ところで、日射量が多い夏季であれば、太陽熱集熱器において水をかなりの高温(例えば90℃程度)にまで加熱することが可能である。そして、この太陽熱集熱器において得られた高温の水を吸収式冷凍機へ供給した場合は、吸収式冷凍機の運転に利用された後の温水(以下では「利用後温水」という)の温度もそれ程低くない値(70℃前後)となる。一方、風呂等へ供給される給湯用の温水の温度は、せいぜい60℃程度である。このため、利用後温水には、水道水を加熱して給湯用の温水を得るのに利用可能な温熱が残存している。
ところが、利用後温水を蓄熱槽の底部に流入させると、利用後温水は、蓄熱槽の底部に存在する低温の水と混ざり合って温度低下し、給湯用の温水を得るために利用できなくなってしまう。従って、利用後温水を蓄熱槽の底部に流入させた場合には、温熱のロスが生じてしまう。
一方、蓄熱槽内には、水の温度分布が形成されており、利用後温水と同じ温度の水も存在している。このため、蓄熱槽のうち利用後温水と同じ温度の水が存在している位置へ利用後温水を流入させれば、上述したような温熱のロスは生じない。
しかしながら、上述したように、蓄熱槽に貯留された水の温度分布は、蓄熱槽に蓄えられた温熱量によって変動する。つまり、蓄熱槽において利用後温水と同じ温度の水が存在する位置も、蓄熱槽に蓄えられた温熱量によって変動する。このため、蓄熱槽において利用後温水と同じ温度の水が存在する位置へ利用後温水を常に流入させることは、現実的には不可能である。
このように、吸収式冷凍機の運転に利用された後の温水(利用後温水)を蓄熱槽へ送り返す従来の空調システムでは、利用後温水に残存する温熱を有効に利用することができず、その結果、太陽熱集熱器において得られた温熱を有効に利用し尽くすの困難であるという問題があった。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、太陽熱を利用して吸収式冷凍機を運転する空調システムにおいて、太陽熱集熱器において得られた温熱を有効に利用することにある。
第1の発明は、空調システムを対象としており、蓄熱用熱媒体を貯留する集熱用タンク(25)と、上記集熱用タンク(25)の下部から流出した蓄熱用熱媒体を太陽熱で加熱して該集熱用タンク(25)の上部へ供給する太陽熱集熱器(22)と、上記集熱用タンク(25)の上部から流出した蓄熱用熱媒体で吸収溶液を加熱して再生することによって吸収式冷凍サイクルを行う吸収式冷凍機(70)と、上記吸収式冷凍機(70)を通過した蓄熱用熱媒体が上部へ流入して下部に貯留された蓄熱用熱媒体が上記集熱用タンク(25)の下部へ供給される利用側タンク(31)と、室内を空調するための空調用熱交換器(64a,…)に接続され、上記吸収式冷凍機(70)によって冷却された空調用熱媒体を上記空調用熱交換器(64a,…)へ供給する冷房用動作を行う空調用回路(40)と、上記利用側タンク(31)に貯留された蓄熱用熱媒体で水道水を加熱することによって給湯用の温水を生成する給湯用熱交換器(16)とを備えるものである。
第1の発明では、太陽熱集熱器(22)と集熱用タンク(25)の間で蓄熱用熱媒体が循環する。集熱用タンク(25)の下部から流出した蓄熱用熱媒体は、太陽熱集熱器(22)において加熱された後に、集熱用タンク(25)の上部へ流入する。集熱用タンク(25)の上部に存在する高温の蓄熱用熱媒体は、吸収式冷凍機(70)へ供給されて吸収溶液を加熱するために利用される。吸収式冷凍機(70)は、吸収式冷凍サイクルを行うことによって空調用熱媒体を冷却する。冷房用動作中の空調用回路(40)において、吸収式冷凍機(70)で冷却された空調用熱媒体は、空調用熱交換器(64a,…)へ供給されて室内の冷房に利用される。
第1の発明において、吸収式冷凍機(70)の運転に利用されて温度低下した蓄熱用熱媒体は、利用側タンク(31)の上部へ流入する。また、利用側タンク(31)の下部から流出した比較的低温の蓄熱用熱媒体は、集熱用タンク(25)の下部へ送られる。吸収式冷凍機(70)の運転に利用された後の蓄熱用熱媒体は、その温度がそれ程低くなっておらず、利用可能な温熱を保有している。そこで、この発明では、吸収式冷凍機(70)の運転に利用された後の蓄熱用熱媒体を利用側タンク(31)に貯留し、この蓄熱用熱媒体が保有する温熱を利用側タンク(31)に蓄える。給湯用熱交換器(16)では、利用側タンク(31)内に蓄えられた温熱を利用して水道水が加熱され、加熱された水道水が給湯用の温水となる。給湯用の温水は、給湯用水栓(17)や風呂等に供給される。
第2の発明は、上記第1の発明において、上記集熱用タンク(25)の容積が上記利用側タンク(31)の容積よりも大きいものである。
第2の発明では、太陽熱集熱器(22)において加熱された蓄熱用熱媒体が容積の大きな集熱用タンク(25)に蓄えられ、吸収式冷凍機(70)の運転に利用された後の蓄熱用熱媒体が容積の小さな利用側タンク(31)に蓄えられる。ここで、太陽熱集熱器(22)から集熱用タンク(25)へ供給される蓄熱用熱媒体の温度は、日射量によって大幅に変化する。また、日射量は、雲の有無などの気象条件によって変化する。つまり、気象条件によっては、集熱用タンク(25)における高温(例えば、約90℃)の蓄熱用熱媒体の貯留量が減少したからといって、それを直ちに増やすことができない場合もある。このため、晴天で日射量が多いときに出来るだけ多くの蓄熱用熱媒体を加熱し、高温の蓄熱用熱媒体を集熱用タンク(25)に出来るだけ多量に蓄えておくのが望ましい。一方、吸収式冷凍機(70)から利用側タンク(31)へ送られる蓄熱用熱媒体の温度は、それほど急激には変化しない。このため、利用側タンク(31)における高温(例えば70℃前後)の蓄熱用熱媒体の貯留量は、必要なときに増やすことができる可能性が高い。従って、利用側タンク(31)の容積をそれ程大きくする必要はない。そこで、この発明では、集熱用タンク(25)と利用側タンク(31)の用途の違いを考慮して、集熱用タンク(25)の容積を利用側タンク(31)の容積よりも大きくしている。
第3の発明は、上記第1又は第2の発明において、上記利用側タンク(31)内の蓄熱用熱媒体を加熱するための加熱装置(90)を備えるものである。
