JP5389462B2 - 非晶質合金の連続鋳造方法および連続鋳造装置 - Google Patents
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例えば、特許文献1には、金型キャビティ内への鋳込み金属の充填が完了する手前で鋳込み金属が金型ゲートで凝固して充填不足を起こさないように、予め金型を50℃〜100℃に加熱した状態で溶融した非晶質合金材料を金型に注入し、鋳込まれると同時に金型を急速冷却する非晶質合金の冷却方法とその装置とが開示されている。
また、非晶質合金の鋳造に関する技術ではないが関連する技術として、特許文献2には、プラスチックレンズの射出成形を行うため、内部にキャビティが形成されるようそれぞれ一対の金型を有する複数のキャビティユニットを、所定の加熱ステーション、充填・緩和ステーション、徐冷ステーション、成形品取出しステーションの順に搬送し、キャビティに対応する形状の樹脂成形品を成形するようにした成形システムにあって、徐冷ステーションに、キャビティユニットを徐冷する徐冷ステージと、キャビティ内の温度分布を均一にしつつ徐冷ステージとは異なる冷却速度で徐冷する冷却ステージと、を設けたキャビティユニットの徐冷装置が記載されている。
特許文献1に記載の技術では、予め急冷に必要な温度よりも金型の温度を高くしておき、溶湯が鋳込まれると同時に急速冷却することによって、「金型ゲートにおける凝固が少し遅れるため、良好な溶湯の流れが確保され、溶湯の金型キャビティへの充填不良などがなくなる」とともに、「充填不足を生じることなく非晶質合金を得る事が可能」となるとされている。
しかしながら、金型の加熱および急冷は、金型内部に設けられた熱媒通過路および冷媒通過路にそれぞれ熱媒体および冷媒を供給することによって行うため、装置構成が複雑化しており、複数の金型を切り換えて連続的な鋳造を行える構成ではない。このため、成形品1個当たりの製造に要する時間は、1つの金型を加熱する温度調整の時間や、熱媒や冷媒を入れ替えたりする時間を含むため、生産効率をあまり高めることができないという問題がある。
また、金型の加熱温度は50℃〜100℃であって、鋳込まれる溶湯温度に比べてきわめて低温であり、溶湯凝固の進行の程度を低減することができるのみである。したがって、特に複雑な形状を有する成形品や、高精度の型転写精度が求められる精密部品や、径の小さな部品などは、溶湯の熱が金型に吸熱されて充填不良が生じ、製造できないという問題がある。
また、特許文献2に記載の徐冷装置では、加熱機構あるいは冷却機構を有しないキャビティユニット(金型)を、加熱ステーション、充填・緩和ステーション、徐冷ステーション、成形品取出しステーションの順に搬送して連続的に成形するため、金型の簡素化、小型化が可能となるとともに、複数の金型を用いて生産効率を向上することが可能となる。
しかしながら、この技術は、合成樹脂の射出成形において、型転写精度を向上するために保圧、徐冷を行う技術である。非晶質合金の鋳造においては、結晶化を起こさないように、溶湯を結晶化温度以下となるまで急冷しなければならないので、このような徐冷装置では、非晶質合金の鋳造を行うことはできないという問題がある。
この発明によれば、金型加熱工程によって、金型を非晶質合金の原材料合金の融点以上に加熱し、溶湯充填工程によって、不活性雰囲気に調整された充填室に配置された金型の成形用キャビティ部に原材料合金の溶湯を充填する。このとき、溶湯凝固を起こすことなく液体状態の低粘度を保って、成形用キャビティ部内に隅々まで充填される。
次に、移動工程によって、溶湯が充填された金型を充填室から充填室とは別に設けられた冷却室に移動する。そして、冷却工程によって、冷却室に移動された金型を、金型内の溶湯の冷却速度が原材料合金の臨界冷却速度以上を保持するように、原材料合金の結晶化温度以下まで冷却するとともに、原材料合金の結晶化温度以下、かつ原材料合金のガラス遷移温度以上の温度領域、すなわち、ガラス遷移領域(過冷却液体領域)で、金型内に充填された溶湯を加圧する。よって、結晶化を避けて非晶質合金の鋳造を行うことが可能となるとともに、溶湯の粘性が液体状態よりも高粘度となった状態でも、溶湯を成形用キャビティ部の内面に密着する状態を保つことができるので形状転写性が向上される。
なお、溶湯を結晶化を避けて非晶質化させるには、結晶化温度以下となるまでの冷却速度を、原材料合金の組成に応じて決まる所定の冷却速度(臨界冷却速度)以上とすればよい。
また、移動工程によって充填室を空けることができるので、冷却工程を行う間に、他の金型に対して、金型加熱工程および溶湯充填工程を並行して行うことができる。
以上の各工程を繰り返すことで、複数の金型を用いて連続的な非晶質合金の鋳造を行うことができ、生産効率が向上する。
この発明によれば、徐冷工程によって、冷却室と別に設けられた徐冷室で、冷却工程における冷却速度よりも小さい冷却速度で金型を冷却する。一般に金属やガラスに対し、加熱した後ゆっくり冷却することで残留応力を減少させる方法は、焼き鈍しとしてよく知られており、徐冷工程によって非晶質合金の残留応力を小さく抑えることができる。
また、冷却室を空けることができるので、徐冷工程を行う間に、他の金型に対して、冷却工程を並行して行うことができる。このため、連続して高い生産効率で鋳造することが可能となる。
また、金型の冷却を、非晶質化するための冷却工程と、金型から取り出せるまで固化させる徐冷工程とに分けて行うので、冷却制御により大きなエネルギーが必要な冷却工程に金型が滞留する時間が短縮化され、省エネルギーである。
この発明によれば、冷却工程において、金型の温度を検出し、この金型の温度の検出値が、成形用キャビティ部内の溶湯の温度が原材料合金の結晶化温度以下の目標冷却温度となった後に、徐冷工程に移行するので、成形用キャビティ部内の溶湯が確実に非晶質化された状態で、徐冷工程へ金型を移動することができる。このため、冷却工程に要する時間や冷却制御に投入するエネルギーが、それぞれ最小限の状態で、結晶化されていない成形品を得ることができる。
ここで、目標冷却値は、金型の形状や温度検出を行う位置に応じて、原材料合金の結晶化温度以下の適宜値に設定することができる。
この発明によれば、冷却工程において、金型の温度を検出し、この金型の温度の検出値が、成形用キャビティ部内の溶湯の温度が原材料合金のガラス遷移温度以下の目標冷却温度となった後に、徐冷工程に移行するので、成形用キャビティ部内の溶湯が確実にガラス遷移温度以下となって完全に固化された状態で、徐冷工程へ金型を送ることができる。このため、冷却工程後の金型の搬送時にも、金型内の成形品が形状変化するおそれがなくなり、搬送時の外力や衝撃の影響による成形品の形状不良や形状ばらつきをなくすことができる。
ここで、目標冷却値は、金型の形状や温度検出を行う位置に応じて、原材料合金のガラス遷移温度以下の適宜値に設定することができる。
この発明によれば、金型を原材料合金のガラス遷移温度以下まで冷却することによって、冷却工程で溶湯が完全に固化される。このため、冷却工程後の金型の搬送時にも、金型内の成形品が形状変化するおそれがなくなり、搬送時の外力や衝撃の影響による成形品の形状不良や形状ばらつきをなくすことができる。
この発明によれば、充填室とは別に設けられた金型加熱室内で、金型を加熱するので、溶湯充填工程と並行して、他の金型の金型加熱工程を行うことができる。このため、連続鋳造において待機時間を減らすことができ、より生産効率の向上につながる。
この発明によれば、金型加熱工程において、金型の温度を検出し、金型の温度が原材料合金の融点以上となるように金型の温度制御を行うので、金型の温度を検出しない場合に比べて、融点に近い温度を目標温度に設定しても、確実に金型を融点以上に加熱することができる。そのため、加熱時間および加熱エネルギーを低減することができる。
この発明によれば、溶湯充填工程において、金型の温度または溶湯の温度を検出し、溶湯の温度が原材料合金の融点以上となるように金型の温度制御を行うので、充填室に配置された金型の温度が原材料合金の融点より低い場合でも、溶湯の充填時に確実に金型の温度を融点以上にすることができる。
したがって、金型加熱工程における金型の温度設定は、金型を充填室内に配置するまでの温度低下を考慮しなくてもよいので、このような温度低下を見込んで金型加熱工程における加熱目標温度を過大に設定する場合に比べて、加熱時間および加熱エネルギーを低減することができる。
この発明によれば、冷却工程において、金型の温度を検出して金型の温度の時間変化から金型の冷却速度を算出して、冷却速度が予め定められた目標冷却速度になるように金型の温度制御を行うので、溶湯を確実に非晶質化することができる。
ここで、目標冷却速度は、原材料合金の組成によって決まる臨界冷却速度以上の冷却速度が得られるように設定する。
この発明によれば、溶湯充填工程において、成形用キャビティ部内の溶湯の充填状態を検出し、成形用キャビティ部に溶湯が充填されたことを検出した後、冷却工程に移行するので、溶湯が確実に充填された後、迅速に冷却工程に移行することができる。
この発明によれば、金型加熱部によって、金型を非晶質合金の原材料合金の融点以上に加熱し、金型を不活性雰囲気に調整された充填室に配置する。そして、溶湯充填部によって、充填室に配置された金型の成形用キャビティ部に原材料合金の溶湯を充填する。このため、溶湯は凝固を起こすことなく液体状態の低粘度を保っているため、溶湯は、成形用キャビティ部の内面に沿って容易に移動し、成形用キャビティ部の内面に密着しつつ成形用キャビティ部内に隅々まで充填されていく。
次に、第1移動部によって、溶湯が充填された金型を充填室から充填室とは別に設けられた冷却室に移動する。そして、冷却部によって、冷却室に移動された金型を、金型内の溶湯の冷却速度が原材料合金の臨界冷却速度以上を保持するように、原材料合金の結晶化温度以下まで冷却する。
以上を繰り返すことで、複数の金型を用いて連続的な非晶質合金の鋳造を行うことができる。
また、第1移動部によって充填室を空けることができるので、冷却室で冷却を行う間に、他の金型に対して、充填室で行う溶湯の充填を並行して行うことができ、生産効率が向上する。
なお、溶湯を非晶質化させるには、結晶化温度以下となるまでの冷却速度を、原材料合金の組成に応じて決まる所定の冷却速度(臨界冷却速度)以上とすればよい。
また、この発明は、請求項1に記載の非晶質合金の連続鋳造方法を行うための装置の発明となっているので、請求項1に記載の発明と同様の作用を備える。
この発明によれば、請求項2に記載の非晶質合金の連続鋳造方法を行うための装置の発明となっているので、請求項2に記載の発明と同様の作用を備える。
この発明によれば、第2移動部によって金型を冷却室から冷却室と別に設けられた徐冷室に移動して、徐冷室内で徐冷部によって冷却部における冷却速度よりも小さい冷却速度で金型を冷却することができる。このため、非晶質合金の残留応力を小さく抑えることができる。
