JP2011115886A - 線材のブラスト加工方法及び線材用ブラスト加工装置 - Google Patents

線材のブラスト加工方法及び線材用ブラスト加工装置 Download PDF

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Abstract

【課題】線材に対し大きな張力をかけることなくエア式のブラスト加工を行う。
【解決手段】研磨材を圧縮気体と共に固気二相流体として噴射するブラストガン30の前方における所定の位置に,肉厚を貫通し前記圧縮気体の通過を許容する開孔43が形成された保持板41を,前記ブラストガン30の軸線方向と所定の角度で交わるよう配置し,前記保持板41の前記ブラストガン30側の表面42に加工対象とする線材20を接触させた状態で所定の移動方向に移動させながら,前記保持板41の前記表面42に対して前記固気二相流体を噴射して前記線材20を加工する。
【選択図】図5

Description

本発明は線材のブラスト加工方法及び線材用ブラスト加工装置に関し,より詳細には,張力をかけた状態で加工することが困難な線材の加工に適したブラスト加工方法及びブラスト加工装置に関する。
なお,本発明における研磨材には,研磨や切削を目的とした砥粒,その他の研磨材の他,ワークに対する残留応力の付与等を目的として噴射される鋼球,ガラス・プラスチック・セラミックビーズ等の所謂「ショット」,クリーニング,その他の目的で噴射される種子殻や穀粉等,各種の粉体乃至は粒体を広く含む。
投射した砥粒をワークに衝突させてワークの切削やクリーニングを行い,又は,鋼球等のショットをワークに衝突させてワークに残留応力の付与等を行う等,各種の粉体や粒体から成る前述の研磨材をワークに対して投射し,衝突時のエネルギーによりワークの表面加工を行うブラスト加工が各種の分野において利用されている。
このようなブラスト加工は線材の加工に対しても用いられており,例えば直径が3mm以上の比較的線径の太い線材にあっては,前述したブラスト加工によって表面のスケール除去,表面の粗さ調整等が行われている。
ここで,前述したブラスト加工によって線材を加工する場合,張力が加えられていない線材に対して研磨材の投射を行うと,線材に対する研磨材の衝突,前記研磨材の投射に圧縮気体を使用する場合にはこの圧縮気体と線材との衝突によって,加工対象である線材が大きく撓み,揺れる等して激しく動く(暴れる)ために,線材に対して安定した加工状態でブラスト加工を行うことが困難となる。
そのため,線材に対してブラスト加工を行う場合には,処理対象とする線材に一定の張力を掛けてこれを保持することで,前述した研磨材との衝突や,研磨材の搬送流たる圧縮気体との衝突等,研磨材の投射エネルギーによって生じる撓みや揺れ等によって激しく暴れることが抑制されている。
なお,このような線材に対して回転するインペラによって投射したショットを衝突させて行う加工において,線材に張力をかけるだけでなく,張力のかけられた張架状態の線材の張架方向に所定の間隔をおいて配置した複数の揺れ止め装置を設け,この揺れ止め装置に3個以上設けた球状支持部材間で線材を挟持してショットの投射による線材の揺れを小さく抑えることも提案されている(特許文献1の請求項1参照)。
特開2008−49414号公報
以上で説明したように,線材に対してブラスト加工を行おうとする場合,前述したように研磨材の投射エネルギーによって線材が暴れるという問題がある。
このような線材の暴れという問題は,遠心力による研磨材の投射や,特許文献1として紹介したように回転するインペラによって研磨材を投射するブラスト加工においても生じ得るものであるが,研磨材を圧縮気体と共に噴射するエア式のブラスト加工では,研磨材と線材との衝突に伴う線材の暴れが生じるのみならず,圧縮気体流との衝突によって生じる線材の暴れも加わるために,より一層,線材を安定した状態に保持し難いものとなる。
そのため,線材に対してブラスト加工を行う場合には,前述したように加工対象とする線材に張力を掛けた状態で加工を行うこととなる。
しかし,前述したように線径が3mm以上ある比較的太い線材に対しては,線材に対して比較的大きな張力を加えても断線等が生じ難く,前述した暴れの発生を好適に防止し得るものの,例えば線径が300μm以下の線材,特に引張加重1kgf以下で断線してしまう鉄,アルミニウム,銅,錫,インジウム及びこれらの合金から成る金属材料,ポリエチレン,PTFE等の合成樹脂製の線材等,引張強度の低い線材にあっては,前述したように研磨材の投射エネルギーによって撓みや揺れ等による暴れを好適に抑制し得る程度の張力を加えると断線してしまうことからブラスト加工を有効に行う方法が存在していなかった。
また,仮に,研磨材の投射エネルギーによる暴れの発生を有効に抑制し得る程度の張力を加えても断線しない引張強度を備えた線材を加工対象とする場合であっても,このような張力を加えることにより線材に伸び等の変形や加工硬化,その他の材料特性の変化が生じる場合もあり,このような材料特性の変化を嫌う線材に対し,加工の際に比較的大きな張力を加えることとなる前述したブラスト加工を行うことはできない。
そこで本発明は,上記従来技術における欠点を解消するために成されたものであり,線材に対し張力を加えることなく,又は,送りや巻き取りに必要な程度の比較的弱い張力しか加わっていない状態であっても,線材に対し安定した状態で圧縮気体と共に研磨材を噴射するエア式のブラスト加工を行うことができる線材のブラスト加工方法及び線材用ブラスト加工装置を提供することを目的とする。
以下に,課題を解決するための手段を,発明を実施するための形態で使用する符号と共に記載する。この符号は,特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態の記載との対応を明らかにするためのものであり,言うまでもなく,本願発明の特許請求の範囲の技術的範囲の解釈に制限的に用いられるものではない。
