以下、本発明に係る実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
なお、本実施形態を説明するため、同一機能を有するものは、同一符号を付けてその繰り返しの説明は省略する。
本発明の実施形態に係る処理装置の処理部1および搬送手段19の概要について、図1を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る処理部1および搬送手段19の断面を示す図である。
図1に示すように、本実施形態に係る処理部1の外部には、被処理物3の仮置場所18と搬送手段19とが配置されている。
本実施の形態の装置の実施手順の概略としては、仮置場所18に配置された被処理物3を搬送手段19が保持し、載置場所5まで搬送する。処理部1では処理手段(図示せず)によって被処理物3に対する処理が行われ、処理終了後に被処理物3は再び搬送手段19によって保持され、搬出される。本実施の形態の処理装置は搬送手段19を備えるので、搬送作業を自動化することができ、作業者が危険な環境で作業することや、作業者によって被処理物3が汚染されてしまうことを避けることができる。
本実施形態に係る処理部1の構成を説明する。処理部1は、図1に示すように、回転機構9、および角度センサ30を備えている。処理部1には、回転台4の上面に載置場所5が複数設けられている。各載置場所5には、それぞれ被処理物3が載置可能である。
回転台4は、回転台支持部によって支持されている。回転台支持部はシャフト8と回転台支持台40とで構成されている。回転台支持台40はシャフト8の上端に固定されており、回転台支持台40は回転台4を支持する。シャフト8は、回転機構9に接続され、回転台支持部と回転台4とは回転機構9によって回転する。載置場所5の上に載置した被処理物3は、回転台4の回転によって、公転をする。
搬送手段19は、被処理物3を保持し移動する移動部位であるヘッド22、ヘッド22を移動させる移動機構27、28、29を備えている。移動機構27、28、29によってヘッド22を被処理物3の有る位置に移動させた後にヘッド22によって被処理物3を保持させ、その後に移動機構27、28、29によってヘッド22を所望の位置に移動させた後に、被処理物3を解放することにより、搬送手段19は被処理物3を前記所望の位置に搬送することができる。
また、ヘッド22には目印(図示せず)の位置を検出する位置センサ25が取付けられている。対して、回転台4には前記目印が備えられ、前記位置センサ25は目印の位置を測定することができる。なお、図1においては、位置センサ25がヘッド22にとりつけられているが、これは本発明にとっては必須要件ではなく、目印の位置を測定できれば、他の場所に設けても良い。
なお、前記目印は、位置センサ25がその位置を検知できればどのようなものであってもよい。例えば、円形、十字、三角形、四角形等の印や突起、凹み等でもよく、また、載置場所5全体、載置場所5の一部(例えば、外周、縁、中央)のいずれかが目印であってもよい。
また、被処理物3が回転台4の上(載置場所5の上を含む)に載置されている場合においては、被処理物3、または被処理物3の一部を目印としてセンサ25で検知しても良い。
図2を用いて本実施の形態における処理フローについて説明する。初期状態において、回転台4は停止しており、回転台4上に被処理物3は載置されていないものとする。
まず初めに、位置センサ25によって目印の位置を測定する(S1)。
次に、前記目印の位置を、回転台支持部を基準とする座標系に座標変換する(S2)。S1において測定された目印の位置は、位置センサ25を基準とする座標系における値であるため、回転台支持部を基準とする座標系に座標変換しなければならない。位置センサ25と回転台支持部との位置関係が一意でない場合は、両者の位置関係を角度センサ30等の他のセンサ等で検知し、検知した値を用いて変換する。なお、座標変換する座標系は直交座標系であってもよく、回転支持部の回転軸を中心とする回転座標系であってもよい。
次に、載置場所5の位置を特定する(S3)。目印と載置場所5との回転台4における相対的な位置関係はあらかじめ判っているので、S2において座標変換された目印の位置等に基づいて載置場所5の位置を特定する。
その後、判定値を算出する(S4)。前記判定値とは、警告の発信または処理の停止の判定に用いる値である。具体的には、測定された目印の位置と、回転台4と回転台支持部との間に不一致が無いと仮定した場合の目印の位置との差である位置ずれを求め、さらに警告または処理の停止を判断するための数値である判定値を算出する。
なお、回転台4と回転台支持部との間に不一致が無いと仮定した場合の目印の位置を設定する方法としては、本実施の形態の処理装置の設計情報に基づいて、設計通りの値を設定しても良いし、事前に不一致が生じていない状態(不一致が正常範囲に収まっている状態を含む)における位置を測定して、前記測定した値をその値として設定しても良い。
判定値の一例としては、測定された目印の位置と、回転台4と回転台支持部との間に不一致が無いと仮定した場合の目印の位置との間の距離がある。また、特定の方向(例えば、目印における回転機構による回転方向またはそれと直交する方向等)に対する距離を判定値としても良い。
さらに、S3において特定する載置場所が2つ以上の場合、S4の工程をそれに応じたものとすることにより、より正確に判定値を算出することができる。また、載置場所が3つ以上の場合、第一の載置場所の位置と第二の載置場所の位置とから、第三の載置場所の位置を算出することができる(S3)。これらについては実施例において詳細に記載する。
次にS4において算出した判定値が正常範囲であるかどうかを判断する(S5)。
正常範囲を超えている場合(異常である場合)、警告の発信を行なう(S6)。前記警告の発信は、音または光などの信号を発信する警告手段によって行なうことができる。
次にS4において算出した判定値が許容範囲であるかどうかを判断する(S7)。
前記位置ずれが許容範囲外である場合、被処理物における処理の品質または、本実施の形態の処理装置において障害を生じる可能性が高いとして、処理の停止を行なう(S8)。
S5において正常範囲内であると判断した場合、またはS7において、許容範囲内であると判断した場合は、特定された載置場所5の位置に搬送手段19によって被処理物3を載置する(S9)。また、載置の前に前記位置ずれに応じてその逆方向に載置場所が移動するよう前記回転機構が前記回転台支持部を回転させても良い。
被処理物3に対し、処理手段(図示せず)によって被処理物3に対する処理を行なう(S10)。処理を行なうに際して、回転機構9を用いて、回転台4を回転させても良い。
処理が完了したら、位置センサ25によって目印の位置を測定する(S11)。目印の位置を測定するのは、S10の処理過程において、回転台支持部に対し回転台4が移動している可能性があるからである。また、被処理物3、または被処理物3の一部を目印としてセンサ25で検知しても良い。
