JP2011127135A - 誘導加熱方法および誘導加熱装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】誘導加熱方法は、鉄系金属材料からなる加熱対象物を半溶融状態まで誘導加熱により加熱する誘導加熱方法である。この誘導加熱方法は、初期加熱工程と、急速加熱工程と、均熱加熱工程と含むことを特徴とする。初期加熱工程は、加熱対象物を加熱対象物のA1変態点未満の第1所定温度まで誘導加熱により加熱する。急速加熱工程は、加熱対象物を半溶融状態になる直前の第2所定温度まで誘導加熱により急速に加熱する。均熱加熱工程は、加熱対象物の全体が均一の温度になるように、加熱対象物が半溶融状態になる第3所定温度を維持して誘導加熱により加熱する。
【選択図】図5
Description
また、特許文献2(特開平11−251044号公報)に記載されているように、アルミチクソキャスティングの2段加熱装置の一つの形態として、トレイを使用しない前段加熱炉と、トレイを使用する後段加熱炉を構成することにより、加熱損失を可及的に少なくする加熱装置の提案がされている。
第8発明に係る温度測定方法は、請求項2に記載の誘導加熱装置において誘導加熱時における加熱対象物の温度測定方法であって、複数点温度測定ステップおよび温度決定ステップを備える。複数点温度測定ステップでは、加熱対象物と非接触式温度計とが相対移動させられながら加熱対象物の複数点の温度が測定される。温度決定ステップでは、複数点の温度から低温側の温度が排除されて加熱対象物の温度が決定される。
本発明の第1実施形態に係る誘導加熱装置1は、鉄系金属材料からなる加熱対象物である金属ビレットWKを半溶融状態まで誘導加熱により加熱する誘導加熱装置であり、図1に示されるように、主に、第1誘導加熱部10、トレイ搬送装置30及び第2誘導加熱部50から構成される。以下、各装置について詳述する。
この誘導加熱装置1は、2つの加熱装置10、50を備えており、第1誘導加熱部10が初期加熱炉11を含み、第2誘導加熱部50が急速加熱炉51aおよび均熱加熱炉51bを含む構成になっている。
また、この誘導加熱装置1では、初期加熱炉11、急速加熱炉51a、および均熱加熱炉51bには、それぞれ個別の高周波発信器15、55a、55bを備えている。すなわち、初期加熱炉11は高周波発信器15によって出力制御され、急速加熱炉51aは高周波発信器55aによって電力制御され、均熱加熱炉51bは高周波発信器55bによって電力制御される。
第1誘導加熱部10は、図2に示されるように、主に、初期加熱炉11、第1プッシャー16、第1非接触式温度センサ19および第1制御装置18から構成されている。
トレイ搬送装置30は、いわゆるアームロボットであって、初期加熱炉11から排出される金属ビレットWKをチャックした後に、その金属ビレットWKを第2誘導加熱部50の入口に配置されるトレイTR(図3参照)に置く。なお、本実施の形態において、トレイTRは、第2誘導加熱部50から排出されると、第2誘導加熱部50の入口に戻り、再び、ビレットWKを載せて第2誘導加熱部50内に送られる。
第2誘導加熱部50は、図4に示されるように、主に、急速加熱炉51a、均熱加熱炉51b、副均熱加熱炉51c、第2プッシャー56、ガイドレール57、第2非接触式温度センサ59および第2制御装置58から構成されている。
制御装置18,58は、所定時間毎に記憶部から規定数の表面温度データを読み出し、その表面温度データのうち表面温度が最も高い表面温度データを抽出し、その表面温度データを誘導加熱コイル52b、52cの出力調整用の制御パラメーラとして採用する。なお、本実施の形態では、規定数の表面温度データは、1つの金属ビレットWKから得られたものである。
(1)
