JP2011119763A - バッファ層とその製造方法、反応液、光電変換素子及び太陽電池 - Google Patents

バッファ層とその製造方法、反応液、光電変換素子及び太陽電池 Download PDF

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Abstract

【課題】下地を良好に被覆し、結晶成長の核あるいは触媒等として機能する微粒子層を設けることを必須とすることなく実用的な反応速度で成膜することができるZn系バッファ層の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のバッファ層の製造方法は、少なくとも1種の亜鉛源である成分(Z)、少なくとも1種の硫黄源である成分(S)、少なくとも1種のクエン酸化合物である成分(C)、アンモニア及びアンモニウム塩からなる群より選ばれた少なくとも1種である成分(N)、及び水を含有し、かつ、成分(C)の濃度が0.001〜0.25Mであり、成分(N)の濃度が0.001〜0.40Mであり、反応開始前のpHが9.0〜12.0である反応液を用い、反応温度を70〜95℃として、Zn(S,O)及び/又はZn(S,O,OH)を主成分とするZn化合物層を液相法により成膜する成膜工程を有する。
【選択図】なし

Description

本発明は、光電変換素子をなすバッファ層とその製造方法、光電変換素子をなすバッファ層の製造に用いる反応液、バッファ層を備えた光電変換素子及びこれを用いた太陽電池に関するものである。
光電変換層とこれに導通する電極とを備えた光電変換素子が、太陽電池等の用途に使用されている。従来、太陽電池においては、バルクの単結晶Si又は多結晶Si、あるいは薄膜のアモルファスSiを用いたSi系太陽電池が主流であったが、Siに依存しない化合物半導体系太陽電池の研究開発がなされている。化合物半導体系太陽電池としては、GaAs系等のバルク系と、Ib族元素とIIIb族元素とVIb族元素とからなるCISあるいはCIGS系等の薄膜系とが知られている。CI(G)Sは、一般式Cu1−zIn1−xGaSe2−y(式中、0≦x≦1,0≦y≦2,0≦z≦1)で表される化合物半導体であり、x=0のときがCIS系、x>0のときがCIGS系である。本明細書では、CISとCIGSとを合わせて「CI(G)S」と表記してある。
CI(G)S系等の従来の薄膜系光電変換素子においては一般に、光電変換層とその上に形成される透光性導電層(透明電極)との間にCdSバッファ層が設けられている。かかる系では通常、バッファ層はCBD(Chemical Bath Deposition)法により成膜されている。
バッファ層の役割としては、(1)光生成キャリアの再結合の防止、(2)バンド不連続の整合、(3)格子整合、及び(4)光電変換層の表面凹凸のカバレッジ等が考えられる。CI(G)S系等では光電変換層の表面凹凸が比較的大きく、特に(4)の条件を良好に充たすために、液相法であるCBD法が好ましいと考えられる。
環境負荷を考慮してバッファ層のCdフリー化が検討されている。Cdフリーのバッファ層の主成分として、ZnO系やZnS系等の亜鉛系が検討されている。
特許文献1には、亜鉛含有化合物と、硫黄含有化合物と、アンモニウム塩とを含む反応液を用いたZn(O,OH,S)バッファ層の製造方法が開示されている(請求項1)。特許文献1には、0.5mol/l以下のアンモニアを含む反応液を用いることが好ましいことが記載されている(請求項2)。特許文献1には、反応温度は10〜100℃が好ましく、pHは9.0〜11.0が好ましいことが記載されている(請求項6、7)。
特許文献2には、酢酸亜鉛、チオ尿素、及びアンモニアを含有する反応液を用いたZn(S,O)バッファ層の製造方法が記載されている(実施例3)。特許文献2の実施例3では、酢酸亜鉛の濃度は0.025M、チオ尿素の濃度は0.375M、アンモニアの濃度は2.5Mとされている。
特許文献3には、亜鉛塩をアンモニア水又は水酸化アンモニウム水に溶解した溶液とイオウ含有塩を純水に溶解した水溶液とを混合した反応液を用いたZn(S,O,OH)バッファ層の製造方法が開示されている(請求項1)。特許文献3には、反応液の透明度が100〜50%の範囲内で成膜を行うことが記載されている(請求項1)。特許文献3には、反応温度は80〜90℃が好ましく、pHは10.0〜13.0が好ましいことが記載されている(請求項5、6)。
特許文献4には、酢酸亜鉛、チオ尿素、及びアンモニアを含有する反応液を用いたZn(S,O)バッファ層をRoll to Rollプロセスにより製造する方法が記載されている(請求項2、実施例2等)。特許文献4の実施例2では、酢酸亜鉛の濃度は0.025M、チオ尿素の濃度は0.375M、アンモニアの濃度は2.5Mとされている。