上記目的を達成するために,本発明の線材加工方法は,研磨材を圧縮気体と共に固気二相流体として噴射するブラストガン30の前方における所定の位置に,肉厚を貫通し前記圧縮気体の通過を許容する開孔43が形成された保持板41を,前記ブラストガン30の軸線方向(噴射方向)と所定の角度で交わるよう配置し,
前記保持板41の前記ブラストガン30側の表面42に加工対象とする線材20を接触させた状態で所定の移動方向に移動させながら,前記保持板41の前記表面42に対して前記固気二相流体を噴射して前記線材20を加工することを特徴とする(請求項1)。
上記構成の線材のブラスト加工方法において,前記保持板41の前記表面42に,前記線材20が嵌合する溝44を前記線材20の移動方向を長手方向として設けるものとすることができる(請求項2)。
更に,上記構成の線材のブラスト加工方法において,前記線材20を直径300μm以下の線材とし,前記線材20の移動方向への移動を,引張加重1kgf未満で行うこともできる(請求項3)。
前記方法に使用する保持板41に対する開孔43の形成は,前記保持板41の前記表面42のうち前記固気二層流体との衝突範囲X〔図4(A),(B)参照〕の面積と,前記開孔43のうち前記衝突範囲X内に存する部分Yの面積の総和との比である空間率が5〜100%となるよう行うことが好ましい(請求項4)。
前記保持板41表面42の前記線材20が横断する位置に前記開孔43を形成すると共に,少なくとも前記線材20の横断位置における前記開孔43の開口幅δを 2〜40mmに形成することが好ましい(請求項5)。
上記方法において,更に前記保持板41の前記表面42を,研磨材の粒径に対して広い目開を有する網状体乃至は多孔板から成るカバー48で覆い,前記線材20を前記カバー48と前記保持板41間に配置すると共に,前記カバー48上に前記固気二相流体を噴射するようにしても良い(請求項6)。
また,前記線材のブラスト加工は,前記線材20の周方向における所定の角度毎に前記固気二相流体の噴射を複数回に分けて行うものとしても良い(請求項7)。
また,本発明の線材用ブラスト加工装置1は,研磨材を圧縮気体と共に固気二相流体として噴射するブラストガン30を備えたブラスト加工装置において,
前記ブラストガン30の前方における所定の位置に,所定の送り方向で移動する線材と接触する表面42を備えると共に前記圧縮気体の通過を許容する開孔43が肉厚を貫通して形成された保持板41を,前記表面42が前記ブラストガン30側となるよう前記ブラストガン30の軸線方向(噴射方向)と所定の角度で交わるように配置したことを特徴とする(請求項8)。
前記構成の線材用ブラスト加工装置1において,前記保持板41の前記表面42には,前記線材20が嵌合する溝44を前記線材20の移動方向を長手方向として設けることができる(請求項9)。
更に,前記構成の線材用ブラスト加工装置1には,前記線材20の移動方向への移動を,引張加重1kgf未満で行う線材移動機構(実施形態において線材送り機構22及び線材巻取機構24)を設けることができる(請求項10)。
また,前記保持板41に対しては,前記保持板41の前記表面42のうち前記固気二層流体との衝突範囲Xの面積と,前記開孔43のうち前記衝突範囲X内に存する部分Yの面積の総和との比である空間率が5〜100%となるよう前記保持板41に前記開孔43を形成することが好ましい(請求項11)。
また,前記線材20が横断する位置に前記開孔43を形成すると共に,少なくとも前記線材20の横断位置における前記開孔43の開口幅を2〜40mmに形成することが好ましい(請求項12)。
更に,研磨材の粒径に対して広い目開を有する網状体乃至は多孔板から成り,前記線材20が接触配置された状態の前記保持板41の前記表面42を覆うカバー48を設けることもできる(請求項13)。
また,前記線材20の移動方向における複数箇所に,前記ブラストガン30及び前記保持板41をそれぞれ設けると共に,前記各ブラストガン30の軸線方向(噴射方向)が,前記線材20の周方向に等角度で配置されるよう前記核ブラストガン30を配置した構成とすることもできる(請求項14)。
以上説明した本発明の構成により,本発明の線材のブラスト加工方法,及び線材用ブラスト加工装置によれば,以下の顕著な効果を得ることができた。
研磨材を圧縮気体と共に固気二相流体として噴射するブラストガン30の前方における所定の位置に,肉厚を貫通する開孔43が形成された保持板41を,前記ブラストガン30の軸線方向(噴射方向)と所定の角度で交わるよう配置し,前記保持板41の前記ブラストガン30側の表面42に加工対象とする線材20を接触させた状態で線材20を所定の移動方向に移動させながら前記保持板41の前記表面42に対して前記固気二相流体を噴射して前記線材20を加工することにより,線材20に対して線材20の移動に際して必要となる程度の必要最小限の張力しかかけていない状態であっても,線材20が撓み,揺れる等して暴れることを好適に防止することができた。
その結果,比較的細径の断線し易い線材や,張力を加えることにより材料特性が変化する線材に対しても断線や材料特性の変化を生じさせることなくブラスト加工を行うことができた。
前記保持板41に線材20を嵌合する溝44を設けた構成にあっては,線材20に生じる前述の暴れの発生を更に確実に防止することができた。
また,前述した本発明の構成により,前記線材20として直径300μm以下の線材を加工対象とし,前記移動方向への移動を,引張加重1kgf未満で行うことで,このような細径の線材であっても断線を生じることなく,また,前述したような変形や加工硬化などの,張力の付加に伴う材料特性の変化を発生させることなく加工を行うことができた。