第1実施形態の誘導加熱方法では、鉄系金属材料からなる金属ビレットWKを半溶融状態まで誘導加熱により3段階で加熱する。すなわち、初期加熱工程では、金属ビレットWKを金属ビレットWKのA1変態点未満の第1所定温度まで誘導加熱により加熱し、急速加熱工程では、金属ビレットWKを半溶融状態になる直前の第2所定温度T2まで誘導加熱により急速に加熱し、さらに、均熱加熱工程では、金属ビレットWKの全体が均一の温度になるように、半溶融状態になる第3所定温度T3を維持して誘導加熱により加熱する。そのため、ビレット割れを起こすことなく短い時間で均熱加熱まで完了することが可能である。
同様に、第1実施形態の誘導加熱装置1では、 鉄系金属材料からなる金属ビレットWKを半溶融状態まで誘導加熱により3段階で加熱する。すなわち、初期加熱炉11では、金属ビレットWKを金属ビレットWKのA1変態点未満の第1所定温度T1まで誘導加熱により加熱し、急速加熱炉51aでは、金属ビレットWKを半溶融状態になる直前の第2所定温度T2まで誘導加熱により急速に加熱し、さらに、均熱加熱炉51bでは、金属ビレットWKの全体が均一の温度になるように、半溶融状態になる第3所定温度T3を維持して誘導加熱により加熱するので、ビレット割れを起こすことなく短い時間で均熱加熱まで完了することが可能である。これにより、上記(1)と同様に、ビレット割れをおこすことなく短い時間で均熱加熱できるようになり、ビレットが加熱炉に投入されている時間が短くなり、その効果、脱炭層、酸化スケールが少なくなり成型品品質を向上することができる。
また、第1実施形態の誘導加熱装置では、初期加熱炉11を含む第1誘導加熱部10と、急速加熱炉51aおよび均熱加熱炉51bを含む第2誘導加熱部50とから構成されているので、まず、第1誘導加熱部10の初期加熱炉11において、金属ビレットWKを金属ビレットWKのA1変態点未満の第1所定温度T1まで誘導加熱により加熱し、ついで、金属ビレットWKを第2誘導加熱部50に移し変えることにより、第2誘導加熱部50の急速加熱炉51aにおいて、金属ビレットWKを半溶融状態になる直前の第2所定温度T2まで誘導加熱により急速に加熱し、さらに金属ビレットWKを第2誘導加熱部50の内部で移動させることにより、均熱加熱炉51bにおいて、金属ビレットWKの全体が均一の温度になるように、金属ビレットWKが半溶融状態になる第3所定温度T3を維持して誘導加熱により加熱することが可能である。このため、急速加熱炉51aから均熱加熱炉51bへの金属ビレットWKの移動を第2誘導加熱部50の内部で円滑に行うことができ、ビレット割れを起こすことなく短い時間で均熱加熱まで完了することが可能である。
すなわち、第1実施形態に係る誘導加熱装置1では、第1誘導加熱部10と第2誘導加熱部50とが分離して設けられており、さらに、第1誘導加熱部10において第1所定温度T1が金属ビレットWKのA1変態点よりも低く設定されている。このため、この誘導加熱装置1が停電等の原因により突然停止して金属ビレットWKが常温近くまで冷却されたとしても、組織変化をしていない状態なので、この金属ビレットWKを再利用することができる。したがって、この誘導加熱装置1では、成形加工物の生産効率に影響を及ぼすことがない。
さらに、第1実施形態に係る誘導加熱装置1では、第1誘導加熱部10と第2誘導加熱部50とが分離して設けられており、さらに、第1誘導加熱部10において第1所定温度T1が金属ビレットWKのA1変態点よりも低く設定されている。このため、この誘導加熱装置1では、第1誘導加熱部10においてビレットWKをトレイTRに載せる必要性がない。したがって、この誘導加熱装置1では、第1誘導加熱部10をコンパクト化することができると共に必要なトレイTRの枚数を少なくすることができる。
また、第1実施形態の誘導加熱装置では、第1誘導加熱部10の初期加熱炉11において、金属ビレットWKをトレイTRに載せない状態で金属ビレットWKのA1変態点未満の第1所定温度T1まで誘導加熱により加熱し、ついで、金属ビレットWKを第1誘導加熱部10から第2誘導加熱部50へ移し変えるときに、トレイTRに載せて第2誘導加熱部50へ投入する。これにより、第2誘導加熱部50の内部において、金属ビレットWKをトレイTRに載せた状態で急速加熱炉51aから均熱加熱炉51bへ円滑に行うことができ、ビレット割れを起こすことなく短い時間で均熱加熱まで完了することが可能である。
