JP2011129432A - 燃料電池の酸素供給装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】発電部におけるカソード側に酸素発生剤から発生させた酸素を供給することにより発電量を増大させることができる燃料電池の酸素供給装置を提供すること。
【解決手段】発電部6のアノード側に燃料が供給されるとともにカソード側に酸素が供給される燃料電池の酸素供給装置において、前記発電部6におけるカソード側に酸素発生剤から触媒反応により酸素を発生させる酸素発生部と、その発生させた酸素を前記発電部におけるカソード側に供給する酸素供給管路9とを備えていることを特徴とする。したがって、この発明によれば、発電部におけるカソード側に、相対的に高濃度の酸素を直接供給できる。また、酸素を取り込むことが困難な小型の燃料電池であっても、そのカソード側に相対的に高濃度の酸素を直接供給できる。その結果、酸素の供給を維持することができ、酸素欠乏による発電量の低下を抑制できる。
【選択図】図1

Description

この発明は、燃料電池の発電部に酸素を供給する装置に関するものである。
電気化学反応によって電力を発生させる各種の燃料電池が従来開発されている。その中でも、ダイレクトアルコール型の燃料電池は、常温で液体のアルコールを燃料として用いるため、貯留量当たりのエネルギ密度が高いという特徴を有している。そのため、水素燃料電池と比較して、装置全体の構成を小型化することができ、ノートパソコン、小型ビデオカメラ、携帯電話などの小型携帯型の機器用電源として有望視されている燃料電池である。
一方、従来のダイレクトアルコール型燃料電池は、前述した水素燃料電池と比較して、燃料あたりの発電量、即ち発電効率が低いなどの問題があり、その向上が課題になっている。そのダイレクトアルコール型燃料電池の一例として、メタノールを燃料として用いるダイレクトメタノール型燃料電池(以下、DMFCと記す。)が知られている。図8に、従来のDMFCの構成例を模式的に示してある。図8に示すように、従来のDMFC(アクティブ型)101は、その発電量を向上させるために、燃料タンク102に貯留された燃料を燃料輸送管路103に介装されたポンプPなどにより強制的に送液し、燃料供給口105から発電部104のアノード側に供給することが検討されている。図8において、発電部104における電気化学反応に用いられなかった燃料および反応残渣は、排出口107から排出されるようになっている。
この他、発電量を増大(向上)させるために、発電部104の数(スタック数)を増やすことも検討されているが、小型化が望まれるDMFCでは、その増大させるスタック数に自ずと限度がある。
DMFCは、アノードにおいて下記の(1)式に示す触媒反応が生じてプロトンと電子とを生じ、そのプロトンと電子とがカソードにおいて下記の(2)式に示す触媒反応を生じることにより発電するように構成されている。そのため、燃料電池全体の発生する発電量を増やすためには、原理的に燃料の供給量に応じて(アノード側の化学反応の増加に応じて)、カソードに供給する酸素の供給量を増大させる必要がある。しかしながら、特にパッシブ型のDMFCでは、小型化されるにともなって、カソード側における酸素の取り込みが困難になる傾向がある。
アノードにおける触媒反応
CHOH + HO → CO+ 6H + 6e …(1)式
カソードにおける触媒反応
3/2O + 6H + 6e → 3HO …(2)式
したがって、カソード側に酸素を供給することが従来検討されており、その一例が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載された装置は、密閉容器の内部に電子機器と発電ユニット(燃料電池)と酸素発生部とが収容されている。そして、容器外部から酸化剤である酸素を得られない場合に、酸素発生部において過酸化水素水溶液を分解することにより発生させた酸素を空気ポンプで発電ユニットに供給するように構成されている。
また、特許文献2には、燃料電池に圧縮空気もしくはモレキュラー・シーブにより酸素濃度を上昇させた酸素富化ガスを供給するように構成された発明が記載されている。
特開2009−70612号公報 特表2008−521693号公報