また、第2移動部によって金型を徐冷室に移動した後は、冷却室を空けることができるので、徐冷室で徐冷を行う間に、他の金型に対して、冷却室での冷却を並行して行うことができる。このため、連続して高い生産効率で鋳造することが可能となる。
また、金型の冷却を、非晶質化するための冷却部による冷却と、金型から取り出せるまで固化させる徐冷部による冷却とに分けて行うことができるので、冷却制御により大きなエネルギーが必要な冷却室に金型が滞留する時間が短縮化されるため省エネルギーとなる。
また、この発明は、請求項3に記載の非晶質合金の連続鋳造方法を行うための装置の発明となっているので、請求項3に記載の発明と同様の作用を備える。
この発明によれば、請求項4に記載の非晶質合金の連続鋳造方法を行うための装置の発明となっているので、請求項4に記載の発明と同様の作用を備える。
この発明によれば、請求項5に記載の非晶質合金の連続鋳造方法を行うための装置の発明となっているので、請求項5に記載の発明と同様の作用を備える。
この発明によれば、請求項6に記載の非晶質合金の連続鋳造方法を行うための装置の発明となっているので、請求項6に記載の発明と同様の作用を備える。
この発明によれば、充填室に配置された金型に溶湯充填部によって溶湯を充填する際、充填室温度検出部によって、金型の温度または溶湯の温度を検出する。そして、この充填室温度検出部によって検出された金型の温度または溶湯の温度に基づいて、充填室加熱温度制御部によって充填室金型加熱部の加熱制御を行い、溶湯の温度が原材料合金の融点以上となるように金型の温度制御を行うことができる。このため、充填室に配置された金型の温度が原材料合金の融点より低い場合でも、溶湯の充填時に確実に金型の温度を融点以上にすることができる。
したがって、金型加熱部によって、充填室に金型を配置する前に金型を加熱する場合にも、金型を充填室内に配置するまでの温度低下を考慮しなくてもよいので、このような温度低下を見込んで充填室に配置する前の加熱目標温度を過大に設定する場合に比べて、加熱時間および加熱エネルギーを低減することができる。
また、この発明は、請求項9に記載の非晶質合金の連続鋳造方法を行うための装置の発明となっているので、請求項9に記載の発明と同様の作用を備える。
この発明によれば、充填室とは別に設けられた金型加熱室内で、加熱室金型加熱部によって、金型を加熱することができるので、充填室で溶湯充填部によって溶湯の充填を行うのと並行して、他の金型を加熱しておくことができる。このため、連続鋳造において待機時間を減らすことができ、より生産効率の向上につながる。
また、この発明は、請求項7に記載の非晶質合金の連続鋳造方法を行うための装置の発明となっているので、請求項7に記載の発明と同様の作用を備える。
この発明によれば、金型加熱室に配置された金型を加熱する際、加熱室温度検出部によって、金型の温度を検出する。そして、この加熱室温度検出部によって検出された金型の温度に基づいて、加熱室加熱温度制御部によって加熱室金型加熱部の加熱制御を行い、金型の温度が原材料合金の融点以上となるように金型の温度制御を行うことができる。このため、金型の温度を融点以上に確実に加熱するために目標加熱温度を過大に設定する場合に比べて、加熱時間および加熱エネルギーを低減することができる。
また、この発明は、請求項8に記載の非晶質合金の連続鋳造方法を行うための装置の発明となっているので、請求項8に記載の発明と同様の作用を備える。
この発明によれば、請求項10に記載の非晶質合金の連続鋳造方法を行うための装置の発明となっているので、請求項10に記載の発明と同様の作用を備える。
この発明によれば、データ選択部によって、入力部で入力された原材料合金の名称または種類の情報に基づいて、データ記憶部に記憶された結晶化温度から成形に用いる原材料合金の結晶化温度を選択することができる。そして、この結晶化温度に基づいて第2移動制御部による制御を行うことができる。
このため、多品種の非晶質合金の鋳造を行う場合でも、鋳造の条件設定を確実かつ容易に行うことができる。
この発明によれば、データ選択部によって、入力部で入力された原材料合金の名称または種類の情報に基づいて、データ記憶部に記憶されたガラス遷移温度から成形に用いる原材料合金のガラス遷移温度を選択することができる。そして、このガラス遷移温度に基づいて第2移動制御部による制御を行うことができる。
このため、多品種の非晶質合金の鋳造を行う場合でも、鋳造の条件設定を確実かつ容易に行うことができる。
この発明によれば、データ選択部によって、入力部で入力された原材料合金の名称または種類の情報に基づいて、データ記憶部に記憶された融点から成形に用いる原材料合金の融点を選択することができる。そして、この融点に基づいて充填室加熱温度制御部による制御を行うことができる。
このため、多品種の非晶質合金の鋳造を行う場合でも、鋳造の条件設定を確実かつ容易に行うことができる。
この発明によれば、データ選択部によって、入力部で入力された原材料合金の名称または種類の情報に基づいて、データ記憶部に記憶された融点から成形に用いる原材料合金の融点を選択することができる。そして、この融点に基づいて加熱室加熱温度制御部による制御を行うことができる。
このため、多品種の非晶質合金の鋳造を行う場合でも、鋳造の条件設定を確実かつ容易に行うことができる。
この発明によれば、データ選択部によって、入力部で入力された原材料合金の名称または種類の情報に基づいて、データ記憶部に記憶された目標冷却温度から成形に用いる原材料合金の目標冷却温度を選択することができる。そして、この目標冷却温度に基づいて冷却温度制御部による制御を行うことができる。
このため、多品種の非晶質合金の鋳造を行う場合でも、鋳造の条件設定を確実かつ容易に行うことができる。
この発明によれば、第1移動制御部によって、溶湯充填検出部が成形用キャビティ部への溶湯の充填完了を検出したときに、第1移動部を駆動するので、溶湯が確実に充填された後、迅速に冷却部による冷却を行うことができる。
また、この発明は、請求項11に記載の非晶質合金の連続鋳造方法を行うための装置の発明となっているので、請求項11に記載の発明と同様の作用を備える。
本発明の第1の実施形態に係る連続鋳造装置について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る連続鋳造装置の概略構成を示す模式的な平面図である。図2は、図1のA−A断面図である。図3(a)、(b)は、本発明の第1の実施形態の充填室の溶湯充填の前後の様子を示す模式的な断面図である。図4は、本発明の第1の実施形態に係る連続鋳造装置の制御ユニットの機能ブロック図である。図5は、本発明の第1の実施形態の各温度制御部の機能ブロック図である。
なお、各図は、模式図のため、見易いように寸法比を適宜誇張して描いている(以下の図面も同じ)。
非晶質合金とは、複数の金属元素が結晶構造を形成せずに凝固(アモルファス化)した合金のことである。非晶質合金は、複数の金属元素からなる非晶質合金原料を融点Tm以上に加熱溶解した溶湯を、結晶化温度TX以下になるまで急速冷却することにより形成される。非晶質合金は、通常の結晶金属に見受けられるような結晶粒界を有さず、結晶粒界を起因とした粒界腐食(結晶粒界に沿って腐食が進行する現象)を生じないことから、耐食性に優れている。
非晶質合金原材料から非晶質合金を成形するには、溶湯が急速冷却される必要がある。必要な冷却速度より遅い速度で部分的に冷却されると、この部分が結晶化状態で固化されるため、全体として非晶質合金の性能が劣化してしまう。
金属ガラスと称されるアモルファス合金は、ガラス遷移温度Tgが結晶化温度Txよりも低温側に存在し、安定な過冷却液体温度域ΔTx(=Tx−Tg)が存在する。
このような金属ガラスは、結晶金属のような凝固収縮を生じないことから、成形金型に対する高精度な転写性を有し、さらにガラス遷移領域では、例えば10MPaよりも低い圧力でも容易に変形されるため、ガラスのような熱間プレス加工も可能である。そのため、成形品の形状自由度、寸法精度、生産性に優れている。また、金属ガラスは、その物性として低ヤング率・高強度であり、さらに熱に対して低膨張である。
このような金属ガラスの例として、例えば、Zr55Cu30Al10Ni5の組成を有する金属ガラス(Tm=750(℃)、TX=490(℃)、Tg=400(℃))や、Zr50Cu40Al10の組成を有する金属ガラス(Tm=750(℃)、TX=520(℃)、Tg=430(℃))を挙げることができる(実施例の表1参照)。これらの金属ガラスは、10℃/s以上の冷却速度で結晶化温度TX以下に急冷すると非晶質化されることが知られている。
充填口1aの上端部には、溶湯の落下充填を容易にするため、上方に拡径されたテーパ部1gが設けられている。
成形用キャビティ部1bは、成形品の外形に応じて適宜の形状に形成されるもので、図2の形状は一例である。また、本実施形態では、成形用キャビティ部1bの内部に中子1fが設けられ、薄肉の複雑な立体形状を有する成形品が成形できるようになっている。
これらのうち、入口ロードロック室3、金型加熱室4、充填室5、冷却室6、徐冷室7、および出口ロードロック室8は、この順に直列に配置され、隣接部分で連結されている。この各連結部の内部には開口が設けられ、図2に示すように、金型1を搬送可能な均一高さの床面上で金型1が入口ロードロック室3から出口ロードロック室8に向かう一定の搬送方向Bに沿って搬送できるようになっている。
投入コンベアー2の搬送開始側の端部には、金型1を投入コンベアー2上に載置する金型追加機構12が設置されている。
投入コンベアー2は、制御ユニット60に電気的に接続され、制御ユニット60によって、投入動作が制御される。
隣接する投入コンベアー2および金型加熱室4との間における各開口には、これら開口を開閉する入口シャッター3aおよび加熱室入口シャッター4aが設けられている。これにより、入口シャッター3aおよび加熱室入口シャッター4aが閉じられた状態では、入口ロードロック室3は気密に保たれ、雰囲気制御機構70(図4参照)によって内部を減圧不活性雰囲気に置換できるようになっている。
本実施形態の雰囲気制御機構70は、真空ポンプおよびアルゴン(Ar)ガス供給機構を備え、入口ロードロック室3内を、例えば、1.0×10−4Paまで減圧した後、Arガスを注入して50kPa程度の減圧不活性雰囲気に設定できるようになっている。本実施形態では、この減圧不活性雰囲気の条件は、金型加熱室4、充填室5、冷却室6、徐冷室7、および出口ロードロック室8内に形成する減圧不活性雰囲気の条件と共通である。
入口シャッター3a、加熱室入口シャッター4aは、制御ユニット60と電気的に接続され、制御ユニット60からの制御信号に応じてそれぞれの開閉動作が制御される。
充填室入口シャッター5aは、制御ユニット60と電気的に接続され、制御ユニット60からの制御信号に応じて開閉動作が制御される。