第1実施形態の誘導加熱装置では、初期加熱炉11、急速加熱炉51a、および均熱加熱炉51bには、それぞれ個別の高周波発信器15、55a、55bを備えているので、各加熱工程ごとに高周波発信器15、55a、55bにより個別に電力調整をして機種段替等による金属ビレットWKの寸法変更にも対応できる。
第1実施形態の誘導加熱装置では、初期加熱部の電力P1、急速加熱部の電力P2、および均熱加熱炉51bの電力P3の大きさは、P1<P3<P2であるので、急速加熱部では、初期加熱部の電力P1および均熱加熱炉51bの電力P3よりも大きい電力P2によって短時間に急速加熱を行うことが可能である。
また、第1実施形態に係る誘導加熱装置1では、第2誘導加熱部50において、第21非接触式温度センサに対応する表面温度データに基づいて均熱加熱炉51bの高周波発振器55bの出力調整が行われ、第22非接触式温度センサに対応する表面温度データに基づいて副均熱加熱炉51cの高周波発振器55cの出力調整が行われる。より具体的には、第2非接触式温度センサ59の設置位置毎に規定される金属ビレットWKの目標表面温度値から表面温度データの表面温度値を引いた値が求められ、その値が正の値である場合はその差に応じて高周波発振器55b、55cの出力が高められ、その値が負の値である場合はその差に応じて高周波発振器55b,55cの出力が低くめられる。このため、この第2誘導加熱部50は、気温変動等、外乱の激しい環境下に設置されても、金属ビレットwkをほぼ確実に目標の表面温度に加熱することができる。
さらに、第1実施形態に係る誘導加熱装置1では、温度計測器具として非接触式温度センサ19,59が採用される。このため、この誘導加熱装置1では、成形加工工程において量産サイクルタイムを遵守して成形加工物の生産を継続することができ、また、温度計の破損を防ぐことができる。
(A)
第1実施形態では第2誘導加熱部50において3つの誘導加熱炉が用いられたが、誘導加熱炉の数は特に限定されず、3つよりも少なくてもよいし多くてもよい。
第1実施形態では非接触式温度センサ19,59により金属ビレットWKの表面温度が計測されたが、接触式温度センサにより金属ビレットWKの内部温度が計測されてもよい。
第2実施形態に係る誘導加熱装置1では金属ビレットWKの複数点の表面温度データのうち表面温度が最大の表面温度データを制御パラメータとして採用したが、このような態様に代えて、複数点の表面温度データのうち高温側の表温度データを所定割合(例えば70%)残し、その表面温度の平均値や、中央値、最小値などを制御パラメータとして採用してもかまわない。
第2実施形態に係る誘導加熱装置1では特に言及しなかったが、金属ビレットWKがプッシャー16,56で押されている間のみ温度計測を行うようにしてもかまわない。
第2実施形態に係る誘導加熱装置1では連続的に金属ビレットWKの温度計測が実施されたが、間欠的に金属ビレットWKの温度計測が実施されていてもよい。
<第1実施形態の産業上の利用可能性>
本発明の第1実施形態に係る誘導加熱装置は、とくに、気温変動等、外乱の激しい環境下に設置されても、加熱対象物をほぼ確実に所望の温度に加熱することができるという特徴を有しており、外乱の激しい地域向けの誘導加熱装置として有用である。
過去に「誘導加熱時において誘導加熱停止中に加熱対象物の内部に直接、接触式の温度計を挿入し、加熱対象物の内部温度を測定する方法」が提案されている(例えば、特開平6−182777号公報参照)。
なお、第2実施形態に係る誘導加熱装置1は、第1実施形態と同様に、第1誘導加熱部10と第2誘導加熱部50とが分離して設けられており、さらに、第1誘導加熱部10は、3つの初期加熱炉(第1初期加熱炉11a、第2初期加熱炉11b、第3初期加熱炉11c)を有している。
(1)第1誘導加熱部
