JP2011116073A - 記録装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】所望の印加電圧を出力させる指令値を素早く補正する。
【解決手段】アクチュエータユニットに印加電圧を出力する全ての電圧印加回路について、上限電圧及び下限電圧を出力させる指令値によって実際に出力された印加電圧が出力テーブルとして記憶されている。上限電圧及び下限電圧のそれぞれについて、最高及び最低の印加電圧を出力する電圧印加回路を代表電圧印加回路に決定する。上限電圧又は下限電圧の指令値によって代表電圧印加回路が出力する印加電圧を計測する。上限電圧及び下限電圧のそれぞれについて、代表電圧印加回路が出力した印加電圧と出力テーブルとから、代表電圧印加回路を除く他の電圧印加回路81が、上限電圧及び下限電圧の各指令値により出力する印加電圧を予測すると共に実測結果及び予測結果により出力テーブルを補正する。出力テーブルから所望の印加電圧を出力させる指令値を算出し補正する。
【選択図】図7

Description

本発明は、液滴を吐出することによって記録媒体に画像を記録する記録装置に関する。
インクジェットヘッドのノズルからインク滴を吐出させる吐出エネルギーを発生させるアクチュエータを正確に駆動するためには、アクチュエータに対して所望の電圧を印加する必要がある。しかしながら、制御側で所望の電圧をアクチュエータに印加しようとしても、周辺の温度や湿度、素子の特性の変化などにより、実際にアクチュエータに印加される電圧が変動することがある。この点、複数の補正マップを用いて、アクチュエータに所望の電圧が印加されるように電圧指令値を補正する技術が知られている(特許文献1参照)。
特開平2009−184291号公報
上述した技術によると、周辺の温度や湿度、素子の特性の変化を十分に補正マップに反映させることができないため、アクチュエータに所望の電圧を正確に印加することが難しい。一方、周辺の温度や湿度、素子の特性の変化を補正マップに反映させるためには、定期的にアクチュエータに実際に印加されている印加電圧を各電圧印加素子について計測する必要があり、電圧印加素子が多数設けられている場合には、印加電圧の計測と補正マップへの反映に長い時間を要する。
本発明の目的は、所望の印加電圧を出力させる指令値を素早く補正することができる記録装置を提供することにある。
本発明の記録装置は、画像を記録するための記録液滴を吐出する複数のノズル、及び、前記ノズルから前記記録液滴を吐出させる吐出エネルギーを記録液滴に付与する複数の吐出エネルギー付与手段を有する記録ヘッドと、前記吐出エネルギーを付与させるための電圧を一又は複数の吐出エネルギー付与手段のそれぞれに印加する複数の電圧印加回路と、前記電圧印加回路によって前記吐出エネルギー付与手段に印加された電圧である印加電圧を計測する計測手段と、前記電圧印加回路に設けられ、対応する前記一又は複数の吐出エネルギー付与手段に印加する電圧を設定するための印加電圧設定値が入力される印加電圧設定部と、前記計測手段の計測結果に基づいて、前記電圧印加回路が前記吐出エネルギー付与手段に所定電圧を印加するときの前記印加電圧設定値を算出する印加電圧設定値算出手段と、前記計測手段の計測結果である印加電圧、及び、前記印加電圧設定値算出手段によって算出された全ての前記電圧印加回路に係る前記印加電圧設定値を記憶する記憶手段と、前記複数の電圧印加回路の一部であると共に、前記記憶手段に記憶された前記印加電圧又は前記印加電圧設定値が互いに異なる複数の前記電圧印加回路を代表印加回路として決定し、決定した前記代表印加回路に係る前記印加電圧を前記計測手段に計測させると共に、当該計測結果である前記印加電圧及び前記印加電圧設定値記憶手段に記憶された前記代表印加回路以外の前記電圧印加回路に係る前記印加電圧に基づいて、前記記憶手段に記憶された前記印加電圧設定値を補正する補正手段とを備えている
本発明によると、補正手段が、代表印加回路に係る印加電圧のみを計測すると共に、代表印加回路以外の電圧印加回路に係る印加電圧設定値を、代表印加回路に係る計測結果から補間計算により算出して補正するため、印加電圧の実測回数を低減することができる。これにより、所望の印加電圧を出力させる印加電圧設定値を素早く補正することができる。
本発明においては、前記補正手段が、前記記憶手段に記憶された前記印加電圧又は前記印加電圧設定値のうち最大及び最小の前記印加電圧又は前記印加電圧設定値に対応する少なくとも2つの前記電圧印加回路を前記代表印加回路に含めることが好ましい。これによると、最大差を有する印加電圧同士から他の電圧印加回路の印加電圧を補間計算により算出して印加電圧設定値を補正するため、補間計算に係る誤差を小さくすることができる。
