JP2011110126A - 寝装具用積層体 - Google Patents

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Abstract

【課題】寒い雰囲気で布団に入ったときに暖かく感じるまでに時間を要さずにすぐに暖かく感じることができる快適な寝装具用積層体を提供する。
【解決手段】表側の側地7と肌側の側地7をつなぎ合わせて袋状にして詰めワタを充填した寝装具用積層体であって、肌側の側地の詰めワタ側の面がアルミニウムによって被覆されている寝装具用積層体。
【選択図】図3

Description

本発明は、掛け布団、敷き布団、ベッドパット、キルティングケット、シュラフ、枕等の寝装具に好適な保温性の高い積層体、及びその積層体を使用した寝装具に関するものである。
従来から冬用の寝装具、特に布団は、寝ている間に体温を奪われにくいように保温性を高める工夫がなされている。例えば詰めワタを沢山使って嵩高くしたり、羽毛や中空の合成繊維を使ったりして、空気層を増やすことで保温性を高めたり、電熱線を寝具に埋込んで電気で加熱して暖かくする電気毛布等の工夫がなされている。しかし、これらの布団は電気毛布等で予め暖めていないと、布団に入ったときに布団がとても冷たく感じるとともに、布団に体温を奪われてしまい、布団が暖まるまで寒いことを我慢しなければならなかった。
保温性を上げる手段としては、例えば冬山登山等に携帯するエマージェンシーシートがある。これはフィルムに赤外線反射金属を蒸着したもので、体から発する赤外線を反射して体に戻すことにより体のエネルギーを出来るだけ外に逃さないものである。しかし、この金属蒸着シートは、フィルムであるため、風合いが硬く、透湿性がないので快適性が非常に悪い。また、本発明者らは、掛け布団の上にエマージェンシーシートを重ねて使ってみたが、室内の5〜15℃程度の雰囲気では、布団は厚みがあるので布団自身の断熱性が高くエマージェンシーシートの保温効果は殆ど感じられないことがわかった。
一方、金属被膜を使った寝装具に関する従来技術としては、金属や金属酸化物をスパッタリング法で表面に密着させた基材を布団内部に装着したことを特徴とする布団が提案されているが(特許文献1,2参照)、これらの布団に使用される金属は、遠赤外線金属であり、体内から発散される熱線を吸収するが反射して戻す効果は期待できない。実際には、これらの布団は、素材そのものが暖まった後に、素材から発する赤外線放射によって後から暖かくなるために、体周りを暖めるのに時間がかかる。
また、衣料や布団の中綿として使用される中綿用不織布において、抗菌性金属被膜及び耐蝕性金属被膜で被覆されていることを特徴とする中綿用不織布が提案されているが(特許文献3参照)、この不織布は保温性の向上や早く暖かくなることを目的としたものではない。
特開2002−339244公報 特開2002−345602公報 実用新案登録第3120571号
本発明は、上記の従来技術の現状に鑑み創案されたものであり、その目的は、寒い雰囲気で布団に入ったときに暖かく感じるまでに時間を要さずにすぐに暖かく感じることができる快適な寝装具用積層体、及びそれを用いた寝装具を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、入寝後に素早く身体周辺部を暖めるために、熱線を強く反射するアルミニウムを布団構造体中の側地又は中袋の特定の場所に被覆すること、さらにアルミニウム被覆面から側地の肌側面までの距離を極力短くすること、さらに側地を介して布団内部と身体周辺の空気の入換えが行われにくい構造とすること、さらに肌と直接接触する側地の接触温感を高めて体から熱伝導による体温低下を抑制することにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明の完成に至った。
即ち、本発明は以下の(1)〜(8)の構成を持つものである。