第1誘導加熱部10は、図6に示されるように、主に、第1初期加熱炉11a、第2初期加熱炉11b、第3初期加熱炉11c、第1プッシャー16、第1非接触式温度センサ19および第1制御装置18から構成されている。
トレイ搬送装置30は、いわゆるアームロボットであって、二本の爪をトレイTRの両脇に差し込んでトレイTRを持ち上げて移動させる。なお、本実施の形態において、トレイ搬送装置30は、空のトレイTRを第1誘導加熱部10のトレイ設置台17に置く第1動作と、金属ビレットWKが載ったトレイTRをトレイ設置台17から第2誘導加熱部50の第2金属ビレット設置台55(図7参照)に移動させる第2動作とを繰り返す。
第2誘導加熱部50は、図7に示されるように、主に、急速加熱炉51a、均熱加熱炉51b、副均熱加熱炉51c、第2プッシャー56、ガイドレール57、第2非接触式温度センサ59および第2制御装置58から構成されている。
制御装置18,58は、所定時間毎に記憶部から規定数の表面温度データを読み出し、その表面温度データのうち表面温度が最も高い表面温度データを抽出し、その表面温度データをフィードバック制御用の制御パラメーラとして採用する。なお、本実施の形態では、規定数の表面温度データは、1つの金属ビレットWKから得られたものである。
(1)
本発明の第2実施形態に係る誘導加熱装置1では、温度計測器具として非接触式温度センサ19,59が採用される。このため、この誘導加熱装置1では、成形加工工程において量産サイクルタイムを遵守して成形加工物の生産を継続することができ、また、温度計の破損を防ぐことができる。
本発明の第2実施形態に係る誘導加熱装置1では、金属ビレットWKの複数点の表面温度が計測され、その表面温度の最大値をフィードバック制御用の制御パラメータとした。このため、この誘導加熱装置1では、金属ビレットWKが高温で加熱されて金属ビレットWKの所々の表面に酸化被膜が生じたとしても、金属ビレットWKの表面温度が正確に決定される。したがって、この誘導加熱装置1では、正確な温度測定を実現することができ、誘導加熱コイル12a,12b,12c,52a,52b,52cの安定した正確なフィードバック制御が可能となる。
(A)
第2実施形態に係る誘導加熱装置1では第1誘導加熱部10および第2誘導加熱部50においてそれぞれ3つの誘導加熱炉が用いられたが、誘導加熱炉の数は特に限定されず、3つよりも少なくてもよいし多くてもよい。
第2実施形態に係る誘導加熱装置1では金属ビレットWKの複数点の表面温度データのうち表面温度が最大の表面温度データを制御パラメータとして採用したが、このような態様に代えて、複数点の表面温度データのうち高温側の表温度データを所定割合(例えば70%)残し、その表面温度の平均値や、中央値、最小値などを制御パラメータとして採用してもかまわない。
第2実施形態に係る誘導加熱装置1では特に言及しなかったが、金属ビレットWKがプッシャー16,56で押されている間のみ温度計測を行うようにしてもかまわない。
第2実施形態に係る誘導加熱装置1では連続的に金属ビレットWKの温度計測が実施されたが、間欠的に金属ビレットWKの温度計測が実施されていてもよい。
本発明の第2実施形態に係る温度測定方法は、量産サイクルタイムを遵守して生産を継続することができ、温度計の破損を防ぐことができ、さらに正確な温度測定を実現することができるという特徴を有し、誘導加熱装置における加熱対象物の温度計測に有効である。
さらに、過去に「誘導加熱装置において筒状加熱室の底面にレールを敷設し、そのスライドレールに沿ってトレイをスライド移動させる」ことが提案されている(例えば、特開平7−256334号公報、特開平8−85826号公報、特開平11−251044号公報参照)。
(1)第1誘導加熱部
第1誘導加熱部10は、図6に示されるように、主に、第1初期加熱炉11a、第2初期加熱炉11b、第3初期加熱炉11c、第1プッシャー16、第1非接触式温度センサ19および第1制御装置18から構成されている。
