JP2011111587A - プロピレン系重合体の製造方法及びプロピレン系ブロック共重合体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 担体に担持されたメタロセン系遷移金属化合物を含む重合触媒成分の存在下に、気相重合法によりプロピレン系重合体を製造する方法において、
連続重合法を用いて、重合触媒成分を炭素数3〜8の飽和炭化水素に懸濁させた触媒スラリーは、連続的又は間欠的に重合反応器へフィードし、一方、生成したプロピレン系重合体は、連続的又は間欠的に重合反応器から抜き出し、その際、飽和炭化水素の重合反応器への添加量の単位時間当たりの合計を特定量となるように調整することを特徴とするプロピレン系重合体の製造方法等による。
【選択図】なし
Description
このような状況の解決策として、例えば、重合形式として液体プロピレンを使用したいわゆるバルク重合で製造したポリマーについては、重合工程の後に、液化プロピレンなどによる洗浄工程をはさむことにより、オリゴマー成分量が非常に少ないポリマーの製造が可能であることが、特許文献1および2に記載されている。
気相重合法を用いた場合のオリゴマー成分の除去については、生成したポリマーを液化プロピレンなどにより洗浄することは、工業的な規模の生産では経済性を考慮すれば非常にむずかしい状況であること、また、特許文献3に示されるように、多段重合によって、いわゆるブロック共重合体を製造する場合には、ゴム成分が洗浄中に溶解してしまうことから、そもそも生成ポリマーの洗浄そのものが不可能であり、ポリマーの洗浄という手段は事実上使用することができない。
また、特許文献4には、C14〜18のオリゴマー量が50重量ppm未満となるように重合時に添加する掃去剤の量を調整する方法についての記載があるが、ここで対象となっているC14〜18のオリゴマーはオレフィン性(不飽和)オリゴマーに限定されており、該文献の実施例によれば、脂肪族系も含めたオリゴマー全体の量としては、492ppm以上となっている。しかしながら、脂肪族系のオリゴマーも、臭いやベタツキ、あるいは加工時の発煙などの原因になるため、特許文献4に記載の方法でも、本願の目的を達することはできない。
さらに、特許文献5には、イソドデカンを溶媒として使用した例についての記載がある。しかしながら、炭素数が10を超えるような炭化水素やオリゴマー成分は沸点が高いことから、ポリマーの乾燥を用いても、なかなか除去しにくい。
したがって、気相重合を用いた際には、重合時にオリゴマー成分の発生を抑えることが必須であり、それを可能とする、工業的に実施可能な手段の開発が望まれていた。
連続重合法を用いて、重合触媒成分を炭素数3〜8の飽和炭化水素に懸濁させた触媒スラリーは、連続的又は間欠的に重合反応器へフィードし、一方、生成したプロピレン系重合体は、連続的又は間欠的に重合反応器から抜き出し、その際、飽和炭化水素の重合反応器への添加量の単位時間当たりの合計を、生成したプロピレン系重合体の量の単位時間当たりの合計に対して0.01〜1重量%であるように調整することを特徴とするプロピレン系重合体の製造方法が提供される。
連続重合法を用いて、重合触媒成分を炭素数3〜8の飽和炭化水素に懸濁させた触媒スラリーは、連続的又は間欠的に重合反応器へフィードし、一方、生成したプロピレン系ブロック共重合体は、連続的又は間欠的に重合反応器から抜き出し、その際、飽和炭化水素の重合反応器への添加量の単位時間当たりの合計を、生成したプロピレン系ブロック共重合体の量の単位時間当たりの合計に対して0.01〜1重量%であるように調整することを特徴とする第5の発明のプロピレン系ブロック共重合体の製造方法が提供される。
また、本発明のプロピレン系ブロック共重合体は、柔軟性や透明性に優れたプロピレン系ブロック共重合体であっても臭いやベタツキがなく、また、加工時の発煙などが少ない非常にクリーンなプロピレン系重合体であるため、産業上大いに有用である。
2 触媒成分供給アシスト用液化プロピレン供給配管
3 有機アルミニウム供給配管
4 原料混合ガス供給配管
5 原料液化プロピレン補給配管
6 未反応ガス抜き出し配管
10 重合反応器
11 重合体抜き出し配管
101 触媒成分供給配管
102 触媒成分供給アシスト用液化プロピレン供給配管
103 有機アルミニウム供給配管
104、107 原料混合ガス供給配管
105、108 原料液化プロピレン補給配管
106、109 未反応ガス抜き出し配管
110 重合器(第1重合工程)
111 第1重合工程からの重合体抜き出し配管
112 第2重合工程への重合体供給配管
113 第2重合工程からの重合体抜き出し配管
120 重合器(第2重合工程)
130 脱ガス槽
また、本発明は、プロピレン単独重合体もしくはエチレンおよび/またはC4〜C20のα−オレフィンとプロピレンとのランダム共重合体であるポリマー成分(A)30〜90重量%、及びポリマー成分(A)よりも高いエチレンおよび/またはC4〜C20のα−オレフィンを含有するプロピレン系ランダム共重合体であるポリマー成分(B)10〜70重量%からなり、炭素数が30以下の炭化水素化合物の含有量が50重量ppm以下であるプロピレン系ブロック共重合体に関するものである。
以下、その内容について詳細に説明する。
1.触媒
