JP2011112058A - 鉄道車両用制動装置及びブレーキパッド - Google Patents

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Abstract

【課題】高摩擦係数の実現及び熱による摩擦係数の変動を抑えた安価な制動装置及びブレーキパッドの提供。
【解決手段】この制動装置10は、鋳鉄又は鉄鋼材料からなるブレーキローター21と、炭素繊維強化プラスチックからなるブレーキパッド22とを備える。ブレーキパッド22は、フェノール樹脂が12.7〜19.7重量%を含有する炭素繊維強化プラスチックからなる。上記材料からなるブレーキローター21とブレーキパッド22との間の摩擦係数は高く、且つ熱による変動が小さい。炭素繊維強化プラスチックによりブレーキパッド22が構成されるから、安価な鉄道車両用の制動装置10が得られる。
【選択図】図3

Description

本発明は、特に鉄道車両に搭載される制動装置及びこれに採用されるブレーキパッドに関するものである。
一般に、車両は制動装置(ブレーキ装置)を備えている。制動装置は、通常、車両の進行と共に回転するブレーキローターと、これに接触して車両の運動エネルギーを熱エネルギーに変換することによって制動を行うブレーキパッドとを有する。したがって、制動装置の性能は、ブレーキローターを構成する材料とブレーキパッドを構成する材料との組み合わせにより決定され、両者間の摩擦係数が温度により影響を受けにくく、且つ熱が効率的に外部に放出されることが望ましい。
従来の制動装置におけるブレーキローターの材料とブレーキパッドの材料との組み合わせは、たとえば鉄鋼材料及び炭素繊維強化炭素複合材料(CC)、または鋳鉄及びCCが提案されている。CCは耐熱性に優れ且つ化学的に安定であるため、特に航空機やレーシング車両用としてCC及びCCの組み合わせも提案されている。また、CCに特定の金属等が含浸されることによって摩擦抵抗を向上させた複合材料によりブレーキパッドを構成する技術も開発されている(たとえば、特許文献1参照)。
特表2002−530257号公報
従来のブレーキローター及びブレーキパッドの開発は、専ら耐熱性の向上および制動時の発熱による摩擦係数の変動の抑制に絞られている。この技術的課題は、上記CC及びCCの組み合わせによりほぼ達成されていると考えられる。しかしながら、CCにより製造されたブレーキパッドあるいはブレーキローターはきわめて高価であり、特に鉄道車両に採用することはできないという問題がある。
そこで、本発明は、優れた耐熱性を備えると共に熱による摩擦係数の変動を抑えた安価な鉄道車両用制動装置及びこれに採用されるブレーキパッドを提供することである。
従来からブレーキパッドを構成する材料としてCCが採用されているのは、高い摩擦係数の実現が可能だからである。したがって、高い摩擦家数の実現が困難である樹脂等を含む材料は、常識的にはブレーキパッドを構成する材料として採用されるはずがなかった。ただし、ブレーキパッドやブレーキローターを構成する材料としていかなるものが好ましいかについては、試行錯誤の繰り返しにより解の発見に到達するという手法に依らざるを得ない状況であった。本願発明者は、摩擦材としては必ずしも好適とは言えない炭素繊維強化プラスチック(CFRP)に敢えて着目し、CFRPと鉄鋼材料との組み合わせにより優れた制動装置が実現できないかと考えた。
(1)本発明に係る鉄道車両用制動装置は、鉄鋼材料又は鋳鉄からなるブレーキローターと、炭素繊維強化プラスチックからなるブレーキパッドとを備えることを特徴とする。
上記材料からなるブレーキーローターに対してブレーキパッドが上記材料から構成されることによって、ブレーキローターとブレーキパッドとの間に生じる摩擦係数が高くなる。しかも、当該摩擦係数は、温度による変化が小さい。
(2)上記ブレーキパッドは、線径4μm〜10μm、長さ3mm〜8mmの炭素繊維により強化されたフェノール樹脂からなる炭素繊維強化プラスチックであるのが好ましい。