トレイ搬送装置30は、いわゆるアームロボットであって、二本の爪をトレイTRの両脇に差し込んでトレイTRを持ち上げて移動させる。なお、本実施の形態において、トレイ搬送装置30は、空のトレイTRを第1誘導加熱部10のトレイ設置台17に置く第1動作と、金属ビレットWKが載ったトレイTRをトレイ設置台17から第2誘導加熱部50の第2金属ビレット設置台55(図9参照)に移動させる第2動作とを繰り返す。
第2誘導加熱部50は、図9、図10および図11に示されるように、主に、急速加熱炉51a、均熱加熱炉51b、副均熱加熱炉51c、第2プッシャー56、ガイドレール57、冷却媒体循環装置60、第2非接触式温度センサ59および第2制御装置58から構成されている。
(1)
第3実施形態に係る第2誘導加熱部50では、ガイドレール57の内部に冷却媒体が流され、ガイドレール57が冷却される。また、この第2誘導加熱部50では、ガイドレール57に接触するトレイTRも同時に冷却される。このため、この第2誘導加熱部50では、トレイTRがガイドレール57に焼き付くのを防止することができる。
第3実施形態に係る第2誘導加熱部50では、ガイドレール57の断面形状が円形である。このため、この第2誘導加熱部50では、トレイTRは、ガイドレール57に線接触する。したがって、この第2誘導加熱部50では、ガイドレール57とトレイTRとの接触面積が極めて小さくなりスライド移動に対する抵抗が小さくなる。したがって、この第2誘導加熱部50では、トレイTRがスライド移動しやすくなる。
第3実施形態に係る第2誘導加熱部50では、ガイドレール57は、非磁性のステンレス鋼から形成されている。また、トレイTRは、カーボンセラミックから形成されている。このため、この第2誘導加熱部50では、トレイTRがガイドレール57に焼き付くおそれを低減することができる。
第3実施形態に係る第2誘導加熱部50では、ガイドレール57は、1本のステンレス製パイプであって、全ての誘導加熱コイル52a,52b,52cに亘って連続している。このため、この第2誘導加熱部50では、ガイドレール57に段差がなく、トレイTRのスムーズなスライド移動が可能となっている。
(A)
第3実施形態に係る誘導加熱装置1では第1誘導加熱部10および第2誘導加熱部50においてそれぞれ3つの誘導加熱炉が用いられたが、誘導加熱炉の数は特に限定されず、3つよりも少なくてもよいし多くてもよい。
第3実施形態に係る誘導加熱装置1では非接触式温度センサ19,59により金属ビレットWKの表面温度が計測されたが、接触式温度センサにより金属ビレットWKの内部温度が計測されてもよい。
先の実施の形態に係る誘導加熱装置1では冷却媒体循環装置60により冷却された冷却媒体がガイドレール57内部に流されたが、冷却媒体の供給方法は特に限定されず、水道から供給されてもよいし、ガイドレール57よりも高位置に設置された給水タンクから供給されてもよい。
第3実施形態に係る誘導加熱装置1ではガイドレール57が1本のステンレス製のパイプから形成されていたが、ガイドレールは2本の独立したパイプから構成されていてもよい。
第3実施形態に係る誘導加熱装置1ではガイドレール57の横断面の形状が円形とされていたが、ガイドレールの横断面の形状は特に限定されず、三角形や菱形等、トレイTRと線接触するものであればよい。
第3実施形態に係る誘導加熱装置1ではガイドレール57は1本の連続物とされていたが、ガイドレールは、金属ビレットWKの搬送方向下流側に向かって高さが段階的に低くなる複数の独立したレールから構成されていてもよい。
第3実施形態に係る誘導加熱装置1ではガイドレール57はステンレス製であったが、ガイドレールの素材は非磁性体であって加熱温度よりも高い耐熱性を有するものであれば特に限定されない。
第3実施形態に係る誘導加熱装置1ではトレイTRはカーボンセラミックス製であったが、トレイTRの素材は金属ビレットWKの加熱温度以上の耐熱性を有するものであれば特に限定されない。
<第3実施形態の産業上の利用可能性>
本発明の第3実施形態に係る誘導加熱装置は、トレイがレールに焼き付くのを防止することができるという特徴を有し、加熱対象物の加熱温度が比較的高い場合において有用である。