本発明のプロピレン系重合体の製造方法においては、メタロセン系遷移金属化合物を含む担持触媒を用いる必要がある。メタロセン系遷移金属化合物を含む触媒は、分子量分布や組成分布が狭いという特徴を有するため、重合反応器内の状況が均一であり、局所的に重合条件の異なるような箇所が存在しない限りにおいては、安定運転の妨げとなるベタツキ成分の原因である低分子量重合成分や組成が極端に偏った重合成分の生成がほとんど無いことから、臭いやベタツキがなく、また加工時の発煙などの少ない、非常にクリーンなプロピレン系重合体の製造には、非常に好適である。また、本発明の目的である、気相重合法によるプロピレン系重合体の工業的かつ安定的な製造方法の提供のためには、担体に担持された担持触媒を用いることが必須である。本発明に必要とされる触媒系は、メタロセン系遷移金属化合物を含む担持触媒であれば、特に限定されないが、その中でも、好適に使用されるメタロセン系遷移金属化合物を含む担持触媒系としては、(a)共役五員環配位子を有する周期律表第4族遷移金属化合物からなるメタロセン錯体と、それを担持する(b)担体、それを活性化させる(c)助触媒、並びに必要に応じて使用される(d)有機アルミニウム化合物から構成されるものを挙げることができる。以下、(a)〜(d)の説明をする。
なお、本明細書の記載においては、元素の周期律表として長周期型のものを使用している。
本発明において用いられるメタロセン系遷移金属化合物としては、代表的なものとして共役五員環配位子を有する周期律表第4〜6族遷移金属化合物のメタロセン錯体が挙げられ、これらのうち、下記一般式のどちらかで表されるものが好ましい。
Qとして好ましくはアルキレン基、シリレン基、シラフルオレン基、ゲルミレン基が挙げられる。
Mとして好ましくはチタン、ジルコニウム、ハフニウム等である。特に、ジルコニウム、ハフニウムが挙げられる。
XおよびYの補助配位子は、成分(c)と反応してオレフィン重合能を有する活性なメタロセンを生成させるものであり、したがって、この目的が達成される限りX、Yは配位子の種類が制限されるものではなく、各々水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、あるいはヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基が例示できる。これらのうち好ましいものは、炭素数1〜10の炭化水素基、あるいはハロゲン原子である。
本発明で用いられる触媒担体としては、公知のものが使用できるが、好ましい担体としては、シリカ、チタニア、アルミナ、シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア、イオン交換性層状珪酸塩などの無機化合物担体やポリプロピレンパウダー、ポリエチレンパウダーなどのポリマー担体を挙げることができる。
その中でも、ポリマーの粒子の形状を整え、かつ大粒径化するために、使用する触媒としては、粒形および粒径の制御された担持型触媒を用いることが特に好ましい。このような粒形および粒径の制御された担持型触媒の製造法としては、例えば、無機化合物担体を用いた場合、以下のような例を挙げることができる。
さらに、多段階に分けて造粒する場合の造粒方法を組み合わせても良く、その組合せに制限はないが、好ましくは、噴霧造粒法と噴霧造粒法、噴霧造粒法と転動造粒法、噴霧造粒法と流動造粒法との組合せが挙げられる。
なお、M/Lは任意の粒子の100個以上を光学顕微鏡で観察し、それを画像処理して求めたものである。
このような段階的な造粒法として、具体的には、先ず、第1段目の造粒工程で平均粒径が0.01〜5μmの原料の無機化合物担体微粒子を造粒して一次造粒粒子を製造する。一次造粒粒子の粒径は、好ましくは1〜25μm、より好ましくは1〜15μmである。
次いで、このようにして造粒された一次造粒粒子をさらにスラリー化して造粒させる。その際、スラリー粘度は比較的低くなっているので、スラリー濃度を上げることができ、適当な噴霧造粒条件を採択することによって、重合触媒成分に適した粒径および粒形のものとすることができる。この最終的な粒径は、原料の無機化合物担体の種類によるが、通常25〜200μm、好ましくは25〜150μmとするのがよい。
このようにして、造粒された無機化合物担体上に、メタロセン錯体を担持することによって、粒形および粒径の整備された担持型触媒を製造することができる。
助触媒は、メタロセン錯体を活性化する成分で、メタロセン錯体の補助配位子と反応して当該錯体を、オレフィン重合能を有する活性種に変換させうる化合物であり、具体的には(c−1)アルミニウムオキシ化合物、(c−2)成分(a)と反応して成分(a)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物またはルイス酸、(c−3)固体酸、(c−4)イオン交換性層状珪酸塩等が挙げられる。以下、(c−1)〜(c−4)の説明をする。
アルミニウムオキシ化合物がメタロセン錯体を活性化しうることは周知であり、該化合物としては、具体的にはアルミノキサンや、一種類のトリアルキルアルミニウム又は二種類以上のトリアルキルアルミニウムとアルキルボロン酸との10:1〜1:1(モル比)の反応により得ることができる化合物である。アルミノキサンを使用する場合、メチルアルミノキサン又はメチルイソブチルアルミノキサンが好ましい。上記のアルミノキサンは、各群内および各群間で複数種併用することも可能である。そして、上記のアルミノキサンは、公知の様々な条件下に調製することができる。
(c−2)の化合物は、成分(a)と反応して成分(a)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物またはルイス酸であり、このようなイオン性化合物としては、カルボニウムカチオン、アンモニウムカチオンなどの陽イオンと、トリフェニルホウ素、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ホウ素、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素等の有機ホウ素化合物との錯化物等が挙げられる。
また、上記のようなルイス酸としては、種々の有機ホウ素化合物、例えばトリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素などが例示される。あるいは、塩化アルミニウム、塩化マグネシウム等の金属ハロゲン化合物などが例示される。