(3)上記鉄鋼材料は、鉄(Fe)に対して、炭素(C)、ケイ素(Si)、マンガン(Mn)が含有されており、さらに、リン(P)、硫黄(S)が含有されていてもよい。各元素の含有割合は、炭素(C)0.40〜0.50重量%、ケイ素(Si)0.30〜0.60重量%、マンガン(Mn)1.00〜1.60重量%、リン(P)0.03重量%以下、硫黄(S)0.03重量%以下であることが好ましい。
(4)上記鋳鉄は、鉄(Fe)に対して、炭素(C)、ケイ素(Si)、マンガン(Mn)が含有されており、さらに、リン(P)、硫黄(S)が含有されていてもよい。各元素の含有割合は、炭素(C)2.8〜3.6重量%、ケイ素(Si)1.3〜1.9重量%、マンガン(Mn)0.6〜0.9重量%、リン(P)0.2重量%以下、硫黄(S)0.12重量%以下であることが好ましい。
(5)上記ブレーキパッドを形成する炭素繊維強化プラスチックは、フェノール樹脂12.7〜19.7重量%を含有することが好ましい。
(6)また、本発明に係る鉄道車両用制動装置に採用されるブレーキパッドは、鉄鋼材料又は鋳鉄からなるブレーキローターを備えた鉄道車両用制動装置に採用されるブレーキパッドであって、炭素繊維強化プラスチックから構成されている。
ブレーキーローターが鉄鋼材料又は鋳鉄から構成されている場合、ブレーキパッドが上記材料から構成されることによって、ブレーキローターとブレーキパッドとの間に生じる摩擦係数が高くなる。しかも、当該摩擦係数は、温度による変化が小さい。
(7)上記炭素繊維強化プラスチックは、線径4μm〜10μm、長さ3mm〜8mmの炭素繊維により強化されたフェノール樹脂であるのが好ましい。
(8)上記炭素繊維強化プラスチックは、フェノール樹脂12.7〜19.7重量%を含有するものであるのが好ましい。
本発明では、ブレーキパッドとブレーキローターとが前述の材料から構成されることにより、温度に対する安定性の高い優れた制動能力が発揮される。しかも、従来のCC製ブレーキパッドに比べてきわめて安価なブレーキパッドが提供されるので、制動装置の製造コストも低減される。
図1は、本発明の一実施形態に係る試験装置11の正面図である。 図2は、図1におけるII−II矢視図である。 図3は、本発明の一実施形態に係る制動装置10の正面図である。
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。なお、本実施形態は本発明の一実施形態にすぎず、本発明の要旨が変更されない範囲で適宜変更され得る。
図1は、本発明の一実施形態に係る制動装置10の性能を試験するための試験装置11の正面図である。図2は、図1におけるII−II矢視図である。同図は、上記制動装置10の側面図でもある。
試験装置11は、ベースプレート12と、これに固定されたモーター13とを有する。モーター13は、駆動軸14を備えており、この駆動軸14に回転軸15が連結されている。ベースプレート12に軸受ブロック16が立設されている。上記回転軸15は、軸受ブロック16にベアリングを介して回転自在に支持されており、図中左側へ突出している。試験装置11は、支持フレーム17を備えており、回転軸15は、この支持フレーム17を貫通している。回転軸15は、ベアリング18を介して支持フレーム17に回転自在に支持されている。そして、後に詳述される制動装置10は、回転軸15及び支持フレーム17に取り付けられている。
制動装置10は、ブレーキローター21と、ブレーキパッド22と、このブレーキパッド22によってブレーキローター21を挟みつける挟持機構23とを備えている。本実施形態に係る制動装置10は、鉄道車両に搭載されるものである。ブレーキローター21は、円形の板状に形成されている。ブレーキローター21は、上記回転軸15に固定されており、この回転軸15がブレーキローター21の中心に嵌め込まれている。ブレーキローター21は、鉄鋼材料又は鋳鉄からなり、所定の厚みを有する。