また、本発明においては、前記記録ヘッドが前記記録媒体の搬送方向に直交する方向に延在し、且つ、複数色にそれぞれ対応する複数の前記記録ヘッドが前記記録媒体の搬送方向に沿って配列され、前記補正手段が、前記記録ヘッドを単位として複数の前記電圧印加回路に係る前記印加電圧設定値を補正することが好ましい。これによると、1つの記録ヘッドにおける吐出エネルギー付与手段間で記録特性が変化するのを抑制することができる。このため、吐出エネルギー付与手段間に対応する記録領域において、すじ等が発生することを防止でき、記録画像の品質が低下するのを防止することができる。
さらに、本発明においては、前記記録ヘッドの温度を検知する温度検知手段をさらに備えており、前記記憶手段が、前記印加電圧設定値の補正時に前記温度検知手段により検知された温度をさらに記憶し、前記補正手段は、前記温度検知手段が検知した温度と前記記憶手段に記憶された温度との差が所定以上となったときに、前記印加電圧設定値の補正を行うことが好ましい。これによると、電圧印加回路の温度特性に対応して印加電圧設定値の補正を効率よく行うことができる。
加えて、本発明においては、前記補正手段が、各前記印加電圧設定値について前回の補正からの経過時間を算出するタイマを有しており、前記タイマが所定時間以上の前記経過時間を算出したときに、前記印加電圧設定値の補正を行うことが好ましい。これによると、補正期間の最大値を所定時間として決定することで、経時変化によって印加電圧が大きくずれるのを防止することができる。
さらに、本発明においては、前記補正手段が、前記代表印加回路について、前記計測手段に計測させた前記印加電圧の大小関係と、前記記憶手段に記憶された印加電圧の大小関係とが一致しないときに、全ての前記電圧印加回路に係る前記印加電圧設定値を前記印加電圧設定値算出手段に算出させることが好ましい。これによると、代表印加回路に関する指令値の大小関係に狂いが生じた場合は補間計算の前提条件が崩れていると判断し、実測された印加電圧に基づいて全ての印加電圧設定値を算出するため、印加電圧設定値が大きくずれるのを防止することができる。
本発明によると、補正手段が、代表印加回路に係る印加電圧のみを計測すると共に、代表印加回路以外の電圧印加回路に係る印加電圧設定値を、代表印加回路に係る計測結果から補間計算により算出して補正するため、印加電圧の実測回数を低減することができる。これにより、所望の印加電圧を出力させる印加電圧設定値を素早く補正することができる。
本発明の実施形態によるインクジェットプリンタの概略側面図である。 図1に示すインクジェットヘッドの上面図である。 図2に示す一点鎖線で囲まれた領域の拡大図である。 図3に示すインクジェットヘッドの部分拡大断面図である。 図1に示す制御装置の機能ブロック図である。 (a)図5に示すテーブル記憶部に記憶されている指令値テーブルを示す図である。(b)図5に示すテーブル記憶部に記憶されている出力テーブルを示す図である。(c)図5に示す指令値算出部が算出する指令値と印加電圧との関係を示したグラフである。(d)図6(b)の出力テーブルを正規化した正規化テーブルを示す図である。 図5に示す指令電圧補正部の動作を説明するための図である。 図1に示す制御装置による、補正処理の動作手順を示したフローチャートである。
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1に示すように、インクジェットプリンタ101は、搬送ユニット20と、搬送ユニット20によって搬送された用紙Pに、マゼンタ、シアン、イエロー、ブラックのインク滴をそれぞれ吐出する4つのインクジェットヘッド1と、ガイド31と、ニップローラ32、33と、分配機構34と、4つの乾燥ステージ41a〜41dと、排出機構43と、4つの排出トレイ55a〜55dと、制御装置16とを有している。なお、本実施形態において、副走査方向とは搬送ユニット20で用紙Pを搬送するときの搬送方向と平行な方向であり、主走査方向とは副走査方向に直交する方向であって水平面に沿った方向である。
搬送ユニット20は、2つのベルトローラ6、7と、両ローラ6、7間に架け渡されるように巻回されたエンドレスの搬送ベルト8と、搬送ベルト8のループ内において4つのインクジェットヘッド1と対向するように配置されたプラテン19とを有している。ベルトローラ6は、駆動ローラであって、図示しない搬送モータから駆動力が与えられることで回転する。ベルトローラ7は、従動ローラであって、ベルトローラ6の回転により搬送ベルト8が走行するのに伴って回転する。搬送ベルト8の外周面に載置された用紙Pは、図1右方へと搬送される。