なお、上記のルイス酸のある種のものは、成分(a)と反応して成分(a)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物として把握することもできる。上述した非配位性のホウ素化合物を用いたメタロセン触媒は、特開平3−234709号公報、特開平5−247128号公報等に例示されている。
固体酸としては、アルミナ、シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア等が挙げられる。
イオン交換性層状化合物は、粘土鉱物の大部分を占めるものであり、好ましくはイオン交換性層状珪酸塩である。
イオン交換性層状珪酸塩(以下、単に「珪酸塩」と略記する場合がある。)は、イオン結合などによって構成される面が互いに結合力で平行に積み重なった結晶構造を有し、且つ、含有されるイオンが交換可能である珪酸塩化合物をいう。大部分の珪酸塩は、天然には主に粘土鉱物の主成分として産出されるため、イオン交換性層状珪酸塩以外の夾雑物(石英、クリストバライト等)が含まれることが多いが、それらを含んでいてもよい。珪酸塩は各種公知のものが使用できる。具体的には、白水春雄著「粘土鉱物学」朝倉書店(1995年)に記載されている次のような層状珪酸塩が挙げられる。
モンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト等のスメクタイト族;バーミキュライト等のバーミキュライト族;雲母、イライト、セリサイト、海緑石等の雲母族;パイロフィライト、タルク等のパイロフィライト−タルク族;Mg緑泥石等の緑泥石族等。
(ii)2:1リボン型鉱物類
セピオライト、パリゴルスカイト等。
また、これらイオン交換性層状珪酸塩には、通常吸着水および層間水が含まれるため、不活性ガス流通下で加熱脱水処理するなどして、水分を除去してから使用するのが好ましい。
メタロセン触媒系に、必要に応じて使用される有機アルミニウム化合物としては、本発明においては、ハロゲンを含有しないものが使用され、具体的には一般式
AlR3−iXi
(式中、Rは炭素数1〜20の炭化水素基、Xは水素、アルコキシ基、iは0<i≦3の数を示す。但し、Xが水素の場合は、iは0<i<3とする。)
で示される化合物が使用される。
上記触媒成分において、成分(a)と成分(c)の使用量は、それぞれの組み合わせの中で最適な量比で用いられる。
成分(c)が、アルミニウムオキシ化合物の場合は、Al/遷移金属のモル比は通常10以上100000以下、さらに100以上20000以下、特に100以上10000以下の範囲が適する。一方、成分(c)としてイオン性化合物あるいはルイス酸を用いた場合は、対遷移金属のモル比は、通常0.1〜1000、好ましくは0.5〜100、更に好ましくは1〜50の範囲である。
成分(c)として、固体酸あるいはイオン交換性層状珪酸塩を用いる場合は、成分(c)1gにつき、遷移金属錯体の用量は、通常0.001〜10ミリモル、好ましくは0.001〜1ミリモルの範囲である。
これらの使用比率は、一般的な割合例を示すものであって、触媒が合目的的なものとなっていれば、上に述べた使用比率の範囲に限定されることはない。
本発明のプロピレン系重合体の製造方法としては、気相重合法を用いて重合することが必須である。また、本発明のプロピレン系重合体の製造を多段重合で実施する場合は、少なくとも第1段階(以下、「第一工程」、「第1重合工程」ともいう。)は気相重合法を用いることが必須となる。
この重合を、不活性溶媒中で重合を行ういわゆるスラリー重合や液体プロピレン中で重合を行ういわゆるバルク重合で行うと、重合溶媒の回収操作が必要となり、経済的および環境への負荷が大きくなり、また、特に、重合されるプロピレン系重合体が比較的融点の低いポリマーの場合は、溶媒中への溶出成分量が多くなったり、ポリマーの溶解が懸念されるため、工業的なレベルまで重合温度を上げることができないという問題点が生じる。このようなことから、本発明では気相重合で行う。
また、所望のTmを予め設計し、そのTmに対して重合温度T1を設定するのが好ましい。
また、重合体の流動性が適当なものとなるように分子量調整剤を使用することが好ましく、該調整剤としては水素が好ましい。MFRは、本重合体の用途によるが、通常0.1〜3000g/10分、好ましくは0.5〜2000g/10分、より好ましくは0.5〜1000g/10分の範囲で選ばれる。重合反応器の全圧は、上記に挙げたモノマー(プロピレン、α−オレフィン)、イナートガス(窒素、プロパンなど)、および分子量調整剤として水素を用いた場合には水素などの分圧の合計となるため、状況によってその値は変わってくるが、工業的な生産という観点から反応器の耐圧設計を考慮すると、好ましくは0.5〜6MPa、より好ましくは0.5〜5MPaである。
機械的な攪拌を伴う気相重合プロセスであれば、反応器の形態に制限はなく、縦型でも横型でも、あるいはその他の形態でも使用することができる。
なお、機械的な攪拌を伴う気相重合プロセスは、機械的な攪拌手段を備える気相重合反応器を用いることで達成することができる。
さらに、本発明の目的は、工業的なスケールでのプロピレン系重合体の安定的な生産であることから、工業的な規模で用いられる大きさの反応器に適用することができる。具体的には、反応器の容積として50リッター以上であることが好ましい。
本発明により製造されるプロピレン系重合体は、メタロセン系遷移金属化合物を含む担持触媒を用いて、気相重合法で重合されるものであれば、特に制限はない。