上述した特許文献1に記載された発明によれば、酸化剤である酸素が得られない状況であっても、燃料電池に酸化剤(酸素)を供給することができる。しかしながら、この特許文献1に記載された装置は、改質型の燃料電池であり、DMFCとは発電方式が異なる。したがって、過酸化水素水溶液から取り出した酸素を含む供給ガスを発電ユニットに供給する場合に、供給ガスを加湿する構成が必要である。また、特許文献1に記載された空気ポンプは、燃料を改質する場合に、改質反応にともなって不可避的に発生する一酸化炭素を酸化させる酸素を適宜に供給するためのものである。さらにまた、特許文献1に記載された構成では、その酸素の供給に空気ポンプを用いるため、装置を小型化できない虞がある。そして、空気ポンプの駆動音(ノイズ)により静音な装置とすることができない虞がある。また、空気ポンプなどを駆動させるためには、例えば電力が必要であるから、燃料電池の発電量はその消費電力分差し引かれることになり、この点でも改良の余地があった。
また、特許文献2に記載された構成では、圧縮機や高圧ボンベが必要になるため、装置全体の構成が大型化する虞があり、この点で改良の余地があった。
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであり、装置を大型化させずに、発電部におけるカソード側に酸素を供給し、発電量を増大させることができる燃料電池の酸素供給装置を提供することを目的とするものである。
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、発電部のアノード側に燃料が供給されるとともにカソード側に酸素が供給される燃料電池の酸素供給装置において、前記発電部におけるカソード側に酸素発生剤から触媒反応により酸素を発生させる酸素発生部と、その発生させた酸素を前記発電部におけるカソード側に供給する酸素供給管路とを備えていることを特徴とするものである。
請求項2の発明は、発電部のアノード側に燃料が供給されるとともにカソード側に酸素が供給される燃料電池の酸素供給装置において、前記酸素を発生させる酸素発生剤と、前記酸素発生剤を貯留する酸素発生剤タンクと、前記酸素発生剤タンクと前記発電部におけるカソード側とを連通する酸素供給管路と、前記酸素供給管路の途中に、前記酸素発生剤から前記酸素を発生させる触媒が担持された触媒担持部とを備えていることを特徴とするものである。
請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記酸素供給管路の内部であって、前記酸素発生剤タンクと前記触媒担持部との間には、毛管力を発生させるウイックもしくは多孔質セラミックスが設けられており、その途中に、前記発電部に供給する前記酸素の供給量を調整するバルブが設けられていることを特徴とする燃料電池の燃料供給装置である。
請求項4の発明は、請求項1または2の発明において、前記酸素発生剤は、過酸化水素を含むことを特徴とする燃料電池の燃料供給装置である。
請求項5の発明は、請求項1または2の発明において、前記触媒は、二酸化マンガンもしくは白金を含むことを特徴とする燃料電池の燃料供給装置である。
請求項6の発明は、請求項1ないし5の発明において、前記燃料は、メタノールを含むことを特徴とする燃料電池の燃料供給装置である。
請求項1の発明によれば、発電部におけるカソード側に、相対的に高濃度の酸素を直接供給できる。また、酸素を取り込むことが困難な小型の燃料電池であっても、そのカソード側に相対的に高濃度の酸素を直接供給できる。これにより、外気に対して密閉された空間で、あるいは外気から酸素を取り込むことが難しい環境で使用する場合であっても、酸素の供給を維持することができ、発電量の低下を抑制できる。また、これにより酸素の供給を維持することができ、酸素欠乏による発電量の低下を抑制できる。さらにまた、外部からの異物の侵入を防止もしくは抑制することができる。すなわち、このような燃料電池を適用した携帯電話や小型カメラなどを、ポケットあるいは鞄などの空間に収容した場合であっても、酸素の供給を維持し、発電が可能なことを意味している。その結果、燃料電池の発電量を増大させることができる。また、空気ポンプあるいはファンなどを用いないので、ノイズを低減できるとともに装置を小型化できる。さらにまた、空気ポンプあるいはファンなどを用いないので、発電した電力の損失(消費)を抑制することができる。言い換えれば、発電量を増大させることができる。
