尺中空状セラミック部材の製造方法の詳細について説明する。
まず、アルミナ原料としては、工業製品として多く利用されている市販のα−アルミナ原料で純度が99.5%以上,平均粒子径が1μm以上3μm以下のものが好ましく、さらにソーダ成分(Na2O)が0.1質量%以下のものであれば、焼成した際にソーダ成分(N
a2O)が飛散して焼成炉内を汚染する心配が少なくて、なお好ましい。ここで、このアルミナ原料の平均粒子径とは、レーザ回折式粒度分布測定法により測定された50%粒子径D50を表す。また、焼結助剤としては例えばマグネシア(MgO),シリカ(SiO2),カルシア(CaO)などを用いる。その添加総量は、アルミナ質焼結体のアルミナの純度が95質量%以上になるように焼結助剤の総量を5質量%以下にするのが、焼結体の剛性を高める上でよい。なお、予めアルミナ原料と焼結助剤とは水などの溶媒と混合してス
ラリー状にし、それを噴霧乾燥法(スプレードライ)により顆粒に造粒したものを用いても何ら差し支えない。
バインダとしては、一般に押し出し成形用の坏土に用いられるメチルセルロース(MC),カルボキシメチルセルロース(CMC),ヒドロキシプロピルセルロ−ス(HPC),ポリビニルアルコール(PVA),ポリビニルブチラール(PVB)などを用いる。バインダの添加総量は、アルミナ原料と焼結助剤とを含むセラミック材料100質量部に対し
て固形分で2質量部以上8質量部以下を添加すれば、押し出し成形時の流動性や成形体の保形性が高くてよい。さらに、潤滑剤として、ワックス,グリセリン,ステアリン酸などを固形分で1質量部以上8質量部以下の量で適宜添加してもよい。また、溶媒としては水が好適であり、特にイオン交換水が不純物の量が少ないため好ましい。そして、アルミナ原料を主とした焼結助剤を含むセラミック材料,バインダおよび溶媒を秤量して混合して、万能混合機や3本ロールなどを用いて混練する。この混練により、アルミナ原料および焼結助剤からなるセラミック材料の表面をバインダや溶媒が均一に包み込んで、可塑性を持った坏土となる。
次いで、この坏土を押出成形機80の坏土投入口82より投入する。投入された坏土は、パッグスクリュー83の回転によって混練され、パッグスクリュー83とパッグミル部81の内壁との隙間を通って、真空室84へと押し出される。真空室84へと押し出された成形原料は、真空室84に接続された真空ポンプによって内部の気泡が排出される。その後、オーガスクリュー86の回転により、オーガスクリュー86とオーガ部85との隙間を通って押し出し金型部87の方向へと押し出される。
押し出し金型部87には、本発明の長尺中空状セラミック部材における中空部11の外形の外周角部近傍と対応する位置に、溝12の断面形状に対応した凸部が設けられている。この押し出し金型部87に設けられた凸部により、中空状成形体の中空部11の外形の外周角部近傍に長手方向に延びる溝12を設けることができる。なお、長尺中空状セラミック部材5〜8のように、中空部11の外形の断面の隣り合う外周角部の近傍の溝12の間に、長手方向に延びる複数の第2の溝14を設けるには、押し出し金型部87の、第2の溝14に対応する位置に凸部を設ければよい。
また、その凸部の表面粗さを、本発明の長尺中空状セラミック部材の中空部11の内周面に対応する押し出し金型部87の表面粗さより大きくすれば、溝12の内面の表面粗さ(算術平均粗さRa)を中空部11の内周面の表面粗さ(算術平均粗さRa)よりも大きくすることができる。なお、押し出し成形後に、小型のサンドブラスト装置を用いて溝の内面の表面粗さ(算術平均粗さRa)を調整してもよい。