特許文献5には、硫酸亜鉛と、アンモニアと、チオ尿酸とを含む反応液を用いたZnSバッファ層の製造方法が開示されている(請求項4)。
特許文献6には、0.05〜0.5モル/lの硫酸亜鉛と0.2〜1.5モル/lのチオ尿素とを蒸留水中に70〜90℃の温度で溶解させる段階、約25%アンモニアを、この水の量の3分の1の大きさで添加する段階、この溶液が透明になった後に、約10分にわたって基板をこの溶液中に浸漬させ、その達成される温度をこの時間内で実質的に一定に維持する段階を特徴とするバッファ層の製造方法が開示されている(請求項1)。
非特許文献1には、硫酸亜鉛、チオ尿素、アンモニア、及びクエン酸Naを含む反応液を用いたZnS薄膜の製造方法が記載されている。非特許文献1では、反応温度60〜80℃の条件で成膜が行われている。
非特許文献2には、硫酸亜鉛及びチオアセトアミドを含む反応液を用いたZnS薄膜の製造方法が記載されている。非特許文献2では、反応温度95℃、反応時間90〜120分間の条件で成膜が行われている。
特開2000−332280号公報 特開2001−196611号公報 特開2002−343987号公報 特開2003−124487号公報 特開2002−118068号公報 特表2008−510310号公報 特開2007−242646号公報
D. Johnston, I. Forbes, K.T. Ramakrishna Reddy, and R.W. Miles, Journal of Materials Science Letters 20, 921-923 (2001). Hyun Joo Lee and Soo Il Lee, Current Applied Physics, 7, 193-197 (2007).
バッファ層をCBD法により成膜するにあたっては、下地を良好に被覆する膜を成膜することが必要である。また、生産効率と生産コストとを考慮すれば、CBD法によるバッファ層の成膜工程は反応速度が速いことが好ましい。
特許文献7には、バッファ層と同種または異種の粒子である核を付与し、これを起点として/又は触媒としてバッファ層を形成する方法が開示されている(請求項1)。核となる粒子及びバッファ層の主成分としては、ZnSが具体的に挙げられている(請求項8)。
特許文献7等に記載されているように、結晶成長の核あるいは触媒等として機能する微粒子層を形成してからCBD法による膜を成長することで、CBD法による成膜工程の反応速度を速くすることができると共に、CBD反応の結晶成長を制御して、下地を良好に被覆する膜を安定的に成膜することができる。しかしながら、かかる方法では、微粒子層を形成する工程が増える。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、下地を良好に被覆し、結晶成長の核あるいは触媒等として機能する微粒子層を設けることを必須とすることなく実用的な反応速度で成膜することができるZn系バッファ層の製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明のバッファ層の製造方法は、
基板上に下部電極と光吸収により電流を発生する光電変換半導体層とバッファ層と透光性導電層と上部電極との積層構造を有する光電変換素子における前記バッファ層の製造方法において、
少なくとも1種の亜鉛源である成分(Z)、少なくとも1種の硫黄源である成分(S)、少なくとも1種のクエン酸化合物である成分(C)、アンモニア及びアンモニウム塩からなる群より選ばれた少なくとも1種である成分(N)、及び水を含有し、し、
かつ、
成分(C)の濃度が0.001〜0.25Mであり、
成分(N)の濃度が0.001〜0.40Mであり、
反応開始前のpHが9.0〜12.0である反応液を用い、
反応温度を70〜95℃として、
Zn(S,O)及び/又はZn(S,O,OH)を主成分とするZn化合物層を液相法により成膜する成膜工程を有することを特徴とするものである。
本明細書において、特に明記しない限り「主成分」は20質量%以上の成分と定義する。
本発明によれば、下地を良好に被覆し、結晶成長の核あるいは触媒等として機能する微粒子層を設けることを必須とすることなく実用的な反応速度で成膜することができるZn系バッファ層の製造方法を提供することができる。
本発明に係る一実施形態の光電変換素子の概略断面図 陽極酸化基板の構成を示す概略断面図 陽極酸化基板の製造方法を示す斜視図 実施例のSEM写真
以下、本発明について詳細に説明する。