ブレーキローター21を構成する材料として鋳鉄が例示される。鋳鉄は、鉄(Fe)、炭素(C)、ケイ素(Si)、マンガン(Mn)を含む合金である。この鋳鉄は、さらにリン(P)及び硫黄(S)が含有されていてもよい。具体的には、鉄(Fe)に対して、炭素(C)が2.8〜3.6重量%、ケイ素(Si)が1.3〜1.9重量%、マンガン(Mn)が0.6〜0.9重量%含有されている。リン(P)は、0.2重量%以下、硫黄(S)は0.12重量%以下が含有されていてもよい。
ブレーキローター21を構成する材料として鋳鉄のほか鉄鋼材料も採用され得る。鉄鋼材料は、鉄(Fe)、炭素(C)、ケイ素(Si)及びマンガン(Mn)を含む合金である。具体的には、鉄(Fe)に対して、炭素(C)が0.40〜0.50重量%、ケイ素(Si)が0.30〜0.60重量%、マンガン(Mn)が1.00〜1.60重量%含有されたものが例示される。また、リン(P)が0.03重量%以下、硫黄(S)が0.03重量%以下だけ含有されていてもよい。
ブレーキローター21の両側に一対のブレーキパッド22が配置されている。ブレーキパッド22は、略矩形に形成されており、上記挟持機構23により駆動されることによってブレーキローター21を締め付けるようになっている。ブレーキパッド22は、炭素繊維強化樹脂(CFRP)により構成されている。すなわち、ブレーキパッド22は、炭素繊維が混ぜ込まれたフェノール樹脂が加熱・加圧されることにより成形されている。炭素繊維の線径は5.5μm、長さは4.5mmに設定されている。ただし、炭素繊維の線径は、4μm〜10μmに設定され、長さは3mm〜8mmに設定され得る。フェノール樹脂の含有量は、12.7重量%〜19.7重量%に設定され得る。
なお、モーター13の駆動軸14と上記回転軸15との間にフライホイール19が介在されている。フライホイール19は、試験時におけるブレーキローター21の慣性モーメントを設定する。また、図1に示されていないが、このフライホイール19の回転速度を計測するロータリーエンコーダが設けられている。これにより、試験時におけるブレーキローター21の回転速度が設定される。すなわち、試験時において、制動装置10が搭載される鉄道車両の想定速度が決定される。
図3は、本発明の一実施形態に係る制動装置10の正面図である。
挟持機構23は、一対のブレーキパッド22をそれぞれ保持する一対のパッドフレーム24、25と、一方のパッドフレーム24を押圧するシリンダ・ピストン装置26とを備える。このシリンダ・ピストン装置26は、シリンダ27及びシリンダ27に対して伸縮するピストン28とを備えている。このシリンダ・ピストン装置26は、油圧式でも空圧式でもよい。図示されていないが、一対のパッドフレーム24、25の間にラック・ピニオン機構が介在されている。したがって、一方のパッドフレーム24がシリンダ・ピストン装置26により押圧されてブレーキローター21側へスライドされると、他方のパッドフレーム25もブレーキローター21側へスライドされる。つまり、一対のブレーキパッド22によってブレーキローター21が締め付けられる。
なお、一対のパッドフレーム24、25の間に圧縮コイルバネが介在されていてもよい。この圧縮コイルバネが設けられることにより、常時において一対のパッドフレーム24、25は互いに離反するように弾性的に付勢される。したがって、シリンダ・ピストン装置26が作動していない場合には一対のパッドフレーム24、25はブレーキローター21から離反しているが、シリンダ・ピストン装置26が作動した場合には、一対のパッドフレーム24、25がブレーキローター21を締め付けて制動機能が発揮される。もっとも、シリンダに対するピストンの伸縮により、一対のパッドフレーム24、25がスライドされるように構成されていてもよいことは勿論である。
また、図示されていないが、制動装置10は、ブレーキローター21の温度を測定する温度センサーを備えている。温度センサーとしては熱電対が例示される。一般的に回転体の温度を測定する場合には、スリップリングが使用される。本実施形態においても、スリップリングを介して、ブレーキローター21の温度が熱電対により計測される。