次に、被処理物3の位置を特定する(S12)。被処理物3が載置場所5に正しく載置されているならば、目印と被処理物3との回転台4における相対的な位置関係はあらかじめ判っているので、S11において測定された目印の位置等に基づいて被処理物3の位置を特定することができる。また、目印が被処理物3あるいは被処理物3の一部であるならば、被処理物3が載置場所5に正しく載置されていなくても、被処理物3の位置を特定することができる。
特定された位置から被処理物3を搬送手段19によって取り出し、搬出する(S13)。また、前記取り出しの前にS12で特定された載置場所5の位置を用いて位置ずれを算出して前記位置ずれの逆方向に載置場所が移動するよう前記回転機構が前記回転台支持部を回転させても良い。
以上のS1〜S13の工程によって、被処理物3を回転台4上の載置場所5に載置し、被処理物3に対し処理を行ない、搬出することができる。
本実施の形態は、回転台支持部に対して、前記不一致等のため回転台4の位置が変わった場合に、そのことを検知し、停止ないし警告を行なうことにより、載置の失敗を含む被処理物に対する処理の失敗および処理装置の故障などを未然に防止することができる。
また、載置または取り出しの前に前記位置ずれの逆方向に載置場所が移動するよう前記回転機構が前記回転台支持部を回転させるので、前記回転方向に対する前記位置ずれを原因とする、載置の失敗を含む被処理物に対する処理の失敗および処理装置の故障などを未然に防止することができる。
また、本実施の形態は、また、回転台と回転台支持台との間に不一致が生じていても、載置場所へ被処理物を載置する前に、載置場所の位置を特定し、前記特定された載置場所の位置へ被処理物を載置/取り出しすることにより、失敗なく被処理物の載置の載置/取り出しを行なうことができる。
なお、S1〜S13の処理を複数回、繰り返して実行する時は、前回のS12にて特定した載置場所の位置を、S3で求める載置場所の位置として用いても良く、この場合、S1およびS2の工程を省略することができる。
図3を参照して本発明の実施例に係る気相成長処理装置の処理部1である気相成長処理部101および搬送手段19である基板トレイ搬送部119の構成について説明する。図3は、本実施例に係る気相成長処理部101および基板トレイ搬送部119の断面を示す図である。
図3に示すように、本実施例に係る気相成長処理部101の外部には、基板トレイ17の仮置場所18と基板トレイ搬送部119とが配置されている。基板トレイ17には、それぞれ被処理物3である基板103が載置されている。
本実施例では、仮置場所18に配置された基板トレイ17を基板トレイ搬送装置19が把持し、載置場所5である載置台105まで搬送する。基板103は基板トレイ17に載置されており、基板トレイ17とともに搬送される。気相成長処理部101では基板103に対し成膜処理が行われ、成膜処理終了後に基板トレイ17は再び基板トレイ搬送部119によって把持され、搬出される。基板103は基板トレイ17に載置されているので、基板トレイ17とともに搬出される。
本実施形態に係る気相成長処理部101の構成を説明する。気相成長処理部101は、図3に示すように、反応室2、回転機構9であるモータ109、ガス供給部15、排気経路16を備える。ガス供給部15と反応室2とは供給管12で接続されている。
気相成長処理部101には、反応室2の内部において、回転台4の上面に複数の円盤状の載置台105が設けられている。本実施例では、回転台4の上に計6台の載置台105が設置されている。各載置台105には、それぞれ基板トレイ17が載置可能である。
回転台4は、回転台支持部に支持されている。回転台支持部はシャフト8と回転台支持台40とから構成される。回転台4を支持する回転台支持台40はシャフト8の上端に固定されており、シャフト8はモータ109に回転可能に接続している。モータ109によって回転台支持部および回転台4とは回転可能である。回転台4の上面に設けられた複数の載置台105は、それぞれ自転するように構成されている。載置台105が自転する仕組みとしては、ギヤの噛み合わせを利用する方法を採用している。自転ギヤ6は回転可能に回転台に支持されており、各載置台105はそれぞれ自転ギヤ6の上に設置されており、回転台4の外周には固定ギヤ7が配置されている。固定ギヤ7は反応室2側に固定されており、回転台4には固定されていない。そのため回転台4が回転しても固定ギヤ7は回転しない。自転ギヤ6と固定ギヤ7とは噛み合っている。自転ギヤ6は、回転台4の回転にともなって公転し、回転台4の外周に固定された固定ギヤ7との噛合によって自転する。したがって、載置台105の上に載せられた基板103は、回転台4の回転および載置台105の回転によって、公転と自転とをすることになる。
載置台105の材質には、高い熱伝導性および高い耐久性が求められるため、グラファイト、SiC(炭化珪素)またはSiCコーティングされたグラファイトを使用する。また、自転ギヤ6には、BN(窒化ホウ素)またはSBN(窒化ホウ素と窒化珪素との化合物、登録商標第1737632号)を素材として使用する。これらを用いるのは、載置台105の縁をセンサによって検出しやすくするためでもある。これについては、後ほど詳しく説明する。
回転台4の下にはヒータ10が配置されており、基板103を加熱するようになっている。また、シャフト8にはエンコーダ30が取り付けられており、シャフト8の回転角度(回転台支持部の向き)を出力する。
供給管12の反応室2内の端部はガス吹き出し口13となっていて、供給管12に供給されたガスを反応室2内に吹き出すことができる。
図4を参照して基板トレイ搬送部119の構成を説明する。図4は、基板トレイ搬送部119の断面を示す図である。基板トレイ搬送部119は、図4に示すように、吸着ヘッド22、搬送アーム26、高さ方向移動機構127、第一の移動機構128および第二の移動機構129を備えている。
図4に示すように、基板トレイ搬送部119の先端には吸着ヘッド22が備えられている。吸着ヘッド22は、4つの吸着パッド23を有している。吸着パッド23には真空配管24が接続されており、真空配管24の内部を大気圧の状態から真空状態にすることが可能である。真空配管24の内部が真空状態になることによって、基板トレイ17を上方から吸着保持し、搬送することできる。吸着パッド23は、基板トレイ17の上面を吸着するように設定されており、誤って基板103を吸着しないようになっている。この際、基板トレイ17の上面を吸着しているが、下面または側面を吸着保持しても良い。また、基板トレイ17を真空配管24によって吸着する方法以外に、静電チャック等を利用した方法を採用しても良い。
基板トレイ搬送部119が有する移動機構27、28、29を説明する。図4に示すように、吸着ヘッド22は搬送アーム26に接続されている。搬送アーム26は、高さ方向移動機構127に固定されており、かつ高さ方向移動機構127は第一の移動機構128に固定されている。高さ方向移動機構127は、上下に移動可能であり、第一の移動機構128は、搬送アーム26が延在する方向(以下、この方向をX方向とする)に移動可能である。また、高さ方向移動機構127および第一の移動機構128のいずれの移動方向に対しても、直角方向(図中手前から奥の方向)に移動する第二の移動機構129が配置されている。(以下、この方向をY方向とする)。第一の移動機構128は、第二の移動機構129に固定されている。したがって、第二の移動機構129が移動すると、高さ方向移動機構127および第一の移動機構128のいずれもが動くことになる。