「バッファ層の製造方法」
本発明は、Zn(S,O)及び/又はZn(S,O,OH)を主成分とするZn化合物層を含むバッファ層とその製造方法に関するものである。
本明細書において、Zn(S,O)及びZn(S,O,OH)との記載は、硫化亜鉛と酸化亜鉛の混晶及び硫化亜鉛と酸化亜鉛と水酸化亜鉛の混晶を意味するが、一部硫化亜鉛や酸化亜鉛、水酸化亜鉛がアモルファスである等で混晶を形成せずに存在していてもよいこととする。
本発明のバッファ層は、Zn(S,O)及び/又はZn(S,O,OH)を主成分とするZn化合物層のみからなるものでもよいし、その他の任意の層とZn(S,O)及び/又はZn(S,O,OH)を主成分とするZn化合物層との積層でもよい。
本発明のバッファ層の製造方法は、
基板上に下部電極と光吸収により電流を発生する光電変換半導体層とバッファ層と透光性導電層と上部電極との積層構造を有する光電変換素子における前記バッファ層の製造方法において、
少なくとも1種の亜鉛源である成分(Z)、少なくとも1種の硫黄源である成分(S)、少なくとも1種のクエン酸化合物である成分(C)、アンモニア及びアンモニウム塩からなる群より選ばれた少なくとも1種である成分(N)、及び水を含有し、
前記成分(C)の濃度が0.001〜0.25Mであり、
前記成分(N)の濃度が0.001〜0.40Mであり、
反応開始前のpHが9.0〜12.0である反応液を調製する調製工程と、
反応温度を70〜95℃として、
Zn(S,O)及び/又はZn(S,O,OH)を主成分とするZn化合物層を液相法により成膜する成膜工程とを有することを特徴とするものである。
調製工程において、前記成分(Z)と前記成分(S)と水とが混合された混合液中に、前記成分(N)を混合することが好ましい。
本発明者は、Zn(S,O)及び/又はZn(S,O,OH)を主成分とするZn化合物層を液相法により成膜する成膜工程において、用いる反応液の組成とpH、及び反応温度を上記のように好適化することにより、下地を良好に被覆する層を、結晶成長の核あるいは触媒等として機能する微粒子層を設けることを必須とすることなく実用的な反応速度で成膜することができることを見出した。
<微粒子層形成工程>
本発明のバッファ層の製造方法は、成膜工程の前に結晶成長の核あるいは触媒等として機能する微粒子層を形成する微粒子層形成工程を必須としないが、成膜工程の前に微粒子層形成工程を有していてもよい。本発明のバッファ層の製造方法が微粒子層形成工程を有する場合、成膜工程の反応速度をより速めることができる。
微粒子層の組成は特に制限されない。微粒子層の組成は半導体が好ましく、後工程で成膜する層がZn系であるので、Zn系が好ましく、ZnS,Zn(S,O),及びZn(S,O,OH)からなる群より選ばれた少なくとも1種を主成分とする1種若しくは2種以上の複数の微粒子からなる微粒子層が特に好ましい。
微粒子層の形成方法は特に制限なく、複数の微粒子を含む分散液を付与する方法、若しくはCBD(Chemical Bath Deposition)法によって複数の微粒子を析出する方法等が好ましい。
<成膜工程>
Zn(S,O)及び/又はZn(S,O,OH)を主成分とするZn化合物層の液相法による成膜方法は特に制限されず、CBD法等が好ましい。
「CBD法」とは、一般式 [M(L)] m+ ⇔ Mn++iL(式中、M:金属元素、L:配位子、m,n,i:正数を各々示す。)で表されるような平衡によって過飽和条件となる濃度とpHを有する金属イオン溶液を反応液として用い、金属イオンMの錯体を形成させることで、安定した環境で適度な速度で基板上に結晶を析出させる方法である。
以下、反応液の好ましい組成について説明する。
成分(Z)としては特に制限されず、硫酸亜鉛、酢酸亜鉛、硝酸亜鉛、及びこれらの水和物からなる群より選ばれた少なくとも1種を含むことが好ましい。
成分(Z)の濃度は特に制限されず、0.001〜0.5Mが好ましい。
成分(S)としては特に制限されず、チオ尿素を含むことが好ましい。
成分(S)の濃度は特に制限されず、0.01〜1.0Mが好ましい。
成分(C)は錯形成剤等として機能する成分であり、成分(C)の種類と濃度を好適化することで、錯体が形成されやすくなる。
[背景技術]及び[発明が解決しようとする課題]の項で挙げた特許文献1〜7、非特許文献2では、クエン酸化合物が用いられていない。非特許文献1にはクエン酸ナトリウムが用いられているが、CBD法により成膜されているのはZnS層であり、Zn(S,O)及び/又はZn(S,O,OH)を主成分とするZn化合物層ではない。