請求項2の発明によれば、発電部におけるカソード側に、相対的に高濃度の酸素を直接供給できる。また、酸素を取り込むことが困難な小型の燃料電池であっても、そのカソード側に相対的に高濃度の酸素を直接供給できる。すなわち、外気に対して密閉された空間で、あるいは外気から酸素を取り込むことが難しい環境で使用する場合であっても、酸素の供給を維持することができ、発電量の低下を抑制できる。また、これにより酸素の供給を維持することができ、発電量の低下を抑制できる。さらにまた、外部からの異物の侵入を防止もしくは抑制することができる。その結果、燃料電池の発電量を増大させることができる。また、空気ポンプあるいはファンなどを用いないので、装置を小型化できる。さらにまた、空気ポンプあるいはファンなどを用いないので、発電した電力の損失(消費)を抑制することができる。言い換えれば、発電量を増大させることができる。
請求項3の発明によれば、請求項2の発明による効果と同様の効果に加えて、バルブを設けることにより、発電部に供給する酸素の供給量を調整することができる。その結果、発電量を調整することができる。
請求項4の発明によれば、請求項1または2の発明による効果と同様の効果に加えて、酸素源に過酸化水素を用いることにより、酸素とともに発生した水をカソードに供給することができる。すなわち、酸素供給と発電部の湿潤(加湿)処理を同時におこなうことができる。発電部を湿潤(加湿)することより、特に燃料電池の始動時における発電量を増大させることができる。言い換えれば、酸素とともに発生した水により発電部を湿潤(加湿)するので、加湿器を設ける必要がない。したがって、始動性を向上できるとともに、小型化を図ることができる。
請求項5の発明によれば、請求項1または2の発明による効果と同様の効果に加えて、二酸化マンガンもしくは白金を触媒に用いることにより、汎用性があり化学的に安定な触媒担持部を形成することができる。また、特に二酸化マンガンを触媒に適用した場合には、その汎用性を向上できるとともに、白金を適用した場合と比較して、触媒コストを低減することができる。
請求項6の発明によれば、請求項1ないし5の発明による効果と同様の効果に加えて、反応性が高く、エネルギ密度の高いメタノールを燃料に用いることにより、メタノールを貯留する燃料タンクの容積を小さく抑えることができる。また、水素などの気体燃料を用いる場合と比較して取り扱いを容易にすることができる。さらにまた、燃料コストを低減することができる。
この発明に係る装置を適用したパッシブ型DMFCの構成例を模式的に示す図である。 発電部の構成を模式的に示す図である。 アノード側のセパレータの構成例を模式的に示す図である。 図3に示すセパレータの側面図である。 図3に示すセパレータのV−V’線に沿った断面図である。 従来のパッシブ型DMFCの構成例を模式的に示す図である。 この発明に係る装置を適用したDMFCの発電特性と従来構成のDMFCの発電特性とを模式的に示す図である。 ポンプを用いて燃料を供給するように構成された従来のアクティブ型DMFCの構成例を模式的に示す図である。
つぎにこの発明を、実施例に基づいてより具体的に説明する。図1に、この発明に係る装置を適用したパッシブ型DMFCの構成例を模式的に示してある。そのDMFC1の燃料には、蒸留水で10vol%に希釈したメタノール水溶液を用いた。そのメタノール水溶液は、高密度ポリエチレンあるいはポリプロピレンなどの従来知られている任意の部材によって形成された燃料タンク2に貯留されている。燃料であるメタノール水溶液は、燃料輸送管路3を流動し、ケーシング4に設けられた燃料供給口5からその内部に収容された発電部(MEA)6におけるアノード側に供給されるようになっている。
なお、燃料輸送管路3の内部には、例えばガラス繊維など細線を束ねて構成されたウイックもしくは多孔質部材を設けてもよい。すなわち、これらの部材が発生させる毛管力によって燃料タンク2から発電部6のアノード側にメタノールを供給するように構成してもよい。