(1)表側の側地と肌側の側地をつなぎ合わせて袋状にして詰めワタを充填した寝装具用積層体であって、肌側の側地の詰めワタ側の面がアルミニウムによって被覆されていることを特徴とする寝装具用積層体。
(2)表側の側地と詰めワタの間又は肌側の側地と詰めワタの間又はその両方に中袋を設けたことを特徴とする(1)に記載の寝装具用積層体。
(3)表側の側地と肌側の側地をつなぎ合わせて袋状にして詰めワタを充填した寝装具用積層体であって、肌側の側地と詰めワタの間に中袋を設け、中袋の側地側の面又は詰めワタ側の面のいずれかがアルミニウムによって被覆されていることを特徴とする寝装具用積層体。
(4)表側の側地と詰めワタの間に中袋を設けたことを特徴とする(3)に記載の寝装具用積層体。
(5)アルミニウムの被覆厚さが10〜300nmであることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の寝装具用積層体。
(6)肌側の側地から肌側に最も近いアルミニウム被覆面までの材料が0.02〜0.6mmの厚みを有し、かつ0.5〜2.0cc/cm・sの通気度を有することを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の寝装具用積層体。
(7)肌側の側地が、0.01〜0.5dpfの極細繊維を40重量%以上含む疎水性繊維からなり、0.05〜0.3mmの厚み及び30〜150g/mの目付を有することを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の寝装具用積層体。
(8)(1)〜(7)のいずれかに記載の寝装具用積層体を含み、詰めワタが2〜20cmの厚みを有することを特徴とする寝装具。
本発明の寝装具用積層体は、熱線の反射率が高いアルミニウムの被覆を肌側に近い特定の場所に設けているので、布団に入ったときの肌寒さを緩和して、身体周辺部を素早く暖めることができる。そのため冬場の寝具の冷たさによるショックを和らげることができ、入寝時の快適性が増して気持よく睡眠に入ることが可能である。
側地と詰めワタからなる寝装具用積層体の概略断面図を示す。 側地と詰めワタと中袋からなる寝装具用積層体の概略断面図を示す。 実施例10で使用される掛け布団の仕様の概略断面図を示す。 比較例5で使用される掛け布団の仕様の概略断面図を示す。 実施例10で使用される敷き布団の仕様の概略断面図を示す。 比較例5で使用される敷き布団の仕様の概略断面図を示す。 45度パラレル再放射法の説明図を示す。 スキンモデル評価時の積層体の積層状態の概略図を示す。 スキンモデル評価機器の概略図を示す。 実施例10及び比較例5の布団を着用した被験者のサーモグラフ写真を示す。
以下、本発明の寝装具用積層体を具体的に説明する。
本発明の寝装具用積層体は、表側の側地と肌側の側地をつなぎ合わせて袋状にして詰めワタを充填したものである。さらに、本発明の積層体は、表側の側地と詰めワタの間又は肌側の側地と詰めワタの間又はその両方に中袋を設けることができる。側地、中袋は、布団等の寝装具用の詰めワタを包んでいる又は覆っている布帛である。側地は、外気に接することを意図される表側の部分と、人間の肌に接することを意図される肌側の部分をつなぎ合わせて袋状にされている。中袋は、例えば詰めワタが羽毛であるときに側地から羽毛が吹き出ないように羽毛をガードするものであるが、側地自身にその機能がある場合は、中袋を使わなくてもよい。視覚的理解のため、側地と詰めワタからなる積層体、さらに中袋も使用した積層体の概略断面図をそれぞれ図1、図2に示す。
本発明の積層体は、詰めワタより肌側にある構成要素の表面に肌に接触させないようにアルミニウムを被覆することを特徴とする。具体的には、肌側の側地の詰めワタ側又は肌側の中袋の側地側もしくは詰めワタ側の表面にアルミニウムが被覆される。肌側の中袋の表面にアルミニウムを被覆する場合は詰めワタ側より側地側の表面を被覆することが好ましい。表側の側地や中袋の表面にアルミニウムを被覆しないのは、アルミニウム被覆面が身体から離れすぎてアルミニウムの熱線反射機能を十分に発揮できないことを避けるためである。その意味で、アルミニウム被覆は、できるだけ肌に近いところに設けることが好ましいが、肌側の側地の肌側の表面にアルミニウム被覆を設けないことが重要である。金属の高い熱伝導性によるひんやり感が身体に直接伝わることを避けるためである。