少なくとも1種のクエン酸化合物である成分(C)を用いることで、アンモニアを過剰に用いなくても、クエン酸化合物を用いない特許文献1〜7及び非特許文献2に記載の反応液よりも錯体が形成されやすく、CBD反応による結晶成長が良好に制御され、下地を良好に被覆する膜を安定的に成膜することができる。
成分(C)としては特に制限されず、クエン酸ナトリウム及び/又はその水和物を含むことが好ましい。
非特許文献1に記載の反応液のクエン酸ナトリウムの濃度は0.3Mである。本発明において、成分(C)の濃度は0.001〜0.25Mとする。成分(C)の濃度がこの範囲内であれば錯体が良好に形成され、下地を良好に被覆する膜を安定的に成膜することができる。成分(C)の濃度が0.25M超では、錯体が良好に形成された安定な水溶液となるが、その反面、基板上への析出反応の進行が遅くなったり、反応が全く進行しなくなる場合がある。成分(C)の濃度は好ましくは0.001〜0.1Mである。
成分(N)はpH調整剤等として機能する成分であるが、錯形成剤等として機能する成分でもある。成分(N)として用いて好適なアンモニウム塩としては特に制限されず、NHOH等が挙げられる。
非特許文献1に記載のアンモニア濃度は0.05〜0.25Mであり、最適条件は0.15Mとある。本発明において、成分(N)の濃度は0.001〜0.40Mとする。成分(N)によってpHを調整して、金属イオンの溶解度や過飽和度を調整することができる。成分(N)の濃度が0.001〜0.40Mの範囲内であれば反応速度が速く、成膜工程の前に微粒子層形成工程を設けなくても実用的な生産速度で成膜を実施することができる。成分(N)の濃度が0.40M超では反応速度が遅くなり、成膜工程の前に微粒子層を付けるなどの工夫が必要となる。成分(N)の濃度は好ましくは0.01〜0.30Mである。
反応開始前の反応液のpHは9.0〜12.0とする。
反応液の反応開始前のpHが9.0未満では、チオ尿素等の成分(S)の分解反応が進行しないか、進行しても極めてゆっくりであるため、析出反応が進行しない。チオ尿素の分解反応は下記の通りである。チオ尿素の分解反応については、J.Electrochem.Soc., Vol.141, No.1, January 1994, 及びJournal of Crystal Growth 299 (2007) 136-141等に記載されている。
SC(NH+ OH⇔ SH+ CH+ HO、
SH+ OH ⇔S2− + HO。
反応液の反応開始前のpHが12.0超では、錯形成剤等としても機能する成分(N)が安定な溶液を作る効果が大きくなり、析出反応が進行しないか、あるいは進行しても極めて遅い進行となってしまう。反応液の反応開始前のpHは好ましくは9.5〜11.5である。
本発明で用いる反応液では、成分(N)の濃度を0.001〜0.40Mとしており、かかる濃度であれば、成分(N)以外のpH調整剤を用いるなどの特段のpH調整をしなくても、通常反応開始前の反応液のpHは9.0〜12.0の範囲内となる。
反応液の反応終了後のpHは特に制限されない。反応液の反応終了後のpHは7.5〜11.0であることが好ましい。反応液の反応終了後のpHが7.5未満では、反応が進行しない期間を含んでいたことになり、効率的な製造を考えると無意味である。また、緩衝作用のあるアンモニアが入っていた系でこれだけのpH低下があった場合には、アンモニアが加熱工程で過剰に揮発している可能性が高く、製造上の改善が必要であると考えられる。反応液の反応終了後のpHが11.0超では、チオ尿素の分解は促進されるが、亜鉛イオンの多くがアンモニウム錯体として安定になるため、析出反応の進行が著しく遅くなる場合がある。反応液の反応終了後のpHはより好ましくは9.5〜10.5である。
本発明で用いる反応液では、成分(N)以外のpH調整剤を用いるなどの特段のpH調整をしなくても、通常反応開始後の反応液のpHは7.5〜11.0の範囲内となる。
反応温度は70〜95℃とする。反応温度が70℃未満では反応速度が遅くなり、薄膜が成長しない、あるいは薄膜成長しても実用的な反応速度で所望の厚み(例えば50nm以上)を得るのが難しくなる。反応温度が95℃超では、反応液中で気泡等の発生が多くなり、それが膜表面に付着したりして平坦で均一な膜が成長しにくくなる。さらに、反応が開放系で実施される場合には、溶媒の蒸発等による濃度変化などが生じ、安定した薄膜析出条件を維持することが難しくなる。反応温度は好ましくは80〜90℃である。
反応時間は特に制限されない。本発明では、微粒子層を設けなくても実用的な反応速度で反応を実施することができる。反応時間は反応温度にもよるが、例えば10〜60分間で、下地を良好に被覆し、バッファ層として充分な厚みの層を成膜することができる。