メタノールが供給される発電部6のアノード側では、前述した(1)式に示す触媒反応が生じ、その反応生成物として二酸化炭素が生じる。また、(1)式に示す触媒反応は、その反応効率が100%ではないから、不可避的に未反応メタノール(いわゆるオフメタノール)が生じる。この反応生成物である二酸化炭素と反応残渣であるオフメタノールと余剰水とは、ケーシング4に設けられたアノード側排出口7から排出されるようになっている。
酸素発生剤として、蒸留水で5vol%に希釈した過酸化水素水溶液を用いた。その過酸化水素水溶液は、高密度ポリエチレンあるいはポリプロピレンなどの従来知られている任意の部材によって形成された酸素発生剤(過酸化水素)タンク8に貯留されており、酸素供給管路9を流動してケーシング4に設けられた酸素供給口10からその内部に収容された発電部6におけるカソード側に供給されるようになっている。より具体的には、酸素供給管路9には、全長30mmのシリコン製のチューブ9を用いた。その酸素供給管路9の内部であって、その少なくとも一部分に、触媒担持部11が設けられている。
触媒担持部11は、例えばガラス繊維の細線を束ねたウイック12もしくは多孔質セラミックスなどの多孔質部材に、二酸化マンガンもしくは白金などの触媒が担持されて形成されている。より具体的には、触媒担持部11は、10vol%になるようにエタノールに溶解させた硝酸マンガン(六水和物)に、予め洗浄したガラス繊維製のウイック12を浸漬し、酸素雰囲気で400℃、1時間焼結することにより、ガラス繊維表面に二酸化マンガンを担持させて作製した。なお、過酸化水素を分解する触媒には、二酸化マンガンの他に白金を用いてもよい。前述した触媒を担持させる条件における硝酸マンガンの化学変化を下記の(3)式に示す。
Mn(NO)→MnO+2NO↑ ・・・(3)式
酸素供給管路9の内部には、例えばガラス繊維など細線を束ねて構成されたウイック12が設けられており、その一方の端部が前述した触媒担持部11に接触して設けられている。ウイック12の他方の端部は酸素供給管路9の端部から延出されて酸素発生剤タンク8の内部に貯留された過酸化水素水溶液に浸漬されている。
なお、酸素発生剤タンク8の内部に、例えば脱脂綿などの毛管力を発生させるとともに多孔構造を有する部材を充填させ、これにウイック12における他方の端部の少なくとも一部を接触させて設けることが好ましい。要は、ウイック12が発生させる毛管力によって酸素発生剤タンク8から触媒担持部11に過酸化水素が供給されるようになっていればよい。なお、前述した触媒担持部11は、ウイック12の一方の端部に二酸化マンガンを担持させて形成してもよい。
さらに、酸素供給管路9における触媒担持部11よりも酸素発生剤タンク8側には、バルブ13が設けられている。このバルブ13は、触媒担持部11に供給する過酸化水素水溶液の供給量を調整し、また過酸化水素水溶液の逆流を防止するためのバルブ13である。そのバルブ13には、例えば流量制御バルブもしくは一方向弁(逆止弁)などの任意のバルブを適用することができる。また、バルブ13の開閉は制御ユニット(図示せず)によって電気的に制御可能に構成されていてもよい。なお、前述した酸素発生剤タンク8、酸素供給管路9、触媒担持部11がこの発明における酸素発生部に相当する。また、酸素発生剤タンク8から触媒担持部11までの長さが20mm、触媒担持部11の長さが5mmになるように作製した。
酸素発生剤タンク8に貯留された過酸化水素水溶液は、ウイック12の毛管力によって触媒担持部11に供給され、その触媒担持部11おいて二酸化マンガンと反応して前述した(2)式に示すように酸素と水とを生じる。この時、酸素(ガス)が発生することにより酸素供給管路9の内圧が上昇し、その内圧によって、触媒反応生成物である酸素と水とが発電部6におけるカソード側に供給されるようになっている。
前述した(2)式に示す触媒反応の反応生成物である水の一部は、特に、DMFC1の始動時において発電部6の湿潤(加湿)に用いることができ、これにより始動性を向上させることができる。しかしながら、DMFC1が発電を継続している間は、(1)式および(2)式に示す触媒反応から明らかなように、メタノール1分子に対し水3分子が生じ、発電部6において水が過剰に存在する。また、前述した(1)式と同様に、(2)式に示す触媒反応は、その反応効率が100%ではないから、不可避的に未反応酸素(余剰酸素)が生じる。そのため、その余剰な酸素と水とは、ケーシング4に設けられたカソード側排出口14から排出されるようになっている。