更に,空間率を上記数値範囲とした構成にあっては,圧縮気体を保持板41の背面側に極めて円滑に通過させることができ,線材20の暴れを好適に防止することができた。
このような開孔43を,前記線材20が横断する位置に形成すると共に,少なくとも前記線材20の横断位置における前記開孔43の開口幅δを上記数値範囲のものとして形成した構成にあっては,開孔43内に線材20が引き込まれることがなく,しかも,開孔43を通過する圧縮気体流によって線材20を開孔縁部分における保持板41の表面42に押しつけた状態で固定することができ,より一層線材の暴れを抑制することができた。
前記保持板41の前記表面42を,研磨材の粒径に対して広い目開を有する網状体乃至は多孔板から成るカバー48で覆い,前記線材20を前記カバー48と前記保持板41間に配置した構成にあっては,線材20の暴れを更に好適に抑制することができると共に,線材20に対する必要な加工を行うことができた。
前記線材20の周方向における所定の角度毎にブラストガン30を配置して前記固気二相流体の噴射を複数回に分けて行うことにより,線材20の周方向の全体にわたり,均一な加工を行うことができた。
本発明の一実施形態を示すブラスト加工装置の外観図であり,(A)は正面図,(B),(C)は側面図。 ブラストガンと線材保持具との配置を示した概略説明図であり,(A)は線材の長手方向に対して直交方向より見た図,(B)は線材の長手方向より見た図。 保持板の平面図であり,(A)〜(E)はそれぞれ変形例を示す。 空間率の説明図であり,(A)は保持板の一部に固気二相流体との衝突領域が生じる場合,(B)は保持板の全体が固気二相流体との衝突領域となる場合。 保持板に対するカバーの取り付け例を示す概略斜視図。 実施例で使用した保持板の説明図であり,(A)は実施例1,(B)は実施例2の保持板を,それぞれ示す。 ブラスト加工前のエナメル被覆銅線の表面電子顕微鏡写真(実施例1)。 ブラスト加工後のエナメル被覆銅線の表面電子顕微鏡写真(実施例2)。
以下に添付図面を参照しながら,本発明の線材用ブラスト加工装置について説明すると共に,このブラスト加工装置によって実現されるブラスト加工方法について説明する。
〔全体構成〕
本発明のブラスト加工装置の構成例を図1に示す。
図1に示すブラスト加工装置1は,キャビネット10内に形成された加工室11内において加工対象とする線材20に対しブラスト加工を行うことにより,噴射された研磨材等の飛散による作業環境の汚染を防止し得るよう構成したもので,このキャビネット10内に形成された加工室11内に対し線材の導入を行うことができるようにするために,キャビネット10の一方の側壁10aには,前記キャビネット10内に対する前記線材20の導入を行うための導入孔12〔図1(C)参照〕が形成されていると共に,加工室11内で加工された後の線材20をキャビネット10外に搬出するための搬出孔13〔図1(B)参照〕が前記一方の側壁10aと対向する他方の側壁10bに形成されている。
そして,前述の導入孔12側におけるキャビネット10外には,加工対象とする線材20がコイル状に巻き取られているスプール22aを備えた線材送り機構22が設けられていると共に,前述の搬出孔13側におけるキャビネット10外には,加工室11内で加工された後の前記線材20を巻き取るためのスプール24aを備えた線材巻取機構24が設けられており,線材送り機構22のスプール22aに巻回された線材20を,ガイドローラ22g,導入孔12を介してキャビネット10の加工室11内に導入すると共に,キャビネット10の加工室11内を通過した線材20を,搬出孔13を介してキャビネット外に導出し,ガイドローラ24gを介して前記線材巻取機構24に設けたスプール24aに巻き取ることで,一定の速度で線材20が前記キャビネット10内に形成された加工室11内を通過できるように構成している。
これらの線材巻取機構24及び線材送り機構22による線材20の移動は,例えば線材巻取機構24に設けたモータ24m等によって,前述の線材巻取用スプール24aを所定の速度で回転させてブラスト加工後の線材20の巻き取りを行うと共に,前記線材送り機構22に設けたモータ22m等によって,加工対象とする線材が巻回されたスプール22aを,前記線材巻取機構24による巻き取り速度に対応した速度で回転させて線材20を送り出すことで,線材20対して加わる引張張力が,一例として1kgf未満,好ましくは0.1〜0.6kgfの範囲で線材を移動させることができるように構成している。
なお,図示のブラスト加工装置1では,キャビネット10の下部を逆角錐状に形成してホッパ14と成し,このホッパ14の最下端を,導管を介してキャビネット10の上部に設置されたサイクロンである研磨材回収タンク15に連通することで,この研磨材回収タンク15内を図示せざる集塵機に設けた排風機等で吸気することで,キャビネット10内で噴射された研磨材を研磨材回収タンク15内に回収すると共に,このようにして回収した研磨材を,再度噴射して線材の加工に使用することができるようにしている。
もっとも,本発明のブラスト加工装置1は,図1を参照して説明したブラスト加工装置1の構成に限定されず,既知の各種のブラスト加工装置に対し,後述する線材保持機構40をブラストガン30の噴射方向前方に設けることにより得ることができる。
〔線材保持機構〕
以上のように構成されたキャビネット10の加工室11内には,一例として図2(A),(B)に示すように,加工室11内を通過する線材20に対し圧縮気体と共に研磨材を固気二相流体として噴射するブラストガン30(30a〜30f)が設けられていると共に,このブラストガン30の噴射方向前方における所定の位置に,加工対象とする線材20を,暴れを抑制した安定した状態で保持するための前述した保持板41を備えた線材保持機構40を設けている。