本発明で用いる反応液は水系である。反応液のpHは強酸条件ではない。反応液のpHは11.0〜12.0でもよいが、11.0未満の穏やかなpH条件でも反応を実施することができる。反応温度もそれ程高温を必須としない。したがって、本発明における反応は環境負荷が少なく、基板へのダメージも小さく抑えられる。
例えば、光電変換素子用基板として、
Alを主成分とするAl基材の少なくとも一方の面側にAlを主成分とする陽極酸化膜が形成された陽極酸化基板、
Feを主成分とするFe材の少なくとも一方の面側にAlを主成分とするAl材が複合された複合基材の少なくとも一方の面側にAlを主成分とする陽極酸化膜が形成された陽極酸化基板、
Feを主成分とするFe材の少なくとも一方の面側にAlを主成分とするAl膜が成膜された基材の少なくとも一方の面側にAlを主成分とする陽極酸化膜が形成された陽極酸化基板等の陽極酸化基板を用いることが提案されている。
上記のような陽極酸化基板は耐酸性及び耐アルカリ性が高くないが、本発明では穏やかなpH条件で反応を行うこともできるので、かかる基板を用いる場合も基板にダメージを与える恐れがなく、高品質な光電変換素子を提供することができる。
また、成膜工程後、基板の耐熱温度以下の温度で、少なくともバッファ層をアニール処理することにより、変換効率を向上させることができる(後記実施例を参照)。アニール処理の温度は、用いる基板の耐熱温度以下の温度である必要があり、150℃以上である場合に効果的である。アニール処理の方法は特に制限されず、ヒーターや乾燥機中において熱してもよいし、レーザアニールやフラッシュランプアニールなどの光アニールとしてもよい。
「バッファ層」
本発明のバッファ層は、上記の本発明のバッファ層の製造方法により製造されたものであることを特徴とするものである。
「反応液」
上記本発明の製造方法に用いる反応液自体が新規であり、本発明に含まれる。
本発明の反応液は、基板上に下部電極と光吸収により電流を発生する光電変換半導体層とZn(S,O)及び/又はZn(S,O,OH)を主成分とするZn化合物層を含むバッファ層と透光性導電層と上部電極との積層構造を有する光電変換素子における前記Zn化合物層の製造に用いるにおいて、
少なくとも1種の亜鉛源である成分(Z)、少なくとも1種の硫黄源である成分(S)、少なくとも1種のクエン酸化合物である成分(C)、アンモニア及びアンモニウム塩からなる群より選ばれた少なくとも1種である成分(N)、及び水を含有し、
かつ、
成分(C)の濃度が0.001〜0.25Mであり、
成分(N)の濃度が0.001〜0.40Mであり、
反応開始前のpHが9.0〜12.0であることを特徴とするものである。
本発明の反応液は、成分(Z)として、硫酸亜鉛、酢酸亜鉛、硝酸亜鉛、及びこれらの水和物からなる群より選ばれた少なくとも1種を含むことが好ましい。
本発明の反応液は、成分(S)としてチオ尿素を含むことが好ましい。
本発明の反応液は、成分(C)としてクエン酸ナトリウム及び/又はその水和物を含むことが好ましい。
本発明の反応液は、反応終了後のpHが7.5〜11.0であることが好ましい。
「光電変換素子」
本発明の光電変換素子は、基板上に下部電極(裏面電極)と光吸収により電流を発生する光電変換半導体層とバッファ層と透光性導電層(透明電極)と上部電極(グリッド電極)との積層構造を有する光電変換素子において、
前記バッファ層が、上記の本発明のバッファ層の製造方法により製造されたものであることを特徴とするものである。
基板としては特に制限されず、
ガラス基板、
表面に絶縁膜が成膜されたステンレス等の金属基板、
Alを主成分とするAl基材の少なくとも一方の面側にAlを主成分とする陽極酸化膜が形成された陽極酸化基板、
Feを主成分とするFe材の少なくとも一方の面側にAlを主成分とするAl材が複合された複合基材の少なくとも一方の面側にAlを主成分とする陽極酸化膜が形成された陽極酸化基板、
Feを主成分とするFe材の少なくとも一方の面側にAlを主成分とするAl膜が成膜された基材の少なくとも一方の面側にAlを主成分とする陽極酸化膜が形成された陽極酸化基板、
及びポリイミド等の樹脂基板等が挙げられる。
Roll to Roll工程(連続工程)による生産が可能であることから、表面に絶縁膜が成膜された金属基板、陽極酸化基板、及び樹脂基板等の可撓性基板が好ましい。
熱膨張係数、耐熱性、及び基板の絶縁性等を考慮すれば、
Alを主成分とするAl基材の少なくとも一方の面側にAlを主成分とする陽極酸化膜が形成された陽極酸化基板、
Feを主成分とするFe材の少なくとも一方の面側にAlを主成分とするAl材が複合された複合基材の少なくとも一方の面側にAlを主成分とする陽極酸化膜が形成された陽極酸化基板、