本発明の積層体は、肌側の側地から肌側に最も近いアルミニウム被覆面までの材料が0.02〜0.6mmの厚みを有することが好ましい。上記厚みの好ましい上限値は0.3mmであり、さらに好ましくは0.2mmである。また、上記厚みは、アルミニウム被覆面が肌に接触しない限り、できるだけ小さいことが好ましいが、材料の耐久性を考慮すると好適な下限値は0.05mmである。上記厚みが上記範囲を越えると、アルミニウム被覆面によって反射された熱線が身体や肌側の側地を暖める効果を発揮するのに時間がかかりやすい。なお、上記材料が複数の生地からなる場合、上記厚みは生地間の空気層を含まない。
本発明の積層体のアルミニウム被覆の厚みは10〜300nmが好ましい。より好ましくは20〜200nmであり、さらに好ましくは30〜100nmである。厚みが上記下限値より薄い場合、凹凸のある布帛表面を均一にアルミニウム被覆することが難しくなり、また、実使用における耐久性が不十分となる。また、厚みが上記上限値より厚い場合、熱線反射効果や被覆金属の耐久性の面において向上効果が少なく、経済的に非効率となる。また、金属の変色等の現象も起こりやすくなる。
アルミニウム被覆は、側地又は中袋の表面に施されるが、実際には側地又は中袋を構成する布帛に一般的な精練、漂白、染色、乾燥、熱セットなどの工程を施した後に乾燥状態において施されることが好ましい。アルミニウムを被覆する方法としては、メッキ法、コーティング法、物理蒸着法等が挙げられるが、布帛の風合や通気度の変化を極力抑えられる物理蒸着法が好ましい。物理蒸着法には大きく分けて、真空蒸着、分子線蒸着、イオンプレーティング、イオンビーム等による蒸着方式とスパッタリング方式があり、どちらの方法を採用しても構わないが、設備費用や生産効率の面から蒸着方式が好ましい。
本発明の積層体に用いる側地や中袋を構成する布帛は、織物でも、丸編みや経編みのようなニット、不織布でも構わないが、側地に用いる布帛は、織物又はニットが好適である。織物は、薄くて軽量でなおかつ強力や摩耗性に優れた側地を作ることができ、ニットは、伸長性やソフト風合いを兼ね備えた側地を作ることができる。中袋に用いる布帛は、織物又は不織布が好適である。ニットは、目が粗いため、詰めワタの吹出しを押えることが難しくなる。
本発明の積層体に使用する側地や中袋の素材としては、合成繊維が好ましく、特に公定水分率が低い疎水性繊維が好ましい。繊維の水分率が高いと、水の熱伝導性からひんやり感が強くなり好ましくない。繊維の水分率としては好ましくは5%以下であり、より好ましくは1%以下であり、さらにより好ましくは0.5%以下である。このような疎水性繊維としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル繊維、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン繊維、ポリウレタン繊維、ポリイミド繊維などが挙げられる。これらの中でも特に吸湿性が低い、ポリエステル繊維やポリオレフィン繊維、アクリル繊維が好ましい。これらの繊維を単独で又は組み合わせて使用することにより側地や中袋の布帛が作られる。
側地を構成する繊維の単糸繊度は好適には0.01〜5.0dpf(デシテックス/フィラメント)の範囲で用いればよいが、触ったときに冷たさを感じにくくするためには側地を構成する繊維の40重量%以上に0.01〜0.5dpfの極細繊維を使用することがより好ましい。さらに好適な単糸繊度は0.1〜0.5dpfである。極細繊維の混用の方法としては、織物の経糸や緯糸に極細繊維を用いたり、編地の肌面に極細繊維を用いる方法が挙げられる。