第3の発明では、利用側タンク(31)内の蓄熱用熱媒体を加熱装置(90)によって加熱することが可能となっている。上述したように、太陽熱集熱器(22)から集熱用タンク(25)へ供給される蓄熱用熱媒体の温度は、日射量によって大幅に変化する。このため、曇天や降雨が続くと、集熱用タンク(25)の上部に存在する蓄熱用熱媒体の温度を充分に上昇させることができない場合もある。その場合には、利用側タンク(31)内の蓄熱用熱媒体の温度も低いままとなり、給湯用熱交換器(16)において水道水の温度を充分に上昇させることができなくなってしまう。このような場合に利用側タンク(31)内の蓄熱用熱媒体を加熱装置(90)によって加熱すれば、日射量が低い気候条件が長く続いた場合でも、充分に温度の高い給湯用の温水を確実に得ることができる。
第4の発明は、上記第3の発明において、蒸気圧縮式冷凍サイクルを行う冷媒回路(91)を備えて該冷媒回路(91)の冷媒によって蓄熱用熱媒体を加熱するヒートポンプ(90)が、上記加熱装置として設けられるものである。
第4の発明では、ヒートポンプ(90)が加熱装置として設けられる。ヒートポンプ(90)の冷媒回路(91)では、冷媒が循環することによって蒸気圧縮式冷凍サイクルが行われる。このヒートポンプ(90)は、利用側タンク(31)内の蓄熱用熱媒体を、高圧冷媒と熱交換させることによって加熱する。なお、このヒートポンプ(90)は、利用側タンク(31)の内部空間に存在する蓄熱用熱媒体を高圧冷媒と熱交換させるものであってもよいし、利用側タンク(31)から流出した蓄熱用熱媒体を高圧冷媒と熱交換させてから利用側タンク(31)へ送り返すものであってもよい。
第5の発明は、上記第1〜第4の何れか一つの発明において、上記空調用回路(40)は、上記冷房用動作と、上記利用側タンク(31)に貯留された蓄熱用熱媒体を上記空調用熱交換器(64a,…)へ供給する暖房用動作とが切り換え可能となっているものである。
第5の発明の空調用回路(40)では、冷房用動作と暖房用動作とが切り換え可能となる。暖房用動作中の空調用回路(40)では、利用側タンク(31)に貯留された蓄熱用熱媒体が空調用熱交換器(64a,…)へ供給されて室内の暖房に利用される。
第6の発明は、上記第1〜第4の何れか一つの発明において、上記空調用回路(40)は、上記冷房用動作と、上記利用側タンク(31)に貯留された蓄熱用熱媒体を上記空調用熱交換器(64a,…)へ供給する第1暖房用動作と、上記集熱用タンク(25)に貯留された蓄熱用熱媒体を上記空調用熱交換器(64a,…)へ供給する第2暖房用動作とが切り換え可能となっているものである。
第6の発明では、冷房用動作と第1暖房用動作と第2暖房用動作とが切り換え可能となる。第1暖房用動作中の空調用回路(40)では、利用側タンク(31)に貯留された蓄熱用熱媒体が空調用熱交換器(64a,…)へ供給されて室内の暖房に利用される。第2暖房用動作中の空調用回路(40)では、集熱用タンク(25)に貯留された蓄熱用熱媒体が空調用熱交換器(64a,…)へ供給されて室内の暖房に利用される。
第7の発明は、上記第4の発明において、上記ヒートポンプ(90)は、上記冷媒回路(91)の冷媒によって蓄熱用熱媒体を加熱する加熱動作と、該冷媒回路(91)の冷媒によって空調用熱媒体を冷却する冷却動作とが切り換え可能となっており、上記空調用回路(40)は、冷房用動作と、上記冷却動作中のヒートポンプ(90)によって冷却された空調用熱媒体を上記空調用熱交換器(64a,…)へ供給する補助冷房用動作とが切り換え可能となっているものである。
第7の発明の空調用回路(40)では、冷房用動作と補助冷房用動作とが切り換え可能となる。空調用回路(40)が補助冷房用動作を行う場合には、ヒートポンプ(90)が冷却動作を行って空調用熱媒体を冷却する。そして、補助冷房用動作中の空調用回路(40)では、ヒートポンプ(90)において冷却された空調用熱媒体が空調用熱交換器(64a,…)へ供給されて室内の冷房に利用される。つまり、空調用回路(40)が補助冷房用動作を行うと、吸収式冷凍機(70)の停止中においても室内を冷房することが可能である。
ここで、第7の発明の吸収式冷凍機(70)は、集熱用タンク(25)に貯留された蓄熱用熱媒体を利用して吸収式冷凍サイクルを行う。このため、曇天や降雨が続いて集熱用タンク(25)内の蓄熱媒体の温度を充分に上昇させることができない場合には、吸収式冷凍機(70)を運転することができない。一方、曇天や降雨が続いていて且つ気温が高い場合もあり、この場合には室内を冷房する必要がある。この発明の空調システム(10)では、このような吸収式冷凍機(70)を運転できない場合においても、ヒートポンプ(90)に冷却動作を実行させて空調用回路(40)に補助冷房用動作を実行させることによって、室内の冷房が行われる。
本発明において、吸収式冷凍機(70)の運転に利用された後の蓄熱用熱媒体は、集熱用タンク(25)へ戻されずに利用側タンク(31)へ導入される。上述したように、吸収式冷凍機(70)の運転に利用された後の蓄熱用熱媒体は、その温度がそれ程低くなっておらず、利用可能な温熱を保有している。このため、本発明によれば、吸収式冷凍機(70)の運転に利用された後の蓄熱用熱媒体(即ち、まだ利用可能な温熱を保有する蓄熱用熱媒体)を、その温度を低下させることなく利用側タンク(31)に蓄えることができる。そして、本発明では、利用側タンク(31)に蓄えられた蓄熱用熱媒体によって水道水が加熱され、加熱された水道水が給湯用の温水として給湯用水栓(17)や風呂等に供給される。
このように、本発明の空調システム(10)では、太陽熱集熱器(22)において得られた温熱が、先ず吸収式冷凍機(70)を運転して室内を冷房するために利用され、その後に給湯用の温水を生成するために利用される。従って、本発明によれば、吸収式冷凍機(70)の運転に利用された後の蓄熱用熱媒体に残存する温熱を給湯のために利用することができ、太陽熱集熱器(22)において得られた温熱を有効に利用し尽くすことができる。
上記第2の発明では、流入する蓄熱用熱媒体の温度が急激に変動し得る集熱用タンク(25)の容積を、流入する蓄熱用熱媒体の温度が比較的安定している利用側タンク(31)の容積よりも大きくしている。従って、この発明によれば、集熱用タンク(25)と利用側タンク(31)の容積をそれぞれの用途に応じて適切に設定することができ、集熱用タンク(25)と利用側タンク(31)に蓄えられる温熱量を充分に確保することができる。