製造される重合体がプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体である場合、該成分中のα−オレフィン含量は、該共重合体の融点が好ましくは105℃以上となるようにコントロールされ、使用されるメタロセン触媒にもよるが、一般的には、10質量%以下の範囲である。α−オレフィン含量のコントロールは、重合時に添加するα−オレフィン量で実施する。
成分(A)の融解ピーク温度Tmは、第1工程終了後に少量サンプリングした成分(A)に対し、常法により、示差走査型熱量計(DSC)による融解ピーク温度として測定される。また、サンプリングが困難な場合には後に記載する方法で分別された成分(A)に対して行っても良い。
成分(A)と成分(B)の割合、およびそれらのエチレン含量は以下のように、TREF(温度昇温溶離分別法)を利用して測定される。
まず、成分(A)と成分(B)の結晶性の違いを利用し、TREF測定により得られる溶出曲線から、成分(A)と(B)を分割する温度T(C)を決定し、T(C)までに溶出する成分の割合を成分(B)の比率、T(C)以上で溶出する成分の割合を成分(A)の比率と見なす。
なお、プロピレン−エチレンランダム共重合体の結晶性分布をTREF測定により評価する手法は、当該業者によく知られるものであり、G.Glokner,J.Appl.Polym.Sci:Appl.Poly.Symp.;45,1−24(1990)、L.Wild,Adv.Polym.Sci.;98,1−47(1990)、J.B.P.Soares,A.E.Hamielec,Polyer;36,8,1639−1654(1995)等で詳細な測定法が示されている。
溶出温度が低い成分の結晶性は低く柔軟性に富み、一方、溶出温度が高い成分の結晶性は高くなることで剛性が増加し耐熱性も向上する。本発明におけるプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体の、TREF測定で得られる溶出曲線(温度に対するdwt%/dT曲線)において、結晶性プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A)と、低結晶性あるいは非晶性プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(B)は、その結晶性の違いから、異なる温度で溶出する成分として観測される。すなわち、成分(A)は結晶性が高いため高温側に、成分(B)は低結晶性あるいは非晶性であるため低温側に観測され、あるいは、TREF測定温度内でピークを示さない。各ピーク温度をT(A)、T(B)(ピークを示さない場合には、測定温度下限の−15℃)としたとき、両ピークの中間の温度T(C)({T(A)+T(B)}/2)において、両成分はほぼ分離可能である。
TREF測定により求めたT(C)を基に、分取型分別装置を用い昇温カラム分別法により、T(C)可溶成分=成分(B)とT(C)不溶成分=成分(A)とに分別し、NMRにより各成分のエチレン含量を求める。昇温カラム分別法とは、例えば、Macromolecules,21,314−319(1988)に開示されたような測定方法をいう。
次いで、カラム温度をT(C)に保持したまま、T(C)のo−ジクロロベンゼンを20mL/分の流速で800mL流すことにより、カラム内に存在するT(C)で可溶な成分を溶出させ回収する。
次に、10℃/分の昇温速度で当該カラム温度を140℃まで上げ、140℃で1時間静置後、140℃の溶媒のo−ジクロロベンゼンを20mL/分の流速で800mL流すことにより、T(C)で不溶な成分を溶出させ回収する。
分別によって得られたポリマーを含む溶液は、エバポレーターを用いて20mLまで濃縮された後、5倍量のメタノール中に析出される。析出ポリマーを濾過して回収後、真空乾燥器により一晩乾燥する。
そして分別された各成分のエチレン含量を、NMRにより求める。具体的方法を以下に示す。
得られた重合体のエチレン含量は、プロトン完全デカップリング法により以下の条件に従って測定した13C−NMRスペクトルを解析することにより求める。
機種:日本電子(株)製 GSX−400または、同等の装置(炭素核共鳴周波数100MHz以上)
溶媒:o−ジクロルベンゼン:重ベンゼン=4:1(体積比)
濃度:100mg/ml
温度:130℃
パルス角:90°
パルス間隔:15秒
積算回数:5,000回以上
スペクトルの帰属は、例えばMacromolecules,17,1950 (1984)等を参考に行えばよい。上記条件により測定されたスペクトルの帰属は下の表1の通りである。表中Sαα等の記号はCarmanら(Macromolecules,10,536(1977))の表記法に従い、Pはメチル炭素、Sはメチレン炭素、Tはメチン炭素をそれぞれ表わす。
[PPP]=k×I(Tββ) (1)
[PPE]=k×I(Tβδ) (2)
[EPE]=k×I(Tδδ) (3)
[PEP]=k×I(Sββ) (4)
[PEE]=k×I(Sβδ) (5)
[EEE]=k×{I(Sδδ)/2+I(Sγδ)/4} (6)
ここで[ ]はトリアッドの分率を示し、例えば[PPP]は全トリアッド中のPPPトリアッドの分率である。したがって、
[PPP]+[PPE]+[EPE]+[PEP]+[PEE]+[EEE]=1(7)
である。また、kは定数であり、Iはスペクトル強度を示し、例えばI(Tββ)はTββに帰属される28.7ppmのピークの強度を意味する。
上記(1)〜(7)の関係式を用いることにより、各トリアッドの分率が求まり、さらに下式によりエチレン含量が求まる。
エチレン含量(モル%)=([PEP]+[PEE]+[EEE])×100
なお、本発明の[プロピレンランダム共重合体成分]には少量のプロピレン異種結合(2,1−結合及び/または1,3−結合)が含まれ、それにより、以下の微小なピークを生じる。
エチレン含量のモル%から質量%への換算は以下の式を用いて行う