本発明の積層体の側地は、従来の側地の厚みと目付をそのまま採用することができるが、側地の厚みは0.01〜0.9mmが好ましく、側地の目付は30〜150g/mが好ましい。側地の厚みや目付が上記範囲未満では、耐久性に劣り、上記範囲を越えると、アルミニウム被覆面と肌の距離が遠くなるのであまり好ましくない。また、本発明の積層体の中袋は、従来の中袋の厚みと目付を採用すればよいが、中袋の厚みは0.01〜0.9mmが好ましく、中袋の目付は30〜150g/mが好ましい。中袋の厚みや目付が上記範囲未満では、耐久性に劣り、上記範囲を越えると、アルミニウム被覆面と肌の距離が遠くなるのであまり好ましくない。
また、側地に織物を用いる場合、織物のカバーファクターは1000〜4000が好適である。より好適には1500〜3600、更に好適には1800〜2600である。カバーファクターが上記範囲未満であると、通気性が高く、身体周辺の空気が暖まってくると、側地を通して布団内部の空気と身体側の空気の移動が起こり、身体周辺の温度上昇が緩やかになりやすい。また、上記範囲より高いと、側地の風合が硬くなり、寝装具のドレープ性(肌添いの良さ)が悪くなるおそれがある。また、側地に編物を用いるときは、中袋として織物又は不織布を用いるのがよく、その場合、織物のカバーファクターは上記と同様であることが好ましい。
本発明の積層体は、肌側の側地から肌側に最も近いアルミニウム被覆面までの材料が0.5〜2.0cc/cm・sの通気度を有することが好ましい。通気度が上記範囲を超えると、空気の移動が起りやすく、身体周辺の温度上昇が遅くなりやすい。上記範囲未満では、詰めワタの充填時に空気が抜けにくくて充填に手間がかかりやすくなる。
本発明の積層体に使用する詰めワタの素材としては、ポリエステル、羽毛、羊毛などの従来公知のものを用いることができる。本発明は、すぐに暖かくなることが目的であるため、できるだけ熱伝導性が低い材料が好適に用いられる。このことから空気層を多く含む羽毛がより好適である。詰めワタの厚みは2〜20cmが好ましく、より好ましくは3cm以上、さらに好ましくは5cm以上である。また、詰めワタの目付は50〜3500g/mが好ましく、より好ましくは100〜500g/mである。詰めワタの厚みや目付が上記範囲未満では、身体から発する熱が布団を通して布団外部に放出しやすく、本発明のすぐに暖かくなる効果を低下させる。また、上記範囲を越えると、保温性が高まるが、ワタの重みで寝心地が悪くなる。
本発明の積層体に形成されたアルミニウム被覆の洗濯耐久性を高めるためには、その被覆表面に保護層が形成されていることが好ましい。保護層の形成方法としては、保護層となる樹脂を含んだ水系もしくは溶剤系樹脂エマルジョンの溶液に布帛をパッディングした後に乾燥およびキュアリングを行い、布帛全体に保護被膜を形成する方法や、アルミニウム被覆面にさらにコーティングやグラビアロールなどにより、保護樹脂層を積層させる方法などがある。これらの保護樹脂としては、アクリル系やウレタン系、エステル系、ポリカーボネート系の樹脂が挙げられる。また、これらの樹脂は、吸水加工剤や撥水加工剤、抗菌防臭加工剤や消臭加工剤、UVカット剤、帯電防止剤、保湿加工剤、涼感加工剤、芳香加工剤、防虫加工剤、難撚加工材、スリップ防止剤、可縫製向上剤などの機能性樹脂と組み合わせても良い。また、耐久性をさらに向上する目的で架橋剤を添加しても構わない。
また、アルミニウムを被覆する前に、アルミニウムとの接着性を向上し、実使用における耐久性を向上させる目的で、布帛に接着層を形成することが好ましい。接着層の形成方法としては、接着層となる樹脂を含んだ水系もしくは溶剤系樹脂エマルジョンの溶液に布帛をパッディングした後に乾燥およびキュアリングを行い、布帛全体に接着被膜を形成する方法や、布帛にコーティングやグラビアロールなどにより、接着樹脂層を形成する方法などがある。これらの接着樹脂としては、布帛の素材とアルミニウムとの接着性に優れているポリマーを選択すればよい。接着層の素材としては、例えば、ポリエステルで構成された布帛の場合は、アクリル系樹脂、親水性を高めたエステル系樹脂、及びエステル系ウレタン樹脂などが好ましい。また、ナイロンで構成された布帛の場合は、ウレタン樹脂や、ポリアミド樹脂などが好ましい。