上記第3の発明では、利用側タンク(31)内の蓄熱用熱媒体を加熱装置(90)によって加熱することが可能となっているため、太陽熱集熱器(22)において得られる温熱量に拘わらず、利用側タンク(31)内の蓄熱用熱媒体の温度をある程度高い値に保つことができる。従って、この発明によれば、気象条件に拘わらず、充分に温度の高い給湯用の温水を給湯用水栓(17)や風呂等へ確実に供給することが可能となる。
上記第4の発明によれば、電気ヒータに比べて高い成績係数(COP)が得られるヒートポンプ(90)を用いて、利用側タンク(31)内の蓄熱用熱媒体を効率よく加熱することができる。
上記第5の発明の空調用回路(40)では、冷房用動作と暖房用動作の両方が実行可能となる。従って、この発明によれば、太陽熱を利用して室内の冷房と暖房の両方を行うことができる。
上記第6の発明の空調用回路(40)では、冷房用動作と第1暖房用動作と第2暖房用動作とが切り換え可能となる。従って、この発明によれば、太陽熱を利用して室内の冷房と暖房の両方を行うことができる。更に、この発明の空調用回路(40)では、暖房用に空調用熱交換器(64a,…)へ供給される蓄熱用媒体の供給元として利用側タンク(31)と集熱用タンク(25)の両方を用いることができ、利用側タンク(31)と集熱用タンク(25)に蓄えられた温熱を有効に利用することが可能となる。
上記第7の発明の空調用回路(40)では、冷房用動作と補助冷房用動作とが切り換え可能となる。そして、補助冷房用動作中には、吸収式冷凍機(70)が停止していても、ヒートポンプ(90)に冷却動作を行わせることによって室内を冷房することができる。従って、この発明によれば、太陽熱集熱器(22)において充分な温熱が得られなくて吸収式冷凍機(70)を運転できない場合であっても、ヒートポンプ(90)に冷却動作を実行させて空調用回路(40)に補助冷房用動作を実行させることによって、室内を冷房することができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態の空調システム(10)は、集熱用回路(20)と、利用側回路(30)と、給湯用管路(15)とを備えている。この空調システム(10)は、例えば住宅等に設置され、空気調和と給湯を行う。
〈集熱用回路〉
集熱用回路(20)は、蓄熱用熱媒体としての熱媒水を循環させるための回路である。この集熱用回路(20)は、集熱用タンク(25)に接続されている。
集熱用タンク(25)は、縦長の円筒状に形成された密閉容器であって、その内部空間が熱媒水で満たされている。この集熱用タンク(25)は、いわゆる温度成層型の蓄熱タンクである。集熱用タンク(25)の容積は、約400リットルである。なお、ここに示した集熱用タンク(25)の容積の値は、単なる一例である。
集熱用回路(20)は、その一端が集熱用タンク(25)の底部に接続され、その他端が集熱用タンク(25)の頂部に接続されている。集熱用回路(20)には、その一端から他端へ向かって順に、集熱用ポンプ(21)と太陽熱集熱器(22)とが設けられている。太陽熱集熱器(22)は、例えば住宅の屋根に設置され、集熱用回路(20)を流れる熱媒水を、太陽熱によって加熱する。
〈利用側回路〉
利用側回路(30)は、熱媒水を循環させるための回路である。利用側回路(30)は、一次側回路(35)と、空調用回路である二次側回路(40)と、室内回路(60)とを備えている。また、利用側回路(30)には、利用側タンク(31)と、熱源ユニット(32)とが設けられている。
利用側タンク(31)は、縦長の円筒状に形成された密閉容器であって、その内部空間が熱媒水で満たされている。この利用側タンク(31)は、いわゆる温度成層型の蓄熱タンクである。利用側タンク(31)の容積は、約100リットルである。なお、ここに示した利用側タンク(31)の容積の値は、単なる一例である。
熱源ユニット(32)は、吸収式冷凍機(70)と、加熱装置であるヒートポンプ(90)とを備えている。熱源ユニット(32)に設けられた吸収式冷凍機(70)とヒートポンプ(90)の詳細については、後述する。
一次側回路(35)は、集熱用タンク(25)と利用側タンク(31)の間で蓄熱用熱媒体としての熱媒水を循環させるための回路である。一次側回路(35)は、第1送出側管路(36)と、第2送出側管路(37)と、戻り側管路(38)と、バイパス管路(39)とを備えている。
一次側回路(35)の第1送出側管路(36)は、その一端が集熱用タンク(25)の頂部に接続され、その他端が吸収式冷凍機(70)に接続されている。この第1送出側管路(36)では、その一端から他端へ向かって順に、一次側電磁弁(34)と、第1ポンプ(51)と、第1三方弁(56)とが配置されている。また、この第1送出側管路(36)において、第1三方弁(56)は、その第1のポートが第1ポンプ(51)の吐出側に接続し、その第2のポートが吸収式冷凍機(70)に接続している。
一次側回路(35)の第2送出側管路(37)は、その一端が吸収式冷凍機(70)に接続され、その他端が利用側タンク(31)の頂部に接続されている。一次側回路(35)の戻り側管路(38)は、その一端が利用側タンク(31)の底部に接続され、その他端が集熱用タンク(25)の底部に接続されている。一次側回路(35)のバイパス管路(39)は、その一端が第1三方弁(56)の第3のポートに接続され、その他端が第2送出側管路(37)に接続されている。バイパス管路(39)の他端は、第2送出側管路(37)を介して利用側タンク(31)に接続している。
二次側回路(40)は、空調用熱媒体としての熱媒水を利用側タンク(31)及び熱源ユニット(32)から室内回路(60)へ供給するための回路である。二次側回路(40)は、第1送出側管路(41)と、第2送出側管路(42)と、戻り側管路(43)と、バイパス管路(44)とを備えている。
二次側回路(40)の第1送出側管路(41)は、その一端が利用側タンク(31)の頂部に接続され、その他端が室内回路(60)の入口ヘッダ(61)に接続されている。この第1送出側管路(41)では、その一端から他端へ向かって順に、第2三方弁(57)と、二次側混合弁(50)と、第2ポンプ(52)と、二次側電磁弁(48)とが配置されている。また、この第1送出側管路(41)において、第2三方弁(57)は、その第1のポートが二次側混合弁(50)に接続し、その第2のポートが利用側タンク(31)に接続している。