4つのインクジェットヘッド1は、それぞれ主走査方向に沿って延在し、副走査方向には互いに平行に配置されている。すなわち、インクジェットプリンタ101は、主走査方向にインク滴が吐出される複数の吐出口が配列されたライン式のカラーインクジェットプリンタである。各インクジェットヘッド1の下面は、インク滴が吐出される複数の吐出口108が配列された吐出面となっている(図3参照)。
プラテン19は、搬送ベルト8の上側ループの内周面と接触するように配置されており、搬送ベルト8の内周側からこれを支持している。これにより、搬送ベルト8の上側ループの外周面とインクジェットヘッド1の吐出面とが対向しつつ平行になり、且つ、画像形成に適した所定間隔の隙間が形成されている。搬送ベルト8によって搬送されてきた用紙Pが4つのインクジェットヘッド1のすぐ下方を通過する際に、各インクジェットヘッド1から用紙Pの上面に向けて各色のインク滴が順に吐出され、用紙P上に所望のカラー画像が形成される。画像が形成された用紙Pは、搬送ユニット20によってさらに図1右方に搬送され、ガイド31に到達する。
ガイド31は、搬送ユニット20によって搬送されている画像が形成された用紙Pを、分配機構34に案内する。ニップローラ32、33は、ガイド31に案内されている用紙Pを挟持しつつ駆動することによって、当該用紙Pに搬送力を与えている。
分配機構34は、ガイド31によって案内された画像が形成された用紙Pを、4つの乾燥ステージ41a〜41dのいずれかに選択的に供給する。
乾燥ステージ41a〜41dは、画像が形成された用紙Pを乾燥させるため当該用紙Pを保持する。分配機構34によって分配された用紙Pは、供給先の乾燥ステージ41a〜41dに対応するニップローラ42a〜42dによって図1左方に搬送され、乾燥ステージ41a〜41dに到達する。乾燥ステージ41a〜41dは、用紙Pが載置される保持領域を有している。用紙Pはこの保持領域に静電吸着によって印刷面を下側の開放空間に向けて保持される。これにより、用紙Pが乾燥するときに湾曲するのを防止する。インクジェットプリンタ101内においては、乾燥ステージ41a〜41dの保持領域上を空気が流動して、保持領域上に保持された用紙Pの乾燥が促進されるように、各機構部が配置されている。また、場合によっては乾燥用のヒータ等が設置される。
排出機構43は、乾燥ステージ41a〜41dに対応する4つのニップローラ43a〜43d及び選択機構45を有している。排出機構43は、乾燥ステージ41a〜41dと、用紙Pを排出トレイ55a〜55dにそれぞれ案内するガイド51a〜51dのいずれかとが接続されるように選択機構45を動作させつつ、ニップローラ43a〜43d、及び排出トレイ55a〜55dの上流に設けられたニップローラ52a〜52dを選択的に駆動することによって、乾燥ステージ41a〜41dのいずれかに保持された用紙Pを、排出トレイ55a〜55dのいずれかに排出する。
4つの排出トレイ55a〜55dは、乾燥ステージ41a〜41dの図1左方において、図1上下方向に配列されている。
図2〜図4を参照しつつ、インクジェットヘッド1について詳細に説明する。図3では説明の都合上、アクチュエータユニット21の下方にあって破線で描くべき圧力室110、アパーチャ112及び吐出口108を実線で描いている。
インクジェットヘッド1は、図2に示すように、流路ユニット9の上面に台形の平面形状を有する8つのアクチュエータユニット21(UNIT1〜UNIT8)が固定された積層体である。流路ユニット9は、ステンレス鋼からなる複数の金属製のプレートを互いに位置合わせした積層体である。図3に示すように、流路ユニット9内には、図示しないインクタンクからインクが供給されるマニホールド流路105から副マニホールド流路105a、そして副マニホールド流路105aの出口から圧力室110を経て吐出口108に至る多数の個別インク流路が形成されている。なお、吐出口108は、インク吐出面2aにおいて、主走査方向に関して主走査方向解像度である600dpiの間隔で配列されている。図示しないインクタンクから供給されたインクは、マニホールド流路105から副マニホールド流路105aに分配される。副マニホールド流路105a内のインクは、各個別インク流路に流れ込み、圧力室110を介して吐出口108に至る。