上側ヒートプレート4dは、金型加熱室4の上面の外側に設けられた昇降シリンダー20によって、上下移動可能に保持されており、これにより、下側ヒートプレート4b上に配置された金型1を、下側ヒートプレート4bおよび上側ヒートプレート4dによって上下方向から挟持できるようになっている。
下側ヒートプレート4bおよび上側ヒートプレート4dの材質は、熱伝導性に優れる適宜の材質、例えば、アルミナやSiCなどのセラミックスを好適に採用することができる。そして、それぞれの内部には、ヒータ23と、下側ヒートプレート4bおよび上側ヒートプレート4dの温度を検出するためのプレート温度センサー22とが、それぞれ埋め込まれている。
本実施形態では、ヒータ23は、応答性に優れ、かつ1000℃にまで加熱できるSiCヒータを採用している。また、プレート温度センサー22は、熱電対を用いたセンサーを採用している。
なお、下側ヒートプレート4b、上側ヒートプレート4dの大きさは、それぞれの材質の熱伝導率や、ヒータ23の応答性を考慮して、金型1の温度を必要な加熱速度で加熱するために必要な大きさ、熱容量に設定される。
ヒータ23およびプレート温度センサー22は、それぞれ制御ユニット60に電気的に接続されている。
また、上側ヒートプレート4dの内部には、加熱室温度検出部(金型温度検出部)として、入口ロードロック室3から移動された金型1が配置される範囲内で、下面側に進退可能とされ、かつ下側ヒートプレート4b上に配置された金型1を挟持する際に、金型上面1dに上方側から当接可能とされた金型温度センサー21が設けられている。
本実施形態では、各金型温度センサー21、熱電対を用いたセンサーを採用している。また、各金型温度センサー21は、制御ユニット60に電気的に接続されている。
各金型温度センサー21の進退機構は、金型1の温度測定時に金型底面1cまたは金型上面1dに一定圧力で当て付け、金型1の移動時に下側ヒートプレート4bまたは上側ヒートプレート4dの内部において金型1と接触しない位置に退避できれば、適宜の進退機構を採用することができる。例えば、スプリングやガス圧を用いた進退機構を採用することができる。
本実施形態の加熱室移動部30Aは、図1に示すように、金型加熱室4等の側方の外部に設けられたロッド状の搬送ガイド部30bによって支持され、搬送方向Bに沿って進退する1軸アクチュエータからなる搬送駆動部30cによって、一定タクト時間Δtで周期的に駆動される。
また、加熱室移動部30Aは、金型1の移動経路に対して進退可能に設けられ、例えば、金型1が入口ロードロック室3から投入される際や金型1を加熱する際など、金型1を押圧して移動させる際を除いては、移動経路および金型1の近傍から退避できるようになっている。
金型1を充填室5内に移動させた加熱室移動部30Aは、金型1の移動経路から退避した状態で、搬送駆動部30cによって駆動開始前の位置に復帰される。
加熱室移動部30Aは、制御ユニット60と電気的に接続され、制御ユニット60からの制御信号に応じて駆動される。
冷却室入口シャッター6aは、制御ユニット60と電気的に接続され、制御ユニット60からの制御信号に応じて開閉動作が制御される。
本実施形態のヒートプレート5bは、下側ヒートプレート4bと同様の構成を有し、内部に、ヒータ23、プレート温度センサー22、および充填室温度検出部(金型温度検出部)として金型温度センサー21を備えている。
ヒータ23、プレート温度センサー22、および金型温度センサー21は、制御ユニット60に電気的に接続されている。
本実施形態の充填室移動部30Bは、図1に示すように、加熱室移動部30Aと同様に、搬送ガイド部30bによって支持されている。そして搬送駆動部30cによって一定タクト時間Δtで駆動されるとともに、金型1の移動経路に対して進退可能に設けられ、金型1を冷却室6に移動させた後、駆動開始前の位置に復帰できるようになっている。
また、高周波誘導加熱コイル24の上方には、金型1に充填すべき非晶質合金原材料を秤量してブロック状とした原材料合金を、順番に高周波誘導加熱コイル24内に供給するストッカー25が設けられている。
ストッカー25は、制御ユニット60に電気的に接続され、制御ユニット60からの制御信号に応じて原材料合金を高周波誘導加熱コイル24の内側に落下させて供給できるようになっている。
このような構成により、ストッカー25から原材料合金が落下されると、高周波誘導加熱コイル24に供給される電流による電磁力によって、非結晶合金原材料が誘導浮揚させながら、原材料合金の融点Tm以上に誘導加熱して、原材料合金の溶湯26を形成することができる。
また、高周波誘導加熱コイル24への電流供給を停止すると、溶湯26は自由落下し、充填口1aを通して融点Tm以上に加熱された金型1の成形用キャビティ部1b内に充填される。
このため、高周波誘導加熱コイル24は、成形用キャビティ部1bに加熱溶解された原材料合金の溶湯26を充填する溶湯充填部を構成している。
放射温度計28は、保持アーム27によって高周波誘導加熱コイル24の中心上方に移動されたとき、下方側で高周波誘導加熱コイル24によって誘導浮遊された原材料合金または溶湯26の温度を非接触で測定するものである。放射温度計28は、制御ユニット60に電気的に接続され、測定された温度が制御ユニット60に伝達されるようになっている。
超音波センサー29は、保持アーム27によって金型1の充填口1aの上方に移動されたときに、充填口1a内に向かって超音波を放射し、その反射波によって、充填口1a内の溶湯26の液面位置を検出するセンサーである。
超音波センサー29は、制御ユニット60に電気的に接続され、検出された溶湯26の液面位置を表す検出信号を、制御ユニット60に送出するようになっている。
ここで、「溶湯26の冷却速度が原材料合金の臨界冷却速度以上を保持するように、原材料合金の結晶化温度TX以下に冷却する」とは、結晶化温度TX以下となるまでの冷却速度が、非晶質合金原材料の組成に応じて決まる所定の冷却速度(以下では、臨界冷却速度Vcと称する)以上となるように冷却することを意味する。例えば、金属ガラスの場合、冷却速度が10℃/s以上となるように冷却すればよいものがある。
以下では、溶湯26が結晶化温度TX以下に冷却され非晶質化された状態を非晶質合金26Aと称して区別する。
徐冷室出口シャッター7aは、制御ユニット60と電気的に接続され、制御ユニット60からの制御信号に応じて開閉動作が制御される。
上側冷却プレート6dは、冷却室6の上面の外側に設けられた昇降シリンダー20によって、上下移動可能に保持されており、これにより、下側冷却プレート6b上に配置された金型1を、下側冷却プレート6bおよび上側冷却プレート6dによって上下方向から挟持できるようになっている。
下側冷却プレート6bおよび上側冷却プレート6dの材質は、ステンレス鋼(SUS)からなり、それぞれの内部には、冷媒を循環させる冷媒流路6cが設けられ、下側冷却プレート6bおよび上側冷却プレート6dの温度を検出するために、プレート温度センサー22が埋め込まれている。冷媒としては、例えば、熱媒体油、冷却水などを採用することができる。
また、下側冷却プレート6bの内部には、充填室5から移動された金型1が配置される範囲内で、上面側に進退可能とされ、かつ下側冷却プレート6b上の金型1の金型底面1cに下方側から当接可能とされた金型温度センサー21が金型温度検出部(金型冷却速度検出部)として設けられている。
また、上側ヒートプレート4dの内部には、充填室5から移動された金型1が配置される範囲内で、下面側に進退可能とされ、かつ下側ヒートプレート4b上に配置された金型1を挟持する際に、金型上面1dに上方側から当接可能とされた金型温度センサー21が金型温度検出部(金型冷却速度検出部)として設けられている。
本実施形態では、プレート温度センサー22、および各金型温度センサー21は、制御ユニット60に電気的に接続され、制御ユニット60によって、下側冷却プレート6b、上側冷却プレート6d内を流れる冷媒の流量を制御することで、金型1の冷却速度が、臨界冷却速度Vcより大きな目標冷却速度Voに制御されるようになっている。
本実施形態の冷却室移動部30Cは、図1に示すように、加熱室移動部30Aと同様に、搬送ガイド部30bによって支持されている。そして搬送駆動部30cによって一定タクト時間Δtで駆動されるとともに、金型1の移動経路に対して進退可能に設けられ、金型1を徐冷室7に移動させた後、駆動開始前の位置に復帰できるようになっている。
上側冷却プレート7dは、徐冷室7の上面の外側に設けられた昇降シリンダー20によって、上下移動可能に保持されており、これにより、下側冷却プレート7b上に配置された金型1を、下側冷却プレート7bおよび上側冷却プレート7dによって上下方向から挟持できるようになっている。
下側冷却プレート7b、上側冷却プレート7dは、冷却速度の制御目標値が異なるのみで、下側冷却プレート6b、上側冷却プレート7dと同様の構成を有し、内部に、冷媒流路6c、プレート温度センサー22、および金型温度センサー21を備えている。
本実施形態の徐冷室移動部30Dは、図1に示すように、加熱室移動部30Aと同様に、搬送ガイド部30bによって支持されている。そして搬送駆動部30cによって一定タクト時間Δtで駆動されるとともに、金型1の移動経路に対して進退可能に設けられ、金型1を出口ロードロック室8に移動させた後、駆動開始前の位置に復帰できるようになっている。
隣接する出口コンベアー9との間における開口には、この開口を開閉する出口シャッター8aが設けられている。これにより、徐冷室出口シャッター7aおよび出口シャッター8aが閉じられた状態では、出口ロードロック室8は気密に保たれ、雰囲気制御機構70(図4参照)によって内部を減圧不活性雰囲気に置換できるようになっている。
また、徐冷室出口シャッター7aが閉じられた状態で、出口シャッター8aを開放することで、出口ロードロック室8の室内の雰囲気を外部の大気雰囲気と一致させることができる。
出口シャッター8aおよびは、制御ユニット60と電気的に接続され、制御ユニット60からの制御信号に応じて開閉動作および排出動作が制御される。
出口コンベアー9は、制御ユニット60に電気的に接続され、制御ユニット60によって、搬送動作が制御される。
離型ステージ10は、出口コンベアー9によって、搬送された金型1を移載し、金型1から成形品を離型する作業を行うためのステージである。
離型ステージ10の側方には、成形品が離型されて再利用可能になった金型1を離型ステージ10から排出する排出機構11が設けられている。
制御ユニット60の機能構成は、図4に示すように、加熱室加熱温度制御部61、充填室加熱温度制御部62、冷却温度制御部64、徐冷温度制御部65、シャッター制御部71、移動制御部63、主制御部67、および制御情報記憶部66からなる。
充填室加熱温度制御部62は、充填室5の金型温度センサー21によって測定された金型温度に基づいてヒートプレート5bの温度制御を行うものである。