制御装置37は警告灯41および制御パネル42を備えている。高さ方向移動機構127、第一の移動機構128および第二の移動機構129はそれぞれ制御装置37の移動制御部に接続されており、この移動制御部が各移動機構を制御している。
次に、位置センサ25である反射型光ファイバセンサ125が有する検出機能を説明する。図4において、反射型光ファイバセンサ125は、吸着ヘッド22のX方向先端にセンサの先端を下向きにして取り付けられており、そこから光を発している。反射型光ファイバセンサ125は、発した光に対する対象物からの反射光の光量変化を計測することによって、対象物の有無を検出する。本実施形態では、前述のように載置台105にはグラファイト、SiCまたはSiCコーティングされたグラファイトを使用しており、自転ギヤ6にはBNまたはSBNを使用している。すなわち載置台105の縁よりも−X方向側には、BNまたはSBNのいずれかが、反射型光ファイバセンサ125から見て臨めるようになっている。
グラファイト、SiCまたはSiCコーティングされたグラファイトの反射率は、BNまたはSBNと比較して非常に小さいので、載置台105と自転ギヤ6との反射光量の差は十分に大きくなる。したがって、本実施例では、載置台105と自転ギヤ6とのコントラストを検出することによって、載置台105の縁を検出することができる。また、反射型光ファイバセンサ125は制御装置37の検出制御部に接続されており、センサが縁を検出した信号を検出制御部に送信することができる。なお、反射型光ファイバセンサ125によって載置台105の縁を検出するのは、載置台105の縁を位置検出のための目印として用いるためである。
本実施例では、位置センサとして反射型光ファイバセンサ125を使用している。反射型光ファイバセンサ125は比較的安価であり、耐熱性が高いため、対象物の有無を検出する目的では工業的に広く用いられている。また、位置センサとして、ビデオカメラを用いても良く、静電容量型または渦電流検知型のセンサを用いても良い。基本的には非接触型が望ましいが、カンチレバー等を用いた機械スイッチ式でも構成可能である。
図5を参照して本実施例に係る基板トレイ17の構成を説明する。図5は、本実施形態に係る基板トレイ17の断面を示す図である。
基板トレイ17は、略円盤形の石英板である。図5に示すように、基板トレイ17は、上面に凹部20を有し、下面に凸部21を有する。凹部20は、基板103を載置するための部位である。凸部21は、載置台105と勘合する部位であり、載置台105の外周に合わせて凸部21の寸法を設定している。
図6〜11を用いて本実施例における処理工程を説明する。図6に本処理工程に係る初期状態を示す。反応室2の上部2bは下部2aと分離して上方に移動し、反応室2は開放状態となっている。そのため、反応室2内に吸着ヘッド22を侵入させることが可能である。また、載置台105には、基板トレイ17および基板103は載置されておらず、かつ、仮置場所18には気相成長処理前の基板103が載置された基板トレイ17が配置され、吸着ヘッド22によって吸着可能な状態となっている。
気相成長処理部101への基板トレイ17の搬送は、本実施例においては1枚ずつ行なわれる。すなわち、回転台4上に載置台105が6つあり、前記6つの載置台105にそれぞれ1つずつ基板トレイ17を載置するので、吸着ヘッド22は仮置場所18と回転台4との間を計6回往復することとなる。
図7に、前記6回の往復のうち1つの往復、すなわち、1枚の基板トレイ17を仮置場所18から1つの載置台105(以下、前記1つの載置台105を「対象載置台105a」と言う)に搬送する処理フローを示す。なお、前記往復の間に、仮置場所18には、処理前の基板103が載置された新たな基板トレイ17が準備され、配置される。
なお、図7に示した処理フローは本実施の形態に係る処理フローである図2のS1〜S9の工程に相当する。なお、図2の処理フローにおいてはS2において目印の位置を座標変換しているのに対して、図7のフローにおいてはS106にて載置場所の位置P0’を座標変換している点が異なる。また、S9の工程はS102とS112とに相当する。また、S101は図7の本実施例において新たに追加された工程である。
まず、対象載置台105aが基準位置に来るようにモータ109を回転させ、そして停止させる(S101)。基準位置とは、基板トレイ17を対象載置台105aに載置するために、対象載置台105aを停止する位置(ただし、回転台4と回転台支持部との間に不一致がないと仮定した場合の位置)のことである。通常は、対象載置台105aが仮置場所18に最も近くなる位置に停止する。これにより、基板トレイ搬送部による搬送距離が最小となり、搬送のための時間および搬送に関するトラブル発生のリスクを軽減することができる。また、吸着ヘッド22の稼動範囲を最小とすることができるので、基板トレイ搬送部119を小型とすることができる。なお、基板トレイ17を載置可能な範囲であれば、基準位置から若干回転移動した位置であっても良い。
具体的に言えば、工程S101は、エンコーダ30の値が載置台105毎にあらかじめ決められた所定の基準値から予め定められた誤差範囲内の値となる位置までモータ109を回転させ、停止させれば良い。
なお、停止した状態におけるエンコーダの値e1は以後の処理に用いるので、制御装置37中のメモリに記憶させる。
次に、吸着ヘッド22を仮置場所18の上に位置するよう移動機構25、26、27を用いて移動させ、吸着パッド23を仮置場所18上の基板トレイ17に密着させ、真空配管24内を減圧することにより、基板トレイ17を吸着ヘッド22に吸着させる(S102)。
次に、基板トレイを吸着・保持した状態の吸着ヘッド22を、移動機構25、26、27を用いて基準位置方向(すなわちX方向)に移動させつつ、反射型光ファイバセンサ125を用いて、目印の位置P1を測定する(S103)。本実施例において、目印は、対象載置台105aの縁である。
図8は、反射型光ファイバセンサ125が対象載置台105aの縁を検出する時の断面を示す図である。図8に示すように、反射型光ファイバセンサ125は基準位置の方へ移動しながら、センサ先端から投射光31を発している。前述したように、対象載置台105aにはSiCコーティングされたグラファイト等を使用しており、自転ギヤ6にはSBN等を素材として使用している。SiCコーティングされたグラファイト等の反射率は、SBN等の反射率と比較して非常に小さい。したがって、基準位置の方向に載置台105が存在するならば、反射型光ファイバセンサ125は、投射光31に対する反射光32の光量が多い状態から少ない状態へと移動していく。なお、基板103の半径に対し、本発明のずれは極めて微小であり、基準位置の方向に対象載置台105aが存在しないということは通常では考えられない。基準位置の方向に一定距離移動しても光量が少ない状態へ移動しない場合、本実施例の気相成長処理装置において重大かつ致命的な障害が発生している可能性があるので、警告の発信および処理の停止を行なうことが好ましい。