エチレン含量(質量%)=(28×X/100)/{28×X/100+42×(1−X/100)}×100
ここでXはモル%表示でのエチレン含量である。
なお、以下の触媒合成工程および重合工程は、すべて精製窒素雰囲気下で行った。また溶媒は、モレキュラーシーブMS−4Aで脱水したものを用いた。
先ず、各物性値の測定方法、評価方法及び装置を示す。
(1)MFR
ポリプロピレン系重合体はJIS−K−6758により測定したメルトインデックス値を示す。
前記した方法に従って測定した。
パーキン・エルマー社製のDSC7型示差走査熱量分析計を用いて試料を室温から80℃/分の条件で230℃まで昇温し、同温度にて10分間保持後、−10℃/分にて50℃まで降温し、同温度にて3分間保持した後、10℃/分の昇温条件下で融解した時のピーク温度をもって融点(Tm)とした。
射出成形した成型品を2mm×50mmで切り出し、試料200mgをGERSTEL社製TDS管に充填、TDS管をGERSTEL社製 TDS−A装置に挿入し、Heを流しながら100℃−30分間加熱、加熱期間中、ガスはTENAXを充填したGERSTEL社製CIS4に導入されCIS4を−150℃に冷却することにより試料より発生した揮発成分を捕集した。
捕集された成分は320℃まで急速に加熱気化させることによりガスクロマトグラムに導入した。導入されたガスは次の条件でガスクロマトグラム/質量分析法で測定した。
装置:HP6890
カラム:DB−5ms 0.25mm×30m
温度:40℃×5min→10℃/min〜300℃×15min
検出器:HP5973N
炭化水素量の定量は、ノルマルヘプタンを溶媒として濃度が1、5、及び10μg/mlの炭素数20の脂肪族直鎖飽和炭化水素を試料と同条件で測定を行いガスクロマトグラム/質量分析法で測定し検量線を作成し、定量は炭素数20の脂肪族直鎖飽和炭化水素換算で行った。
試料に酸化防止剤として、IRGANOX1010(チバジャパン製)とIRGAFOS168(チバジャパン製)を各々0.05重量部添加し、スーパーミキサーを用いてブレンドした後、Φ30mmの単軸押出機にて押出温度200℃、スクリュー回転数100rpmにて溶融混練し、ペレットを得た。ダイスにて生じる気化物質を一箇所から排出する排出口を有したダイスパックを取り付けたギアポンプ付きマルチフィラメント紡糸機(ダイス:Φ1.3mm×15穴)のホッパーに、上記手法により得られたペレットを投入し、押出温度280℃、ギアポンプ回転数30rpm、吐出量1kg/hの条件にて溶融押出を行い、ダイスパックの排出口を目視にて観察を行うことにより発煙の有無を判定した。排出口の周囲が白く見える場合は発煙が有るとして×、排出口の周囲が白く見えない場合は発煙が無いとして○とした。
(実施例1)
1.予備重合触媒の製造
珪酸塩の化学処理:3リットルの攪拌翼のついたガラス製セパラブルフラスコに、蒸留水2.25リットル、続いて硫酸(96%)665gをゆっくりと滴下した。50℃で、さらに、モンモリロナイト(水澤化学社製、ベンクレイSL;平均粒径:50μm)を400g分散させ、90℃に昇温し、3.5時間その温度を維持した。この反応溶液を2Lの純水に投入することで反応を停止し、さらにスラリーを減圧濾過し、ケーキを回収した。このケーキに蒸留水を4リットル加え再スラリー化後、濾過した。この操作を、洗浄液(濾液)のpHが3.5を超えるまで実施した。回収したケーキは、120℃で終夜乾燥した。乾燥後、173.4g秤量し、次工程に用いた。
酸処理を行った粘土は、3リットルプラスチックビーカーにて硫酸リチウム水和物195.8gを純水868mLに溶解した水溶液に加えて、室温で2時間反応させた。このスラリーを濾過し、3リットルの蒸留水で5回洗浄した。
回収したケーキを120℃で終夜乾燥した。化学処理した珪酸塩をキルン乾燥機で乾燥した。
さらに得られた予備重合触媒にノルマルヘキサンを加え、予備重合ポリマーを含まない触媒成分として1.5g/リッターの触媒スラリーを調製した。
図1は実施例で用いた重合装置のフローシートである。
攪拌羽根を有する横型重合器10(L/D=3.7、内容積100L)に、あらかじめ35kgのシーズポリマーを導入後、窒素ガスを3時間流通させた。その後、プロピレンおよび水素を導入しながら昇温し、重合条件が整った時点で、配管1より上記で製造した予備重合触媒のノルマルヘキサンスラリーを、予備重合ポリマーを含まない触媒成分として0.78g/hr一定となるように供給した。その際、配管2よりアシスト用の液化プロピレン(温度10℃)を流速が20cm/秒となるように供給した。また、配管3より有機アルミニウム化合物としてトリイソブチルアルミニウムを15mmol/hr一定となるように供給した。反応温度60℃、反応圧力2.0MPaG、攪拌速度35rpmの条件を維持しながら、反応器の気相中の水素/プロピレンモル比を0.0005に維持するように水素ガスを循環配管4より連続的に供給して、プロピレン単独重合体を製造した。
実施例1において、予備重合触媒のノルマルヘキサンスラリー濃度を0.5g/リッターとした以外は、実施例1と同様の方法で、プロピレン単独重合体を製造した。このとき、ポリマー生成量に対するノルマルヘキサンの添加量は2.21wt%であった。得られたプロピレン単独重合体のMFR、Tm、オリゴマー量、発煙量の測定結果を表3にまとめて示す。
1.予備重合触媒の製造
実施例1において、最終の触媒スラリー濃度を、予備重合ポリマーを含まない触媒成分として、0.8g/リッターとした以外は実施例1と同様にして、触媒の製造を実施した。
実施例1と同様の重合装置を用いて、以下の条件で重合を実施した。
