以下、実施の形態について図面を参照して説明する。ただし、発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、その趣旨および範囲から逸脱することなく、形態および詳細を様々に変更し得ることは当業者にとって自明である。したがって、発明は、実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、本明細書等において、同一または同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する場合がある。
(実施の形態1)
本実施の形態では、SOI基板の作製方法の一例に関して図面を参照して説明する。具体的には、図1を参照してSOI基板の作製工程について説明し、図2を参照して再生ボンド基板の形成工程について説明する。
<SOI基板の作製工程>
SOI基板の作製工程について図1を参照して説明する。まず、ベース基板120とボンド基板とを準備する(図1(A)、図1(B)参照)。
ベース基板120としては、絶縁体でなる基板を用いることができる。例えば、アルミノシリケートガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラスのような電子工業用に使われる各種ガラス基板、石英基板、セラミック基板、サファイア基板が挙げられる。なお、上記ガラス基板においては、一般に、酸化ホウ素(B2O3)を多く有させることでガラスの耐熱性が向上するが、酸化ホウ素と比較して酸化バリウム(BaO)を多く含ませることで、より実用的な耐熱ガラスが得られる。このため、B2O3よりBaOを多く含むガラス基板を用いると良い。なお、本実施の形態では、ベース基板120としてガラス基板を用いる場合について説明する。ベース基板120として大面積化が可能で安価なガラス基板を用いることにより、低コスト化を実現できる。
ボンド基板としては、半導体基板100を用いることができる。例えば、単結晶シリコン基板、単結晶ゲルマニウム基板、単結晶シリコンゲルマニウム基板など、第14族元素でなる単結晶半導体基板を用いることができる。また、ガリウムヒ素やインジウムリン等の化合物半導体基板を用いることもできる。市販のシリコン基板としては、直径5インチ(125mm)、直径6インチ(150mm)、直径8インチ(200mm)、直径12インチ(300mm)、直径16インチ(400mm)サイズの円形のものが代表的である。なお、半導体基板100の形状は円形に限られず、例えば、矩形等に加工して用いることも可能である。また、半導体基板100は、CZ(チョクラルスキー)法やFZ(フローティングゾーン)法を用いて作製することができる。
次に、半導体基板100の表面から所定の深さに脆化領域104を形成する。そして、絶縁層122、123を介してベース基板120と半導体基板100とを貼り合わせる(図1(C)参照)。
上記において、脆化領域104は、半導体基板100に形成された絶縁層123に、例えば、水素イオンビームを照射することにより、半導体基板100中に水素イオンを打ち込むことで形成することができる。
また、絶縁層122、123は、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜等の絶縁層を単層で、または積層させて形成することができる。これらの膜は、熱酸化法、CVD法、スパッタリング法等を用いて形成することができる。
なお、本明細書等において、酸化窒化物とは、その組成において、窒素よりも酸素の含有量(原子数)が多いものを示し、例えば、酸化窒化シリコンとは、酸素が50原子%以上70原子%以下、窒素が0.5原子%以上15原子%以下、シリコンが25原子%以上35原子%以下、水素が0.1原子%以上10原子%以下の範囲で含まれるものをいう。また、窒化酸化物とは、その組成において、酸素よりも窒素の含有量(原子数)が多いものを示し、例えば、窒化酸化シリコンとは、酸素が5原子%以上30原子%以下、窒素が20原子%以上55原子%以下、シリコンが25原子%以上35原子%以下、水素が10原子%以上30原子%以下の範囲で含まれるものをいう。但し、上記範囲は、ラザフォード後方散乱法(RBS:Rutherford Backscattering Spectrometry)や、水素前方散乱法(HFS:Hydrogen Forward scattering Spectrometry)を用いて測定した場合のものである。また、構成元素の含有比率の合計は、100原子%を超えない。
次に、熱処理などによって、脆化領域104にて半導体基板100を半導体層124と分離後の半導体基板121とに分離することにより、ベース基板120上に半導体層124を形成する(図1(D)参照)。分離後の半導体基板121は、再生工程によって再生ボンド基板となり、再度用いることができる。
熱処理を行う場合、当該熱処理によって脆化領域104に形成されている微小な孔にはイオンビームを照射することにより打ち込まれた原子が析出し、微小な孔の内部の圧力が上昇する。圧力の上昇により、脆化領域104には亀裂が生じるため、脆化領域104において半導体基板100が分離することになる。絶縁層122と絶縁層123とは接合しているため、ベース基板120上には絶縁層122と絶縁層123を介して半導体基板100から分離された半導体層124が残存する。
その後、半導体層124の表面処理等を行うことによって、平坦な半導体層124を形成する。表面処理としては、例えば、レーザビームの照射処理や、エッチング処理、CMPなどの研磨処理がある。
以上の工程により、ベース基板120上に絶縁層122、123を介して半導体層124が設けられたSOI基板を得ることができる。
<再生ボンド基板の形成工程>
次に、分離後の半導体基板121の再生工程について図2を参照して説明する。
図2(A)に、図1(D)に示す半導体基板121(半導体層124が分離された後の半導体基板)を拡大した模式図を示す。半導体基板121の周縁部には凸部126が存在する。当該凸部126は、絶縁層123、未分離の半導体領域125、半導体領域127を含む。半導体領域127は、SOI基板の作製工程において形成される脆化領域104において、半導体層124が分離された後の半導体基板121に残存することで形成されるものである。なお、未分離の半導体領域125および半導体領域127は、SOI基板の作製工程におけるイオンビームの照射処理などによって、いずれも損傷し、水素や結晶欠陥やボイドなどを多く含んでいる。このため、未分離の半導体領域125および半導体領域127をまとめて、損傷半導体領域と呼ぶことができる。本明細書において損傷半導体領域とは、単結晶半導体領域が結晶を構成している原子が空間的に規則的に配列されているものであるのに対し、イオン等の打ち込みに起因する結晶を構成している原子の配列(結晶構造)の乱れ、結晶欠陥、または結晶格子の歪み等を一部に含む領域のことをいう。また、本明細書において未損傷半導体領域とは、単結晶半導体領域が結晶を構成している原子が空間的に規則的に配列しているものをいい、イオン等が打ち込まれていない単結晶半導体領域と同等の領域のことをいう。
上述の凸部126は、半導体基板のいわゆるエッジロールオフ(Edge Roll Off:E.R.O.)と呼ばれる領域を含んでいる。エッジロールオフ領域は、半導体基板の表面処理(CMP処理)に起因して生じるものである。当該エッジロールオフ領域は、半導体基板の厚みが半導体基板の中央領域と比べて小さく、SOI基板の作製の際に貼り合わせが行われない領域となる。その結果、半導体基板121のエッジロールオフ領域には上記凸部126が残存することになる。
なお、半導体基板121の凸部126以外の領域(特に、上記エッジロールオフ領域によって囲まれる領域)には、半導体領域129が存在している。半導体領域129は、半導体領域127と同様、SOI基板の作製工程において形成される脆化領域104が、半導体層124が分離された後の半導体基板121に残存することで形成されるものである。また、半導体領域129も、SOI基板の作製工程におけるイオンビームの照射処理などによって損傷し、水素や結晶欠陥やボイドなどを多く含んでおり、その平坦性は損なわれている。このため半導体領域129は、半導体領域125および半導体領域127と同様に、損傷半導体領域と呼ぶことができる。半導体領域129は、凸部126における半導体領域125および半導体領域127と比較して十分に薄い。
図2(B)に、図2(A)に示す凸部126を拡大した模式図を示す。凸部126は、上記エッジロールオフ領域に対応する領域と面取部に対応する領域とを含む。本明細書においてエッジロールオフ領域とは、上記凸部126の表面における接平面と、基準面とのなす角θが0.5°以下となる点が集合した領域をいうものとする。ここで、基準面としては、半導体基板の表面または裏面に平行な平面が採用される。
また、面取部を、基板の端からの距離が0.2mmの領域として、エッジロールオフ領域をこれより内側の領域であって貼り合わせが行われなかった領域、と規定することもできる。具体的には、例えば、基板の端からの距離が0.2mm〜0.9mmの領域をエッジロールオフ領域と呼ぶことができる。
なお、面取部はベース基板とボンド基板との貼り合わせには関与しないから、面取部の平坦性は基板の再生処理において問題とはならない。一方で、エッジロールオフ領域の近傍はベース基板とボンド基板との貼り合わせに関与する。よって、エッジロールオフ領域の平坦性次第では、再生半導体基板をSOI基板の作製工程に用いることができないこともある。このような理由から、半導体基板の再生処理において、エッジロールオフ領域における凸部126を除去し、半導体基板の平坦性を向上させることは、極めて重要である。
半導体基板の再生処理は、少なくとも、絶縁層123を除去するエッチング処理(以下、第1のエッチング処理と呼ぶ)および、損傷半導体領域を除去するエッチング処理(以下、第2のエッチング処理)の二つのエッチング処理を含む。以下、これらについて詳述する。
はじめに、第1のエッチング処理について図2(C)を参照して説明する。第1のエッチング処理は、上述のように、半導体基板121の絶縁層123を除去するエッチング処理である。ここで、絶縁層123は、フッ酸を含む溶液をエッチャントとするウェットエッチング処理によって除去することができる。フッ酸を含む溶液としては、フッ酸とフッ化アンモニウムと界面活性剤を含む混合溶液(例えば、ステラケミファ社製、商品名:LAL500)などを用いるのが望ましい。当該ウェットエッチング処理は、30秒〜1200秒行うことが望ましく、例えば、300秒程度または600秒程度行うことが好適である。
なお、ウェットエッチング処理は半導体基板121を処理槽内の溶液に浸漬することによって行うことができるため、複数の半導体基板121を一括処理することが可能である。このため、再生処理の効率化を図ることができる。また、絶縁層123を第1のエッチング処理で除去することにより、第2のエッチング処理で絶縁層123を除去する必要がないため、エッチング時間の短縮が可能である。さらに、第1のエッチング処理では半導体はほとんどエッチングされないため、エッチングによる半導体基板121からの半導体除去量を抑制し、再生回数を増加させることができる。
第1のエッチング処理としては、絶縁層123が除去できればよく、ドライエッチング処理を用いても良い。また、ウェットエッチング処理とドライエッチング処理とを組み合わせて用いてもよい。ドライエッチング処理としては、平行平板型RIE(Reactive Ion Etching)法や、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合型プラズマ)エッチング法などを用いることができる。第1のエッチング処理を行うことにより、半導体基板121周縁部には、未分離の半導体領域125及び半導体領域127を含む凸部126と、半導体領域129とが残存する状態となる。
次に、第2のエッチング処理について図2(C)を参照して説明する。第2のエッチング処理では、図2(C)における損傷半導体領域、すなわち、凸部126を構成する未分離の半導体領域125、半導体領域127、および、半導体領域129を選択的に除去する。より具体的には、半導体材料を酸化する物質と、酸化された半導体材料を溶解する物質と、半導体材料の酸化の速度および酸化された半導体材料の溶解の速度を制御する物質と、を含む混合液をエッチャントとして用いるウェットエッチング処理を行う。当該エッチング処理は、1分〜30分程度行うのが望ましく、例えば、2〜4分程度行うのが好適である。また、混合液の温度は、10℃〜30℃程度とするのが望ましく、例えば、25℃とするのが好適である。