二次側回路(40)の第2送出側管路(42)は、その一端が熱源ユニット(32)に接続され、その他端が第1送出側管路(41)における二次側電磁弁(48)の下流に接続されている。つまり、第2送出側管路(42)の他端は、第1送出側管路(41)を介して室内回路(60)の入口ヘッダ(61)に接続している。この第2送出側管路(42)では、その一端から他端へ向かって順に、第3ポンプ(53)と、第3三方弁(58)とが配置されている。また、この第2送出側管路(42)において、第3三方弁(58)は、その第1のポートが第3ポンプ(53)の吐出側に接続し、その第3のポートが入口ヘッダ(61)に接続している。
二次側回路(40)の戻り側管路(43)は、その一端が室内回路(60)の出口ヘッダ(62)に接続され、その他端が利用側タンク(31)の底部に接続されている。二次側回路(40)のバイパス管路(44)は、その一端が戻り側管路(43)に接続され、その他端が二次側混合弁(50)に接続されている。このバイパス管路(44)には、バイパス用電磁弁(49)が設けられている。二次側混合弁(50)は、バイパス管路(44)から第1送出側管路(41)へ流入する熱媒水の流量を調節するためのものである。
また、二次側回路(40)には、供給側配管(45)と、吸込側配管(46)と、接続用配管(47)とが設けられている。供給側配管(45)は、その一端が第3三方弁(58)の第2のポートに接続され、その他端が一次側回路(35)の第2送出側管路(37)に接続されている。供給側配管(45)の他端は、第2送出側管路(37)を介して利用側タンク(31)に接続している。吸込側配管(46)は、その一端が一次側回路(35)の戻り側管路(38)に接続され、その他端が熱源ユニット(32)に接続されている。吸込側配管(46)の一端は、戻り側管路(38)を介して利用側タンク(31)に接続している。接続用配管(47)は、その一端が一次側回路(35)の第1送出側管路(36)における一次側電磁弁(34)の上流に接続され、その他端が第2三方弁(57)の第3ポートに接続されている。この接続用配管(47)の一端は、第1送出側管路(36)を介して集熱用タンク(25)に接続している。
第1三方弁(56)と第2三方弁(57)と第3三方弁(58)のそれぞれは、第1ポートが第2ポートに連通して第3ポートから遮断される第1状態(図1に実線で示す状態)と、第1ポートが第3ポートに連通して第2ポートから遮断される第2状態(同図に破線で示す状態)とに切り換わる。
室内回路(60)は、入口ヘッダ(61)と出口ヘッダ(62)を一つずつ備えると共に、三つの分岐管路(63a,63b,63c)を備えている。なお、この室内回路(60)に設けられた分岐管路(63a〜63c)の数は、単なる一例である。分岐管路(63a〜63c)は、それぞれの一端が入口ヘッダ(61)に接続され、それぞれの他端が出口ヘッダ(62)に接続されている。各分岐管路(63a〜63c)には、その一端から他端へ向かって順に、電磁弁(65a,65b,65c)と、空調用熱交換器である室内熱交換器(64a,64b,64c)とが設けられている。各室内熱交換器(64a〜64c)は、ファンコイルユニットに設けられて熱媒水を室内空気と熱交換させる。
〈給湯用管路〉
給湯用管路(15)は、水道水を流すための管路である。給湯用管路(15)は、その一端が上水道に接続され、その他端が給湯用水栓(17)に接続されている。なお、給湯用管路(15)の他端は、例えば風呂等に接続されていてもよい。給湯用管路(15)では、その一端から他端へ向かって順に、給湯用熱交換器(16)と給湯用混合弁(18)とが設けられている。給湯用熱交換器(16)は、利用側タンク(31)に収容された伝熱管であって、給湯用管路(15)を流れる水道水と、利用側タンク(31)に貯留された熱媒水とを熱交換させる。
給湯用管路(15)には、給湯用バイパス配管(19)が接続されている。給湯用バイパス配管(19)は、その一端が給湯用管路(15)における給湯用熱交換器(16)の上流に接続され、その他端が給湯用混合弁(18)に接続されている。給湯用混合弁(18)は、給湯用バイパス配管(19)から給湯用管路(15)へ流入する水道水の流量を調節するためのものである。
〈吸収式冷凍機〉
熱源ユニット(32)の吸収式冷凍機(70)について、図2を参照しながら説明する。
吸収式冷凍機(70)は、冷媒として水を用い、吸収用液として臭化リチウム水溶液を用いて吸収式冷凍サイクルを行う。この吸収式冷凍機(70)は、水冷式である。吸収式冷凍機(70)には、再生器(71)と、吸収器(72)と、凝縮器(73)と、蒸発器(74)と、溶液熱交換器(75)とが設けられている。
再生器(71)の伝熱管(71a)は、その一端に一次側回路(35)の第1送出側管路(36)が接続され、その他端に一次側回路(35)の第2送出側管路(37)が接続されている。再生器(71)では、伝熱管(71a)内を流れる熱媒水によって吸収溶液が加熱され、吸収溶液に含まれる水が蒸発する。つまり、再生器(71)内の吸収溶液は、伝熱管(71a)内を流れる熱媒水によって加熱されて再生される。
吸収器(72)の伝熱管(72a)は、図外の冷却塔に接続されており、その内部を冷却水が流れる。吸収器(72)では、伝熱管(72a)の上方に溶液撒布器(72b)が設けられている。溶液撒布器(72b)は、濃溶液管路(82)を介して再生器(71)に接続されており、再生器(71)から供給された高濃度の吸収溶液を伝熱管(72a)に散布する。吸収器(72)では、蒸発器(74)で発生した水蒸気が吸収溶液に吸収される。吸収器(72)の底部は、希溶液管路(81)を介して再生器(71)に接続されている。吸収器(72)において水蒸気を吸収した吸収溶液は、希溶液管路(81)に設けられた溶液ポンプ(83)によって再生器(71)へ送られる。
溶液熱交換器(75)は、その第1流路(76)が濃溶液管路(82)の途中に接続され、その第2流路(77)が希溶液管路(81)の途中に接続される。この溶液熱交換器(75)は、濃溶液管路(82)を流れる高濃度の吸収溶液と、希溶液管路(81)を流れる低濃度の吸収溶液とを熱交換させる。