第一の移動機構128と第二の移動機構129とは、自身の座標を常時検出し、反射型光ファイバセンサ125の位置を制御装置37に常時出力している。一方、反射型光ファイバセンサ125は、検出した光量が、あらかじめ定められた閾値を上回った瞬間または下回った瞬間に、制御装置37に信号を出力するように設定されている。
反射型光ファイバセンサ125が反射光32の強度変化を感知すると、すなわち閾値をまたがる変化を感知すると、この感知をきっかけに信号を制御装置37に発する。その信号を受け取った時点において、移動機構28、29から制御装置37に入力された座標を、制御装置37は対象載置台105aの縁の位置として検出する。この座標をP1(x1,y1)とする。しかしながら、P1(x1,y1)だけでは、目印(対象載置台105aの縁)上の1点の位置が測定できただけにすぎず、対象載置台105aの位置が測定できたことにはならない。
そこで、図10に示すように、そのまま向きを変えずに吸着ヘッド22を直進させ、投射光31に対する反射光32の光量が少ない状態から多い状態へと移動する点P2(x2,y2)の位置を測定する(S104)。P2も目印(対象載置台105aの縁)上の1点の位置である。
S103、S104で測定された目印の位置から対象載置台105aの位置P0を求める(S105)。なお、対象載置台105aは円形であるので、前記P0は円の中心点の座標値とする。対象載置台105aの半径rはあらかじめ判っているので、前記半径rとP1、P2の位置から対象載置台105aの中心の位置P0(x0,y0)を、P1、P2からともに距離r離れた点として算出することができる。なお、前記算出により求められる位置P0の候補は2点あるが、反射型光ファイバセンサ125が対象載置台105a上を通過する軌跡を、P0から+Y方向ないし−Y方向に半径rの1/3〜3/4程度ずらし、確実にP0の+Y側、または−Y側を通過するようにすることによって、前記2点のうち、いずれがP0であるか判断することができる。
なお、反射型光ファイバセンサ125を対象載置台105aの+Y側、または−Y側を通過させるために、吸着ヘッド22における反射型光ファイバセンサ125の固定位置を図10に示すように、基板トレイ17の吸着位置に対し+Y側、または−Y側にずらして固定してもよい。この場合、後に説明する基板トレイ17を対象載置台105aに載置する工程において、吸着ヘッド22のY方向への移動量を小さくすることができる。
なお、円周上の点から円の中心を求める従来技術としては、特開平1−57104号公報、特開平4−212436号公報、特開平6−85039号公報、特開平8−189824号公報などにも開示されており、これらの文献記載の技術を用いて対象載置台105aの中心点を測定しても良い。
算出された対象載置台105aの中心点P0は、反射型光ファイバセンサ125による測定に係る座標系における値であるので、前記P0の値を、回転台支持部を基準とする座標系における値P0’に座標変換する(S106)(具体的には、回転台支持部の回転軸を原点とする座標系に平行写像したのちに、P0をエンコーダ30の値e1が意味する角度分だけ回転軸中心に逆方向に回転写像する)。
具体的に説明する。エンコーダ30の値は0から345599の値をとり、角度とエンコーダ30の値とは線形とする。また、エンコーダ値は上方から見て左回りがエンコーダ値の増加方向とする。エンコーダの値はe1であるから、シャフト8の回転角はe1×2π/345600である。これをθとする。ここで、反射型光ファイバセンサ125による測定に係る座標系における回転台支持部の回転軸の座標がO(xo、yo)であったとすると、まず、前記Oを原点とする座標系に平行写像、さらに−θだけ回転写像する。すなわち、
x0’=(x0−xo)×cosθ+(y0−yo)×sinθ
y0’=−(x0−xo)×sinθ+(y0−yo)×cosθ
とする。これにより、P0は、P0’(x0’,y0’)に座標変換される。なお、yoが0となるよう、装置が構成されている場合は、
x0’=(x0−xo)×cosθ+y0×sinθ
y0’=−(x0−xo)×sinθ+y0×cosθ
となる。
なお、本実施例においては、図2のS2にあたる座標変換は無く、その代わりに、S106において載置台105の位置P0について座標変換している。これは、載置台105の縁(目印)がP0を中心とする円であるため、S105において位置P0を算出するにあたり、P0は反射型光ファイバセンサ125による測定に係る座標系における値であっても算出できるためである。また、本実施例ではP0は反射型光ファイバセンサ125による測定に係る座標系における値として算出されるので、S106における座標変換が必要となる。本実施例によれば、1つの対象載置台に対する載置に関し、前記座標変換の回数が1回で良い。
対象載置台105aの中心点P0’から判定値を算出する(S107)。具体的には、算出したP0’と回転台4と回転台支持部との間に不一致が無い場合の対象載置台105aの中心点P0”とを比較し位置ずれを求め、S108、S110で分岐判断に用いる数値である判定値を算出する。
なお、前記回転台4と回転台支持部との間に不一致が無い場合の対象載置台105aの位置P0”として、本実施の形態の処理装置の設計情報に基づいて、設計通りの値を設定しても良いし、事前に不一致がない(前記不一致が正常範囲である状態を含む)における位置を測定して、前記測定した値をP0’と同じ座標系に座標変換した値を設定しても良い。
具体的な算出方法としては、前記移動ベクトルP0’とP0”との距離を判定値とする方法がある。まず、P0’とP0”との差、すなわち位置ずれをΔP0’とする。
式で表すと、
ΔP0’=P0’−P0”
とした場合の
|ΔP0’|
を判定値とする。これは、対象載置台105aの中心P0においてずれた距離である。
また、ΔP0’をP0”に射影したベクトルのスカラーを判定値としてもよい。式で表すと
ΔP0’・P0”/|P0”|
となる。これは、P0”を基準位置とした場合のX方向のずれを表す値である。
また、P0”とOとを結ぶ直線とP0’との距離を判定値としても良い。式で表すと
|(P0’×P0”)/|P0”||
となる。これは、P0”を基準位置とした場合のY方向のずれを表す値である。
また、P0’とP0”とのなす角を判定値としても良い。式で表すと
cos-1(P0’・P0”/|P0’||P0”|)
となる。これは、P0”を基準位置として静止した状態からP0’を基準位置とする状態まで移動させるに要する角度(すなわち、O中心の回転座標系における回転方向の位置ずれ)である。
また、ΔP0’をP0’に射影したベクトルのスカラーを判定値としてもよい。式で表すと
ΔP0’・P0’/|P0’|
である。これは、P0’を基準位置とした場合のX方向のずれを表す値である。
なお、本工程が特定の方向に対する位置ずれを求めるものである場合、S105〜S106における算出、座標変換において、前記特定の方向の距離に関連しない演算については省略した方が望ましい。
たとえば、ΔP0’・P0”/|P0”|を判定値とする場合であって、P0”のy座標値が0である場合、ΔP0’のx座標値が判定値となるため、P0’およびΔP0’のy座標値を算出する必要はない。