攪拌羽根を有する横型重合器10(L/D=3.7、内容積100L)に、あらかじめ35kgのシーズポリマーを導入後、窒素ガスを3時間流通させた。その後、プロピレン、エチレンおよび水素を導入しながら昇温し、重合条件が整った時点で、配管1より上記で製造した予備重合触媒のノルマルヘキサンスラリーを、予備重合ポリマーを含まない触媒成分として0.35g/hr一定となるように供給した。その際、配管2よりアシスト用の液化プロピレン(温度20℃)を流速が20cm/秒となるように供給した。また、配管3より有機アルミニウム化合物としてトリイソブチルアルミニウムを15mmol/hr一定となるように供給した。反応温度60℃、反応圧力2.0MPaG、攪拌速度35rpmの条件を維持しながら、反応器の気相中のエチレン/プロピレンの混合ガスモル比を0.11、水素/プロピレンモル比を0.001に維持するようにエチレンガスおよび水素ガスを循環配管4より連続的に供給して、プロピレン−エチレンランダム共重合体を製造した。
1.予備重合触媒の製造
珪酸塩の化学処理:10リットルの撹拌翼の付いたガラス製セパラブルフラスコに、蒸留水3.75リットル、続いて濃硫酸(96%)2.5kgをゆっくりと添加した。50℃で、さらにモンモリロナイト(水澤化学社製ベンクレイSL;平均粒径=50μm)を1kg分散させ、90℃に昇温し、6.5時間その温度を維持した。50℃まで冷却後、このスラリーを減圧濾過し、ケーキを回収した。このケーキに蒸留水を7リットル加え再スラリー化後、濾過した。この洗浄操作を、洗浄液(濾液)のpHが、3.5を越えるまで実施した。回収したケーキを窒素雰囲気下110℃で終夜乾燥した。乾燥後の質量は710gであった。化学処理した珪酸塩をキルン乾燥機で乾燥した。
さらに得られた予備重合触媒にノルマルヘキサンを加え、予備重合ポリマーを含まない触媒成分として0.8g/リッターの触媒スラリーを調製した。
実施例1と同様の重合装置を用いて、以下の条件で重合を実施した。
攪拌羽根を有する横型重合器10(L/D=3.7、内容積100L)に、あらかじめ35kgのシーズポリマーを導入後、窒素ガスを3時間流通させた。その後、プロピレン、エチレンおよび水素を導入しながら昇温し、重合条件が整った時点で、配管1より上記で製造した予備重合触媒のノルマルヘキサンスラリーを予備重合ポリマーを含まない触媒成分として0.47g/hr一定となるように供給した。その際、配管2よりアシスト用の液化プロピレン(温度−20℃)を流速が10cm/秒となるように供給した。また、配管3より有機アルミニウム化合物としてトリイソブチルアルミニウムを15mmol/hr一定となるように供給した。反応温度60℃、反応圧力2.0MPaG、攪拌速度35rpmの条件を維持しながら、反応器の気相中のエチレン/プロピレンの混合ガスモル比を0.06、水素/プロピレンモル比を0.00015に維持するようにエチレンガスおよび水素ガスを循環配管4より連続的に供給して、プロピレン−エチレンランダム共重合体を製造した。
1.予備重合触媒の製造
実施例3の最終工程であるノルマルヘキサンへのスラリー化を実施しなかった以外は、実施例3と同様にして、予備重合触媒の製造を行った。
上記で製造した予備重合触媒を乾燥状態で反応器にフィードし、アシストのプロピレンを使用しなかった以外は実施例3と同様にして、プロピレン−エチレンランダム共重合体を製造した。
得られたプロピレン−エチレンランダム共重合体のMFR、エチレン含量、Tm、オリゴマー量、発煙量の測定結果を表4にまとめて示す。
1.予備重合触媒の製造
実施例3において得られた予備重合触媒にノルマルヘプタンを加え、予備重合ポリマーを含まない触媒成分として3.0g/リッターの触媒スラリーを調製した。
実施例1と同様の装置を用い、上記で製造した予備重合触媒のノルマルヘプタンスラリーを予備重合ポリマーを含まない触媒成分として0.32g/hr一定となるように供給し、反応器の気相中のエチレン/プロピレンの混合ガスモル比を0.06、水素/プロピレンモル比を0.0006に維持するようにエチレンガスおよび水素ガスを循環配管4より連続的に供給した以外は、実施例3と同様にして、プロピレン−エチレンランダム共重合体を製造した。
このとき、ポリマー生成量に対するノルマルヘプタンの添加量は0.15wt%であった。得られたプロピレン−エチレンランダム共重合体のMFR、エチレン含量、Tm、オリゴマー量、発煙量の測定結果を表4にまとめて示す。
1.予備重合触媒の製造
実施例4において、最終の触媒スラリー濃度を、予備重合ポリマーを含まない触媒成分として、0.8g/リッターとした以外は実施例4と同様にして、触媒の製造を実施した。
実施例1と同様の装置を用い、上記で製造した予備重合触媒のノルマルヘプタンスラリーを予備重合ポリマーを含まない触媒成分として0.28g/hr一定となるように供給し、反応器の気相中のエチレン/プロピレンの混合ガスモル比を0.11、水素/プロピレンモル比を0.00025に維持するようにエチレンガスおよび水素ガスを循環配管4より連続的に供給した以外は、実施例3と同様にして、プロピレン−エチレンランダム共重合体を製造した。
このとき、ポリマー生成量に対するノルマルヘプタンの添加量は0.50wt%であった。得られたプロピレン−エチレンランダム共重合体のMFR、エチレン含量、Tm、オリゴマー量、発煙量の測定結果を表4にまとめて示す。
実施例3において、予備重合触媒のノルマルヘキサンスラリーを予備重合ポリマーを含まない触媒成分として0.17g/hr一定となるように供給し、反応温度を55℃、反応器の気相中のエチレン/プロピレンの混合ガスモル比を0.24、水素/プロピレンモル比を0.00085に維持するようにエチレンガスおよび水素ガスを循環配管4より連続的に供給した以外は、実施例3と同様にして、プロピレン−エチレンランダム共重合体を製造した。
このとき、ポリマー生成量に対するノルマルヘキサンの添加量は0.30wt%であった。得られたプロピレン−エチレンランダム共重合体のMFR、エチレン含量、Tm、オリゴマー量、発煙量の測定結果を表4にまとめて示す。