本発明のアルミニウム被覆した側地または中袋のアルミニウム被覆面の赤外線反射特性は、測定開始10秒のサーモグラフィ温度で30℃以上あれば本発明の効果を有利に奏することができる。好ましくは35℃以上であり、更に好ましくは38℃以上である。アルミニウム非被覆面をブランクとして比較測定した場合の温度差(ΔT)は2℃以上であり、好ましくは3℃以上であり、更に好ましくは4℃以上である。実際の現実的な上限の温度差(ΔT)は15℃、一般的には10℃である。アルミニウム被覆面の測定開始10秒後の温度が上記範囲未満であったり、アルミニウム非被覆面との温度差が上記温度未満の場合は本発明のすぐに暖かくなる効果が得られ難い。
本発明の積層体は、掛け布団、敷き布団、ベッドパット、キルティングケット、シュラフ、枕等の寝装具に好適に用いることができ、その場合、詰めワタが2〜20cmの厚さを有することが好ましい。
次に本発明の効果を以下の実施例により具体的に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、特性値の評価については、以下の方法で測定した。
アルミニウム被覆の厚み
アルミニウムを被覆した布帛試料から糸を一本ばらけないように静かに取出し(織物なら経糸)、糸を張った状態で、樹脂の真ん中に鉛筆の芯のように糸が配置されるように電子顕微鏡用のエポキシ樹脂で包埋した。鉛筆を削るように、包埋試料の樹脂をナイフで削って糸を露出させた。これをウルトラミクロトームの試料ホルダに固定し、包埋した糸の長手方向に垂直な断面薄切片を作製した。次いでこの切片中のアルミニウム被覆された繊維の、更に薄膜の著しい損傷がない部位において、透過型電子顕微鏡(JEOL社製、JEM−2010)を用い、加速電圧200kV、明視野で観察倍率1万倍にて写真撮影を行った。得られた写真から厚みを求めた。
生地の目付、厚み、通気度
JIS−L1096に準拠して測定した。
織物のカバーファクター
織物のカバーファクター(CF)は、次式により計算した。
CF=T×(DT)1/2+W×(DW)1/2
式中、TおよびWは織物の経密度および緯密度(本/インチ)を示し、DTおよびDWは織物を構成する経糸および緯糸の太さ(dtex)を示す。経密度、緯密度はJIS−L1096に準拠して測定した。
布帛の赤外線反射特性
(社)遠赤外線協会の認定規則の再放射特性45度パラレル再放射法(図7)により測定し、サーモグラフィ結果の生地温度を赤外線反射特性の代用メジャーとした。生地の温度上昇の影響を極力防ぐため、測定は試験開始10秒後とした。また、測定は、アルミニウム非被覆布をブランクとし、アルミニウム被覆布はアルミニウム被覆面を熱板に向けて、アルミニウム被覆布とアルミニウム非被覆布を左右に並べて同時に測定した。このとき、それぞれの表面温度をその生地の赤外線反射特性とする。また、同時に測定したアルミニウム被覆布とアルミニウム非被覆布の両者の表面温度の差ΔT1はアルミニウムの赤外線反射特性効果として表した。なお、測定の左右差をなくすために両者の左右を置換えて2回測って左右の平均値を採用した。ここでアルミニウム被覆布が実施例1の生地1の場合、アルミニウム非被覆布は生地2である。同様に実施例2では生地3と生地4、実施例3では生地5と生地6、実施例5では不織布1と不織布2がそれぞれ該当する。
積層体の肌側の側地表面における温度変化(スキンモデル)
図9のようなスキンモデル評価機器を用いて入寝後の寝床内温度変化を測定する。測定条件は下記通りとした。測定開始後1分間の側地表面付近の温度上昇ΔTにより、早く暖かくなる性能を評価した。ΔTが高いほど早く暖かくなることを示す。測定回数n=3として平均値を採用した。
測定条件:環境10℃50%RH
