JP2011127173A - 防錆組成物およびそれを用いた防錆フィルム - Google Patents

防錆組成物およびそれを用いた防錆フィルム Download PDF

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Abstract

【課題】気体状の水分(水蒸気)に対してだけでなく、液体状の水分が付着した場合でも防錆効果を発揮できる防錆組成物を提供する。
【解決手段】金属体に対して防錆作用を有する防錆組成物を用いる。この防錆組成物は、防錆作用を有する防錆剤と、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属水酸化物から選ばれた第1のアルカリ性物質とを含む。防錆剤は、例えば安息香酸ナトリウムや安息香酸アンモニウムのような安息香酸塩であり、第1のアルカリ性物質は、例えば、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、水酸化ストロンチウムである。
【選択図】なし

Description

本発明は、金属に対して防錆作用を有する防錆組成物およびそれを用いた防錆フィルムに関する。
気相中に存在する金属体の腐食は、空気中に存在する気体状の水分(水蒸気)が金属の表面に吸着することにより発生及び進行する。空気中から水蒸気を完全に除去することは困難であるため、金属体の表面を腐食から保護するための処理が必要となる。
気相中で防錆効果を発揮するものには、例えば気化性防錆剤がある。この気化性防錆剤は、例えば樹脂フィルムに練り込まれ、防錆フィルムとして用いられる。この防錆フィルムで金属体を包装すると、フィルムに含有された気化性防錆剤が包装内部に気散して防錆剤が金属体の表面に付着し、皮膜を形成する。この皮膜により、気相中の水分や酸素を遮断し、防錆効果が発揮される。
特許第3160247号公報 特開平6−128765号公報
しかし、温度及び湿度の変化が激しい環境下に金属が晒された場合、金属の表面に結露水が発生することがあり(特に防錆フィルムと金属との接触部分は、毛細管現象により結露水が発生しやすい)、その部分が腐食してしまう。従って、結露水のような液体状の水分が金属表面に接触した状態においても腐食を防止する必要がある。
それ故に、本発明では、気体状の水分(水蒸気)に対してだけでなく、液体状の水分が付着した場合でも防錆効果を発揮できる防錆組成物およびそれを用いた防錆フィルムを提供することを目的とする。
本発明は、防錆作用を有する防錆組成物に関するものである。防錆組成物は、少なくとも1種類の防錆剤と、アルカリ土類金属酸化物及びアルカリ土類金属水酸化物から選ばれた第1のアルカリ性物質とを含む。
本発明に係る防錆組成物は、気体状の水分及び液体状の水分の両方に対して金属を防錆することができる。
本発明の実施形態に係る防錆組成物は、防錆作用を有しており、金属体の表面を防錆するために用いられる。この防錆組成物を用いるには、例えば、防錆組成物を溶媒に溶かして、金属を収容する容器の内面へ塗布する、樹脂フィルムに塗布又は練り込む、紙、木材、不織布へ含侵、塗布、すき込む等、様々な方法がある。
防錆組成物は、少なくとも1種類の防錆剤と、アルカリ金属酸化物、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物およびアルカリ土類金属水酸化物(以下、冗長を避けるためにこれら4つを総称して、「アルカリ金属酸化物等」という場合がある)から選ばれた少なくとも1種類のアルカリ性物質とを含む。防錆剤は、例えば、安息香酸ナトリウムや安息香酸アンモニウムのような安息香酸塩、有機アミン−安息香酸塩(ジイソプロピルアミン-安息香酸塩、ジベンジルアミン-安息香酸塩、シクロヘキシルアミン-安息香酸塩など)を使用できる。防錆組成物を構成するアルカリ性物質としては、アルカリ金属であるリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、アルカリ土類金属であるカルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウムの酸化物または水酸化物を使用できる。一例として、酸化カルシウム或いは水酸化カルシウムを好適に使用できる。
防錆剤は、気化して、金属体の表面に物理的又は化学的に可逆吸着することにより皮膜を形成する。また、防錆剤が溶解した水溶液に接触する金属表面にも皮膜を形成する。これら防錆剤の皮膜は、水分や酸素が金属表面へ接触することを抑制し、防錆効果を発揮する。
アルカリ金属酸化物等は、水に溶解してアルカリ水溶液となる。アルカリ水溶液に接触した金属の表面には、緻密な酸化膜である不動態皮膜が形成される。この不動態皮膜は、水や酸素が不動態皮膜の内部の金属表面に接触することを効果的に抑制し、防錆効果を発揮する。また、アルカリ金属酸化物等は、気相中に防錆剤が気化する際に同時に運ばれ、金属体の表面の吸着水や結露水に溶解する。これによって、気相中の金属体表面にも不動態皮膜を形成する。
水溶液がアルカリ性である場合、防錆剤の溶解度を高めることができ、防錆剤の溶解量が多いほど、水溶液に接触する金属体表面に対する防錆効果が高くなる。このように、防錆剤及びアルカリ金属酸化物等を共存させることで、防錆剤による防錆効果が助長されるという効果を奏する。