図示の実施形態において,前述の線材保持機構40は,所定の送り方向で搬送される線材20と接触する表面を備えた保持板41と,前記保持板41の前記線材20との接触面である前記表面上を覆うカバー48を備えた構造となっているが,本発明の線材保持機構40は,このうちの少なくとも保持板41を有するものとすれば良く,カバー48については必ずしも設ける必要はない。
保持板
前述の保持板41は,所定の移動方向で移動する線材20と接触する表面42を備えると共に,前記保持板41の前記表面42が前記ブラストガン30の軸線方向と(噴射方向)所定の角度で交わるように配置された,鉄,SUS,アルミニウム,銅等の金属,ウレタン,その他の合成樹脂等の材質によって製造された板状体であり,この保持板41の表面42に加工対象である線材20を接触配置した状態で,この保持板41の表面42に対して前述の固気二相流体を噴射することで,線材の暴れを防止しつつ,線材20に対するブラスト加工を行うことができるようにしたものである。
ここで,単なる板状体の表面に張力を掛けず,又は必要最小限の張力を掛けた状態の線材を接触配置し,この線材が配置された板状体の表面に対して固気二相流体を噴射すると,板状体の表面に接触した線材は,板状体の背面方向に撓むことは抑制されるものの,圧縮気体が板状体の表面と衝突した際に板状体の表面に沿った方向に向きを変えることで,線材が板状体の平面と平行な方向に撓み,又は揺れる等して暴れることとなり,単なる板状体の表面に置いた線材に対してブラスト加工を行ったとしても,線材の暴れを防止した状態で安定してブラスト加工を行うことはできない。
そこで,本発明にあっては,加工対象とする線材20を接触配置する表面を備えた板状体である保持板41上に線材を保持した状態でブラスト加工を行う構成を採用しつつ,圧縮気体流をこの保持板41の背面側に円滑に通過させることができるよう,保持板41にその肉厚を貫通する開孔43を設けることにより,保持板41の表面と衝突した際に圧縮気体流に生じる流れの変化を抑制することで,線材20に発生する暴れを抑制して,ブラスト加工中,保持板41上に線材20を安定な状態に保持することができるように構成している。
このような開孔は,例えば図3(A)に示すように単一の開孔43として形成したものであっても良く,又は,図3(B),(C)に示すように,複数の開孔43を設けた構成としても良く,更に,この開孔43は,円形に限定されず,各種形状とすることができ,また,図3(D),(E)に示すように,スリット状の開孔43として形成するものとしても良い。
保持板41に形成する開孔43のサイズは,例えば図3(E)に示すように,線材20が接触配置される位置に開孔43を設けない場合には特に限定はなく,適宜任意の大きさに形成すれば良いが,図3(A)〜(D)に示すように,線材20が接触配置される位置に開孔43を形成する場合には,開孔幅をあまりに大きく形成すると線材の暴れを防止できず,一方,開孔幅が狭いと圧縮気体流を円滑に通過させることができないものとなることから,好ましくは,少なくとも線材の横断位置における開孔幅δを,2〜40mmに形成する。
このように線材20が接触配置される位置に開孔43を形成することにより,開孔43を介して保持板41の背面側に通過する圧縮気体流は,開孔43上に位置する線材20を開孔43内に引き込む方向の力を発生するが,前記開孔幅δの範囲に形成された開孔43では,線材20は開孔43内に引き込まれる程には撓まず,しかも,この圧縮気体流によって開孔43の縁部における表面42上に線材20が押しつけられることで線材20の位置が固定され,保持板41上で線材20が暴れることを好適に防止できるものとなっている。
前述の保持板41に対する圧縮気体の通過を円滑に行わせ,線材の暴れをより確実に抑制するためには,「空間率」が5〜100%の範囲となるよう,保持板41に対する前述の開孔43の形成を行うことが好ましい。
ここで,前述の「空間率」とは,前記保持板41の前記表面42のうち前記固気二層流体との衝突範囲Xの面積と,前記衝突範囲X内に存在する開孔43の面積の総和Yとの比として表されるものであり,図4(A)に示すように,保持板41の一部に固気二相流体との衝突範囲X〔図4(A)中に斜線で示す円形部分〕が形成される場合には,この衝突範囲Xの面積(開孔43部分の面積を含む)に対する,該衝突範囲X内に存する開孔部分〔図4(A)右図の二重斜線の部分〕Yの面積の総和(Y1+Y2+Y3+Y4+Y5)の割合,即ち,
(Yの面積/Xの面積)×100=空間率(%)
として表される。
また,例えば図4(B)に示すように保持板41の全体が固気二相流体の噴射範囲内に置かれる場合には,保持板41の表面(開孔43の形成部分を含む)全体が上記X,保持板41の開孔43形成部分が上記Yとなる〔図4(B)参照〕。
このような空間率で前述した開孔43を形成することで,保持板41の背面側に対する圧縮気体の通過を好適に行わせることができ,これにより保持板41の表面42に対して線材20を保持して好適に暴れの発生を防止できるものとなる。
なお,このような保持板41の前記線材20との接触部分には,線材20が嵌合する溝44を,線材20の移動方向を長手方向として形成することが好ましい。
この溝は,線材20を嵌合させて保持板41の表面42における線材20の暴れを防止するために設けたものであり,このような暴れを防止し得るものであれば溝44のサイズは特に限定されるものではないが,過度に幅広に形成すると線材20の暴れを防止できず,また,過度に深く形成すると線材20に対して研磨材が衝突し難くなる。
一方,溝44の幅が狭く,また,浅すぎると,線材20が溝44より脱落し易く,線材20に生じる暴れを好適に防止し得ない。