凝縮器(73)は、再生器(71)に接続されている。この凝縮器(73)には、再生器(71)において発生した水蒸気が導入される。凝縮器(73)の伝熱管(73a)は、図外の冷却塔に接続されており、その内部を冷却水が流れる。凝縮器(73)では、再生器(71)から流入した水蒸気が凝縮して液冷媒となる。
蒸発器(74)は、冷媒用管路(84)を介して凝縮器(73)に接続されている。凝縮器(73)の液冷媒(水)は、絞り弁(85)を通過する際に膨張してから蒸発器(74)へ流入する。蒸発器(74)の伝熱管(74a)は、その一端が利用側回路(30)の吸込側配管(46)に接続され、その他端が二次側回路(40)の第2送出側管路(42)に接続されている。
蒸発器(74)では、伝熱管(74a)の上方に冷媒撒布器(74b)が設けられている。冷媒撒布器(74b)は、冷媒循環用管路(86)の一端に接続されている。冷媒循環用管路(86)の他端は、蒸発器(74)の底部に接続されている。冷媒循環用管路(86)に設けられた冷媒ポンプ(87)を運転すると、蒸発器(74)の底部に溜まった液冷媒(水)は、冷媒撒布器(74b)へ送られて伝熱管(74a)に散布され、伝熱管(74a)内の熱媒水から吸熱して蒸発する。このため、伝熱管(74a)内を流れる熱媒水が冷却される。また、蒸発器(74)は、吸収器(72)に接続されている。蒸発器(74)において発生した水蒸気は、吸収器(72)へ流入して吸収溶液に吸収される。
〈ヒートポンプ〉
熱源ユニット(32)のヒートポンプ(90)について、図3を参照しながら説明する。
このヒートポンプ(90)は、冷媒が充填された冷媒回路(91)を備えており、いわゆるフロン冷媒や二酸化炭素を冷媒として用いて蒸気圧縮式冷凍サイクルを行う。
ヒートポンプ(90)の冷媒回路(91)には、圧縮機(92)と、四方切換弁(93)と、利用側熱交換器(96)と、膨張弁(95)と、熱源側熱交換器(94)とが設けられている。この冷媒回路(91)において、四方切換弁(93)は、その第1のポートが圧縮機(92)の吐出側に接続され、その第2のポートが圧縮機(92)の吸入側に接続されている。また、この冷媒回路(91)では、四方切換弁(93)の第3のポートから第4のポートへ向かって順に、利用側熱交換器(96)と、膨張弁(95)と、熱源側熱交換器(94)とが配置されている。
利用側熱交換器(96)は、第1流路(97)と第2流路(98)とを備えている。冷媒回路(91)には、利用側熱交換器(96)の第1流路(97)が接続されている。利用側熱交換器(96)の第2流路(98)は、その一端が利用側回路(30)の吸込側配管(46)に接続され、その他端が二次側回路(40)の第2送出側管路(42)に接続されている。
このヒートポンプ(90)には、熱源側熱交換器(94)へ室外空気を送るためのファン(99)が設けられている。熱源側熱交換器(94)は、ファン(99)によって供給された室外空気を冷媒と熱交換させる。また、四方切換弁(93)は、第1のポートと第3のポートが連通し且つ第2のポートと第4のポートが連通する第1状態(図3に実線で示す状態)と、第1のポートと第4のポートが連通し且つ第2のポートと第3のポートが連通する第2状態(同図に破線で示す状態)とに切り換わる。
このヒートポンプ(90)は、加熱動作と冷却動作とが切り換え可能となっている。加熱動作時には、四方切換弁(93)が第1状態(図3に実線で示す状態)に設定され、利用側熱交換器(96)が凝縮器(あるいはガスクーラ)として動作し、熱源側熱交換器(94)が蒸発器として動作する。そして、加熱動作時には、利用側熱交換器(96)の第2流路(98)を流れる熱媒水が、その第1流路(97)を流れる冷媒によって加熱される。一方、冷却動作時には、四方切換弁(93)が第2状態(同図に破線で示す状態)に設定され、熱源側熱交換器(94)が凝縮器(あるいはガスクーラ)として動作し、利用側熱交換器(96)が蒸発器として動作する。そして、冷却動作時には、利用側熱交換器(96)の第2流路(98)を流れる熱媒水が、その第1流路(97)を流れる冷媒によって冷却される。
−運転動作−
本実施形態の空調システム(10)の運転動作について説明する。ただし、以下の説明に記載した熱媒水の温度は、何れも単なる一例である。
本実施形態の空調システム(10)は、第1冷房運転と、第2冷房運転と、第1暖房運転と、第2暖房運転とが切り換え可能となっている。
なお、何れの運転中においても、空調システム(10)では、集熱用ポンプ(21)が駆動され、集熱用回路(20)において熱媒水が循環する。この状態の集熱用回路(20)において、集熱用タンク(25)の下部から流出した比較的低温の熱媒水は、太陽熱集熱器(22)へ送られて太陽熱によって加熱され、その後に集熱用タンク(25)の上部へ流入する。なお、日射量が少なくて太陽熱集熱器(22)で熱媒水の温度を充分に上昇させることができない場合は、集熱用ポンプ(21)が停止する。
また、何れの運転中においても、空調システム(10)の給湯用管路(15)は、給湯用水栓(17)へ温水を供給する動作を随時行う。この動作は、給湯用水栓(17)が開かれた場合に実行される。つまり、給湯用水栓(17)が開かれると、常温(例えば約25℃)の水道水が給湯用熱交換器(16)へ流入する。この水道水は、利用側タンク(31)内の熱媒水によって加熱され、その後に給湯用水栓(17)へ供給される。その際、給湯用水栓(17)へ送られる温水の温度は、給湯用混合弁(18)によって調節される。つまり、給湯用混合弁(18)は、給湯用バイパス配管(19)から給湯用管路(15)へ流入する常温の水道水の流量を調節することによって、給湯用混合弁(18)から給湯用水栓(17)へ送られる温水の温度を調節する。
〈第1冷房運転〉
第1冷房運転について、図4を参照しながら説明する。第1冷房運転では、吸収式冷凍機(70)が運転され、吸収式冷凍機(70)において冷却された熱媒水を利用して室内の冷房が行われる。この第1冷房運転は、例えば真夏の日中のような日射量が非常に多くて気温も高い場合に行われる。この場合には、太陽熱集熱器(22)から集熱用タンク(25)へ送られる熱媒水の温度が高温(約90℃)となり、集熱用タンク(25)の上部に貯留された熱媒水の温度も高温となる。