このような試験装置11によって本実施形態に係る制動装置10の性能が試験される。すなわち、図1が示すように、モーター13が駆動されると、フライホイール19と共にブレーキローター21が所定の大きさの慣性モーメントで回転される。そして、制動装置10が作動することによって、一対のブレーキパッド22がブレーキローター21を挟み込む。これにより、ブレーキパッド22とブレーキローター21との間で摩擦力が生じ、この摩擦力によってブレーキローター21の運動エネルギーが摩擦熱に変換されてブレーキローター21の回転が制止される。
本実施形態では、ブレーキーローター21が上記鋳鉄又は上記鉄鋼材料から構成され、且つブレーキパッド22が上記CFRPから構成されることによって、両者間に生じる摩擦係数が後述の実施例に示されるように高く維持される。しかも、この摩擦係数は、後述の実施例に示されるように、温度による変化が小さい。すなわち、本実施形態に係る制動装置10は、温度に対する安定性の高い優れた制動能力を発揮する。しかも、ブレーキパッド24はCFRP製であるから、従来のCC製ブレーキパッドに比べてきわめて安価に製造されるので、制動装置10の製造コストも低減される。
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
図1が示す試験装置11によって制動装置10の制動試験が行われた。制動試験の要領は、モーター13によってブレーキローター21が回転される。このとき、ブレーキローター21にフライホイール19が連結されていることから、ブレーキローター21の回転慣性モーメントは、39.23Nmに設定されている。そして、シリンダ・ピストン機構23が作動されることにより、一対のブレーキパッド22が上記回転するブレーキローター21を挟み込んで制動する。このときのブレーキパッド22の押付力(すなわち、ブレーキパッド22がブレーキローター21へ押圧されるときの押圧力)は、5.7kNに設定されている。また、当該制動試験における制動初期速度(公称速度)は、30km/h、60km/h、90km/h及び100km/hに設定されている。
この制動試験の結果、制動初速度(km/h)、制動距離(m)、制動時間(sec)及びブレーキローター21の温度変化(最高温度及び最低温度)が測定された。ここで、制動初速度(km/h)とは、上記「制動初期速度(公称速度)」に対応する概念であって、実際に制動が開始されるときの実測速度である。そして、これら各測定データから、後述の要領で平均減速度(km/h/sec)、実平均減速度(km/h/sec)、平均摩擦係数(fms)及び実平均摩擦係数(fms)が解析された。
(1)平均減速度
平均減速度(km/h/sec)については、距離基準における平均減速度βsと、時間基準における平均減速度βtとの考え方があり、本実施例では、双方の平均減速度が解析された。平均減速度は、次の式に基づいて算出される。
平均減速度βs(km/h/sec)=制動初速度/(7.2×制動距離)
平均減速度βt(km/h/sec)=制動初速度/制動時間
(2)平均摩擦係数
平均摩擦係数(fms:無次元数)は、次の式に基づいて算出される。
平均摩擦係数(fms)=12.12×4×平均減速度/580
本実施例では、平均減速度として距離基準における平均減速度βsが採用された。
(3)実平均減速度及び実平均摩擦係数
実際の試験において、シリンダ・ピストン機構23が作動した瞬間からブレーキパッド22がブレーキローター21に接するまでに一定の時間が必要であるが、この時間が空走時間である。このため、実制動時間(sec)は、制動時間から空走時間が差し引かれたものである。空走距離(m)は、制動初速度に空走時間を乗じたものである。実制動距離(m)は、制動距離から空走距離が差し引かれたものである。したがって、実平均減速度βos(km/h/sec)及び実平均摩擦係数βot(km/h/sec)は、実制動時間(sec)及び実制動距離(m)を上記平均減速度(βs、βt)の式にあてはめることにより算出される。