同様に、|(P0’×P0”)/|P0”||を判定値とする場合であって、P0”のy座標値が0である場合、ΔP0’のy座標値の絶対値が判定値となるため、P0’およびΔP0’のx座標値を算出する必要は無い。
また、S105〜S106における座標変換、特定ないし算出において正確な計算式に代えて近似式を用いることができる。たとえば、θが小さい場合において、sinθの代わりに0を、cosθの代わりに1を用いても良い。
次にS107において算出した判定値が正常範囲であるかどうかを判断する(S108)。前記正常範囲とは、測定誤差、計算誤差、熱膨脹等にともなう形状変化、本気相成長処理装置の通常の利用による摩耗等により、生じることが当然と予想される程度の距離であって、かつ本気相成長処理装置の機能において障害となる可能性が実用上十分な程度に低い距離を言う。
前記判定値が前記正常範囲を超えている場合(異常である場合)、警告の発信を行なう(S109)。前記警告の発信とは、本実施の形態の気相成長処理装置が音または光などの信号を発信する警告手段を備え、前記警告手段によって、警告を意図する音(警告音)または光(警告光)などの信号を発信するという意味である。本実施例の気相成長処理装置の利用者はこの警告を知覚することによって、正常範囲を超える何らかの不都合があることを認識できる(利用者は本発明の気相成長処理装置を点検し、前記警告の原因を調べ、本実施例の気相成長処理装置に適切な処置をすることができる。なお、利用者に認識させるための警告は、図3にあるような警告灯41の点灯により行なってもよいし、通信媒体を経由して制御パネル42等のモニターに警告表示するようにしてもよい。
次にS107において算出した位置ずれが許容範囲であるかどうかを判断する(S110)。前記許容範囲とは本装置の機能において障害となる可能性が実用上十分な程度に低い範囲を言う。通常、前記正常範囲を超えた判定値であったとしても、基板の処理品質および本実施例の気相成長処理装置において障害を生じない判断はあり得る。そのため、通常は、前記正常範囲より許容範囲は広い範囲となる。
判定値が許容範囲より大きい場合、基板103の処理の品質または本実施例の気相成長装置において障害を生じる可能性が高いとして、停止フラグの値を真とする。(S111)。停止フラグとは、判定値が許容範囲より大きい等の理由により処理を停止すべきことを以後の工程に知らせるための情報であり、制御装置37に記憶される。なお、通常状態においては、停止フラグは偽に設定されている。
判定値がS108において正常範囲以下であった場合、またはS110において許容範囲以下であった場合は、S106にて算出したP0の位置に基板トレイ17を載置する(S112)。
図9に基板トレイ17を対象載置台5aに載置する時の断面図を示す。第一の移動機構128と第二の移動機構129とによって、吸着ヘッド22に吸着された基板トレイ17をP0まで移動させたのちに、高さ方向移動機構127によって、吸着ヘッド22を下方に移動し、前記基板トレイ17を対象載置台105aに載置する。ここで真空配管24内の気圧を雰囲気圧まで上げ、吸着パッド23を基板トレイ17から解放する。
なお、反射型光ファイバセンサ125は、基板トレイ搬送部119の移動部位である吸着ヘッド22に設けられているので、反射型光ファイバセンサ125を移動させるための移動機構を、吸着ヘッド22を移動させる移動機構と別に設ける必要が無く、構成が単純である。また、S103、S104における測定とS112における載置とを一連の移動によって実施することができるので、移動距離を短くすることができ、もって処理時間を短くすることができる。
また、S112において、回転台4をモータ109を位置ずれに応じて回転させても良い。この場合、第二の移動機構129による移動が不要または小さな移動となるので、装置を単純化ないし小型化することができる。この場合の、回転台4の回転すべき角度は、P0における回転軸回りの位置ずれの逆方向である。基準位置のX座標が0であり、かつ回転台支持部の回転軸の座標がOのX座標xoが0である場合は
sin-1((y0−yo)/|P0−O|)
となる。なお、回転後はエンコーダ30の値に基づきS101と同様にθを求め、S106で求めたP0’の値に基づきS106の逆の座標変換を用いてP0を算出する。
x0=x0’×cosθ−y0’×sinθ+xo
y0=x0’×sinθ+y0’×cosθ+yo
さらに、算出されたP0の位置に基板トレイ17を載置すれば良い。
以上S101からS112の工程によれば、回転台4と回転台支持部との間に許容範囲より大きな不一致が生じている場合、停止フラグを立て、基板トレイ17を載置台105に載置しないので、載置を失敗せず、停止すべき状態にあることを以後の工程に知らせることができる。これにより、基板103に対する処理の失敗および気相成長処理装置の故障などを未然に防止することができる。
また、前記許容範囲以下である時に、測定により求めた対象載置台105aの位置に基板トレイ17を載置するので、載置に失敗することが無く、かつ小さな不一致があっても載置することができる。
また、回転台4と回転台支持部との間に正常範囲より大きなずれが生じている場合、警告を発信するので、利用者は正常範囲より大きなずれが生じている事実を知ることができる。
図11に本実施例に係る全体の処理フローを示す。
初期設定として、停止フラグを偽に設定しておく(S120)。停止フラグの意味は、S111にて説明した通りである。
回転台4上の1つ以上複数の載置台105について、前記載置台105を対象載置台105aとして図7のフローを繰り返し行なう(S121)。これにより回転台4上の複数の載置台105について、基板トレイ17を載置することができる。ただし、各S101開始前に停止フラグが真の場合には、以後は繰り返さず、S121の工程を終了する。
その後、停止フラグの値を確認する(S122)。停止フラグが真の場合、処理停止すべきであるので、停止の処理を行なう(S123)。停止においては、すでに異常が発生していることを想定した停止手順を行なうことが望ましい。すなわち、第一に利用者の安全、第二に気相成長処理装置の保全、第三に本気相成長処理装置の処理に関する記録の保全(原因の解析等に用いるため)および基板103の保全を優先順位として安全に停止することが望ましい。
停止フラグが偽の場合、処理停止する必要は無いので、反応室2を閉じる(S124)。具体的には、反応室上部2bを下方に移動させ、反応室下部2aと一体とすることによって、回転台4および回転台4に設けられた載置台105上に載置された基板トレイ17、基板103を内包する閉鎖空間として反応室2を形成する。これにより、基板103に対して気相成長処理をする準備が整ったことになる。
基板103に対し、気相成長処理を行なう(S125)。具体的には、回転台4を回転させつつ、前記回転台4上の自転ギヤ6、載置台105、基板トレイ17、基板103を自転させる。この状態で、ヒータ10によって基板103を加熱する。基板103の温度が所定の温度になった所でガス供給部15より材料ガスを供給する。ガス供給部15より供給された材料ガスは供給管12を通過してガス吹き出し口13より吹き出され、基板103に供給され、基板103上に気相成長し、薄膜が形成される。薄膜形成後は、ヒータ10を停止し、排気経路16より材料ガスを排出する。