つぎに本発明の第4実施形態に係わるビレット搬送装置の実施形態を図面を参照しながら説明する。
図12〜17に示されるビレット搬送装置101は、搬送装置本体である搬送ロボット102と、エアカーテン生成部103とを備えている。
(1)
第4実施形態のビレット搬送装置101では、エアカーテン生成部103を備えているので、搬送ロボット102によってビレットBを誘導加熱炉Fから成型装置Mへビレットを搬送する間、エアカーテン生成部103によって生成されたエアカーテンCがビレットBを取り囲むように不活性ガスを吹き出してビレットBを外気から遮断すること可能である。
しかも、ビレットBの搬送用のトレイ105は、外気から遮断するための蓋が不要になるので、蓋の開閉等の手間を省略できる。したがって、きわめて短時間でダイキャスト給湯口Sに素材であるビレットBを投入でき、温度低下をおこすことなく供給できる。
また、第4実施形態のビレット搬送装置101では、ロボットハンド104は、ビレットBを載せたトレイ105を介して、ビレットBを把持し、搬送ロボット102は、誘導加熱炉Fから成型装置MへビレットBをトレイ105に載せた状態で搬送する。これにより、搬送中のビレットBは、トレイ105に最小限接触しているのみであり、周囲のダクトその他の部材に接触しないので、熱が奪われにくいという利点も有する。
また、第4実施形態のビレット搬送装置101では、エアカーテン生成部103のノズル106は、ビレットBに不活性ガスが当たらないように、ビレットBへ向かう方向よりも外側に不活性ガスを吹き出すように、ノズル106の向きが調整されている。したがって、不活性ガスの気流をノズル106の調整によりビレットB及びトレイ105に直接当てないようにすることができ、ビレットBの温度低下を抑えることが可能である。
また、第4実施形態のビレット搬送装置101では、エアカーテン生成部103が、ロボットハンド104の付近に配置され、ロボットハンド104の移動に伴って移動することが可能な不活性ガスを吹き出すノズル106を有するので、搬送中のビレットBを常時エアカーテンCで外気から遮断することが可能である。
さらに、第4実施形態のビレット搬送装置101では、ノズル106が、ビレットBの周囲を円形に取り囲むように配置され、円弧状断面の吹出口106aを有する複数の円弧状ノズルであるので、ビレットBおよびトレイ105を取り囲む最小限の広さのエアカーテンCを生成することが可能であり、不活性ガスの消費を抑えることが可能である。とくに、ビレットBが円柱形状であり、トレイ105が半円形の場合には、より狭い範囲でエアカーテンCを生成することが可能であり、不活性ガスの消費をより抑えることが可能である。
また、第4実施形態では、ノズル106から噴出される不活性ガスが窒素ガスであるので、不活性ガスの中でもとくに安価かつ安全である。
(A)
上記第4実施形態では、搬送ロボット102のロボットハンド104が、ビレットBを載せたトレイ105を介して、ビレットBを間接的に把持しているが、本発明はこれに限定される場合ではなく、ロボットハンド104が、ビレットBを直接把持するようにしてもよく、この場合も、エアカーテン生成部103によって生成されたエアカーテンCがビレットBを取り囲むように不活性ガスを吹き出してビレットBを外気から遮断すること可能である。但し、この場合のロボットハンドは図に示すような形状ではなく、半溶融状態の柔らかいビレットがくずれないようなハンド形状の変更も行なう。たとえば、左右からはさんでトレイからすくい取るようなハンド形状とする。
また、上記第4実施形態では、ノズル106の形状が、円弧形状のノズルを例にあげて説明しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の形状を有するノズルを採用することも可能である。
さらに、上記第4実施形態では、エアカーテン生成用の不活性ガスの一例として、窒素ガスを例にあげて説明しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の不活性ガスを採用することも可能である。