(4)ブレーキローター及びブレーキパッド
供試ブレーキパッドは、線径5.5μm、長さ4.5mmの炭素繊維により強化されたフェノール樹脂からなる炭素繊維強化プラスチックで形成されている。供試ブレーキローターは、鋳鉄で形成されている。この供試ブレーキローターは、鉄(Fe)に対して、炭素(C)が3.1重量%、ケイ素(Si)が1.55重量%、マンガン(Mn)が0.7重量%、リン(P)が0.03重量%、硫黄(S)が0.01重量%含有されている。なお、上記各元素の含有量、炭素(C)が2.8〜3.6重量%、ケイ素(Si)が1.3〜1.9重量%、マンガン(Mn)が0.6〜0.9重量%、リン(P)が0.2重量%以下、硫黄(S)が0.12重量%以下であってもよい。
以下に示される実施例1〜実施例4並びに比較例1及び比較例2は、それぞれ、供試ブレーキパッドに含まれるフェノール樹脂の含有量に対応している。
(実施例1)
供試ブレーキパッドを構成する炭素繊維強化プラスチックにフェノール樹脂が12.7重量%含有されている。供試ブレーキローターの制動初期速度(公称速度)が30km/h、60km/h、90km/h、100km/hにおける制動距離(m)、制動時間(sec)、空走距離(m)、空走時間(sec)、温度(℃)が測定された。これら各データは、各速度について5回ずつ測定された。これに基づいて、平均減速度βs(km/h/sec)、βt(km/h/sec)、実平均減速度βos(km/h/sec)、βot(km/h/sec)、平均摩擦係数(fms)、実平均摩擦係数(fms)が解析された。
なお、始めに制動初期速度(公称速度)30km/hにおいてならし運転のための試験が5回だけ行われた。その後、制動初期速度(公称速度)30km/h、60km/h、90km/h、100km/hの順に制動試験が行われた。表1に実施例1の結果が示されている。表1における、試験No.の上から順に1〜5がならし運転の結果である。また、6〜10が制動初期速度(公称速度)30km/hの、11〜15が制動初期速度(公称速度)60km/hの、16〜20が制動初期速度(公称速度)90km/hの、21〜25が制動初期速度(公称速度)100km/hの結果である。なお、実施例2から実施例4及び比較例1から比較例2も同様の順で試験が行われ、それぞれの結果も同様に表に示されている。
Figure 2011112058
(実施例2)
供試ブレーキパッドを構成する炭素繊維強化プラスチックにフェノール樹脂が14.1重量%含有されている。なお、その他の条件は、実施例1と同様である。表2に試験結果が示されている。
Figure 2011112058
(実施例3)
供試ブレーキパッドを構成する炭素繊維強化プラスチックにフェノール樹脂が17.2重量%含有されている。なお、その他の条件は、実施例1と同様である。表3に試験結果が示されている。
Figure 2011112058
(実施例4)
供試ブレーキパッドを構成する炭素繊維強化プラスチックにフェノール樹脂が19.7重量%含有されている。なお、その他の条件は、実施例1と同様である。表4に試験結果が示されている。
Figure 2011112058
(比較例1)
供試ブレーキパッドを構成する炭素繊維強化プラスチックにフェノール樹脂が9.7重量%含有されている。なお、その他の条件は、実施例1と同様である。表5に試験結果が示されている。
Figure 2011112058
(比較例2)
供試ブレーキパッドを構成する炭素繊維強化プラスチックにフェノール樹脂が24.2重量%含有されている。なお、その他の条件は、実施例1と同様である。表6に試験結果が示されている。
Figure 2011112058
(まとめ)