気相成長処理が終了したら、反応室2を開き、開放状態とする(S126)。具体的には、反応室上部2bを反応室下部2aと分離させ、上方に移動させる。
最後に気相成長した基板103を載置した基板トレイ17を載置台105から搬出する(S127)。本実施例において、基板トレイ17の搬出は1枚ずつ行なわれる。すなわち、基板トレイ17が載置された各載置台105について、それぞれを対象載置台105aとして、対象載置台105aを基準位置に移動させ、P1の測定、P2の測定、P0の算出を行ない、前記P0まで吸着ヘッド22を移動させ、基板トレイ17を吸着パッド23で吸着し、仮置場所18まで基板トレイ17を移動させ、そこで吸着パッド23から解放する。以上の手順を、全ての載置台105から基板トレイ17が無くなるまで繰り返す。なお、前記基準位置への移動に関してはS101と同様であり、P1の測定に関してはS103と同様であり、前記P2の測定に関してはS104と同様であり、前記P0の算出に関してはS105と同様である。
また、本工程においては、基板トレイ17の縁をP1、P2とし、基板トレイ17の半径をP0の算出に用いる半径rとした方が望ましい。この場合、算出されるP0は基板トレイ17の中心点となる。基板トレイ17の中心点を求めることによって、取り出す基板トレイ17の位置を直接知ることができるので、載置台105の中心点P0を求め、それを基板トレイ17の中心点の代替として用いて基板トレイ17を取り出す場合と比較して、より正確である。また、基板トレイ17が載置台105の上に被さり、反射型光ファイバセンサ125から載置台105の縁を臨み見ることができず、載置台105の縁を検出することができない場合は、基板トレイ17の縁をその代わりとして検出するべきである。また、基板トレイ17の縁に替えて基板103の縁を検出しても良い。
以上のS120〜S127の工程によって、基板103を回転台4上の載置台105に載置し、基板103に対し気相成長処理を行ない、薄膜を形成させ、搬出することができる。
本実施の形態は、回転台支持部に対する位置ずれを求め、前記位置ずれから求められた判定値が所定の値を超えている場合に停止ないし警告を行なうことにより、載置の失敗を含む基板に対する処理の失敗および本実施例の気相成長処理装置の故障などを未然に防止することができる。
本発明の処理装置は、回転台支持部に対して、前記不一致等のため回転台の位置が変わった場合に、その位置ずれを求め、載置または取り出しの前に前記位置ずれの逆方向に載置場所が移動するよう前記回転機構が前記回転台支持部を回転させるので、前記回転方向に対する前記位置ずれを原因する、載置の失敗を含む基板に対する処理の失敗および気相成長処理装置の故障などを未然に防止することができる。
また、本実施の形態は、回転台支持部に対して、前記不一致等のため回転台4の位置が変わった場合にあっても、載置/取り出しに失敗することなく、基板103を載置台105に対し載置/取り出しすることができる。
なお、全ての載置台105において、S103からS110に到るフローおよびS110が真である場合のS111の工程を実施する必要は無い。なぜならば、互いに距離の近い載置台105の位置ずれは、その傾向を同じくするからであり、1つの載置台の位置ずれを算出し、前記載置台105の位置ずれが微小であるならば、それと距離の近い載置台においては、位置ずれが正常範囲内と推定できるからである。その場合、S103からS110に到るフローおよびS110が真である場合のS111の工程を実施する代わりに、対象載置台105aのP0”に距離の近い載置台105の位置ずれΔP0’を加算する等の方法によってP0’を推定し、前記推定されたP0’からS106の逆の座標変換を用いてP0に座標変換し、前記P0をS112およびS127の工程に用いれば良い。
具体的には、隣接する載置台105については測定せず、1つおきに測定する、回転台支持部の回転軸を挟んで対称位置となる2つの載置台についてのみ測定する、第一の載置台についてのみ測定する等の方法がある。
また、ある載置台105に係る図7のフローにおいて、判定値が正常範囲外である場合にのみ、その近くの載置台105についてもS103からS110に到るフローおよびS110が真である場合のS111の工程を実施し、そうでない場合は、近くの載置台105については測定しないというように、判定値に応じて測定する載置台105を変えるという方法もある。
さらに、S120〜127のフローを繰り返し実施する場合、N回目の実施のS127において算出したP0の位置と、N+1回目の実施のS105において算出したP0の位置とには、回転台4と回転台支持部との位置関係においてほとんど変化は無いと考えられるので、N+1回目の実施におけるS103〜S105の工程を省略し、その代わりにN回目の実施のS127で算出したP0を以後の工程に用いても良い。この場合、S127で求めるP0は、載置台105の中心点であることが望ましい。S127で求めるP0が基板トレイ17や基板103の中心点である場合、それと載置台105の中心点との間にずれがある可能性があり、次回のS105において算出するP0の代替とするには誤差が大きすぎる可能性があるからである。
ただし、N回目の実施のS127においてP1、P2を測定した時のエンコーダ30の値と、N+1回目の実施のS101におけるエンコーダ30の値とが異なる時には、両者のエンコーダ値の差分が示す角度だけ、Oを中心に、N回目の実施のS127におけるP0の位置を回転写像してN+1回目のP0の値として用いる。
また、N回目のS127の工程とN+1回目のS121の工程とにおける同一の載置台105を対象載置台105aとする作業を続けて実施しても良い。この場合、S127においてすでに対象載置台105aが基準位置まで移動しているので、S101の工程を省略することができる。また、N回目の実施のS127においてP1、P2を測定した時のエンーダ30の値と、N+1回目の実施のS101におけるエンコーダ30の値とが同じになるので、前記回転写像が不要である。
本実施例は、実施例1の1つ目の載置台105のP0および2つ目の載置台105のP0の値とから、3つ目以後の載置台105に係るP1、P2の値を測定せずにP0の値を算出によって求める実施例である。本実施例はその装置構成およびフローにおいて、実施例1と共通する部分が多いので、共通する部分については説明を略し、相違する部分のみ説明する。
図12に、S121における3つ目以後の載置台105に係るフローを示す。
本実施例においては、第一の載置場所である1つ目の載置台105のP0’をP0’1、第二の載置場所である2つ目の載置台105のP0’をP0’2、第三の載置場所である3つ目の載置台105のP0’をP0’3と表す。また、1つ目の載置台105のP0”をP0”1、2つ目の載置台105のP0”をP0”2、3つ目の載置台105のP0”をP0”3と表す。
2つ目の載置台105から1つ目の載置台105へ向かうベクトルについて、P0’とP0”とのなす角度を求める(S201)。すなわち、
ΔP0’12=P0’1−P0’2