なお、溝12の内面の算術平均粗さRaおよび中空部11の内周面の算術平均粗さRaは、JIS規格(JIS B 0601:2001)に従い、表面形状測定器を用いて、例えば、触針の先端曲率半径が5μm,カットオフ値が0.8mm,評価長さが4mm,速度が0.1mm/sの測定条件で測定できる。また、測定部位としては、長尺中空状セラミック部材の長手方向に5つの部位を測定部位に選択し、それぞれの測定部位における溝12の内面および中空部11の内周面の算術平均粗さRaを1回ずつ測定し、5つの部位を測定した測定値の平均値を溝12の内面および中空部11の内周面の算術平均粗さRaとすればよい。なお、溝12の幅が小さくて、あるいは深さが深くて触針の先端が溝12内に接触しないために測定できないなどの場合には、合成ゴム(例えばシリコーンゴム)または合成樹脂などを用いて溝12の表面状態を転写したレプリカを作製し、このレプリカの溝12の表面状態を転写した部分の算術平均粗さRaを測定してもよい。
次に、押し出し成形により得られた長尺中空状セラミック部材の成形体を乾燥機に入れ
て、大気雰囲気にて室温付近の20℃から徐々に80℃付近まで昇温して乾燥させる。その後、アルミナ原料の純度や焼結助剤の種類に応じて、大気雰囲気の焼成炉を用いて1550℃以上1650℃以下の焼成温度で焼成を行なう。
最後に、得られた焼結体に所望の寸法となるように仕上げ加工を施すことにより、長尺中空状セラミック部材を得る。
また、この仕上げ加工において、長尺中空状セラミック部材に設けられた溝12の形状に対応した形状の金属板やセラミック板を溝12に嵌めて接着剤で接着して長尺中空状セラミック部材を補強したり、溝12に光硬化性樹脂を充填し光を照射して硬化させたりすることによって、長尺中空状セラミック部材を補強してもよい。
以上のような製造方法により、長尺中空状セラミック部材1〜4の中空部11の外形の外周角部近傍に、長手方向に延びる溝12を設け、長尺中空状セラミック部材1〜3の場合は好ましくは溝12の深さD1を、断面における溝12が設けられた中空部11の外形角部の辺と外周の辺との間の距離の1/4以上1/2以下とし、溝12の幅W1を、断面における溝12が設けられた中空部11の外形角部の他方の辺と外周の辺との間の距離の1/4以上1/2以下とし、長尺中空状セラミック部材4の場合は、溝12の深さD1を、断面における中空部11の外形の外周角部の頂点Oとの最短距離Xの1/4以上1/2以下とし、溝12の幅W1を、断面における中空部11の外形の外周角部の頂点Oとの最短距離Xの1/4以上1/2以下とすることで、長尺中空状セラミック部材の成形体の乾燥工程において外周角部に設置された溝12から水分などの溶媒成分が蒸発し、成形体の外周角部の中央付近の乾燥が速まり、乾燥の際の長尺中空状セラミック部材の成形体の乾燥収縮による外周角部の中央付近での亀裂の発生を抑制して長尺中空状セラミック部材1〜4を得ることができる。
以下、本発明の実施例を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
本発明の長尺中空状セラミック部材と従来の長尺中空状セラミック部材とを同様の製造工程を用いて製造し、長尺中空状セラミック部材の外周角部の中央付近の乾燥収縮に起因する亀裂が生じるかどうか確認する試験を実施した。以下、試験の詳細および結果について説明する。
(実施例1)
まず、アルミナ原料の純度が99.8%でありソーダ成分(Na2O)が0.05質量%である低ソーダのα−アルミナ原料を96質量%と、マグネシア,カルシア,シリカを含む焼結助剤の総量が4質量%とを混合して100質量%として、この混合したセラミック材料100質量部に対し、バインダにはメチルセルロースを4質量部とポリビニルアルコールを2質量部と、潤滑剤にはワックスを2質量部と、そしてイオン交換水を14質量部とを秤量して混合し、さらに3本ロールミルにて混練して、押し出し成形用の坏土とした。
作製した坏土を用いて、図11に示す押出成形機80によって押し出し成形を行ない、図1に示す例の長尺中空状セラミック部材1の形状で、厚みtが10mm,長さLが1m,幅が65mm,高さが65mmの外形寸法となり、図2において距離X1または距離X2の値を中空部11の外形とその外周角部の頂点Oとの最短距離Xにそれぞれ等しくしたとき、点p’または点q’を溝12の中心線が通るように溝12を設けた成形体No.1および2を、それぞれ30本作製した。なお、成形体No.1および2の溝12は、全て深さD1を5mmとし幅W1を3mmとなるようにした。また、溝12を設けた中空部11の外形の辺と溝12とが垂直に交わるように設けた。