及びFeを主成分とするFe材の少なくとも一方の面側にAlを主成分とするAl膜が成膜された基材の少なくとも一方の面側にAlを主成分とする陽極酸化膜が形成された陽極酸化基板からなる群より選ばれた陽極酸化基板が特に好ましい。
「光電変換素子」
図面を参照して、本発明に係る一実施形態の光電変換素子の構造について説明する。図1は光電変換素子の概略断面図、図2は基板の構成を示す概略断面図、図3は基板の製造方法を示す斜視図である。視認しやすくするため、図中、各構成要素の縮尺等は実際のものとは適宜異ならせてある。
光電変換素子1は、基板10上に、下部電極(裏面電極)20と光電変換層30とバッファ層40と窓層50と透光性導電層(透明電極)60と上部電極(グリッド電極)70とが順次積層された素子である。窓層50は導入しない場合もある。
(基板)
本実施形態において、基板10はAlを主成分とするAl基材11の少なくとも一方の面側を陽極酸化して得られた基板である。基板10は、図2の左図に示すように、Al基材11の両面側に陽極酸化膜12が形成されたものでもよいし、図2の右図に示すように、Al基材11の片面側に陽極酸化膜12が形成されたものでもよい。陽極酸化膜12はAlを主成分とする膜である。
デバイスの製造過程において、AlとAlとの熱膨張係数差に起因した基板の反り、及びこれによる膜剥がれ等を抑制するには、図2の左図に示すようにAl基材11の両面側に陽極酸化膜12が形成されたものが好ましい。
陽極酸化は、必要に応じて洗浄処理・研磨平滑化処理等が施されたAl基材11を陽極とし陰極と共に電解質に浸漬させ、陽極陰極間に電圧を印加することで実施できる。陰極としてはカーボンやアルミニウム等が使用される。電解質としては制限されず、硫酸、リン酸、クロム酸、シュウ酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸、及びアミドスルホン酸等の酸を、1種又は2種以上含む酸性電解液が好ましく用いられる。
陽極酸化条件は使用する電解質の種類にもより特に制限されない。条件としては例えば、電解質濃度1〜80質量%、液温5〜70℃、電流密度0.005〜0.60A/cm、電圧1〜200V、電解時間3〜500分の範囲にあれば適当である。
電解質としては、硫酸、リン酸、シュウ酸、若しくはこれらの混合液が好ましい。かかる電解質を用いる場合、電解質濃度4〜30質量%、液温10〜30℃、電流密度0.05〜0.30A/cm、及び電圧30〜150Vが好ましい。
図3に示すように、Alを主成分とするAl基材11を陽極酸化すると、表面11sから該面に対して略垂直方向に酸化反応が進行し、Alを主成分とする陽極酸化膜12が生成される。陽極酸化により生成される陽極酸化膜12は、多数の平面視略正六角形状の微細柱状体12aが隙間なく配列した構造を有するものとなる。各微細柱状体12aの略中心部には、表面11sから深さ方向に略ストレートに延びる微細孔12bが開孔され、各微細柱状体12aの底面は丸みを帯びた形状となる。通常、微細柱状体12aの底部には微細孔12bのないバリア層が形成される。陽極酸化条件を工夫すれば、微細孔12bのない陽極酸化膜12を形成することもできる。
Al基材11及び陽極酸化膜12の厚みは特に制限されない。基板10の機械的強度及び薄型軽量化等を考慮すれば、陽極酸化前のAl基材11の厚みは例えば0.05〜0.6mmが好ましく、0.1〜0.3mmがより好ましい。基板の絶縁性、機械的強度、及び薄型軽量化を考慮すれば、陽極酸化膜12の厚みは例えば0.1〜100μmが好ましい。
(下部電極)
下部電極(裏面電極)20の主成分としては特に制限されず、Mo,Cr,W,及びこれらの組合わせが好ましく、Mo等が特に好ましい。下部電極(裏面電極)20の膜厚は制限されず、200〜1000nm程度が好ましい。
(光電変換層)
光電変換層30の主成分としては特に制限されず、高光光電変換効率が得られることから、少なくとも1種のカルコパイライト構造の化合物半導体であることが好ましく、Ib族元素とIIIb族元素とVIb族元素とからなる少なくとも1種の化合物半導体であることがより好ましい。
光電変換層30の主成分としては、
Cu及びAgからなる群より選択された少なくとも1種のIb族元素と、
Al,Ga及びInからなる群より選択された少なくとも1種のIIIb族元素と、
S,Se,及びTeからなる群から選択された少なくとも1種のVIb族元素とからなる少なくとも1種の化合物半導体であることが好ましい。
上記化合物半導体としては、
CuAlS,CuGaS,CuInS
CuAlSe,CuGaSe