また、本発明に係る防錆組成物は、酸化ストロンチウムまたは水酸化ストロンチウムと、酸化ストロンチウム以外のアルカリ土類金属酸化物、水酸化ストロンチウム以外のアルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属酸化物、アルカリ金属水酸化物から選ばれたアルカリ性物質とを含むことが好ましい。
ストロンチウム酸化物またはストロンチウム水酸化物は、防錆剤が気相中に気化する際に、同時に運ばれ、金属体表面の吸着水や結露水に溶解する。ストロンチウム酸化物またはストロンチウム水酸化物は、水に溶解してストロンチウムイオンを生成する。一方、酸素に接した金属の表面には、空気酸化皮膜と呼ばれる非常に薄い酸化物の層が形成されている。ストロンチウムイオンは、この酸化物へ吸着したり、酸化物中の一部の金属イオンと置換されたり、酸化物の結晶格子間へ侵入したりすることによって、ストロンチウム複合酸化物を形成する。このストロンチウム複合酸化物は、カチオン選択透過性を有しているため、アニオンが金属表面に接触することを抑制し、防錆効果を発揮する。また、ストロンチウムイオンが酸化物の結晶を極微細にすることによっても、防錆効果を発揮する。
特に、ストロンチウムイオンと他のアルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンとが共存すると、相乗的な防錆効果を発揮する。具体的には、アルカリ金属酸化物等が溶解したアルカリ性水溶液では、ストロンチウムイオンの酸化物への吸着、置換及び侵入量が多くなる。これにより、ストロンチウム複合酸化物がより緻密になり、防錆効果が助長される。更に、ストロンチウム複合酸化物中のストロンチウムイオンに他のアルカリ金属イオンやアルカリ土類金属イオンが吸着し、カチオン選択透過性と酸化膜の緻密化が促進され、防錆効果が助長される。アルカリ金属イオン及びアルカリ土類金属イオンの中でも、第2族で原子番号の近いカルシウムイオンは上述のストロンチウムイオンの効果を最も高めることができる。
以下、本発明を具体的に実施した実施例について説明する。尚、実施例1〜4では防錆組成物を蒸留水に溶解させて用い、実施例5〜8では防錆組成物を樹脂フィルムに含有させて用いた。
(実施例1)
実施例1に係る防錆組成物は、安息香酸ナトリウムと水酸化カルシウムを1対2のモル比で配合したものである。蒸留水100mlに対して、0.001重量%、0.01重量%、0.1重量%の防錆組成物を添加し、3種類の水溶液を作製した。
(実施例2)
実施例2に係る防錆組成物は、安息香酸ナトリウム、水酸化カルシウム及び水酸化ストロンチウムを10対18対1のモル比で配合したものである。蒸留水100mlに対して、0.001重量%、0.01重量%、0.1重量%の防錆組成物を添加し、3種類の水溶液を作製した。
(実施例3)
実施例3に係る防錆組成物は、安息香酸ナトリウム、水酸化カルシウム及び水酸化ストロンチウムを2対2対1のモル比で配合したものである。蒸留水100mlに対して、0.001重量%、0.01重量%、0.1重量%の防錆組成物を添加し、3種類の水溶液を作製した。
(実施例4)
実施例4に係る防錆組成物は、安息香酸ナトリウム及び水酸化ストロンチウムを1対1のモル比で配合したものである。蒸留水100mlに対して、0.001重量%、0.01重量%、0.1重量%の防錆組成物を添加し、3種類の水溶液を作製した。
(比較例1)
比較例1では安息香酸ナトリウムのみを用いた。蒸留水100mlに対して、0.001重量%、0.01重量%、0.1重量%の安息香酸ナトリウムを添加し、3種類の水溶液を作製した。
(比較例2)
比較例2では水酸化カルシウムのみを用いた。蒸留水100mlに対して、0.001重量%、0.01重量%、0.1重量%の水酸化カルシウムを添加し、3種類の水溶液を作製した。
(比較例3)
比較例3では、蒸留水のみを用いた。
ガラス瓶に実施例1〜4、比較例1〜3の水溶液を満たし、その中に、30×40×3mmの鉄製プレート(SS400)を浸漬した。その後、ガラス瓶を密封し、25℃の環境下で放置した。そして、所定期間経過後、鉄製プレートを水溶液から取り出し、表面を目視観察し、[○:腐食なし、△:僅かに腐食、×:腐食有り]で評価した。各実施例及び各比較例の試験結果を、蒸留水に対する防錆組成物の重量%毎に表1、2及び3に示す。
Figure 2011127173
Figure 2011127173
Figure 2011127173
表1〜3を参照して、実施例1〜4と比較例1〜3とを比較すると、安息香酸ナトリウムと、アルカリ土類金属水酸化物(水酸化カルシウムまたは水酸化ストロンチウム)とを併用した実施例では、比較例に比べて、水溶液中の金属体に対する防錆効果の持続期間が長くなることが確認された。特に、防錆組成物の添加量が0.01重量%以上の場合、比較例の防錆効果の持続期間が1週間〜1ヶ月であるのに対して、実施例では1年以上の長期に渡り防錆効果を発揮しており、防錆剤と水酸化カルシウム(又は水酸化ストロンチウム)との相乗効果が確認された。また、表2において、実施例1及び4と実施例2及び3とを比較すると、水酸化カルシウム及び水酸化ストロンチウムを併用することで防錆持続期間が更に長くなっており、水酸化カルシウムと水酸化ストロンチウムとの相乗効果が確認された。特に、水酸化カルシウムと水酸化ストロンチウムのモル比が1:1の場合、より顕著に防錆剤の持続期間が長くなった。