使用装置:スキンモデル
装置条件:熱板37℃、発汗量0g/m・h、試料−熱板間距離1cm
肌側を熱板側として積層体を測定。(積層状態 図8)
布団のモニター試験
25℃50%RHに設定した環境試験室に布団を敷いて布団内温度が安定するまで12時間放置した。成人男性3名がモニターになり、ポリエステル100%長袖Tシャツと、綿100%トランクスとして、下記条件で30分間安静に就寝した。就寝開始1分後と30分後に3名のモニター主観評価をアンケートした。また、30分就寝直後の体表面温度分布をサーモトレーサ法にて測定した。
測定条件:安静30分(25℃50%RH)⇒就寝30分(15℃50%RH)
測定機器:NEC三栄製サーモトレーサ
主観評価は、とても寒い−3〜とても暖かい+3の7段階SD法として、3人のモニターの評価値の平均値とした。
サーモトレーサ温度は身体の末端部として親指の真ん中の温度を読取り、手の親指、足の第一指の4つの平均値とした。アルミニウム被覆生地を使った布団で測定した値と、アルミニウム非被覆生地を使った布団で測定した値の差をΔT2として表した。
実施例1
経糸及び緯糸の双方にポリエステルマルチフィラメント(78デシテックス/216フィラメント)を用い、経密度141本/2.54cm、緯密度95本/2.54cmの平織物を製織し、通常の方法により連続精練、予備セット(190℃×30秒)、高圧染色(分散染料Sumikalon blue FBL 0.05%owf 130℃×30分)、乾燥セット・カレンダー加工(170℃,圧力295N/cm)を行って生地を得た。仕上密度は経153本/2.54cm、緯95本/2.54cm、カバーファクター(CF)は2190であった。得られた生地を、真空蒸着機にセッティングし、真空環境下で金属アルミニウムを約65nmの厚さで蒸着を行った。さらに、この生地を、パディング法にて下記処方1で仕上加工を行い生地1を作った。また、蒸着工程を通さずに同様に仕上げた生地2も作成した。また、詰めワタとして、ポリエステルステープル(東洋紡績(株)製3.3dtex、51mm)のウエブ(厚み1.5cm、目付93g/m)を4枚重ねたもの(厚み約6cm)を詰めワタ1とした。生地1、生地2及び詰めワタ1をそれぞれ20×20cmの大きさに切取り、生地1と生地2の間に詰め綿1を挟んで3層の積層体として評価に供した。この時、生地1のアルミニウム被覆面は詰めワタ側に向けた。この積層体の構成、生地の赤外線反射特性、及び積層体の肌側の側地表面の温度変化を表1〜表3に示す。
処方1:ウェットピックアップ60%、テンター150℃×1分
・シリコーン系柔軟剤 20g/リットル
(日華化学(株)製 商品名 ニッカシリコンEP2010)
・ポリエチレン系柔軟剤 20g/リットル
(明成化学工業(株)製 商品名 メイカテックスHP600)
・帯電防止剤 20g/リットル
(高松油脂工業(株)社製 商品名 エレナイトE139)
実施例2
ポリエステルマルチフィラメントを56デシテックス/108フィラメントにし、経密度141本/2.54cm、緯密度114本/2.54cm、CF1910の平織物とした以外は実施例1と同じ方法を用いて、目付71g/mの平織の片面にアルミニウムを蒸着した生地3を作成した。また、蒸着工程を通さずに同様に仕上げた生地4も作成した。生地3のアルミニウム被覆面を詰めワタ側に向けて生地3と生地4の間に詰めワタ1を挟んで、実施例1と同様に積層体を得た。この積層体の構成、生地の赤外線反射特性、及び積層体の肌側の側地表面の温度変化を表1〜表3に示す。
実施例3
ポリエステルマルチフィラメントを84デシテックス/72フィラメントにした以外は実施例1と同じ方法を用いて、CF2275、目付93g/mの平織の片面にアルミニウムを蒸着した生地5を作成した。また、蒸着工程を通さずに同様に仕上げた生地6を作成した。生地5のアルミニウム被覆面を詰めワタ側に向けて生地5と生地6の間に詰めワタ1を挟んで、実施例1と同様に積層体を得た。この積層体の構成、生地の赤外線反射特性、及び積層体の肌側の側地表面の温度変化を表1〜表3に示す。