本実施形態では、流路ユニット9の長手方向に等間隔に並ぶ圧力室110の列が、幅方向に互いに平行に16列配列されている。各圧力室列に含まれる圧力室110の数は、後述のアクチュエータユニット21の外形形状(台形形状)に対応して、その長辺側(下底側)から短辺側(上底側)に向かって次第に少なくなるように配置されている。吐出口108も、これに対応した配置がされている。
次に、アクチュエータユニット21について説明する。アクチュエータユニット21は、各圧力室110に対応した複数のアクチュエータを含んでおり、圧力室110内のインクに選択的に吐出エネルギーを付与する機能を有する。図4に示すように、アクチュエータユニット21は、強誘電性を有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系のセラミックス材料からなる3枚の圧電シート141〜143から構成されている。また、最上層の圧電シート141の上面における圧力室110に対向する位置には、個別電極135が形成されている。最上層の圧電シート141とその下側の圧電シート142との間にはシート全面に形成された共通電極134が介在している。
共通電極134は、すべての圧力室110に対応する領域において等しくグランド電位が付与されている。個別電極135に接続されたランド部136に、制御装置16からの駆動電圧が選択的に供給されることによって、当該個別電極135と共通電極134との間に電圧が印加される。
アクチュエータユニット21は、個別電極135と圧力室110とで挟まれた部分が、個別のアクチュエータとして働く。圧力室110から離れた圧電シート141が活性部を含む層とし、圧力室110に近い2枚の圧電シート142、143が自発的に変形しない非活性層である。アクチュエータユニット21は、いわゆるユニモフルタイプのアクチュエータである。アクチュエータユニット21には、個別のアクチュエータが、少なくとも圧力室110の数だけ作り込まれている。
ここで、アクチュエータユニット21の駆動方法について述べる。圧電シート141はその厚み方向に分極されている。個別電極135を共通電極134と異なる駆動電位にして圧電シート141に対してその分極方向に電界を印加すると、圧電シート141における電界印加部分が活性部として働き、圧電効果により歪む。分極方向と電界の印加方向とが同じであれば、活性部は分極方向に直交する方向(平面方向)に縮む。このとき、圧電シート142、143には、電界による自発的歪みが生じない。これにより、圧電シート141の電界印加部分と圧電シート142、143との間で平面方向への歪みに差が生じる。圧電シート141〜143は圧力室110を区画するプレートの上面に固定されているため、圧電シート141〜143全体が圧力室110側へ凸になるように変形(ユニモルフ変形)し、圧力室110内のインクに圧力(吐出エネルギー)が付与され、吐出口108からインク滴が吐出される。
次に、図5を参照しつつ、制御装置16について詳細に説明する。制御装置16は、CPU(Central Processing Unit)と、CPUが実行するプログラム及びこれらプログラムに使用されるデータを書き替え可能に記憶するEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)と、プログラム実行時にデータを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)とを含んでいる。制御装置16を構成する各機能部は、これらハードウェアとEEPROM内のソフトウェアとが協働して構築されている。図5に示すように、制御装置16は、ヘッド制御部72と、印加電圧計測部74と、指令値算出部73と、指令値補正部75と、搬送制御部76とを有している。
ヘッド制御部72は、インクジェットヘッド1からのインク滴の吐出を制御する。ヘッド制御部72は、32個の電圧印加回路81と、テーブル記憶部83と、電圧指令出力部82とを有している。電圧印加回路81は、各インクジェットヘッド1の8つのアクチュエータユニット21(UNIT1〜UNIT8)にそれぞれに対応しており、対応するアクチュエータユニット21に印加電圧を出力する。なお、図5においては、1つのインクジェットヘッド1についてのみ描かれているが、他の3つのインクジェットヘッド1についても同様である。印加電圧は、アクチュエータユニット21の共通電極134と個別電極135との間に印加される電圧であり、グランド電位を0Vとしたときの駆動電圧に対応している。また、電圧印加回路81は、電圧指令出力部82からの指令値によって、出力する印加電圧を変化させる。電圧印加回路81は、周辺雰囲気の温度や湿度、又は、電圧印加回路81を構成する素子の特性により、同一の指令値に基づいて出力する印加電圧の値が変動する。このため、後述するように、各電圧印加回路81の特性に応じた指令値が決定されている。なお、指令値は電圧印加回路81の電圧設定部に入力する印加電圧設定値に対応している。