また、上記第4実施形態では、ノズル106がロボットハンド104の付近に配置され、ロボットハンド104の移動に伴って移動する態様を一例にあげて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
また、上記第4実施形態では、搬送ロボット102として、ロボットアーム107が旋回することにより、ビレットBを搬送する例が示されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、加熱されたビレットB又はトレイ105をロボットハンド104で把持して加熱装置から成型装置へ搬送できる搬送ロボット102であれば、種々の形態のものを採用することが可能である。
本発明の第4実施形態に係るビレット搬送装置は、加熱されたビレットを搬送するためのビレット搬送装置に適用することが可能である。
つぎに本発明の第5実施形態であるビレットトレイの実施形態について、図面を参照しながら説明する。
(1)
第5実施形態のビレットトレイ201は、その上面202において、ビレットBを載置する載置部分204を備えている。載置部分204には、ビレットBとの接触面積を低減するための溝203が形成されている。
また、溝203によって溶け残りの発生および付着を防止できるので、載置部分204の表面に塗る水性離型剤の塗布面積を少なくすることができる。
また、加熱温度を上げてビレットBの粘度を低くしても、溝203によって溶け残りの発生および付着を防止できるので、半溶融状態のビレットBを型成形する際の成形圧力を下げることができる。
しかも、溝203が載置部分204に載置される円柱状のビレットBの長手方向に沿って延びるので、円柱状のビレットBの下側の全長にわたって、溶け残りの発生および付着を防止できる。
また、溝203の内面の曲率半径R1が、ビレットBの外周面の曲率半径R2よりも小さいので、ビレットBが溝203内面に面接触することを確実に防止できる。また、ビレットトレイ201の設計および加工が容易になる。
(A)
第5実施形態のビレットトレイ201では、載置部分204にビレットBとの接触面積を低減するための溝203が形成されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、ビレットBとの接触面積を低減することができる凹凸があればよく、少なくとも1つの凹部および/または凸部が形成されていればよい。したがって、凹部は、溝だけでなく、1または複数の穴やくぼみでもよい。
また、溝203の代わりに、載置部分204にビレットBとの接触面積を低減するために、凸部として、例えば、図22に示されるように、載置部分204に載置されるビレットBの長手方向に沿って延びる一対の突条215であってもよい。この場合も、一対の突条215によって溶け残りの発生および付着を防止できる。
<第5実施形態の産業上の利用可能性>
本発明の第5実施形態に係るビレットトレイは、半溶融または半凝固状態のビレットを載置するビレットトレイに種々適用することが可能である。
10 第1誘導加熱部
11、221 初期加熱炉(初期加熱部)
19,59 非接触式温度センサ(非接触式温度計)
50、222 第2誘導加熱部
51a 急速加熱炉(急速加熱部)
51b 均熱加熱炉(均熱加熱部)
51c 副均熱加熱炉
52a,52b,52c 誘導加熱コイル
57 パイプレール(ガイドレール)
58 第2制御装置(出力調整器)
101 ビレット搬送装置
102 搬送ロボット
103 エアカーテン生成部(エアカーテン生成手段)
104 ロボットハンド(把持部)
105 トレイ
106、116 ノズル
107 ロボットアーム
108 ガスボンベ
109 ガスホース
201 ビレットトレイ
202 上面
203 溝
204 載置部分
205 縁部分
215 突条
WK 金属ビレット(加熱対象物)
TR トレイ
B ビレット
C エアカーテン