ΔP0”12=P0”1−P0”2
とおき、さらに
cosω=ΔP0’12・ΔP0”12/(|ΔP0’12|・|ΔP0”12|)
sinω=ΔP0’12×ΔP0”12/(|ΔP0’12|・|ΔP0”12|)
とする。ωは回転台4が回転台支持部に対し、どれだけ回転移動(回転ずれ)を起こしているかを表す角度である。
P0’1(x0’1,y0’1)を−ω回転写像する(S202)。回転した値をP0’ω1(x0’ω1、y0’ω1)とする。式で示すと
x0’ω1=x0’1×cosω+y0’1×sinω
y0’ω1=−x0’1×sinω+y0’1×cosω
となる。
さらにP0’ω1からP0”1を減算し、平行移動成分(軸ずれ)であるΔP’ω(Δx’ω,Δy’ω)をもとめる(S203)。回転台支持部に対する回転台4の移動は、回転移動成分であるωと、平行移動成分であるΔP’ωとの組合せとして表現することができる。
次に3つ目の載置台105について、その位置P0’3(x0’3,y0’3)を求める(S204)。P0’3の位置はP0”3(x0”3,y0”3)に対し、ΔP’ωを加算したのちにωだけ回転写像すれば良い。すなわち、
x0’3=(x0”3+Δx’ω)×cosω−(y0”3+Δy’ω)×sinω
y0’3=(x0”3+Δx’ω)×sinω+(y0”3+Δy’ω)×cosω
で求めることができる。
以上、S201〜S204によって、P0’3、すなわち3つ目の載置台におけるP0’を求めることができた。
引き続いて、S107からS110に到るフローを、さらにS110が真の場合はS111を実行する。これは実施例1と同じなので説明を省略する。
S110において、偽の場合、対象支持台5aを基準位置に移動する(S205)。S205は、実施例1のS101と共通する部分が多いので、共通する部分については説明を省略し、異なる部分のみ説明する。S205においてS101と異なるのは、回転を停止する時におけるエンコーダ30の値である。S205においては、事前にP0’が算出できているので、P0’が基準位置となる向きに停止することが望ましい。なぜならば、P0’は計測によって求めた実際の値であるからであり、基板の搬送においては実際の値を用いた方がより正確な載置および取り出しが可能となるからである。
具体的には、P0’の方向を算出する。式で示すと、
x0’>0かつy0’≧0の場合、θP0’=tan-1(y0’/x0’)
x0’=0かつy0’≧0の場合、θP0’=π/2
x0’<0の場合、θP0’=tan-1(y0’/x0’)+π
x0’=0かつy0’<0の場合、θP0’=3π/2
x0’>0かつy0’<0の場合、θP0’=tan-1(y0’/x0’)+2π
となる。ここで求まったθP0’に対応する基準値を、回転台4を停止させるエンコーダ30の値として用いる。
S205の次に実施するS102については、実施例1のS102と同じであるので、説明を省略する。
S102の次に実施するS206では、P0を求める。具体的には、S204で算出されたP0’を反射型光ファイバセンサ125による測定に係る座標系に座標変換して座標P0(x0,y0)を求める。つまり、S106における座標変換の逆である。すなわち、
x0=x0’×cosθ−y0’×sinθ+xo
y0=x0’×sinθ+y0’×cosθ+yo
でよい。なお、θはS205にて回転台4の停止後におけるエンコーダ30の値から算出して用いる。
最後に基板トレイ17をS206で算出されたP0の位置にある対象載置台105aに載置する。本工程は実施例1のS112と同じである。
これにより、3つ目の載置台105について、反射型光ファイバセンサ125による測定を行なわずに、警告または停止の判断ができ、その後に、停止を要しない場合に限り基板トレイ17を載置することができる。
さらに、4つ目以後の載置台については、3つ目の載置台に係るフローと共通する部分が多いので、共通する部分に関する説明を略し、相違する部分のみ説明する。4つ目以後の載置台については、3つ目の載置台に係るフローと異なり、S201〜S203を省略することができる。また、S204においては、3つ目の載置台105に係るS201で求めたsinω、cosω、S203で求めたΔP’ωを用い、P0”3に変えて対象載置台105aのP0”を用いることによって、実施することができる。
また、3つ目の載置台105に係るS201からS110に到るフローおよびS110が真である場合のS111の工程、4つ目以後の載置台105に係るS204からS110に到るフローおよびS110が真である場合のS111の工程を、2つ目の載置台105に係るS112の工程の直前に実施し、さらに停止フラグが真でない場合に限りS112を実施しても良い。この場合、2つ目の載置台105に基板トレイ17を載置する前に、全ての載置台105についてS108およびS110の判定を行なうことができる。
この場合、S201〜204、S107、S108、S110、S111の処理は演算のみであるので、処理時間が短く、早期に警告および停止の判定することができる。特に位置ずれが許容範囲より大きい載置台105がある場合には、この時点で停止するので、以後の工程を行なう必要が無く、時間が節約できる。また、この時点において、載置されている基板トレイ17は、1枚のみであるので、停止後の調査、修復作業を開始するにあたり、基板トレイ17を1枚のみ載置台105から回収すれば良く、停止時に複数枚の基板トレイ17が載置されている場合と比較して、手間がかからない。
また、他の実施フローを以下に説明する。1つ目の載置台105に係るS101からS110に到るフローを実施し、かつS110が偽である場合に、続いて2つの目の載置台105に係る処理S101、S103からS110に到るフローを実施する。次にS112を実施する直前に、3つ目の載置台105に係るS201からS204、S107から110に到るフロー、S110が真である場合のS111、4つ目以後の載置台105に係るS204、S107からS110に到るフロー、S110が真である場合のS111を実施する。さらに停止フラグが真でない場合に限り、2つ目の載置台に係るS112を実施し、続いて、他の載置台105に係るS205からS112に到るフローを載置台毎に順に実施して、載置台105に基板トレイ17を載置しても良い。この手順の場合、基板トレイ17を載置する前に装置を停止するべきかどうかが判るので、停止すべきかどうかの判断が早くでき、かつ停止後に載置台105に載置された基板トレイ17を回収する必要が無い。
なお、第一の載置台105と第二の載置台105との距離は長いほど、ωを正確に算出できるので測定精度の面からは望ましく、最も望ましいのは回転台支持部の回転軸を挟み対称の位置にある2つの載置台を第一の載置台105と第二の載置台105とすることである。
また、測定時間の節約の観点で言えば、第一の載置台105と第二の載置台105との距離は短い方が望ましい。第一の載置台105と第二の載置台105との距離が短ければ、両者を短時間で連続して測定できる。
なお、本実施例に示したS201〜S204およびS206の工程は、3つ目以後の載置台に係るS127の搬出工程におけるP0の算出にも適用可能であり、S205の工程は、対象載置台105aを基準位置に移動させる場合において適用可能である。