テーブル記憶部83は、インクジェットヘッド1毎に、指令値テーブル、出力テーブル、及び、正規化テーブルを記憶している。指令値テーブルは、各インクジェットヘッド1に対応する各電圧印加回路81について、所望の印加電圧(例えば、20V)を出力させる指令値を示している(図6(a)参照)。出力テーブルは、各インクジェットヘッド1に対応する各電圧印加回路81について、上限電圧である23V及び下限電圧である12Vを出力させる指令値のそれぞれに基づいて実際に出力された印加電圧を示している(図6(b)参照)。正規化テーブルは、出力テーブルに係る印加電圧の値を、上限電圧及び下限電圧のそれぞれについて最大値を1、最小値を0で正規化した値を示している(図6(d)参照)。
電圧指令出力部82は、テーブル記憶部83に記憶された指令値テーブルに基づいて、所望の印加電圧を出力させる指令値を電圧印加回路81に出力する。
印加電圧計測部74は、電圧印加回路81がアクチュエータユニット21に実際に出力している印加電圧を計測する。なお、印加電圧計測部74は、印加電圧を6回実測した平均値を計測値として出力する。
指令値算出部73は、インクジェットプリンタ101の初回起動時、及び、後述する補正処理において指令値の補正異常があったときに、全ての電圧印加回路81が出力する印加電圧を印加電圧計測部74に計測させることによって、テーブル記憶部83に記憶された指令値テーブルを構築するテーブル構築処理を行う。テーブル構築処理が開始されると、指令値算出部73は、図6(b)に示すように、全ての電圧印加回路81について、上限電圧である23V及び下限電圧である12Vを出力させる指令値に基づいて、アクチュエータユニット21(UNIT1〜UNIT8×4)に実際に出力した印加電圧を、印加電圧計測部74によってそれぞれ計測させる。指令値算出部73は、計測結果から出力テーブルを構築してテーブル記憶部83に記憶させる。
次に、指令値算出部73は、構築した出力テーブルから指令値テーブルを構築する。図6(c)に示すように、指令値をy、実際の印加電圧をxとしたとき、y=ax+bと仮定する。指令値算出部73は、各電圧印加回路81について、出力テーブルに係る上限電圧(23V)の指令値及び当該指令値に基づいて出力した印加電圧と、下限電圧(12V)の指令値及び当該指令値に基づいて出力した印加電圧とから、上記パラメータa、bを算出し、上式を用いて所望の印加電圧を出力するときの指令値を算出する。指令値算出部73は、算出結果から指令値テーブルを構築してテーブル記憶部83に記憶させる。
さらに、指令値算出部73は、図6(d)に示すように、出力テーブルに係る印加電圧の値を、上限電圧及び下限電圧のそれぞれについて、最大値を1、最小値を0に正規化した正規化テーブルを構築してテーブル記憶部83に記憶させる。なお、図6(d)においては、UNIT1〜UNIT7に出力された印加電圧を正規化した例が示されている。この正規化された値は、各電圧印加回路81の印加電圧出力特性に関する相対的な個体差を示している。以上で、テーブル構築処理が完了する。
指令値補正部75は、インクジェットヘッド1単位で、テーブル記憶部83に記憶された指令テーブルに関する補正処理を行う。この補正処理は、インクジェットプリンタ101の起動時、図示しない温度センサが検知したインクジェットヘッド1の温度と前回の補正処理を行ったときの温度(補正時温度:後述)との差が所定以上となったとき、及び、前回の補正処理から所定時間が経過したときに行われる。
補正処理について、図7を参照しつつ説明する。補正処理が開始されると、指令値補正部75は、図7(a)に示すように、テーブル記憶部83に記憶された出力テーブルから(図6(b)参照)、上限電圧及び下限電圧のそれぞれについて、最高及び最低の印加電圧を出力する電圧印加回路81を代表電圧印加回路に決定する。図7(a)の例においては、上限電圧において最高の印加電圧が出力されたアクチュエータユニット21がUNIT5であり、最低の印加電圧が出力されたアクチュエータユニット21がUNIT6である。したがって、上限電圧については、UNIT5及びUNIT6に対応する電圧印加回路81を代表電圧印加回路に決定する。また、下限電圧において最高の印加電圧が出力されたアクチュエータユニット21がUNIT5であり、最低の印加電圧が出力されたアクチュエータユニット21がUNIT4である。したがって、下限電圧については、UNIT4及びUNIT5に対応する電圧印加回路81を代表電圧印加回路に決定する(図7(a)中斜線部)。