上記において、半導体材料を酸化する物質を含む薬液としては硝酸を用いることが望ましい。また、酸化された半導体材料を溶解する物質を含む薬液としてはフッ酸を用いることが望ましい。また、半導体材料の酸化の速度および酸化された半導体材料の溶解の速度を制御する物質を含む薬液としては酢酸を用いることが望ましい。エッチャントとして、硝酸(濃度:70重量%)、フッ酸(濃度:50重量%)および酢酸(濃度:97.7重量%)の混合液を用いる場合、硝酸の体積は、酢酸の体積の0.01倍より大きく1倍未満とし、かつ、フッ酸の体積の0.1倍より大きく100倍未満とし、フッ酸の体積は、酢酸の体積の0.01倍より大きく0.5倍未満とするのが望ましい。例えば、フッ酸と硝酸と酢酸の体積比を1:3:10や1:2:10、1.5:3:10などにすることが望ましい。なお、体積比1:3:10の構成を分子のモル比で表現すると、HF:HNO3:CH3COOH:H2O=2.1:3.3:11.6:7.4である。他の分子の構成については、特に限定する必要はない。
また、上述のごとき比を用いた表現は、それぞれの薬液、または、モル数に対して±10%の範囲を誤差の範囲として含む。例えば、フッ酸と硝酸と酢酸の体積比1:3:10の表現は、x:y:z(フッ酸(x)、硝酸(y)、酢酸(z))として、x=0.9〜1.1、y=2.7〜3.3、z=9〜11をその範囲に含む。同様に、フッ酸と硝酸と酢酸の体積比1:2:10の表現は、x:y:z(フッ酸(x)、硝酸(y)、酢酸(z))として、x=0.9〜1.1、y=1.8〜2.2、z=9〜11をその範囲に含む。
損傷半導体領域には、イオン等の打ち込みに起因する結晶欠陥やボイドなどが存在しており、エッチャントが容易に浸透する。このため、損傷半導体領域では、表面のみでなく、内部からもウェットエッチング処理が進行することになる。具体的には、エッチングは基板平面に垂直な方向に深い縦穴を形成するように進行し、その縦穴を拡大するように行われる傾向にある。つまり、損傷半導体領域では、低損傷の半導体領域または未損傷の半導体領域と比較して大きなエッチングレートでエッチング処理が進行することになる。ここで、「エッチングレート」とは、単位時間あたりのエッチング量(被エッチング量)をいう。つまり、「エッチングレートが大きい」とは、よりエッチングされやすいことを意味し、「エッチングレートが小さい」とは、よりエッチングされにくいことを意味する。また、「エッチング選択比がとれる」とは、例えば、A層とB層をエッチングする場合に、A層のエッチングレートとB層のエッチングレートに十分な差が存在する条件を意味する。また、低損傷の半導体領域とは、未分離の半導体領域125や半導体領域127、半導体領域129等と比較して、相対的に損傷の程度が小さい半導体領域をいう。
より具体的には、損傷半導体領域のエッチングレートは、未損傷の半導体領域(または低損傷の半導体領域)のエッチングレートの2倍以上である。すなわち、損傷半導体領域と、未損傷の半導体領域(または低損傷の半導体領域)とのエッチング選択比は2以上である。
このように、半導体材料を酸化する物質と、酸化された半導体材料を溶解する物質と、半導体材料の酸化の速度および酸化された半導体材料の溶解の速度を制御する物質と、を含む混合液をエッチャントとしてウェットエッチング処理を行うことにより、損傷半導体領域を選択的に除去することができる。故に、再生処理に係る半導体の除去量を低減することができ、再生使用回数を増加させることができる。また、ウェットエッチング処理を用いることで、複数の半導体基板121を一括処理することが可能になるため、再生処理の効率化を図ることができる。さらに、第2のエッチング処理は短時間で行うことが可能であり、この点においても再生処理の効率化が達成される。
なお、凸部126における損傷半導体領域(半導体領域125および半導体領域127)の厚さと、それ以外の領域における損傷半導体領域(半導体領域129)の厚さは大きく異なっている。このため、凸部126(周縁部)と、それ以外の領域(中央部)とのエッチング選択比は、第2のエッチング処理の間において一定ではない。
具体的には、次の通りである。まず、第2のエッチング処理を開始した直後は、凸部126およびそれ以外の領域において、いずれも損傷半導体領域がエッチングされることになるから、エッチング選択比は1前後となる。そして、凸部126以外の損傷半導体領域(半導体領域129)がエッチング除去された後には、凸部126以外の領域には、低損傷の半導体領域または未損傷の半導体領域が表れることになるため、凸部126の損傷半導体領域が優先的に除去されることになり、エッチング選択比は2以上となる。そして、凸部126の損傷半導体領域(半導体領域125、半導体領域127)がエッチング除去されると、当該領域にも低損傷の半導体領域または未損傷の半導体領域が表れることになるため、エッチング選択比は再び1前後となる。
このように、第2のエッチング処理の間でエッチング選択比は変動するから、これをエッチング終了時の目安とすることが可能である。例えば、エッチング選択比が2未満に低下した段階で、エッチング処理を停止させることで、第2のエッチング処理における未損傷の半導体(または低損傷の半導体)の除去量を抑制しつつ、損傷半導体領域を除去することができる。この場合、確実な再生処理を実現すると共に、十分な再生回数を確保することが可能である。なお、エッチング選択比は、所定時間(例えば、30秒、1分など)における膜厚の減少量どうしを比較して求めたもの(差分値)であっても良いし、瞬間の膜厚の減少量を比較して求めたもの(微分値)であっても良い。
次に、上記第2のエッチング処理の後、再生半導体基板132の平坦性を高めるために、表面処理を行うことが望ましい。第2のエッチング処理後の再生半導体基板132表面の平坦性が十分でない場合には、当該半導体基板をSOI基板の作製工程に用いることができないからである。
上記表面処理としては、CMP法や液体ジェット研磨法などの研磨処理などがある。ここで、CMP法とは、被処理物の表面を化学的・機械的な複合作用により平坦化する手法をいう。なお、研磨処理前に単結晶半導体層表面を洗浄し、清浄化する。洗浄は、メガソニック洗浄、2流体ジェット洗浄、スクラブ洗浄、サイクル洗浄等を用いればよく、洗浄により半導体基板121表面のゴミ等を除去する。また、希フッ酸を用いて半導体基板121表面上の自然酸化膜等を除去して半導体基板121を露出させると好適である。
CMP法は、例えば、研磨ステージの上に研磨布を貼り付け、被処理物と研磨布との間にスラリー(研磨剤)を供給しながら、研磨ステージと被処理物を各々回転または揺動させることにより行われる。これによって、スラリーと被処理物表面との間の化学反応、および、研磨布による被処理物の機械的研磨の作用によって、被処理物の表面が研磨される。
CMP法を用いた研磨処理の回数は、1回であっても良いし、複数回としても良い。研磨処理を複数回行う場合には、例えば、高い研磨レートの一次研磨を行った後に、低い研磨レートの仕上げ研磨を行うのが望ましい。一次研磨には、ポリウレタン研磨布を用いるのが望ましく、スラリーの粒径は120nm〜180nm、例えば、150nm程度とするのが望ましい。仕上げ研磨には、スウェード地の研磨布を用いるのが望ましく、スラリーの粒径は45nm〜75nm、例えば、60nm程度とするのが望ましい。
第2のエッチング処理を行った後に表面処理を行うことにより、基板表面の平坦性を高めることができる。表面処理を行うことにより、平均表面粗さ0.2nm〜0.5nm程度に平坦化された再生半導体基板132を形成することができる。また、研磨レートの異なる複数回の研磨処理を行うことによって、短時間での半導体基板130の平坦化が実現できる。
また、半導体基板121に第2のエッチング処理を行わずに、損傷半導体領域が残存する基板おもて面を研磨する場合、基板おもて面にかかる圧力により、損傷半導体領域において応力集中が生じ、応力集中が生じた部分が起点となり基板内部に向かってクラックが生ずるおそれがある。基板内部に向かってクラックが発生することにより、研磨量が増加し、1枚の半導体基板を再生使用する回数が減少するためコスト増大につながる。
半導体基板121に第2のエッチング処理を行うことにより、損傷半導体領域を除去することができるため、第2のエッチング処理の後に研磨処理を行う際に、基板おもて面に生じる応力集中を緩和することができる。応力集中の緩和により、基板内部に向かってクラックが生ずることを抑制することができる。したがって、研磨量を減少させることができるため、1枚の半導体基板の再生使用する回数を増加させることができる。
このように、第1のエッチング処理および第2のエッチング処理で半導体領域125、半導体領域127、および半導体領域129を除去した後、CMP法による表面の研磨処理を行うことで、より平坦性の良好な再生半導体基板132を得ることができる。
以上により半導体基板121が再生され、再生半導体基板132が完成する(図2(D)参照)。
また、第2のエッチング処理の後または研磨処理の後に、レーザビームの照射処理などの表面処理を行っても良い。また、レーザビームの照射処理と研磨処理とを組み合わせて用いても良い。さらに、研磨処理やレーザビームの照射処理は、複数回行っても良い。処理工程の順序も限定されず適宜選択することができる。レーザビームの照射に代えて、ランプ光の照射処理を行っても良い。
本実施の形態で示したように、第1のエッチング処理で絶縁層を除去した後、半導体材料を酸化する物質と、酸化された半導体材料を溶解する物質と、半導体材料の酸化の速度および酸化された半導体材料の溶解の速度を制御する物質と、を含む混合液を用いて第2のエッチング処理を行うことにより、半導体基板の周縁部に残存する損傷半導体領域を選択的に除去することができる。このため、半導体基板から除去される半導体の量を抑制することができる。また、半導体基板に第1のエッチング処理及び第2のエッチング処理を行うことにより、半導体基板の周縁部以外に残存する損傷半導体領域も除去することができるため、第2のエッチング処理の後に研磨処理を行う際に、基板おもて面に生じる応力集中を緩和することができる。応力集中の緩和により、基板内部に向かってクラックが生ずることを抑制することができる。したがって、半導体基板の研磨量を減少させることができるため、1枚の半導体基板の再生使用する回数を増加させることができる。
本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態2)
本実施の形態に係るSOI基板の製造方法では、ボンド基板である半導体基板から分離させた半導体層をベース基板に接合してSOI基板を製造する。そして、半導体層が分離された後の半導体基板に再生処理を施して、ボンド基板として再利用する。以下、図3乃至図6のSOI基板作製工程図を参照して、本実施の形態に係るSOI基板の製造方法の一例について説明する。
はじめに、半導体基板100に脆化領域104を形成し、ベース基板120との貼り合わせの準備を行う工程について説明する。当該工程は、半導体基板100に対する処理に関するものであり、図6の工程Aに相当する。
まず、半導体基板100を準備する(図3(A)および図6の工程(A−1)参照)。半導体基板100としては、例えば、シリコンなどの単結晶半導体基板または多結晶半導体基板を用いることができる。市販のシリコン基板としては、直径5インチ(125mm)、直径6インチ(150mm)、直径8インチ(200mm)、直径12インチ(300mm)、直径16インチ(400mm)サイズの円形のものが代表的である。また、シリコン基板の周縁部には、図3(A)に示すような、欠けやひび割れを防ぐための面取り部が存在する。なお、形状は円形に限られず矩形状等に加工したシリコン基板を用いることも可能である。以下の説明では、半導体基板100として、矩形状の単結晶シリコン基板を用いる場合について示す。
なお、半導体基板100の表面は、硫酸過酸化水素水混合溶液(SPM)、アンモニア過酸化水素水混合溶液(APM)、塩酸過酸化水素水混合溶液(HPM)、希フッ酸(DHF)、オゾン水などを用いて適宜洗浄しておくのが好ましい。また、希フッ酸とオゾン水を交互に吐出して半導体基板100の表面を洗浄してもよい。