図2に、前述した発電部6の構成を模式的に示してある。発電部6は、実質的な燃料電池に相当する部分であり、高分子電解質膜15を備え、その電解質膜15と電極16,17とを一体化した膜・電極接合体(すなわち発電部。Membrane Electrode Assembly;以下、MEAと記す。)6により構成されている。電解質膜15は、例えばパーフルオロスルホン酸系高分子膜(例えばNafion 117(登録商標))もしくはポリベンゾイミダゾール(PBI)などによって構成されている。以下に記す実施例では、電解質膜15に厚さ0.1mmのパーフルオロスルホン酸系高分子膜15を用いた。
電解質膜15を挟んで、その両面側に触媒層(膜)18,19が設けられている。アノード側の触媒層18には、白金と酸化ルテニウムとの等量混合物によって構成されたものを用いた。また、カソード側の触媒層19には、白金を主成分として構成されたものを用いた。そして、これらの触媒層(膜)18,19の厚さは、それぞれ20μmになるように調整した。
触媒層(膜)18,19は、前述した白金粉末と酸化ルテニウム粉末との等量混合物もしくは白金粉末をそれぞれアルコール類と混合してインク化(スラリー化)し、これをスクリーン印刷機によりテフロン(登録商標)シート上にプリントして作製した。次いで、このテフロン(登録商標)シート上に作製した触媒膜18,19を前述したパーフルオロスルホン酸系高分子膜15に重ね合わせ、ホットプレス機で140℃、5分間、加熱加圧した。その後、その加圧状態を保った状態で静置して室温まで冷却し、触媒膜18,19を電解質膜15に転写した。
これらの触媒層18,19における前述した電解質膜15とは反対側の表面には、それぞれガス拡散層(Gas Diffusion Layer;以下、GDLと記す。)20,21が設けられている。GDL20,21は、触媒層18,19に燃料であるメタノールや酸化剤(酸素)が流通する空隙(空間)を確保するためのものである。また、GDL20,21は導電性を有している。すなわち、GDL20,21は導電性を有する多孔構造になっている。以下に示す実施例では、各GDL20,21には、厚さ1.0mmのカーボン繊維に水和処理(親水性処理)を施したものを用いた。
これらのGDL20,21における触媒層18,19とは反対側の表面に、前述した電極16,17が設けられている。電極16,17は、例えば、パンチングメタルもしくはメッシュ形状に形成された部材から構成されており、その表面に金あるいは白金によるメッキ処理が施されている。以下に示す実施例では、電極16,17には、厚さ0.3mm、開口径が2.0mmになるように調整されたステンレス製のメッシュ構造体に白金メッキが施されたものを用いた。
電極16におけるGDL20とは反対側に、そのGDL20に均一に燃料であるメタノールを供給するための燃料供給溝22が形成されたセパレータ23が設けられている。これと同様に、電極17におけるGDL21とは反対側に、GDL21に均一に酸化剤である酸素を供給するための酸素供給溝が形成されたカソード側セパレータ24が設けられている。図3に、アノード側のセパレータ23の構成例を模式的に示してある。図4は、セパレータ23の側面図であり、図5は、セパレータ23のV−V’線に沿った断面図である。
図3および図4ならびに図5において、アノード側のセパレータ23は、燃料であるメタノールを流通させるための燃料供給溝22が蛇状に蛇行して形成されている。この燃料供給溝22は、DL20側に開口しており、V−V’線に沿った断面形状が例えばコの字形状もしくはU字形状あるいはV字形状になるように形成されている。これと同様に、カソード側のセパレータ24が形成されている。なお、これらの燃料供給溝22と酸素供給溝とは、MEA6を挟んで互いにその直線部分が直交するように配置されている。また、燃料供給溝22の断面形状は、燃料の供給効率の観点から、U字形状が好ましい。