実施例4
経糸及び緯糸の双方に英式番手80番単糸の綿コーマ糸を用いて経糸密度210本/インチ、緯糸密度195本/インチ、CF3550の経五枚朱子の織物を製織し、通常の連続工程・条件にて毛焼・糊抜処理を行い、引続き精練・漂白処理(塩素系)を行った。次にクリップテンター方式の連続シルケット機にてマーセライズ処理(苛性ソーダ25°ボーメー、常温処理)を行い、引続き連続染色方式で反応染色(二浴パッドスチーム法Sumifix supra Blue BRF 150% gran. 20g/L)を行った。下記処方2にて仕上処理した後、カレンダー機で目潰し加工(70℃で圧力295N/cm)を行ったものを生地7とした。この生地7の目付は118g/mであり、厚みは0.12cmであった。
処方2:ウェットピックアップ60%、テンター150℃×1分
・シリコーン系柔軟剤 20g/L
(日華化学(株)製 商品名 ニッカシリコンEP2010)
・親水性シリコーン柔軟剤 10g/L
(一方社油脂(株)製 商品名 ESN741)
・ポリエチレン系柔軟剤 20g/L
(明成化学工業(株)製 商品名 メイカテックスHP600)
更に生地1を中袋としてアルミニウム被覆面を詰めワタとは反対側に向けて、肌側から生地7、生地1、ワタ1、生地7の順で積層体を作成した。この積層体の構成及び積層体の肌側の側地表面の温度変化を表1、表3に示す。
実施例5
ポリエステルの不織布(目付30g/L、厚み0.1mm、幅1600mm)(不織布1)を用意した。この不織布を真空蒸着機にセッティングし、真空環境下で金属アルミニウムを約65nmの厚さで蒸着を行った。また、蒸着工程を通さずに同様に仕上げた不織布2を作成した。この不織布1を中袋としてアルミニウム被覆面を詰めワタとは反対側に向けて、肌側から生地1、不織布1、ワタ1、生地2の順で実施例1と同様にして積層体を得た。この積層体の構成、不織布の赤外線反射特性、及び積層体の肌側の側地表面の温度変化を表1〜表3に示す。
実施例6
英式番手30番単糸の綿コーマ糸を使って経糸密度75本/インチ 緯糸密度75本/インチ、CF2100、目付135g/mの平織物とした以外は実施例4と同様にして生地8を作成した。生地1のアルミニウム被覆面を詰めワタ側に向けて、肌側から生地8、生地1、ワタ1、生地8の順で実施例1と同様に積層体を得た。この積層体の構成及び積層体の肌側の側地表面の温度変化を表1、表3に示す。
実施例7
金属アルミニウムの蒸着厚みを30nmとした以外は実施例1と同様にして生地9を作成した。続いて実施例1と同様にして積層体を作成した。この積層体の構成及び積層体の肌側の側地表面の温度変化を表1、表3に示す。
実施例8
金属アルミニウムの蒸着厚みを10nmとした以外は実施例1と同様にして生地10を作成した。続いて実施例1と同様にして積層体を作成した。この積層体の構成及び積層体の肌側の側地表面の温度変化を表1、表3に示す。
実施例9
英式番手40番単糸のコーマ糸を使い30インチ22ゲージの編機で31cm/100ウエールの糸長でスムースを製編した。これを通常の方法で精練・漂白・反応染色を行い、開反して処方1で仕上げた。このときのウェットピックアップは100%であった。この生地11の目付は190g/mであった。生地1を中袋として用いて、肌側から生地11、生地1、ワタ1、生地2の順で実施例1と同様に積層体を作成した。このときの生地1のアルミニウム被覆面は肌側の面に向けた。この積層体の構成及び積層体の肌側の側地表面の温度変化を表1、表3に示す。
比較例1
生地1のアルミニウム被覆面を肌側に向けた以外は実施例1と同様にして積層体を作成した。この積層体の構成及び積層体の肌側の側地表面の温度変化を表1、表3に示す。
比較例2
積層体の順番を肌側から生地2、ワタ1,生地1とした。このとき生地1のアルミニウム被覆面を詰めワタ側にした。この積層体の構成及び積層体の肌側の側地表面の温度変化を表1、表3に示す。