次に、半導体基板100の表面を洗浄した後、半導体基板100上に絶縁層123を形成する(図3(B)および、図6の工程(A−2)参照)。絶縁層123は、単数の絶縁膜を用いたものであっても、複数の絶縁膜を積層して用いたものであっても良い。絶縁層123は、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜などのシリコンを組成に含む絶縁膜を用いて形成することができる。本実施の形態では、一例として、酸化シリコンを絶縁層123として用いる場合について説明する。
酸化シリコンを絶縁層123として用いる場合、絶縁層123はシランと酸素、テトラエトキシシラン(TEOS:化学式Si(OC2H5)4)と酸素等の混合ガスを用い、熱CVD、プラズマCVD、常圧CVD、バイアスECRCVD等の気相成長法によって形成することができる。この場合、絶縁層123の表面を酸素プラズマ処理で緻密化しても良い。
また、有機シランガスを用いて化学気相成長法により作製される酸化シリコンを、絶縁層123として用いても良い。有機シランガスとしては、テトラエトキシシラン(TEOS:化学式Si(OC2H5)4)、テトラメチルシラン(TMS:化学式Si(CH3)4)、テトラメチルシクロテトラシロキサン(TMCTS)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、トリエトキシシラン(SiH(OC2H5)3)、トリスジメチルアミノシラン(SiH(N(CH3)2)3)等のシリコン含有化合物を用いることができる。
また、半導体基板100を酸化することで得られる酸化膜で、絶縁層123を形成することもできる。上記酸化膜を形成するための熱酸化処理には、ドライ酸化を用いても良いが、酸化雰囲気中にハロゲンを含むガスを添加しても良い。ハロゲンを含むガスとしては、HCl、HF、NF3、HBr、Cl2、ClF3、BCl3、F2、Br2などから選ばれた一種または複数種のガスを用いることができる。なお、図3(B)では、半導体基板100を覆うように絶縁層123が形成されているが、本発明の一態様はこれに限定されない。半導体基板100にCVD法等を用いて絶縁層123を設ける場合、半導体基板100の一方の面にのみ絶縁層123が形成されていてもよい。
熱酸化膜の形成条件の一例としては、酸素に対しHClを0.5〜10体積%(好ましくは3体積%)の割合で含む雰囲気中で、700℃以上1100℃以下(代表的には、950℃程度)で熱処理を行うというものがある。処理時間は0.1〜6時間、好ましくは0.5〜1時間とすればよい。形成される酸化膜の膜厚は、10nm〜1100nm(好ましくは50nm〜150nm)、例えば100nmとすることができる。
このような、ハロゲン元素を含む雰囲気での熱酸化処理により、酸化膜にハロゲン元素を含ませることができる。ハロゲン元素を1×1017atoms/cm3〜1×1021atoms/cm3の濃度で酸化膜に含ませることにより、外因性の不純物である重金属(例えば、Fe、Cr、Ni、Mo等)を酸化膜が捕集するので、後に形成される半導体層の汚染を防止することができる。
また、絶縁層123中に塩素等のハロゲン元素を含ませることにより、半導体基板100に悪影響を与える不純物(例えば、Na等の可動イオン)をゲッタリングすることができる。具体的には、絶縁層123を形成した後に行われる熱処理により、半導体基板100に含まれる不純物が絶縁層123に析出し、ハロゲン原子(例えば塩素原子)と反応して捕獲されることとなる。それにより絶縁層123中に捕集した当該不純物を固定して半導体基板100の汚染を防ぐことができる。また、絶縁層123はガラス基板と貼り合わせた場合に、ガラスに含まれるNa等の不純物を固定する膜としても機能しうる。
特に、ハロゲンを含む雰囲気下における熱処理により、絶縁層123中に塩素等のハロゲンを含ませることは、半導体基板100の洗浄が不十分である場合や、繰り返し再生処理を施して用いられる半導体基板の汚染除去において有効である。
また、酸化処理雰囲気に含まれるハロゲン元素により、半導体基板100の表面の欠陥が終端されるため、酸化膜と半導体基板100との界面の局在準位密度を低減することができる。
また、絶縁層123中に含まれるハロゲン元素は、絶縁層123に歪みを形成する。その結果、絶縁層123の水分に対する吸収率が向上し、水分の拡散速度が増加する。つまり、絶縁層123の表面に水分が存在する場合に、当該表面に存在する水分を絶縁層123中に素早く吸収し、拡散させることができる。
また、ベース基板として、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属などの半導体装置の信頼性を低下させる不純物を含むようなガラス基板を用いる場合、上記不純物がベース基板からSOI基板の半導体層に拡散することを防止できるような膜を、少なくとも1層以上、絶縁層123が含んでいることが好ましい。このような膜には、窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜などがある。このような膜を絶縁層123が有することで、絶縁層123をバリア膜(ブロッキング膜とも呼ぶ)として機能させることができる。
窒化シリコン膜は、例えば、シランとアンモニアの混合ガスを用い、プラズマCVD等の気相成長法によって形成することができる。また、窒化酸化シリコン膜は、例えば、シランとアンモニアの混合ガス、またはシランと一酸化二窒素の混合ガスを用い、プラズマCVD等の気相成長法によって形成することができる。
例えば、絶縁層123を単層構造のバリア膜として形成する場合、厚さ15nm以上300nm以下の窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜で形成することができる。
絶縁層123を、バリア膜として機能する2層構造とする場合は、上層は、バリア機能の高い絶縁膜で構成する。上層の絶縁膜は、例えば厚さ15nm〜300nmの窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜で形成することができる。これらの膜は、不純物の拡散を防止するブロッキング効果が高いが、内部応力が高い。そのため、半導体基板100と接する下層の絶縁膜には、上層の絶縁膜の応力を緩和する効果のある膜を選択することが好ましい。上層の絶縁膜の応力を緩和する効果のある絶縁膜として、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜および半導体基板100を熱酸化して形成した熱酸化膜などがある。下層の絶縁膜の厚さは5nm以上200nm以下とすることができる。
例えば、絶縁層123をバリア膜として機能させるために、酸化シリコン膜と窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜と窒化シリコン膜、酸化シリコン膜と窒化酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜と窒化酸化シリコン膜などの組み合わせで絶縁層123を形成すると良い。
次に、半導体基板100に、電界で加速されたイオンでなるイオンビームを、矢印で示すように絶縁層123を介して照射し、半導体基板100の表面から所望の深さの領域に脆化領域104を形成する(図3(C)および、図6の工程(A−3)参照)。脆化領域104が形成される深さは、イオンの平均侵入深さとほぼ同じ深さであり、これは、イオンビームの加速エネルギーとイオンビームの入射角によって調節することができる。また、加速エネルギーは加速電圧などにより調節できる。脆化領域104が形成される深さによって、後に半導体基板100から分離される半導体層124の厚さが決定される。脆化領域104が形成される深さは、例えば半導体基板100の表面から10nm以上500nm以下とすることができ、好ましい深さの範囲は、50nm以上200nm以下、例えば100nm程度である。なお、本実施の形態では、イオンビームの照射を絶縁層123の形成後に行っているが、これに限られず、絶縁層123の形成前にイオンビームの照射を行っても良い。
脆化領域104の形成は、イオンドーピング処理で行うことができる。イオンドーピング処理には、イオンドーピング装置を用いて行うことができる。イオンドーピング装置の代表的な例としては、プロセスガスをプラズマ励起して生成された全てのイオン種をチャンバー内に配置された被処理体に照射する非質量分離型の装置がある。非質量分離型の装置では、プラズマ中のイオン種を質量分離しないで、全てのイオン種を含むイオンビームを被処理体に照射する。
イオンドーピング装置の主要な構成は、被処理物を配置するチャンバー、所望のイオンを発生させるイオン源、およびイオンを加速し、照射するための加速機構である。イオン源は、所望のイオン種を生成するためのソースガスを供給するガス供給装置、ソースガスを励起して、プラズマを生成させるための電極などで構成される。プラズマを形成するための電極として、フィラメント型の電極や容量結合高周波放電用の電極などが用いられる。加速機構は、引出電極、加速電極、減速電極、接地電極等の電極など、およびこれらの電極に電力を供給するための電源などで構成される。加速機構を構成する電極には複数の開口やスリットが設けられており、イオン源で生成されたイオンは電極に設けられた開口やスリットを通過して加速される。なお、イオンドーピング装置の構成は上述したものに限定されず、必要に応じてその構成を変更することができる。
本実施の形態では、イオンドーピング装置を用い、プラズマソースガスをプラズマ励起して生成された全てのイオン種を含むイオンビームを半導体基板100に照射する場合について説明する。プラズマソースガスとしては、水素を含むガス、例えば、H2を供給する。水素ガスを励起してプラズマを生成し、質量分離せずにプラズマ中に含まれるイオンを加速し、加速されたイオンを半導体基板100に打ち込む。
上記イオンビームの照射処理においては、水素ガスから生成されるイオン種(H+、H2 +、H3 +)の総量に対してH3 +の割合を50%以上とする。より好ましくは、そのH3 +の割合を80%以上とする。プラズマ中のH3 +の割合を高くすることで、水素イオンを効率よく、半導体基板100に打ち込むことができるためである。なお、H3 +はH+の3倍の質量を持つことから、同じ深さに水素原子を1つ打ち込む場合、H3 +の加速電圧は、H+の加速電圧の3倍にすることが可能である。これにより、イオンビームの照射工程のタクトタイムを短縮することが可能となり、生産性やスループットの向上を図ることができる。また、同じ質量のイオンを打ち込むことで、半導体基板100の同じ深さに集中させてイオンを打ち込むことができる。
イオンドーピング装置は廉価で、大面積処理に優れているため、イオンドーピング装置を用いてH3 +を照射することで、半導体特性の向上、大面積化、低コスト化、生産性向上などの顕著な効果を得ることができる。また、イオンドーピング装置を用いた場合には、重金属も同時に導入されるおそれがあるが、塩素原子を含有する絶縁層123を介してイオンの照射を行うことによって、重金属による半導体基板100の汚染を防ぐことができる。
脆化領域104の形成は、イオン注入装置を用いたイオン注入処理で行ってもよい。イオン注入装置は、チャンバー内に配置された被処理体に、ソースガスをプラズマ励起して生成された複数のイオン種を質量分離し、特定のイオン種を含むイオンビームを被処理体に照射する質量分離型の装置である。イオン注入装置を用いる場合には、水素ガスやPH3を励起して生成されたH+、H2 +、H3 +を質量分離して、これらのいずれかを半導体基板100に打ち込む。
イオン注入装置では、半導体基板100に対して単一のイオンのイオンビームを照射することが可能であり、半導体基板100の同じ深さに集中させてイオンを打ち込むことができる。このため、打ち込まれるイオンの深さ方向のプロファイルにおいて、ピークをシャープにすることが可能であり、分離される半導体層の表面平坦性を高めることが容易である。また、その電極構造から、重金属による汚染が比較的小さく、半導体層の特性悪化を抑制することができるため好適である。