次に、成形体No.1および2と同じ外形寸法で、図2に示すように、中空部11の外形の外周角部の頂点Oとの最短距離Xの部位に溝12を設けた成形体No.3を30本作製した。また、本発明の範囲外の資料として、成形体No.1および2と同じ外形寸法で、図2において距離X1または距離X2の値を中空部11の外形とその外周角部の頂点Oとの最短距離X+2mmにそれぞれ等しくしたとき、点p’または点q’を溝12の中心線が通るように溝12を設けた成形体No.4および5を、それぞれ30本作製した。なお、成形体No.1および2の溝12は、全て深さD1を5mmとし幅W1を3mmとなるようにした。また、溝12を設けた中空部11の外形の辺と溝12とが垂直に交わるように設けた。
それから、成形体No.1〜5を20℃から徐々に80℃付近まで昇温して乾燥させ、外周角部の中央付近に亀裂が生じなかった成形体を良品として、その良品数を確認した。
また、長尺中空状セラミック部材1と同様の外形寸法で、溝12の無い従来の長尺中空状セラミック部材となる比較例の成形体No.6を30本作製し、同条件で乾燥させた。それから、作製した成形体No.1〜6の中から無作為にそれぞれ20本選択し、良品数を確認した。確認には、それぞれの成形体No.1〜6を長手方向に垂直に複数箇所切断して、外周角部の中央付近の亀裂の有無を目視で調べた。
その結果、本発明の実施例の成形体No.1〜3は、同じ寸法の比較例の成形体No.6よりも、良品数が多かった。とりわけ、成形体No.3は良品数が最も多く、良好な結果を得た。また、本発明の範囲外の試料成形体No.4および5と比較例の成形体No.6では結果に差はなかった。
さらに、作製した残りの乾燥した成形体No.1〜3および6を、大気雰囲気の焼成炉を用いて1600℃の温度で焼成して焼結体を作製し、成形体No.1〜3および6と同様に長手方向に垂直に複数箇所切断して、外周角部の中央付近の亀裂の有無を目視で確認した。
その結果、本発明の実施例の長尺中空状セラミック部材1は、同じ寸法の比較例の長尺中空状セラミック部材よりも、良品数が多かった。
また、同様の試験を図3,5,7に示す例の長尺中空状セラミック部材2〜4の形状でも行なったところ、結果は同じで、乾燥工程および焼成工程ともに本発明の実施例の長尺中空状セラミック部材の方が比較例よりも良品数が多かった。また、同様に、図4,6,8に示すように、中空部11の外形の外周角部の頂点Oとの最短距離Xの部位に溝12を設けた成形体およびその焼結体において、良品数が最も多く、良好な結果を得た。さらにこの結果は、図7に示す長尺中空状セラミック部材4と同形状の成形体No.3で顕著であった。また、本発明の範囲外の試料成形体と比較例の成形体とでは結果に差はなかった。
この結果から、本発明の長尺中空状セラミック部材は、従来の長尺中空状セラミック部材に比べて、外周角部の中央付近に亀裂が生じるのを抑制できることが分かった。
(実施例2)
次に、長尺中空状セラミック部材の中空部11と外周との間の肉厚のばらつきが、外周角部の中央付近に生じる亀裂に対して影響するかどうか確認する試験を実施した。
実施例1で作製した坏土を用いて、図1に示す例の長尺中空状セラミック部材1の形状で、長さLが1m,幅が65mm,高さが65mmの外形寸法で、厚みtが10mmとなるように、断面において中空部11は外形が外周に平行な辺を有する多角形状に形成され、実施例
1の成形体No.3と同じ位置に深さD1が5mmで幅W1が3mmの溝12を設けた長尺中空状セラミック部材となる実施例の成形体Mを押し出し成形により20本作製し、実施例1と同条件で乾燥させて、成形体Mの良品数を確認した。また、成形体Mと同形状で同じ外形寸法で、断面において外周の辺と中空部11の外形の辺との間の距離の公差が±4mmで厚みtの平均値が10mmとなるように中空部11を設けた長尺中空状セラミック部材となる比較例の成形体Nを20本作製し、実施例1と同条件で乾燥させて、成形体Nの良品数を確認した。