冷却温度制御部64は、冷却室6の金型温度センサー21によって測定された金型温度に基づいて上側冷却プレート6dおよび下側冷却プレート6bの温度制御を行うものである。
徐冷温度制御部65は、徐冷室7の金型温度センサー21によって測定された金型温度に基づいて上側冷却プレート7dおよび下側冷却プレート7bの温度制御を行うものである。
出力目標値演算部72は、主制御部67から送出される目標温度または目標冷却速度からなる制御目標値100と、金型温度センサー21によって測定された金型温度から換算される金型温度または金型冷却速度との差から、温度制御手段68の温度(プレート温度)の制御指令値である出力目標値101を演算するものである。この出力目標値101を求める演算は、金型温度センサー21とプレート温度センサー22との取付部位の違いなどによる温度分布の違いを考慮して、金型温度から一定値だけずらしたり、予め求めておいた金型温度とプレート温度との相関関係式などから求めたりする演算を採用することができる。
出力制御部73は、各温度制御手段68に設けられたプレート温度センサー22が検出するプレート温度が出力目標値101に一致するように、温度制御手段68のヒータ23の発熱量や冷媒流量などを制御するものである。
移動制御部63は、金型投入機構3b、金型搬送機構30、および金型搬送機構30の動作制御を行って、連続鋳造装置50内で金型1を移動させる制御を行うものである。
本実施形態では、金型搬送機構30は、搬送駆動部30cを駆動することにより、加熱室移動部30A、充填室移動部30B、冷却室移動部30C、および徐冷室移動部30Dが同期して搬送方向Bに沿う移動および移動開始位置への復帰動作を制御するとともに、これらの金型1の移動経路に対する進退動作を制御できるようになっている。
このため、移動制御部63は、第1移動部を駆動して、金型1を充填室5から冷却室6に移動させる第1移動制御部と、第2移動部を駆動して、金型1を冷却室6から徐冷室7に移動させる第2移動制御部とを兼ねている。
主制御部67は、例えばキーボード、マウスなどの入力手段からなる入力部69と電気的に接続され、操作者が入力部69を通して入力する成形の開始および終了の操作入力に基づいて、連続鋳造装置50の作動および停止の制御を行う。
また、操作者が入力部69を通して入力する連続鋳造装置50を制御するための情報(以下、制御情報と称する)をデータ記憶部である制御情報記憶部66に記憶させ、制御情報記憶部66に記憶された制御情報から制御条件に必要な制御情報を選択することにより、連続鋳造装置50の制御条件を設定する。
ここで、入力部69から入力する制御情報としては、少なくとも、成形に用いる非晶質合金原材料となる原材料合金の種類、組成を表す原材料合金の「名称」、原材料合金に固有の融点Tm、結晶化温度TX、ガラス遷移温度Tg、冷却工程の目標冷却速度Vo、徐冷工程の目標冷却速度Vsなどの温度制御情報、連続成形のタクト時間Δt、および減圧不活性雰囲気の設定条件などが含まれる。これらの制御情報のうち、原材料合金の種類、組成に関連する制御情報は、制御情報記憶部66において、原材料合金の名称に関連付けて記憶される。
すなわち、主制御部67は、入力部69から原材料合金の名称が入力されると、この名称に応じて制御情報記憶部66に記憶された各制御情報を選択することで、成形の制御条件を自動的に設定する。このため、主制御部67は、データ記憶部から上記のような制御情報を選択するデータ選択部を構成している。
例えば、主制御部67は、選択された原材料合金の融点Tmから金型加熱室4、充填室5における金型1の加熱の目標温度を融点Tmより高い温度Tk1、Tk2(ただし、Tk1≧Tk2)として設定する。ただし、省エネルギーのためには、金型加熱室4から充填室5への移動時の温度降下を考慮して、Tk1>Tk2とすることが好ましい。
また、選択された原材料合金のガラス遷移温度Tgから冷却室6における金型1の冷却の目標温度をガラス遷移温度Tgより小さい温度Tk3として設定し、目標冷却温度をVoに設定する。また、徐冷室7における金型1の冷却の目標温度を温度Tk3より小さい温度Tk4として設定し、目標冷却温度をVsに設定する。なお、目標温度Tk4は、離型作業が可能となる室温近傍の温度に設定される。
図6は、本発明の第1の実施形態の連続鋳造方法における金型の温度変化の一例を示す模式的なグラフである。横軸は時間、縦軸は温度を示す。
これにより、主制御部67は成形の制御条件を設定し、連続鋳造装置50の初期化を行う。なお、以下の動作は、特に断らない限り、制御ユニット60の主制御部67で実行される制御プログラムにより自動的に行われる。
主制御部67は、入力部69から入力された名称を、制御情報記憶部66内で検索し、該当する名称に関連付けて制御情報記憶部66に記憶された制御情報をメモリに呼び出す。このため、多品種の非晶質合金の鋳造を行う場合でも、成形に用いる原材料合金の名称を入力するだけで、鋳造の条件設定に必要な情報を確実かつ容易に呼び出すことができる。そして、以下に説明するように、鋳造の条件設定を主制御部67によって自動的に行うことができるので、迅速な条件設定が行える。また、操作者の入力ミスなどによる不良の発生を低減することができる。
また、主制御部67は、メモリに呼び出された制御情報に含まれる減圧不活性雰囲気の設定条件に基づいて、雰囲気制御機構70に制御信号を送出し、金型加熱室4、充填室5、冷却室6および徐冷室7、出口ロードロック室8内の雰囲気を減圧不活性雰囲気に設定する。本実施形態では、各室内を1.0×10−4Paまで減圧した後、Arガスを注入して50kPa程度の減圧不活性雰囲気に設定している。
これにより、各室内における溶湯26の酸化や不純物の混入などを防止することができる。
この工程では、各室内に金型1は搬送されていないので、金型温度センサー21ではなく、プレート温度センサー22の測定値に基づいて温度制御が行われる。
出力制御部73は、プレート温度センサー22によって測定される温度と出力目標値101との差が一定の範囲内になるように、温度制御手段68である上側ヒートプレート4dおよび下側ヒートプレート4bの発熱量を制御する。
充填室加熱温度制御部62の出力制御部73は、プレート温度センサー22によって測定される温度と出力目標値101との差が一定の範囲内になるように、温度制御手段68であるヒートプレート5bの発熱量を制御する。
冷却温度制御部64の出力制御部73は、プレート温度センサー22によって測定される温度と出力目標値101との差が一定の範囲内になるように、温度制御手段68である下側冷却プレート6bおよび上側冷却プレート6dの冷媒流量を制御する。
徐冷温度制御部65の出力制御部73は、プレート温度センサー22によって測定される温度と出力目標値101との差が一定の範囲内になるように、温度制御手段68である下側冷却プレート7bおよび上側冷却プレート7dの冷媒流量を制御する。
すなわち、投入コンベアー2によって、金型1が入口ロードロック室3内のロードロック室床面3c上に搬送されると、投入コンベアー2を停止し、入口シャッター3aを閉止する。そして、入口ロードロック室3の雰囲気制御機構70を制御して、入口ロードロック室3内を減圧不活性雰囲気に調整する。
入口ロードロック室3内の雰囲気調整が完了したら、加熱室入口シャッター4aを開放するとともに、金型投入機構3bを駆動して、金型1を搬送方向Bに向かって押し出し、金型1を金型加熱室4に移動させる。
この配置位置では、図2に示すように、下側ヒートプレート4bの金型温度センサー21が金型1の金型底面1cに接触している。このため、金型底面1cの温度が計測され、この計測値が加熱室加熱温度制御部61を介して、主制御部67に送出される。
移動が完了すると、金型投入機構3bは搬送方向Bと反対側に退避し、次の投入に備える。また、加熱室入口シャッター4aを閉止して、金型加熱室4を密閉する。
また、入口ロードロック室3の雰囲気制御機構70によって、入口ロードロック室3内の雰囲気を大気雰囲気に置換して入口シャッター3aを開放する。これにより、入口ロードロック室3は、次の金型1を受け入れ可能な状態となる。
以下では、この金型1の移動に伴う各工程を順次説明する。
なお、以下の説明では、簡単のため、時刻ti(iは整数)の相対的な大小関係を添字の大小関係に一致させて表す。すなわち、i<jならば、ti<tjを意味する。
この状態では、下側ヒートプレート4b、上側ヒートプレート4dの各金型温度センサー21がそれぞれ金型底面1c、金型上面1dに当接されるので、主制御部67は、金型1の金型温度をモニタすることができる。そして、金型加熱工程以前のプレート温度センサー22による温度制御を各金型温度センサー21の出力による温度制御に切り換え、加熱室加熱温度制御部61によって金型1の金型温度が目標温度Tk1となるように温度制御する。
このようにして、金型1は、図6に曲線200で示すように加熱されていく。
そして、金型1の温度は、融点Tmを超え、時刻t1(ただし、t1<t0+Δt)で、金型1の温度が目標温度Tk1に到達し(図6の点a参照)、以後、加熱室加熱温度制御部61の温度制御によって目標温度Tk1に保持される。
また、他の金型1を用いて成形を行わない場合には、昇降シリンダー20を収縮させて、上側ヒートプレート4dを金型上面1dから離間させるとともに、入口シャッター3aを閉止して、加熱室入口シャッター4aを開放する。
すなわち、金型1は、加熱室移動部30Aによって搬送方向Bに沿って押し出され、下側ヒートプレート4bおよびヒートプレート5bの上面を滑って移動され、時刻t3において、充填室5内の所定の充填位置に停止される。
そして、主制御部67は、移動制御部63およびシャッター制御部71に制御信号を送出し、加熱室移動部30Aを搬送経路から退避させて加熱室入口シャッター4a側の位置に復帰させるとともに、充填室入口シャッター5aを閉止させる。
落下された非結晶合金原材料は、高周波誘導加熱コイル24の内部で誘導浮揚されるとともに非晶質合金原材料が融点Tm以上に誘導加熱され、非晶質合金原材料の溶湯26が形成される。
溶湯26の温度は、放射温度計28によって測定され、主制御部67でモニタされる。図6において曲線201に示すのは、この溶湯26の温度変化の一例を模式的に表したものである。
金型1は、充填室5に配置されるとヒートプレート5bの金型温度センサー21が金型底面1cに当接されるので、主制御部67は、金型1の金型温度をモニタすることができる。そして、溶湯充填工程以前のプレート温度センサー22による温度制御を、金型温度センサー21の出力による温度制御に切り換え、充填室加熱温度制御部62によって金型1の金型温度がTk2となるように温度制御する。
このようにして、金型1は、図6の曲線cdeに示すように、時刻t3〜t5の間、ヒートプレート5bによって、融点Tmよりわずかに高い金型温度Tk2になるように温度制御される。
溶湯26は、充填室5に移動された金型1との温度差が小さいため、充填時に金型1が熱衝撃による破損する可能性が著しく低減される。