1.予備重合触媒の製造
実施例1と同様に行った。
(1)第1重合工程
図2は実施例で用いた重合装置のフローシートである。
攪拌羽根を有する横型重合器110(L/D=3.7、内容積100L)に、あらかじめ35kgのシーズポリマーを導入後、窒素ガスを3時間流通させた。その後、プロピレンおよび水素を導入しながら昇温し、重合条件が整った時点で、配管101より上記で製造した予備重合触媒のヘキサンスラリーを、予備重合ポリマーを含まない触媒成分として1.06g/hr一定となるように供給した。その際、配管102よりアシスト用の液化プロピレン(温度20℃)を流速が30cm/秒となるように供給した。また、配管103より有機アルミニウム化合物としてトリイソブチルアルミニウムを15mmol/hr一定となるように供給した。反応温度60℃、反応圧力2.0MPaG、攪拌速度35rpmの条件を維持しながら、反応器の気相中の水素/プロピレンモル比を0.00075に維持するように水素ガスを循環配管104より連続的に供給して、プロピレン単独重合体(A)を製造した。
反応熱は配管105から供給される原料プロピレンの気化熱により除去した。重合器から排出される未反応ガスは配管106を通して反応器系外で冷却、凝縮させて重合器110に還流した。本重合で得られたプロピレン単独重合体(A)は、重合体の保有レベルが反応容積の65容積%となる様に配管111を通して重合器110から間欠的に抜き出し第2重合工程の重合器120に供給した。このとき、脱ガス槽130からプロピレン単独重合体(A)の一部を抜き出してMFR、Tmを求める試料とした。
攪拌羽根を有する横型重合器120(L/D=3.7、内容積100L)に第1重合工程からのプロピレン単独重合体(A)及びプロピレンとエチレンの混合ガスを間欠的に供給し、プロピレンとエチレンの共重合を行った。反応条件は攪拌速度18rpm、反応温度65℃、反応圧力1.9MPaGであり、気相中のエチレン/プロピレンモル比が1.50となるように調整した。第2重合工程には、水素のフィードは行わなかった。プロピレン−エチレンランダム共重合体(B)の重合量を調整するための重合活性抑制剤として酸素ガスを配管107より供給した。
反応熱は配管108から供給される原料プロピレンの気化熱により除去した。重合器から排出される未反応ガスは配管109を通して反応器系外で冷却、凝縮させて重合器120に還流した。第2重合工程で生成されたプロピレン系ブロック共重合体は、重合体の保有レベルが反応容積の50容積%となる様に配管113を通して重合器120から間欠的に抜き出し、温度80℃で1時間乾燥を実施した。このとき、プロピレン系ブロック共重合体の生産量は9.5kg/hrであった。
このとき、ポリマー生成量に対するノルマルヘキサンの添加量は0.73wt%であった。得られたプロピレン系ブロック共重合体のMFR、エチレン含量、Tm、オリゴマー量、発煙量の測定結果を表5にまとめて示す。
1.予備重合触媒の製造
実施例3と同様に行った。
(1)第1重合工程
実施例7と同様の重合装置を用いて、以下の条件で重合を実施した。
攪拌羽根を有する横型重合器110(L/D=3.7、内容積100L)に、あらかじめ35kgのシーズポリマーを導入後、窒素ガスを3時間流通させた。その後、プロピレン、エチレンおよび水素を導入しながら昇温し、重合条件が整った時点で、配管101より上記で製造した予備重合触媒のヘキサンスラリーを、予備重合ポリマーを含まない触媒成分として0.48g/hr一定となるように供給した。その際、配管102よりアシスト用の液化プロピレン(温度10℃)を流速が20cm/秒となるように供給した。また、配管102より有機アルミニウム化合物としてトリイソブチルアルミニウムを15mmol/hr一定となるように供給した。反応温度60℃、反応圧力2.0MPaG、攪拌速度35rpmの条件を維持しながら、反応器の気相中のエチレン/プロピレンの混合ガスモル比を0.06、水素/プロピレンモル比を0.0005に維持するようにエチレンガスおよび水素ガスを循環配管104より連続的に供給して、プロピレン−エチレンランダム共重合体(A)を製造した。
反応熱は配管105から供給される原料プロピレンの気化熱により除去した。重合器から排出される未反応ガスは配管106を通して反応器系外で冷却、凝縮させて重合器110に還流した。本重合で得られたプロピレン−エチレンランダム共重合体(A)は、重合体の保有レベルが反応容積の65容積%となる様に配管111を通して重合器110から間欠的に抜き出し第2重合工程の重合器120に供給した。このとき、脱ガス槽130からプロピレン−エチレンランダム共重合体(A)の一部を抜き出してMFR、Tmを求める試料とした。
攪拌羽根を有する横型重合器120(L/D=3.7、内容積100L)に第1重合工程からのプロピレン−エチレンランダム共重合体(A)及びプロピレン、エチレン、水素の混合ガスを間欠的に供給し、プロピレンとエチレンの共重合を行った。反応条件は攪拌速度18rpm、反応温度65℃、反応圧力1.9MPaGであり、気相中のエチレン/プロピレンモル比が1.2、水素/プロピレンモル比が0.0012となるように調整した。プロピレン−エチレンランダム共重合体(B)の重合量を調整するための重合活性抑制剤として酸素ガスを配管107より供給した。
反応熱は配管108から供給される原料プロピレンの気化熱により除去した。重合器から排出される未反応ガスは配管109を通して反応器系外で冷却、凝縮させて重合器120に還流した。第2重合工程で生成されたプロピレン系ブロック共重合体は、重合体の保有レベルが反応容積の50容積%となる様に配管113を通して重合器120から間欠的に抜き出し、温度80℃で1時間乾燥を実施した。このとき、プロピレン系ブロック共重合体の生産量は9.5kg/hrであった。