本実施例はS103におけるP1の測定、S104におけるP2の測定に関し、回転台4の回転を用いる方法である。本実施例はその装置構成およびフローにおいて、実施例1と共通する部分が多いので、共通する部分については説明を略し、相違する部分のみ説明する。
図13は吸着ヘッド22及び回転台4の一部上面図である。実施例3においては、図10のP1の測定と同じく、吸着ヘッド22を第一の移動機構128によってX方向に移動し、対象載置台105aの縁である位置P1を測定の後に、一定距離そのまま直進した位置P3(x3、y3)で停止する。前記一定距離は、P3が対象載置台105aの内部で停止する必要があり、かつその後の計測精度等を保つためには、対象載置台105aの内側かつ縁に近すぎない必要があるので、対象載置台105aの半径の1/2〜1倍程度が望ましい。
その次に、回転台4を右回転させる。その結果、反射型光ファイバセンサ125は、対象載置台105aの縁上の点P2上を通過することになる(図13参照)。正確に表現するならば、反射型光ファイバセンサ125は位置P3で静止したままであり、P2の位置へと移動するわけでは無い。しかしながら、反射型光ファイバセンサ125を静止させたまま回転台4を右回転させるということは、相対的位置関係において回転台4を静止させたまま反射型光ファイバセンサ125を左回転させることと同じであるので、便宜上、回転台4を静止したと仮定した場合における反射型光ファイバセンサ125の回転台4上の移動軌跡を、回転台4を基準として図中に円弧状の矢印として記載している。
回転台4を右回転させつつ、反射型光ファイバセンサ125で反射光量の変化を測定し、あらかじめ定められた閾値を超えた瞬間(すなわち、反射型光ファイバセンサ125が対象載置台105aの縁上の点P2の上を通過した瞬間)にエンコーダ30の値e2を測定する。S101におけるe1からθへの変換と同様の方法で、e2から角度θ2を求める。
P1測定時とP2測定時とでは、回転台4の向きが異なるので、単純比較をすることができない。そのため、回転台支持部を基準とする座標系への座標変換を行なう(この座標変換は、図2のフローのS2に相当する)。具体的にはS106におけるP0に係る座標変換を前記P1、P3について行ないP1’、P2’とする。なお、P2’の算出に際しては、θに変えて、θ2を用いることより、回転台支持部を基準とする座標系におけるP2’を求めることができる。
その後、S105と同様に、P0を算出する。算出されたP0はすでに回転台支持部を基準とする座標系における値P0’であるので、S106の工程は不要であり、S107以後の工程を行なえば良い。
なお、反射型光ファイバセンサ125をP3に停止する時において、P3は対象載置台105aの上になくても良い。すなわち、対象載置台105a上でない位置P3に反射型光ファイバセンサ125を停止させた後に、回転台4を回転させることによって、反射型光ファイバセンサ125の下に対象載置台105aを通過させ、P1の位置を測定する形態であって良い。
また、反射型光ファイバセンサ125を停止させずにP2を測定しても良い。その場合、反射型光ファイバセンサ125による測定が閾値を超えた瞬間における反射型光ファイバセンサ125の位置とエンコーダ30の値により、P2を算出すれば良い。
また、P2の測定以後に、そのまま回転台4の回転を続けて、隣の載置台105の縁であるP12、P22の位置を前記P2に係る測定、算出方法と同様の方法で求めても良い。さらに、引き続いて、反射型光ファイバセンサ125の移動軌跡上にある他の載置台105の縁の位置を測定してもよい。これにより、回転台支持部の回転軸を中心とする同心円上にある載置台105の縁の位置を連続して測定することができる。
この場合、P12、P22から中心点を特定するために、反射型光ファイバセンサ125の移動軌跡は、対象載置台105aの中心からやや外れた位置であることが望ましく、前記P3を停止させる一定距離は、対象載置台105aの半径の1/2〜2/3程度とした方が望ましい。
さらに、上記に説明した手順で2つ以上の載置台105についてその縁を2点ずつ計測し、前記2点から各載置台105の中心点P0’を算出し、続いて図7のフロー中のS107〜S110、S110が真の場合のS111の工程を実施する。基板トレイ17を載置台105に載置する前に各載置台105の中心における回転台支持部に対する回転台4の位置ずれを算出し、前記位置ずれが所定の値を超えている場合に載置の中止ないしその旨の警告を行なうことができるので、停止すべきかどうかの判断が早くでき、かつ停止後に載置台105に載置された基板103を回収する必要が無い。
また、他の実施フローを説明する。上記に説明した手順で2つの載置台についてその縁を2点ずつ計測し、前記2点から各載置台105の位置P0’を算出し、前記2つP0’について図7のフロー中のS107〜S110、S110が真の場合のS111を実施する。次に停止フラグが真でない場合に、3つ目の載置台105に係る図12のフロー中のS201〜204、S107〜S110、S110が真の場合のS111の工程、4つ目以後の載置台105に係るS204、S107〜S110、S110が真の場合のS111の工程を順に実施する。続いて停止フラグが真でない場合に限り、S112(対象載置台105aはいずれの載置台105であっても良い)を実施する。残りの載置台105については、図12のフロー中のS205からS112に到るフローを順次実施しても良い。
この場合、反射型光ファイバセンサ125による測定が計4回で良く、しかも回転台4の回転によって連続して測定することができるので、測定時間が短く済む。
なお、本実施例に示したP0の算出は、S127の搬出工程におけるP0の算出にも適用可能であり、S205の工程は、対象載置台105aを基準位置に移動させる場合において適用可能である。
本実施例は、回転台4の軸ずれを原因とする異常振動等を防止することを目的とする。重心と回転軸とがずれた状態で回転台4を回転させた場合、遠心力の不均一となって現れ、異常振動などの原因となる。重心と回転軸とのずれは、回転台4の中心と回転台支持部の回転軸との距離(軸ずれ)によって判定することができる。
本実施例はその装置構成およびフローにおいて、実施例2と共通する部分が多いので、共通する部分については説明を略し、相違する部分のみ説明する。本実施例において、実施例2と異なるのは、3つ目の載置台におけるS107の工程である。S107において、ΔP’ωのラスター|ΔP’ω|を判定値とする。
なお、|ΔP’ω|は全ての載置台105において共通であるので、載置台毎に正常範囲または許容範囲と比較する必要はない。すなわち、1〜2回目、4回目以後の載置台に係るS107〜S110およびS110が真である場合のS111の工程を省略することができる。
本実施例によれば、回転台4の重心と回転中心とのずれ(軸ずれ)の量を判定値として、警告または停止するので、前記ずれにともなう異常振動等の影響を正確に判断し、警告または停止することができる。
また、S107からS110に到るフローおよびS110が真である場合のS111の工程を1回のみ実施すれば良いので、全体の工数を減らすことができる。