次に、指令値補正部75は、決定した上限電圧に係る2つの代表電圧印加回路が、上限電圧の指令値に基づいて出力する印加電圧を印加電圧計測部74によって計測すると共に、決定した下限電圧に係る2つの代表電圧印加回路が、下限電圧の指令値に基づいて印加電圧を印加電圧計測部74によって計測する。
そして、指令値補正部75は、上限電圧及び下限電圧のそれぞれについて、代表電圧印加回路が出力した印加電圧と、先に指令値算出部73が構築した正規化テーブルとから、代表電圧印加回路を除く他の電圧印加回路81が、上限電圧及び下限電圧の各指令値に基づいて出力する印加電圧を予測する。例えば、図7(b)の例によると、指令値補正部75は、上限電圧について、最高の印加電圧に係る代表電圧印加回路が出力した印加電圧の計測値が23.3V(正規化値10)、最低の印加電圧に係る代表電圧印加回路が出力した印加電圧の計測値が22.1V(正規化値0)であるため、正規化値が0.25の電圧印加回路81(UNIT1に対応)は、上限電圧の指令値に対して、22.1+(23.3−22.1)×0.25=22.4Vの印加電圧を出力することが予測される。指令値補正部75は、代表電圧印加回路以外の全ての電圧印加回路81について、上限電圧及び下限電圧の指令値に基づいて出力する印加電圧を予測し、その予測結果から出力テーブルを補正する。その後、出力テーブル及び正規化テーブルから上述の式を用いて各指令値を算出し、算出結果から指令値テーブルを補正する。さらに、指令値補正部75は、補正処理を行った時刻を補正時刻としてテーブル記憶部83に記憶させると共に、現在のインクジェットヘッドの温度を、補正時温度としてテーブル記憶部83に記憶させる。以上で補正処理が完了する。
なお、指令値算出部73は、指令値テーブルを補正するときに、代表電圧印加回路について、指令値算出部73が新たに算出した指令値同士の大小関係と、テーブル記憶部83に先に記憶された指令値テーブルに係る指令値同士の大小関係とが一致しなければ、補正異常があったと判断し、補正処理を中断する。補正異常により補正処理が中断されると、指令値算出部73が補正対象としたインクジェットヘッド1に関する全ての電圧印加回路について印加電圧計測することにより、上述のテーブル構築処理を行う。なお、補正異常の判断は、代表電圧印加回路について、印加電圧計測部74が計測した印加電圧同士の大小関係と、テーブル記憶部83に先に記憶された出力テーブルに係る印加電圧同士の大小関係とを比較して判断してもよい。
また、指令値補正部75は、補正時刻からの経過時間を算出する図示しない内部タイマを有している。指令値補正部75は、内部タイマがテーブル記憶部83に記憶された補正時刻から所定時間が経過する毎に、上述の補正処理を行う。さらに、指令値補正部75は、図示しない温度センサが検知したインクジェットヘッド1の温度とテーブル記憶部83に記憶された補正時温度との差が所定以上となったとき、上述の補正処理を行う。
搬送制御部76は、用紙Pが搬送経路に沿って搬送されるように、搬送ユニット20、分配機構34及び排出機構43を制御する。
次に、図8を参照しつつ、印加電圧の補正処理について説明する。図8に示すように、補正処理が開始されると、指令値補正部75が、テーブル記憶部83に記憶された出力テーブルから、上限電圧に係る最高及び最低の印加電圧を出力する電圧印加回路81を代表電圧印加回路に決定し、決定した上限電圧に係る2つの代表電圧印加回路に、上限電圧の指令値に基づく印加電圧を出力させる(ステップS101:以下、単にS101と称す。他のステップも同様)。指令値補正部75は、代表電圧印加回路が出力する印加電圧を印加電圧計測部74によって計測させる(S102)。次に、指令値補正部75が、出力テーブルから、下限電圧に係る最高及び最低の印加電圧を出力する電圧印加回路81を代表電圧印加回路に決定し、決定した下限電圧に係る2つの代表電圧印加回路に、下限電圧の指令値に基づく印加電圧を出力させる(S103)。指令値補正部75は、代表電圧印加回路が出力する印加電圧を印加電圧計測部74に計測させる(S104)。
指令値補正部75は、上限電圧及び下限電圧のそれぞれについて、印加電圧計測部74によって計測された、各代表電圧印加回路が出力した印加電圧と、テーブル記憶部83に記憶された正規化テーブルとから、代表電圧印加回路以外の電圧印加回路81が出力する印加電圧を補間計算により予測する(S105)。指令値補正部75は、その予測結果から出力テーブルを補正する。さらに、指令値補正部75は、補正した出力テーブルから新たに正規化テーブルを構築し、出力テーブル及び正規化テーブルから上述の式を用いて各指令値を算出し、算出結果から指令値テーブルを補正する(S106)。以上で、補正処理が完了する。