よって,好ましい溝44の幅及び深さは,一例として幅0.2〜2mm,深さ0.5〜3mm程度である。
なお,この溝44の幅方向における断面形状は,嵌合した線材を溝44内に保持し得るものであれば,上向きに開放するコ字状,U字状,V字状,半円弧状等,如何なる形状に形成するものとしても良く,その形状は特に限定されない。
カバー
以上のように構成された保持板41の表面42上は,前述したようにカバー48によって覆うものとしても良い。
このカバー48は,使用する研磨材の粒径に対して大きな目開を有する網状体やパンチングメタル等の開孔板によって形成することができ,例えば,保持板41と同形状に形成された開孔板を,開孔位置が重なり合うように保持板41の表面42上に被せて前述のカバー48としても良い。
また,このカバー48を網状体によって形成する場合には,この網状体であるカバー48によって保持板41の表面42全体を覆うものとしても良く,また,図5に示すように,保持板41に設けた開孔43に対応する位置に同程度のサイズの開孔49を形成し,保持板41の開孔43とカバー48の開孔49とが重なる位置に取り付けるようにしても良い。
このように形成されたカバー48は,線材20が接触配置される前述の保持板41の表面42に取り付けられ,これにより線材20が保持板41の表面42より浮き上がることが防止され,より一層,線材20を暴れ難い状態で保持板41の表面42に保持することができる。
このカバー48の取り付けは,保持板41の表面42に配置された線材20が円滑に移動することができるよう,線材20の線径よりも大きな移動許容間隔を介して保持板41の表面42に取り付けるものとしても良いが,前述したように保持板41の表面42に線材20を嵌合させる溝44を設け,この溝44内に線材20全体を嵌合させる構成とした場合には,保持板41の表面42に対し前述のカバー48を接触させた状態で取り付けるものとしても良く,このように構成することで,線材20は溝44より脱落することができないものとなる。
このようにカバー48を取り付けることで,保持板41の表面42に対する線材の保持をより確実に行うことができ,線材20に生じる前述の暴れをより確実に防止することができる。
〔ブラストガン及び線材保持機構の配置〕
以上のように構成された保持板41及び必要に応じて設けられるカバー48を備えた線材保持機構40は,線材20の周方向全体に均一な加工を行う場合,ブラストガン30と共に,一例として図2(A),(B)に示すように,線材20の移動方向に複数配置する。
この場合,各配置毎に,ブラストガン30を線材20の周方向における所定の角度毎にずらして配置し,線材20の外周全周にわたり均一な加工を行うことができるようにする〔図2(B)参照〕。
図2(A),(B)に示す実施形態にあっては,6組のブラストガン30及び線材保持機構40を設け,各ブラストガン30の軸線方向(噴射方向)を図2(B)に示すように加工対象とする線材20を中心に60°ずつ,等角度でずらして,線材20の外周360°全体に亘りブラスト加工を行うことができるように形成しているが,例えば180°毎,120°毎,90°毎,72°毎に前述のブラストガン30を設けて,図示の実施形態に比較して少ない,2本,3本,4本,又は5本のブラストガン30によって線材20を加工するものとしても良く,又は,より配置角を狭めて,7本以上のブラストガン30によって加工を行うものとしても良い。
このように,ブラストガン30の配置を所定の角度毎に配置した場合,各ブラストガン30と対を成す保持板41についても,例えばブラストガンの軸線方向(噴射方向)に対してその表面42が直交方向となるように配置しても良いが,図示の実施形態にあっては,図2(A),(B)中,右側の3つをいずれも上向きに水平に配置し,図中左側の3つを,下向きに水平に配置している。
なお,このように形成する場合,図2(A)中右側に配置される3つの保持板41,及び図中左側に配置される3つの保持板41をそれぞれ共通の板体によって構成するものとしても良く,また,カバー48についても同様に共通のものとして設けても良い。
〔ブラスト加工方法〕
以上で説明した線材保持機構40を備えたブラスト加工装置1を使用した線材のブラスト加工は,一例として以下のようにして行う。
図1に示した構成のブラスト加工装置1において,先ず,線材送り機構22に設けた支軸22cに,加工対象とする線材20が巻回されたスプール22aを取り付ける。
本発明で加工対象とする線材20は特に限定されず,各種材質,サイズのものを処理対象とすることができるが,線径300μm以下で,線材20に対する引張荷重1kgf程度の付加により容易に断線する鉄,アルミニウム,銅,スズ,インジウム及びその合金などの金属線材,ポリエチレン,PTFE等の合成樹脂製の線材についても対象とすることができ,また,前記程度の引張加重によっては断線しないが,引張加重の付加により伸び等の変形,加工硬化,その他の材料特性に影響が生じることを嫌う線材20に対しても適用可能である。
この線材送り機構22は,モータ22mによって前記支軸22cに取り付けたスプール22aを,後述する線材巻取機構24の巻取速度に対応して回転させることで,線材の送りを,例えば1kgf未満の張力によって行うことができるように構成されている。
このような線材送り機構22に取り付けられたスプール22aに巻回された線材20の一端は,前述したようにガイドローラ22gを介してキャビネット10に形成した導入孔12を介してキャビネット10内に導入されると共に,キャビネット10内に配置された線材保持機構40の保持板41表面と接触した状態で,図2(A),(B)に示す実施形態にあっては,更に保持板41表面をカバー48で覆うことにより保持され,キャビネット10に設けた搬出孔13を介してキャビネット10外に引き出されていると共に,これを,ガイドローラ24gを介して線材巻取機構24に設けたスプール24aに取り付けられている。