(実施例5)
実施例5に係る防錆組成物は、安息香酸ナトリウムと水酸化カルシウムを1対2のモル比で配合したものである。この防錆組成物を樹脂フィルムに含有させて防錆フィルムを作製した。具体的には、まず、LDPEと安息香酸ナトリウムの重量比が100対20であるマスターバッチと、LDPEと水酸化カルシウムの重量比が100対20であるマスターバッチとを作製した。そして、LDPEにこれらのマスターバッチの添加量を変えて混練し、押出し成形により、LDPEに対して安息香酸ナトリウムの添加比率が、1重量%、0.1重量%、0.01重量%となる3種類の防錆フィルムを作製した。
(実施例6)
実施例6に係る防錆組成物は、安息香酸ナトリウム、水酸化カルシウム及び水酸化ストロンチウムを10対18対1のモル比で配合したものである。この防錆組成物を樹脂フィルムに含有させて防錆フィルムを作製した。具体的には、まず、LDPEと安息香酸ナトリウムとの重量比が100対20であるマスターバッチと、LDPEと水酸化カルシウムの重量比が100対18であるマスターバッチと、LDPEと水酸化ストロンチウムの重量比が100対2であるマスターバッチとを作製した。そして、LDPEとマスターバッチの比率を変えて混練し、押出成形により、LDPEに対する安息香酸ナトリウムの濃度が、1重量%、0.1重量%、0.01重量%となる3種類の防錆フィルムを作製した。
(実施例7)
実施例7に係る防錆組成物は、安息香酸ナトリウム、水酸化カルシウム及び水酸化ストロンチウムを2対2対1のモル比で配合したものである。この防錆組成物を樹脂フィルムに含有させて防錆フィルムを作製した。具体的には、LDPEと安息香酸ナトリウムとの重量比が100対20であるマスターバッチと、LDPEと水酸化カルシウムの重量比が100対10であるマスターバッチと、LDPEと水酸化ストロンチウムの重量比が100対10であるマスターバッチとを作製した。そして、LDPEとマスターバッチの比率を変えて混練し、押出成形により、LDPEに対する安息香酸ナトリウムの濃度が、1重量%、0.1重量%、0.01重量%、となる3種類の防錆フィルムを作製した。
(実施例8)
実施例8に係る防錆組成物は、安息香酸ナトリウム及び水酸化ストロンチウムを1対1のモル比で配合したものである。この防錆組成物を樹脂フィルムに含有させて防錆フィルムを作製した。具体的には、まず、LDPEと安息香酸ナトリウムの重量比が100対20であるマスターバッチと、LDPEと水酸化ストロンチウムの重量比が100対20であるマスターバッチとを作製した。そして、LDPEとマスターバッチの比率を変えて混練し、押出成形により、LDPEに対して安息香酸ナトリウムの濃度が、1重量%、0.1重量%、0.01重量%となる3種類の防錆フィルムを作製した。
(比較例4)
比較例4では安息香酸ナトリウムのみを樹脂フィルムに含有させて防錆フィルムを作製した。具体的には、LDPEと安息香酸ナトリウムの重量比が100対20であるマスターバッチを作製し、LDPEとマスターバッチの比率を変えて混練し、押出成形により、LDPEに対して安息香酸ナトリウムの濃度が、1重量%、0.1重量%、0.01重量%となる3種類の防錆フィルムを作製した。
(比較例5)
比較例5では水酸化カルシウムのみを樹脂フィルムに含有させて防錆フィルムを作製した。具体的には、LDPEと水酸化カルシウムの重量比が100対20であるマスターバッチを作製した。そして、LDPEとマスターバッチの比率を変えて混練し、押出成形により、LDPEに対して水酸化カルシウムの濃度が、1重量%、0.1重量%、0.01重量%となる3種類の防錆フィルムを作製した。
(比較例6)
比較例6では、LDPE単体を押出成形したフィルムを用いた。
実施例5〜8、比較例4〜6の防錆フィルムは、押出時にインフレーション成膜することにより、厚み100μm、径600mmのチューブ形状に成形した。作製した各チューブの内部に自動車部品である鋳鉄を入れ、端部をヒートシールにより封止した。その後、鋳鉄の表面に結露が発生するように、「15℃湿度50%の環境下で6時間放置し、その後50℃湿度95%で6時間放置する」を1サイクルとして、繰り返しのサイクル試験を実施した。所定回数のサイクルを経た後、防錆フィルムから鋳鉄を取り出し、表面の腐食の発生を目視観察し、[○:腐食なし、×:腐食有り]で評価した。各実施例及び各比較例の試験結果を、防錆フィルムに対する安息香酸ナトリウム(比較例5では水酸化カルシウム)の重量%毎に表4、5及び6に示す。
Figure 2011127173
Figure 2011127173
Figure 2011127173
表4〜6を参照して、実施例5〜8及び比較例4〜6を比較すると、安息香酸ナトリウムと、アルカリ土類金属水酸化物(水酸化カルシウムまたは水酸化ストロンチウム)とを併用した実施例では、比較例に比べて、気相部及び液接触部における金属体に対する防錆効果の持続サイクルが長くなることが確認された。特に、防錆フィルム中の安息香酸ナトリウムが0.1重量%以上の場合、実施例では40サイクル以上に渡り防錆効果が持続されているように、比較例に比べて格段に長く防錆効果が持続されており、防錆剤とアルカリ性物質(水酸化カルシウムまたは水酸化ストロンチウム)との相乗効果が確認された。
本発明は、自動車部品等の金属体の防錆に利用できる。