AgAlS,AgGaS,AgInS
AgAlSe,AgGaSe,AgInSe
AgAlTe,AgGaTe,AgInTe
Cu(In,Al)Se,Cu(In,Ga)(S,Se)
Cu1−zIn1−xGaSe2−y(式中、0≦x≦1,0≦y≦2,0≦z≦1)(CI(G)S),
Ag(In,Ga)Se,及びAg(In,Ga)(S,Se)等が挙げられる。
光電変換層30の膜厚は特に制限されず、1.0〜3.0μmが好ましく、1.5〜2.0μmが特に好ましい。
(バッファ層)
バッファ層40は、(1)光生成キャリアの再結合の防止、(2)バンド不連続の整合、(3)格子整合、及び(4)光電変換層の表面凹凸のカバレッジ等を目的として、設けられる層である。
本実施形態において、バッファ層40はZn(S,O)及び/又はZn(S,O,OH)を主成分とするZn化合物層からなり、上記の本発明のバッファ層の製造方法により製造された膜である。
バッファ層40の導電型は特に制限されず、n型等が好ましい。
バッファ層40の膜厚は特に制限されず、10nm〜2μmが好ましく、15〜200nmがより好ましい。
(窓層)
窓層50は、光を取り込む中間層である。窓層50の組成としては特に制限されず、i−ZnO等が好ましい。窓層50の膜厚は特に制限されず、10nm〜2μmが好ましく、15〜200nmがより好ましい。窓層50は必須ではなく、窓層50のない光電変換素子もある。
(透光性導電層)
透光性導電層(透明電極)60は、光を取り込むと共に、下部電極20と対になって、光電変換層30で生成された電流が流れる電極として機能する層である。
透光性導電層60の組成としては特に制限されず、ZnO:Al等のn−ZnO等が好ましい。透光性導電層60の膜厚は特に制限されず、50nm〜2μmが好ましい。
(上部電極)
上部電極(グリッド電極)70の主成分としては特に制限されず、Al等が挙げられる。上部電極70膜厚は特に制限されず、0.1〜3μmが好ましい。
本実施形態の光電変換素子1は、以上のように構成されている。
光電変換素子1は、太陽電池等に好ましく使用することができる。光電変換素子1に対して必要に応じて、カバーガラス、保護フィルム等を取り付けて、太陽電池とすることができる。
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、適宜設計変更可能である。
本発明に係る実施例及び比較例について説明する。
<反応液1〜21の調製>
表1及び表2に示す配合で、成分(Z)、成分(S)、成分(C)、成分(N)、NaOH、及び水を配合して、反応液1〜21を調製した。成分(Z)の水溶液(I)、成分(S)の水溶液(II)、成分(C)の水溶液(III)、及び成分(N)の水溶液(IV)をそれぞれ調製し、これらの水溶液を混合した。水溶液(I)〜(IV)を混合する際には、水溶液(IV)を最後に添加するようにした。透明な反応液とするには、水溶液(IV)を最後に添加することが重要である。NaOHは反応液10においてのみ添加した。反応液10を調製する際には、水溶液(I)〜(IV)を混合した後、NaOHを添加した。
反応液19においては、水溶液(III)を添加せずに(成分(C)はゼロ[M])水溶液(IV)を添加して調液したが、水溶液(IV)の添加時に反応液の白濁が始まり、透明な反応液を得ることができなかった。従って、反応液19については反応開始前のpHの測定は実施していないため、未測定とした。表には、各反応液の反応開始前のpHを示してある。表には、本発明の規定外の条件に「×」を付してある。
(実施例1〜12、比較例1〜9)
30mm×30mm角のソーダライムガラス(SLG)基板上に、スパッタ法によりMo下部電極を0.8μm厚で成膜した。この基板上にCIGS層の成膜法の一つとして知られている3段階法を用いて膜厚1.8μmのCu(In0.7Ga0.3)Se層を成膜した。
次に、反応液1〜21のいずれかの反応液を用い、CBD法により、Zn(S,O)及び/又はZn(S,O,OH)を主成分とするバッファ層を成膜した。具体的には、所定温度に調温した反応液500ml中にCIGS層を形成した基板を所定時間浸漬させた後に基板を取り出し、これを室温乾燥させて、バッファ層を形成した。反応液中に基板を浸漬する工程においては、反応液の容器の底面に対して基板面が垂直になるように、基板を設置した。
各例において、用いた反応液の種類、反応温度、反応時間、反応前後の反応液のpHを表3及び表4に示す。表には、本発明の規定外の条件に「×」を付してある。
<評価1(ガラス基板への膜の被覆性)>