このようにして線材巻取機構24に取り付けた線材20の巻き取りと,送り機構による送りによって,線材に加わる張力が1kgf未満となるよう線材20を,一例として0.1〜5m/min程度の速度で移動しながらブラストガン30より圧縮気体と共に研磨材の噴射を行う。
研磨材の噴射に使用する圧縮気体は,ブラスト加工の目的,使用する研磨材の材質,加工対象とする線材の材質等に応じて圧縮空気の他,不活性ガス(例えば窒素ガス)等の圧縮気体,その他各種のものから選択可能である。
また,噴射方式についても,加圧タンク等で圧縮気体と共に加圧した気体をブラストガンに導入して噴射する直圧式,ブラストガンに導入した圧縮気体流と研磨材タンクより落下した研磨材とをブラストガン内で合流させて噴射する重力式乃至はサクション式等と呼ばれる各種の方式による噴射が可能であり,また,加工条件についても特に制限はない。
使用する研磨材についても,不定形のアルミナ系研磨材(WA:ホワイトアランダム,A:アランダム),炭化ケイ素系研磨材(GC:グリーンカーボランダム,C:カーボランダム),球形状をしたSUSビーズ,ガラスビーズ,セラミックビーズ,樹脂ビーズ等,その他,種子殻や穀粉,その他各種の研磨材を,加工目的,例えば表面粗さの調整,残留応力の付与,表面被膜の除去,潤滑剤の除去,その他のクリーニング等の目的に応じて各種材質,粒径の砥粒やショットを使用可能である。
以上のようにして,ブラストガン30より圧縮気体と共に研磨材を固気二相流体として噴射する。
加工対象である線材20は,前述したように保持板41の表面42に接触配置され,暴れの発生が抑制された状態にあることから,このようにして線材20に対して固気二相流体として研磨材を噴射した場合であっても,線材20を所定の位置に保持して安定的な加工を行うことができる。
なお,上記構成により,本発明の線材保持機構40を使用したブラスト加工を行う場合,線材20の表面のうち,ブラストガン30側より見て裏側となる保持板41表面42との接触側については加工がされ難いものとなるため,線材20の周方向全周に亘り均一な加工を行う場合には,線材20の移動方向(長手方向)における複数箇所に前述したブラストガン30と線材保持機構40とを複数組設け,線材20の周方向における所定角度毎に配置したブラストガン30によって複数回に亘りブラスト加工を行うことで,線材20の全周に亘り均一な加工を行うことができる。
次に,本発明の方法により線材の加工を行った2例をそれぞれ実施例1,実施例2として説明する。
〔実施例1〕
(1)ワーク(線材)
線径(直径)80μm,引張加重0.2kgfで破断するエナメル被服銅線を処理対象とした。
(2)加工条件
市販の重力式ブラスト加工装置(不二製作所製ブラスト装置「SGK−3」)をベースとし,このブラスト加工装置のキャビネット10に,図1を参照して説明したと同様,線材20の導入孔12及び搬出孔13となる細孔を形成すると共に,キャビネット10外に前述した線材送り機構22及び線材巻取機構24を設け,キャビネット10内に形成した加工室11を横断して線材20を移送可能とした。
このブラスト加工装置のキャビネット10内に,図2(A),(B)を参照して説明したと同様,6組のブラストガン30と線材保持機構40を配置した。
ブラストガン30は,その軸線方向(噴射方向)が線材の軸線方向に対してほぼ直交する面内に,線材を中心として60°毎の等角度で配置して線材20の外周360°全周に亘り加工を行った。
隣接するブラストガン30間の間隔は,線材の移送方向において略100mmの等間隔とした。
使用したブラストガン30は,いずれもノズルチップ直径(ノズル先端部の内径)7mmであり,このブラストガン30に研磨材と共に0.2MPaに加圧した圧縮気体(圧縮空気)を導入して研磨材の噴射を行った。
使用した各保持板41は,図6(A)に示すように長さ(L)90mm,幅(W)60mm,厚さ(T)5mmのウレタン板に,40mm×9mmの矩形状のスリットを12mmピッチで5個形成したもので,この保持板41の幅方向の中心に,線材が嵌合される直径1mmの半円形の溝を長さ方向の全長に亘って形成した。
ブラストガン30先端と保持板41上を通る線材20間の距離が100mmとなるように両者を配置し,保持板41の表面42にはカバー48を取り付けることなく加工を行った。
なお,上記保持板41の配置における固気二相流体の衝突範囲X〔図4(A)参照〕の面積は320mmであり,前記保持板41の空間率は65%である。
線材20の移動速度を0.9m/minとし,研磨材として不二ランダム(不二製作所製)WA♯800(中心粒径:14μm)を使用した。
(3)加工結果
上記方法により,加工対象とした前述の線材20を,断線させることなく連続してブラスト加工を行うことができた。
また,目視による確認において,線材20に大きな撓み,揺れ等の暴れの発生は確認できなかった。
更に,上記方法で加工した線材20の加工前後の様子を撮影した電子顕微鏡写真である図7(加工前)及び図8(加工後)を比較すると,ブラスト加工後の線材20(図8参照)にあっては表面のエナメル被膜が除去されていると共に,加工前の状態に比較して線径が直径で20μm程細くなっていることが確認でき,しかも,線材の全周に対して略均一な加工状体が得られていることが確認できた。
このことより,本発明の方法により線材に対してブラスト加工を行うことで,線径300μm以下,引張荷重1kgf未満で断線する,従来ブラスト加工を行うことができなかった線材に対しても,均一な加工状体でブラスト加工を行うことができることが確認できた。
〔実施例2〕
(1)ワーク(線材)