各セパレータ23,24は、従来知られているカーボンあるいは金属材料によって形成してもよい。金属材料によってセパレータ23,24を形成する場合には、燃料であるメタノールに対する耐腐食性を有するSUS、チタンなどを使用することが好ましい。また、その表面には、金あるいは白金による被覆を施すことにより、発電部(もしくはGDL)との接触抵抗、すなわち導電性を向上させることが好ましい。なお、金属材料によってセパレータ23,24を形成した場合には、導電性を有することにより、言い換えれば、電極と燃料供給路とを兼ね備えることにより、前述したメッシュ形状の電極を省くことができる。
また、各セパレータ23,24は、例えば繊維あるいは樹脂とプラスチック(合成樹脂)との複合材料によって構成されるいわゆる繊維強化プラスチック(Fiber Reinforced Plastic;FRP)であって、例えば繊維が敷き詰められた型にプラスチック樹脂を注入して成形するインジェクション成形などによって形成してもよい。また、その表面には、金あるいは白金による被覆を施すことにより、発電部(もしくはGDL)との接触抵抗、すなわち導電性を向上させることが好ましい。そのプラスチック樹脂および補強材としての繊維あるいは樹脂には従来知られている任意のものを使用することができる。より具体的には、母体となるプラスチック樹脂(合成樹脂材料)には、ポリエチレンテレフタレート樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などを用いることができる。また、補強材に用いることができる繊維素材として、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維などを用いることができる。
そして、前述したMEA6および各セパレータ23,24をホットプレス機で加熱加圧することにより、一体構造化した。また、各電極16,17の面積がそれぞれ25cm(5.0cm×5.0cm)になるように調整した。各電極16,17にはリード線25が接続されており、発電した電力が負荷(例えば各種電気機器など)26に供給されるようになっている。
比較例
図6に、前述したように作製した本発明の構成例において、この発明における酸素発生剤から酸素を発生させ、その酸素をカソード側に供給する構成を除いた従来のパッシブ型DMFC1の構成例を模式的に示してある。なお、図6に示す例は、前述した図1に示す構成の一部を変更したものであり、したがって図1に示す部分と同一の部分には図6に図1と同様の符号を付してその説明を省略する。図6に示す従来のDMFC1では、発電部6におけるカソード側に酸素を取り込む酸素供給口10が大気(外気)に開放されている。
図1および図6に示す構成のDMFC1を密閉された空間(6.0×6.0×1.0cm)に収容し、その発電量(W)の変化を測定した。図7は、密閉された空間におけるこの発明に係る装置を適用したDMFC1の発電特性と従来構成のDMFC(比較例)1の発電特性とを模式的に示す図である。図7において、実線は図1に示したように構成した本発明例の発電特性を示しており、破断線は図6に示したように構成した比較例の発電特性を示している。
図7に示す結果から明らかなように、いずれの構成においても発電開始数分後に発電量(W)がピークに達すること認められる。このピーク時における発電量(W)は、本発明例の発電量(W)が比較例の発電量(W)を上回っている。これは、過酸化水素を分解した場合に、酸素とともに発生する水によってMEA6が湿潤されたこと、および酸素の供給によるものと思われる。また、その発電量(W)の大きさから、比較例と比較して、十分な化学反応(発電反応)が起きているものと思われる。すなわち、酸素およびメタノールが不足なく供給されているものと思われる。言い換えれば、十分な発電がおこなわれているものと思われる。
さらにまた、比較例の発電量(W)は、時間の経過とともに低下していることが認められる。これは密閉空間中の酸素の濃度の低下によるものと推定される。あるいは、比較例は自然吸気に依存した従来のパッシブ型のDMFC1であるから、酸素供給口10から空気(酸素)を十分に取り込むことができず、その結果、発電量(W)が低下したものと推定される。これとは反対に、本発明例では、酸素欠乏が生じるような密閉空間で長時間駆動させても、同時に評価した比較例と比較して、発電量(W)の低下現象は全く認められず、高い発電量を維持していることが認められる。