比較例3
中袋を生地2とした以外は実施例4と同様にして積層体を作成した。この積層体の構成及び積層体の肌側の側地表面の温度変化を表1、表3に示す。
比較例4
生地1を生地2に置き換えて、肌側から生地2、ワタ1、生地2の順で積層した以外は実施例7と同様に積層体を作成した。この積層体の構成及び積層体の肌側の側地表面の温度変化を表1、表3に示す。
実施例10
側地を生地7、中袋を生地1として、実際に掛け布団及び敷き布団を作成した。このとき中袋は肌側の側地と詰めワタの間に挟んだ。また、掛け布団の詰めワタは羽毛を、敷き布団の詰めワタは巻綿(ウール100%)と芯綿(ポリエステル100%)を用いた。出来た布団のワタの厚みは掛け布団13cm、敷き布団10cmであった。ワタの厚みの測定は布団を水平で平坦な床に靜置して、布団のそばにモノサシを垂直に立てて、目とモノサシの指示目盛と布団のふくらんだところの3点の高さ水平にして測定した。ここで側地、中袋の厚みは無視した。
この掛け布団及び敷き布団の仕様を図3、図5にそれぞれ示す。
羽毛掛け布団:寸法 経200×緯150cm、ワタ詰込み量1.4kg、ワタ組成(ホワイドダウン85%、フェザー15%)
敷き布団:寸法 経150×緯100cm ワタ詰込み量 巻綿(ウール100%)2.8kg、芯綿(ポリエステル100%)2.0kg
比較例5
側地を生地7、中袋を生地2とした以外は実施例10と同様に掛け布団及び敷き布団を作成した。この掛け布団及び敷き布団の仕様を図4、図6にそれぞれ示す。実施例10と比較例5の布団のモニター評価を表4に示す。また、実施例10と比較例5の布団を着用した被験者のサーモグラフ写真を図10に示す。
本発明の積層体は、寒い環境で入寝したり着用したときに身体が冷えるのを和らげ、早く暖かくなる快適性を提供することができる。この積層体を布団、枕、ケット等の寝装具に用いることにより保温性の高い、快適な製品の提供が可能となり、寝装具業界において極めて有用である。

Claims (8)

  1. 表側の側地と肌側の側地をつなぎ合わせて袋状にして詰めワタを充填した寝装具用積層体であって、肌側の側地の詰めワタ側の面がアルミニウムによって被覆されていることを特徴とする寝装具用積層体。
  2. 表側の側地と詰めワタの間又は肌側の側地と詰めワタの間又はその両方に中袋を設けたことを特徴とする請求項1に記載の寝装具用積層体。
  3. 表側の側地と肌側の側地をつなぎ合わせて袋状にして詰めワタを充填した寝装具用積層体であって、肌側の側地と詰めワタの間に中袋を設け、中袋の側地側の面又は詰めワタ側の面のいずれかがアルミニウムによって被覆されていることを特徴とする寝装具用積層体。
  4. 表側の側地と詰めワタの間に中袋を設けたことを特徴とする請求項3に記載の寝装具用積層体。
  5. アルミニウムの被覆厚さが10〜300nmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の寝装具用積層体。
  6. 肌側の側地から肌側に最も近いアルミニウム被覆面までの材料が0.02〜0.6mmの厚みを有し、かつ0.5〜2.0cc/cm・sの通気度を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の寝装具用積層体。
  7. 肌側の側地が、0.01〜0.5dpfの極細繊維を40重量%以上含む疎水性繊維からなり、0.05〜0.3mmの厚み及び30〜150g/mの目付を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の寝装具用積層体。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の寝装具用積層体を含み、詰めワタが2〜20cmの厚みを有することを特徴とする寝装具。
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