次に、絶縁層123が形成された半導体基板100を洗浄する。この洗浄工程は、純水による超音波洗浄や、純水と窒素による2流体ジェット洗浄などで行うことができる。超音波洗浄としては、メガヘルツ超音波洗浄(メガソニック洗浄)を用いることが望ましい。上述の超音波洗浄や2流体ジェット洗浄の後、半導体基板100をオゾン水で洗浄してもよい。オゾン水で洗浄することで、有機物の除去と、絶縁層123表面の親水性を向上させる表面の活性化処理を行うことができる。
絶縁層123の表面の活性化処理は、オゾン水による洗浄の他、原子ビームまたはイオンビームの照射処理、紫外線処理、オゾン処理、プラズマ処理、バイアス印加プラズマ処理またはラジカル処理で行うことができる(図6の工程(A−4)参照)。原子ビームまたはイオンビームを利用する場合には、アルゴン等の不活性ガス中性原子ビームまたは不活性ガスイオンビームを用いることができる。
ここで、オゾン処理の一例を説明する。例えば、酸素を含む雰囲気下で紫外線(UV)を照射することにより、被処理体表面にオゾン処理を行うことができる。酸素を含む雰囲気下で紫外線を照射するオゾン処理は、UVオゾン処理または紫外線オゾン処理などとも呼ばれる。酸素を含む雰囲気下において、紫外線のうち200nm未満の波長を含む光と200nm以上の波長を含む光を照射することにより、オゾンを生成させるとともに、オゾンから一重項酸素を生成させることができる。また、紫外線のうち180nm未満の波長を含む光を照射することにより、オゾンを生成させるとともに、オゾンから一重項酸素を生成させることもできる。
酸素を含む雰囲気下で、200nm未満の波長を含む光および200nm以上の波長を含む光を照射することにより起きる反応例を以下に示す。
O2+hν1(λ1nm)→O(3P)+O(3P) (1)
O(3P)+O2→O3 (2)
O3+hν2(λ2nm)→O(1D)+O2 (3)
上記反応式(1)において、酸素(O2)を含む雰囲気下で200nm未満の波長(λ1nm)を含む光(hν1)を照射することにより基底状態の酸素原子(O(3P))が生成される。次に、反応式(2)において、基底状態の酸素原子(O(3P))と酸素(O2)とが反応してオゾン(O3)が生成される。そして、反応式(3)において、生成されたオゾン(O3)を含む雰囲気下で200nm以上の波長(λ2nm)を含む光(hν2)が照射されることにより、励起状態の一重項酸素O(1D)が生成される。酸素を含む雰囲気下において、紫外線のうち200nm未満の波長を含む光を照射することによりオゾンを生成させるとともに、200nm以上の波長を含む光を照射することによりオゾンを分解して一重項酸素を生成する。上記のようなオゾン処理は、例えば、酸素を含む雰囲気下での低圧水銀ランプの照射(λ1=185nm、λ2=254nm)により行うことができる。
また、酸素を含む雰囲気下で、180nm未満の波長を含む光を照射することにより起きる反応例を示す。
O2+hν3(λ3nm)→O(1D)+O(3P) (4)
O(3P)+O2→O3 (5)
O3+hν3(λ3nm)→O(1D)+O2 (6)
上記反応式(4)において、酸素(O2)を含む雰囲気下で180nm未満の波長(λ3nm)を含む光(hν3)を照射することにより、励起状態の一重項酸素O(1D)と基底状態の酸素原子(O(3P))が生成する。次に、反応式(5)において、基底状態の酸素原子(O(3P))と酸素(O2)とが反応してオゾン(O3)が生成する。反応式(6)において、生成されたオゾン(O3)を含む雰囲気下で180nm未満の波長(λ3nm)を含む光(hν3)が照射されることにより、励起状態の一重項酸素と酸素が生成される。酸素を含む雰囲気下において、紫外線のうち180nm未満の波長を含む光を照射することによりオゾンを生成させるとともにオゾンまたは酸素を分解して一重項酸素を生成する。上記のようなオゾン処理は、例えば、酸素を含む雰囲気下でのXeエキシマUVランプの照射(λ3=172nm)により行うことができる。
上記200nm未満の波長を含む光を照射することにより被処理体表面に付着する有機物などの化学結合を切断し、オゾンまたはオゾンから生成された一重項酸素により被処理体表面に付着する有機物、または化学結合を切断した有機物などを酸化分解して除去することができる。上記のようなオゾン処理を行うことで、被処理体表面の親水性および清浄性を高めることができ、接合を良好に行うことができる。
酸素を含む雰囲気下で紫外線を照射することによりオゾンが生成される。オゾンは、被処理体表面に付着する有機物の除去に効果を奏する。また、一重項酸素も、オゾンと同等またはそれ以上に、被処理体表面に付着する有機物の除去に効果を奏する。オゾンおよび一重項酸素は、活性状態にある酸素の例であり、総称して活性酸素とも言われる。上記反応式等で説明したとおり、一重項酸素を生成する際にオゾンが生じる、またはオゾンから一重項酸素を生成する反応もあるため、ここでは一重項酸素が寄与する反応も含めて、便宜的にオゾン処理と称する。
次に、ベース基板120に対し、半導体基板100との貼り合わせの準備を行う工程について説明する。当該工程は、ベース基板120に対する処理に関するものであり、図6の工程Bに相当する。
まず、ベース基板120を準備する(図6の工程(B−1)参照)。ベース基板120としては、アルミノシリケートガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラスなどの電子工業用に使われる各種ガラス基板、石英基板、セラミック基板、サファイア基板などを用いることができる。他にも、ベース基板120として単結晶半導体基板(例えば、単結晶シリコン基板)や多結晶半導体基板(例えば、多結晶シリコン基板)を用いてもよい。例えば、多結晶シリコン基板は、単結晶シリコン基板より安価であり、ガラス基板より耐熱性が高いという利点を有している。
ベース基板120として、ガラス基板を用いる場合には、例えば、液晶パネルの製造用に開発されたマザーガラス基板を用いることが好適である。マザーガラスには、第3世代(550mm×650mm)、第3.5世代(600mm×720mm)、第4世代(680mm×880mmまたは、730mm×920mm)、第5世代(1100mm×1300mm)、第6世代(1500mm×1850mm)、第7世代(1870mm×2200mm)、第8世代(2200mm×2400mm)、第9世代(2400mm×2800mm)、第10世代(2850mm×3050mm)などのサイズのものが知られている。大面積のマザーガラス基板をベース基板120として用いてSOI基板を製造することで、SOI基板の大面積化が実現できる。SOI基板の大面積化が実現すれば、一度に複数のICを製造することができ、1枚の基板から製造される半導体装置の取り数が増加するので、生産性を飛躍的に向上させることができる。
また、ベース基板120上には絶縁層122を形成しておくのが望ましい(図6の工程(B−2)参照)。もちろん、ベース基板120上の絶縁層122は必須の構成ではないが、例えば、ベース基板120上に絶縁層122として、バリア膜として機能する窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、窒化アルミニウム膜、または窒化酸化アルミニウム膜などを形成しておくことで、ベース基板120から半導体基板100に、アルカリ金属やアルカリ土類金属などの不純物が入り込むのを防ぐことができる。
また、絶縁層122は接合層として用いるため、接合不良を抑制するためには絶縁層122の表面を平滑とすることが好ましい。具体的には、絶縁層122の表面の平均面粗さ(Ra)を0.50nm以下、自乗平均粗さ(Rms)を0.60nm以下、より好ましくは、平均面粗さを0.35nm以下、自乗平均粗さを0.45nm以下となるように絶縁層122を形成する。膜厚は、10nm以上200nm以下、好ましくは50nm以上100nm以下の範囲で適宜設定することができる。
貼り合わせを行う前に、ベース基板120の表面を洗浄する。ベース基板120の表面の洗浄は、塩酸と過酸化水素水を用いた洗浄や、メガヘルツ超音波洗浄、2流体ジェット洗浄、オゾン水による洗浄などを用いて行うことができる。また、絶縁層123と同様に、絶縁層122の表面に、原子ビームまたはイオンビームの照射処理、紫外線処理、オゾン処理、プラズマ処理、バイアス印加プラズマ処理またはラジカル処理などの表面活性化処理を行ってから貼り合わせを行うと良い(図6の工程(B−3)参照)。
次に、半導体基板100とベース基板120とを貼り合わせ、半導体基板100を、半導体層124と半導体基板121とに分離する工程について説明する。当該工程は、図6の工程Cに相当する。
まず、上述の工程を経た半導体基板100とベース基板120を貼り合わせる(図4(A)および、図6の工程(C−1)参照)。ここでは、絶縁層123および絶縁層122を介して、半導体基板100とベース基板120を貼り合わせるが、絶縁層が形成されていない場合はこの限りでない。
貼り合わせは、ベース基板120の端の一箇所に0.1N/cm2〜500N/cm2、好ましくは1N/cm2〜20N/cm2程度の圧力を加えることで実現される。ベース基板120の圧力をかけた部分から半導体基板100とベース基板120とが接合し始め、自発的に接合が全面におよび、ベース基板120と半導体基板100との貼り合わせが完了する。当該貼り合わせは、ファン・デル・ワールス力などをその原理とするものであり、室温でも強固な接合状態が形成されうる。
なお、半導体基板100の周縁部にはエッジロールオフ領域と呼ばれる領域が存在し、当該領域では、半導体基板100(絶縁層123)とベース基板120(絶縁層122)とは接触しないことがある。また、エッジロールオフ領域より外側(半導体基板100の端寄り)に存在する面取部でも、ベース基板120と半導体基板100とは接触しない。
半導体基板100の作製に用いられるCMP法では、その原理から、半導体基板周縁部の研磨が中央部より早く進む傾向にあり、これによって、半導体基板100の周縁部には、半導体基板100の中央部より厚みが小さい領域が形成される。当該領域がエッジロールオフ(Edge Roll Off)と呼ばれる領域である。半導体基板100の端部が面取加工されていない場合であっても、このようなエッジロールオフ領域では、ベース基板120と貼り合わせられないことがある。
一のベース基板120に複数の半導体基板100を貼り合わせる場合には、各半導体基板100に圧力をかけるようにすることが望ましい。半導体基板100の厚さの違いにより、ベース基板120と接触しない半導体基板100が生じうるためである。なお、半導体基板100の厚さが多少異なる場合であっても、ベース基板120のたわみなどによって半導体基板100とベース基板120とを密着させることができる場合には、貼り合わせを良好に行うことができるため、この限りでない。
ベース基板120に半導体基板100を貼り合わせた後には、接合を強化するための熱処理を行うことが望ましい(図6の工程(C−2)参照)。当該熱処理の温度は、脆化領域104に亀裂を発生させない温度、例えば、200℃以上450℃以下とすることが好適である。また、この温度範囲で加熱した状態で、ベース基板120に半導体基板100を貼り合わせることで、同様の効果を得ることができる。なお、上述の熱処理は、貼り合わせを行った装置または場所において連続的に行うことが望ましい。熱処理前の基板の搬送による基板の剥離を防止できるためである。
なお、半導体基板100とベース基板120とを貼り合わせる際に、接合面にパーティクルなどが付着すると、付着部分では貼り合わせが行われない。パーティクルの付着を防ぐためには、半導体基板100とベース基板120との貼り合わせは、気密性が確保された処理室内で行うことが望ましい。さらに、半導体基板100とベース基板120とを貼り合わせる際に、処理室内を減圧状態(例えば、5.0×10−3Pa程度)とし、貼り合わせ処理の雰囲気を清浄にするようにしても良い。
次いで、熱処理を行うことで、脆化領域104において半導体基板100を分離し、ベース基板120上に半導体層124を形成すると共に、半導体基板121を形成する(図4(B)および、図6の工程(C−3)参照)。上述のエッジロールオフ領域および面取部以外の領域では、半導体基板100とベース基板120とは接合されているため、ベース基板120上には、半導体基板100から分離された半導体層124が固定されることになる。