また、充填後の溶湯26はほとんどが成形用キャビティ部1bの内面と接触しているので、金型1の金型温度Tk1からTk2への温度変化に略追従して温度降下し、金型1の温度と略同じ温度(本工程では、融点Tm以上であって、融点Tmに近い温度)に保持される。
また、以下の工程も、金型1の温度と、成形用キャビティ部1b内の溶湯26あるいは非晶質合金26Aの温度とは、略同一となる(図6の曲線200、201参照)。このため、金型1の温度に基づいて温度制御することで、溶湯26または非晶質合金26Aの温度を高精度に制御することができる。
主制御部67は、充填口1a内の溶湯26の液面高さが、予め設定された許容値以下になったことで、溶湯26の充填の完了を検知する。そして、検知後、時刻t5になるまで、ヒートプレート5bの温度制御を継続する。
もし、時刻t5に充填完了が検知されていない場合には、操作者等に異常を知らせる警告を行う。
本工程をこのような充填確認を行わずに実施したところ、充填不足による不良品の発生が5%程度あったが、充填確認後に移動工程を行って、冷却工程に移行することによって、充填不足による不良品の発生をほぼ無くすことができた。
そして、主制御部67は、移動制御部63およびシャッター制御部71に制御信号を送出し、充填室移動部30Bを搬送経路から退避させて充填室入口シャッター5a側の位置に復帰させるとともに、冷却室入口シャッター6aを閉止させる。
このように、移動工程を行って、溶湯26が充填された金型1を冷却室6に移動することで、充填室5が空けられるので、次に冷却工程を行う間、他の金型1を充填室5に配置して、この他の金型1に対して並行的に溶湯充填工程を行うことができる。このため、複数の金型1の連続成形の生産効率を向上することができる。
時刻t6において、主制御部67は、冷却室6の昇降シリンダー20を下方に伸長させ昇降シリンダー20の下端に設けられた上側冷却プレート6dを下降させる。そして、上側冷却プレート6dの下面を金型1の金型上面1dに密着して当接させ、金型1を、下側冷却プレート6bと上側冷却プレート6dとの間に挟持する。これにより、金型1は、下側冷却プレート6bおよび上側冷却プレート6dによって、金型底面1cおよび金型上面1dから冷却される。
これにより、冷却温度制御部64の出力目標値演算部72は、各金型温度センサー21による金型温度の測定値を微分して、冷却速度を算出し、予め主制御部67から送出してある目標冷却速度Voとの差を求め、この差が0になるように、下側冷却プレート6bおよび上側冷却プレート6dの冷媒の流量を制御するための出力目標値101を冷却温度制御部64の出力制御部73に送出する。この結果、金型1の冷却速度が目標冷却速度Voとなるように金型1の金型温度が温度制御される。
本実施形態では、時刻t7において、溶湯26は結晶化温度TXに達して(図6の点g参照)から時刻t8でわずかに結晶化温度TXを下回った状態で冷却工程を終了ことができるように、タクト時間Δt、目標冷却速度Vo、目標温度Tk3が設定されている。
このように、本工程では、金型1は臨界冷却速度Vc以上の冷却速度で、結晶化温度TX以下、かつガラス遷移温度Tgより高温の状態まで冷却される(図6の点h参照)。
この結果、成形用キャビティ部1b内に充填された溶湯26が非晶質化され、成形用キャビティ部1b内に非晶質合金26Aが形成される。ただし、冷却工程の非晶質合金26Aはガラス遷移領域にあるため、例えば10MPaよりも低い圧力でも容易に変形される状態になっている。
すなわち、主制御部67は、昇降シリンダー20を収縮させて、上側冷却プレート6dを上昇させ金型上面1dから離間させる。そして、シャッター制御部71に制御信号を送出して、冷却室入口シャッター6aを開放する。そして、移動制御部63に制御信号を送出して、冷却室移動部30Cによって搬送方向Bに沿って金型1を押し出す。これにより、金型1は、下側冷却プレート6bおよび下側冷却プレート7bの上面を滑って移動され、時刻t9において、徐冷室7内の所定の徐冷位置に停止される(図6の点i参照)。
そして、主制御部67は、移動制御部63およびシャッター制御部71に制御信号を送出し、冷却室移動部30Cを搬送経路から退避させて冷却室入口シャッター6a側の位置に復帰させるとともに、冷却室入口シャッター6aを閉止させる。
時刻t9において、主制御部67は、徐冷室7の昇降シリンダー20を下方に伸長させ昇降シリンダー20の下端に設けられた上側冷却プレート7dを下降させる。そして、上側冷却プレート7dの下面を金型1の金型上面1dに密着して当接させ、金型1を、下側冷却プレート7bと上側冷却プレート7dとの間に挟持する。これにより、金型1は、下側冷却プレート7bおよび上側冷却プレート7dによって、金型底面1cおよび金型上面1dから徐冷される。
これにより、徐冷温度制御部65の出力目標値演算部72は、各金型温度センサー21による金型温度の測定値を微分して、冷却速度を算出し、予め主制御部67から送出してある目標冷却速度Vsとの差を求め、この差が0になるように、下側冷却プレート6bおよび上側冷却プレート6dの冷媒の流量を制御するための出力目標値101を冷却温度制御部64の出力制御部73に送出する。この結果、金型1の冷却速度が目標冷却速度Vsとなるように金型1の金型温度が温度制御される。
このため、時刻t9までの間に、金型1は冷却工程の目標冷却速度Voよりも小さい冷却速度で、ガラス遷移温度Tg以下まで徐冷される(図6の点i参照)。
このため、成形用キャビティ部1b内の非晶質合金26Aは凝固され、非晶質合金の成形品が形成される。
また、冷却室6を空けることができるので、徐冷工程を行う間に、他の金型1に対して、冷却工程を並行して行うことができる。
また、金型1の冷却を、非晶質化するための冷却工程と、金型1から取り出せるまで固化させる徐冷工程とに分けて行うことができる。
このため、冷却室6を空けることができるので、徐冷工程を行う間に、他の金型1に対して、冷却工程を並行して行うことができる。従って、連続して高い生産効率で鋳造することが可能となる。
また、冷却室での冷却手段と徐冷室での徐冷手段とをそれぞれに好適な別々の手段を採用することができる。
すなわち、主制御部67は、昇降シリンダー20を収縮させて、上側冷却プレート7dを上昇させ金型上面1dから離間させる。そして、シャッター制御部71に制御信号を送出して、徐冷室出口シャッター7aを開放する。そして、移動制御部63に制御信号を送出して、徐冷室移動部30Dによって搬送方向Bに沿って金型1を押し出す。これにより、金型1は、下側冷却プレート7bの上面およびロードロック室床面8cを滑って移動され、時刻t10において、出口ロードロック室8内の所定の停止位置に移動される(図6の点i参照)。
そして、主制御部67は、移動制御部63およびシャッター制御部71に制御信号を送出し、徐冷室移動部30Dを搬送経路から退避させて冷却室6と徐冷室7との間の位置に復帰させるとともに、徐冷室出口シャッター7aを閉止させる。
時刻t9において、主制御部67は、出口ロードロック室8の雰囲気制御機構70によって、出口ロードロック室8内の減圧不活性雰囲気を大気雰囲気に置換した後、移動制御部63に制御信号を送出して、出口シャッター8aを開放するとともに、金型排出機構8bを図1の矢印D方向に駆動する。これにより、ロードロック室床面8c上の金型1が、出口コンベアー9上に移載され、出口コンベアー9によって、離型ステージ10の近傍まで移動される。
金型1が出口コンベアー9上に排出されると、主制御部67は、移動制御部63に制御信号を送出して、出口シャッター8aを閉止し、時刻t12=t10+Δtまでの間に、出口ロードロック室8の雰囲気制御機構70によって、出口ロードロック室8内を減圧不活性雰囲気に置換する。
離型ステージ10の近傍に移動された金型1は、適宜のロボットや人力によって、離型ステージ10に移載して、金型1を分解し、固化された成形品を取り出す。そして、金型1を再使用できるように清掃、組立を行って、排出機構11により排出する。
他の金型1を用いて、他の成形品を連続的に鋳造するには、連続鋳造装置50の各室の動作をタクト時間Δtを周期として周期的に繰り返し、各室での工程動作が並行的に行われるようにする。
このように、連続鋳造装置50を用いた非晶質合金の連続鋳造方法では、金型加熱工程、溶湯充填工程、冷却工程、および徐冷工程が、それぞれ別々に設けられ、異なる金型配置位置を有する金型加熱室4、充填室5、冷却室6、および徐冷室7で行われ、これらの間で金型1をタクト時間Δtごとに移動していくことで、連続成形を行うことができる。したがって、1箇所で各成形工程を行う場合に比べて、生産効率を向上することができる。
図7(a)、(b)は、それぞれ本発明の第1の実施形態の第1変形例の連続鋳造装置の加圧部の構成を示す断面図、および加圧時の動作説明図である。
上側冷却プレート6eは、上側冷却プレート6dと同様に上面において昇降シリンダー20によって昇降可能に支持されており、下面6fの中央に、加圧部13を収容する穴部6gが設けられている。上側冷却プレート6eの内部は、特に図示しないが、上側冷却プレート6dの冷媒流路6c、金型温度センサー21、およびプレート温度センサー22が同様に設けられている。ただし、金型温度センサー21は、下面6fに対して進退可能に設けられている。
図7(a)では、加圧板13bの側面は、穴部6gの内側面との間に隙間を設けて描いているが、加圧板13bは、穴部6gの内側面と摺接され、上側冷却プレート6eとの間に熱伝導が起こるようになっている。また、加圧板13bの上面は、皿ばね13dを介して、上側冷却プレート6eとの間に熱伝導が起こるようになっている。
加圧板13bの下面13eは、上側冷却プレート6eの下面6fよりも上方に位置し、上側冷却プレート6eを下降させて、上側冷却プレート6eの下面6fが金型1の金型上面1dに当接しても、加圧板13bは、金型上面1dに当接しないようになっている。
また、加圧ヘッド13cの下端面は、上側冷却プレート6eの下面6fが金型1の金型上面1dに当接したとき、金型1内に充填された溶湯26の液面をわずかに下方に押し下げる位置関係に設定され、この状態で、溶湯26の液面から受ける反力を皿ばね13dが変形して吸収し、加圧ヘッド13cが、溶湯26の液面を皿ばね13dの弾性復元力で加圧できるようになっている。
また、本実施形態では、加圧ヘッド13cを充填口1aに対して位置決めするために、金型1の充填口1aの近傍に、複数の位置決め穴1hが設けられており、加圧板13bの下面13eには、これらの位置決め穴1hにそれぞれ嵌合するとともに、加圧ヘッド13cよりもやや下方に延ばされ、下端部が先細のテーパ状とされた位置決めピン13aが設けられている。