その結果、実施例の成形体Mの良品数は、比較例の成形体Nの良品数より多かった。
また、同様の試験を図3および図5に示す例の長尺中空状セラミック部材2および3の形状でも行なったところ、同様の結果が得られた。
この結果から、本発明の長尺中空状セラミック部材は、中空部11の外形が外周に平行な辺を有する多角形状に形成されており、中空部11の外形角部に、溝12が設けられていると、外周角部の中央付近に亀裂が生じるのを抑制できることが分かった。
(実施例3)
次に、実施例1で作製した坏土を用いて試料となる成形体を作製し、本発明の長尺中空状セラミック部材の溝の深さおよび幅の大きさが、外周角部の中央付近に生じる亀裂に対して影響するのかどうか確認する試験を実施した。
実施例1で作製した坏土を用いて、図1に示す例の長尺中空状セラミック部材1の形状で、長さLが1m,幅が65mm,高さが65mmの外形寸法で、厚みtが10mmとなるように、断面において中空部11は外形が外周に平行な辺を有する多角形状に形成され、実施例1の成形体No.3と同じ位置に、表1に示す深さD1および幅W1の溝12を設けた、成形体No.7〜31を、押し出し成形により、それぞれ20本作製した。また、同じ外形寸法で溝12が無い従来の長尺中空状セラミック部材となる成形体No.32を20本作製した。そして、作製した成形体No.7〜32を20℃から徐々に80℃付近まで昇温して乾燥し、良品数を確認した。また、同様の試験を図3および5に示す例の長尺中空状セラミック部材2および3の形状でも行なった。その結果を表1に示す。なお、表1中のDtは断面における溝12が設けられた中空部11の外形角部の辺と外周の辺との間の距離を、Wtは断面における溝12が設けられた中空部11の外形角部の他方の辺と外周の辺との間の距離を示す。
表1に示す結果から分かるように、図1,3および5に示す例の長尺中空状セラミック
部材1〜3の形状のいずれの場合でも、成形体No.7〜31は、溝12のない成形体No.32に比べて良品数が多かった。
また、図1,3および5に示す例の長尺中空状セラミック部材1〜3の形状いずれの場合でも、成形体No.13〜15,18〜20および23〜25のような、溝12の深さD1が、断面における溝12が設けられた中空部11の外形角部の辺と外周の辺との間の距離Dtの1/4以上1/2以下であり、溝12の幅W1が、断面における溝12が設けられた中空部11の外形角部の他方の辺と外周の辺との間の距離Wtの1/4以上1/2以下の成形体では、作製した20本の成形体のうち8割以上の成形体が良品であった。この範囲以外の深さD1および幅W1の溝12を設けた成形体では、良品数が作製した20本の成形体の8割以上となるものはなかった。
この結果、本発明の長尺中空状セラミック部材のうち、断面において中空部11の外形が外周に平行な辺を有する多角形状に形成されている長尺中空状セラミック部材では、溝12の深さD1が、断面における溝12が設けられた中空部11の外形角部の辺と外周の辺との間の距離の1/4以上1/2以下であり、溝12の幅W1が、断面における溝12が設けられた中空部11の外形角部の他方の辺と外周の辺との間の距離の1/4以上1/2以下であることが好適であることが分かった。
(実施例4)
次に、実施例1で作製した坏土を用いて試料となる成形体を作製し、本発明の長尺中空状セラミック部材の溝の深さおよび幅の大きさが、外周角部の中央付近に生じる亀裂に対
して影響するのかどうか確認する試験を実施した。