ここで、半導体層124を分離するための熱処理の温度は、ベース基板120の歪み点を越えない温度とする。当該熱処理は、RTA(Rapid Thermal Anneal)装置、抵抗加熱炉、マイクロ波加熱装置などを用いて行うことができる。RTA装置には、GRTA(Gas Rapid Thermal Anneal)装置、LRTA(Lamp Rapid Thermal Anneal)装置などがある。GRTA装置を用いる場合には、温度550℃以上650℃以下、処理時間0.5分以上60分以内とすることができる。抵抗加熱炉を用いる場合は、温度200℃以上650℃以下、処理時間2時間以上4時間以内とすることができる。
また、上記熱処理は、マイクロ波などの照射によって行っても良い。具体的には、例えば、2.45GHzのマイクロ波を900W、5〜30分程度で照射することにより、半導体基板100を分離させることができる。
半導体層124および、半導体基板121の分離に係る界面には、イオンビームの照射処理などによって損傷した半導体領域129、半導体領域133が残存する。当該領域は、分離前の脆化領域104であったものである。このため、半導体領域129および半導体領域133は多くの水素を含み、多くの結晶欠陥やボイドを含んでいる。
また、半導体基板121の貼り合わせが行われなかった領域(具体的には、半導体基板100のエッジロールオフ領域および面取部に対応する領域)には、凸部126が存在する。凸部126は、半導体領域127、未分離の半導体領域125、および絶縁層123によって構成されている。半導体領域127は半導体領域129などと同様に脆化領域104の一部であったものであるから、多くの水素を含み、多くの結晶欠陥やボイドを含んでいる。また、半導体領域125は、半導体領域127などと比較して水素の含有量は小さいが、イオン等の打ち込みに起因する結晶欠陥が形成されている。
次に、ベース基板120に貼り合わせられた半導体層124の表面を平坦化し、結晶性を回復する工程について説明する。当該工程は、図6の工程Dに相当する。
ベース基板120に密着された半導体層124上の半導体領域133では、脆化領域104の形成および脆化領域104における半導体基板100の分離によって、結晶欠陥が形成され、平坦性が損なわれている。よって、半導体領域133を研磨などによって除去し、半導体層124の表面を平坦化しても良い(図4(C)および、図6の工程(D−1)参照)。平坦化は必須ではないが、平坦化を行うことで、半導体層と、後に半導体層表面に形成される層(例えば、絶縁層)との界面の特性を向上させることができる。具体的に研磨は、CMP法または液体ジェット研磨法などにより、行うことができる。ここで、半導体領域133を除去する際に、半導体層124も研磨され、半導体層124が薄膜化されることもある。
また、半導体領域133をエッチングによって除去し、半導体層124を平坦化することもできる。上記エッチングには、例えば、反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)法、ICP(Inductively Coupled Plasma)エッチング法、ECR(Electron Cyclotron Resonance)エッチング法、平行平板型(容量結合型)エッチング法、マグネトロンプラズマエッチング法、2周波プラズマエッチング法またはヘリコン波プラズマエッチング法等のドライエッチング法を用いることができる。なお、上記研磨と上記エッチングの両方を用いて、半導体領域133を除去し、半導体層124の表面を平坦化してもよい。
また、上記研磨および上記エッチングにより、半導体層124の表面を平坦化すると共に、後に形成される半導体素子にとって最適な厚さまで半導体層124を薄膜化することができる。
また、結晶欠陥の低減および平坦性向上のために、半導体領域133および半導体層124にレーザビームを照射しても良い(図6の工程(D−2)参照)。
なお、レーザビームを照射する前にドライエッチングにより半導体領域133を除去し、半導体層124の表面を平坦化している場合、半導体層124の表面付近では欠陥が生じていることがある。しかし、上記レーザビームの照射により、このような欠陥を補修することが可能である。
レーザビームの照射工程では、ベース基板120の温度上昇を小さくできるため、耐熱性の低い基板をベース基板120として用いることが可能になる。当該レーザビームの照射によって、半導体領域133を完全溶融し、半導体層124は部分溶融させることが望ましい。半導体層124を完全溶融させると、液相となった半導体層124での無秩序な核発生によって半導体層124が再結晶化することとなり、半導体層124の結晶性が低下するからである。半導体層124を部分溶融させることで、溶融されていない固相部分から結晶成長が進行し、半導体層124の結晶欠陥が減少され、結晶性が回復する。なお、半導体層124が完全溶融するとは、半導体層124が絶縁層123との界面まで溶融され、液体状態になることをいう。他方、半導体層124が部分溶融するとは、半導体層124の一部(ここでは上層)が溶融して液相となり、別の一部(ここでは下層)が固相を維持することをいう。
レーザビームを照射した後には、半導体層124の表面をエッチングしても良い。なお、この場合には、レーザビームの照射を行う前に半導体領域133をエッチングしても良いし、しなくとも良い。当該エッチングにより、半導体層124の表面を平坦化すると共に、後に形成される半導体素子にとって最適な厚さまで半導体層124を薄膜化することができる。
レーザビームを照射した後には、半導体層124に500℃以上650℃以下の熱処理を行うことが望ましい(図6の工程(D−3)参照)。この熱処理によって、半導体層124の欠陥をさらに低減させ、また、半導体層124の歪みを緩和させることができる。熱処理には、RTA(Rapid Thermal Anneal)装置、抵抗加熱炉、マイクロ波加熱装置などを用いることができる。RTA装置には、GRTA(Gas Rapid Thermal Anneal)装置、LRTA(Lamp Rapid Thermal Anneal)装置などがある。例えば、抵抗加熱炉を用いる場合には、600℃で4時間程度の熱処理を行えばよい。
上述の工程により得られたSOI基板を、その後の半導体装置の製造工程に用いて、各種の半導体装置を作製することができる(図6の工程F参照)。
<半導体基板の再生処理>
次に、半導体基板121に再生処理を施し、再生半導体基板を製造する工程について説明する。当該工程は、図6の工程Eに相当する。なお、当該工程の詳細については、先の実施の形態を参酌することができるから、ここでは概略の説明のみにとどめる。
半導体基板121の周縁部には凸部126が形成されている(図5(A)参照)。そして、当該凸部126は、絶縁層123、未分離の半導体領域125、半導体領域127によって構成されている。半導体領域127は、SOI基板の作製工程において形成される脆化領域104が、半導体層124が分離された後の半導体基板121に残存することで形成されるものである。なお、未分離の半導体領域125および半導体領域127は、SOI基板の作製工程におけるイオンビームの照射処理などによって、いずれも損傷し、水素や結晶欠陥やボイドなどを多く含んでいる。半導体領域129は、半導体領域127と同様、SOI基板の作製工程において形成される脆化領域104が、半導体層124が分離された後の半導体基板121に残存することで形成されるものである。また、半導体領域129も、SOI基板の作製工程におけるイオンビームの照射処理などによって損傷し、水素や結晶欠陥やボイドなどを多く含んでおり、その平坦性は損なわれている。このため、半導体領域125、半導体領域127、半導体領域129をまとめて損傷半導体領域と呼ぶことができる。
上記半導体基板121に対して、第1のエッチング処理を行って、半導体基板121の絶縁層123を除去する(図5(B)および、図6の工程(E−1)参照)。当該工程の詳細については先の実施の形態を参酌すればよい。
次に、第2のエッチング処理を行って、半導体基板121の凸部126を形成する半導体領域125および半導体領域127を選択的に除去し、再生半導体基板132を形成する(図5(C)および、図6の工程(E−2)参照)。また、このとき同時に半導体領域129の除去も行われる。当該工程の詳細についても、先の実施の形態を参酌できる。
ここで、第2のエッチング処理後の半導体基板121の平坦性が十分でない場合には、半導体基板121に研磨処理などの表面処理を行うことにより平坦化することができる(図6の工程(E−3)参照)。詳細については先の実施の形態を参酌すればよい。
このように、第1のエッチング処理および第2のエッチング処理で半導体基板121の凸部126を除去した後、研磨処理を行うことによって、平坦性の高い再生半導体基板132を得ることができる。
また、半導体基板121に第2のエッチング処理を行うことにより、損傷半導体領域を除去することができるため、第2のエッチング処理の後に研磨処理を行う際に、基板おもて面に生じる応力集中を緩和することができる。応力集中の緩和により、基板内部に向かってクラックが生ずることを抑制することができる。したがって、研磨量を減少させることができるため、1枚の半導体基板の再生使用する回数を増加させることができる。
以上により、半導体基板121は再生半導体基板132へと再生される。得られた再生半導体基板132は工程Aにおいて半導体基板100として再度利用することができる。
本実施の形態で示したように、再生処理工程を経た半導体基板を繰り返し使用することによって、SOI基板の製造コストを低減することができる。特に、本実施の形態等において説明する方法を用いる場合には、損傷半導体領域を選択的に除去することができる。また、半導体基板の再生処理において除去される半導体基板の量を十分に抑制することができる。
本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態3)
本実施の形態では、耐熱性の高いシリコン基板等をベース基板として用いてSOI基板を作製する場合について説明する。なお、本実施の形態において示す方法は、多くの部分で先の実施の形態と共通している。よって、本実施の形態では、主に相違点について説明することとする。図面については、先の実施の形態と共通であるため、ここでは特に示さない。
ボンド基板として用いられる半導体基板に、絶縁層および脆化領域を形成する(図6の工程Aに相当)。絶縁層、脆化領域の形成を含む半導体基板に対する処理等については、先の実施の形態に示したものと同様である。よって、これらに関しては、先の実施の形態の記載を参酌すればよい。
本実施の形態では、ベース基板として耐熱性の高い基板を用いる(図6の工程Bに相当)。耐熱性の高い基板の例としては、石英基板、サファイア基板、半導体基板(例えば、単結晶シリコン基板や多結晶シリコン基板)などがある。本実施の形態では、ベース基板として単結晶シリコン基板を用いる場合について説明する。
単結晶シリコン基板としては、直径5インチ(125mm)、直径6インチ(150mm)、直径8インチ(200mm)、直径12インチ(300mm)、直径16インチ(400mm)サイズの円形のものが代表的である。なお、形状は円形に限られず矩形状等に加工したシリコン基板を用いることも可能である。以下の説明では、ベース基板として、矩形状の単結晶シリコン基板を用いる場合について説明する。なお、ベース基板とボンド基板の大きさは、同程度としても良いし、異ならせても良い。
ベース基板の表面は、硫酸過酸化水素水混合溶液(SPM)、アンモニア過酸化水素水混合溶液(APM)、塩酸過酸化水素水混合溶液(HPM)、希フッ酸(DHF)、オゾン水などを用いて適宜洗浄しておくのが望ましい。また、希フッ酸とオゾン水を交互に吐出して半導体基板100の表面を洗浄してもよい。
ベース基板上には、絶縁層を形成しても良い。ベース基板上に絶縁層を形成する場合には、ボンド基板側の絶縁層を省略した構成とすることもできる。絶縁層は、単数の絶縁膜を用いたものであっても、複数の絶縁膜を積層して用いたものであっても良い。絶縁層は、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜などのシリコンを組成に含む絶縁膜を用いて形成することができる。
一例として、上記絶縁層を熱酸化処理によって形成することができる。熱酸化処理としては、ドライ酸化を用いることが好適であるが、酸化雰囲気中にハロゲンを含むガスを添加しても良い。ハロゲンを含むガスとしては、HCl、HF、NF3、HBr、Cl2、ClF3、BCl3、F2、Br2などから選ばれた一種または複数種のガスを用いることができる。