さらに下降を続けると、加圧ヘッド13cが、充填口1aに嵌合され、加圧ヘッド13cの下端面が金型1内に充填された溶湯26の液面を押圧する。次に、上側冷却プレート6eの下面6fが金型上面1dに当接する。この状態では、加圧ヘッド13cは、溶湯26から反力を受け、皿ばね13dが圧縮されて、加圧ヘッド13cおよび加圧板13bが上方にわずかに後退する。これにより、加圧ヘッド13cから成形用キャビティ部1b内の溶湯26には、皿ばね13dの弾性復元力が加圧力として作用する。
また、本変形例では、加圧ヘッド13cと上側冷却プレート6eとの間に熱伝導が起こる構成とされているので、加圧ヘッド13cも冷却部の機能を有している。このため、成形用キャビティ部1b内の溶湯26は、冷却部によって密閉されるため、充填口1aの溶湯26の液面が開放されている場合に比べて、冷却の均一性を向上することができ、非結晶化の度合いを均一化することができる。
図8は、本発明の第1の実施形態の第2変形例の金型搬送機構および移動制御部の構成を示すブロック図である。
ガイド部32bは、加熱室移動部30A、充填室移動部30B、冷却室移動部30C、および徐冷室移動部30Dを、搬送方向Bに沿ってそれぞれ独立にガイドするガイド部材である。
搬送駆動部32cは、ガイド部32bに沿って、加熱室移動部30A、充填室移動部30B、冷却室移動部30C、および徐冷室移動部30Dを独立に駆動する搬送駆動部32cを備える。搬送駆動部32cとしては、搬送駆動部30cと同様な1軸アクチュエータを4本使った構成などを採用することができる。
このため、移動制御部63Aは、第1移動制御部、および第2移動制御部を兼ねている。
金型加熱工程、溶湯充填工程、冷却工程、徐冷工程のそれぞれに要する時間は、一般には長短があるので、一定のタクト時間Δtで金型1を移動させようとすると、タクト時間Δtを最長の工程に合わせる必要がある。
本変形例では、金型1を非同期で移動させることができるので、鋳造の工程を、移動工程を挟んで時間的に隣接して行われる複数の工程からなる工程群に分け、これら工程群ごとに、タクト時間を設定することで、生産効率を向上させることができる。
例えば、徐冷工程に要する時間Δtsが最長である場合に、金型加熱工程、金型加熱室4から充填室5への移動工程、溶湯充填工程、および充填室5から冷却室6への移動工程を第1工程群、冷却工程、冷却室6から徐冷室7への移動工程、徐冷工程、および徐冷室7から出口ロードロック室8への移動工程を第2工程群として、第1および第2工程群に対して、タクト時間Δt2を設定する。すなわち、金型1の金型加熱室4の投入(図6の時刻t0)と、金型1の冷却室6への配置(図6の時刻t6)と、金型1の出口ロードロック室8への配置(図6の時刻t11)との時間差をそれぞれタクト時間Δt2とする。
この場合、タクト時間Δt2は、第1工程群および第2工程群に要するそれぞれの時間のうち、長い方の時間に設定することができ、タクト時間Δt2は、徐冷工程の時間に律速される上記第1の実施形態のタクト時間Δtの2倍よりも短くなり、生産性を向上することができる。
この場合、例えば、第2工程群は、図6において、t7=t6+Δtc、t9=t8+Δtm、t10=t8+Δts、t11=t10+Δtmのように制御タイミングを変更すればよい。
この場合、1つの成形工程のから次の成形工程への金型1の移動のタイミングは、1つの成形工程の終了、および次の成形工程の終了を検知してから金型1を移動させる移動工程を行うといった制御を行う。
ここで、主制御部67による各成形工程の終了の検知は、以下のようにして行うことができる。
溶湯充填工程の終了は、充填室5の超音波センサー29によって溶湯26の液面の高さが所定位置になったことで検知することができる。
目標冷却温度としては、結晶化温度TX以下の温度、またはガラス遷移温度Tg以下の温度を採用することができる。
目標冷却温度が結晶化温度TX以下の温度の場合、成形用キャビティ部1b内の溶湯26が確実に非晶質化された状態で、冷却室移動部30Cによって徐冷室7に金型1を移動させて、徐冷工程に移行させることができる。このため、冷却工程に要する時間や冷却制御に投入するエネルギーが、それぞれ最小限の状態で、結晶化されていない成形品を得ることができる。
また、目標冷却温度がガラス遷移温度Tg以下の温度の場合、成形用キャビティ部1b内の溶湯26が確実にガラス遷移温度Tg以下となって完全に固化された状態で、冷却室移動部30Cによって徐冷室7に金型1を移動させて、徐冷工程に移行させることができる。このため、冷却工程後の金型1の搬送時にも、金型1内の成形品が形状変化するおそれがなくなり、搬送時の外力や衝撃の影響による成形品の形状不良や形状ばらつきをなくすことができる。
本発明の第2の実施形態に係る連続鋳造装置について説明する。
図9は、本発明の第2の実施形態に係る連続鋳造装置の主要部の構成を示す断面図である。
上側冷却プレート6hの外形は、金型1の金型上面1dおよび金型側面1eを上方から密着して覆うことができるように、下方に開口した函型とされている。また、上側冷却プレート6hの上面には、金型1の充填口1aに対向する位置に、加圧ヘッド20cを挿通させる挿通孔6jが設けられている。
このように、上側冷却プレート6hを函型形状にすることで、金型1の金型側面1eからも冷却することができるので、金型1をより均一かつ迅速に冷却することができる。
また、本実施形態では、上側冷却プレート6hの内周面は、金型1の金型側面1eの外周に外嵌して、金型1の位置決め部を兼ねる構成としている。これにより、上側冷却プレート6hが、金型1に外嵌された際には、充填口1aの中心軸線と、挿通孔6jの中心、すなわち加圧ヘッド20cの中心軸線とが、同軸に整列するようになっている。このため、上記第1の実施形態の第1変形例とは異なり、金型1の金型底面1cに位置決め穴を有しない場合でも、金型1の位置決めを行うことができる。
本実施形態の連続鋳造方法は、上記第1の実施形態の連続鋳造方法において、徐冷工程を削除し、金型加熱工程および溶湯充填工程は充填室5内で行うようにしている。このため、タクト時間Δtは、金型加熱工程および溶湯充填工程に要する時間と、充填室5から冷却室6Bへ金型1を移動させる移動工程に要する時間とを加えた時間以上に設定しておく。
また、徐冷工程は、金型1を出口ロードロック室8を通して、連続鋳造装置51から搬出した後、装置外部で行うようにする。以下では、上記第1の実施形態の連続鋳造方法と異なる点を中心に説明する。また、例えば、シャッターの開閉動作や金型1の移動動作など、上記第1の実施形態から容易に理解される制御動作については、説明を省略または簡略化する。
次に、入口ロードロック室3に金型1を移動して、入口シャッター3aを閉止し、入口ロードロック室3の内部を減圧不活性雰囲気に調整する。
次に、充填室入口シャッター5aを開いて、金型1を充填室5内に移動させて、充填室入口シャッター5aを閉止する。
Tm以上になるように金型1を加熱する。これにより金型加熱工程が行われる。
これと並行して、高周波誘導加熱コイル24に通電して、ストッカー25から原材料合金を落下させ、誘導加熱によって、溶湯26を誘導浮遊させておく。
ヒートプレート5bの金型温度センサー21で検出される温度の検出値が融点Tm以上の目標加熱温度以上になったら、目標加熱温度を保持する温度制御に移行する。
本実施形態は、金型加熱工程において、金型1を加熱部で挟持することなく金型底面1cのみから加熱する場合の例となっている。
次に上記第1の実施形態と同様にして、溶湯26が充填された金型1を冷却室6B内に移動させる。そして冷却工程を開始する。
ただし、本実施形態では、金型1の温度が結晶化温度TX以下となったら、主制御部67は、昇降シリンダー20Aに制御信号を送出して、加圧機構昇降部20bを伸長させて、加圧ヘッド20cを下降させ、充填口1aに貫入させる。そして、ガラス遷移領域まで冷却された非晶質合金26Aを加圧する。
ガラス遷移領域にある非晶質合金26Aは、低圧で容易に変形するので、加圧ヘッド20cによる加圧を受けることで、冷却中の溶湯26の体積変化が不均一となっても、成形用キャビティ部1bの内周面と溶湯26とが密着する状態を保つことができる。そのため、成形転写性を向上することができる。
すなわち、主制御部67は、昇降シリンダー20Aに制御信号を送出して、冷却プレート昇降部20aおよび加圧機構昇降部20bを収縮させて、上側冷却プレート6hおよび加圧ヘッド20cを、それぞれ金型1から離間させる。
そして、シャッター制御部71に制御信号を送出して、冷却室入口シャッター6aおよび冷却室出口シャッター6iを開放する。そして、移動制御部63に制御信号を送出して、冷却室移動部30Cによって搬送方向Bに沿って金型1を押し出す。これにより、金型1が減圧不活性雰囲気下の出口ロードロック室8に移動される。
そして、移動制御部63およびシャッター制御部71に制御信号を送出し、冷却室移動部30Cを搬送経路から退避させて冷却室入口シャッター6a側の位置に復帰させるとともに、冷却室入口シャッター6aおよび冷却室出口シャッター6iを閉止させる。
本発明の第3の実施形態に係る連続鋳造装置について説明する。
図10は、本発明の第3の実施形態に係る連続鋳造装置の主要部の構成を示す断面図である。
上側冷却プレート6kは、上記第2の実施形態の上側冷却プレート6hと同様昇降シリンダー20Aの冷却プレート昇降部20aによって、冷却室6C内に上下移動可能に保持されている。また、加圧機構昇降部20bの先端部に設けられた加圧ヘッド20cは、上記第2の実施形態と同様に、上側冷却プレート6kの挿通孔6jに摺接可能に挿通され、加圧機構昇降部20bによって、上下方向に移動可能に支持されている。
昇降シリンダー20Bは、昇降シリンダー20Aから加圧機構昇降部20bを削除したものである。
すなわち、徐冷室7Aは、昇降シリンダーの構成が異なるのみで、その他は上記第1の実施形態の徐冷室7と同様の構成からなる。
本実施形態の連続鋳造方法は、上記第1の実施形態の連続鋳造方法において、金型加熱工程および溶湯充填工程は充填室5内で行うとともに、加圧ヘッド20cによって、ガラス遷移領域の非晶質合金26Aを加圧する方法である。すなわち、上記第2の実施形態の連続鋳造方法において徐冷工程を追加したものとなっている。
したがって、本実施形態の連続鋳造方法は、上記第1および第2の実施形態の組合せであり、容易に理解できるので、詳しい説明は省略する。
金型加熱工程、溶融充填工程、および冷却工程は、上記第2の実施形態と同様に行うことができる。これらの工程の作用は、冷却工程で金型1の金型側面1eが冷却されないため、冷却効率が第1の実施形態の冷却効率と同程度になる点を除けば、第2の実施形態と同様である。
また、冷却工程終了後の動作は、第1の実施形態と同様に行うことができる。したがって、徐冷工程以降の作用は、上記第1の実施形態と同様である。
本発明の第4の実施形態に係る連続鋳造装置について説明する。
図11は、本発明の第4の実施形態に係る連続鋳造装置の主要部の構成を示す断面図である。
特に図示しないが、冷却ブロック31aの内部には、下側冷却プレート6bと同様に、冷媒流路6cおよびプレート温度センサー22を備える。また、金型1の金型底面1cの長さよりも狭いピッチで、複数の金型温度センサー21が配置され、冷却ブロック31a上を移動中の金型1の温度を検出できるようになっている。