実施例1で作製した坏土を用いて、図7に示す例の長尺中空状セラミック部材4の形状で、外形寸法が長さLが1m,幅が65mm,高さが65mm,厚みtが10mmであり、断面における中空部11の外形と外周角部の頂点Oとの最短距離Xを20mmとし、中空部11の外形の外周角部の頂点Oとの最短距離Xの部位に、溝12を設けた長尺中空状セラミック部材となる実施例の成形体で、表2に示す深さD1および幅W1の溝12が中空部11の外形角部に設けられた、成形体No.33〜57を、押し出し成形により、それぞれ20本作製した。また、同じ外形寸法で溝12が無い従来の長尺中空状セラミック部材となる成形体No.58を20本作製した。そして、作製した成形体No.33〜58を20℃から徐々に80℃付近まで昇温して乾燥し、良品数を確認し、その結果を表2に示す。なお、表2中のXは、断面における中空部11の外形と外周角部の頂点Oとの最短距離を示す。
表2に示す結果から分かるように、成形体No.33〜57は、溝12のない成形体No.58に比べて良品数は多かった。
また、成形体No.39〜41,No.44〜46およびNo.49〜51のような、溝12の深さD1が、断面における中空部11の外形と外周角部の頂点Oとの最短距離Xの1/4以上1/2以下であり、溝12の幅W1が、断面における中空部11の外形と外周角部の頂点Oとの最短距離Xの1/4以上1/2以下の成形体では、作製した20本の成形体のうち8割以上の成形体が良品であった。この範囲以外の深さD1および幅W1の溝12を設けた成形体では、良品数が作製した20本の成形体の8割以上となるものはなかった。
この結果、本発明の長尺中空状セラミック部材では、溝12の深さD1が、断面における中空部11の外形と外周角部の頂点Oとの最短距離Xの1/4以上1/2以下であり、溝12の幅W1が、断面における中空部11の外形と外周角部の頂点Oとの最短距離Xの1/4以上1/2以下であることが好適であることが分かった。
(実施例5)
次に、本発明の長尺中空状セラミック部材の溝の内面の表面粗さ(算術平均粗さRa)を変更した試料を製造し、その効果を確認する試験を実施した。
図1に示す例の長尺中空状セラミック部材1の形状の成形体No.15を、焼結体の内周面の表面粗さ(算術平均粗さRa、以下、表面粗さRaともいう)が3μmであり、溝12の内面の表面粗さRaが表2の値となるように変更した成形体No.59〜69をそれぞれ20本作製した。なお、成形体No.59〜69の表面粗さRaは、押出成形機80の押し出し金型部87の成形体の内周面と溝12の内面にそれぞれ対応する部分の面粗さを調整することによって変更した。そして、実施例2の試験と同様に、表面粗さRaを調整した成形体No.59〜69を、20℃から徐々に80℃付近まで昇温して乾燥させて、良品数を確認した。また、同様の試験を図3および5に示す例の長尺中空状セラミック部材2および3の形状でも行ない、また、実施例4と同じ製造方法により、図7に示す例の長尺中空状セラミック部材4の形状の成形体No.41でも同様の試験を行なった。その結果を表3に示す。
表3に示す結果から分かるように、図1,3,5,7に示す例の長尺中空状セラミック部材1〜4の形状のいずれの場合でも、溝12の内面の表面粗さRaが内周面の表面粗さRaよりも大きければ、良品数がより多かった。
この結果、本発明の長尺中空状セラミック部材では、溝12の内面の表面粗さRaが内周面の表面粗さRaよりも大きいと、亀裂が生じるのをより抑制できることが分かった。
(実施例6)
次に、実施例1で作製した坏土を用いて試料となる成形体を作製し、本発明の長尺中空状セラミック部材において、第2の溝の有無が外周角部の中央付近に生じる亀裂に対して影響するのかどうか確認し、かつ、第2の溝の深さ,幅および隣り合う外周角部の間の辺の長さに対して第2の溝の幅の合計値が占める割合が、外周角部の中央付近に生じる亀裂に対して影響するのかどうか確認する試験を実施した。