第1冷房運転中の空調システム(10)では、吸収式冷凍機(70)が運転されてヒートポンプ(90)が停止すると共に、二次側回路(40)が冷房用動作を行う。第1冷房運転中には、第1三方弁(56)及び第2三方弁(57)が第1状態に設定されて第3三方弁(58)が第2状態に設定され、一次側電磁弁(34)が開放されて二次側電磁弁(48)及びバイパス用電磁弁(49)が閉鎖され、第1ポンプ(51)及び第3ポンプ(53)が運転されて第2ポンプ(52)が停止する。
一次側回路(35)において、集熱用タンク(25)の上部から第1送出側管路(36)へ流出した約90℃の熱媒水は、吸収式冷凍機(70)に設けられた再生器(71)の伝熱管(71a)へ流入し、再生器(71)内の吸収溶液に対して放熱する(図2を参照)。この伝熱管(71a)を流れる間に、熱媒水の温度は、約90℃から70℃前後(65〜75℃程度)にまで低下する。この伝熱管(71a)を通過した熱媒水は、第2送出側管路(37)を通って利用側タンク(31)の上部へ流入する。第2送出側管路(37)から利用側タンク(31)の上部へ70℃前後の熱媒水が流入すると、それよりも低温(約40℃)の熱媒水が利用側タンク(31)の下部から戻り側管路(38)へ押し出される。戻り側管路(38)へ流入した低温の熱媒水は、集熱用タンク(25)の下部へ流入する。
二次側回路(40)では、吸収式冷凍機(70)に設けられた蒸発器(74)の伝熱管(74a)を通過する間に冷却された熱媒水が、第2送出側管路(42)へ流入する(図2を参照)。第2送出側管路(42)へ流入した低温(約10℃)の熱媒水は、入口ヘッダ(61)へ流入して各分岐管路(63a〜63c)へ分配され、その後に各室内熱交換器(64a〜64c)で室内空気から吸熱する。室内熱交換器(64a〜64c)から流出した約15℃の熱媒水は、出口ヘッダ(62)を経て戻り側管路(43)へ流入し、その後に利用側タンク(31)の下部へ流入する。
ここで、吸収式冷凍機(70)の再生器(71)において吸収用液を確実に再生するには、集熱用タンク(25)から吸収式冷凍機(70)へ高温(約90℃)の熱媒水を供給する必要がある。このため、吸収式冷凍機(70)の再生器(71)から流出する熱媒水の温度は、依然として比較的高い値(70℃前後)となる。一方、給湯用の温水の温度は、せいぜい60℃程度で充分である。このため、吸収式冷凍機(70)の再生器(71)から流出した熱媒水には、水道水を加熱して給湯用の温水を得るのに利用可能な温熱が残存している。
ところが、吸収式冷凍機(70)の再生器(71)から流出した70℃前後の熱媒水を集熱用タンク(25)の下部へ流入させると、この熱媒水は、集熱用タンク(25)の下部に存在する比較的低温(約40℃)の熱媒水と混ざり合うことによってその温度が低下してしまい、もはや給湯用の温水を得るために利用できなくなってしまう。
そこで、本実施形態の利用側回路(30)では、吸収式冷凍機(70)の再生器(71)から流出した70℃前後の熱媒水を、集熱用タンク(25)ではなく利用側タンク(31)の上部へ流入させている。このため、吸収式冷凍機(70)の再生器(71)から流出した熱媒水は、70℃前後の温度のままで利用側タンク(31)内に貯留される。そして、本実施形態の空調システム(10)では、利用側タンク(31)内に設置された給湯用熱交換器(16)に水道水を流し、この水道水を利用側タンク(31)内の熱媒水で加熱することによって、給湯用の温水を得ている。つまり、本実施形態の空調システム(10)において、太陽熱集熱器(22)において加熱された熱媒水が保有する温熱は、先ず吸収式冷凍機(70)を運転するために利用され、その後、更に水道水を加熱して給湯用の温水を得るために利用される。
なお、第1冷房運転中には、吸収式冷凍機(70)において得られる冷熱だけでは、冷房負荷を処理しきれない場合が有り得る。このような場合には、ヒートポンプ(90)に冷却動作を行わせるようにしてもよい。この場合、空調システム(10)では、吸収式冷凍機(70)とヒートポンプ(90)の両方によって冷却された熱媒水が室内熱交換器(64a〜64c)へ供給される。
〈第2冷房運転〉
第2冷房運転について、図5を参照しながら説明する。第2冷房運転では、ヒートポンプ(90)が冷却動作を行い、ヒートポンプ(90)において冷却された熱媒水を利用して室内の冷房が行われる。この第2冷房運転は、例えば日射量はそれ程多くないが気温は高い場合に行われる。この場合には、太陽熱集熱器(22)において熱媒水の温度を充分に上昇させることができず、集熱用タンク(25)内の熱媒水によって吸収式冷凍機(70)を吸収用液を充分に加熱することができない。そこで、この場合には、ヒートポンプ(90)に冷却動作を行わせることによって室内の冷房が行われる。
第2冷房運転中の空調システム(10)では、吸収式冷凍機(70)が停止してヒートポンプ(90)が冷却動作を行うと共に、二次側回路(40)が補助冷房用動作を行う。第2冷房運転中には、第2三方弁(57)が第1状態に設定されて第1三方弁(56)及び第3三方弁(58)が第2状態に設定され、一次側電磁弁(34)が開放されて二次側電磁弁(48)及びバイパス用電磁弁(49)が閉鎖され、第3ポンプ(53)が運転されて第2ポンプ(52)が停止する。第2冷房運転において、第1ポンプ(51)は、必要な場合にだけ運転される。
第1ポンプ(51)の運転中において、一次側回路(35)では、集熱用タンク(25)の上部から第1送出側管路(36)へ流出した熱媒水が、バイパス管路(39)を通って利用側タンク(31)の上部へ流入する。そして、利用側タンク(31)の下部から戻り側管路(38)へ押し出された熱媒水は、集熱用タンク(25)の下部へ流入する。第1ポンプ(51)は、利用側タンク(31)に蓄えられた温熱量が減少したときに運転される。
二次側回路(40)では、ヒートポンプ(90)の利用側熱交換器(96)の第2流路(98)を通過する間に冷却された熱媒水が、第2送出側管路(42)へ流入する(図3を参照)。第2送出側管路(42)へ流入した低温(約10℃)の熱媒水は、入口ヘッダ(61)へ流入して各分岐管路(63a〜63c)へ分配され、その後に各室内熱交換器(64a〜64c)で室内空気から吸熱する。室内熱交換器(64a〜64c)から流出した約15℃の熱媒水は、出口ヘッダ(62)を経て戻り側管路(43)へ流入し、その後に利用側タンク(31)の下部へ流入する。