これにより、冷却ブロック31aは、下側冷却プレート6bと同様な温度制御が可能となっている。本実施形態の冷却ブロック31aは、目標冷却速度Voで金型1を冷却するために必要な一定の温度に冷却されている。
このような動作を行うため、冷却室31は、上記第1の実施形態の第2変形例の金型搬送機構32、制御ユニット60Aを備えており、冷却室移動部30Cを充填室5の充填室移動部30Bと非同期で駆動できるようになっている。
本実施形態の連続鋳造方法は、上記第2の実施形態の連続鋳造方法と、冷却工程のみが異なるので、本実施形態の冷却工程について説明する。
本実施形態は、冷却工程において、金型1を冷却部で挟持することなく、金型1の金型底面1cのみから冷却する場合の例となっている。
また、冷却ブロック31aを一定温度に冷却しておき、冷却室移動部30Cの移動速度を変化させることによって、金型1の冷却速度を変化させるようにしてもよい。
また、入口ロードロック室3への金型1の移動、出口ロードロック室8からの金型1の排出のみを操作者がロボットなどを操作して行い、これらの間の動作のみ自動で行うようにしてもよい。
また、金型加熱工程も同様に2箇所以上で2回以上に分けて行ってもよい。
また、高温の流体や、低温の流体を金型の外周側に接触させることで、熱伝達による加熱、冷却を行ってもよい。
このような場合、徐冷工程で冷却に要するエネルギーが低減されるかあるいは不要となるため、省エネルギーとなる。
また、徐冷工程を複数段階に分ける場合、同様にそれぞれの冷却手段を適宜変更することで、全体として省エネルギーとなるようにしてもよい。
例えば、連続鋳造装置の変形例として、図12に示すように、上記第3の実施形態の連続鋳造装置52の構成と、上記第1の実施形態の連続鋳造装置50の金型加熱室4の昇降シリンダー20を昇降シリンダー20Bに置換した金型加熱室4Aとを組み合わせた連続鋳造装置54を挙げることができる。
図13、14、15は、それぞれ、実施例1、2、比較例における金型温度の変化を示す模式的なグラフである。いずれも横軸は時間、縦軸は温度である。
各実施例、比較例の条件および評価結果は、次の表1に示す。
実施例1では、非晶質合金原材料として、Zr55Cu30Al10Ni5の組成を有する原材料合金を用いて、充填室5で金型加熱工程と溶湯充填工程とを行う連続鋳造装置52を用いて、タクト時間Δt=600sで連続鋳造を行った。
金型1の材質は、SiCを採用している。
温度制御条件は、溶湯充填工程での金型温度(充填終了時の金型温度)が融点Tm以上の850℃となるようにした。冷却工程での冷却終了温度はガラス遷移温度Tg以上の480℃となるようにした。冷却工程での冷却速度は12℃/sとした。
これにより、金型1は、図13に示すような温度変化を示した。
そして、溶湯充填工程を終了して、時刻t23に、金型1を冷却室6Cに移動させ、冷却工程を開始した。ここで、t23−t20=Δt=600sである。
これにより、金型1は、冷却室6に移動してから、時刻t23〜t24の32.5秒間に、冷却速度12℃/sで冷却され、結晶化温度490℃以下の冷却目標温度T2=460℃まで冷却された。その後、冷却速度が制御されない下側冷却プレート6b、上側冷却プレート6dによってゆっくりと冷却され、冷却工程終了時まで、目標冷却温度T2を保持するように冷却された。
なお、本実施例では、加圧部を有しない実施例2および比較例と同じ条件で比較するために加圧ヘッド20cによる加圧は行っていない。
次に、時刻t25において、金型1を徐冷室7Aに移動して、徐冷工程を開始した。ここで、t25−t23=Δt=600sである。
徐冷工程では、下側冷却プレート7bおよび上側冷却プレート7dで金型1を挟持して、冷却速度1.5℃/sで金型1の徐冷を行った。これにより、時刻t25から約287秒後に30℃まで冷却され、その後、時刻t26(=t25+Δt)まで冷却を止めた。
時刻t26において、金型1を出口ロードロック室8に移動し、金型1を連続鋳造装置52の外部に排出して、金型1から成形品を離型させた。
実施例2では、非晶質合金原材料として、Zr50Cu40Al10の組成を有する原材料合金を用いて、連続鋳造装置50を用いて、タクト時間Δt=300sで連続鋳造を行った。連続鋳造装置50は、金型加熱工程、溶融充填工程、冷却工程、徐冷工程をそれぞれに対応する金型加熱室4、充填室5、冷却室6、徐冷室7で別々に行い、充填室5における溶融充填工程では、金型の加熱も行うものである。
金型1の材質は、SiCを採用している。
温度制御条件は、溶湯充填工程での金型温度(充填終了時の金型温度)が融点Tm以上の1000℃となるようにした。冷却工程での冷却終了温度はガラス遷移温度Tg以上の510℃となるようにした。冷却工程での冷却速度は12℃/sとした。
これにより、金型1は、図14に示すような温度変化を示した。
充填室5では、移動により温度がわずかに温度T4より低下した金型1を、ヒートプレート5bによって加熱し、時刻t33に加熱目標温度T3=1000℃に到達した。この後、金型1の金型温度を加熱目標温度T3に維持するようにヒートプレート5bの温度制御を行った。この温度制御により金型1は約30秒で安定するため、時刻t33=t32+30sから、高周波誘導加熱コイル24の通電を開始しストッカー25から原材料合金を落下させて、誘導加熱を行い、溶湯26を形成した。そして、放射温度計28によって高周波誘導加熱コイル24の通電開始後50秒以内に溶湯26が融点Tm以上に加熱されたことが検出されたので、この放射温度計28の温度検出値に基づいて、時刻t34〜t35(=t34+50s)の間に高周波誘導加熱コイル24の通電を停止し、溶湯26を落下させた。これにより、金型1の成形用キャビティ部1b内に充填口1aを通して溶湯26が充填された。
そして、溶湯充填工程を終了して、時刻t35に、金型1を冷却室6に移動させ、冷却工程を開始した。ここで、t35−t32=Δt=300sである。
これにより、金型1は、冷却室6に移動してから、時刻t35〜t36の42.5秒間に、冷却速度12℃/sで冷却され、温度490℃まで冷却された。その後、冷却速度が制御されない下側冷却プレート6b、上側冷却プレート6dによってゆっくりと冷却され、冷却工程終了時まで、目標冷却温度T5を保持するように冷却された。
次に、時刻t37において、金型1を徐冷室7に移動して、徐冷工程を開始した。ここで、t37−t35=Δtである。
徐冷工程では、下側冷却プレート7bおよび上側冷却プレート7dで金型1を挟持して、冷却速度1.5℃/sで金型1の徐冷を行った。これにより、時刻t37から約307秒後に30℃まで冷却された。その後、時刻t38(=t37+Δt)まで冷却を止めた。
時刻t38において、金型1を出口ロードロック室8に移動し、金型1を連続鋳造装置52の外部に排出して、金型1から成形品を離型させた。
比較例は、金型1を加熱してから充填するものの、1箇所で、金型加熱工程、溶融充填工程、冷却工程、徐冷工程を行った例である。このため、図15の温度変化は、溶湯26または非晶質合金26Aの温度変化を示す。
時刻t40〜t41までの520秒間で、実施例1と同じ原材料合金によって温度T1=850℃に加熱溶解された溶湯26を形成した。そして、時刻t42=t41+30sにおいて、原材料合金の誘導加熱を開始し、時刻t43=t42+50sにおいて、溶湯26を温度T1の金型1に落下させて、金型1に充填した。
金型の周囲に冷媒を流すことによって、溶湯26は急冷され、時刻t44=t43+32.5sにおいて、成形用キャビティ部1b内の非晶質合金26Aは、温度T2に冷却された。さらに、時刻t44〜t45までの約287秒間で、30℃まで冷却し、金型1から成形品を離型した。
比較例では、1つの成形品を製造するのにかかる時間(実施例1,2のタクト時間に相当)は、t45−t40=919sであった。
一方、同様な成形品を形成する場合、実施例1は、金型加熱工程および溶融充填工程を、1つの充填室5内で行い、これらの工程が終了すると、冷却室6に移動させて、他の金型1の金型加熱工程および溶融充填工程を並行して行うことができる。すなわち、金型の充填待ちを無くすことができるので、金型の待機時間を低減することができる。
したがって、実施例1では、充填室5で行う加熱、充填に要する600秒をタクト時間として、連続的に鋳造を行うことができ、1つの金型当たり約319秒だけ生産効率を向上することができた。
1b 成形用キャビティ部
3 入口ロードロック室
4、4A 金型加熱室
4b 下側ヒートプレート(金型加熱部、加熱室金型加熱部)
4d 上側ヒートプレート(金型加熱部、加熱室金型加熱部)
5 充填室
5b ヒートプレート(金型加熱部、充填室金型加熱部)
6、6A、6B、6C 冷却室
6b 下側冷却プレート(冷却部)
6d、6e、6h、6k 上側冷却プレート(冷却部)
7、7A。31 徐冷室
7b 下側冷却プレート(徐冷部)
7d 上側冷却プレート(徐冷部)
8 出口ロードロック室
13 加圧部
20、20A、20B 昇降シリンダー
20a 冷却プレート昇降部
20b 加圧機構昇降部
20c 加圧ヘッド(加圧部)
21 金型温度センサー(金型温度検出部、加熱室温度検出部、充填室温度検出部、金型冷却速度検出部)
22 プレート温度センサー
24 高周波誘導加熱コイル(溶湯充填部)
26 溶湯
26A 非晶質合金
28 放射温度計
29 超音波センサー(溶湯充填検出部)
30、32 金型搬送機構
30A 加熱室移動部
30B 充填室移動部(第1移動部)
30C 冷却室移動部(第2移動部)
30D 徐冷室移動部
31a 冷却ブロック(冷却部)
50、50A、50B、51、52、53、54 連続鋳造装置
60、60A 制御ユニット
61 加熱室加熱温度制御部
62 充填室加熱温度制御部
63、63A 移動制御部(第1移動制御部、第2移動制御部)
64 冷却温度制御部
65 徐冷温度制御部
66 制御情報記憶部(データ記憶部)
67 主制御部(データ選択部)
68 温度制御手段
69 入力部
Tg ガラス遷移温度
Tm 融点
Vo 目標冷却速度
TX 結晶化温度
Vc 臨界冷却速度
Claims (27)
- 非晶質合金を連続的に製造する連続鋳造方法であって、
内部に成形用キャビティ部を備えた金型を前記非晶質合金の原材料合金の融点以上に加熱する金型加熱工程と、
該金型加熱工程で加熱された前記金型を不活性雰囲気に調整された充填室に配置した状態で、前記金型の前記成形用キャビティ部に、前記原材料合金を加熱溶解した溶湯を充填する溶湯充填工程と、
該溶湯充填工程で前記溶湯が充填された前記金型を、前記充填室から該充填室とは別に設けられた冷却室へ移動させる移動工程と、
該移動工程で前記冷却室に移動された前記金型を、該金型内の前記溶湯の冷却速度が前記原材料合金の臨界冷却速度以上を保持するように、前記原材料合金の結晶化温度以下まで冷却する冷却工程と、