貼り合わせを行う前には、ベース基板の表面を洗浄する。ベース基板の表面の洗浄は、塩酸と過酸化水素水を用いた洗浄や、メガヘルツ超音波洗浄、2流体ジェット洗浄、オゾン水による洗浄などを用いて行うことができる。また、表面に、原子ビームまたはイオンビームの照射処理、紫外線処理、オゾン処理、プラズマ処理、バイアス印加プラズマ処理またはラジカル処理などの表面活性化処理を行ってから貼り合わせを行っても良い。
次に、半導体基板(ボンド基板)とベース基板とを貼り合わせ、半導体基板を分離する(図6の工程Cに相当)。これにより、ベース基板上には、半導体層が形成されることになる。当該工程の詳細については、先の実施の形態を参酌できる。
本実施の形態では、ベース基板として耐熱性の高い単結晶シリコン基板を用いている。このため、各種熱処理温度の上限を、単結晶シリコン基板の融点付近まで引き上げることが可能である。
例えば、半導体基板を分離するための熱処理温度の上限を1200℃程度とすることができる。また、当該熱処理の温度を700℃以上とすることにより、ベース基板との接合が一層強化される。
次に、ベース基板に貼り合わせられた半導体層の表面を平坦化し、結晶性を回復させる(図6の工程Dに相当)。
ベース基板に密着された半導体層には、脆化領域の形成および脆化領域における半導体基板の分離に伴い結晶欠陥が形成され、また、その平坦性は損なわれている。よって、熱処理を行って、結晶欠陥を低減させると共に、表面の平坦性を向上させるのが好適である。上記熱処理は、800℃〜1300℃、代表的には、850℃〜1200℃の温度条件で行うことが望ましい。このような比較的高温の条件での熱処理を行うことにより、結晶欠陥を十分に低減し、表面の平坦性を向上させることが可能である。
熱処理には、RTA(Rapid Thermal Anneal)装置、抵抗加熱炉、マイクロ波加熱装置などを用いることができる。例えば、抵抗加熱炉を用いる場合には、950℃〜1150℃で1分〜4時間程度の熱処理を行えばよい。なお、半導体基板を分離させる際の熱処理を高温で行って、当該熱処理に代えることもできる。
熱処理前または熱処理後において、半導体層にレーザビームを照射しても良い。レーザビームを照射することによって、熱処理では修復しきれない結晶欠陥をも修復することが可能である。レーザビーム照射の詳細については、先の実施の形態を参酌できる。
また、熱処理前または熱処理後には、半導体層上方の半導体領域を研磨等によって除去し、表面を平坦化しても良い。当該平坦化処理によって、半導体層表面を一層平坦にすることができる。具体的に研磨は、化学的機械的研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)または液体ジェット研磨などにより、行うことができる。なお、当該処理によって、半導体層が薄膜化されることもある。
また、半導体層上方の半導体領域をエッチングによって除去し、平坦化することもできる。上記エッチングには、例えば、反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)法、ICP(Inductively Coupled Plasma)エッチング法、ECR(Electron Cyclotron Resonance)エッチング法、平行平板型(容量結合型)エッチング法、マグネトロンプラズマエッチング法、2周波プラズマエッチング法またはヘリコン波プラズマエッチング法等のドライエッチング法を用いることができる。なお、上記研磨と上記エッチングの両方を用いて平坦化してもよい。
また、上記研磨および上記エッチングにより、半導体層の表面を平坦化すると共に、後に形成される半導体素子にとって最適な厚さまで半導体層を薄膜化することができる。
上述の工程により得られたSOI基板を、その後の半導体装置の製造工程に用いて、各種の半導体装置を作製することができる。
次に、半導体基板121に再生処理を施し、再生半導体基板を製造する(図6の工程Eに相当)。再生処理の詳細については、先の実施の形態を参酌することができる。
本実施の形態で示したように、再生処理工程を経た半導体基板を繰り返し使用することによって、SOI基板の製造コストを低減することができる。特に、本実施の形態等において示すような高温での熱処理を用いる場合には、ボンド基板にごくわずかな欠陥が残存する場合であっても、良好な特性を有するSOI基板を製造することが可能である。
本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態4)
先の実施の形態において作製されたSOI基板を用いた半導体装置の一例を、図7に示す。
図7は、nチャネル型薄膜トランジスタであるトランジスタ280、およびpチャネル型薄膜トランジスタであるトランジスタ281を有する半導体装置の一例である。トランジスタ280、トランジスタ281は、絶縁層123および絶縁層122を介してベース基板120上に形成されている。このような複数の薄膜トランジスタ(TFT)を組み合わせることで、各種の半導体装置を形成することができる。以下、図7に示す半導体装置の作製方法について説明する。
はじめに、SOI基板を用意する。SOI基板としては、先の実施の形態で作製したSOI基板を用いることができる。
次に、エッチングにより、半導体層を分離して島状の半導体層251、半導体層252を形成する。半導体層251はnチャネル型のTFTを構成し、半導体層252はpチャネル型のTFTを構成する。
半導体層251、半導体層252上に絶縁層254を形成した後、絶縁層254を介して、半導体層251上にゲート電極255を形成し、半導体層252上にゲート電極256を形成する。
なお、半導体層には、TFTのしきい値電圧を制御するために、ホウ素、アルミニウム、ガリウムなどのアクセプタとなる不純物元素、またはリン、ヒ素などのドナーとなる不純物元素を添加しておくことが望ましい。例えば、nチャネル型TFTが形成される領域にアクセプタとなる不純物元素を添加し、pチャネル型TFTが形成される領域にドナーとなる不純物元素を添加する。
次に、半導体層251にn型の低濃度不純物領域257を形成し、半導体層252にp型の高濃度不純物領域259を形成する。具体的には、まず、pチャネル型TFTとなる半導体層252をレジストマスクで覆い、不純物元素を半導体層251に添加して、半導体層251にn型の低濃度不純物領域257を形成する。添加する不純物元素としては、リンまたはヒ素を用いればよい。ゲート電極255がマスクとなることにより、半導体層251に自己整合的にn型の低濃度不純物領域257が形成される。また、半導体層251のゲート電極255と重なる領域はチャネル形成領域258となる。次に、半導体層252を覆うマスクを除去した後、nチャネル型TFTとなる半導体層251をレジストマスクで覆う。そして、不純物元素を半導体層252に添加する。添加する不純物元素としては、ホウ素、アルミニウム、ガリウム等を用いればよい。ここでは、ゲート電極256がマスクとして機能して、半導体層252に自己整合的にp型の高濃度不純物領域259が形成される。半導体層252のゲート電極256と重なる領域はチャネル形成領域260となる。なお、ここでは、n型の低濃度不純物領域257を形成した後、p型の高濃度不純物領域259を形成する方法を説明したが、先にp型の高濃度不純物領域259を形成することもできる。
次に、半導体層251を覆うレジストマスクを除去した後、プラズマCVD法等によって、窒化シリコン等の窒化物や酸化シリコン等の酸化物を含む単層構造または積層構造の絶縁層を形成する。そして、当該絶縁層に垂直方向の異方性エッチングを適用することで、ゲート電極255、ゲート電極256の側面に接するサイドウォール絶縁層261、サイドウォール絶縁層262を形成する。なお、上記異方性エッチングにより、絶縁層254もエッチングされる。
次に、半導体層252をレジストマスクで覆い、半導体層251に高ドーズ量で不純物元素を添加する。これにより、ゲート電極255およびサイドウォール絶縁層261がマスクとなり、n型の高濃度不純物領域267が形成される。
不純物元素の活性化処理(熱処理)の後、水素を含む絶縁層268を形成する。絶縁層268を形成後、350℃以上450℃以下の温度による熱処理を行い、絶縁層268中に含まれる水素を半導体層251、半導体層252中に拡散させる。絶縁層268は、プロセス温度が350℃以下のプラズマCVD法により窒化シリコンまたは窒化酸化シリコンを堆積することで形成できる。半導体層251、半導体層252に水素を供給することで、半導体層251や半導体層252中、またはこれらと絶縁層254との界面での捕獲中心となるような欠陥を効果的に補償することができる。
その後、層間絶縁層269を形成する。層間絶縁層269は、酸化シリコン、BPSG(Boron Phosphorus Silicon Glass)などの無機材料を含む絶縁膜、または、ポリイミド、アクリルなどの有機材料を含む絶縁膜、を用いた単層構造または積層構造とすることができる。層間絶縁層269にコンタクトホールを形成した後、配線270を形成する。配線270の形成には、例えば、アルミニウム膜またはアルミニウム合金膜などの低抵抗金属膜をバリアメタル膜で挟んだ3層構造の導電膜を用いることができる。バリアメタル膜は、モリブデン、クロム、チタンなどを用いて形成することができる。
以上の工程により、nチャネル型TFTとpチャネル型TFTを有する半導体装置を作製することができる。本実施の形態の半導体装置に用いるSOI基板は、先の実施の形態で示したように、非常に低コストに製造される。このため、半導体装置の製造に係るコストを低減することが可能である。
なお、本実施の形態では、図7に係る半導体装置およびその作製方法について説明したが、本発明の一態様に係る半導体装置の構成はこれに限定されない。半導体装置は、TFTの他、容量素子、抵抗素子、光電変換素子、発光素子などを有していても良い。
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いることができる。
本実施例では、SOI基板の作製で生じる半導体基板に対して、絶縁層の除去、および、各種エッチャントを用いるウェットエッチングを行った。以下に、その結果を示す。
まず、本実施例で用いた半導体基板について説明する。
本実施例では、半導体基板として5インチ角の矩形状単結晶シリコン基板を用いた。まず、半導体基板をHCl雰囲気下で熱酸化し、基板表面に100nmの厚さの熱酸化膜を形成した。熱酸化の条件は、950℃で4時間であり、熱酸化の雰囲気は、HClが酸素に対して3体積%の割合で含まれるものとした。
次に、熱酸化膜の表面からイオンドーピング装置を用いて半導体基板にイオンビームを照射した。本実施例では、水素ガスを励起してプラズマを生成し、質量分離せずにプラズマ中に含まれるイオンを加速し、加速されたイオンを半導体基板に打ち込むことで、半導体基板に脆化領域を形成した。イオンドーピングの条件は、加速電圧を40kV、ドーズを2.0×1016ions/cm2とした。
そして、半導体基板を、熱酸化膜を介してガラス基板に貼り合わせた。その後、200℃で120分の熱処理を行い、さらに、600℃で120分の熱処理を行って、脆化領域において半導体基板から薄膜の単結晶シリコン層を分離した。これにより、SOI基板が作製されると共に、周縁部に凸部を有する半導体基板が作製された。
次に、上述の半導体基板に対する処理について説明する。
まず、半導体基板を覆うように形成されている絶縁層を除去するために、半導体基板にフッ酸とフッ化アンモニウムと界面活性剤を含む混合液(ステラケミファ社製、商品名:LAL500)を用いたウェットエッチング処理を施した。このとき、液温は室温、エッチング時間は300秒とした。