各例において、ガラス基板を用い、同じ反応条件でCBD法によるZn(S,O)及び/又はZn(S,O,OH)を主成分とするバッファ層の成膜を実施した。薄膜を形成していないガラス基板をリファレンス(100%)として、薄膜を形成した基板の波長550nmにおける透過率を測定し、下記基準に基づいて判定した。薄膜を形成した基板の透過度が低いことは、薄膜によってガラス基板が良好に被覆されたことを意味する。
[判定基準]
○:50%以上87%以下、△:87%超92%以下、×:92%超又は50%未満
<評価2(CIGS層上への膜の被覆性)>
バッファ層を形成したCIGS基板のSEM観察を行い、下記基準に基づいて判定した。
[判定基準]
○:下地のCIGS層を完全に覆うバッファ層が成膜されていた。
×:下地のCIGS層が露出している部分があった。
<評価結果>
評価結果を表3及び表4に示す。
本発明の規定を充足する実施例1〜12では、微粒子層を形成しなくても、下地を良好に被覆するバッファ層を成膜することができた。代表的なSEM写真(斜視写真及び断面写真)を図4に示す。本発明の規定を充足する反応液11を用いても、実施例1〜12と同様に下地を良好に被覆するバッファ層を成膜することができた。
本発明の規定を充足しない比較例1〜8では、下地を良好に被覆するバッファ層を成膜することができなかった。本発明の規定を充足しない反応液8、9を用いても比較例1〜8と同様に、下地を良好に被覆するバッファ層を成膜することができなかった。
<光電変換効率の評価>
実施例1で作製したバッファ層上に、スパッタ法にてi−ZnO層(窓層)(厚み50nm)、アルミニウムドープZnO(ZnO:Al)層(透明電極層)(厚み300nm)を順次成膜した。次いで、上部電極としてAl電極を蒸着法により形成して光電変換素子を得た。
また、窓層の成膜前に、200℃にて1時間大気中においてアニール処理を行って、上記と同様に光電変換素子を作製した。
得られた2つの光電変換素子の電流電圧特性の評価を、ソーラーシミュレーターを用いて、Air Mass(AM)=1.5、100mW/cm2の擬似太陽光を用いた条件下で、エネルギー変換効率を測定したところ、いずれも安定した光電変換特性を示した。表5に2つの光電変換素子のI−V特性測定結果を示す。表5に示されるように、バッファ層形成後、アニール処理を施すことにより変換効率が向上することが確認された。
本発明のバッファ層及びその製造方法は、太陽電池、及び赤外センサ等に使用される光電変換素子に適用できる。
1 光電変換素子(太陽電池)
10 陽極酸化基板
11 Al基材
12 陽極酸化膜
20 下部電極(裏面電極)
30 光電変換半導体層
40 バッファ層(Zn化合物層)
50 窓層
60 透光性導電層(透明電極)
70 上部電極(グリッド電極)

Claims (5)

  1. 基板上に下部電極と光電変換半導体層とZn(S,O)及び/又はZn(S,O,OH)を主成分とするZn化合物層を含むバッファ層と透光性導電層と上部電極との積層構造を有する光電変換素子における前記Zn化合物層の製造に用いる反応液を調製する方法において、
    少なくとも1種の亜鉛源である成分(Z)と、少なくとも1種の硫黄源である成分(S)と、少なくとも1種のクエン酸化合物である成分(C)と水とを混合して混合液を調製し、
    該混合液にアンモニア及びアンモニウム塩からなる群より選ばれた少なくとも1種である成分(N)を混合する工程を有し、
    前記反応液中において、前記成分(C)の濃度が0.001〜0.25Mであり、前記成分(N)の濃度が0.001〜0.40Mであり、且つ、前記反応液のpHが9.0〜12.0となるように前記各成分の濃度を調整して混合することを特徴とする反応液の調製方法。
  2. 反応終了後のpHが7.5〜11.0となるように前記各成分の濃度を調整して混合することを特徴とすることを特徴とする請求項1に記載の反応液の調製方法。
  3. 前記成分(Z)として、硫酸亜鉛、酢酸亜鉛、硝酸亜鉛、及びこれらの水和物からなる群より選ばれた少なくとも1種の亜鉛源を用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の反応液の調製方法。
  4. 前記成分(S)としてチオ尿素を用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の反応液の調製方法。
  5. 前記成分(C)としてクエン酸ナトリウム及び/又はその水和物を用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の反応液の調製方法。
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