したがって、この発明によれば、発電部6におけるカソード側に、酸素発生剤から触媒反応により発生させた酸素を直接供給することにより、発電量(W)を向上させることができる。また、酸素とともに発生した水を発電部6に供給できるので、特に始動時において発電部6を湿潤でき、その始動性を向上させることができる。さらにまた、酸素発生剤から触媒反応により酸素を発生させるので、相対的に安全性の高い装置とすることができる。さらにまた、空気ポンプもしくはファンあるいは加湿器などを用いないので、小型化でき、また静音な装置とすることができる。その結果、自然吸気に依存した従来のパッシブ型DMFCと比較して、始動性、発電量(W)を向上させた静音かつ小型化したDMFCを作製することができる。
なお、酸素発生剤に過酸化水素を用いたが、その他の酸素発生剤として、例えば過酸化酢酸を用いることができる。その他、有機過酸化物を用いる場合には、ケトンパーオキサイド類、ジアシルパーオキサイド類、ハイドロパーオキサイド類、ジアルキルパーオキサイド類、パーオキシケタール類、アルキルパーエステル類、パーカーボネート類などを用いることができる。
酸素発生剤として無機過酸化物を用いる場合には、過酸化カリウム、過酸化バリウムなどを用いることができる。酸素発生剤として過酸化カリウムを用いる場合には、例えば、粉末状の過酸化カリウムを水などの任意の溶媒に懸濁させ、もしくは過酸化カリウムのコロイド溶液を調整し、この溶液中で二酸化マンガンと接触させることにより酸素を発生させることができる。
触媒には、二酸化マンガンを用いたが、二酸化マンガンに少量の酸化鉛を添加することにより、二酸化マンガンの触媒活性を活性化させてもよい。また、前述したように、二酸化マンガンに替わって白金を用いてもよい。さらにまた、これらの触媒は、その触媒活性を高めるため、微細な粉体の形状で適用することが望ましい。
1…DMFC、 6…発電部(MEA)、 8…酸素発生剤タンク、 9…酸素供給管路、 11…触媒担持部、 13…バルブ。

Claims (6)

  1. 発電部のアノード側に燃料が供給されるとともにカソード側に酸素が供給される燃料電池の酸素供給装置において、
    前記発電部におけるカソード側に酸素発生剤から触媒反応により酸素を発生させる酸素発生部と、
    その発生させた酸素を前記発電部におけるカソード側に供給する酸素供給管路とを備えている
    ことを特徴とする燃料電池の酸素供給装置。
  2. 発電部のアノード側に燃料が供給されるとともにカソード側に酸素が供給される燃料電池の酸素供給装置において、
    前記酸素を発生させる酸素発生剤と、
    前記酸素発生剤を貯留する酸素発生剤タンクと、
    前記酸素発生剤タンクと前記発電部におけるカソード側とを連通する酸素供給管路と、
    前記酸素供給管路の途中に、前記酸素発生剤から前記酸素を発生させる触媒が担持された触媒担持部と
    を備えていることを特徴とする燃料電池の酸素供給装置。
  3. 前記酸素供給管路の内部であって、前記酸素発生剤タンクと前記触媒担持部との間には、毛管力を発生させるウイックもしくは多孔質セラミックスが設けられており、その途中に、前記発電部に供給する前記酸素の供給量を調整するバルブが設けられている
    ことを特徴とする請求項2に記載の燃料電池の酸素供給装置。
  4. 前記酸素発生剤は、過酸化水素を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の燃料電池の酸素供給装置。
  5. 前記触媒は、二酸化マンガンもしくは白金を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の燃料電池の酸素供給装置。
  6. 前記燃料は、メタノールを含むことを特徴とする請求項1ないし5に記載の燃料電池の酸素供給装置。
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