次に、絶縁層を除去した半導体基板に対して、フッ酸と硝酸と酢酸とを1:3:10の体積比で混合した混合液(以下、混合液A)、フッ酸と硝酸と酢酸とを1:100:100の体積比で混合した混合液(以下、混合液B)、フッ酸と硝酸と酢酸とを1:0.1:10の体積比で混合した混合液(以下、混合液C)、フッ酸と硝酸と酢酸とを1:10:10の体積比で混合した混合液(以下、混合液D)、フッ酸と過酸化水素水とを1:5の体積比で混合した混合液(以下、混合液E)、TMAH(Tetra Methyl Ammonium Hydroxide)を2.38wt%含む水溶液(以下、TMAH水溶液)のいずれかエッチャントとして用いてウェットエッチングを行った。上記混合液A〜混合液Eの作製においては、フッ酸は濃度が50重量%のもの(ステラケミファ社製)、硝酸は濃度が70重量%のもの(和光純薬株式会社製)、酢酸は、濃度が97.7重量%のもの(キシダ化学株式会社製)、過酸化水素水は濃度が31重量%のもの(三菱ガス化学株式会社製)を用いた。また、エッチャントの液温は室温とし、エッチング時間は30秒、1分、2分、4分、6分、8分のいずれかとした。上記エッチャントの詳細につき、表1に示す。
上述の6種類のエッチャントを用いてそれぞれの時間でウェットエッチングを行った半導体基板に、基板周縁部の段差測定(小坂研究所株式会社製サーフコーダー(段差測定装置)ET4100を使用)、および、基板中央部のエッチング量測定(ラップマスターSFT株式会社製Sorter1000およびキーエンス社製LK−G30を使用)を行った。また、混合液Aを用いてエッチングを行った基板に対しては、基板周縁部の写真撮影(オリンパス株式会社製光学顕微鏡MX61Lを使用、ノマルスキー像)を行った。ここで、基板中央部とは段差の形成された基板周縁部を除く領域を指すものとする。
図8(A)に、半導体基板が分離した直後の周縁部の光学顕微鏡写真を、図8(B)に、絶縁層を除去した後の光学顕微鏡写真を示す。また、図9(A)および図9(B)に、それぞれ図8(A)および図8(B)に対応する基板周縁部の段差測定の結果を示す。ここで、段差測定結果のグラフは、縦軸が基板中央部を基準(0とする)とした時の段差(μm)を示し、横軸が半導体基板の幅(mm)を示す。これは、以降の段差測定のグラフについても同様である。
図8(A)および図8(B)では、写真左側が基板周縁部の段差を示している。図8(A)では、残存した絶縁層が観察され、図8(B)では、絶縁層が除去され、さらに下層の残存したシリコンが観察されている。また、基板周縁部では、微小ボイドによる凹凸が形成されており、平坦性が低いことがうかがわれる。写真右側では、基板中央部のシリコンが観察される。
図9(A)および図9(B)の段差測定のグラフからも同様のことが言える。図9(A)では、基板周縁部と基板中央部の段差が0.2μm程度あるのに対し、図9(B)では、絶縁層が除去され、基板周縁部と基板中央部の段差が0.1μm程度に低減されている。
次に、混合液Aを用いて、30秒、1分、2分、4分、6分、8分のウェットエッチングを行った半導体基板の、基板周縁部の光学顕微鏡写真を、図10および図11に示す。ここで、図10(A1)および図10(A2)は30秒の、図10(B1)および図10(B2)は1分の、図10(C1)および図10(C2)は2分の、図11(A1)および図11(A2)は4分の、図11(B1)および図11(B2)は6分の、図11(C1)および図11(C2)は8分の、各条件における光学顕微鏡写真である。また、図10および図11において、(A1)、(B1)、(C1)は倍率50倍の、(A2)、(B2)、(C2)は倍率500倍の光学顕微鏡写真である。
図12には、基板周縁部の段差測定の結果を示す。図12(A)は30秒の、図12(B)は1分の、図12(C)は2分の、図12(D)は4分の、図12(E)は6分の、図12(F)は8分の、各条件における基板周縁部の段差測定の結果である。
さらに、図13乃至図17には、混合液B、混合液C、混合液D、混合液E、TMAH水溶液のいずれかを用いて、30秒、1分、2分、4分、6分、8分のウェットエッチングを行った半導体基板の基板周縁部の段差測定の結果を示す。図13は混合液Bを、図14は混合液Cを、図15は混合液Dを、図16は混合液Eを、図17はTMAH水溶液を、用いた場合の結果である。図13乃至図17の各図において、(A)は30秒の、(B)は1分の、(C)は2分の、(D)は4分の、(E)は6分の、(F)は8分の、各条件における基板周縁部の段差測定の結果を示している。
また、図18に、混合液Aと混合液Dを用いてウェットエッチングを行った場合の、基板中央部のエッチング量測定の結果を示す。図18において、丸印は混合液Aを用いた場合の、四角印は混合液Dを用いた場合の結果である。図18に示すグラフの縦軸は、半導体基板中央部における半導体基板のエッチング量(μm)を示し、横軸は、エッチング時間(分)を示している。
ここで、基板中央部のエッチング量の測定は、エッチング前後における基板中央部の基板厚みの変化から算出している。また、基板厚みは、測定ステージ(ラップマスターSFT株式会社製Sorter1000)の上下に設けたレーザ変位計(キーエンス社製LK−G30)の差分により求めた。基板厚みの測定は、基板中央部の107mm角の領域において、測定点数を10点×10点として行った。また、それらの平均値の比較により基板中央部のエッチング量を求めた。レーザ変位計の繰り返し精度は±0.05μmであり、基板厚みの繰り返し精度は±0.5μmである。
図10および図11に示す光学顕微鏡写真の比較から、写真左側の凸部による段差が、エッチング時間が増えるにつれて低減されている様子が分かる。例えば、図11(A)に示すエッチング時間が4分の場合には、段差はほとんど存在しない。図12に示す段差測定のグラフからも同様のことが言える。また、図12より、混合液Aを用いたウェットエッチングでは、まず、基板周縁部の段差に、基板平面に対して垂直な方向に縦穴が形成され、その縦穴を拡大するようにエッチングが進行する。これは、基板周縁部の段差を形成する半導体領域(結晶欠陥や微小ボイドを有する損傷半導体領域)に混合液Aが浸透し、当該半導体領域の内部から段差が除去されることを示している。このような混合液Aによるウェットエッチングの様子は、後述する他のエッチャントの場合とは異なる傾向にある。
また、図18に示す半導体基板の中央部の半導体基板のエッチング量のグラフから、少なくともエッチング時間6分までは、半導体基板のエッチング量は十分に小さく、基板厚み測定における誤差の範囲内にある。
表2には、エッチング時間と、半導体基板中央部のエッチング量(μm)、半導体基板周縁部のエッチング量(μm)、との関係を示す。また、半導体基板中央部のエッチング量と半導体基板周縁部のエッチング量とから求めたエッチング選択比(選択比1)と、差分の選択比(選択比2)を合わせて示す。
ここで、選択比1は、基板周縁部の段差(幅0.1mmの領域)におけるエッチング量の平均値を、基板中央部のエッチング量の平均値で割ったものである。また、差分の選択比(選択比2)は、それぞれ、0分−1分の間におけるエッチング量、1分−2分の間におけるエッチング量、2分−4分の間におけるエッチング量、4分−6分の間におけるエッチング量から求めた選択比である。例えば、1分−2分の間における半導体基板中央部のエッチング量は、0.14−0.096=0.044(μm)であり、半導体基板周縁部のエッチング量は、0.225−0.101=0.124(μm)であるから、この場合の選択比2は0.124/0.044=2.818となる。
表2より、差分の選択比(選択比2)は、エッチング時間と共に変動することが分かる。具体的には、エッチング開始から間もない時点では1程度であった選択比が、2以上となり、再び1程度に戻る。これは、次の理由によるものと考察される。まず、エッチング開始時には、半導体基板周縁部の損傷半導体領域が除去されると共に、半導体基板中央部に残存する損傷半導体領域が除去されることになるため、半導体基板周縁部と半導体基板中央部では、エッチングレートは大きく異ならない。つまり、選択比は1程度となる。半導体基板中央部の損傷半導体領域が除去された後には、半導体基板中央部ではエッチングレートが低下するのに対して、半導体基板周縁部では未だ損傷半導体領域が残存しており、エッチングレートは低下しない。このため、選択比は大きくなる(具体的には、2以上となる)。その後、半導体基板周縁部における損傷半導体領域が除去されることにより、半導体基板周縁部と半導体基板中央部のエッチングレートが同程度となる。つまり、選択比は1程度に戻る。このような選択比の変動を伴い、損傷半導体領域が選択的に除去されるといえる。
また、エッチング時間2分および4分の選択比1はそれぞれ1.607、1.748と高い。そして、1分−2分、2分−4分の選択比2についても、それぞれ、2.818、2.609と高い。このように、エッチャントとして混合液A(フッ酸と硝酸と酢酸とを1:3:10の体積比で混合した混合液)を用いることにより、短時間で半導体基板周縁部の段差(凸部)を選択的に除去できる。
混合液Bを用いたエッチングでは、エッチングの進行が遅く、エッチング時間を8分としても段差が除去されていないことが分かる(図13参照)。また、混合液Aの場合と異なり、基板周縁部の段差は表面から徐々にエッチングされ、深い縦穴は形成されない。このように、混合液Bを用いて半導体基板をエッチングしても、基板周縁部の段差は除去されない、または、段差の除去に長時間を要することが分かった。
混合液Cを用いたエッチングでは、基板周縁部の段差は除去されない(図14参照)。このように、混合液Cを用いて半導体基板をエッチングしても、半導体基板のエッチングはほとんど進行しないことが分かった。
混合液Dを用いたエッチングでは、基板中央部のエッチング量はエッチング時間に比例して増加する(図18参照)が、基板周縁部の段差は、維持されたままである(図15参照)。このように、混合液Dをエッチング液として用いても、半導体基板全体が一様にエッチングされ、基板周縁部の段差を選択的に除去することができないことが分かった。
混合液Eを用いたエッチングでは、混合液Cを用いた場合と同様に、基板周縁部の段差は除去されない(図16参照)。このように、混合液Eを用いて半導体基板をエッチングしても、半導体基板のエッチングはほとんど進行しないことが分かった。
TMAH水溶液を用いたエッチングでは、エッチングの進行が遅く、エッチング時間を8分としても段差が除去されていない(図17参照)。このように、TMAH水溶液を用いて半導体基板をエッチングしても、基板周縁部の段差は除去されない、または、段差の除去に長時間を要することが分かった。
ここで、混合液A、混合液B、混合液C、混合液Dは、フッ酸、硝酸、酢酸からなる3元系の混合液であり、各要素の役割および反応は次の通りである。
硝酸はシリコンを酸化する。当該反応は、式(1)のように表される。
3Si+4HNO3 → 3SiO2+2H2O+4NO (1)
フッ酸は、酸化シリコンを溶解する。当該反応は、式(2)のように表される。
SiO2+6HF → 2H++〔SiF6〕2−+2H2O (2)
酢酸は混合液の安定化を行うと共に、急激なエッチングを抑制する。
このように、フッ酸、硝酸、酢酸からなる3元系の混合液は、式(1)に示すシリコンの酸化と、式(2)に示す酸化シリコンの溶解を繰り返すことにより、シリコンをエッチングする機能を有する。つまり、フッ酸、硝酸、酢酸からなる3元系の混合液において、フッ酸の量が多い場合には、式(1)に示す硝酸によるシリコンの酸化が律速となり、硝酸の量が多い場合には、式(2)に示すフッ酸による酸化シリコンの溶解が律速となる。
このことから、混合液Cでは、硝酸の量が少ないためにシリコンの酸化が律速となり、ウェットエッチングが進行しなかったと推測される。これは、過酸化水素がシリコンを酸化する混合液Eについても同様である。混合液Eでは過酸化水素の酸化力が小さいために、ウェットエッチングが進行しなかったと推測される。
また、混合液Dでは、フッ酸および硝酸の量が多いために、式(1)および式(2)の反応が急速に進行し、結果として、基板周縁部と基板中央部との選択比がとれず、基板全体で一様にウェットエッチングされたものと推測される。
また、混合液Bでは、フッ酸の量が少ないために酸化シリコンの溶解が律速となり、ウェットエッチングが進行しなかったと推測される。フッ酸の量が少なくなると、結晶欠陥や微小ボイドに起因する損傷半導体領域内部からのエッチングが起こりにくく、損傷半導体領域表面からのエッチングが優先的に進行するためである。
一方で、混合液Aでは、フッ酸、硝酸、酢酸のバランスが良いため、式(1)または式(2)のいずれかの反応が律速となることがない。また、酢酸によるエッチング抑制の効果が得られるため、基板全体が一様にエッチングされることもない。
このように、混合液A(フッ酸、硝酸、酢酸の体積比が1:3:10の混合液)を用いて基板周縁部の段差をエッチングすることによって、基板周縁部と基板中央部の選択比をとりながら、基板周縁部に存在する凸部を短時間で除去することができる。このため、半導体基板の再生処理を確実に、かつ、効率的に行うことが可能である。