〈第1暖房運転〉
第1暖房運転について、図6を参照しながら説明する。第1暖房運転では、太陽熱集熱器(22)において得られた温熱を利用して室内の暖房と給湯が行われる。この第1暖房運転は、気温は低いが日射量は多い場合に行われる。この場合、太陽熱集熱器(22)から集熱用タンク(25)へ送られる熱媒水の温度は、水道水を加熱して給湯用の温水を得るのに充分な値(約65℃)となる。
第1暖房運転中の空調システム(10)では、吸収式冷凍機(70)及びヒートポンプ(90)が停止すると共に、二次側回路(40)が第1暖房用動作を行う。第1暖房運転中には、第2三方弁(57)及び第3三方弁(58)が第1状態に設定されて第1三方弁(56)が第2状態に設定され、一次側電磁弁(34)、二次側電磁弁(48)、及びバイパス用電磁弁(49)が開放され、第2ポンプ(52)が運転されて第3ポンプ(53)が停止する。第1暖房運転において、第1ポンプ(51)は、必要な場合にだけ運転される。
第1ポンプ(51)の運転中において、一次側回路(35)では、集熱用タンク(25)の上部から第1送出側管路(36)へ流出した熱媒水が、バイパス管路(39)を通って利用側タンク(31)の上部へ流入する。そして、利用側タンク(31)の下部から戻り側管路(38)へ押し出された熱媒水は、集熱用タンク(25)の下部へ流入する。第1ポンプ(51)は、利用側タンク(31)に蓄えられた温熱量が減少したときに運転される。
二次側回路(40)では、利用側タンク(31)の上部から第1送出側管路(41)へ流出した約65℃の熱媒水は、二次側混合弁(50)を通過する際にバイパス管路(44)から流入した熱媒水と混合されてその温度が約50℃となる。二次側混合弁(50)から流出した熱媒水は、入口ヘッダ(61)へ流入して各分岐管路(63a〜63c)へ分配され、その後に各室内熱交換器(64a〜64c)で室内空気へ放熱する。室内熱交換器(64a〜64c)から流出した約30℃の熱媒水は、出口ヘッダ(62)を経て戻り側管路(43)へ流入し、その一部がバイパス管路(44)へ流入し、残りが利用側タンク(31)の下部へ流入する。
〈第2暖房運転〉
第2暖房運転について、図7を参照しながら説明する。第2暖房運転では、太陽熱集熱器(22)において得られた温熱を利用して室内の暖房が行われ、ヒートポンプ(90)において得られた温熱を利用して給湯が行われる。この第2暖房運転は、気温が低くて日射量もそれ程多くない場合に行われる。この場合、太陽熱集熱器(22)から集熱用タンク(25)へ送られる熱媒水の温度は、水道水を加熱して給湯用の温水を得るのには低いが室内の暖房には利用できる値(約50℃)となる。
第2暖房運転中の空調システム(10)では、吸収式冷凍機(70)が停止すると共に、二次側回路(40)が第2暖房用動作を行う。第2暖房運転中には、第1三方弁(56)及び第3三方弁(58)が第1状態に設定されて第2三方弁(57)が第2状態に設定され、一次側電磁弁(34)が閉鎖されて二次側電磁弁(48)及びバイパス用電磁弁(49)が開放され、第1ポンプ(51)が停止して第2ポンプ(52)が運転される。
二次側回路(40)において、集熱用タンク(25)の上部から接続用配管(47)へ流出した約50℃の熱媒水は、第2三方弁(57)を通過して第1送出側管路(41)へ流入する。その後、熱媒水は、入口ヘッダ(61)へ流入して各分岐管路(63a〜63c)へ分配され、その後に各室内熱交換器(64a〜64c)で室内空気へ放熱する。室内熱交換器(64a〜64c)から流出した約30℃の熱媒水は、出口ヘッダ(62)を経て戻り側管路(43)へ流入し、その後に利用側タンク(31)の下部へ流入する。利用側タンク(31)の下部から流出した約30℃の熱媒水は、一次側回路(35)の戻り側管路(38)を通って集熱用タンク(25)の下部へ流入する。
第2暖房運転において、ヒートポンプ(90)と第3ポンプ(53)は、利用側タンク(31)に蓄えられた温熱量が減少したときに運転される。このとき、ヒートポンプ(90)は、加熱動作を行う。利用側タンク(31)の下部から流出した熱媒水は、二次側回路(40)の吸込側配管(46)を通ってヒートポンプ(90)へ流入する。ヒートポンプ(90)へ流入した熱媒水は、利用側熱交換器(96)の第2流路(98)へ流入し、その第1流路(97)を流れる冷媒によって加熱される(図3を参照)。ヒートポンプ(90)において加熱された約65℃の熱媒水は、供給側配管(45)を通って利用側タンク(31)の上部へ流入する。
〈第3暖房運転〉
第3暖房運転について、図8を参照しながら説明する。第3暖房運転では、ヒートポンプ(90)において得られた温熱を利用して室内の暖房と給湯が行われる。この第3暖房運転は、曇天などで日射量がほとんどない場合に行われる。この場合、太陽熱集熱器(22)と集熱用タンク(25)の間で熱媒水は循環しない。
第3暖房運転中の空調システム(10)では、吸収式冷凍機(70)が停止すると共に、二次側回路(40)が第3暖房用動作を行う。第3暖房運転中には、第1三方弁(56)、第2三方弁(57)及び第3三方弁(58)が第1状態に設定され、一次側電磁弁(34)が閉鎖されて二次側電磁弁(48)及びバイパス用電磁弁(49)が開放され、第1ポンプ(51)が停止して第2ポンプ(52)が運転される。
第3暖房運転において、ヒートポンプ(90)と第3ポンプ(53)は、利用側タンク(31)に蓄えられた温熱量が減少したときに運転される。このとき、ヒートポンプ(90)は、加熱動作を行う。利用側タンク(31)の下部から流出した熱媒水は、二次側回路(40)の吸込側配管(46)を通ってヒートポンプ(90)へ流入する。ヒートポンプ(90)へ流入した熱媒水は、利用側熱交換器(96)の第2流路(98)へ流入し、その第1流路(97)を流れる冷媒によって加熱される(図3を参照)。ヒートポンプ(90)において約65℃にまで加熱された熱媒水は、供給側配管(45)を通って利用側タンク(31)の上部へ流入する。
二次側回路(40)において、利用側タンク(31)の上部から第1送出側管路(41)へ流出した約65℃の熱媒水は、第2三方弁(57)を通過する。その後、熱媒水は、入口ヘッダ(61)へ流入して各分岐管路(63a〜63c)へ分配され、その後に各室内熱交換器(64a〜64c)で室内空気へ放熱する。室内熱交換器(64a〜64c)から流出した約30℃の熱媒水は、出口ヘッダ(62)を経て戻り側管路(43)へ流入し、その後に利用側タンク(31)の下部へ流入する。