表7は、上記各実施例及び比較例の結果をまとめたものである。各実施例及び比較例において、それぞれ繰り返し行った試験(5回分)の平均値が示されている。すなわち、各実施例及び比較例における、平均減速度βs(km/h/sec)、βt(km/h/sec)、の平均値、、実平均減速度βos(km/h/sec)、βot(km/h/sec)の平均値、、平均摩擦係数(fms)の平均値、実平均摩擦係数(fms)の平均値、ブレーキローター21の最高温度及び最低温度の平均値が示されている。
Figure 2011112058
表7が示すように、制動初期速度(公称速度)が90km/h以上の場合、いずれの実施例についても、各比較例との比較においてブレーキローター21の温度上昇は抑えられている。また、いずれの実施例についても、各比較例と同等以上の平均摩擦係数(fms)及び実平均摩擦係数(fms)が実現されている。すなわち、実施例1から実施例4において、制動初期速度が90km/h以上の場合、ブレーキローター21の温度変化が比較的抑えられ、かつ高い平均摩擦係数及び実平均摩擦係数が得られる。なお、制動初期速度が低速の場合は、必ずしも比較例に対して高い平均摩擦係数及び実平均摩擦係数が得られるとは限らないが、鉄道車両用制動装置として要求される性能は、速度が90km/h以上での高速における制動性能であること、及び実測された平均摩擦係数及び実平均摩擦係数の数値が制動装置として十分なものであることから、低速における平均摩擦係数及び実平均摩擦係数が、数値上比較例に対して低くなったとしても制動装置の性能として特に問題は生じない。
言い換えれば、供試ブレーキパッド22を構成する炭素繊維強化プラスチックにフェノール樹脂が12.7重量%から19.7重量%含有する場合、優れた耐熱性及び制動性能が発揮され、これよりもフェノール樹脂の含有量が少なくても、多くても優れた耐熱性及び制動性能が発揮されない。
10・・・制動装置
21・・・ブレーキローター
22・・・ブレーキパッド
24,25・・・パッドフレーム
26・・・シリンダ・ピストン装置

Claims (8)

  1. 鉄鋼材料又は鋳鉄からなるブレーキローターと、炭素繊維強化プラスチックからなるブレーキパッドとを備えた鉄道車両用制動装置。
  2. 上記ブレーキパッドは、線径5μm〜7μm、長さ3mm〜8mmの炭素繊維により強化されたフェノール樹脂からなる炭素繊維強化プラスチックである請求項1に記載の鉄道車両用制動装置。
  3. 上記鉄鋼材料は、鉄(Fe)に対して、炭素(C)、ケイ素(Si)、マンガン(Mn)、リン(P)、硫黄(S)が含有されており、炭素(C)0.40〜0.50重量%、ケイ素(Si)0.30〜0.60重量%、マンガン(Mn)1.00〜1.60重量%、リン(P)0.03重量%以下、硫黄(S)0.03重量%以下を含むものである請求項1又は2に記載の鉄道車両用制動装置。
  4. 上記鋳鉄は、鉄(Fe)に対して、炭素(C)、ケイ素(Si)、マンガン(Mn)、リン(P)、硫黄(S)が含有されており、炭素(C)2.8〜3.6重量%、ケイ素(Si)1.3〜1.9重量%、マンガン(Mn)0.6〜0.9重量%、リン(P)0.2重量%以下、硫黄(S)0.12重量%以下を含むものである請求項1又は2に記載の鉄道車両用制動装置。
  5. 上記ブレーキパッドは、フェノール樹脂12.7〜19.7重量%を含有する炭素繊維強化プラスチックである請求項1又は2に記載の鉄道車両用制動装置。
  6. 鉄鋼材料又は鋳鉄からなるブレーキローターを備えた鉄道車両用制動装置に採用されるブレーキパッドであって、炭素繊維強化プラスチックからなるブレーキパッド。
  7. 上記炭素繊維強化プラスチックは、線径4μm〜10μm、長さ3mm〜8mmの炭素繊維により強化されたフェノール樹脂である請求項6に記載のブレーキパッド。
  8. 上記炭素繊維強化プラスチックは、フェノール樹脂12.7〜19.7重量%を含有する請求項6又は7に記載のブレーキパッド。
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