Claims (8)

  1. 防錆作用を有する防錆組成物であって、
    少なくとも1種類の防錆剤と、
    アルカリ土類金属酸化物及びアルカリ土類金属水酸化物から選ばれた第1のアルカリ性物質とを含む、防錆組成物。
  2. 前記第1のアルカリ性物質は、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、酸化ストロンチウムおよび水酸化ストロンチウムのいずれかである、請求項1に記載の防錆組成物。
  3. 前記第1のアルカリ性物質は、酸化ストロンチウムまたは水酸化ストロンチウムであり、
    酸化ストロンチウム以外のアルカリ土類金属酸化物、水酸化ストロンチウム以外のアルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属酸化物、アルカリ金属水酸化物から選ばれた第2のアルカリ性物質を更に含む、請求項1に記載の防錆組成物。
  4. 前記第2のアルカリ性物質は、酸化カルシウムまたは水酸化カルシウムである、請求項3に記載の防錆組成物。
  5. 防錆フィルムであって、
    樹脂フィルムと、
    前記樹脂フィルムに含有される少なくとも1種類の防錆剤と、
    前記樹脂フィルムに含有され、アルカリ土類金属酸化物及びアルカリ土類金属水酸化物から選ばれた第1のアルカリ性物質とを備える、防錆フィルム。
  6. 前記第1のアルカリ性物質は、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、酸化ストロンチウムおよび水酸化ストロンチウムのいずれかである、請求項5に記載の防錆フィルム。
  7. 前記第1のアルカリ性物質は、酸化ストロンチウムまたは水酸化ストロンチウムであり、
    酸化ストロンチウム以外のアルカリ土類金属酸化物、水酸化ストロンチウム以外のアルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属酸化物、アルカリ金属水酸化物から選ばれた第2のアルカリ性物質を更に含む、請求項5に記載の防錆フィルム。
  8. 前記第2のアルカリ性物質は、酸化カルシウムまたは水酸化カルシウムである、請求項7に記載の防錆フィルム。
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