引張加重約0.7kgfで破断する直径120μmのステンレス製線材(引張強度:63kgf/mm2,耐力:29kgf/mm2)。
(2)加工条件
噴射方式が直圧方式である「ペンシル型」と呼ばれるブラスト加工装置(不二製作所製直圧噴射方式:DPD)を使用して加工を実施した。
図2(A),(B)に示したように,ブラストガン30及び線材保持機構40を6組用意し,ブラストガン30の軸線方向(噴射方向)が線材20の軸線方向に対してほぼ直交する面内に,線材を中心として60°毎の等角度で配置して線材の外周360°全周に亘り加工を行い,隣接するブラストガン30間の間隔を,線材20の移送方向において略100mmの等間隔とした点については実施例1と同様である。
使用したブラストガン30は,いずれもノズルチップ直径(ノズル先端部の内径)1.2mmであり,このブラストガン30に研磨材と共に0.15MPaの圧縮気体(圧縮空気)を導入して研磨材の噴射を行った。
保持板は,図6(B)に示すように長さ(L)90mm,幅(W)60mm,厚さ(T)5mmのウレタン板の中央に,直径30mmの開孔を1つ形成したもので,この保持板の幅方向の中心に,線材が嵌合される直径1mmの半円形の溝を長さ方向の全長に亘って形成した。
ブラストガンの先端と保持板上を通る線材間の距離が50mmとなるように両者を配置した。
上記保持板41における固気二相流体の衝突領域X〔図4(A)参照〕の面積は80mmであり,前記保持板41の空間率は10%である。
また,前記保持板の表面全体を鉄製の金網(目開6×6mm,線径φ0.5mm)で覆い,この金網を前述したカバー48とした。
線材の移動速度は0.9m/min,巻取張力0.2kgfであり,研磨材は不二ランダム(不二製作所製)WA♯600(中心粒径:20μm)を使用した。
(3)加工結果
上記の条件でブラスト加工を行うことにより,加工対象とした線材に対しメッキ処理前に必要な表面粗さの調整を行った結果,加工対象とした前述の線材を断線させることなく連続してブラスト加工を行うことができた。
また,目視による確認において,線材に大きな撓み,揺れ等の暴れの発生は確認できず,線材の表面全体に対しメッキの前処理として必要な表面粗さの調整が行われていることが確認できた。
なお,上記実施例2において加工対象とした線材の耐力は,前述したように29kgf/mm2 である。ここで,「耐力」とは,荷重を抜いても元に戻らずに0.2%の永久伸びが生じたときの応力を試験前の材料片の断面積で割った値である。
従って,耐力29kgf/mm2 ,直径120μmの上記線材は,
0.06π×29(kgf/mm)=約0.33(kgf)
すなわち,0.33kgf以上の引張加重をかけると,0.2%以上の永久伸びが生じることとなり線材の材料特性に影響が出る。
しかし,本発明の方法によれば,前述したように,0.33kgfに対し十分に低い,0.2kgfという巻取り張力によって線材の移送を行うことができ,しかも,前述したように線材の暴れを防止して均一なブラスト加工を行うことができたものであり,線材を断線させないだけでなく,線材の材料特性に影響を与えず,又は,線材の材料特性に対する影響を最小限としてブラスト加工を行うことが可能である。
以上で説明した本発明の線材のブラスト加工方法及び線材用ブラスト加工装置によれば,各種の線材に対してブラスト加工を行うことが可能であると共に,特に,従来不可能であった,例えば1kgf未満の比較的小さな張力の付加によっても断線する微細な線材や,引張張力の付加によって材料特性に影響が生じる線材等に対してもブラスト加工を行うことが可能となることから,本発明の方法及び装置は,以下に例示する分野において活用が可能である。
(1)細線に所定の塗料等でコーティングを行う前処理としての,塗料の接着性を改善するための細線の表面の粗さ調整,エナメル線の被膜剥がし,エナメル被膜に対し所定の表面粗さの付与等の各処理。
(2)放電加工のワイヤ放電方式において放電の安定性を確保するため,ワイヤの表面に所定の表面粗さを形成する処理。
(3)線材の直径が80μm以下の金属線材(鉄,銅,アルミニウム,Pt,Ag,Auおよびその合金)の表面をブラストにより表面粗さを調整する処理,表面のクリーニング,表面の潤滑材の除去等の各処理。
また,金属線材に限定されず,例えばセルロースからなる繊維であって線状の構造を有するもの,樹脂製の繊維および線材の表面処理。
(4)線材の表面下にある機能性の粒子,例えば研磨材としての砥粒の除去。
(5)線材に対する各種処理時に発生した酸化スケール等の表面異常層の除去。
(6)線材表面の汚れのクリーニング。
(7)カテーテルに対する表面処理。例えば,カテーテルの外周にショットの投射によってディンプル状の窪みを形成し,滑らかに体内で移動させるための摺動性を高める加工をすること。
ここで,カテーテルとは検査や治療などを行うために体内に挿入する中空の柔らかい細い管であり,体外につながれる「回路」,「チューブ」,「ライン」等とは区別される。具体的には,胸腔や腹腔などの体腔,消化管や尿管などの管腔部または血管などに挿入し,体液の排出,薬液や造影剤などの注入点滴に用いたりするものであり,代表的なものとしては「尿道カテーテル(尿カテ)」や「心臓カテーテル(心カテ)」がある。
(8)医療用としてのステントの表面処理。
前記カテーテルと同様,ステントにブラスト加工によってディンプル形状を付与することで,その滑り性を向上させる。
また,血管内での滑り性を高めるために,医療用デバイスにはさまざまな種類のコーティングが施されている。このような滑り性を高める処理としては,親水性ポリマー,シリコン,PTFEなどをミクロン単位で制御して極薄膜をコーティングすることが行われているが,本発明のブラスト加工は,このような表面コーティングを行う際の下地処理としても使用することができる。