本実施例では、再生処理として、フッ酸と硝酸と酢酸の混合液を用いたウェットエッチング処理とCMP処理とを組み合わせて用いた場合と、前述のウェットエッチング処理を用いず、主にCMP処理を用いた場合について、比較した結果を示す。CMP処理としては、研磨レートの高い処理の後に、研磨レートの低い処理(仕上げ研磨)を用いた。なお、上述のウェットエッチング処理を用いない場合においては、ウェットエッチング処理を用いる場合と同等の再生処理を実現するために、CMP処理の時間を長時間にした。
再生処理の対象となる半導体基板は、先の実施例と同様にして作製された。詳細については先の実施例を参酌できる。
上述のウェットエッチング処理と研磨時間の短いCMP処理を用いた再生半導体基板(以下、基板A)は、以下のように作製される。
まず、半導体基板を覆うように形成されている絶縁層を除去するために、半導体基板にフッ酸とフッ化アンモニウムと界面活性剤を含む混合液(ステラケミファ社製、商品名:LAL500)を用いたウェットエッチング処理を施した。このとき、液温は室温、エッチング時間は300秒とした。
次に、絶縁層を除去した半導体基板に対して、フッ酸と硝酸と酢酸とを1:3:10の体積比で混合した混合液(先の実施例における、混合液Aに相当)を用いたウェットエッチング処理を施した。このとき、液温は室温、エッチング時間は120秒とした。なお、上記混合液の作製において、フッ酸は濃度が50重量%のもの(ステラケミファ社製)、硝酸は濃度が70重量%のもの(和光純薬株式会社製)、酢酸は、濃度が97.7重量%のもの(キシダ化学株式会社製)を用いた。
次に、半導体基板に高い研磨レートのCMP処理を行った。当該CMP処理では、ポリウレタン地の研磨布、および、シリカ系スラリー液(ニッタ・ハース株式会社製ILD1300、粒径150nm、20倍希釈)を用いた。また、スラリー流量を200ml/min、研磨圧を0.02MPa、スピンドル回転数を30rpm、テーブル回転数を30rpm、処理時間を3分とした。
その後、半導体基板に低い研磨レートのCMP処理を行った。当該CMP処理では、スウェード地の研磨布(ニッタ・ハース株式会社製supreme)および、シリカ系スラリー液(ニッタ・ハース株式会社製NP8020、粒径60nm、20倍希釈)を用いた。また、スラリー流量を200ml/min、研磨圧を0.01MPa、スピンドル回転数を30rpm、テーブル回転数を30rpm、処理時間を3分とした。
一方で、上述のウェットエッチング処理を用いない再生半導体基板(以下、基板B)は、以下のように作製される。
まず、半導体基板を覆うように形成されている絶縁層を除去するために、半導体基板にフッ酸とフッ化アンモニウムと界面活性剤を含む混合液(ステラケミファ社製、商品名:LAL500)を用いたウェットエッチング処理を施した。このとき、液温は室温、エッチング時間は300秒とした。
次に、半導体基板に高い研磨レートのCMP処理を行った。当該CMP処理では、ポリウレタン地の研磨布、および、シリカ系スラリー液(ニッタ・ハース株式会社製ILD1300、粒径150nm、20倍希釈)を用いた。また、スラリー流量を200ml/min、研磨圧を0.02MPa、スピンドル回転数を30rpm、テーブル回転数を30rpm、処理時間を12分とした。
その後、半導体基板に低い研磨レートのCMP処理を行った。当該CMP処理では、スウェード地の研磨布(ニッタ・ハース株式会社製supreme)および、シリカ系スラリー液(ニッタ・ハース株式会社製NP8020、粒径60nm、20倍希釈)を用いた。また、スラリー流量を200ml/min、研磨圧を0.01MPa、スピンドル回転数を30rpm、テーブル回転数を30rpm、処理時間を10分とした。
上述の方法により作製された2種類の再生半導体基板につき、光学顕微鏡による観察と、段差測定装置による段差測定(小坂研究所株式会社製サーフコーダーを使用)と、走査型プローブ顕微鏡による平坦性の評価(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製SPA−500およびエスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製SPI3800Nを使用)と、再生処理における半導体基板の厚さの減少量の測定(ラップマスターSFT株式会社製Sorter1000を使用)を行った。
図19(A)および図19(B)に、再生処理前の半導体基板周縁部、および、上述のウェットエッチング処理後の半導体基板周縁部の光学顕微鏡写真(倍率50倍のノマルスキー像)を示す。また、同様に、段差測定の結果を図20(A)および図20(B)示す。
図19(A)に示すように、再生処理を行う前の半導体基板は、周縁部に段差が存在しており、周縁部には絶縁層が、中央部にはシリコンが観察される。図20(A)からも、再生処理の前には、半導体基板の周縁部には0.2μm程度の段差が存在していることが分かる。
一方で、図19(B)に示す半導体基板では、周縁部に存在した段差(凸部)が消失し、全面においてシリコンが観察されている。なお、図19(B)の左側に縦に走る白い線は、基板の端を表している。図20(B)からも、段差が消失していることが確認できる。
次に、走査型プローブ顕微鏡を用いて2種の再生半導体基板の平坦性評価を行った結果を示す。走査型プローブ顕微鏡による測定条件は、走査速度を1.0Hz、測定面積を1μm×1μm、測定点数を2点とした。また、当該測定には、ダイナミックフォースモード(DFM:dynamic force mode)を用いた。ここで、ダイナミックフォースモードとは、カンチレバーを共振させた状態で、レバーの振動振幅が一定になるように探針と試料との間の距離を制御しながら、表面形状を測定する方法である。
再生半導体基板の平坦性は、平均面粗さ(Ra)および最大高低差(P−V)によって評価した。ここで、平均面粗さ(Ra)とは、JISB0601:2001(ISO4287:1997)で定義されている中心線平均粗さを、測定面に対して適用できるよう三次元に拡張したものであり、基準面から指定面までの偏差の絶対値を平均した値で表現される。また、最大高低差(P−V)は、指定面において、最も高い山頂の標高と最も低い谷底の標高の差で表現される。山頂と谷底は、JISB601:2001(ISO4287:1997)で定義されている「山頂」「谷底」を三次元に拡張したものであり、山頂とは指定面の山において最も標高の高い点を、谷底とは指定面において最も標高の低い点をいう。
走査型プローブ顕微鏡による再生半導体基板の平坦性の評価結果を表3に示す。
基板A、基板B、いずれに関しても中央部と周縁部の段差はなくなっており、中央部と周縁部の平坦性もほぼ同程度である。基板Aと基板Bとを比較すると、基板Aでは周縁部においてRaが0.05nm、P−Vが0.393nmであるのに対して、基板Bでは、周縁部においてRaが0.06nm、P−Vが0.47nmである。このことから、基板Aの方が、平坦性は良好であるといえる。
次に、再生処理における半導体基板の厚さの減少量を測定した結果について示す。ここでは、再生処理工程の前後における厚みの変化から、基板中央部の減少量(半導体の除去量)を測定した。基板Aおよび基板Bの作製における減少量(除去量)を表4に示す。
基板Aの作製において、減少量は1.38μmであった。一方、基板Bの作製において、減少量は6.96μmであった。このことから、基板Aの作製における減少量は、基板Bの作製における減少量の約4分の1であることが分かる。特に、基板Aの作製におけるエッチングでの減少量は、わずか0.41μmであった。
以上より、上記エッチング処理とCMP処理を組み合わせた再生処理を行うことによって、再生半導体基板の平坦性を同等に保ちつつ、再生処理における半導体基板の減少を抑制することができる。
本実施例では、半導体基板に熱酸化膜を形成した後、水素イオンビームを照射して、該半導体基板の断面を観察した結果を示す。
本実施例では、半導体基板として5インチ角の矩形状単結晶シリコン基板を用いた。まず、半導体基板をHCl雰囲気下で熱酸化し、基板表面に100nmの厚さの熱酸化膜を形成した。熱酸化の条件は、950℃で4時間であり、熱酸化の雰囲気は、HClが酸素に対して3体積%の割合で含まれるものとした。
次に、熱酸化膜の表面からイオンドーピング装置を用いて半導体基板にイオンビームを照射した。本実施例では、水素ガスを励起してプラズマを生成し、質量分離せずにプラズマ中に含まれるイオンを加速し、加速されたイオンを半導体基板に打ち込むことで、半導体基板に脆化領域を形成した。イオンドーピングの条件は、加速電圧を50kV、ドーズを2.0×1016ions/cm2とした。これにより、熱酸化膜の表面から約250nmの深さに脆化領域が形成された。
図21(A)には、上述の処理を施した半導体基板の断面TEM像を示す。また、図21(B)には、該半導体基板に熱処理を施して、脆化領域で分離した後の断面TEM像を示す。
図21(A)および図21(B)から、単結晶基板表面付近には、多くの結晶欠陥が形成されていることが分かる。また、図21(B)から、半導体基板は、その表面から深さ139nmの位置で分離していることが分かる。
ここで、上述の分離後の半導体基板の周縁部には、ベース基板との貼り合わせがなされないことに起因して凸部が形成される。そして、凸部を構成する残存した半導体層(損傷半導体領域)は、分離された半導体層と同様に結晶欠陥や微小ボイドを有する。このため、先の実施例で示したようなフッ酸、硝酸、酢酸を含む混合液を用いてエッチングを行うことにより、分離後の半導体基板の周縁部に形成される凸部を選択的に除去することができる。
本実施例では、フッ酸と硝酸と酢酸とを1:3:10の体積比で混合した混合液(混合液A)と、フッ酸と硝酸と酢酸とを1:2:10の体積比で混合した混合液(以下、混合液A+)をエッチャントとして用いる場合の調査結果について示す。
なお、実施例で用いた半導体基板は、実施例1において用いたものと同様であるから、その詳細については省略する。
上述の半導体基板に対する処理は、次の通りである。
まず、半導体基板を覆うように形成されている絶縁層を除去するために、半導体基板にフッ酸とフッ化アンモニウムと界面活性剤を含む混合液(ステラケミファ社製、商品名:LAL500)を用いたウェットエッチング処理を施した。このとき、液温は室温、エッチング時間は300秒とした。
次に、絶縁層を除去した半導体基板に対して、フッ酸と硝酸と酢酸とを1:3:10の体積比で混合した混合液(混合液A)、または、フッ酸と硝酸と酢酸とを1:2:10の体積比で混合した混合液(混合液A+)をエッチャントとして用いてウェットエッチングを行った。混合液Aおよび混合液A+の作製においては、フッ酸は濃度が50重量%のもの(ステラケミファ社製)、硝酸は濃度が70重量%のもの(和光純薬株式会社製)、酢酸は、濃度が97.7重量%のもの(キシダ化学株式会社製)、を用いた。
図22(A)には、混合液A+を用いたウェットエッチング後の半導体基板周縁部の様子を観察した光学顕微鏡写真(倍率50倍のノマルスキー像)を示す。また、図22(B)には、倍率を500倍とした光学顕微鏡写真(ノマルスキー像)を示す。図22から分かる様に、混合液A+を用いたウェットエッチングの場合、混合液Aを用いたウェットエッチングにおいてエッチング残渣が生じうる条件であっても、残渣は確認されなかった。硝酸に対するフッ酸の割合を、1:3(フッ酸:硝酸)から僅かに高めることで、形成される酸化膜を素早く除去し、残渣の発生を抑制しているものと考察される。
このように、混合液A+(フッ酸、硝酸、酢酸の体積比が1:2:10の混合液)を用いて基板周縁部の段差をエッチングする場合には、混合液A(フッ酸、硝酸、酢酸の体積比が1:3:10の混合液)を用いる場合と比較して残渣の発生を抑制できることが分かった。これは、フッ酸、硝酸、酢酸の体積比が1.5:3:10の混合液を用いる場合においても同様である。一方で、1:1:10のように、1:3:10と比較して硝酸に対するフッ酸の割合を高めすぎた場合には、表面荒れ、段差の残存などが確認された。
本実施例により、硝酸に対するフッ酸の割合を、1:3(フッ酸:硝酸)から僅かに高めることで、半導体基板の再生処理をより確実に、より効率的に行うことが可能であることが理解される。