実施例1で作製した坏土を用いて、図10に示す例の長尺中空状セラミック部材5の形状で、長さLが1m,幅が65mm,高さが65mmの外形寸法で、厚みtが10mmとなるように、断面において中空部11は外形が外周に平行な辺を有する多角形状に形成され、実施例3の成形体No.7と同じ大きさの溝12(深さD1:2mm,幅W1:2mm)が外周角部に設けてあり、第2の溝14の深さと幅を示した表4に示す、深さD2および幅W2の第2の溝14が、表5に示すように、幅W2の合計値が、隣り合う外周角部の間の辺の長さW3に対して占める割合(以下、単に幅W2の合計値が占める割合という)が20%,30%,40%,50%および60%となるように設けてある長尺中空状セラミック部材となる実施例の成形体No.70〜94を押し出し成形により20本作製し、作製した成形体No.70〜94を20℃から徐々に80℃付近まで昇温して乾燥し、外周角部の中央付近に亀裂が生じなかった成形体を良品として良品数を確認した。その結果を表5に示す。
なお、成形体70〜94の第2の溝14は全て、隣り合う第2の溝14の間の距離は等間隔に配置し、溝12と、溝12と隣り合う第2の溝14との間の距離は3mmとした。また、第2の溝14の幅W2を全て統一して表4に示す幅W2の合計値が占める割合とすることが不可能である場合は、幅W2の合計値の調整用の第2の溝14を、外周角部の間の中央に1つ設けた。幅W2の合計値の調整用の第2の溝14を、外周角部の間の中央に設けたのは、隣り合う溝の幅が異なることで生じうる、第2の溝14周りの乾燥の度合いによる影響がより小さくなるからである。
また、同様の試験を図11〜13に示す例の長尺中空状セラミック部材6〜8の形状でも行なった。その結果を表5に示す。なお、図13に示す例の長尺中空状セラミック部材8の形状の成形体No.70〜94は、外形寸法が長さLが1m,幅が65mm,高さが65mm,厚みtが10mmであり、断面における中空部11の外形と外周角部の頂点Oとの最短距離Xを20mmであり、実施例4の成形体No.34と同じ大きさの溝12(深さD1:4mm,幅W1:5mm)が外周角部の成形体No.34と同様の位置に設けてある。また、隣り合う外周角部の間の辺の長さW3は、断面における中空部11の外形において、外周角部の頂点Oとの最短の点と、隣り合うもう一方の外周角部の頂点Oとの最短の点との間の中空部11の外形に沿った最短の距離とした。
表5に示す結果から分かるように、図10〜12に示す例の長尺中空状セラミック部材5〜7の形状の成形体No.70〜94は、成形体No.70〜94と同形状で、同じ外形寸法の第2の溝14が無い、図1,3および5に示す例の長尺中空状セラミック部材1〜3の形状の成
形体No.7に比べて良品数が多かった。また、図13に示す例の長尺中空状セラミック部材8の形状の成形体No.70〜94は、成形体No.70〜94と同形状で同じ外形寸法の第2の溝14が無い図7に示す例の長尺中空状セラミック部材4の形状の成形体No.34に比べて良品数が多かった。
また、図10〜13に示す例の長尺中空状セラミック部材5〜8の形状いずれの場合でも、成形体No.76〜78,No.81〜83およびNo.86〜88のような、第2の溝14の深さが中空部11の外形と外周との間の厚みの1/10以上1/4以下であり、第2の溝14の幅W2が中空部の外形と外周との間の厚みの1/10以上1/4以下であり、中空部11の外形の断面の隣り合う外周角部の間に設けられた複数の第2の溝14の幅W2の合計が隣り合う外周角部の間の辺の長さの30%〜50%の成形体では、とりわけ成形体の外周角部の中央付近に亀裂が生じにくいことが分かった。
この結果、本発明の長尺中空状セラミック部材のうち、中空部11の外形の断面の隣り合う外周角部の近傍の溝12の間に、長手方向に延びる複数の第2の溝14が設けられていれば、外周角部の中央付近に亀裂が生じるのをさらに抑制できることが分かった。また、第2の溝14の深さが中空部11の外形と外周との間の厚みの1/10以上1/4以下であり、第2の溝14の幅W2が中空部11の外形と外周との間の厚みの1/10以上1/4以下であり、中空部11の外形の断面の隣り合う外周角部の間に設けられた複数の第2の溝14の幅W2の合計が隣り合う外周角部の間の辺の長さの30%〜50%であることが好適であることが分かった。