このようなコーティング技術として,金属素材であるワイヤやロープの表面にPTFE樹脂を2μm〜5μmの極薄膜に被覆する加工技術とナイロン樹脂を始めとする熱可塑性樹脂を最小膜厚20μmに押し出し成形加工する技術が存在し,このコーティング技術に際し,本発明の方法によるブラスト加工による下地処理を行うことで,金属素材に対する樹脂素材の付着性を改善することができ,これにより金属素材の持つ特性と,樹脂の持つ特性との融合がより一層助長されることが期待し得る。
(9)歯科矯正用のワイヤを樹脂加工するための下地加工。
歯科矯正を受診する多くの患者(とくに成人女性)の特徴として,審美的な欲求が子供に比べてはるかに高い。その結果,硬質プラスチック製,セラミックス製の透明〜白色の歯科矯正用ブラケットや一部に白くテフロン(登録商標)やエポキシ樹脂加工を施した矯正用線(ワイヤー)が市販されており,これらの樹脂加工の際の下地処理等に際しても,本発明のブラスト加工は応用が可能である。
1 ブラスト加工装置
10 キャビネット
10a 一方の側壁
10b 他方の側壁
11 加工室
12 導入孔
13 搬出孔
14 ホッパ
15 研磨材回収タンク
20 線材
22 線材送り機構
22a スプール
22c 支軸
22m モータ
22g ガイドローラ
24 線材巻取機構
24a スプール
24m モータ
24g ガイドローラ
24c 支軸
30 ブラストガン
40 線材保持機構
41 保持板
42 表面(保持板の)
43 開孔
44 溝
48 カバー
49 開孔
X 固気二相流体の衝突範囲
Y 衝突範囲X内に存在する開孔43

Claims (14)

  1. 研磨材を圧縮気体と共に固気二相流体として噴射するブラストガンの前方における所定の位置に,肉厚を貫通し前記圧縮気体の通過を許容する開孔が形成された保持板を,前記ブラストガンの軸線方向と所定の角度で交わるよう配置し,
    前記保持板の前記ブラストガン側の表面に加工対象とする線材を接触させた状態で所定の移動方向に移動させながら,前記保持板の前記表面に対して前記固気二相流体を噴射して前記線材を加工することを特徴とする線材のブラスト加工方法。
  2. 前記保持板の前記表面に,前記線材が嵌合する溝を前記線材の移動方向を長手方向として設けたことを特徴とする請求項1記載の線材のブラスト加工方法。
  3. 前記線材を直径300μm以下の線材とし,前記線材の移動方向への移動を,引張加重1kgf未満で行うことを特徴とする請求項1又は2記載の線材のブラスト加工方法。
  4. 前記保持板の前記表面のうち前記固気二層流体との衝突範囲の面積と,前記開孔のうち前記衝突範囲内に存する部分の面積の総和との比である空間率が5〜100%となるよう前記保持板に前記開孔を形成したことを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の線材のブラスト加工方法。
  5. 前記線材が横断する位置に前記開孔を形成すると共に,少なくとも前記線材の横断位置における前記開孔の開口幅を2〜40mmに形成したことを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の線材のブラスト加工方法。
  6. 前記保持板の前記表面を,研磨材の粒径に対して広い目開を有する網状体乃至は多孔板から成るカバーで覆い,前記線材を前記カバーと前記保持板間に配置すると共に,前記カバー上に前記固気二相流体を噴射することを特徴とする請求項1〜5いずれか1項記載の線材のブラスト加工方法。
  7. 前記線材の周方向における所定の角度毎に前記固気二相流体の噴射を複数回に分けて行うことを特徴とする請求項1〜6いずれか1項記載の線材のブラスト加工方法。
  8. 研磨材を圧縮気体と共に固気二相流体として噴射するブラストガンを備えたブラスト加工装置において,
    前記ブラストガンの前方における所定の位置に,所定の送り方向で移動する線材と接触する表面を備えると共に前記圧縮気体の通過を許容する開孔が肉厚を貫通して形成された保持板を,前記表面が前記ブラストガン側となるよう前記ブラストガンの軸線方向と所定の角度で交わるように配置したことを特徴とする線材用ブラスト加工装置。
  9. 前記保持板の前記表面に,前記線材が嵌合する溝を前記線材の移動方向を長手方向として設けたことを特徴とする請求項8記載の線材用ブラスト加工装置。
  10. 前記線材の移動方向への移動を,引張加重1kgf未満で行う線材移動機構を設けたことを特徴とすることを請求項8又は9記載の線材用ブラスト加工装置。
  11. 前記保持板の前記表面のうち前記固気二層流体との衝突範囲の面積と,前記開孔のうち前記衝突範囲内に存する部分の面積の総和との比である空間率が5〜100%となるよう前記保持板に前記開孔を形成したことを特徴とする請求項8〜10いずれか1項記載の線材用ブラスト加工装置。
  12. 前記線材が横断する位置に前記開孔を形成すると共に,少なくとも前記線材の横断位置における前記開孔の開口幅を2〜40mmに形成したことを特徴とする請求項8〜11いずれか1項記載の線材用ブラスト加工装置。
  13. 研磨材の粒径に対して広い目開を有する網状体乃至は多孔板から成り,前記線材が接触配置された状態の前記保持板の前記表面を覆うカバーを設けたことを特徴とする請求項8〜12いずれか1項記載の線材用ブラスト加工装置。
  14. 前記線材の移動方向における複数箇所に,前記ブラストガン及び前記保持板をそれぞれ設けると共に,前記各ブラストガンの軸線方向が,前記線材の周方向に等角度で配置されるよう前記ブラストガンを配置したことを特徴とする請求項8〜13いずれか1項記載の線材用ブラスト加工装置。
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