F 誘導加熱炉
M 成型装置
S ダイキャスト給湯口
Claims (10)
- 鉄系金属材料からなる加熱対象物(WK)を半溶融状態まで誘導加熱により加熱する誘導加熱方法であって、
加熱対象物(WK)を前記加熱対象物のA1変態点未満の第1所定温度まで誘導加熱により加熱する初期加熱工程と、
前記加熱対象物を半溶融状態になる直前の第2所定温度まで誘導加熱により急速に加熱する急速加熱工程と、
前記加熱対象物の全体が均一の温度になるように、前記加熱対象物が半溶融状態になる第3所定温度を維持して誘導加熱により加熱する均熱加熱工程と
含むことを特徴とする誘導加熱方法。 - 鉄系金属材料からなる加熱対象物(WK)を半溶融状態まで誘導加熱により加熱する誘導加熱装置(1)であって、
加熱対象物(WK)を前記加熱対象物のA1変態点未満の第1所定温度まで誘導加熱により加熱する初期加熱部(11)と、
前記加熱対象物を半溶融状態になる直前の第2所定温度まで誘導加熱により急速に加熱する急速加熱部(51a)と、
前記加熱対象物の全体が均一の温度になるように、前記加熱対象物が半溶融状態になる第3所定温度を維持して誘導加熱により加熱する均熱加熱部(51b)と
備えている誘導加熱装置(1)。 - 前記初期加熱部(11)を含む第1誘導加熱部(10)と、前記急速加熱部(51a)および前記均熱加熱部(51b)を含む第2誘導加熱部(50)とから構成されている、
請求項2に記載の誘導加熱装置(1)。 - 前記初期加熱部(11)において、前記加熱対象物を、トレイに載せない状態で前記加熱対象物のA1変態点未満の第1所定温度まで加熱し、
前記初期加熱部(11)での加熱後に、前記加熱対象物を前記トレイに載せ
前記急速加熱部(51a)において、前記加熱対象物を、前記トレイに載せた状態で半溶融状態になる直前の第2所定温度まで急速に加熱する、
請求項3に記載の誘導加熱装置(1)。 - 前記トレイは、前記加熱対象物を載置する載置部分(204)を備え、
前記載置部分(204)には、前記加熱対象物との接触面積を低減するための少なくとも1つの凹部および/または凸部が形成されている、
請求項3または4に記載の誘導加熱装置(1)。 - 前記初期加熱部(11)、前記急速加熱部(51a)、および前記均熱加熱部(51b)には、それぞれ個別の高周波発信器を備えている、
請求項2から5のいずれかに記載の誘導加熱装置(1)。 - 前記初期加熱部(11)の電力P1、前記急速加熱部(51a)の電力P2、および前記均熱加熱部(51b)の電力P3の大きさは、P1<P3<P2である、
請求項6に記載の誘導加熱装置(1)。 - 請求項2に記載の誘導加熱装置(1)において誘導加熱時における加熱対象物(WK)の温度測定方法であって、
前記加熱対象物と非接触式温度計(19,59)とを相対移動させながら前記加熱対象物の複数点の温度を測定する複数点温度測定ステップと、
前記複数点の温度から低温側の温度を排除して前記加熱対象物の温度を決定する温度決定ステップと
を備える温度測定方法。 - 誘導加熱コイル(52a,52b,52c)と、
前記誘導加熱コイルの内部空間に通される非磁性のパイプレール(57)と、
をさらに備えており、
前記トレイは、前記パイプレール上を移動可能に設置される、
請求項4に記載の誘導加熱装置(1)。 - 直列的に複数配列される誘導加熱コイル(52a,52b,52c)と、
複数の前記誘導コイルのうち少なくとも2つの前記誘導加熱コイルの間に設置され、前記誘導加熱コイルの加熱対象物(WK)の温度を計測する非接触式温度計(59)と、
複数の前記誘導加熱コイルのうち少なくとも1つの前記誘導加熱コイル(以下「特定誘導加熱コイル」という)の出力を、前記特定誘導加熱コイルよりも前記加熱対象物の搬送方向上流側に配置される前記非接触式温度計による前記加熱対象物の実測温度値を利用して調整する出力調整器(58)と
をさらに備える請求項2に記載の誘導加熱装置(1)。
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