以上のように、本実施形態のインクジェットプリンタ101によると、指令値補正部75が、補正処理において、代表電圧印加回路が出力する印加電圧のみを計測し、代表電圧印加回路以外の電圧印加回路81が出力する印加電圧を、代表印加回路に係る計測結果と正規化テーブルとから補間計算により予測し、その予測結果から出力テーブルを補正する。さらに、指令値補正部75は、補正した出力テーブルから新たに正規化テーブルを構築し、出力テーブル及び正規化テーブルから上述の式を用いて各指令値を算出し、算出結果から指令値テーブルを補正するため、電圧印加回路81が出力する印加電圧の実測回数を低減することができる。これにより、所望の印加電圧を出力させる指令値を素早く補正することができる。
また、指令値補正部75が、補正処理において、上限電圧及び下限電圧のそれぞれについて、最高及び最低の印加電圧を出力する電圧印加回路81を代表電圧印加回路に決定するため、上限電圧及び下限電圧のそれぞれについて、電圧印加回路81が出力する印加電圧を補間計算によって予測するときに、補間計算に係る誤差を小さくすることができる。
さらに、指令値補正部75が、インクジェットヘッド1単位で補正処理を行うため、1つのインクジェットヘッド1に係る8つのアクチュエータユニット21間でインク滴の吐出特性が変化するのを抑制することができる。これにより、アクチュエータユニット21間に対応する記録領域において、すじ等が発生することを防止でき、印刷品質が低下するのを抑制することができる。
加えて、指令値補正部75は、インクジェットヘッド1の温度とテーブル記憶部83に記憶された補正時温度との差が所定以上となったとき補正処理を行うため、電圧印加回路81の温度特性に対応した指令値の補正を効率よく行うことができる。
また、指令値補正部75は、テーブル記憶部83に記憶された補正時刻から所定時間が経過する毎に補正処理を行うため、経時変化によって印加電圧が大きくずれるのを防止することができる。
また、指令値算出部73が、代表電圧印加回路について、指令値算出部73が新たに算出した指令値同士の大小関係と、テーブル記憶部83に先に記憶された指令値同士の大小関係とが一致しなければ、補正異常があったと判断し、テーブル構築処理を行うため、補間計算の前提条件が崩れた状態で補正処理に係る補間計算を行うことが防止され、指令値が大きくずれるのを防止することができる。
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。上述の実施形態では、指令値補正部75が、補正処理において、上限電圧及び下限電圧のそれぞれについて、最高及び最低の印加電圧を出力する電圧印加回路81を代表電圧印加回路に決定する構成であるが、互いに異なる印加電圧を出力する電圧印加回路81であれば、最高及び最低の印加電圧を出力する電圧印加回路81以外の電圧印加回路81を代表電圧印加回路に決定してもよい。また、上限電圧及び下限電圧のそれぞれについて、3以上の電圧印加回路81を代表電圧印加回路に決定する構成であってもよい。
また、上述の実施形態では、指令値補正部75が、インクジェットヘッド1単位で補正処理を行う構成であるが、2以上のインクジェットヘッド1単位で補正処理を行ってもよい。
加えて、上述の実施形態では、指令値補正部75が、インクジェットヘッド1の温度とテーブル記憶部83に記憶された補正時温度との差が所定以上となったとき補正処理を行う構成であるが、インクジェットヘッド1の温度と補正時温度との差が所定以上となったとき補正処理を行わない構成であってもよい。
また、上述の実施形態では、指令値補正部75が、所定時間が経過する毎に補正処理を行う構成であるが、補正処理を行うタイミングは任意のものであってよい。
さらに、上述の実施形態では、指令値算出部73が、代表電圧印加回路について、指令値算出部73が新たに算出した指令値同士の大小関係と、テーブル記憶部83に先に記憶された指令値同士の大小関係とが一致しなければ、補正異常があったと判断する構成であるが、代表電圧印加回路について、印加電圧計測部74が新たに計測した印加電圧の大小関係と、テーブル記憶部83に先に記憶された印加電圧同士の大小関係とが一致しなければ、補正異常があったと判断する構成であってもよい。また、補正異常を判断しない構成であってもよい。