−実施形態の効果−
上述したように、本実施形態の空調システム(10)では、その第1冷房運転中において、吸収式冷凍機(70)の再生器(71)から流出した70℃前後の熱媒水を、利用側タンク(31)の上部へ流入させている。このため、吸収式冷凍機(70)の再生器(71)から流出した熱媒水は、70℃前後の温度のままで利用側タンク(31)内に貯留される。そして、その結果、吸収式冷凍機(70)の運転に利用された後に利用側タンク(31)へ流入した熱媒水を、水道水を加熱して給湯用の温水を得るために利用することができる。
このように、第1冷房運転中の空調システム(10)において、太陽熱集熱器(22)において得られた温熱は、先ず吸収式冷凍機(70)を運転して室内を冷房するために利用され、その後に給湯用の温水を生成するために利用される。従って、本実施形態によれば、吸収式冷凍機(70)の運転に利用された後の熱媒水に残存する温熱を給湯のために利用することができ、太陽熱集熱器(22)において得られた温熱を有効に利用し尽くすことができる。
ところで、太陽熱集熱器(22)から集熱用タンク(25)へ供給される熱媒水の温度は、日射量によって大幅に変化する。また、日射量は、雲の有無などの気象条件によって変化する。つまり、気象条件によっては、集熱用タンク(25)における高温(約90℃)の熱媒水の貯留量が減少したからといって、それを直ちに増やすことができない場合もある。このため、晴天で日射量が多いときに出来るだけ多くの熱媒水を加熱し、高温の熱媒水を集熱用タンク(25)に出来るだけ多量に蓄えておくのが望ましい。一方、吸収式冷凍機(70)から利用側タンク(31)へ送られる熱媒水の温度は、それほど急激には変化しない。このため、利用側タンク(31)における高温(70℃前後)の熱媒水の貯留量は、必要なときに増やすことができる可能性が高い。従って、利用側タンク(31)の容積をそれ程大きくする必要はない。
そこで、本実施形態の空調システム(10)では、集熱用タンク(25)と利用側タンク(31)の用途の違いを考慮して、集熱用タンク(25)の容積を利用側タンク(31)の容積よりも大きくしている。従って、本実施形態によれば、集熱用タンク(25)及び利用タンクの大型化を回避しつつ、集熱用タンク(25)と利用側タンク(31)に蓄えられる温熱量を充分に確保することができる。
また、本実施形態の空調システム(10)は、第1冷房運転と第2冷房運転が切り換え可能となっている。第1冷房運転では、吸収式冷凍機(70)が太陽熱集熱器(22)において得られた温熱を利用して吸収式冷凍サイクルを行い、吸収式冷凍機(70)によって冷却された熱媒水を利用して室内の冷房が行われる。一方、第2冷房運転では、ヒートポンプ(90)が太陽熱集熱器(22)において得られた温熱を利用せずに冷却動作を行い、ヒートポンプ(90)によって冷却された熱媒水を利用して室内の冷房が行われる。従って、本実施形態によれば、充分な日射量が得られる場合には第1冷房運転を行い、充分な日射量が得られない場合には第2冷房運転を行うことで、日射量に拘わらず室内を確実に冷房することができる。
また、本実施形態の空調システム(10)は、第1暖房運転と第2暖房運転が切り換え可能となっている。そして、この空調システム(10)は、太陽熱集熱器(22)において熱媒水の温度を充分に高い値(約65℃)にまで上昇させることができる場合に第1暖房運転を行い、太陽熱集熱器(22)において得られた温熱を室内の暖房と給湯の両方に利用する。また、この空調システム(10)は、太陽熱集熱器(22)において熱媒水の温度を中程度の値(約50℃)にまでしか上昇させることができない場合に第2暖房運転を行い、太陽熱集熱器(22)において得られた温熱を利用して室内を暖房する一方、ヒートポンプ(90)の加熱動作によって得られた温熱を利用して給湯用の温水を生成している。従って、本実施形態によれば、日射量がそれほど多くなくて太陽熱集熱器(22)で熱媒水の温度を充分に上昇させることができない場合であっても、太陽熱集熱器(22)において得られた温熱を室内の暖房に有効に利用することができる。
−実施形態の変形例1−
本実施形態の空調システム(10)では、集熱用タンク(25)が複数のタンクによって構成されていてもよい。ここでは、集熱用タンク(25)を二つのタンク(26,27)によって構成した場合について、図9を参照しながら説明する。
本変形例の集熱用タンク(25)は、第1タンク(26)と、第2タンク(27)と、連結用配管(28)とを備えている。第1タンク(26)と第2タンク(27)のそれぞれは、縦長の円筒状に形成された密閉容器であって、温度成層型の蓄熱槽を構成している。連結用配管(28)は、その一端が第2タンク(27)の頂部に接続され、その他端が第1タンク(26)の底部に接続されている。
本変形例の集熱用回路(20)は、その一端が第2タンク(27)の底部に接続され、その他端が第1タンク(26)の頂部に接続されている。また、本変形例の一次側回路(35)では、第1送出側管路(36)が第1タンク(26)の頂部に接続され、戻り側管路(38)が第2タンク(27)の底部に接続されている。
−実施形態の変形例2−
本実施形態の空調システム(10)では、熱源ユニット(32)に空冷式の吸収式冷凍機(70)が設けられていてもよい。空冷式の吸収式冷凍機(70)では、凝縮器(73)において生じる冷媒の凝縮熱と、吸収器(72)において生じる冷媒の吸収熱とが、室外空気へ放熱される。
−実施形態の変形例3−
本実施形態の空調システム(10)では、熱源ユニット(32)のヒートポンプ(90)が、冷却動作中に利用側タンク(31)内の熱媒水を冷媒によって加熱するように構成されていてもよい。冷却動作中の本変形例のヒートポンプ(90)は、蒸発器として動作する熱交換器において冷却した熱媒水を、室内熱交換器(63a〜63c)へ供給する一方、利用側タンク(31)の底部から流出した熱媒水を、凝縮器(あるいはガスクーラ)として動作する熱交換器において加熱してから利用側タンク(31)の上部へ送り返す。
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。