このとき、ポリマー生成量に対するノルマルヘキサンの添加量は0.62wt%であった。得られたプロピレン系ブロック共重合体のMFR、エチレン含量、Tm、オリゴマー量、発煙量の測定結果を表5にまとめて示す。
実施例8において、比較例2で製造した予備重合触媒を乾燥状態のまま反応器にフィードし、アシストのプロピレンを使用しなかった以外は実施例8と同様にして、プロピレン系ブロック共重合体の製造を実施した。
得られたプロピレン系ブロック共重合体のMFR、エチレン含量、Tm、オリゴマー量、発煙量の測定結果を表5にまとめて示す。
実施例8において、重合条件を表6に示すように変更し、プロピレン系ブロック共重合体の製造を実施した。
得られたプロピレン系ブロック共重合体のMFR、エチレン含量、Tm、オリゴマー量、発煙量の測定結果を表7にまとめて示す。
以上より明らかなように、本発明の製造方法の特定事項である「飽和炭化水素の重合反応器への添加量の単位時間当たりの合計を、生成したプロピレン系重合体の量の単位時間当たりの合計に対して0.01〜1重量%であるように調整する」との要件を満たさない方法による比較例1で得られたものは、炭素数30以下の炭化水素化合物含有量が103重量ppmと多いのに比べて、本発明の製造方法によるものは全て50重量ppm以下であり、炭素数30以下の炭化水素化合物含有量が少ないものであることが明らかになった。
また、本発明の製造方法の特定事項である「重合触媒成分を炭素数3〜8の飽和炭化水素に懸濁させた触媒スラリーは、連続的又は間欠的に重合反応器へフィードする」との要件を満たさない方法による比較例2又は比較例3で得られたものは、炭素数30以下の炭化水素化合物含有量がそれぞれ198重量ppm、183重量ppmと多く、しかも、製造されたポリマー加工時に発煙が見られたのに比べて、本発明の製造方法によるものは全て発煙が見られないものであることが明らかになった。
また、本発明の特定事項である「プロピレン単独重合体もしくはエチレンおよび/またはC4〜C20のα−オレフィンとプロピレンとのランダム共重合体であるポリマー成分(A)30〜90重量%、及びポリマー成分(A)よりも高いエチレンおよび/またはC4〜C20のα−オレフィンを含有するプロピレン系ランダム共重合体であるポリマー成分(B)10〜70重量%からなり、炭素数が30以下の炭化水素化合物の含有量が50重量ppm以下であるプロピレン系ブロック共重合体」との要件を満たさない比較例3のものは、ポリマー加工時に発煙が見られたのに比べて、本発明のものは全て発煙が見られないものであることが明らかになった。
したがって、本発明の製造方法は、炭素数30以下の炭化水素化合物含有量が50重量ppmと少なく、ポリマー加工時に発煙が見られないクリーンなプロピレン系重合体を、工業的かつ安定的に製造することができる製造方法であるという点で、大きな技術的意義を持つことが明らかである。また、本発明のプロピレン系重合体は、炭素数30以下の炭化水素化合物含有量が50重量ppmと少なく、ポリマー加工時に発煙が見られないクリーンなプロピレン系重合体であるという点で、大きな技術的意義を持つことが明らかである。
また、本発明のプロピレン系ブロック共重合体は、柔軟性や透明性に優れたプロピレン系ブロック共重合体であっても臭いやベタツキがなく、また、加工時の発煙などが少ない非常にクリーンなプロピレン系ブロック共重合体であるため、産業上大いに有用である。
Claims (6)
- 担体に担持されたメタロセン系遷移金属化合物を含む重合触媒成分の存在下に、気相重合法によりプロピレン系重合体を製造する方法において、
連続重合法を用いて、重合触媒成分を炭素数3〜8の飽和炭化水素に懸濁させた触媒スラリーは、連続的又は間欠的に重合反応器へフィードし、一方、生成したプロピレン系重合体は、連続的又は間欠的に重合反応器から抜き出し、その際、飽和炭化水素の重合反応器への添加量の単位時間当たりの合計を、生成したプロピレン系重合体の量の単位時間当たりの合計に対して0.01〜1重量%であるように調整することを特徴とするプロピレン系重合体の製造方法。 - 前記重合反応器が、機械的な攪拌手段を備える気相重合反応器であることを特徴とする請求項1に記載のプロピレン系重合体の製造方法。
- 前記飽和炭化水素が、ノルマルヘキサン又はノルマルヘプタンであることを特徴とする請求項1又は2に記載のプロピレン系重合体の製造方法。
- 前記連続重合法は、2段以上の多段重合によることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のプロピレン系重合体の製造方法。
- プロピレン単独重合体もしくはエチレンおよび/またはC4〜C20のα−オレフィンとプロピレンとのランダム共重合体であるポリマー成分(A)30〜90重量%、及びポリマー成分(A)よりも高いエチレンおよび/またはC4〜C20のα−オレフィンを含有するプロピレン系ランダム共重合体であるポリマー成分(B)10〜70重量%からなり、炭素数が30以下の炭化水素化合物の含有量が50重量ppm以下であるプロピレン系ブロック共重合体。
- 担体に担持されたメタロセン系遷移金属化合物を含む重合触媒成分の存在下に、気相重合法によりプロピレン系ブロック共重合体を製造する方法において、
連続重合法を用いて、重合触媒成分を炭素数3〜8の飽和炭化水素に懸濁させた触媒スラリーは、連続的又は間欠的に重合反応器へフィードし、一方、生成したプロピレン系ブロック共重合体は、連続的又は間欠的に重合反応器から抜き出し、その際、飽和炭化水素の重合反応器への添加量の単位時間当たりの合計を、生成したプロピレン系ブロック共重合体の量の単位時間当たりの合計に対して0.01〜1重量%であるように調整することを特徴とする請求項5に記載のプロピレン系ブロック共重合体の製造方法。
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