上述の実施形態では、電圧印加回路81がユニモルフタイプのアクチュエータユニット21に印加電圧を出力する構成であるが、電圧印加回路81が印加電圧を出力するアクチュエータユニットは、バイモルフタイプのアクチュエータであってもよいし、サーマル式等、他の方式で吐出エネルギー付与するアクチュエータであってもよい。
本発明は、インク以外の液体を吐出する記録装置にも適用可能である。さらに、プリンタに限定されず、ファクシミリやコピー機などにも適用可能である。
1 インクジェットヘッド
16 制御装置
21 アクチュエータユニット
72 ヘッド制御部
73 指令値算出部
74 印加電圧計測部
75 指令値補正部
81 電圧印加回路
82 電圧指令出力部
83 テーブル記憶部
101 インクジェットプリンタ
108 吐出口

Claims (6)

  1. 画像を記録するための記録液滴を吐出する複数のノズル、及び、前記ノズルから前記記録液滴を吐出させる吐出エネルギーを記録液滴に付与する複数の吐出エネルギー付与手段を有する記録ヘッドと、
    前記吐出エネルギーを付与させるための電圧を一又は複数の吐出エネルギー付与手段のそれぞれに印加する複数の電圧印加回路と、
    前記電圧印加回路によって前記吐出エネルギー付与手段に印加された電圧である印加電圧を計測する計測手段と、
    前記電圧印加回路に設けられ、対応する前記一又は複数の吐出エネルギー付与手段に印加する電圧を設定するための印加電圧設定値が入力される印加電圧設定部と、
    前記計測手段の計測結果に基づいて、前記電圧印加回路が前記吐出エネルギー付与手段に所定電圧を印加するときの前記印加電圧設定値を算出する印加電圧設定値算出手段と、
    前記計測手段の計測結果である印加電圧、及び、前記印加電圧設定値算出手段によって算出された全ての前記電圧印加回路に係る前記印加電圧設定値を記憶する記憶手段と、
    前記複数の電圧印加回路の一部であると共に、前記記憶手段に記憶された前記印加電圧又は前記印加電圧設定値が互いに異なる複数の前記電圧印加回路を代表印加回路として決定し、決定した前記代表印加回路に係る前記印加電圧を前記計測手段に計測させると共に、当該計測結果である前記印加電圧及び前記印加電圧設定値記憶手段に記憶された前記代表印加回路以外の前記電圧印加回路に係る前記印加電圧に基づいて、前記記憶手段に記憶された前記印加電圧設定値を補正する補正手段とを備えていることを特徴とする記録装置。
  2. 前記補正手段が、前記記憶手段に記憶された前記印加電圧又は前記印加電圧設定値のうち最大及び最小の前記印加電圧又は前記印加電圧設定値に対応する少なくとも2つの前記電圧印加回路を、前記代表印加回路に含めることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
  3. 前記記録ヘッドが前記記録媒体の搬送方向に直交する方向に延在し、且つ、複数色にそれぞれ対応する複数の前記記録ヘッドが前記記録媒体の搬送方向に沿って配列され、
    前記補正手段が、前記記録ヘッドを単位として複数の前記電圧印加回路に係る前記印加電圧設定値を補正することを特徴とする請求項1又は2に記載の記録装置。
  4. 前記記録ヘッドの温度を検知する温度検知手段をさらに備えており、
    前記記憶手段が、前記印加電圧設定値の補正時に前記温度検知手段により検知された温度をさらに記憶し、
    前記補正手段は、前記温度検知手段が検知した温度と前記記憶手段に記憶された温度との差が所定以上となったときに、前記印加電圧設定値の補正を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の記録装置。
  5. 前記補正手段が、各前記印加電圧設定値について前回の補正からの経過時間を算出するタイマを有しており、
    前記タイマが所定時間以上の前記経過時間を算出したときに、前記印加電圧設定値の補正を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の記録装置。
  6. 前記補正手段は、前記代表印加回路について、前記計測手段に計測させた前記印加電圧の大小関係と、前記記憶手段に記憶された印加電圧の大小関係とが一致しないときに、全ての前記電圧印加回路に係る前記印加電圧設定値を前記印加電圧設定値算出手段に算出させることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の記録装置。
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