を備え、
前記冷却工程では、前記原材料合金の結晶化温度以下、かつ前記原材料合金のガラス遷移温度以上の温度領域で、前記金型内に充填された前記溶湯を加圧するようにしたことを特徴とする非晶質合金の連続鋳造方法。 - 前記冷却工程における加圧は、前記金型の充填口に内嵌して充填口を塞ぐ加圧部材により、前記溶湯の液面を加圧するものであることを特徴とする請求項1に記載の非結晶合金の連続鋳造方法。
- 前記冷却工程の後に、
前記冷却室と別に設けられた徐冷室内で、前記冷却工程における冷却速度よりも小さい冷却速度で前記金型を冷却する徐冷工程を行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の非晶質合金の連続鋳造方法。 - 前記冷却工程は、
前記金型の温度を検出し、該金型の温度の検出値が、前記成形用キャビティ部内の前記溶湯の温度が前記原材料合金の結晶化温度以下の目標冷却温度となった後に、前記徐冷工程に移行することを特徴とする請求項3に記載の非晶質合金の連続鋳造方法。 - 前記冷却工程は、
前記金型の温度を検出し、該金型の温度の検出値が、前記成形用キャビティ部内の前記溶湯の温度が前記原材料合金のガラス遷移温度以下の目標冷却温度となった後に、前記徐冷工程に移行することを特徴とする請求項3に記載の非晶質合金の連続鋳造方法。 - 前記冷却工程では、
前記金型を、前記原材料合金のガラス遷移温度以下まで冷却することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の非晶質合金の連続鋳造方法 - 前記金型加熱工程は、
前記充填室と別に設けられた金型加熱室内で、前記金型を加熱することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一つに記載の非晶質合金の連続鋳造方法。 - 前記金型加熱工程は、
前記金型の温度を検出することにより、前記金型の温度が前記原材料合金の融点以上となるように前記金型の温度制御を行うことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一つに記載の非晶質合金の連続鋳造方法。 - 前記溶湯充填工程は、
前記金型または前記溶湯の温度を検出することにより、前記溶湯の温度が前記原材料合金の融点以上になるように前記金型の温度制御を行うことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一つに記載の非晶質合金の連続鋳造方法。 - 前記冷却工程は、
前記金型の温度を検出して前記金型の温度の時間変化から前記金型の冷却速度を算出し、該冷却速度が予め定められた目標冷却速度になるように前記金型の温度制御を行うことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか一つに記載の非晶質合金の連続鋳造方法。 - 前記溶湯充填工程は、
前記成形用キャビティ部内の前記溶湯の充填状態を検出し、前記成形用キャビティ部に溶湯が充填されたことを検出した後、前記冷却工程に移行することを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか一つに記載の非晶質合金の連続鋳造方法。 - 複数の金型を用いて非晶質合金を連続的に成形する非晶質合金の連続鋳造装置であって、
前記金型を前記非晶質合金の原材料合金の融点以上に加熱する金型加熱部と、
不活性雰囲気に調整された充填室と、
前記金型を、前記充填室に配置された状態で、前記金型の内部に備えられた成形用キャビティ部に加熱溶解された前記原材料合金の溶湯を充填する溶湯充填部と、
前記溶湯充填部により前記溶湯が充填された金型を、該金型内の前記溶湯の冷却速度が前記原材料合金の臨界冷却速度以上を保持するように、前記原材料合金の結晶化温度以下に冷却する冷却部を有し、前記充填室と別に設けられた冷却室と、
前記溶湯充填部により前記溶湯が充填された金型を、前記充填室から前記冷却室へ移動させる第1移動部と
を備え、
前記冷却室は、前記金型内に充填された前記溶湯を加圧する加圧部を備えることを特徴とする非晶質合金の連続鋳造装置。 - 前記加圧部における加圧は、前記金型の充填口に内嵌して充填口を塞ぐ加圧部材により、前記溶湯の液面を加圧するものであることを特徴とする請求項12に記載の非晶質合金の連続鋳造装置。
- 前記冷却室と別に設けられた徐冷室と、
該徐冷室に設けられ、前記冷却部における冷却速度よりも小さい冷却速度で前記金型を冷却する徐冷部と、
前記冷却室から前記徐冷室に前記金型を移動させる第2移動部と
を備えることを特徴とする請求項12または請求項13に記載の非晶質合金の連続鋳造装置。 - 前記冷却室における前記金型の温度を検出する金型温度検出部と、
該金型温度検出部によって検出された前記金型の温度が前記原材料合金の結晶化温度以下の目標冷却温度となったときに、前記第2移動部を駆動して、前記金型を前記冷却室から前記徐冷室に移動させる第2移動制御部と
を備えることを特徴とする請求項14に記載の非晶質合金の連続鋳造装置。 - 前記冷却室における前記金型の温度を検出する金型温度検出部と、
該金型温度検出部によって検出された前記金型の温度の検出値が、前記成形用キャビティ部内の前記溶湯の温度が前記原材料合金のガラス遷移温度以下の目標冷却温度となったときに、前記第2移動部を駆動して、前記金型を前記冷却室から前記徐冷室に移動させる第2移動制御部と
を備えることを特徴とする請求項14に記載の非晶質合金の連続鋳造装置。 - 前記冷却部は、
前記金型を、前記原材料合金のガラス遷移温度以下まで冷却できるようにしたことを特徴とする請求項12に記載の非晶質合金の連続鋳造装置。 - 前記金型加熱部は、前記充填室に配置された前記金型を前記非晶質合金の原材料合金の融点以上に加熱する充填室金型加熱部を有し、
前記充填室は、該充填室に配置された金型の温度、または前記溶湯充填部によって前記金型に充填される前記溶湯の温度を検出する充填室温度検出部を有し、
さらに、該充填室温度検出部によって検出された前記金型の温度または前記溶湯の温度に基づいて、前記溶湯の温度が前記原材料合金の融点以上になるよう、前記充填室金型加熱部の加熱制御を行う充填室加熱温度制御部が備えられた
ことを特徴とする請求項12から請求項17のいずれか一つに記載の非晶質合金の連続鋳造装置。 - 前記溶湯が充填される前の金型を予め加熱する金型加熱室が前記充填室とは別に設けられ、
前記金型加熱部は、前記金型加熱室内に配置された金型を前記非晶質合金の原材料合金の融点以上に加熱する加熱室金型加熱部を有する
ことを特徴とする請求項12から請求項18のいずれか一つに記載の非晶質合金の連続鋳造装置。 - 前記金型加熱室は、該金型加熱室に配置された金型の温度を検出する加熱室温度検出部を有し、
さらに、該加熱室温度検出部によって検出された前記金型の温度に基づいて、前記金型の温度が前記原材料合金の融点以上になるよう、前記加熱室金型加熱部の加熱制御を行う加熱室加熱温度制御部が備えられた
ことを特徴とする請求項19に記載の非晶質合金の連続鋳造装置。 - 前記冷却室における前記金型の温度の時間変化を検出する金型冷却速度検出部と、
該金型冷却速度検出部によって検出された前記金型の温度の時間変化から冷却速度を算出し、該冷却速度が予め定められた目標冷却速度となるように前記冷却部の制御を行う冷却温度制御部と
を備えることを特徴とする請求項12から請求項20のいずれか一つに記載の非晶質合金の連続鋳造装置。 - 複数の原材料合金に対応してそれぞれの結晶化温度を記憶するデータ記憶部と、
成形に用いる原材料合金の名称または種類の情報を入力する入力部と、
該入力部を通して入力された前記原材料合金の名称または種類の情報に基づいて、前記データ記憶部から前記結晶化温度を選択するデータ選択部とを備え、
前記第2移動制御部は、前記データ選択部によって選択された前記結晶化温度を前記成形に用いる原材料合金の結晶化温度として、前記第2移動部の駆動制御を行う
ことを特徴とする請求項15に記載の非晶質合金の連続鋳造装置。 - 複数の原材料合金に対応してそれぞれのガラス遷移温度を記憶するデータ記憶部と、
成形に用いる原材料合金の名称または種類の情報を入力する入力部と、
該入力部を通して入力された前記原材料合金の名称または種類の情報に基づいて、前記データ記憶部から前記ガラス遷移温度を選択するデータ選択部とを備え、
前記第2移動制御部は、前記データ選択部によって選択された前記ガラス遷移温度を前記成形に用いる原材料合金のガラス遷移温度として、前記第2移動部の駆動制御を行う
ことを特徴とする請求項16に記載の非晶質合金の連続鋳造装置。 - 複数の原材料合金に対応してそれぞれの融点を記憶するデータ記憶部と、
成形に用いる原材料合金の名称または種類の情報を入力する入力部と、
該入力部を通して入力された前記原材料合金の名称または種類の情報に基づいて、前記データ記憶部から前記融点を選択するデータ選択部とを備え、
前記充填室加熱温度制御部は、前記データ選択部によって選択された前記融点を前記成形に用いる原材料合金の融点として、前記充填室金型加熱部の加熱制御を行う
ことを特徴とする請求項18に記載の非晶質合金の連続鋳造装置。 - 複数の原材料合金に対応してそれぞれの融点を記憶するデータ記憶部と、
成形に用いる原材料合金の名称または種類の情報を入力する入力部と、
該入力部を通して入力された前記原材料合金の名称または種類の情報に基づいて、前記データ記憶部から前記融点を選択するデータ選択部とを備え、
前記加熱室加熱温度制御部は、前記データ選択部によって選択された前記融点を前記成形に用いる原材料合金の融点として、前記加熱室金型加熱部の加熱制御を行う
ことを特徴とする請求項19または請求項20に記載の非晶質合金の連続鋳造装置。 - 複数の原材料合金に対応してそれぞれの目標冷却速度を記憶するデータ記憶部と、
成形に用いる原材料合金の名称または種類の情報を入力する入力部と、
該入力部を通して入力された前記原材料合金の名称または種類の情報に基づいて、前記データ記憶部から前記目標冷却速度を選択するデータ選択部とを備え、
前記冷却温度制御部は、前記データ選択部によって選択された前記目標冷却速度を前記成形に用いる原材料合金の目標冷却速度として、前記金型の温度制御を行う
ことを特徴とする請求項21に記載の非晶質合金の連続鋳造装置。 - 前記充填室における前記成形用キャビティ部への前記溶湯の充填状態を検出する溶湯充填検出部と、
該溶湯充填検出部が前記成形用キャビティ部への前記溶湯の充填完了を検出したときに、前記第1移動部を駆動して、前記金型を前記充填室から前記冷却室に移動させる第1移動制御部と
を備えることを特徴とする請求項12から請求項26のいずれか一つに記載の非晶質合金の連続鋳造装置。
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